(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220308BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2018184079
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河村 健
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206612(JP,A)
【文献】特開2017-067944(JP,A)
【文献】特開2002-031774(JP,A)
【文献】特開2012-093506(JP,A)
【文献】特許第6175589(JP,B2)
【文献】特開2018-036360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0278765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの視線を基準として前記ユーザから見て左右方向の内の一方である第1方向側が当該第1方向側の反対側である第2方向側よりも前記ユーザに近付くように上下方向に平行な軸周りに第1傾斜角度を有しており、前記ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対して前記ユーザから見て左辺の高さと右辺の高さとが一致している矩形虚像を投影可能なヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記視線を基準として前記第1方向側が前記第2方向側よりも前記ユーザに近付くように前記上下方向に平行な軸周りに第2傾斜角度を有しており、前記矩形虚像に対応した矩形画像を構成する表示光を出射する表示光出射部と、
前記視線を基準として前記第1方向側が前記第2方向側よりも前記ユーザに近付くように前記上下方向に平行な軸周りに第3傾斜角度を有しており、前記表示光を反射して、前記虚像表示部に対して反射光を出射する反射鏡と、
を備え
、
前記第2傾斜角度と前記第3傾斜角度とは、各画素の光路長が同じになるように設定されている
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示光出射部は、前記矩形画像の前後方向に平行な軸周りの傾きが前記矩形虚像の前後方向に平行な軸周りの傾きと平行になるように配置されている、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記反射鏡は、前記反射光の前後方向に平行な軸周りの傾きが前記矩形虚像の前後方向に平行な軸周りの傾きと平行になるように配置されている、
請求項1または2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記反射鏡は、前記反射光が前記矩形虚像を形成するように、前記虚像表示部の前記第1傾斜角度に応じて前記第3傾斜角度が設定される
請求項1~3のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記表示光出射部が有する前記第2傾斜角度と、前記反射鏡が有する前記第3傾斜角度は、前記矩形画像の左端に対応する前記表示光出射部から前記ユーザのアイポイントまでの光路長と、前記矩形画像の右端に対応する前記表示光出射部から前記ユーザのアイポイントまでの光路長とが等しくなるように設定される
請求項1~4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転者に情報を提供するためのヘッドアップディスプレイ装置が存在する。ヘッドアップディスプレイ装置は、光を透過する虚像表示部に対して画像を構成する表示光を入射することにより、ユーザに表示光の虚像を視認させる。自動車用のヘッドアップディスプレイ装置には、専用のコンバイナに虚像を表示するタイプのものと、自動車のウィンドシールドに虚像を表示するタイプとが知られている。このうち、自動車のウィンドシールドに虚像を表示するタイプの場合、ウィンドシールドが平面でなく、且つ、ユーザに対して傾斜していることから、表示させる虚像の歪を矯正する必要が生じる。そこで、かかる歪みを矯正する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の画像表示装置には、移動体に搭載される画像表示装置であって、移動体の左右方向をX方向、上下方向をY方向としたとき、中間像のXY平面への投影像は、X方向に対して所定の角度θ1を成し、チルト軸のXY平面への投影像は、X方向に対して角度θ2を成す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は移動体の前後方向軸周りに中間像を回転させるため、中間像を形成する中間像形成装置や、中間像をフロントガラスに投影する反射鏡を、移動体の前後方向軸周りに回転させて配置しなければならない。そのため、中間像形成装置や反射鏡の上下方向の大きさを小さくすることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、ヘッドアップディスプレイ装置は、ユーザの前方正面に設置された虚像表示部に対してユーザから見て左辺の高さと右辺の高さとが一致している矩形虚像を投影可能なヘッドアップディスプレイ装置である。虚像表示部は、ユーザから見て左右方向の内の一方である第1方向側が当該第1方向側の反対側である第2方向側よりもユーザに近付くように上下方向に平行な軸周りに第1傾斜角度を有している。かかるヘッドアップディスプレイ装置は、第1方向側が第2方向側よりもユーザに近付くように上下方向に平行な軸周りに第2傾斜角度を有しており、矩形虚像に対応した矩形画像を構成する表示光を出射する表示光出射部を有している。また、ヘッドアップディスプレイ装置は、第1方向側が第2方向側よりもユーザに近付くように上下方向に平行な軸周りに第3傾斜角度を有しており、表示光を反射して、虚像表示部に対して反射光を出射する反射鏡を有している。
なお、上記「第1方向側」および「第2方向側」は、ユーザの左側および右側のいずれか一方を、第1方向側と称し、第1方向とは異なる他方を、第2方向と称している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上下方向の寸法を抑えたヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置の上面図である。
【
図2】実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置の側面図である。
【
図3】実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置の正面図である。
【
図4】ヘッドアップディスプレイ装置の左端の光路と右端の光路を模式的に例示した側面図である。
【
図5】ヘッドアップディスプレイ装置の左端の光路と右端の光路を模式的に例示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
<実施の形態>
以下、図を参照しながら本実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置1について説明する。ヘッドアップディスプレイ装置1は、自動車の運転者に対して任意の虚像を表示する装置である。ヘッドアップディスプレイ装置1が任意の虚像を表示することにより、ヘッドアップディスプレイ装置1が搭載された自動車は、適宜、運転者に対して所定の情報を呈示することができる。
【0011】
図1を参照しながらヘッドアップディスプレイ装置1の構成について説明する。
図1は、実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置の上面図である。ヘッドアップディスプレイ装置1は主な構成として、表示光出射部10および反射鏡20を有している。ヘッドアップディスプレイ装置1は、自動車に搭載されており、搭載されている自動車のウィンドシールド30に虚像を投影するように構成されている。
【0012】
なお、本実施の形態を説明する図には、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、右手系の直交座標系が付されている。
図1~5において、それぞれの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
図1において、X軸は自動車およびユーザUの左右方向に一致しており、X軸プラス方向は自動車およびユーザUの右側である。また、Y軸は自動車およびユーザUの前後方向に一致しており、Y軸プラス方向は、自動車およびユーザUの前方である。Z軸は自動車およびユーザUの上下方向に一致しており、Z軸プラス方向は自動車およびユーザUの上方である。
【0013】
表示光出射部10は、矩形の画像を構成する表示光P1を出射する機能を有する。表示光出射部10は、例えば、光源部と、矩形の開口部を有し、光源部から受けた光に画像を合成する画像合成部とを主な構成とする。光源部は、例えば、LED、半導体レーザまたはランプなどにより構成される。画像合成部は、例えば、透過型液晶パネル、反射型液晶パネルまたはMEMSミラー等である。表示光出射部10が出射した表示光P1は、反射鏡20に照射される。
【0014】
反射鏡20は、表示光出射部10から表示光P1を受け、受けた表示光P1を反射して、反射光P2を出射する。反射鏡20は自由曲面を有する凹面鏡である。凹面鏡は拡大鏡として作用し、さらに反射鏡20の自由曲面形状は、ユーザUが視認する虚像の歪を抑えるように設計されている。すなわち、反射鏡20は、虚像の歪を矯正する役割を担っている。反射光P2は、ウィンドシールド30に照射される。
【0015】
自動車が有するウィンドシールド30は、自動車の前方に設けられている防風用のガラス板である。ウィンドシールド30は虚像表示部31を含んでいる。虚像表示部31は、ユーザUの前方正面に配置されている。虚像表示部31は、可視光が所定の入射角で入射された場合に、反射鏡20から受けた反射光P2を反射して、反射した光をユーザUの網膜上で結像させる。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置1は、表示光出射部10が出射した表示光P1をユーザUに虚像P3として認識させる。つまり、虚像表示部31は、反射光P2が入射する入射面において虚像を表示する。
【0016】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置1の各構成およびウィンドシールド30の位置関係について説明する。図において、運転者であるユーザUは自動車の右側に設置された運転席に着座している。また、ヘッドアップディスプレイ装置1は、ユーザUが運転席に着座している状態でユーザUが虚像を視認できるように配置されている。
【0017】
また、図に示すように、ウィンドシールド30は、緩やかな弓状に形成され、中央部が前方に張り出している。そのため、自動車の右側に着座しているユーザUの正面のウィンドシールド30に設けられている虚像表示部31は、左側(X軸マイナス側)よりも右側(X軸プラス側)の方が、ユーザUに近付くように傾斜している。なお、左側(X軸マイナス側)および右側(X軸プラス側)のいずれか一方を、第1方向側と称し、第1方向とは異なる他方を、第2方向と称することもできる。
【0018】
ここで、かかる傾斜について具体的に説明する。図において、線分31Dは、虚像表示部31のXY平面における断面形状を模式的に示している。一方、ユーザUが虚像P3を直視する状態におけるユーザUの視線VLは、Y軸に平行である。図示のように、ユーザUの視線VLと線分31Dと直交する直線とは角度A1を成している。つまり、本実施の形態において、虚像表示部31が有する傾斜は角度A1である。なお、角度A1は第1傾斜角度とも称される。
【0019】
このように虚像表示部31がユーザUの上下方向に平行な軸(Z軸)周りに傾斜しているところ、反射鏡20は、虚像表示部31が反射光P2を反射して生成する虚像の光線が視線VLと一致するように配置される。そのため、反射鏡20は、虚像表示部31の傾斜に応じて、虚像表示部31よりも左側に配置される。
【0020】
また、反射鏡20は、反射光P2を図の右側に配置されている虚像表示部31に向けて出射する。そのため、表示光出射部10が出射する表示光P1は、反射鏡20よりも左側から反射鏡20に入射するように設定される。よって、各構成の配置は、X軸方向マイナス側からプラス側に向けて、表示光出射部10、反射鏡20、そして虚像表示部31という順に配置される。換言すると、ヘッドアップディスプレイ装置1において、表示光出射部10および反射鏡20は、虚像表示部31の傾斜に応じてユーザUから遠い側の端部に近い側に配置されている。
【0021】
次に、
図2および
図3を参照しながらヘッドアップディスプレイ装置1の各構成およびウィンドシールド30の位置関係についてさらに説明する。
図2は、実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置の側面図である。図に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置1は、ウィンドシールド30の下方に表示光出射部10および反射鏡20が配置されている。また、表示光出射部10は、相対的に、反射鏡20よりも後方(Y軸マイナス方向)に配置され、表示光出射部10よりも前方(Y軸プラス方向)に反射鏡20が配置されている。
【0022】
図3は、実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置の正面図である。
図2および
図3に示すように、表示光出射部10と反射鏡20とは、XY平面に平行に配置されている。表示光出射部10が出射する表示光P1は、矩形画像の左右方向における画素の配列がXY平面に平行である。換言すると、矩形画像における左辺の高さと右辺の高さは一致している。また、図に示す線L1は、表示光出射部10が出射する表示光P1の上下方向(Z軸方向)中央部における出射方向を示している。線L1は、XY平面と平行である。すなわち、表示光出射部10は、左右方向の画素の配列がXY平面に平行な矩形画像を構成する表示光P1をXY平面に平行な方向に出射する。
【0023】
反射鏡20は、左右方向の画素の配列がXY平面に平行な矩形画像を構成する表示光P1を受けると、左右方向の画素の配列がXY平面に平行な状態を維持したまま、反射光P2を虚像表示部31に出射する。すなわち、反射鏡20が有する自由曲面の配置および形状は、反射光P2のY軸(ユーザの前後方向に平行な軸)周りの傾きが矩形虚像のY軸周りの傾きと平行になるように構成されている。
【0024】
また、
図3において、線L2は、虚像表示部31に投影される矩形虚像における左右方向の画素の配列に平行な直線である。線L2は、XY平面と平行である。つまり、上述した表示光出射部10および反射鏡20の構成により、ヘッドアップディスプレイ装置1は、虚像表示部31に対してユーザから見て左辺の高さと右辺の高さとが一致している矩形虚像を投影する。このように構成することにより、ヘッドアップディスプレイ装置1は、表示光出射部10および反射鏡20の上下方向の寸法を抑えることができる。
【0025】
次に、
図4および
図5を参照しながら表示光出射部10、反射鏡20および虚像表示部31がそれぞれ有する傾斜について説明する。
図4は、ヘッドアップディスプレイ装置の左端の光路と右端の光路を模式的に例示した側面図である。
図5は、ヘッドアップディスプレイ装置の左端の光路と右端の光路を模式的に例示した上面図である。
図4および
図5は、表示光出射部10の左端部10Lおよび右端部10R、反射鏡20の左端部20Lおよび右端部20R、虚像表示部31の左端部31Lおよび右端部31Rおよびユーザの眼に相当するアイポイントEPが示されている。
【0026】
また、
図4および
図5において、表示光出射部10から出射される光のうち、ユーザから見て左端の光線が点線により示されている。すなわち、ヘッドアップディスプレイ装置1は、表示光出射部10の左端部における任意の高さの位置から反射鏡20に光線BL1を出射する。反射鏡20の左端部20Lは光線BL1を反射して光線BL2を虚像表示部31に出射する。虚像表示部31の左端部31Lは、光線BL2を受けて光線BL3をユーザのアイポイントEPに出射する。
【0027】
同様に、
図4および
図5において、表示光出射部10から出射される光のうち、ユーザから見て右端の光線が一点鎖線により示されている。すなわち、ヘッドアップディスプレイ装置1は、表示光出射部10の右端部における光線BL1を出射する位置と同じ高さの位置から光線BR1を出射する。反射鏡20の右端部20Rは光線BR1を反射して光線BR2を虚像表示部31に出射する。虚像表示部31の右端部31Rは、光線BR2を受けて光線BR3をアイポイントEPに出射する。なお、
図4において光線BL1および光線BR1はZ軸方向にずれて示されているが、これは理解を容易にする為であり、実際には重なっているものとする。光線BL3および光線BR3も同様である。
【0028】
ここで、光線BL1の長さ、光線BL2の長さ、そして光線BL3の長さを全て加えた線分の長さは、表示光出射部10の左端部からアイポイントEPまでの光路長である。また、光線BR1の長さ、光線BR2の長さ、そして光線BR3の長さを全て加えた線分の長さは、表示光出射部10の右端部からアイポイントEPまでの光路長である。本実施の形態においては、表示光出射部10の左端部からアイポイントEPまでの光路長と表示光出射部10の右端部からアイポイントEPまでの光路長とが実質的に等しくなるように設定されている。なお、実質的に等しいとは、例えば10パーセント程度の差を許容することを意味している。このように、表示光出射部10からアイポイントEPまでの光路長が等しくなるように構成されることにより、ヘッドアップディスプレイ装置1は、ユーザから見た虚像の各画素がボケることなく表示される。
【0029】
次に、表示光出射部10および反射鏡20の傾斜について説明する。
図5には、虚像表示部31の傾斜の角度A1が示されている。虚像表示部31の角度A1については、
図1を参照しながら説明したとおりである。また、表示光出射部10は、左端部10L(X軸マイナス側)よりも右端部10R(X軸プラス側)の方が、ユーザに近付くように傾斜している。すなわち表示光出射部10は、Y軸に対して角度A2の傾斜を有している。あるいは、表示光出射部10は、上下方向に平行な軸周り(Z軸周り)に角度A2の傾斜を有しているということもできる。なお角度A2は、第2傾斜角度とも称される。また、反射鏡20は、左端部20L(X軸マイナス側)よりも右端部20R(X軸プラス側)の方が、ユーザに近付くように傾斜している。すなわち反射鏡20は、Y軸に対して角度A3の傾斜を有している。あるいは、反射鏡20は、上下方向に平行な軸周り(Z軸周り)に角度A3の傾斜を有しているということもできる。なお角度A3は、第3傾斜角度とも称される。
【0030】
反射鏡20は、反射光がユーザから見て左右方向に傾かない(左辺の高さと右辺の高さとが一致する)矩形虚像を形成するように配置されている。また反射鏡20の角度A3は、矩形画像の左端に対応する表示光出射部からユーザUのアイポイントまでの光路長と、矩形画像の右端に対応する表示光出射部からユーザUのアイポイントまでの光路長が均等になるように設定されている。すなわち、反射鏡20は、虚像表示部31が有する角度A1が大きくなるに連れて、角度A3も大きくなるように配置される。表示光出射部10が有する角度A2は、虚像表示部31が有する角度A1および反射鏡20が有する角度A3に応じて設定される。
【0031】
以上、実施の形態について説明した。上述の実施の形態にかかるヘッドアップディスプレイ装置1において、表示光出射部10および反射鏡20は、左右方向の内の一方が他方よりもユーザに近付くように傾斜角度を有している。そして、このときの傾斜方向は、虚像表示部31が有する傾斜角度の方向と同じである。また、表示光出射部10の第2傾斜角度(角度A2)および反射鏡20の第3傾斜角度(角度A3)は、各画素の光路長が同じになるように設定されている。このような構成により、ヘッドアップディスプレイ装置1は、Y軸周りに回転させるなど上下方向の寸法を増加させる配置をせずに、矩形虚像を表示させることができる。したがって、自動車のダッシュボードを設計する場合に上下方向の制約が低減し、設計の自由度が高くなるという利点がある。以上のように、本実施の形態によれば、虚像の歪を悪化させることなく上下方向の寸法を抑えたヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、ヘッドアップディスプレイ装置1は、鉛直軸周りに表示光出射部10または反射鏡20を回転させるための調整機構を有していてもよい。調整機構を有することにより、ヘッドアップディスプレイ装置1は、設置された後も虚像歪を矯正することができる。また、ヘッドアップディスプレイ装置1は、移動体に限らず、ユーザから見て左右方向の一方が他方よりユーザ側に近付くように傾斜する虚像表示部に投影する場合に適用できる。具体的には、ヘッドアップディスプレイ装置1は、自動車の運転模擬装置、飛行機のフライトシミュレータ、ゲーム機器等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ヘッドアップディスプレイ装置
10 表示光出射部
10L 左端部
10R 右端部
20 反射鏡
20L 左端部
20R 右端部
30 ウィンドシールド
31 虚像表示部
31D 線分
31L 左端部
31R 右端部
EP アイポイント
P1 表示光
P2 反射光
P3 虚像
U ユーザ
VL 視線