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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】シャフト部材の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/10 20060101AFI20220308BHJP
   B21J 3/00 20060101ALI20220308BHJP
   B21K 1/06 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B21J5/10 Z
B21J3/00
B21K1/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018183967
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049537
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】市川 慧太
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108273953(CN,A)
【文献】特開昭56-062638(JP,A)
【文献】特開2013-035055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/10
B21J 3/00
B21K 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の端面で開口する孔部と前記孔部の周囲に形成された縮径部とを含む金属製のシャフト部材の製造装置であって、
前記シャフト部材の外周面を成形する型面を含むダイスと、
前記孔部を形成するように前記ダイス内に配置される孔開けパンチと、
前記ダイスおよび前記孔開けパンチに対してワークを押し込む押圧パンチとを備え、
前記孔開けパンチの外周面には、外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように複数のディンプルが間隔をおいて配設されているシャフト部材の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシャフト部材の製造装置において、
前記シャフト部材は、前記縮径部の前記一方の端面とは反対側に形成されたテーパ部を含み、
前記ダイスの前記型面は、前記縮径部の外周面を成形する縮径部成形面と、前記テーパ部の外周面を成形するテーパ部成形面とを含み、
前記孔開けパンチの前記外周面は、前記縮径部成形面と前記テーパ部成形面との境界と対向する位置を跨ぐように形成された加工面を含み、前記複数のディンプルは、前記加工面に配設されているシャフト部材の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシャフト部材の製造装置において、
前記シャフト部材の前記縮径部は、前記一方の端面側に形成された第1縮径部と、前記第1縮径部よりも大径であると共に前記第1縮径部よりも前記シャフト部材の他方の端面側に形成された第2縮径部とを含み、
前記シャフト部材の前記テーパ部は、前記シャフト部材の軸方向における前記第1縮径部と前記第2縮径部との間に形成された第1テーパ部と、前記第2縮径部の前記他方の端面側に形成された第2テーパ部とを含み、
前記ダイスの前記縮径部成形面は、前記第1縮径部の外周面を成形する第1縮径部成形面と、前記第2縮径部の外周面を成形する第2縮径部成形面とを含み、
前記ダイスの前記テーパ部成形面は、前記第1テーパ部の外周面を成形する第1テーパ部成形面と、前記第2テーパ部の外周面を成形する第2テーパ部成形面とを含み、
前記孔開けパンチの前記加工面は、前記第2縮径部成形面と前記第2テーパ部成形面との境界と対向する位置を跨ぐように形成された第1加工面と、前記第1縮径部成形面と前記第1テーパ部成形面との境界と対向する位置を跨ぐように形成された第2加工面とを含み、前記複数のディンプルは、前記第1および第2加工面に配設されているシャフト部材の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシャフト部材の製造装置において、
前記孔開けパンチの前記外周面は、前記孔開けパンチの軸方向における前記第1加工面と前記第2加工面との間に形成された前記第1および第2加工面よりも小径の第1逃げ面と、前記第2加工面の前記孔開けパンチの基端側に形成された前記第2加工面よりも小径の第2逃げ面とを含むシャフト部材の製造装置。
【請求項5】
請求項2に記載のシャフト部材の製造装置において、
前記シャフト部材の前記縮径部は、前記一方の端面側に形成された第1縮径部と、前記第1縮径部よりも大径であると共に前記第1縮径部よりも前記シャフト部材の他方の端面側に形成された第2縮径部とを含み、
前記シャフト部材の前記テーパ部は、前記シャフト部材の軸方向における前記第1縮径部と前記第2縮径部との間に形成された第1テーパ部と、前記第2縮径部の前記他方の端面側に形成された第2テーパ部とを含み、
前記ダイスの前記縮径部成形面は、前記第1縮径部の外周面を成形する第1縮径部成形面と、前記第2縮径部の外周面を成形する第2縮径部成形面とを含み、
前記ダイスの前記テーパ部成形面は、前記第1テーパ部の外周面を成形する第1テーパ部成形面と、前記第2テーパ部の外周面を成形する第2テーパ部成形面とを含み、
前記孔開けパンチの前記加工面は、前記第1縮径部成形面と前記第1テーパ部成形面との境界と対向する位置および前記第2縮径部成形面と前記第2テーパ部成形面との境界と対向する位置の双方を跨ぐように形成されているシャフト部材の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシャフト部材の製造装置において、
前記孔開けパンチの前記外周面は、前記加工面の前記孔開けパンチの基端側に形成された前記加工面よりも小径の逃げ面を含むシャフト部材の製造装置。
【請求項7】
少なくとも一方の端面で開口する孔部と前記孔部の周囲に形成された縮径部とを含む金属製のシャフト部材の製造方法であって、
前記シャフト部材の外周面を成形するダイス内に配置される孔開けパンチの外周面に外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように複数のディンプルを配設しておき、
前記ダイスおよび前記孔開けパンチに対してワークを押圧パンチにより押し込んで前記シャフト部材を製造するシャフト部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも一方の端面で開口する孔部と当該孔部の周囲に形成された縮径部とを含む金属製のシャフト部材の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カップ状成形品の押出成形方法として、金型(ダイス)のキャビティ内に素材をセットすると共に当該キャビティ内にその上部の潤滑油供給路から潤滑油を注入した状態で上方からパンチを下降させて素材(ワーク)を押し出すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法に用いられる金型の潤滑油供給路には、チェックバルブが設けられており、当該チェックバルブは、成形中にパンチの下降によって素材とキャビティ底面との間に形成される空間内の潤滑油の圧力が上昇することで開弁する。これにより、カップ状成形品が成形される際、潤滑油は、キャビティの下部の潤滑油排出路から排出される。また、成形終了後には、パンチの上昇によって潤滑油の圧力が低下することでチェックバルブが閉弁する。これにより、パンチの上昇に際して、成形後の素材はキャビティ内に負圧保持され、パンチ側に付着することなくキャビティ内に残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平07-22798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の押出成形方法によるカップ状成形品の成形に際しては、成形中に潤滑油がキャビティ外に排出されることで、潤滑油の不足によりワークと金型との間の摩擦が大きくなり、ワークが金型に付着してしまうことがある。このため、上記従来の押出成形方法を採用した場合、成形荷重を増加させざるを得ず、金型の寿命が短くなったり、ダイスからのワークの取り出しが困難になったりするおそれがある。従って、上記従来の押出成形方法を応用しても、少なくとも一方の端面で開口する孔部と当該孔部の周囲に形成された縮径部とを含むシャフト部材を製造することは困難である。
【0005】
そこで、本開示は、製造装置の高寿命化やワークの取り出し性を良好に確保しつつ、少なくとも一方の端面で開口する孔部と前記孔部の周囲に形成された縮径部とを含む金属製のシャフト部材を短工程で製造可能とすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシャフト部材の製造装置は、少なくとも一方の端面で開口する孔部と前記孔部の周囲に形成された縮径部とを含む金属製のシャフト部材の製造装置であって、前記シャフト部材の外周面を成形する型面を含むダイスと、前記孔部を形成するように前記ダイス内に配置される孔開けパンチと、前記ダイスおよび前記孔開けパンチに対してワークを押し込む押圧パンチとを含み、前記孔開けパンチの外周面に、外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように複数のディンプルが間隔をおいて配設されているものである。
【0007】
本開示のシャフト部材の製造装置は、シャフト部材の外周面を成形する型面を含むダイスと、当該シャフト部材の孔部を形成するようにダイス内に配置される孔開けパンチとを含むものであり、一工程でワークに縮径部と孔部とを形成可能なものである。そして、孔開けパンチの外周面には、外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように複数のディンプルが間隔をおいて配設されている。これにより、ワークの成形に際して、孔開けパンチの外周面と、ダイスの型面に当たって孔開けパンチに向けて流動する金属との間に充分な量の潤滑油を確保することが可能となる。従って、ワーク(金属)と孔開けパンチの外周面との摩擦を小さくし、成形荷重を低下させると共にワークの孔開けパンチへの付着を良好に抑制することができる。この結果、特に孔開けパンチの高寿命化やダイスおよび孔開けパンチからのワークの取り出し性を良好に確保しつつ、孔部およびその周囲の縮径部を含むシャフト部材を短工程で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の製造装置を用いて製造されるシャフト部材を示す断面図である。
図2図1のシャフト部材の半製品を示す断面図である。
図3図1のシャフト部材の製造手順を示す説明図である。
図4】本開示のシャフト部材の製造装置を示す部分断面図である。
図5】本開示のシャフト部材の製造装置の要部を示す部分断面図である。
図6】本開示のシャフト部材の製造工程を説明するための部分断面図である。
図7】本開示のシャフト部材の製造工程を説明するための部分断面図である。
図8】本開示のシャフト部材の製造工程を説明するための部分断面図である。
図9】本開示の他のシャフト部材の製造装置の要部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の製造装置を用いて製造されるシャフト部材10を示す断面図である。同図に示すシャフト部材10は、金属(鉄合金)により形成されており、変速機のドライブピニオンシャフトあるいはカウンタシャフトとして利用されるものである。図示するように、シャフト部材10は、押出成形(冷間鍛造)により中空に形成されており、円筒状のシャフト本体100と、当該シャフト本体100の一方の端面(図1における左側の端面)および他方の端面(図1における右側の端面)で開口する断面円形状の孔部(貫通孔)10hとを含む。
【0011】
シャフト本体100には、孔部10hの周囲で上記一方の端面から他方の端面に向けて延びる第1縮径部101と、孔部10hの周囲かつ第1縮径部101の他方の端面側に位置する第2縮径部102とが形成されている。第1縮径部101の外径は、シャフト本体100の外径よりも小さく、第2縮径部102の外径は、第1縮径部101の外径よりも大きく、かつシャフト本体100の外径よりも小さい。また、第1縮径部101と第2縮径部102とのシャフト部材10の軸方向における間には、第2縮径部102から第1縮径部101に向かうにつれて先細になる第1テーパ部103が形成されており、第2縮径部102の上記他方の端面側には、当該第2縮径部102から当該他方の端面に向かうにつれて拡径する第2テーパ部104が形成されている。更に、シャフト本体100には、第1テーパ部103から第2テーパ部104まで延在するスプラインSPが形成されている。また、シャフト本体100には、第2テーパ部104よりも上記他方の端面側に位置するように拡径部105が形成されており、当該拡径部105には、ホブを用いて図示しないギヤ歯(例えば、はす歯)が形成される。
【0012】
図2は、シャフト部材10の製造手順を示す説明図である。シャフト部材10の原材料となる金属棒材は、ステップS0にて図示しないコイルから切り出される。当該金属棒材には、一方の端面を矯正する端面加工(ステップS1)が施され、それによりワークWが得られる。次いで、ワークWには、上記第1および第2縮径部101,102に対応した部分を形成する絞り加工と、当該ワークWの両端面への穴入れとを同時に行う複合成形(ステップS2)が施され、それによりシャフト部材10の半製品5が得られる。
【0013】
半製品5は、図3に示すように、丸棒状の本体50と、本体50の一方の端面(図3における左側の端面)のみで開口する孔部5haと、本体50の他方の端面(図3における右側の端面)のみで開口する孔部5hbと、孔部5haの周囲で上記一方の端面から他方の端面に向けて延びる第1縮径部51と、孔部5haの周囲かつ第1縮径部51の他方の他面側に形成された第2縮径部52と、第1縮径部51と第2縮径部52との本体50の軸方向における間に形成された第1テーパ部53と、第2縮径部52の上記他方の端面側に形成された第2テーパ部54とを含むものである。半製品5において、第1縮径部51の外径は、本体50の外径より小さく、第2縮径部52の外径は、第1縮径部51の外径よりも大きく、かつ本体50の外径よりも小さい。かかる半製品5に対しては、本体50に拡径部105に対応した部分を形成する据込み加工(ステップS3)、孔部5ha,5hbを深くする深穴加工(ステップS4)、孔部5ha,5hbを連通させる抜き加工(ステップS5)、据込み加工(ステップS6)、およびスプライン加工(ステップS7)が順次施され、それにより上述のシャフト部材10が得られる。
【0014】
図4は、ワークWから半製品5を得るための上記ステップS2における複合成形に用いられる本開示の製造装置としての押出成形装置1を示す部分断面図である。同図に示すように、押出成形装置1は、互いに対向するように配置されるパンチユニット2およびダイスユニット3を含む。パンチユニット2は、図示するように、ダイスユニット3に対して移動可能な中空のスライダ20と、丸棒状の押圧パンチ21と、ワーク挿入孔22を含む筒状のワーク保持部材23と、円筒状のエジェクタ24と、エジェクタ駆動機構25とを含む。
【0015】
本実施形態において、パンチユニット2のスライダ20は、押圧パンチ21の軸方向(図4におけるX方向)に沿ってダイスユニット3に対して進退移動自在かつ当該軸方向と直交する方向(図4におけるY方向)に沿ってダイスユニット3に対して接近離間自在である。スライダ20は、図示しない加圧駆動ユニットから印加される荷重(成形荷重)によりダイスユニット3に対して押圧されると共に、当該加圧駆動ユニットによりX方向に沿ってダイスユニット3から離間させられる。また、加圧駆動ユニットは、スライダ20をダイスユニット3からX方向に離間させた状態でY方向に沿ってダイスユニット3に対して接近離間させることができる。押圧パンチ21は、ワークWの外径よりも小さく、かつ半製品5の孔部5haの設計上の内径と概ね同一の外径を有し、先端がスライダ20の一方の開放端側(図4における右端側)に位置するように保持ブロックを介して当該スライダ20の内部に固定される。ワーク挿入孔22は、ワークWの外径よりも僅かに大きい内径を有する貫通孔であり、ワーク保持部材23は、スライダ20の上記一方の開放端内に固定される。
【0016】
パンチユニット2のエジェクタ24は、ワーク挿入孔22の内径よりも僅かに小さい外径を有し、先端がワーク保持部材23のダイスユニット3側の端面より内側に位置するようにワーク挿入孔22内に挿入される。また、エジェクタ24に形成された貫通孔は、押圧パンチ21の外径よりも僅かに大きい内径を有し、当該貫通孔には、押圧パンチ21が挿通される。エジェクタ駆動機構25は、エジェクタ24の基端部(図4における左側の端部)に当接すると共に押圧パンチ21が挿通される環状の移動部材26を含み、当該移動部材26を押圧パンチ21に沿って移動させることによりエジェクタ24を軸方向に進退移動させる。更に、移動部材26のエジェクタ24とは反対側の端面は、押圧パンチ21を保持する上記保持ブロックに当接可能である。
【0017】
移動部材26が当該保持ブロックに当接することで、移動部材26およびエジェクタ24のダイスユニット3から離間する方向の移動が規制される。移動部材26が上記保持ブロックに当接し、かつエジェクタ24の基端部が移動部材26に当接した際、エジェクタ24のダイスユニット3側の端面は、押圧パンチ21の先端よりも移動部材26側に位置する。この際、押圧パンチ21の先端は、エジェクタ24のダイスユニット3側の端面よりもダイスユニット3側かつワーク保持部材23のダイスユニット3側の端面より内側(移動部材26側)に位置する。これにより、押圧パンチ21の先端部とワーク挿入孔22の内周面との間に短尺円筒状の空間(キャビティ)が画成され、ワーク挿入孔22内には、押圧パンチ21の先端に当接するようにワークWを挿入可能となる。
【0018】
ダイスユニット3は、押出成形装置1の設置箇所に固定される中空のケーシング30と、当該ケーシング30内に固定されるダイス31と、ケーシング30内に固定される丸棒状のカウンターパンチ(孔開けパンチ)33と、円筒状のエジェクタ34と、エジェクタ駆動ロッド35とを含む。ダイス31は、ワークWを成形するための略円孔状のキャビティ32を有し、当該キャビティ32の一方の開口(図4における左側の開口)がパンチユニット2(ワーク保持部材23)のワーク挿入孔22と対向するようにケーシング30の内部に固定される。
【0019】
キャビティ32を画成するダイス31の型面(内周面)310は、図5に示すように、半製品5の第1縮径部51を成形するための第1縮径部成形面311と、半製品5の第2縮径部52を成形するための第2縮径部成形面312とを含む。第1縮径部成形面311は、半製品5の第1縮径部51の設計上の外径と概ね同一の内径を有する円柱面である。
第2縮径部成形面312は、半製品5の第2縮径部52の設計上の外径と概ね同一の内径を有する円柱面であり、第1縮径部成形面311よりもパンチユニット2に近接するようにダイス31に形成されている。また、第1縮径部成形面311と第2縮径部成形面312とのキャビティ32の軸方向における間には、半製品5の第1テーパ部53を成形するための第1テーパ部成形面313が両者に連続するように形成されている。更に、第2縮径部成形面312のキャビティ32の上記一方の開口側(図中左側)には、第2縮径部成形面312に連続すると共に当該第2縮径部成形面312から当該一方の開口側に向かうにつれて内径が大きくなるように第2テーパ部成形面314が形成されている。
【0020】
カウンターパンチ33は、超硬合金により形成されており、その表面には、硬質のセラミックコーティングが施されている。カウンターパンチ33は、図4におよび図5に示すように、先端が径方向からみてダイス31の第2テーパ部成形面314と重なり合うようにキャビティ32内に挿入されると共に、当該キャビティ32の軸心と同軸に延在するようにケーシング30(およびダイス31)に対して固定される。また、図5に示すように、カウンターパンチ33の外周面は、半製品5の孔部5haの内径を規定するための第1および第2加工面331,332を含む。第1および第2加工面331,332は、半製品5の孔部5haの設計上の内径と概ね同一の外径を有する円柱面である。
【0021】
図5に示すように、第1加工面331は、カウンターパンチ33の外周面の先端(面取り部との境界)から基端側に延びる短尺の円柱面であり、ダイス31の第2縮径部成形面312と第2テーパ部成形面314との境界部(円周)と対向する位置Pa(円周、図5における一点鎖線参照)を跨ぐように形成されている。本実施形態において、第2縮径部成形面312と第2テーパ部成形面314との境界部(円周)と対向する位置Paから第1加工面331の基端側の端部までの長さは、例えば3~5mm程度に定められている。また、第2加工面332は、ダイス31の第2縮径部成形面312の軸方向における中央部付近と対向する位置から基端側に延びる円柱面であり、ダイス31の第1縮径部成形面311と第1テーパ部成形面313との境界部(円周)と対向する位置Pb(円周、図5における二点鎖線参照)を跨ぐように形成されている。本実施形態において、第1縮径部成形面311と第1テーパ部成形面313との境界部(円周)と対向する位置Pbから第2加工面332の基端側の端部までの長さは、例えば3~5mm程度に定められている。
【0022】
そして、第1および第2加工面331,332には、図5に示すように、多数(複数)のディンプルDが間隔をおいて配設されている。ディンプルDは、例えば超短パルスレーザー加工により形成された微小な凹部(窪み)である。本実施形態において、各ディンプルDの内径は、およそ25~35μmであり、深さは、およそ1~2μmであり、ディンプルDの配設ピッチ(隣り合うディンプルDの中心間距離)は、0.10~0.15mm程度である。
【0023】
更に、カウンターパンチ33の外周面は、第1加工面331と第2加工面332との当該カウンターパンチ33の軸方向における間に形成された第1逃げ面333と、第2加工面332の上記基端側に形成された第2逃げ面334とを含む。第1および第2逃げ面333、334は、第1および第2加工面331,332よりも小径の円柱面である。また、第1加工面331と第1逃げ面333との軸方向における間には、両者に連続するテーパ面が形成されており、第1逃げ面333と第2加工面332との間には、両者に連続するテーパ面が形成されている。更に、第2加工面332の基端側には、当該第2加工面332から基端側に向かうにつれて拡径するテーパ面が形成されている。
【0024】
ダイスユニット3のエジェクタ34は、押圧パンチ21の外径よりも僅かに大きい内径を有する貫通孔を含み、当該貫通孔には、第1および第2加工面331,332並びに第1および第2逃げ面333,334がエジェクタ34の先端から突出するようにカウンターパンチ33が挿通される。また、エジェクタ34は、ダイス31のキャビティ32に挿入可能に形成されている。エジェクタ駆動ロッド35は、図示しない駆動ユニットによりカウンターパンチ33の軸方向と平行に進退移動させられるものであり、エジェクタ34の先端がカウンターパンチ33の先端よりもパンチユニット2側に突出するように当該エジェクタ34を押圧可能である。
【0025】
続いて、上述の押出成形装置1を用いた半製品5の製造手順すなわちステップS2の複合成形について説明する。
【0026】
半製品5の製造に際して、押出成形装置1のパンチユニット2は、加圧駆動ユニットにより図4におけるX方向およびY方向においてダイスユニット3から離間させられる。次いで、パンチユニット2(ワーク保持部材23)のワーク挿入孔22に、図示しない端面加工装置から端面加工(ステップS1)が施されたワークWの一端が押圧パンチ21の先端に当接するように挿入される。当該端面加工装置からパンチユニット2にワークWが受け渡される際には、図示しない潤滑油散布装置からワークWに対して潤滑油(加工油)が散布される。
【0027】
ワーク挿入孔22にワークWが挿入されると、パンチユニット2(スライダ20)は、加圧駆動ユニットによりワークWの他端(ワーク挿入孔22)がダイスユニット3(ダイス31)のキャビティ32と対向するように図4におけるY方向に移動させられる。また、ワークWの他端がダイス31のキャビティ32と対向すると、パンチユニット2(スライダ20)は、加圧駆動ユニットから印加される成形荷重によりダイスユニット3に接近するように図4におけるX方向に移動させられ、ワークWは、パンチユニット2の押圧パンチ21によりダイス31のキャビティ32内に押し込まれていく。この際も、潤滑油散布装置からワークWに対して潤滑油(加工油)が散布され、それによりダイス31のキャビティ32内に潤滑油が供給される。キャビティ32内に供給された潤滑油は、ダイス31の型面310やカウンターパンチ33の外周面に付着し、当該カウンターパンチ33の第1および第2加工面331,332等に付着した潤滑油は、各ディンプルD内に溜まっていく。
【0028】
ワークWが押圧パンチ21によりダイス31のキャビティ32内に押し込まれていく際、ワークWの先端(他端)がカウンターパンチ33の先端やダイス31の第2テーパ部成形面314に突き当たり、それに伴ってワークWを形成する金属の一部がダイス31の第2縮径部成形面312とカウンターパンチ33の第1加工面331との間の空間(キャビティ32)内に入り込んでいく。この際、押圧パンチ21によりダイス31内に押し込まれたワークWの一部がダイス31の第2テーパ部成形面314およびカウンターパンチ33の第1加工面331により絞られるのに応じて、金属の一部は、図6において矢印で示すように、当該第2テーパ部成形面314付近でカウンターパンチ33の第1加工面331に向けて流動する。
【0029】
これにより、ワークWを形成する金属の一部は、第2縮径部成形面312と第2テーパ部成形面314との境界部と対向する位置Paを跨ぐカウンターパンチ33の第1加工面331に押し付けられることになるが、第1加工面331には、外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように多数のディンプルDが間隔をおいて配設されている。従って、カウンターパンチ33の第1加工面331と、ダイス31の第2テーパ部成形面314付近で第1加工面331に向けて流動する金属との間に充分な量の潤滑油を確保することができる。この結果、ダイス31の第2テーパ部成形面314付近におけるワークW(金属)とカウンターパンチ33(第1加工面331)との摩擦をより小さくし、押圧パンチ21に印加すべき成形荷重を大幅に低下させると共にワークWのカウンターパンチ33への付着を極めて良好に抑制することが可能となる。
【0030】
ワークWを形成する金属がダイス31の第2縮径部成形面312とカウンターパンチ33の第1加工面331、第1逃げ面333および第2加工面332との間の空間(キャビティ32)を流動(進行)していくことで、ワークWに第2縮径部52や孔部5haが徐々に形成されていく。また、ワークWが押圧パンチ21によりダイス31のキャビティ32内に更に押し込まれていくと、第2縮径部成形面312と第2加工面332との間の空間を流動する金属の先端がダイス31の第1テーパ部成形面313に突き当たり、それに伴って当該金属の一部がダイス31の第1縮径部成形面311とカウンターパンチ33の第2加工面332との間の空間(キャビティ32)内に入り込んでいく。この際、押圧パンチ21によりダイス31内に押し込まれたワークWの一部がダイス31の第1テーパ部成形面313およびカウンターパンチ33の第2加工面332により絞られるのに応じて、金属の一部は、図7において矢印で示すように、当該第1テーパ部成形面313付近でカウンターパンチ33の第2加工面332に向けて流動する。
【0031】
これにより、ワークWを形成する金属の一部は、第1縮径部成形面311と第1テーパ部成形面313との境界部と対向する位置Pbを跨ぐカウンターパンチ33の第2加工面332に押し付けられることになるが、第2加工面332にも、外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように多数のディンプルDが間隔をおいて配設されている。従って、カウンターパンチ33の第2加工面332と、ダイス31の第1テーパ部成形面313付近で第2加工面332に向けて流動する金属との間に充分な量の潤滑油を確保することができる。この結果、ダイス31の第1テーパ部成形面313付近におけるワークW(金属)とカウンターパンチ33(第2加工面332)との摩擦をより小さくし、押圧パンチ21に印加すべき成形荷重を大幅に低下させると共にワークWのカウンターパンチ33への付着を極めて良好に抑制することが可能となる。
【0032】
ワークWを形成する金属がダイス31の第1縮径部成形面311とカウンターパンチ33の第2逃げ面334との間の空間(キャビティ32)を流動(進行)していくことで、ワークWに第1縮径部51や孔部5haが徐々に形成されていく。一方、押圧パンチ21がワークWを押圧(加圧)する際、当該押圧パンチ21の先端部は、ワークWの端部内に入り込んでいき、それに伴ってワークWを形成する金属の一部が押圧パンチ21とパンチユニット2(ワーク保持部材23)のワーク挿入孔22の内周面との間の空間(キャビティ)に入り込んでいき、それによりワークWに孔部5hbが徐々に形成されていく。そして、スライダ20およびワーク保持部材23の端面がダイス31の端面に当接すると、図8に示すように、シャフト部材10の半製品5の製造が完了する。
【0033】
シャフト部材10の半製品5の製造が完了すると、パンチユニット2(スライダ20)が加圧駆動ユニットによりダイスユニット3からX方向に離間するように移動させられる。また、パンチユニット2の移動に応じて、ダイスユニット3のエジェクタ34がカウンターパンチ33の先端よりもパンチユニット2側に突出するようにエジェクタ駆動ロッド35により押圧される。これにより、パンチユニット2(スライダ20)がダイスユニット3から離間するのに応じて、半製品5をダイス31のキャビティ32から外部に排出することが可能となる。また、半製品5がダイス31から充分に離間した状態でパンチユニット2の移動が停止すると、当該パンチユニット2のエジェクタ24が押圧パンチ21の先端よりもダイスユニット3側に突出するようにエジェクタ駆動機構25により押圧される。これにより、パンチユニット2(ワーク保持部材23)のワーク挿入孔22から半製品5を取り出すことが可能となる。パンチユニット2から半製品5が取り出された後、当該パンチユニット2は、加圧駆動ユニットにより図4におけるY方向に沿ってダイスユニット3から離間させられ、図示しない端面加工装置から次の加工対象となるワークWの一端がワーク挿入孔22に挿入されることになる。
【0034】
上述のように、押出成形装置1では、ダイス31の第2縮径部成形面312と第2テーパ部成形面314との境界部と対向する位置Paを跨ぐカウンターパンチ33の第1加工面331と、ダイス31の第1縮径部成形面311と第1テーパ部成形面313との境界部と対向する位置Pbを跨ぐカウンターパンチ33の第2加工面332とに複数のディンプルDが間隔をおいて配設されている。これにより、ワークWの成形に際して、カウンターパンチ33の第1および第2加工面331,332と、押圧パンチ21によりダイス31内に押し込まれたワークWの一部が当該ダイス31およびカウンターパンチ33により絞られるのに応じて第1および第2テーパ部成形面313,314付近で第1および第2加工面331,332に向けて流動する金属との間に充分な量の潤滑油を確保することができる。従って、ダイス31の第1および第2テーパ部成形面313,314付近におけるワークW(金属)と第1および第2加工面331,332との摩擦をより小さくし、成形荷重を大幅に低下させると共にワークWのカウンターパンチ33への付着を極めて良好に抑制することが可能となる。この結果、特にカウンターパンチ33の高寿命化やダイス31およびカウンターパンチ33からの半製品5の取り出し性を良好に確保しつつ、一端側が2段に絞られた半製品5すなわちシャフト部材10を短工程で製造することが可能となる。
【0035】
また、上記実施形態において、カウンターパンチ33の外周面は、軸方向における第1加工面331と第2加工面332との間に形成された当該第1および第2加工面331,332よりも小径の第1逃げ面333と、第2加工面332の基端側に形成された第1および第2加工面331,332よりも小径の第2逃げ面334とを含む。これにより、第1および第2縮径部51,52並びに孔部5haの成形に際して、ワークW(金属)とカウンターパンチ33の外周面との摩擦をより小さくすることができるので、カウンターパンチ33の耐摩耗性(耐久性)をより向上させることが可能となる。
【0036】
図9は、ワークWから半製品5を得るための上記ステップS2における複合成形に適用可能な本開示の他の製造装置としての押出成形装置1Bの要部を示す部分断面図である。押出成形装置1Bの構成要素のうち、上述の押出成形装置1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0037】
図9に示す押出成形装置1Bも、上記シャフト部材10の半製品5を製造可能なものであり、当該押出成形装置1Bのダイスユニット3Bは、上記押出成形装置1におけるカウンターパンチ33とは異なるカウンターパンチ33Bを含む。すなわち、ダイスユニット3Bのカウンターパンチ33Bは、単一の加工面335と、当該加工面335の基端側に形成された当該加工面335よりも小径の逃げ面336と、加工面335と逃げ面336との間や逃げ面336の基端側に形成されたテーパ面とを含むものである。図9に示すように、加工面335は、カウンターパンチ33Bの外周面の先端(面取り部との境界)か基端側に延びる円柱面であって、ダイス31の第2縮径部成形面312と第2テーパ部成形面314との境界部(円周)と対向する位置Pa(円周、図9における一点鎖線参照)と、第1縮径部成形面311と第1テーパ部成形面313との境界部(円周)と対向する位置Pb(円周、図9における二点鎖線参照)との双方を跨ぐように形成されている。そして、加工面335には、例えば超短パルスレーザー加工により多数(複数)のディンプルDが間隔をおいて配設されている。
【0038】
かかるカウンターパンチ33Bを含む押出成形装置1Bにおいても、カウンターパンチ33Bの加工面335と、押圧パンチ21によりダイス31内に押し込まれたワークWの一部が当該ダイス31およびカウンターパンチ33Bにより絞られるのに応じて第1および第2テーパ部成形面313,314付近で加工面335に向けて流動する金属との間に充分な量の潤滑油を確保することができる。従って、カウンターパンチ33Bの高寿命化やダイス31およびカウンターパンチ33Bからの半製品5の取り出し性を良好に確保しつつ、一端側が2段に絞られた半製品5すなわちシャフト部材10を短工程で製造することが可能となる。加えて、押出成形装置1Bでは、カウンターパンチ33Bの外周面における段差の数を減らすことができるので、カウンターパンチ33Bにおける応力集中を減らして当該カウンターパンチ33Bの耐荷重性(耐久性)をより向上させることが可能となる。
【0039】
なお、上述の押出成形装置1,1Bは、一端側が2段に絞られた半製品5(シャフト部材10)を製造するように構成されているが、これに限られるものではない。すなわち、押出成形装置1,1Bは、一端側が1段に絞られたシャフト部材の半製品、すなわち一端側に単一の縮径部を含むシャフト部材の半製品を製造するように構成されてもよい。また、押出成形装置1,1Bにおいて、カウンターパンチ33,33BのディンプルDは、超短パルスレーザー加工以外の手法により形成されてもよい。
【0040】
以上説明したように、本開示のシャフト部材の製造装置は、少なくとも一方の端面で開口する孔部(5ha,10h)と前記孔部(5ha,10h)の周囲に形成された縮径部(51,52,101,102)とを含む金属製のシャフト部材(5,10)の製造装置(1)であって、前記シャフト部材(5,10)の外周面を成形する型面(310)を含むダイス(31)と、前記孔部(5ha,10h)を形成するように前記ダイス(31)内に配置される孔開けパンチ(33)と、前記ダイス(31)および前記孔開けパンチ(33)に対してワーク(W)を押し込む押圧パンチ(21)とを含み、前記孔開けパンチ(33)の外周面に、外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように複数のディンプル(D)が間隔をおいて配設されているものである。
【0041】
本開示のシャフト部材の製造装置は、シャフト部材の外周面を成形する型面を含むダイスと、当該シャフト部材の孔部を形成するようにダイス内に配置される孔開けパンチとを含むものであり、一工程でワークに縮径部と孔部とを形成可能なものである。そして、孔開けパンチの外周面には、外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように複数のディンプルが間隔をおいて配設されている。これにより、ワークの成形に際して、孔開けパンチの外周面と、ダイスの型面に当たって孔開けパンチに向けて流動する金属との間に充分な量の潤滑油を確保することが可能となる。従って、ワーク(金属)と孔開けパンチの外周面との摩擦を小さくし、成形荷重を低下させると共にワークの孔開けパンチへの付着を良好に抑制することができる。この結果、特に孔開けパンチの高寿命化やダイスおよび孔開けパンチからのワークの取り出し性を良好に確保しつつ、孔部およびその周囲の縮径部を含むシャフト部材を短工程で製造することが可能となる。
【0042】
また、前記シャフト部材(5,10)は、前記縮径部(51,52,101,102)の前記一方の端面とは反対側に形成されたテーパ部(53,54,103,104)を含むものあってもよく、前記ダイス(31)の前記型面(310)は、前記縮径部(51,52,101,102)の外周面を成形する縮径部成形面(311,312)と、前記テーパ部(53,54,103,104)の外周面を成形するテーパ部成形面(313,314)とを含むものあってもよく、前記孔開けパンチ(33)の前記外周面は、前記縮径部成形面(311,312)と前記テーパ部成形面(313,314)との境界と対向する位置を跨ぐように形成された加工面(311,312)を含むものであってもよく、前記複数のディンプル(D)は、前記加工面(311,312)に配設されてもよい。これにより、孔開けパンチの加工面と、パンチによりダイス内に押し込まれたワークの一部がダイスのテーパ部成形面および孔開けパンチの加工面により絞られるのに応じて当該テーパ部成形面付近で孔開けパンチの加工面に向けて流動する金属との間に充分な量の潤滑油を確保することができる。この結果、ダイスのテーパ部成形面付近におけるワーク(金属)と孔開けパンチ(加工面)との摩擦をより小さくし、成形荷重を大幅に低下させると共にワークの孔開けパンチへの付着を極めて良好に抑制することが可能となる。
【0043】
更に、前記シャフト部材(5,10)の前記縮径部は、前記一方の端面側に形成された第1縮径部(51,101)と、前記第1縮径部(51,101)よりも大径であると共に前記第1縮径部(51,101)よりも前記シャフト部材(5,10)の他方の端面側に形成された第2縮径部(52,102)とを含むものであってもよく、前記シャフト部材(5.10)の前記テーパ部は、前記シャフト部材(5,10)の軸方向における前記第1縮径部(51,101)と前記第2縮径部(52,102)との間に形成された第1テーパ部(53,103)と、前記第2縮径部(52,102)の前記他方の端面側に形成された第2テーパ部(54,104)とを含むものであってもよく、前記ダイス(31)の前記縮径部成形面は、前記第1縮径部(51,101)の外周面を成形する第1縮径部成形面(311)と、前記第2縮径部(52,102)の外周面を成形する第2縮径部成形面(312)とを含むものであってもよく、前記ダイス(31)の前記テーパ部成形面は、前記第1テーパ部(53,103)の外周面を成形する第1テーパ部成形面(313)と、前記第2テーパ部(54,104)の外周面を成形する第2テーパ部成形面(314)とを含むものであってもよく、前記孔開けパンチ(33)の前記加工面は、前記第2縮径部成形面(312)と前記第2テーパ部成形面(314)との境界と対向する位置を跨ぐように形成された第1加工面(331)と、前記第1縮径部成形面(311)と前記第1テーパ部成形面(313)との境界と対向する位置を跨ぐように形成された第2加工面(332)とを含むものであってもよく、前記複数のディンプル(D)は、前記第1および第2加工面(331,332)に配設されてもよい。これにより、孔開けパンチの高寿命化やダイスおよび孔開けパンチからのワークの取り出し性を良好に確保しつつ、一端側が2段に絞られたシャフト部材を短工程で製造することが可能となる。
【0044】
また、前記孔開けパンチ(33)の前記外周面は、前記孔開けパンチ(33)の軸方向における前記第1加工面(331)と前記第2加工面(332)との間に形成された前記第1および第2加工面(331,332)よりも小径の第1逃げ面(333)と、前記第2加工面(332)の前記孔開けパンチ(33)の基端側に形成された前記第2加工面(332)よりも小径の第2逃げ面(334)とを含むものあってもよい。これにより、第1および第2縮径部並びに孔部の成形に際して、ワーク(金属)と孔開けパンチの外周面との摩擦をより小さくすることができるので、孔開けパンチの耐摩耗性をより向上させることが可能となる。
【0045】
更に、前記シャフト部材(5,10)の前記縮径部は、前記一方の端面側に形成された第1縮径部(51,101)と、前記第1縮径部(51,101)よりも大径であると共に前記第1縮径部(51,101)よりも前記シャフト部材(5,10)の他方の端面側に形成された第2縮径部(52,102)とを含むものであってよく、前記シャフト部材(5,10)の前記テーパ部は、前記シャフト部材(5,10)の軸方向における前記第1縮径部(51,101)と前記第2縮径部(52,102)との間に形成された第1テーパ部(53,103)と、前記第2縮径部(52,102)の前記他方の端面側に形成された第2テーパ部(54,104)とを含むものであってよく、前記ダイス(31)の前記縮径部成形面は、前記第1縮径部(51,101)の外周面を成形する第1縮径部成形面(311)と、前記第2縮径部(52,102)の外周面を成形する第2縮径部成形面(312)とを含むものであってよく、前記ダイス(31)の前記テーパ部成形面は、前記第1テーパ部(53,103)の外周面を成形する第1テーパ部成形面(313)と、前記第2テーパ部(54,104)の外周面を成形する第2テーパ部成形面(314)とを含むものであってよく、前記孔開けパンチ(33B)の前記加工面(335)は、前記第1縮径部成形面(311)と前記第1テーパ部成形面(313)との境界と対向する位置および前記第2縮径部成形面(312)と前記第2テーパ部成形面(314)との境界と対向する位置の双方を跨ぐように形成されてもよい。かかる製造装置によっても、孔開けパンチの高寿命化やダイスおよび孔開けパンチからのワークの取り出し性を良好に確保しつつ、一端側が2段に絞られたシャフト部材を短工程で製造することが可能となる。加えて、かかる製造装置では、孔開けパンチの外周面における段差の数を減らすことができるので、孔開けパンチにおける応力集中を減らして当該孔開けパンチの耐荷重性をより向上させることが可能となる。
【0046】
また、前記孔開けパンチ(33B)の前記外周面は、前記加工面(335)の前記孔開けパンチ(33B)の基端側に形成された前記加工面(335)よりも小径の逃げ面(336)を含むものあってもよい。
【0047】
本開示のシャフト部材の製造方法は、少なくとも一方の端面で開口する孔部(5ha,10h)と前記孔部(5ha,10h)の周囲に形成された縮径部(51,52,101,102)とを含む金属製のシャフト部材(5,10)の製造方法であって、前記シャフト部材(5,10)の外周面を成形するダイス(31)内に配置される孔開けパンチ(33)の外周面に外部から供給される潤滑油をそれぞれ保持するように複数のディンプル(D)を配設しておき、前記ダイス(31)および前記孔開けパンチ(33)に対してワーク(W)を押圧パンチ(21)により押し込んで前記シャフト部材(5,10)を製造するものである。
【0048】
この方法によれば、特に孔開けパンチの高寿命化やダイスおよび孔開けパンチからのワークの取り出し性を良好に確保しつつ、孔部およびその周囲の縮径部を含むシャフト部材を短工程で製造することが可能となる。
【0049】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の発明は、歯形部品の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,1B 押出成形装置、2 パンチユニット、3,3B ダイスユニット、5 半製品、5ha,5hb,10h 孔部、10 シャフト部材、20 スライダ、21 押圧パンチ、22 ワーク挿入孔、23 ワーク保持部材、24 エジェクタ、25 エジェクタ駆動機構、26 移動部材、30 ケーシング、31 ダイス、32 キャビティ、33,33B カウンターパンチ、34 エジェクタ、35 エジェクタ駆動ロッド、50 本体、51 第1縮径部、52 第2縮径部、53 第1テーパ部、54 第2テーパ部、100 シャフト本体、101 第1縮径部、102 第2縮径部、103 第1テーパ部、104 第2テーパ部、105 拡径部、310 型面、311 第1縮径部成形面、312 第2縮径部成形面、313 第1テーパ部成形面、314 第2テーパ部成形面、331 第1加工面、332 第2加工面、333 第1逃げ面、334 第2逃げ面、335 加工面、336 逃げ面、D ディンプル、W ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9