(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】フィルタ異常判定装置
(51)【国際特許分類】
F01N 11/00 20060101AFI20220308BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
F01N11/00
F01N3/023 K
(21)【出願番号】P 2018161225
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊島 実
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035244(JP,A)
【文献】特開2003-166411(JP,A)
【文献】特開2007-292013(JP,A)
【文献】特開2013-253544(JP,A)
【文献】特開2017-020405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00- 3/38
F01N 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガス通路に配置されて粒子状物質を捕集する粒子状物質除去フィルタの上流側の排気管内圧力と、前記粒子状物質除去フィルタの下流側の排気管内圧力との差圧を所定時間毎に検出して時系列的に記憶する差圧検出装置と、
前記内燃機関の排気ガス流量に関連する流量関連量を前記所定時間毎に検出して時系列的に記憶する流量関連量検出装置と、
所定の判定時間毎に、前記判定時間の間に、前記差圧検出装置によって検出された前記差圧の統計的な差圧ばらつき度合と、前記流量関連量検出装置によって検出された前記流量関連量の統計的な流量関連量ばらつき度合とを取得するばらつき度合取得装置と、
前記差圧ばらつき度合と前記流量関連量ばらつき度合とに基づいて、前記粒子状物質除去フィルタの異常の有無を判定する判定装置と、
を備えた、
フィルタ異常判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ異常判定装置において、
前記判定装置は、
前記流量関連量ばらつき度合が所定の第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記流量関連量ばらつき度合が所定第1閾値以上であると判定された場合に、前記差圧ばらつき度合が所定の第2閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と、
を有し、
前記第2判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第2閾値以上であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが正常であると判定し、
前記第2判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第2閾値未満であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが異常であると判定する、
フィルタ異常判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタ異常判定装置において、
前記粒子状物質除去フィルタの正常には、前記粒子状物質除去フィルタに亀裂が生じていない亀裂無し状態と、前記粒子状物質除去フィルタに亀裂が生じた亀裂有り状態と、が含まれ、
前記判定装置は、
前記第2判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第2閾値以上であると判定された場合に、前記差圧ばらつき度合が、前記流量関連量ばらつき度合が前記第1閾値よりも大きくなるに従って、前記第2閾値よりも徐々に大きくなるように設定された所定の第3閾値以上であるか否かを判定する第3判定部を有し、
前記第3判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第3閾値以上であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが前記亀裂無し状態であると判定し、
前記第3判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第3閾値未満であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが前記亀裂有り状態であると判定する、
フィルタ異常判定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のフィルタ異常判定装置において、
前記粒子状物質除去フィルタの異常には、前記粒子状物質除去フィルタが取り外されている状態が含まれる、
フィルタ異常判定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のフィルタ異常判定装置において、
前記判定装置は、
前記粒子状物質除去フィルタが異常
状態であると判定された累積回数をカウントする異常カウンタと、
前記粒子状物質除去フィルタが正常
状態であると判定された場合に、前記異常カウンタを初期化する異常回数初期化部と、
を有し、
前記異常カウンタがカウントする累積回数が所定の第1回数に達した場合に、前記粒子状物質除去フィル
タが異常であると判定する、
フィルタ異常判定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフィルタ異常判定装置において、
前記判定装置は、
前記粒子状物質除去フィルタが正常
状態であると判定された累積回数をカウントする正常カウンタと、
前記粒子状物質除去フィルタが異常
状態であると判定された場合に、前記正常カウンタを初期化する正常回数初期化部と、
を有し、
前記正常カウンタがカウントする累積回数が所定の第2回数に達した場合に、前記粒子状物質除去フィル
タが正常であると判定する、
フィルタ異常判定装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のフィルタ異常判定装置において、
前記流量関連量は、前記内燃機関のシリンダ内に噴射または吸引される燃料消費量、又は、排気ガス流量、若しくは、前記内燃機関が吸入する空気の流量である吸気流量、である、
フィルタ異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される粒子状物質を除去する粒子状物質除去フィルタの異常の有無を判定するフィルタ異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置は、排気ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集して除去する粒子状物質除去フィルタ(通常、Diesel Particulate Filterと呼ばれ、以下、「DPF」という。)等の浄化処理部材を備えている。ここで、排気ガスを浄化処理するDPFは、排気ガス中の粒子状物質を捕集するものであることから、環境保全の観点から、DPFが取り外された状態、DPFに亀裂が生じた状態等のDPFの異常を検出することが望まれている。そこで、DPFの異常を検出する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された内燃機関の排気浄化装置の制御装置では、内燃機関に接続された排気管の途中には、酸化触媒が配置されている。そして、酸化触媒より下流側には、DPFが配置され、DPFよりも下流の排気管にはマフラが配置されている。また、酸化触媒よりも下流で且つDPFよりも上流の排気管には、差圧センサが取り付けられている。この差圧センサは、DPFへ流入する排気の圧力と大気圧との実際の差圧(全体差圧)を検出するセンサである。この全体差圧は、排気流量に応じて変化する。
【0004】
また、ECUは、排気流量とマフラ圧損との相関をマップとして予め記憶している。そして、ECUは、現時点での全体差圧から、現時点での排気流量に対応するマフラ圧損を減算してフィルタ圧損を算出する。続いて、ECUは、このフィルタ圧損が算出された時点の排気流量に対する所定の圧損範囲の上限値及び下限値を予め記憶しており、この算出したフィルタ圧損が下限値以上且つ上限値以下である場合には、DPFが正常であると判定する。つまり、DPFが取り付けられており、DPFに大きな割れ等が生じていないと判定する。
【0005】
一方、ECUは、この算出したフィルタ圧損が下限値よりも低い場合には、DPFが取り外された、若しくは、DPFに大きな割れが生じており、DPFが異常であると判定する。また、ECUは、この算出したフィルタ圧損が上限値よりも高い場合には、DPFに目詰まりが生じており、DPFが異常であると判定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載された内燃機関の排気浄化装置の制御装置では、差圧センサは、稀に「特性ズレ」が発生する場合がある。そのため、差圧センサの出力がΔPだけ高くなる側に「特性ズレ」が発生した場合には、ECUは、算出したフィルタ圧損が上限値よりも高くなり、DPFが正常であるにもかかわらず、DPFが異常であると誤判定する虞がある。また、差圧センサの出力がΔPだけ低くなる側に「特性ズレ」が発生した場合には、ECUは、算出したフィルタ圧損が下限値よりも低くなり、DPFが正常であるにもかかわらず、DPFが異常であると誤判定する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、差圧検出装置の特性ズレが発生しても、粒子状物質除去フィルタの異常の有無を適切に判定することができるフィルタ異常判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、内燃機関の排気ガス通路に配置されて粒子状物質を捕集する粒子状物質除去フィルタの上流側の排気管内圧力と、前記粒子状物質除去フィルタの下流側の排気管内圧力との差圧を所定時間毎に検出して時系列的に記憶する差圧検出装置と、前記内燃機関の排気ガス流量に関連する流量関連量を前記所定時間毎に検出して時系列的に記憶する流量関連量検出装置と、所定の判定時間毎に、前記判定時間の間に、前記差圧検出装置によって検出された前記差圧の統計的な差圧ばらつき度合と、前記流量関連量検出装置によって検出された前記流量関連量の統計的な流量関連量ばらつき度合とを取得するばらつき度合取得装置と、前記差圧ばらつき度合と前記流量関連量ばらつき度合とに基づいて、前記粒子状物質除去フィルタの異常の有無を判定する判定装置と、を備えた、フィルタ異常判定装置である。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るフィルタ異常判定装置において、前記判定装置は、前記流量関連量ばらつき度合が所定の第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部によって前記流量関連量ばらつき度合が所定第1閾値以上であると判定された場合に、前記差圧ばらつき度合が所定の第2閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と、を有し、前記第2判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第2閾値以上であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが正常であると判定し、前記第2判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第2閾値未満であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが異常であると判定する、フィルタ異常判定装置である。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るフィルタ異常判定装置において、前記粒子状物質除去フィルタの正常には、前記粒子状物質除去フィルタに亀裂が生じていない亀裂無し状態と、前記粒子状物質除去フィルタに亀裂が生じた亀裂有り状態と、が含まれ、前記判定装置は、前記第2判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第2閾値以上であると判定された場合に、前記差圧ばらつき度合が、前記流量関連量ばらつき度合が前記第1閾値よりも大きくなるに従って、前記第2閾値よりも徐々に大きくなるように設定された所定の第3閾値以上であるか否かを判定する第3判定部を有し、前記第3判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第3閾値以上であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが前記亀裂無し状態であると判定し、前記第3判定部によって前記差圧ばらつき度合が前記第3閾値未満であると判定された場合は、前記粒子状物質除去フィルタが前記亀裂有り状態であると判定する、フィルタ異常判定装置である。
【0012】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明のいずれか1つに係るフィルタ異常判定装置において、前記粒子状物質除去フィルタの異常には、前記粒子状物質除去フィルタが取り外されている状態が含まれる、フィルタ異常判定装置である。
【0013】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか1つに係るフィルタ異常判定装置において、前記判定装置は、前記粒子状物質除去フィルタが異常状態であると判定された累積回数をカウントする異常カウンタと、前記粒子状物質除去フィルタが正常状態であると判定された場合に、前記異常カウンタを初期化する異常回数初期化部と、を有し、前記異常カウンタがカウントする累積回数が所定の第1回数に達した場合に、前記粒子状物質除去フィルタが異常であると判定する、フィルタ異常判定装置である。
【0014】
次に、本発明の第6の発明は、上記第1の発明乃至第5の発明のいずれか1つに係るフィルタ異常判定装置において、前記判定装置は、前記粒子状物質除去フィルタが正常状態であると判定された累積回数をカウントする正常カウンタと、前記粒子状物質除去フィルタが異常状態であると判定された場合に、前記正常カウンタを初期化する正常回数初期化部と、を有し、前記正常カウンタがカウントする累積回数が所定の第2回数に達した場合に、前記粒子状物質除去フィルタが正常であると判定する、フィルタ異常判定装置である。
【0015】
次に、本発明の第7の発明は、上記第1の発明乃至第6の発明のいずれか1つに係るフィルタ異常判定装置において、前記流量関連量は、前記内燃機関のシリンダ内に噴射または吸引される燃料消費量、又は、排気ガス流量、若しくは、前記内燃機関が吸入する空気の流量である吸気流量、である、フィルタ異常判定装置である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、粒子状物質除去フィルタ(以下、「DPF」という。)の上流側の排気管内圧力と、DPFの下流側の排気管内圧力との差圧の統計的なばらつき度合と、内燃機関の排気ガス流量に関連する流量関連量の統計的なばらつき度合と、に基づいて、DPFの異常の有無が判定される。これにより、差圧検出装置と流量関連量検出装置のそれぞれの検出結果に製品ばらつきがあっても、それぞれの検出結果の統計的なばらつき度合に基づいてDPFの異常の有無を判定するため、判定結果に対するそれぞれの製品ばらつきの影響を抑制することができる。
【0017】
また、差圧検出装置の出力に特性ズレが発生した場合であっても、特性ズレが発生した差圧に基づいてDPFの異常の有無を判定するのではなく、所定の判定時間毎に、特性ズレが発生した差圧の統計的なばらつき度合に基づいて、DPFの異常の有無を判定する。これにより、差圧検出装置の出力に特性ズレが発生した場合であっても、所定の判定時間の経過後には、差圧の特性ズレは差圧の統計的なばらつき度合に影響しなくなるため、DPFの異常の有無の誤判定を抑制し、DPFの異常の有無を適切に判定することができる。
【0018】
第2の発明によれば、流量関連量の統計的な流量関連量ばらつき度合が所定の第1閾値以上であると判定された場合に、差圧の統計的な差圧ばらつき度合が第2閾値以上であると判定された場合は、DPFが正常であると判定される。一方、流量関連量の統計的な流量関連量ばらつき度合が所定の第1閾値以上であると判定された場合に、差圧の統計的な差圧ばらつき度合が第2閾値未満であると判定された場合は、DPFが異常であると判定される。
【0019】
これにより、流量関連量の統計的な流量関連量ばらつき度合が所定の第1閾値以上の場合に、差圧の統計的なばらつき度合を判定することによって、流量関連量が安定した際における差圧の統計的な差圧ばらつき度合を判定することができる。その結果、流量関連量が安定した際における差圧の統計的な差圧ばらつき度合に基づいてDPFの異常の有無を判定することができ、DPFの異常の有無の判定精度の向上を図ることができる。
【0020】
第3の発明によれば、差圧ばらつき度合が、流量関連量ばらつき度合が第1閾値よりも大きくなるに従って、第2閾値よりも徐々に大きくなるように設定された所定の第3閾値以上であると判定された場合は、DPFは亀裂無し状態であると判定される。一方、差圧ばらつき度合が、第3閾値未満であると判定された場合は、DPFは亀裂有り状態であると判定される。これにより、差圧ばらつき度合からDPFに亀裂が生じていない状態と、DPFに亀裂が生じている状態とを検出することが可能となる。
【0021】
第4の発明によれば、差圧ばらつき度合と流量関連量ばらつき度合とに基づいて、DPFが取り外されているか否かを判定することができる。
【0022】
第5の発明によれば、DPFが異常状態であると判定された累積回数が所定の第1回数に達した場合に、DPFが異常であると判定するため、誤判定を適切に回避してDPFの異常を適切に検出することができる。また、DPFが正常状態であると判定された場合には、異常カウンタが初期化されるため、取り外されたDPFが再度、取り付けられた場合、又は、差圧検出手段の出力の特性ズレが生じた場合等における誤判定を適切に回避することができる。
【0023】
第6の発明によれば、DPFが正常状態であると判定された累積回数が所定の第2回数に達した場合に、DPFが正常であると判定するため、誤判定を適切に回避してDPFの正常を適切に検出することができる。また、DPFが異常状態であると判定された場合には、正常カウンタが初期化されるため、DPFが取り外された場合、又は、差圧検出手段の出力の特性ズレが生じた場合等における誤判定を適切に回避することができる。
【0024】
第7の発明によれば、内燃機関のシリンダ内に噴射または吸引される燃料消費量を直接検出できない場合であっても、排気ガス流量、若しくは、吸気流量を、流量関連量として利用することができるので便利である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係るフィルタ異常判定装置を適用した内燃機関の構成の一例を説明する図である。
【
図2】
図1に示す内燃機関の構成に対して、酸化触媒とDPFを分離して別々に構成した一例を説明する図である。
【
図3】DPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)の燃料消費量・差圧特性の一例を示す図である。
【
図4】DPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)のNRTCモードでの燃料消費量の一例を示す図である。
【
図5】DPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)のNRTCモードでの差圧の一例を示す図である。
【
図6】
図4に対応するDPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)における、燃料消費量の不偏分散の一例を示す図である。
【
図7】
図5に対応するDPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)における、差圧の不偏分散の一例を示す図である。
【
図8】DPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)における、燃料消費量の不偏分散と差圧の不偏分散との分散特性の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る制御装置が実行する、DPFの異常の有無を判定する第1フィルタ異常判定処理を示す第1フローチャートである。
【
図10】第1実施形態に係る制御装置が実行する、DPFの異常の有無を判定する第1フィルタ異常判定処理を示す第2フローチャートである。
【
図11】
図5に対応するDPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)における、正常カウンタのカウント例を示す図である。
【
図12】
図5に対応するDPFが取り付けられている場合(正常状態)と、DPFが取り外されている場合(異常状態)における、異常カウンタのカウント例を示す図である。
【
図13】第2実施形態に係るDPFの正常状態と、DPFの異常状態における、燃料消費量の不偏分散と差圧の不偏分散との分散特性の一例を示す図である。
【
図14】第2実施形態に係る制御装置が実行する、DPFの異常の有無を判定する第2フィルタ異常判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るフィルタ異常判定装置を具体化した第1実施形態及び第2実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、第1実施形態について
図1乃至
図12に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係るフィルタ異常判定装置を適用した内燃機関10の構成の一例を示している。内燃機関10は、ディーゼルエンジンである。尚、以下の説明において、DPF43は、粒子状物質除去フィルタ(Diesel Particulate Filter)に相当している。また、DPF43よりも下流側の排気通路に配置されて窒素酸化物(NOx)を無害化する選択還元触媒等については、記載を省略している。
【0027】
[第1実施形態]
図1に示すように、内燃機関10の排気通路(排気ガス通路)12には、排気ガス浄化装置41が設けられている。また、排気ガス浄化装置41の内部には、上流側から、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)42、DPF43が設けられている。排気ガス浄化装置41は、排気ガス通路を構成し、上流側から下流側に排気ガスが通過する間に、排気ガスに含まれる有害物質を除去するものである。ここで、内燃機関10は、高効率で耐久性にも優れているが、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等の有害物質を、排気ガスと一緒に排出してしまうものである。
【0028】
酸化触媒42は、セラミック製の円柱状等に形成されたセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、内面に白金(Pt)等の貴金属がコーティングされている。そして、酸化触媒42は、所定の温度下で多数の貫通孔に排気ガスを通すことにより、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する。
【0029】
DPF43は、セラミックス材料等からなる多孔質な部材によって円柱状等に形成され、軸方向に多数の小孔が設けられたハニカム構造のセル状筒体をなし、各小孔は、隣同士で交互に異なる端部が目封じ部材によって閉塞されている。そして、DPF43は、上流側から各小孔に流入する排気ガスを多孔質材料に通すことで粒子状物質(PM)を捕集し、排気ガスのみを隣の小孔を通じて下流側へと流出させる。
【0030】
酸化触媒42の上流側(排気ガス浄化装置41の上流側)には、燃料添加弁28と、排気温度検出装置36A(例えば、排気温度センサ)と、が設けられている。燃料添加弁28は、微粒子が堆積したDPF43を再生する際(粒子状物質を燃焼焼却する際)に、酸化触媒42内で排気ガスと反応させて排気ガスの温度を上昇させるための燃料を噴射する。また、酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側には、排気温度検出装置36B(例えば、排気温度センサ)が設けられている。
【0031】
DPF43の下流側には、排気温度検出装置36C(例えば、排気温度センサ)が設けられている。また、排気ガス浄化装置41内における、酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気圧力(排気管内圧力に相当)と、DPF43の下流側の排気管内圧力と、の差圧(圧力差)を検出する差圧検出装置35(例えば、差圧センサ)が設けられている。
【0032】
燃料添加弁28は、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)50からの制御信号にて駆動される。制御装置50は、CPU、RAM、ROM、タイマ、不図示のバックアップRAM等を備えた公知のものである。CPUは、ROMに記憶された各種プログラムやマップに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、バックアップRAMは、例えば、内燃機関10の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。また、RAMには、後述のように、DPF43が取り付けられていると判定された回数をカウントする正常カウンタ501と、DPF43が取り外されていると判定された回数をカウントする異常カウンタ502と、が設けられている。
【0033】
また、排気温度検出装置36Aは、酸化触媒42の上流側の排気管内の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、排気温度検出装置36Bは、酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側を流れる排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、排気温度検出装置36Cは、DPF43の下流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。差圧検出装置35は、酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気圧力(排気管内圧力に相当)と、DPF43の下流側の排気管内圧力と、の差圧に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0034】
制御装置50には、吸気通路11に設けられた吸入空気流量検出装置31(例えば、エアフローメーター)の検出信号、アクセル開度検出装置33の検出信号、回転検出装置34の検出信号、のそれぞれが入力されている。また、制御装置50には、上述した各排気温度検出装置36A、36B、36Cの検出信号、差圧検出装置35の検出信号が入力されている。
【0035】
そして制御装置50は、これらの検出装置からの検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出することができる。また、制御装置50は、検出した内燃機関10の運転状態や、アクセル開度検出装置33からの検出信号に基づいた運転者からの要求に応じて、各インジェクタ14A~14Dから内燃機関10のシリンダ内に噴射する燃料量や、燃料添加弁28から噴射する燃料量を制御する制御信号を出力する。そして、制御装置50(流量関連量検出装置に相当)は、各インジェクタ14A~14Dから噴射した毎秒当たりの燃料消費量(g/s)を算出して、RAMに時系列的に記憶する。
【0036】
燃料添加弁28から排気ガス中に噴射された燃料は、酸化触媒42によって排気ガス中に残った酸素との酸化反応が生じて燃焼し、その発熱により排気ガス温度が上昇する。この高温になった排気ガスによりDPF43の床温が上昇して、所定温度以上(例えば、590℃以上)になると、DPF43内に堆積した粒子状物質(PM)が燃焼焼却される。このような状態を所定の時間、維持することによってDPF43内に堆積した粒子状物質を燃焼させて除去し、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するというDPF43の捕集機能を回復(再生)させることができる。
【0037】
吸入空気流量検出装置31(例えば、吸気流量センサ)は、内燃機関10の吸気通路11に設けられて内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。アクセル開度検出装置33(例えば、アクセル開度センサ)は、運転者が操作するアクセルの開度(すなわち、運転者の要求負荷)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。回転検出装置34(例えば、回転センサ)は、例えば、内燃機関10のクランクシャフトの回転数(すなわち、エンジン回転数)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0038】
また、
図1に示す例では、制御装置50は、後述のように、DPF43が取り外された等のDPF43の異常を検出した際に点灯するフィルタ警告ランプ15の点灯/消灯が可能である。フィルタ警告ランプ15は、例えば、車両のインスツルメントパネル内に設けられている。
【0039】
また、
図2に示すように、内燃機関10において、酸化触媒42とDPF43を分離して別々に構成してもよい。つまり、
図1に示す排気ガス浄化装置41に替えて、酸化触媒42とDPF43とが、分離されて設けられている点で異なっている。その他は、
図1に示す内燃機関10の構成と同じ構成である。
【0040】
[燃料消費量・差圧特性]
ここで、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(正常状態)と、DPF43が取り外されている場合(異常状態)において、燃料消費量(g/s)(排気ガス流量に関連する流量関連量に相当する。)と差圧検出装置35により検出した差圧(kPa)とを内燃機関10で計測した結果の一例を
図3に基づいて説明する。
図3に示すように、DPF43が取り外されている状態(DPF無し)では、燃料消費量(g/s)の変化に対して差圧(kPa)は、ほとんど変化せず、ほぼ差圧ゼロ(kPa)の状態となり、差圧のばらつきがほとんど無い。
【0041】
一方、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている状態(DPF有り)では、燃料消費量(g/s)の増加に応じて差圧(kPa)も上下幅が約1(kPa)~約1.8(kPa)で増加している。また、差圧のばらつきは約0.7(kPa)~約5(kPa)となり、ばらつきが大きくなっている。尚、内燃機関10の停止中の場合(燃料消費量が「0」(g/s)の場合)では、DPF無し、DPF有り、のどちらも差圧は「0」(kPa)である。
【0042】
次に、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(正常状態)と、DPF43が取り外されている場合(異常状態)において、過渡試験モード(NRTCモード)で内燃機関10を運転して測定した燃料消費量(g/s)と、差圧検出装置35により検出した差圧(kPa)との測定結果の一例について
図4及び
図5に基づいて説明する。
図4に示すように、実線で示されるDPF43が取り付けられている場合の燃料消費量(g/s)と、破線で示されるDPF43が取り外されている場合の燃料消費量(g/s)は、ほぼ同じ燃料消費量で上昇又は下降して変化している。
【0043】
図5に示すように、実線で示されるDPF43が取り付けられている場合の、差圧検出装置35により検出した差圧(kPa)は、燃料消費量の変化にほぼ同期して上昇又は下降して変化している。一方、破線で示されるDPF43が取り外されている場合の、差圧検出装置35により検出した差圧(kPa)は、測定開始から約180秒経過するまで「0」(kPa)でほぼ一定であった。その後、約180秒経過した際に、差圧検出装置35の出力が「約5」(kPa)だけ高くなる側に「特性ズレ」が発生したため、DPF43が取り外されている場合の、差圧検出装置35により検出した差圧(kPa)は、「約5」(kPa)でほぼ一定であった。
【0044】
[燃料消費量と差圧の不偏分散]
次に、
図4に対応する亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(正常状態)と、DPF43が取り外されている場合(異常状態)の、それぞれの燃料消費量の統計的なばらつき度合を表す不偏分散V1(流量関連量ばらつき度合)について
図6に基づいて説明する。尚、DPF43が取り付けられている場合(正常状態)と、DPF43が取り外されている場合(異常状態)の、それぞれの燃料消費量は、約64msec~約128msec毎に、例えば、100msec毎に測定(算出)し、時系列的にRAMに記憶されている。そして、それぞれの燃料消費量の不偏分散V1は、所定時間毎に、例えば、約180秒毎(約3分毎)に下記式(1)によって算出される。
【0045】
V1=(ΣXj
2-(ΣXj)2/N)/(N-1) ・・・(1)
【0046】
ここで、Nは約180秒間に測定した燃料消費量(g/s)のデータ数である。Xjは、j番目に測定した燃料消費量のデータである。Σはjについて1~Nの加算を行うことを表している。尚、燃料消費量(g/s)は、内燃機関10のクランクシャフトの回転数と燃料噴射量から算出する。
【0047】
図6に示すように、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(DPF有り)と、DPF43が取り外されている場合(DPF無し)の、それぞれの燃料消費量の不偏分散V1は、ほぼ同じであった。例えば、測定開始時における燃料消費量の不偏分散V1は、0であり、測定開始から約180秒の時点における燃料消費量の不偏分散V1は、約0.45であり、約360秒の時点における燃料消費量の不偏分散V1は、約1.1であり、約540秒の時点における燃料消費量の不偏分散V1は、約0.7である。また、約720秒の時点における燃料消費量の不偏分散V1は、約0.45であり、約900秒の時点における燃料消費量の不偏分散V1は、約0.7であり、約1080秒の時点における燃料消費量の不偏分散V1は、約0.3である。
【0048】
次に、
図5に対応する亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(正常状態)と、DPF43が取り外されている場合(異常状態)の、それぞれの差圧検出装置35により検出した差圧の統計的なばらつき度合を表す不偏分散V2(差圧ばらつき度合)について
図7に基づいて説明する。尚、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(正常状態)と、DPF43が取り外されている場合(異常状態)の、それぞれの差圧は、燃料消費量の測定とほぼ同時に測定し、つまり、約64msec~約128msec毎に、例えば、100msec毎に測定し、時系列的にRAMに記憶されている。そして、それぞれの差圧の不偏分散V2は、所定時間毎、例えば、約180秒毎(約3分毎)に下記式(2)によって算出される。
【0049】
V2=(ΣYj
2-(ΣYj)2/N)/(N-1) ・・・(2)
【0050】
ここで、Nは約180秒間に測定した差圧のデータ数である。Yjは、j番目に測定した差圧のデータである。Σはjについて1~Nの加算を行うことを表している。
【0051】
図7に示すように、実線で示される亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(DPF有り)における、差圧検出装置35により検出した差圧の不偏分散V2は、180秒毎に燃料消費量の不偏分散V1の変化と同期して上昇又は下降して変化している。例えば、測定開始時における差圧の不偏分散V2は、0であり、測定開始から約180秒の時点における差圧の不偏分散V2は、約0.41であり、約360秒の時点における差圧の不偏分散V2は、約0.9であり、約540秒の時点における差圧の不偏分散V2は、約0.8である。また、約720秒の時点における差圧の不偏分散V2は、約0.68であり、約900秒の時点における差圧の不偏分散V2は、約1.1であり、約1080秒の時点における差圧の不偏分散V2は、約0.22である。
【0052】
また、
図7に示すように、破線で示されるDPF43が取り外されている場合(DPF無し)における、差圧検出装置35により検出した差圧の不偏分散V2は、測定開始から約360秒の時点まで、ほぼ0である。そして、差圧検出装置35の出力が5(kPa)だけ高くなる側に「特性ズレ」が発生したため、約360秒の時点における差圧の不偏分散V2は、例えば、約2.6であり、約540秒の時点から以降における差圧の不偏分散V2は、ほぼ0である。
【0053】
[燃料消費量と差圧の不偏分散の分散特性]
次に、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(正常状態)と、DPF43が取り外されている場合(異常状態)における、燃料消費量の不偏分散V1と差圧の不偏分散V2との分散特性の一例について
図8に基づいて説明する。
図8に示すように、この分散特性は、横軸を
図6に示す燃料消費量の不偏分散V1とし、縦軸を
図7に示す差圧の不偏分散V2とする。
【0054】
そして、上記
図6及び
図7に基づいて、測定開始から約180秒毎(約3分毎)における、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている場合(DPF有り)の燃料消費量の不偏分散V1と差圧の不偏分散V2との組み合わせ読み出し、黒四角印でプロットする。また、
図6及び
図7に基づいて、測定開始から約180秒毎(約3分毎)における、DPF43が取り外されている場合(DPF無し)の燃料消費量の不偏分散V1と差圧の不偏分散V2との組み合わせ読み出し、白四角印でプロットする。
【0055】
続いて、DPF43が取り付けられている(DPF有り)か否かを判定する後述の「第1フィルタ異常判定処理」(
図9参照)を実行する際に使用する燃料消費量の不偏分散V1の第1閾値Z1を、
図6に示す燃料消費量の不偏分散V1に基づいて決定する。具体的には、
図6に示すように、第1閾値Z1は、燃料消費量の不偏分散V1の最小値「約0.3」よりも大きい値で、且つ、次に最小値に近い燃料消費量の不偏分散V1の値「約0.45」よりも少し小さい値とする。例えば、燃料消費量の不偏分散V1の第1閾値Z1を、「0.4」とする。
【0056】
これにより、後述するDPF43が取り付けられている(DPF有り)か否かの判定において、誤判定を回避して、DPF43が取り付けられている(正常状態)か否かを確実に区別できる燃料消費量の不偏分散V1の値を第1閾値Z1として設定できる。従って、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1以上の場合において、DPF43が取り付けられている(DPF有り)か否かが判定される(
図9のステップS20参照)。
【0057】
そして、
図8に示すように、DPF43が取り付けられている正常状態か、DPF43が取り外されている異常状態かを判定する際に使用する差圧の不偏分散V2の第2閾値Z2を、
図7に示す差圧の不偏分散V2に基づいて決定する。具体的には、
図7に示すように、第2閾値Z2は、差圧の不偏分散V2の最小値「0」よりも大きい値で、且つ、DPF43が取り付けられている場合(DPF有り)における、差圧の不偏分散V2の最小値「約0.22」よりも少し小さい値とする。例えば、差圧の不偏分散V2の第2閾値Z2を、「0.2」とする。
【0058】
これにより、後述するDPF43が取り付けられている(DPF有り)か否かの判定において、誤判定を回避して、DPF43が取り付けられている(正常状態)か否かを確実に区別できる差圧の不偏分散V2の値を第2閾値Z2として設定できる。
【0059】
従って、
図8に示すように、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1である「0.4以上」の場合において、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2以上、即ち、差圧の不偏分散V2が「0.2以上」の領域には、DPF43が取り付けられている場合(DPF有り)を示す複数の黒四角印が配置されている。また、
図8に示すように、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1である「0.4以上」の場合において、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2未満、即ち、差圧の不偏分散V2が「0.2未満」の領域には、DPF43が取り外されている場合(DPF無し)を示す複数の白四角印が配置されている。
【0060】
尚、
図8において、燃料消費量の不偏分散V1が「約1.1」で、差圧の不偏分散V2が「約2.6」の位置に、DPF43が取り外されている場合(DPF無し)を示す白四角印が配置されている。これは、上記の通り、差圧検出装置35の出力が5(kPa)だけ高くなる側に「特性ズレ」が発生した時点における差圧の不偏分散V2である。
【0061】
これより、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1である「0.4以上」の場合において、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2以上、即ち、差圧の不偏分散V2が「0.2以上」の場合は、DPF43が取り付けられている状態(正常状態)であると判定可能である(
図9のステップS21参照)。一方、
図8に示すように、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1である「0.4以上」の場合において、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2未満、即ち、差圧の不偏分散V2が「0.2未満」の場合は、DPF43が取り外されている状態(異常状態)であると判定可能である(
図9のステップS21参照)。
【0062】
[第1フィルタ異常判定処理]
次に、上記のように構成された内燃機関10において、制御装置50によるDPF43の取り外しを検出する「第1フィルタ異常判定処理」の一例について
図9乃至
図12に基づいて説明する。従って、制御装置50は、DPF43が取り外されている状態を検出した場合に、DPF43が異常であると判定する。
【0063】
尚、制御装置50(判定装置)は、内燃機関10の運転中に、約64msec~約128msec毎に、例えば、100msec毎に、
図9及び
図10のフローチャートで示される制御処理を繰り返し実行する。
図9及び
図10にフローチャートで示されるプログラムは、制御装置50のROMに予め記憶されている。また、上記第1閾値Z1、第2閾値Z2の各値は、制御装置50のROMに予め記憶されている。
【0064】
図9に示すように、先ず、ステップS11において、制御装置50は、差圧検出装置35(
図1、
図2参照)が異常であるか否かを判定する。尚、制御装置50は、図示省略した別の処理において、差圧検出装置35そのものが異常(故障)であるか否かを判定しており、判定結果をRAMに記憶している。ステップS11では、その判定結果を利用する。ここで、「差圧検出装置35そのものが異常」とは、上述した差圧検出装置35の「特性ズレ」とは異なる異常であり、例えば、差圧検出装置35への配線が断線している等の異常である。
【0065】
そして、差圧検出装置35が異常であると判定した場合には(S11:YES)、制御装置50は、後述のステップS14に進む。一方、差圧検出装置35が異常でない、つまり、正常であると判定した場合には(S11:NO)、制御装置50は、ステップS12に進む。ステップS12において、制御装置50は、差圧学習が済んでいるか否かを判定する。
【0066】
尚、制御装置50は、図示省略した別の処理において、内燃機関10が停止時(即ち、差圧検出装置35によって検出される差圧が明らかに「0(kPa)」の状態)にて、差圧検出装置35からの検出信号を取り込む。そして、制御装置50は、差圧が「0(kPa)」の場合における検出値に基づいて、差圧学習値を算出して記憶し、差圧学習を行ったか否かを記憶している。ステップS12では、差圧学習を行ったか否かの結果を利用する。
【0067】
そして、差圧学習が済んでいない、つまり、差圧学習を行っていないと判定した場合には(S12:NO)、制御装置50は、後述のステップS14に進む。一方、差圧学習が済んでいる、つまり、差圧学習を行っていると判定した場合には(S12:YES)、制御装置50は、ステップS13に進む。ステップS13において、制御装置50は、回転検出装置34(
図1、
図2参照)が異常であるか否かを判定する。尚、制御装置50は、図示省略した別の処理において、回転検出装置34そのものが異常(故障)であるか否かを判定しており、判定結果をRAMに記憶している。ステップS13では、その判定結果を利用する。
【0068】
そして、回転検出装置34が異常であると判定した場合には(S13:YES)、制御装置50は、ステップS14に進む。ステップS14において、制御装置50は、DPF43が異常、つまり、DPF43が取り外されていると判定された回数をカウントする異常カウンタ502を初期化(この場合、「0」にリセット)する。また、制御装置50は、DPF43が正常である、つまり、DPF43が取り付けられていると判定された回数をカウントする正常カウンタ501を初期化(この場合、「0」にリセット)する。
【0069】
また、制御装置50は、測定した燃料消費量と差圧検出装置35により検出した差圧のそれぞれのデータ数NをRAMから読み出し、「0」を代入して、再度RAMに記憶し、初期化する。更に、DPF43の異常、つまり、DPF43が取り外されているか否かを判定するまで、燃料消費量と差圧との各データを収集したデータ収集時間を初期化(この場合、「0」にリセット)した後、当該処理を終了する。
【0070】
一方、回転検出装置34が異常でない、つまり、正常であると判定した場合には(S13:NO)、制御装置50は、ステップS15に進む。ステップS15において、制御装置50は、RAMからデータ数Nを読み出し、データ数Nに「1」加算して、再度RAMに記憶した後、ステップS16に進む。尚、制御装置50の起動時に、データ数Nには「0」が代入されて、初期化されている。
【0071】
ステップS16において、制御装置50は、前回の処理から今回の処理の間に消費された(シリンダ内に噴射された)燃料消費量(g/s)を算出して、RAMに記憶する。例えば、制御装置50は、回転検出装置34によって検出された内燃機関10のクランクシャフトの回転数と、インジェクタから内燃機関10のシリンダ内に噴射された燃料噴射量から燃料消費量(g/s)を算出して、今回の燃料消費量(g/s)としてRAMに時系列的に記憶する。また、制御装置50は、差圧検出装置35からの検出信号を取り込んで差圧(kPa)を求める。そして、制御装置50は、この求めた差圧(kPa)と上記差圧学習値(ステップS12参照)とに基づいて補正した差圧(kPa)を求めて、RAMに時系列的に記憶した後、ステップS17に進む。
【0072】
ステップS17において、制御装置50は、燃料消費量と差圧との各データを収集しているデータ収集時間をRAMから読み出し、所定の判定時間(例えば、約180秒(約3分))に達したか否かを判定する。つまり、制御装置50は、DPF43の異常、つまり、取り外されているか否かを判定するタイミングになったか否かを判定する。そして、データ収集時間が所定の判定時間に達していないと判定した場合には(S17:NO)、制御装置50は、当該処理を終了する。
【0073】
一方、データ収集時間が所定の判定時間に達したと判定した場合には(S17:YES)、制御装置50は、ステップS18に進む。ステップS18において、制御装置50は、RAMからデータ数Nを読み出し、時系列的に記憶した最新の燃料消費量(g/s)のデータからN個前の燃料消費量(g/s)のデータまでの各データを読み出し、上記式(1)により燃料消費量の不偏分散V1を算出して、RAMに記憶する。また、制御装置50は、RAMからデータ数Nを読み出し、時系列的に記憶した最新の差圧(kPa)のデータからN個前の差圧(kPa)のデータまでの各データを読み出し、上記式(2)により差圧の不偏分散V2を算出して、RAMに記憶した後、ステップS19に進む。
【0074】
ステップS19において、制御装置50は、データ数NをRAMから読み出し、「0」を代入して、再度RAMに記憶し、初期化する。また、制御装置50は、燃料消費量と差圧との各データを収集したデータ収集時間を初期化(この場合、「0」にリセット)した後、ステップS20に進む。ステップS20において、制御装置50は、上記ステップS18において算出した燃料消費量の不偏分散V1をRAMから読み出し、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1(
図8参照)以上であるか否か、例えば、「0.4」(
図8参照)以上であるか否かを判定する。
【0075】
そして、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1未満であると判定した場合には(S20:NO)、制御装置50は、当該処理を終了する。燃料消費量の不偏分散V1の第1閾値Z1は、誤判定を回避して、DPF43が取り付けられている(正常状態)か否かを確実に区別できる値に、種々の実験やシミュレーションにより設定されている(
図6参照)。
【0076】
一方、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1以上であると判定した場合には(S20:YES)、制御装置50は、ステップS21に進む。ステップS21において、制御装置50は、上記ステップS18において算出した差圧の不偏分散V2をRAMから読み出し、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2(
図8参照)以上であるか否か、例えば、「0.2」(
図8参照)以上であるか否かを判定する。
【0077】
そして、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2(例えば、「0.2」)以上であると判定した場合には(S21:YES)、制御装置50は、DPF43が取り付けられている(DPF有り)と判定してステップS22に進む。差圧の不偏分散V2の第2閾値Z2は、誤判定を回避して、DPF43が取り付けられている(正常状態)か否かを確実に区別できる値に、種々の実験やシミュレーションにより設定されている(
図7参照)。
【0078】
ステップS22において、制御装置50は、DPF43が取り付けられている(正常状態である)と判定された回数をカウントする正常カウンタ501のカウント値をRAMから読み出し、「1」加算して再度RAMに記憶する。また、制御装置50は、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定された回数をカウントする異常カウンタ502を初期化(この場合、「0」にリセット)した後、ステップS23に進む。
【0079】
ここで、DPF43が取り付けられている場合(正常状態)において、正常カウンタ501と異常カウンタ502がカウントするカウント値の一例について
図11及び
図12に基づいて説明する。
図11に示すように、正常カウンタ501のカウンタ値は、DPF43が取り付けられていると判定されるため(S21:YES)、実線で示すように、約180秒毎に、「1」ずつ加算されて、約540秒後に、正常積算閾値Z3の「3」に達している。
【0080】
一方、
図12に示すように、異常カウンタ502のカウンタ値は、DPF43が取り付けられていると判定されるため(S21:YES)、実線で示すように、約180秒毎に初期化され、約540秒後においても、異常カウンタ502のカウント値は、「0」である。尚、正常積算閾値Z3の値は、制御装置50のROMに予め記憶されている。
【0081】
図9に示すように、ステップS23において、制御装置50は、正常カウンタ501のカウント値、つまり、DPF43が取り付けられている(正常状態である)と判定された累積回数をRAMから読み出し、正常積算閾値Z3(所定の第2回数)(
図11参照)以上であるか否か、例えば、「3」(
図11参照)以上であるか否かを判定する。そして、正常カウンタ501のカウント値が正常積算閾値Z3未満であると判定された場合には(S23:NO)、制御装置50は、当該処理を終了する。尚、正常積算閾値Z3は、DPF43が取り付けられている(正常状態)か否かを確実に区別できる値として適切な値、例えば、「3」が設定されている(
図11参照)。
【0082】
一方、正常カウンタ501のカウント値が正常積算閾値Z3以上であると判定された場合には(S23:YES)、制御装置50は、DPF43が取り付けられている(正常状態である)と判定して、ステップS24に進む。ステップS24において、制御装置50は、正常フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、制御装置50は、正常カウンタ501のカウント値に「0」を代入して、初期化した後、当該処理を終了する。
【0083】
尚、正常フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、制御装置50は、図示省略した別の処理にて、正常フラグを「ON」に設定した際に、フィルタ警告ランプ15(
図1参照)を点灯している場合には、フィルタ警告ランプ15を消灯する。
【0084】
他方、上記ステップS21で、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2(例えば、「0.2」)未満であると判定した場合には(S21:NO)、制御装置50は、DPF43が取り付けられていない(DPF無し)、つまり、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定してステップS25に進む。
【0085】
図10に示すように、ステップS25において、制御装置50は、DPF43が取り付けられている(正常状態である)と判定された回数をカウントする正常カウンタ501を初期化(この場合、「0」にリセット)する。また、制御装置50は、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定された回数をカウントする異常カウンタ502のカウント値をRAMから読み出し、「1」加算して再度RAMに記憶した後、ステップS26に進む。
【0086】
ここで、DPF43が取り付けられていない(DPF無し)、つまり、DPF43が取り外されている場合(異常状態)において、正常カウンタ501と異常カウンタ502がカウントするカウント値の一例について
図11及び
図12に基づいて説明する。
図11に示すように、正常カウンタ501のカウンタ値は、DPF43が取り付けられていないと判定されるため(S21:NO)、破線で示すように、約180秒の時には、初期化されている。また、
図12に示すように、異常カウンタ502のカウント値は、DPF43が取り付けられていないと判定されるため(S21:NO)、破線で示すように、約180秒の時には、「1」加算されている。
【0087】
また、
図5に示すように、約180秒経過した際に、差圧検出装置35の出力が「約5」(kPa)だけ高くなる側に「特性ズレ」が発生したため、
図7に示すように、DPF43が取り外されているにもかかわらず、差圧の不偏分散V2が「約2.6」となった。その結果、
図11に示すように、正常カウンタ501のカウント値は、DPF43が取り外されているにもかかわらず、破線で示すように、約360秒の時には、「1」加算されている(S21:YES)。また、
図12に示すように、異常カウンタ502のカウント値は、DPF43が取り外されているにもかかわらず、破線で示すように、約360秒の時には、初期化されている。
【0088】
その後、
図11に示すように、正常カウンタ501のカウンタ値は、DPF43が取り付けられていないと判定されるため(S21:NO)、破線で示すように、約180秒毎に、初期化され、約900秒後においても、正常カウンタ501のカウント値は、「0」である。一方、
図12に示すように、異常カウンタ502のカウント値は、DPF43が取り付けられていないと判定されるため(S21:NO)、破線で示すように、約180秒毎に、「1」ずつ加算されて、約900秒後に、異常積算閾値Z4の「3」に達している。尚、異常積算閾値Z4の値は、制御装置50のROMに予め記憶されている。
【0089】
図10に示すように、ステップS26において、制御装置50は、異常カウンタ502のカウント値、つまり、DPF43が取り付けられていない(DPF無し)、つまり、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定された累積回数をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、異常カウンタ502のカウント値が、異常積算閾値Z4(所定の第1回数)(
図12参照)以上であるか否か、例えば、「3」(
図12参照)以上であるか否かを判定する。
【0090】
そして、異常カウンタ502のカウント値が異常積算閾値Z4未満であると判定された場合には(S26:NO)、制御装置50は、当該処理を終了する。尚、異常積算閾値Z4は、DPF43が取り外されている(異常状態)か否かを確実に区別できる値として適切な値、例えば、「3」が設定されている(
図12参照)。
【0091】
一方、異常カウンタ502のカウント値が異常積算閾値Z4以上であると判定された場合には(S26:YES)、制御装置50は、DPF43が取り付けられていない(DPF無し)、つまり、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定して、ステップS27に進む。ステップS27において、制御装置50は、異常フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、制御装置50は、異常カウンタ502のカウント値に「0」を代入して、初期化した後、当該処理を終了する。
【0092】
尚、異常フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、制御装置50は、図示省略した別の処理にて、異常フラグを「ON」に設定した際に、フィルタ警告ランプ15(
図1参照)を点灯する。従って、DPF43が、再度取り付けられるまで、フィルタ警告ランプ15は点灯される。
【0093】
ここで、制御装置50は、流量関連量検出装置、ばらつき度合取得装置、判定装置、第1判定部、第2判定部、異常回数初期化部、正常回数初期化部、の一例として機能する。
【0094】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係る内燃機関10では、制御装置50は、燃料消費量の不偏分散V1と、差圧検出装置35により検出した差圧の不偏分散V2と、に基づいてDPF43が取り外されているか否か、つまり、DPF43が異常であるか否かを判定する。これにより、燃料消費量の不偏分散V1と、差圧検出装置35による差圧の不偏分散V2とに基づいて、DPF43が取り外されている(異常)か否かを判定するため、差圧検出装置35による差圧の検出結果と燃料消費量の検出結果に製品ばらつきがあっても、判定結果に対するそれぞれの製品ばらつきの影響を抑制することができる。
【0095】
また、差圧検出装置35の出力に特性ズレが発生した場合であっても、制御装置50は、特性ズレが発生した差圧に基づいてDPF43が取り外されている(異常)か否かを判定するのではなく、所定の判定時間毎に、特性ズレが発生した差圧の不偏分散V2に基づいて、DPF43が取り外されている(異常)か否かを判定する。これにより、差圧検出装置35の出力に特性ズレが発生した場合であっても、所定の判定時間の経過後には、差圧の特性ズレは、差圧の不偏分散V2に影響しなくなるため、誤判定を抑制し、DPF43が取り外されている(異常)か否かを適切に判定することができる。
【0096】
また、燃料消費量の不偏分散V1が第1閾値Z1以上の場合に、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2以上か否かを判定することによって、燃料消費量が安定した際における差圧の不偏分散V2を判定することができる。その結果、燃料消費量が安定した際における差圧の不偏分散V2に基づいて、DPF43が取り付けられている(異常)か否かを判定することができ、DPF43が取り付けられている(異常)か否かの判定精度の向上を図ることができる。
【0097】
また、DPF43が取り付けられていると判定された回数をカウントする正常カウンタのカウント値が正常積算閾値Z3以上になった場合に、DPF43が取り付けられている旨を表す正常フラグがONに設定される。一方、DPF43が取り外されていると判定された回数をカウントする異常カウンタのカウント値が異常積算閾値Z4以上になった場合に、DPF43が取り外されている旨を表す異常フラグがONに設定される。これにより、差圧検出装置35の出力の特性ズレが発生しても、誤判定を適切に回避して、DPF43が取り外されている(異常)か否かを適切に判定することができる。
【0098】
[第2実施形態]
次に、本発明に係るフィルタ異常判定装置を具体化した第2実施形態について
図13及び
図14に基づいて説明する。尚、以下の説明において、第1実施形態に係るフィルタ異常判定装置を適用した内燃機関10、排気ガス浄化装置41、制御装置50の構成等と同一符号は、第1実施形態に係るフィルタ異常判定装置を適用した内燃機関10、排気ガス浄化装置41、制御装置50の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0099】
第2実施形態に係るフィルタ異常判定装置を適用した内燃機関10の構成及び制御処理等は、第1実施形態に係るフィルタ異常判定装置を適用した内燃機関10の構成及び制御処理とほぼ同じである。
【0100】
但し、制御装置50は、上記「第1フィルタ異常判定処理」に替えて、「第2フィルタ異常判定処理」を実行する点で異なっている。また、
図8に示す燃料消費量の不偏分散V1と差圧の不偏分散V2との分散特性に替えて、
図13に示す燃料消費量の不偏分散V1と差圧の不偏分散V2との分散特性を用いて、上記第1閾値Z1、第2閾値Z2、及び、取り付けられているDPF43に亀裂が生じているか否かを判定する第3閾値Z21が設定される点で異なっている。
【0101】
[燃料消費量と差圧の不偏分散の分散特性]
図13に示すように、燃料消費量の不偏分散V1と差圧の不偏分散V2との分散特性は、上記
図8に示す燃料消費量の不偏分散V1と差圧の不偏分散V2との分散特性とほぼ同じである。従って、DPF43が取り付けられている(正常状態)か否かを確実に区別できる燃料消費量の不偏分散V1の値「0.4」が第1閾値Z1として設定され、差圧の不偏分散V2の値「0.2」が第2閾値Z2として設定されている。
【0102】
更に、燃料消費量の不偏分散V1の値が「0.4」以上で、且つ、差圧の不偏分散V2の値が「0.2」以上の領域において、亀裂のない状態のDPF43が取り付けられている旨を表す複数の黒四角印がプロットされている領域と、これらの黒四角印がプロットされていない領域とを確実に区別できる燃料消費量の不偏分散V1の各値に対する差圧の不偏分散V2(差圧のばらつき度合)の第3閾値Z21が設定されている。尚、燃料消費量の不偏分散V1の各値に対する差圧の不偏分散V2の第3閾値Z21は、誤判定を回避して、亀裂が生じた亀裂有り状態のDPF43が取り付けられているか否かを確実に区別できる値に、種々の実験やシミュレーションによって設定される。
【0103】
従って、第3閾値Z21は、燃料消費量の不偏分散V1の値が「0.4」よりも大きくなるに従って、燃料消費量の不偏分散V1の各値に対する差圧の不偏分散V2の値が「0.2」よりも徐々に大きくなるように設定されている。この結果、第3閾値Z21と第2閾値Z2とによって区画される略三角形状の亀裂領域61内における差圧の不偏分散V2の値は、亀裂が生じた亀裂有り状態のDPF43が取り付けられた場合に、差圧検出装置35によって検出される差圧の不偏分散V2の値である。そして、亀裂領域61内における差圧の不偏分散V2の値が「0.2」に近づくにつれて、DPF43の亀裂状態は、亀裂が大きくなっている。
【0104】
[第2フィルタ異常判定処理]
次に、上記のように構成された内燃機関10において、制御装置50によるDPF43の取り外しを検出する「第2フィルタ異常判定処理」の一例について
図14に基づいて説明する。尚、第2フィルタ異常判定処理は、第1フィルタ異常判定処理とほぼ同じ処理であるが、ステップS21以降の処理が異なっているため、このステップS21以降の処理について
図14に基づいて説明する。また、上記第1閾値Z1、第2閾値Z2、及び、燃料消費量の不偏分散V1の各値に対する第3閾値Z21の各値は、制御装置50のROMに予め記憶されている。
【0105】
図14に示すように、上記ステップ21で、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2(例えば、「0.2」)以上であると判定した場合には(S21:YES)、制御装置50は、DPF43が取り付けられている(DPF有り)と判定してステップS31に進む。ステップS31において、制御装置50は、上記ステップS18において算出した燃料消費量の不偏分散V1と、差圧の不偏分散V2とをRAMから読み出し、差圧の不偏分散V2が、燃料消費量の不偏分散V1に対応する第3閾値Z21以上であるか否かを判定する。ここで、制御装置50は、第3判定部の一例として機能する。
【0106】
そして、差圧の不偏分散V2が、燃料消費量の不偏分散V1に対応する第3閾値Z21以上であると判定した場合には(S31:YES)、制御装置50は、亀裂の無い状態のDPF43が取り付けられている(亀裂無し、且つ、正常状態である)と判定して、ステップS32に進む。ステップS32において、制御装置50は、亀裂の無い状態のDPF43が取り付けられている(亀裂無し、且つ、正常状態である)と判定された回数をカウントする正常カウンタ501のカウント値をRAMから読み出し、「1」加算して再度RAMに記憶する。
【0107】
また、制御装置50は、亀裂の有る状態のDPF43が取り付けられている(亀裂有り、且つ、正常状態である)と判定された回数をカウントする不図示の亀裂カウンタを初期化(この場合、「0」にリセット)する。更に、制御装置50は、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定された回数をカウントする異常カウンタ502を初期化(この場合、「0」にリセット)する。その後、制御装置50は、上記ステップS23以降の処理を実行する。尚、正常積算閾値Z3の値、例えば、「3」は、制御装置50のROMに予め記憶されている。
【0108】
尚、正常フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、制御装置50は、図示省略した別の処理にて、正常フラグを「ON」に設定した際に、フィルタ警告ランプ15(
図1参照)を点灯している場合、又は、フィルタ警告ランプ15を、例えば、約0.5秒~1秒間隔で点滅している場合には、フィルタ警告ランプ15を消灯する。
【0109】
一方、上記ステップS31で、差圧の不偏分散V2が、燃料消費量の不偏分散V1に対応する第3閾値Z21未満であると判定した場合には(S31:NO)、制御装置50は、亀裂の有る状態のDPF43が取り付けられている(亀裂有り、且つ、正常状態である)と判定して、ステップS33に進む。ステップS33において、制御装置50は、亀裂の有る状態のDPF43が取り付けられている(亀裂有り、且つ、正常状態である)と判定された回数をカウントする不図示の亀裂カウンタのカウント値をRAMから読み出し、「1」加算して再度RAMに記憶する。
【0110】
また、制御装置50は、亀裂の無い状態のDPF43が取り付けられている(亀裂無し、且つ、正常状態である)と判定された回数をカウントする正常カウンタ501を初期化(この場合、「0」にリセット)する。更に、制御装置50は、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定された回数をカウントする異常カウンタ502を初期化(この場合、「0」にリセット)した後、ステップS34に進む。
【0111】
ステップS34において、制御装置50は、亀裂カウンタのカウント値、つまり、亀裂の有る状態のDPF43が取り付けられている(亀裂有り、且つ、正常状態である)と判定された累積回数をRAMから読み出し、亀裂積算閾値Z5以上であるか否か、例えば、「3」以上であるか否かを判定する。そして、亀裂カウンタのカウント値が亀裂積算閾値Z5未満であると判定された場合には(S34:NO)、制御装置50は、当該処理を終了する。尚、亀裂積算閾値Z5は、亀裂の有る状態のDPF43が取り付けられているか否かを確実に区別できる値として適切な値、例えば、「3」が設定されている。
【0112】
一方、亀裂カウンタのカウント値が亀裂積算閾値Z5以上であると判定された場合には(S34:YES)、制御装置50は、亀裂の有る状態のDPF43が取り付けられている(亀裂有り、且つ、正常状態である)と判定して、ステップS35に進む。ステップS35において、制御装置50は、亀裂フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、制御装置50は、亀裂カウンタのカウント値に「0」を代入して、初期化した後、当該処理を終了する。
【0113】
尚、亀裂フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、制御装置50は、図示省略した別の処理にて、亀裂フラグを「ON」に設定した際に、フィルタ警告ランプ15(
図1参照)を、例えば、約0.5秒~1秒間隔で点滅する。従って、亀裂の無い状態のDPF43が、再度取り付けられるまで、フィルタ警告ランプ15は、例えば、約0.5秒~1秒間隔で点滅される。
【0114】
他方、上記ステップ21で、差圧の不偏分散V2が第2閾値Z2(例えば、「0.2」)未満であると判定した場合には(S21:NO)、制御装置50は、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定してステップS36に進む。ステップS36において、制御装置50は、DPF43が取り外されている(異常状態である)と判定された回数をカウントする異常カウンタ502のカウント値をRAMから読み出し、「1」加算して再度RAMに記憶する。
【0115】
また、制御装置50は、亀裂の無い状態のDPF43が取り付けられている(亀裂無し、且つ、正常状態である)と判定された回数をカウントする正常カウンタ501を初期化(この場合、「0」にリセット)する。更に、制御装置50は、亀裂の有る状態のDPF43が取り付けられている(亀裂有り、且つ、正常状態である)と判定された回数をカウントする不図示の亀裂カウンタを初期化(この場合、「0」にリセット)する。その後、制御装置50は、上記ステップS26以降の処理を実行する。尚、異常積算閾値Z4の値、例えば、「3」は、制御装置50のROMに予め記憶されている。
【0116】
尚、異常フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、制御装置50は、図示省略した別の処理にて、異常フラグを「ON」に設定した際に、フィルタ警告ランプ15(
図1参照)を点灯する。従って、亀裂無し状態のDPF43が、再度取り付けられるまで、フィルタ警告ランプ15は点灯される。
【0117】
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係る内燃機関10では、第1実施形態に係る内燃機関10が奏する効果に加えて、制御装置50は、燃料消費量の不偏分散V1と、差圧検出装置35により検出した差圧の不偏分散V2と、に基づいて、亀裂の無い状態のDPF43と、亀裂の有る状態のDPF43とのうちのいずれが取り付けられているか否かを判定することができる。
【0118】
また、差圧検出装置35の出力に特性ズレが発生した場合であっても、所定の判定時間の経過後には、差圧の特性ズレは、差圧の不偏分散V2に影響しなくなるため、誤判定を抑制し、亀裂の無い状態のDPF43と、亀裂の有る状態のDPF43とのうちのいずれが取り付けられているか否かを適切に判定することができる。
【0119】
本発明のフィルタ異常判定装置は、前記第1実施形態及び第2実施形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、改良、追加、削除が可能である。尚、以下の説明において上記
図1~
図14の前記第1実施形態及び第2実施形態に係る内燃機関10等と同一符号は、前記第1実施形態及び第2実施形態に係る内燃機関10等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0120】
(A)前記第1実施形態及び第2実施形態では、排気ガス流量に関連する流量関連量として、燃料消費量(内燃機関10のシリンダ内に噴射または吸引される燃料量)を用いた例を説明したが、流量関連量は燃料消費量に限定されるものではなく、検出あるいは算出した排気ガス流量そのものや、内燃機関10が吸入する空気の流量である吸気流量等を吸入空気流量検出装置31等によって検出して用いてもよい。その場合は、燃料消費量の不偏分散V1に替えて、排気ガス流量の不偏分散や、吸気流量の不偏分散を用いてもよい。
【0121】
(B)前記第1実施形態及び第2実施形態では、統計的なばらつき度合として不偏分散を用いた例を説明したが、不偏分散に限定されるものではなく、標本分散、又は、標準偏差等を用いてもよい。
【0122】
(C)前記第1実施形態及び第2実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0123】
10 内燃機関
12 排気通路
35 差圧検出装置
41 排気ガス浄化装置
43 粒子状物質除去フィルタ(DPF)
50 制御装置