(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】質量分析装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/40 20060101AFI20220308BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220308BHJP
H01J 49/02 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01J49/40
G01N27/62 G
H01J49/02 200
(21)【出願番号】P 2018187174
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 治生
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-502096(JP,A)
【文献】米国特許第06384410(US,B1)
【文献】特開2003-151487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/40
G01N 27/62
H01J 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をイオン化するイオン化部と、
前記イオン化部により生成されたイオンが導入され、当該イオンが飛行する飛行部と、
直流高圧電源装置とを備え、
前記直流高圧電源装置は、
入力される電圧を昇圧した昇圧電圧を出力する昇圧回路と、
前記昇圧回路の出力と接地電源との間に直列接続された高圧側抵抗と低圧側抵抗とを含み、前記昇圧電圧を分圧した分圧電圧を生成する抵抗分割回路と、
基準電圧と前記分圧電圧との誤差を増幅して、前記昇圧電圧の大きさを制御する制御信号を出力する誤差増幅器と、
前記昇圧回路の出力と前記接地電源との間に前記抵抗分割回路と並列に接続される少なくとも1つの保護抵抗とを含み、
前記昇圧電圧が供給される、試料由来のイオンが飛行する飛行部を形成する少なくとも一つの電極を備える質量分析装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの保護抵抗は、第1の保護抵抗を含み、
前記抵抗分割回路の前記高圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある前記第1の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下である、請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記抵抗分割回路の前記高圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある前記第1の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下である、請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記抵抗分割回路の前記高圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある前記第1の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下である、請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、前記第1の保護抵抗と直列に接続された第2の保護抵抗を含み、
前記抵抗分割回路の前記低圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある前記第2の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の比が、90%以上かつ110%以下である請求項2に記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記抵抗分割回路の前記低圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある前記第2の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の比が、95%以上かつ105%以下である、請求項5に記載の質量分析装置。
【請求項7】
前記抵抗分割回路の前記低圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある前記第2の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の比が、99%以上かつ101%以下である、請求項5に記載の質量分析装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの保護抵抗は、第1の保護抵抗を含み、
前記抵抗分割回路の前記高圧側抵抗は、円筒型であり、
前記第1の保護抵抗は、前記円筒型の前記高圧側抵抗の周りを覆うリング型である、請求項1記載の質量分析装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、前記第1の保護抵抗と直列に接続された第2の保護抵抗を含み、
前記抵抗分割回路の前記低圧側抵抗は、円筒型であり、
前記第2の保護抵抗は、前記円筒型の前記低圧側抵抗の周りを覆うリング型である、請求項8記載の質量分析装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの保護抵抗は、第1の保護抵抗を含み、
前記抵抗分割回路の前記高圧側抵抗は、平板状の第1の基板上に形成され、
前記第1の保護抵抗は、平板状の第2の基板上に形成される、請求項1記載の質量分析装置。
【請求項11】
前記第2の基板は、前記第1の基板に平行である、請求項10記載の質量分析装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、前記第1の保護抵抗と並列に接続された第2の保護抵抗を含み、
前記第2の保護抵抗は、前記第1の基板に平行で、かつ前記第1の基板を挟んで前記第2の基板と反対側に配置される平板状の第3の基板上に形成される、請求項11記載の質量分析装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、前記第1の保護抵抗と直列に接続された第3の保護抵抗と、前記第2の保護抵抗と直列に接続された第4の保護抵抗とを含み、
前記第3の保護抵抗は、前記第2の基板上に形成され、前記第4の保護抵抗は、前記第3の基板上に形成される、請求項12記載の質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流高圧電源装置を備えた質量分析装置に関し、特に高圧の出力電圧を誤差増幅器で取り扱える電圧にまで分圧する抵抗分割回路を備えた直流高圧電源装置を備えた質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密な分析を行う分析装置には、高い安定性で動作する電源装置が用いられる。例えば、特許文献1には、フライトチューブを有する飛行時間型質量分析装置が記載されている。フライトチューブには、電圧印加部(電源装置)により±数kVの直流の高電圧が供給される。
【0003】
飛行時間型質量分析装置においては、試料から生成されたイオンが、フライトチューブの飛行空間に導入され、質量電荷比に応じた速度で飛行空間を飛行する。その後、イオンは、質量電荷比が小さい順に検出器に到達し、検出器により検出される。検出されたイオンの飛行時間が質量電荷比に換算されることによりマススペクトルが作成される。作成されたマススペクトルに基づいて、試料の質量分析が行われる。
【0004】
そのような飛行時間型質量分析装置には、従来から、昇圧された高圧の出力電圧を誤差増幅器で取り扱える電圧にまで分圧する抵抗分割回路を備えた電源装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抵抗分割回路は、高圧の出力電圧を誤差増幅器で取り扱える電圧にまで分圧するために用いられるが、抵抗分割回路から周囲へのリーク電流が変化すると抵抗分割回路の分圧比が変化し、ひいては高圧出力電圧の変動につながる。
【0007】
このような問題を防止するため、通常、抵抗分割回路の周囲には体積抵抗率の高いシリコーン樹脂またはエポキシ樹脂などを充填することが広く一般に行われている。しかしながら、樹脂を充填するためにコストと手間が掛かるとともに、電源装置の重量が増加するという問題がある。また、樹脂を充填すると、直流高圧電源装置の周囲温度の変化によって樹脂の体積抵抗率が変化し、直流高圧電源装置の対温度変動率が悪化するという問題がある。
【0008】
一般に飛行時間型質量分析装置には、検出したイオンの測定質量電荷比の変動(つまり質量精度)が1ppm未満におさまることが求められており、他の分析装置に比べて非常に高い精度が要求される。従来の直流高圧電源装置により生成された電圧を飛行時間型質量分析装置の分析部電極に供給した場合、電圧変動により検出されるイオンの質量電荷比が変動してしまい、許容できない質量精度の悪化につながる。
【0009】
それゆえに、本発明の目的は、直流高電圧電源装置の出力電圧の安定性が向上し、質量精度が改善された質量分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の質量分析装置は、試料をイオン化するイオン化部と、イオン化部により生成されたイオンが導入され、当該イオンが飛行する飛行部と、直流高圧電源装置とを備える。直流高圧電源装置は、入力される電圧を昇圧した昇圧電圧を出力する昇圧回路と、昇圧回路の出力と接地電源との間に直列接続された高圧側抵抗と低圧側抵抗とを含み、昇圧電圧を分圧した分圧電圧を生成する抵抗分割回路と、基準電圧と分圧電圧との誤差を増幅して、昇圧電圧の大きさを制御する制御信号を出力する誤差増幅器と、昇圧回路の出力と接地電源との間に抵抗分割回路と並列に接続される少なくとも1つの保護抵抗とを含む。昇圧電圧が供給される、試料由来のイオンが飛行する飛行部を形成する少なくとも一つの電極を備える。
【0011】
これにより、対温度変動率が悪化せず、かつ抵抗分割回路の分圧比が変動しないようにすることができる。その結果、直流高電圧電源装置の出力電圧の安定性が向上し、質量分析装置の質量精度を改善することができる。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つの保護抵抗は、第1の保護抵抗を含む。抵抗分割回路の高圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある第1の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下である。
【0013】
これによって、抵抗分割回路の高圧型抵抗から周囲へ流れるリーク電流などを効果的に遮断できる。
【0014】
より好ましくは、抵抗分割回路の高圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある第1の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下である。
【0015】
これによって、抵抗分割回路の高圧型抵抗から周囲へ流れるリーク電流などをより効果的に遮断できる。
【0016】
さらに好ましくは、抵抗分割回路の高圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある第1の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下である。
【0017】
これによって、抵抗分割回路の高圧型抵抗から周囲へ流れるリーク電流などをさらに効果的に遮断できる。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、第1の保護抵抗と直列に接続された第2の保護抵抗を含む。抵抗分割回路の低圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある第2の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の比が、90%以上かつ110%以下である。
【0019】
これによって、抵抗分割回路の低圧型抵抗から周囲へ流れるリーク電流などを効果的に遮断できる。
【0020】
より好ましくは、抵抗分割回路の低圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある第2の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の比が、95%以上かつ105%以下である。
【0021】
これによって、抵抗分割回路の低圧型抵抗から周囲へ流れるリーク電流などをより効果的に遮断できる。
【0022】
さらに好ましくは、抵抗分割回路の低圧側抵抗を構成する抵抗体のパターン上のある一点の電位に対する、該一点と最短距離にある第2の保護抵抗の抵抗体のパターン上の一点の比が、99%以上かつ101%以下である。
【0023】
これによって、抵抗分割回路の低圧型抵抗から周囲へ流れるリーク電流などをさらに効果的に遮断できる。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つの保護抵抗は、第1の保護抵抗を含む。抵抗分割回路の高圧側抵抗は、円筒型である。第1の保護抵抗は、円筒型の高圧側抵抗の周りを覆うリング型である。
【0025】
これによって、抵抗分割回路の高圧側抵抗が円筒型の場合に、高圧型抵抗から周囲にリーク電流が流れるのを効果的に防止できる。
【0026】
好ましくは、少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、第1の保護抵抗と直列に接続された第2の保護抵抗を含む。抵抗分割回路の低圧側抵抗は、円筒型である。第2の保護抵抗は、円筒型の低圧側抵抗の周りを覆うリング型である。
【0027】
これによって、抵抗分割回路の低圧側抵抗が円筒型の場合に、高圧型抵抗から周囲にリーク電流が流れるのを効果的に防止できる。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つの保護抵抗は、第1の保護抵抗を含む。抵抗分割回路の高圧側抵抗は、平板状の第1の基板上に形成される。第1の保護抵抗は、平板状の第2の基板上に形成される。
【0029】
これによって、抵抗分割回路の高圧側抵抗が平板状の場合に、高圧型抵抗から周囲にリーク電流が流れるのを効果的に防止できる。
【0030】
好ましくは、第2の基板は、第1の基板に平行である。
これによって、高圧型抵抗から周囲にリーク電流が流れるのを効果的に防止できる。
【0031】
好ましくは、少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、第1の保護抵抗と並列に接続された第2の保護抵抗を含む。第2の保護抵抗は、第1の基板に平行で、かつ第1の基板を挟んで第2の基板と反対側に配置される平板状の第3の基板上に形成される。
【0032】
これによって、高圧型抵抗から周囲にリーク電流が流れるのをより効果的に防止できる。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つの保護抵抗は、さらに、第1の保護抵抗と直列に接続された第3の保護抵抗と、第2の保護抵抗と直列に接続された第4の保護抵抗とを含む。第3の保護抵抗は、第2の基板上に形成される。第4の保護抵抗は、第3の基板上に形成される。
【0034】
これによって、低圧型抵抗から周囲にリーク電流が流れるのを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、対温度変動率が悪化せず、かつ抵抗分割回路の分圧比が変動しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1の従来例の直流高圧電源装置1の構成を表わす図である。
【
図3】第1の実施形態の直流高圧電源装置51の構成を表わす図である。
【
図4】抵抗分割回路R1と保護抵抗13の構造を表わす図である。
【
図5】(a)は、抵抗11の抵抗体のパターンを表わす図である。(b)は、保護抵抗13の抵抗体のパターンを表わす図である。
【
図6】第2の実施形態の直流高圧電源装置52の構成を表わす図である。
【
図7】抵抗分割回路R1と、保護抵抗13と、保護抵抗53の構造を表わす図である。
【
図8】(a)は、抵抗11の抵抗体のパターンを表わす図である。(b)は、保護抵抗13の抵抗体のパターンを表わす図である。(c)は、抵抗12の抵抗体のパターンを表わす図である。(d)は、保護抵抗53の抵抗体のパターンを表わす図である。
【
図9】第2の従来例の直流高圧電源装置91の構成を表わす図である。
【
図10】(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向から見た図である。(b)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。
【
図11】第3の実施形態の直流高圧電源装置52の構成を表わす図である。
【
図12】抵抗分割回路R2、保護抵抗31、保護抵抗41を第1の方向から見た図である。
【
図13】(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。(b)は、保護抵抗31を第1の方向と垂直な方向から見た図である。(c)は、保護抵抗41を第1の方向と垂直な方向から見た図である。
【
図14】第4の実施形態の直流高圧電源装置54の構成を表わす図である。
【
図15】抵抗分割回路R2、保護抵抗31、抵抗32、保護抵抗41、保護抵抗42を第1の方向から見た図である。
【
図16】(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。(b)は、保護抵抗31、抵抗32を第1の方向と垂直な方向から見た図である。(c)は、保護抵抗41、保護抵抗42を第1の方向と垂直な方向から見た図である。
【
図17】(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。(b)は、保護抵抗31、抵抗32を第1の方向と垂直な方向から見た図である。(c)は、保護抵抗41、保護抵抗42を第1の方向と垂直な方向から見た図である。
【
図18】第6の実施形態の直流高圧電源装置63の構成を表わす図である。
【
図19】抵抗分割回路R2、抵抗71,72を第1の方向から見た図である。
【
図20】抵抗分割回路R2、抵抗71,72を第1の方向と垂直な方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
まず、従来の直流高圧電源装置1を説明する。
【0038】
図1は、第1の従来例の直流高圧電源装置1の構成を表わす図である。
直流高圧電源装置1は、インバータ回路2と、昇圧回路3と、抵抗分割回路R1と、誤差増幅器4とを備える。
【0039】
インバータ回路2は、直流電源電圧VINを受けて、交流電圧に変換する。
昇圧回路3は、インバータ回路2から出力される交流電圧を直流の高電圧に昇圧して、直流の昇圧電圧VOUTを出力する。
【0040】
抵抗分割回路R1は、抵抗11と抵抗12によって構成される。
抵抗11は、昇圧回路3の出力端子と接続されるノードN1とノードN2との間に接続される。抵抗11は、高圧型抵抗である。抵抗12は、ノードN2とグランドGNDとの間に接続される。抵抗12は、低圧側抵抗である。抵抗11の抵抗値が大きく、抵抗12の抵抗値は小さく設定される。たとえば、抵抗11の抵抗値は、抵抗12の抵抗値の100倍とすることができる。これによって、誤差増幅器4へ入力される電圧を小さくすることができる。
【0041】
誤差増幅器4は、ノードN2の電圧と基準電圧VREFとの誤差を増幅して、制御信号CTをインバータ回路2に出力することによって、インバータ回路2のスイッチングを制御する。
【0042】
図2は、抵抗分割回路R1の構造を表わす図である。抵抗分割回路R1を構成する抵抗11および抵抗12は、円筒型の形状を有する。
【0043】
抵抗分割回路R1と周囲との間にリーク電流の流れを遮断するものが存在しないので、抵抗分割回路R1から、周囲へリーク電流が流れるという問題がある。これによって、ノードN2の電圧が変動し、インバータ回路2を正しく制御することができない。
【0044】
図3は、第1の実施形態の質量分析装置の構成を表わす図である。
この質量分析装置は、質量分析部501と、直流高圧電源装置51とを備える。
【0045】
質量分析部501は、略大気圧であるイオン化室520と真空ポンプ(図示なし)により真空排気された高真空の分析室524との間に、段階的に真空度が高められた第1中間室521、第2中間室522、及び第3中間室523を備えた多段差動排気系の構成を有している。
【0046】
イオン化室520には液体試料に電荷を付与しながら噴霧するエレクトロスプレイイオン化用プローブ(ESIプローブ)201が設置されている。これによって、液体試料がイオン化される。
【0047】
イオン化室520は、試料をイオン化するイオン化部を構成する。
イオン化室520と第1中間室521は細径の加熱キャピラリ202を通して連通している。第1中間室521と第2中間室522は頂部に小孔を有するスキマー212で隔てられる。第1中間室521と第2中間室522にはそれぞれ、イオンを収束させつつ後段へ輸送するためのイオンガイド211、221が配置されている。第3中間室523には、イオンを質量電荷比に応じて分離する四重極マスフィルタ231、多重極イオンガイド233を内部に備えたコリジョンセル232、及びコリジョンセル232から放出されたイオンを輸送するためのイオンガイド234が配置されている。コリジョンセル232の内部には、アルゴン、窒素などのCIDガスが必要に応じて供給される。
【0048】
第3中間室523に位置するコリジョンセル232から放出されたイオンは、直交加速電極242(対向配置された1組の電極242A、242Bからなり、電極242Bはグリッド電極)のイオン加速領域に進入し、該進入方向と直交する方向(グリッド電極242Bの側)に加速される。グリッド電極242Bを通過したイオンは、さらにイオン軌道の両側に配置された加速電極(第2加速電極)243によって加速されて飛行部555に入射される。
【0049】
質量分析部501は、飛行部555を備える。飛行部555は、試料由来のイオンが飛行空間を飛行するために、複数の電極を備える。複数の電極は、飛行空間の外縁に位置するフライトチューブ246と、バックプレート247と、飛行空間においてイオンの折り返し軌道を形成する複数のリフレクトロン電極244とを含む。これらの複数の電極によって飛行空間内に形成されたポテンシャルによって、飛行空間に入射されたイオンの飛行経路が制御される。すなわち、イオンは、リフレクトロン電極244とバックプレート247からなる折り返し部に入射して徐々に減速し、飛行経路が折り返されて検出器245に入射する。
【0050】
直流高圧電源装置51は、飛行部555に含まれる複数の電極のうちの少なくとも1つの電極に高電圧VOUTを供給する。
【0051】
直流高圧電源装置51は、第1の従来例の直流高圧電源装置1の構成に加えて、保護抵抗13を備える。保護抵抗13は、ノードN1とグランドGNDとの間に、抵抗分割回路R1と並列に接続される。
【0052】
図4は、抵抗分割回路R1と保護抵抗13の構造を表わす図である。
第1の従来例と同様に、抵抗分割回路R1を構成する抵抗11および抵抗12は、円筒型の形状を有する。保護抵抗13は、円筒型の抵抗11の外周を囲むリング型の形状を有する。
【0053】
図5(a)は、抵抗11の抵抗体のパターンを表わす図である。抵抗11は、パターンPT1の抵抗体を有する。
図5(b)は、保護抵抗13の抵抗体のパターンを表わす図である。保護抵抗13は、パターンPT2の抵抗体を有する。パターンPT1およびパターンPT2は、いずれも円筒の外周上の巻線状の形状を有する。パターンPT1およびパターンPT2は、巻線の太さまたは間隔が相違する。
【0054】
ここで、パターンPT1とパターンPT2の形状、たとえば、巻線の太さまたは間隔を調整することによって、次のように設定することができる。
【0055】
パターンPT1上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT2上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0056】
より好ましくは、パターンPT1上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT2上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0057】
さらに好ましくは、パターンPT1上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT2上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0058】
以上のような設定によって、抵抗11から周囲へ流れるリーク電流などを効果的に遮断できる。なお、点Pは、パターンPT1上のすべての点としてもよい。
【0059】
抵抗12の周りには、保護抵抗が配置されないが、抵抗12の電圧は、抵抗11の電圧に比べて微小なため、抵抗12から周囲へリーク電流が流れたとしても、ノードN2の電圧の変動は無視できる。
【0060】
本実施の形態によれば、保護抵抗によって抵抗分割回路からのリーク電流を大幅に低減(理想的にはゼロ)することができ、結果として抵抗分割回路の分圧比が抵抗周囲の体積抵抗率の影響を受けなくなる。これにより、樹脂の充填を不要することができ、電源装置のコスト低減、および軽量化を実現できる。また、絶縁等の理由で樹脂充填する場合、電源装置の周囲温度の変化によって樹脂の体積抵抗率が変化したとしても、電源装置の対温度変動率が悪化しないという利点がある。
【0061】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態の質量分析装置の構成を表わす図である。
【0062】
この質量分析装置は、質量分析部501と、直流高圧電源装置52とを備える。
第2の実施形態の直流高圧電源装置52は、第1の実施形態の直流高圧電源装置51の構成に加えて、保護抵抗53を備える。
【0063】
直列接続された保護抵抗13および保護抵抗53は、ノードN1とグランドGNDとの間に、抵抗分割回路R1と並列に接続される。
【0064】
図7は、抵抗分割回路R1と、保護抵抗13と、保護抵抗53の構造を表わす図である。
【0065】
第1の従来例および第1の実施形態と同様に、抵抗分割回路R1を構成する抵抗11および抵抗12は、円筒型の形状を有する。第1の実施形態と同様に、保護抵抗13は、円筒型の抵抗11の外周を囲むリング型の形状を有する。本実施の形態では、保護抵抗53は、円筒型の抵抗12の外周を囲むリング型の形状を有する。
【0066】
図9(a)は、抵抗11の抵抗体のパターンを表わす図である。抵抗11は、パターンPT1の抵抗体を有する。
図9(b)は、保護抵抗13の抵抗体のパターンを表わす図である。保護抵抗13は、パターンPT2の抵抗体を有する。パターンPT1およびパターンPT2は、いずれも円筒の外周上の巻線上の形状を有する。パターンPT1およびパターンPT2は、巻線の太さまたは間隔が相違する。
【0067】
図9(c)は、抵抗12の抵抗体のパターンを表わす図である。抵抗12は、パターンPT11の抵抗体を有する。
図9(d)は、保護抵抗53の抵抗体のパターンを表わす図である。保護抵抗53は、パターンPT12の抵抗体を有する。パターンPT11およびパターンPT12は、いずれも円筒の外周上の巻線上の形状を有する。パターンPT11およびパターンPT12は、巻線の太さまたは間隔が相違する。
【0068】
ここで、パターンPT1とパターンPT2の形状、たとえば、巻線の太さまたは間隔を調整することによって、次のように設定することができる。
【0069】
パターンPT1上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT2上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0070】
より好ましくは、パターンPT1上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT2上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0071】
さらに好ましくは、パターンPT1上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT2上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0072】
また、パターンPT11とパターンPT12の形状、たとえば、巻線の太さまたは間隔を調整することによって、次のように設定することができる。
【0073】
パターンPT11上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT12上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0074】
より好ましくは、パターンPT11上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT12上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0075】
さらに好ましくは、パターンPT11上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT12上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0076】
以上のような設定によって、抵抗11、抵抗12から周囲へ流れるリーク電流などを効果的に遮断できる。なお、点Pは、パターンPT1上のすべての点としてもよい。点Qは、パターンPT11上のすべての点としてもよい。
【0077】
[第3の実施形態]
図9は、第2の従来例の直流高圧電源装置91の構成を表わす図である。
【0078】
第2の従来例の直流高圧電源装置91は、第1の従来例の直流高圧電源装置91の抵抗分割回路R1に代えて、抵抗分割回路R2を備える。
【0079】
抵抗分割回路R2は、抵抗21a、21bによって構成される。抵抗21aは、ノードN1とノードN2との間に接続される。抵抗21bは、ノードN2とグランドGNDとの間に接続される。抵抗21aは、高圧型抵抗である。抵抗21bは、低圧側抵抗である。抵抗21aの抵抗値が大きく、抵抗21bの抵抗値は小さく設定される。たとえば、抵抗21aの抵抗値は、抵抗21bの抵抗値の100倍とすることができる。これによって、誤差増幅器4へ入力される電圧を小さくすることができる。
【0080】
図10(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向から見た図である。
図10(b)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。
【0081】
抵抗分割回路R2は、平板型の形状を有する。抵抗21a、21bは、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT3,PT4で構成される。
【0082】
第1の従来例の抵抗分割回路R1と同様に、抵抗分割回路R2と周囲との間にリーク電流の流れを遮断するものが存在しないので、抵抗分割回路R2から、周囲へリーク電流が流れるという問題がある。これによって、ノードN2の電圧が変動し、インバータ回路2を正しく制御することができない。
【0083】
図11は、第3の実施形態の質量分析装置の構成を表わす図である。
この質量分析装置は、質量分析部501と、直流高圧電源装置83とを備える。
【0084】
第3の実施形態の直流高圧電源装置83は、第2の従来例の直流高圧電源装置91の構成に加えて、保護抵抗31、保護抵抗41を備える。
【0085】
保護抵抗31は、ノードN1とグランドGNDとの間に、抵抗分割回路R2と並列に接続される。保護抵抗41は、ノードN1とグランドGNDとの間に、抵抗分割回路R2と並列に接続される。
【0086】
図12は、抵抗分割回路R2、保護抵抗31、保護抵抗41を第1の方向から見た図である。
【0087】
図13(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。第2の従来例と同様に、抵抗分割回路R2は、平板型の形状を有する。抵抗21a、21bは、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT3,PT4で構成される。
【0088】
図13(b)は、保護抵抗31を第1の方向と垂直な方向から見た図である。保護抵抗31は、平板型の形状を有する。保護抵抗31は、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT5で構成される。
【0089】
図13(c)は、保護抵抗41を第1の方向と垂直な方向から見た図である。保護抵抗41は、平板型の形状を有する。保護抵抗41は、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT6で構成される。
【0090】
保護抵抗31が形成される基板と、保護抵抗41が形成される基板は、抵抗分割回路R2が形成される基板とは平行である。保護抵抗41が形成される基板は、抵抗分割回路R2が形成される基板を挟んで、保護抵抗31が形成される基板と反対側に位置する。
【0091】
ここで、パターンPT3とパターンPT2とパターンPT6の形状を略同一とすることによって、次のように設定することができる。
【0092】
パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT5上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT6上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0093】
より好ましくは、パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT5上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT6上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0094】
さらに好ましくは、パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT5上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT6上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0095】
以上のような設定によって、抵抗21aから周囲へ流れるリーク電流などを効果的に遮断できる。なお、点Pは、パターンPT3上のすべての点としてもよい。
【0096】
抵抗21bの周りには、保護抵抗が配置されないが、抵抗21bの電圧は、抵抗21aの電圧に比べて微小なため、抵抗12から周囲へリーク電流が流れたとしても、ノードN2の電圧の変動は無視できる。
【0097】
[第4の実施形態]
図14は、第4の実施形態の質量分析装置の構成を表わす図である。
【0098】
この質量分析装置は、質量分析部501と、直流高圧電源装置54とを備える。
第4の実施形態の直流高圧電源装置54は、第3の実施形態の直流高圧電源装置83の構成に加えて、保護抵抗32および保護抵抗42を備える。
【0099】
直列接続された保護抵抗31および保護抵抗32は、ノードN1とグランドGNDとの間に、抵抗分割回路R2と並列に接続される。直列接続された保護抵抗41および保護抵抗42は、ノードN1とグランドGNDとの間に、抵抗分割回路R2と並列に接続される。
【0100】
図15は、抵抗分割回路R2、保護抵抗31、保護抵抗32、保護抵抗41、保護抵抗42を第1の方向から見た図である。
【0101】
図16(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。抵抗分割回路R2は、平板型の形状を有する。抵抗21a、21bは、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT3,PT4で構成される。
【0102】
図16(b)は、保護抵抗31、保護抵抗32を第1の方向と垂直な方向から見た図である。保護抵抗31、32は、平板型の形状を有する。保護抵抗31,32は、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT5,PT7で構成される。
【0103】
図16(c)は、保護抵抗41、保護抵抗42を第1の方向と垂直な方向から見た図である。保護抵抗41、42は、平板型の形状を有する。保護抵抗41,42は、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT6,PT8で構成される。
【0104】
保護抵抗31、32が形成される基板と、保護抵抗41、42が形成される基板は、抵抗分割回路R2が形成される基板とは平行である。保護抵抗41、42が形成される基板は、抵抗分割回路R2が形成される基板を挟んで、保護抵抗31、32が形成される基板と反対側に位置する。
【0105】
ここで、パターンPT3とパターンPT2とパターンPT6の形状を略同一とすることによって、次のように設定することができる。
【0106】
パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT5上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT6上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0107】
より好ましくは、パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT5上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT6上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0108】
さらに好ましくは、パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT5上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT6上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0109】
ここで、パターンPT4とパターンPT7とパターンPT8の形状を略同一とすることによって、次のように設定することができる。
【0110】
パターンPT4上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT7上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とし、一点Qと最短距離にあるパターンPT8上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0111】
より好ましくは、パターンPT4上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT7上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とし、一点Qと最短距離にあるパターンPT8上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0112】
さらに好ましくは、パターンPT4上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT7上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とし、一点Qと最短距離にあるパターンPT8上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0113】
以上のような設定によって、抵抗21a、21bから周囲へ流れるリーク電流などを効果的に遮断できる。なお、点Pは、パターンPT3上のすべての点としてもよい。点Qは、パターンPT4上のすべての点としてもよい。
【0114】
[第5の実施形態]
図17(a)は、抵抗分割回路R2を第1の方向と垂直な方向から見た図である。第4の実施形態と同様に、抵抗分割回路R2は、平板型の形状を有する。抵抗21a、21bは、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT3,PT4で構成される。
【0115】
図17(b)は、保護抵抗31、保護抵抗32を第1の方向と垂直な方向から見た図である。保護抵抗31、32は、平板型の形状を有する。保護抵抗31,32は、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT21,PT22で構成される。
【0116】
図17(c)は、保護抵抗41、保護抵抗42を第1の方向と垂直な方向から見た図である。保護抵抗41、42は、平板型の形状を有する。保護抵抗41,42は、平板状のセラミックス基板に形成される抵抗体のパターンPT23,PT24で構成される。
【0117】
保護抵抗31、32が形成される基板と、保護抵抗41、42が形成される基板は、抵抗分割回路R2が形成される基板とは平行である。保護抵抗41、42が形成される基板は、抵抗分割回路R2が形成される基板を挟んで、保護抵抗31、32が形成される基板と反対側に位置する。
【0118】
ここで、パターンPT3とパターンPT21とパターンPT23の形状を略同一とすることによって、次のように設定することができる。
【0119】
パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT21上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT23上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0120】
より好ましくは、パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT21上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT23上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0121】
さらに好ましくは、パターンPT3上のある一点Pの電位に対する、一点Pと最短距離にあるパターンPT21上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とし、一点Pと最短距離にあるパターンPT23上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0122】
ここで、パターンPT4とパターンPT22とパターンPT24の形状を略同一とすることによって、次のように設定することができる。
【0123】
パターンPT4上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT22上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とし、一点Qと最短距離にあるパターンPT24上の一点の電位の比が、90%以上かつ110%以下とする。
【0124】
より好ましくは、パターンPT4上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT22上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とし、一点Qと最短距離にあるパターンPT24上の一点の電位の比が、95%以上かつ105%以下とする。
【0125】
さらに好ましくは、パターンPT4上のある一点Qの電位に対する、一点Qと最短距離にあるパターンPT22上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とし、一点Qと最短距離にあるパターンPT24上の一点の電位の比が、99%以上かつ101%以下とする。
【0126】
以上のような設定によって、抵抗21a、21bから周囲へ流れるリーク電流などを効果的に遮断できる。なお、点Pは、パターンPT3上のすべての点としてもよい。点Qは、パターンPT4上のすべての点としてもよい。
【0127】
[第6の実施形態]
図18は、第6の実施形態の質量分析装置の構成を表わす図である。
【0128】
この質量分析装置は、質量分析部501と、直流高圧電源装置63とを備える。
第6の実施形態の直流高圧電源装置63は、第2の従来例の直流高圧電源装置91の構成に加えて、保護抵抗71,72を備える。
【0129】
直列接続された保護抵抗71,72は、ノードN1とグランドGNDとの間に、抵抗分割回路R2と並列に接続される。保護抵抗71,72は、平板型の形状を有する。
【0130】
保護抵抗71,72の平板は、ノイズ源と、抵抗分割回路R2との間に配置されるようにすることができる。
【0131】
図19は、抵抗分割回路R2、保護抵抗71,72を第1の方向から見た図である。
図20は、抵抗分割回路R2、保護抵抗71,72を第1の方向と垂直な方向から見た図である。
図19および
図20において、抵抗分割回路R2、保護抵抗71,72の抵抗体のパターンの記載は省略している。
【0132】
たとえば、平板状の抵抗分割回路R2の平板に平行な方向からノイズを受ける場合には、
図19、
図20に示すように、保護抵抗71,72が形成される平板状の基板を抵抗分割回路R2が形成される平板状の基板に垂直に配置して、抵抗分割回路R2にノイズが流入するのを防止することができる。
【0133】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0134】
1,51,52,54,63,83,91 直流高圧電源装置、2 インバータ回路、3 昇圧回路、4 誤差増幅器、11,12,21a,21b 抵抗 13,31,32,41,42,53,71,72 保護抵抗、201 エレクトロスプレイイオン化用プローブ(ESIプローブ)、202 加熱キャピラリ、211,221,234 イオンガイド、 212 スキマー、231 四重極増すフィルタ、232 コリジョンセル、233 多重極イオンガイド、242 直交加速電極、243 第2加速電極、244 リフレクトロン電極、245 検出器、246 フライトチューブ、247 バックプレート、501 質量分析部、520 イオン化室、521 第1中間室、522 第2中間室、532 第3中間室、524 分析室、555 飛行部、R1,R2 抵抗分割回路、PT1,PT2,PT3,PT4,PT5,PT6,PT7,PT8,PT11,PT12,PT21,PT22,PT23,PT24 抵抗体のパターン。