(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 3/36 20060101AFI20220308BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
E02F3/36 Z
E02F3/36 C
E02F9/00 H
(21)【出願番号】P 2018164775
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 良昭
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-068671(JP,A)
【文献】特開2018-071258(JP,A)
【文献】特開2003-176548(JP,A)
【文献】特開2000-273905(JP,A)
【文献】特開2009-215701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏可能なアームと、該アームの先端に回動可能に連結される作業装置と、アームの先端両側に回動可能に連結される一対のアイドラリンクと、該アイドラリンクに一端が連結される作業装置用油圧シリンダと、該作業装置用油圧シリンダの先端に一端が連結されて他端に上記作業装置が連結される作業装置側リンクとを有する油圧ショベルにおいて、
上記アイドラリンクは、
上記作業装置用油圧シリンダに連結されるシリンダ側ボス部と、
上記アームの先端に連結されるアーム側ボス部と、
互いに間隔を空けて設けられ、上記シリンダ側ボス部及び上記アーム側ボス部を連結する一対のリンク板とを備え、
上記一対のリンク板の間には、該一対のリンク板を連結すると共に、上記作業装置に接続される油圧ホース又は電気ケーブルをガイドするガイドリブが一体に形成されている
ことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧ショベルにおいて、
少なくとも上記一対のリンク板と上記ガイドリブとが鋳造で一体成形されている
ことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の油圧ショベルにおいて、
上記ガイドリブは、上記シリンダ側ボス部及び上記アーム側ボス部から延び、それぞれの先端は、上記リンク板の対向する二辺に向かってそれぞれ延びている
ことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の油圧ショベルにおいて、
上記アーム側ボス部から延びるガイドリブは、上記シリンダ側ボス部から延びるガイドリブよりも長い
ことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の油圧ショベルにおいて、
上記アーム側ボス部から延びるガイドリブにおける上記油圧ホース又は電気ケーブルが接触する面は、湾曲する油圧ホース又は電気ケーブルに沿って膨出するように湾曲し、
上記シリンダ側ボス部から延びるガイドリブにおける上記油圧ホース又は電気ケーブルが接触する面は、湾曲する油圧ホース又は電気ケーブルに沿って凹むように湾曲している
ことを特徴とする油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起伏可能なアームと、アームの先端両側に回動可能に連結される一対のアイドラリンクと、アイドラリンクに一端が連結される作業装置用油圧シリンダと、この作業装置用油圧シリンダの先端に一端が連結されて他端に作業装置が連結される作業装置側リンクとを有する油圧ショベルに関し、特にそのアイドラリンクによって作業装置に接続した油圧ホース又は電気ケーブルをガイドする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の油圧ショベルのアタッチメントの先端に設けられる作業装置の油圧駆動部への油圧ホースは、アーム先端部のアイドラリンク側面に配置するのが一般的である。この場合、作業中に油圧ホースが損傷しないように、ホースガイドを設けて油圧ホースの動きを規制することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の作業機では、アイドラリンクの内側面にコ字状に折り曲げた丸棒の両端を溶接したホースガイドを設け、このホースガイドとアイドラリンクの内側面との間に油圧ホースを通してガイドするようにしている。
【0004】
また、特許文献2の油圧ショベルでは、アイドラリンクの外側面に溶接した台座に支持ピンを設け、この支持ピンに片持ち状態で金属板を折り曲げたホースガイドを回動可能に設け、このホースガイドに油圧ホースを通してガイドするようにしている。
【0005】
さらに、特許文献3のように、アイドラリンクの外側面に支持板を溶接し、この支持板に電装ケーブルを保持するカバー本体をボルトアップする作業機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-97347号公報
【文献】特開2000-110198号公報
【文献】特開2017-25658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の作業機では、アーム外側面とアイドラリンク内側面との間の狭い領域にコ字状に折り曲げたホースガイドを設けるのは難しいという問題がある。また、丸棒と油圧ホースとが線接触で擦れることになるので、特に油圧脈動が発生しやすいブレーカ作業等では、早期に油圧ホースの摩耗が進行するという問題がある。さらに、アイドラリンクに丸棒の両端をそれぞれ溶接しているので、アイドラリンクを構成する鋼板への溶接による熱影響が発生し、強度が低下するおそれがある。
【0008】
また特許文献2のものでは、比較的大きく移動するアイドラリンク外側へホースガイドを追加しているので、幅方向に飛び出したホースガイドが障害物に接触して損傷するおそれがある。また、アイドラリンクに台座を溶接する必要があり、アイドラリンクを構成する鋼板への溶接による熱影響が発生し、強度が低下するおそれもある。
【0009】
さらに特許文献3の構造を油圧ホースに適用したとしても、支持板をアイドラリンクの外側面に溶接しなければならず、また、鋼板カバーを取り付けているボルトが幅方向に飛び出しているので、このボルト等が破損するおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶接等を行わずに、障害物によって破損しないように、油圧ホースを確実に保護できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、アイドラリンクの内側に油圧ホースを通すようにした。
【0012】
具体的には、第1の発明では、起伏可能なアームと、該アームの先端に回動可能に連結される作業装置と、アームの先端両側に回動可能に連結される一対のアイドラリンクと、該アイドラリンクに一端が連結される作業装置用油圧シリンダと、該作業装置用油圧シリンダの先端に一端が連結されて他端に上記作業装置が連結される作業装置側リンクとを有する油圧ショベルを前提とする。
【0013】
そして、上記アイドラリンクは、
上記作業装置用油圧シリンダに連結されるシリンダ側ボス部と、
上記アームの先端に連結されるアーム側ボス部と、
互いに間隔を空けて設けられ、上記シリンダ側ボス部及び上記アーム側ボス部を連結する一対のリンク板とを備え、
上記一対のリンク板の間には、これら一対のリンク板を連結すると共に、上記作業装置に接続される油圧ホース又は電気ケーブルをガイドするガイドリブが一体に形成されている。
【0014】
上記の構成によると、アイドラリンクの一対のリンク板の間の隙間に油圧ホース又は電気ケーブルを通すことで、作業装置の作業中等に油圧ホース又は電気ケーブルが損傷しにくい。また、一対のリンク板の間の間隔は、特許文献1のようにコ字状の部材を溶接する場合に比べて比較的容易に設定できる。さらに、ガイドリブをリンク板に一体で成形すれば、アイドラリンクに台座等を溶接する必要がなく、アイドラリンクを構成する鋼板への溶接による熱影響が発生せず、強度が低下しない。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、
少なくとも上記一対のリンク板と上記ガイドリブとが鋳造で一体成形されている。
【0016】
上記の構成によると、ガイドリブをリンク板に鋳造で一体成形すれば、リンク板の形成が容易で強度も確保しやすい。なお、ガイドリブと一対のリンク板とを鋳造で一体成形したものにシリンダ側ボス部及びアーム側ボス部を溶接するようにしてもよい。
【0017】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記ガイドリブは、上記シリンダ側ボス部及び上記アーム側ボス部から延び、それぞれの先端は、上記リンク板の対向する二辺に向かってそれぞれ延びている。
【0018】
上記の構成によると、一対のガイドリブの間のスペースに油圧ホース又は電気ケーブルを確保してガイドリブに接触しないように通しやすい。また、ガイドリブの先端を長手方向中央にできるだけ近付けることもでき、一対のリンク板の間に隙間を設けたことによるアイドラリンクの強度低下を軽減しやすい。
【0019】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記アーム側ボス部から延びるガイドリブは、上記シリンダ側ボス部から延びるガイドリブよりも長い構成とする。
【0020】
上記の構成によると、アイドラリンクを回動させたときに周方向の移動量の少ない側のアーム側ボス部の方のガイドリブを長めにすることで、アイドラリンクの強度を確保しながら、油圧ホース又は電気ケーブルができるだけガイドリブに接触しないようにすることができる。
【0021】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
上記アーム側ボス部から延びるガイドリブにおける上記油圧ホース又は電気ケーブルが接触する面は、湾曲する油圧ホース又は電気ケーブルに沿って膨出するように湾曲し、
上記シリンダ側ボス部から延びるガイドリブにおける上記油圧ホース又は電気ケーブルが接触する面は、湾曲する油圧ホース又は電気ケーブルに沿って凹むように湾曲している。
【0022】
上記の構成によると、油圧ホース又は電気ケーブルがガイドリブの湾曲面に面で接触するので、油圧ホース又は電気ケーブルが痛みにくい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、一対のリンク板の間に、これら一対のリンク板を連結すると共に、作業装置に接続される油圧ホース又は電気ケーブルをガイドするガイドリブを形成したことにより、アイドラリンクそのものにホースガイド機能を付加し、溶接等を行わずに、障害物によって破損しないように、油圧ホースを確実に保護できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明の実施形態に係るアイドラリンクを示す側面図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係るアイドラリンクを示す平面図である。
【
図2】ブレーカシリンダを延ばしたときの、アーム先端及びブレーカを示す側面図である。
【
図3】ブレーカシリンダを縮めたときの、アーム先端及びブレーカを示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図4は本発明の実施形態の油圧ショベル1を示し、この油圧ショベル1は、例えば、走行可能なクローラ等を有する下部走行体2と、下部走行体2に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、この上部旋回体3に起伏可能に支持されたアタッチメント4とを備えている。
【0027】
アタッチメント4は、例えば、上部旋回体3に支持される下部ブーム5と、この下部ブーム5を起伏可能に支持する下部シリンダ6と、下部ブーム5の先端に連結されるアーム8と、アーム8を起伏可能に支持するアームシリンダ7と、アーム8の先端に回動可能に連結される作業装置としてのブレーカ9とを備えている。ブレーカ9の基端側には、ブレーカリンク10の一端10aが連結され、このブレーカリンク10の他端10bには、アーム8の先端の左右両側に、一端がそれぞれ回動可能に連結された一対のアイドラリンク11が連結されている。ブレーカリンク10の他端10bとアイドラリンク11の他端とが作業装置用油圧シリンダとしてのブレーカシリンダ12のロッド12aの先端に連結されている。 そして、
図1A~
図1Cに示すように、アイドラリンク11は、アーム8の先端に連結されるアーム側ボス部11aと、ブレーカシリンダ12に連結されるシリンダ側ボス部11bとを備えている。そして、アーム側ボス部11a及びシリンダ側ボス部11bは、一対のリンク板11cで連結されている。一対のアイドラリンク11は、左右同じ形状となっている。
【0028】
一対のリンク板11cの間には、一対のリンク板11cを連結すると共に、ブレーカ9に接続される油圧ホース13をガイドするガイドリブ11d,11eが一体に形成されている。本実施形態では、アーム側ボス部11a及びシリンダ側ボス部11b並びに一対のリンク板11c及びガイドリブ11d,11eが鋳造で一体成形されている。なお、一対のリンク板11c及びガイドリブ11d,11eを鋳造で一体成形し、これにアーム側ボス部11a及びシリンダ側ボス部11bを溶接してもよい。この溶接部は、比較的剛性の高い部分であるので、比較的溶接熱による悪影響を受けにくい。
【0029】
図2に示すように、油圧ホース13は、ブレーカ9に対して供給側と排出側とに対応させて左右に一対設けられている。これら一対の油圧ホース13は、図示しない上部旋回体3に設けた油圧バルブから延び、アーム8の左右両側面を通ってアーム8の先端側の左右外側面に設けたクランプ14にそれぞれ固定されている。そして、クランプ14から先は、一対のガイドリブ11d,11eの間を通ってブレーカ9の基端側に設けたホース保護ブラケット15を通り、先端がブレーカ9のカップラー9aに接続されている。
【0030】
一対のガイドリブ11d,11eは、アーム側ボス部11a及びシリンダ側ボス部11bから延び、それぞれの先端は、リンク板11cの対向する二辺(
図1Aの上下の辺)に向かってそれぞれ延びている。このため、一対のガイドリブ11d,11eの間のスペースに油圧ホース13をガイドリブ11d,11eに接触しないように通しやすくなっている。また、
図1Aに拡大して示すように、油圧ホース13を通す空間を確保しながらも、その先端を(特に一方のガイドリブ11dの先端を)長手方向中央にできるだけ近付けることもでき、アイドラリンクの強度を確保しやすい。
【0031】
しかも、
図2及び
図3に示すように、ガイドリブ11d,11eにおける油圧ホース13が接触する面は、油圧ホース13の湾曲する形状に合わせて湾曲している。具体的には、アーム側ボス部11a側のガイドリブ11dは、油圧ホース13に向かって膨らむように湾曲し、シリンダ側ボス部11b側のガイドリブ11eは、膨らんだ油圧ホース13の形状に沿うように油圧ホース13から離れる方向に凹むように湾曲している。
【0032】
アーム側ボス部11aから延びるガイドリブ11dは、シリンダ側ボス部11bから延びるガイドリブ11eよりも長い。すなわち、アイドラリンク11を回動させたときに油圧ホース13の周方向の移動量の少ない側のアーム側ボス部11aの方のガイドリブ11dを長めにすることで、アイドラリンク11の強度を確保しながら、油圧ホース13ができるだけガイドリブ11d,11eに接触しないようにすることができる。
【0033】
本実施形態では、ガイドリブ11d,11eをリンク板11cに鋳造で一体成形しているので、アイドラリンク11に台座等を溶接する必要がなく、アイドラリンク11を構成する鋼板への溶接による熱影響が発生せず、強度が低下しない。
【0034】
また、一対のリンク板11cの間の間隔は、比較的自由に設定でき、ガイドリブ11d,11eの間に油圧ホース13を通せばよいので、特許文献1のようにコ字状に折り曲げた部材を溶接する場合に比べてスペースを確保しやすい。
【0035】
また、一対のアイドラリンク11は、左右同じ形状としたので、組付時に左右で同じ部品を使うことができ、組付が容易である。
【0036】
そして、
図2及び
図3に示すように、油圧ホース13を介して作動油を供給及び排出することで、ブレーカシリンダ12のロッド12aを伸縮させてブレーカ9を起伏させたときに、油圧ホース13が所定の範囲で動くが、この油圧ホース13は、ガイドリブ11d,11eの湾曲面に面で接触するので、本実施形態のように油圧脈動の生じやすい油圧ホース13であっても接触による痛みが発生しにくい。
【0037】
また、アイドラリンク11の一対のリンク板11cの間の隙間に油圧ホース13を通しているので、作業装置の作業中等に作業物に接触して油圧ホース13が損傷するのが避けられる。
【0038】
したがって、本実施形態に係る油圧ショベル1によると、一対のリンク板11cの間に、これら一対のリンク板11cを連結すると共に、ブレーカ9に接続される油圧ホース13をガイドするガイドリブ11d,11eを形成したことにより、アイドラリンク11そのものにホースガイド機能を付加し、障害物によって破損しないように、油圧ホース13を確実に保護できるようにすることができる。
【0039】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0040】
すなわち、実施形態では、アーム8の先端に作業装置としてブレーカ9を用いているが、破砕装置、圧砕装置、グラブバケット、リフティングマグネットなどでもよく、電動の作業装置であれば、電気ケーブルをアイドラリンク11の一対のリンク板11cの間の隙間に通すとよい。
【0041】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 アタッチメント
5 下部ブーム
6 下部シリンダ
7 アームシリンダ
8 アーム
9 ブレーカ(作業装置)
9a カップラー
10 ブレーカリンク
10a 一端
10b 他端
11 アイドラリンク
11a アーム側ボス部
11b シリンダ側ボス部
11c リンク板
11d,11e ガイドリブ
12 ブレーカシリンダ(作業装置用油圧シリンダ)
12a ロッド
13 油圧ホース
14 クランプ
15 保護ブラケット