(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】真空ポンプ起動制御システム、コントローラ、情報サーバ、真空ポンプ起動制御方法
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
F04D19/04 H
(21)【出願番号】P 2018203163
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋悟
(72)【発明者】
【氏名】大藤 正幹
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/004171(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/081726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動対象の真空ポンプ本体から個体識別情報を取得する取得部と、
登録されている
起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の個体識別情報の中で、前記取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって一致する個体識別情報が登録されていると判定された場合、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、前記判定部によって一致する個体識別情報が登録されていないと判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する許可部とを備
え、
前記取得部は、前記起動対象の真空ポンプ本体から、前記個体識別情報に加えてポンプ分解履歴情報を取得し、
前記判定部は、一致する個体識別情報が登録されていると判定した場合、前記取得部が取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かをさらに判定し、
取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致すると判定された場合、前記許可部は、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致しないと判定された場合、前記許可部は、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する、
真空ポンプ起動制御システム。
【請求項2】
起動対象の真空ポンプ本体から個体識別情報を取得する取得部と、
登録されている起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の個体識別情報の中で、前記取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって一致する個体識別情報が登録されていると判定された場合、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、前記判定部によって一致する個体識別情報が登録されていないと判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する許可部とを備え、
前記真空ポンプ本体を制御するコントローラと、前記コントローラと接続される情報サーバとを備え、
前記情報サーバは、
起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の前記個体識別情報を登録する第1記憶部を有し、
前記コントローラは、
前記取得部と、
前記取得部によって取得された個体識別情報を前記情報サーバに送信する第1送信部とを有し、
前記情報サーバは、
前記第1送信部から送信された個体識別情報が、前記第1記憶部に登録されているか否かを判断し、登録有無の回答信号を、前記コントローラに送信する第2送信部をさらに有し、
前記コントローラは、
前記第2送信部からの回答信号を参照することにより、前記取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する前記判定部と、
前記許可部と、をさらに有する、
真空ポンプ起動制御システム。
【請求項3】
請求項
1に記載の真空ポンプ起動制御システムにおいて、
前記真空ポンプ起動制御システムが、前記真空ポンプ本体を制御するコントローラと、前記コントローラと接続される情報サーバとを備え、
前記情報サーバは、
起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の個体識別情報と、前記個体識別情報に対応付けて分解履歴情報とを登録する第1記憶部を有し、
前記コントローラは、
前記取得部と、
前記取得部によって取得された個体識別情報および分解履歴情報を、前記情報サーバに送信する第1送信部とを有し、
前記情報サーバは、
前記第1送信部から送信された個体識別情報が、前記第1記憶部に登録されているか否かを判断し、登録されている場合には、前記第1送信部から送信された分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かをさらに判断し、登録有無およびポンプ分解履歴についての回答信号を、前記コントローラに送信する第2送信部をさらに有し、
前記コントローラは、
前記第2送信部からの回答信号を参照することにより、前記取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否か、および、前記取得部で取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かを判定する前記判定部と、
前記許可部と、をさらに有する、
真空ポンプ起動制御システム。
【請求項4】
請求項
2または3に記載の真空ポンプ起動制御システムにおいて、
前記真空ポンプ本体はポンプ制御情報に基づき駆動制御されるものであり、
前記第1記憶部は、前記個体識別情報に対応付けて、前記ポンプ制御情報をさらに登録し、
前記第2送信部は、前記第1送信部から送信された個体識別情報に対応付けて前記第1記憶部に登録されている前記ポンプ制御情報を読み出して、前記コントローラにさらに送信し、
前記コントローラは、前記第2送信部から送信された前記ポンプ制御情報を使用して、前記真空ポンプ本体を制御する、真空ポンプ起動制御システム。
【請求項5】
請求項
2から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ起動制御システムに適用される前記コントローラ。
【請求項6】
請求項
2から4のいずれか一項に記載の真空ポンプ起動制御システムに適用される前記情報サーバ。
【請求項7】
起動対象の真空ポンプ本体から個体識別情報を取得する取得ステップと、
登録されている
起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の個体識別情報の中で、前記取得ステップで取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによって一致する個体識別情報が登録されていると判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、前記判定ステップによって一致する個体識別情報が登録されていないと判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する
起動決定ステップとを含
み、
前記取得ステップは、前記起動対象の真空ポンプ本体から、前記個体識別情報に加えてポンプ分解履歴情報を取得するステップをさらに含み、
前記判定ステップは、一致する個体識別情報が登録されていると判定した場合、取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かをさらに判定するステップを含み、
取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致すると判定された場合、前記起動決定ステップは、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致しないと判定された場合、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止するステップをさらに含む、
真空ポンプ起動制御方法。
【請求項8】
真空ポンプ起動制御システムにおいて実行される真空ポンプ起動制御方法であって、
起動対象の真空ポンプ本体から個体識別情報を取得する取得ステップと、
登録されている起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の個体識別情報の中で、前記取得ステップで取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによって一致する個体識別情報が登録されていると判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、前記判定ステップによって一致する個体識別情報が登録されていないと判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する起動決定ステップとを含み、
前記真空ポンプ起動制御システムは、前記真空ポンプ本体を制御するコントローラと、前記コントローラと接続される情報サーバとを備え、
前記情報サーバは、起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の前記個体識別情報を登録する第1記憶部を有し、
前記コントローラは、前記取得ステップを実行し、前記取得ステップにより取得された個体識別情報を前記情報サーバに送信する第1送信部を有し、
前記情報サーバは、前記第1送信部から送信された個体識別情報が、前記第1記憶部に登録されているか否かを判断し、登録有無の回答信号を、前記コントローラに送信する第2送信部をさらに有し、
前記コントローラは、前記判定ステップにおいて、前記第2送信部からの回答信号を参照することにより、前記取得ステップで取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定し、前記起動決定ステップをさらに実行する、
真空ポンプ起動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ本体を起動する際、信頼性のある真空ポンプ本体の起動であるか否かを確認する機能を実現するための真空ポンプ起動制御システム、コントローラ、情報サーバ、真空ポンプ起動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のターボ分子ポンプにおいては、ポンプロータを支持する磁気軸受本体の機種を容易にチェックすることができ、また、磁気軸受本体を制御するためのパラメータの確認と調整を自動的に行うことができる構成となっている。
磁気浮上型軸受装置を有するターボ分子ポンプでは、回転体の外径寸法が磁気浮上制御に大きく影響を与えるため、ポンプごとに制御パラメータを設定する必要がある。特許文献1に開示されている技術を採用することにより、異なる制御パラメータ(諸特性値)を使用して磁気軸受本体を駆動してしまうことが防止される。同様に、数万回転で回転する回転体を有するターボ分子ポンプにおいては、モータ回転制御に使用するパラメータをポンプごとに設定して最適な回転制御を行う必要があることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターボ分子ポンプ等のポンプロータを高速回転させて真空排気を行う真空ポンプでは、ポンプロータを高速回転させるので、ポンプ状態が適切でない場合に起動させるのは好ましくない。例えば、ポンプメンテナンス等により部品を組み直したり交換したりした場合、組付け誤差や部品の寸法誤差等によりポンプ運転に関係するパラメータが変化することがある。
しかしながら、特許文献1に記載のターボ分子ポンプでは、予めポンプ側に格納されているパラメータに従って磁気軸受制御を行うだけなので、上述のような分解等に伴うパラメータの変化があって起動が好ましくない場合であっても、起動してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい態様による真空ポンプ起動制御システムは、起動対象の真空ポンプ本体から個体識別情報を取得する取得部と、登録されている複数の真空ポンプ本体の個体識別情報の中で、前記取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定部と、前記判定部によって一致する個体識別情報が登録されていると判定された場合、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、前記判定部によって一致する個体識別情報が登録されていないと判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する許可部とを備える。
さらに好ましい態様では、前記取得部は、前記起動対象の真空ポンプ本体から、前記個体識別情報に加えてポンプ分解履歴情報を取得し、前記判定部は、一致する個体識別情報が登録されていると判定した場合、前記取得部が取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かをさらに判定し、取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致すると判定された場合、前記許可部は、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致しないと判定された場合、前記許可部は、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する。
さらに好ましい態様では、前記真空ポンプ起動制御システムが、前記真空ポンプ本体を制御するコントローラと、前記コントローラと接続される情報サーバとを備え、前記情報サーバは、起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の前記個体識別情報を登録する第1記憶部を有し、前記コントローラは、前記取得部と、前記取得部によって取得された個体識別情報を前記情報サーバに送信する第1送信部とを有し、前記情報サーバは、前記第1送信部から送信された個体識別情報が、前記第1記憶部に登録されているか否かを判断し、登録有無の回答信号を、前記コントローラに送信する第2送信部をさらに有し、前記コントローラは、前記第2送信部からの回答信号を参照することにより、前記取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する前記判定部と、前記許可部と、をさらに有する。
さらに好ましい態様では、前記真空ポンプ起動制御システムが、前記真空ポンプ本体を制御するコントローラと、前記コントローラと接続される情報サーバとを備え、前記情報サーバは、起動許可すべき複数の真空ポンプ本体の個体識別情報と、前記個体識別情報に対応付けて分解履歴情報とを登録する第1記憶部を有し、前記コントローラは、前記取得部と、前記取得部によって取得された個体識別情報および分解履歴情報を、前記情報サーバに送信する第1送信部とを有し、前記情報サーバは、前記第1送信部から送信された個体識別情報が、前記第1記憶部に登録されているか否かを判断し、登録されている場合には、前記第1送信部から送信された分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かをさらに判断し、登録有無およびポンプ分解履歴についての回答信号を、前記コントローラに送信する第2送信部をさらに有し、前記コントローラは、前記第2送信部からの回答信号を参照することにより、前記取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否か、および、前記取得部で取得した分解履歴情報が、前記個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かを判定する前記判定部と、前記許可部と、をさらに有する。
さらに好ましい態様では、前記真空ポンプ本体はポンプ制御情報に基づき駆動制御されるものであり、前記第1記憶部は、前記個体識別情報に対応付けて、前記ポンプ制御情報をさらに登録し、前記第2送信部は、前記第1送信部から送信された個体識別情報に対応付けて前記第1記憶部に登録されている前記ポンプ制御情報を読み出して、前記コントローラにさらに送信し、前記コントローラは、前記第2送信部から送信された前記ポンプ制御情報を使用して、前記真空ポンプ本体を制御する。
本発明の好ましい態様によるコントローラは、前記真空ポンプ起動制御システムに適用される。
本発明の好ましい態様による情報サーバは、前記真空ポンプ起動制御システムに適用される。
本発明の好ましい態様による真空ポンプ起動制御方法は、起動対象の真空ポンプ本体から個体識別情報を取得する取得ステップと、登録されている複数の真空ポンプ本体の個体識別情報の中で、前記取得ステップで取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップによって一致する個体識別情報が登録されていると判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、前記判定ステップによって一致する個体識別情報が登録されていないと判定されると、前記起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止するステップとを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、真空ポンプをより安全に起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、真空ポンプ制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ポンプ本体の起動処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、ポンプ本体の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、分解検出器が設けられている部分の拡大図である。
【
図5】
図5は、第2の実施の形態における起動処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第3の実施の形態における起動処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、交換前後のシャフトとラジアル電磁石との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、回転信号とモータ駆動時の転流タイミングとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
-第1の実施の形態-
図1は本発明の第1の実施の形態を説明する図であり、真空ポンプ制御システムの概略構成を示すブロック図である。真空ポンプ本体10は真空ポンプ制御システム1により制御される。真空ポンプ制御システム1は、真空ポンプ本体10を駆動制御するポンプコントローラ20と、ポンプコントローラ20と情報の授受を行う情報サーバ30とを備えている。真空ポンプ本体10は、不図示のポンプロータを磁気浮上支持する磁気軸受11と、ポンプロータを回転駆動するモータ12と、真空ポンプ本体10を識別するための個体識別情報を記憶する記憶部13とを備えている。真空ポンプ本体10とポンプコントローラ20は真空ポンプ装置を構成する。
【0009】
個体識別情報は、例えばIDナンバー(identification number)で表される。本実施の形態では、同一のメーカーにより製造された複数の真空ポンプ本体10には、機種に関係なく全て異なるIDナンバーが付されているものとする。すなわち、個体を識別する情報であるIDナンバーによって、複数のポンプ本体の各々が一意に特定できる。以下では個体識別情報のことをIDナンバーと呼ぶことにする。
【0010】
ポンプコントローラ20は、磁気軸受11を駆動制御する軸受制御部21と、モータ12を駆動制御するモータ制御部22と、記憶部23と、表示部24と、通信部25とを備えている。記憶部23はポンプ制御に必要なデータを記憶する。また、記憶部23は、真空ポンプ本体10の記憶部13に記憶されているIDナンバーや、情報サーバ30から取得したIDナンバーを記憶する。通信部25は、ポンプコントローラ20と真空ポンプ本体10および情報サーバ30との間で情報の授受を行う。ポンプコントローラ20と真空ポンプ本体10とは、電力ライン261と信号ライン262とを有するケーブル26により接続されている。
【0011】
情報サーバ30は、処理部31と、記憶部32と、通信部33とを備えている。ポンプコントローラ20は、通信ライン34を介して情報サーバ30と情報の授受を行う。通信ライン34は無線方式でも良いし有線方式でも良い。
情報サーバ30は、ポンプコントローラ20とは別の場所に設置され、インターネットなどの通信回線を介してポンプコントローラ20と接続されていても良い。情報サーバ30は、ユーザの管理下でユーザの施設に設置したり、ポンプメーカーの管理下でメーカーの施設に設置してもよい。その他、メンテナンス業者の施設にユーザの管理下で設置してもよい。
【0012】
ユーザの管理下で情報サーバ30が管理される場合、記憶部32には、ユーザが所有する同一メーカーで製造された全ての真空ポンプ本体10のポンプ情報が登録される。メーカーの施設に設置された情報サーバ30がメーカーの管理下で使用される場合、記憶部32には、メーカーで製造された全ての真空ポンプ本体10のポンプ情報が登録され、真空ポンプ本体10のIDナンバーとは別にユーザを識別するユーザ識別情報も記憶される。以下では、情報サーバ30がユーザからの委託の下、メーカーの施設に設置されて運用されるものとして説明する。ポンプ情報には、ポンプ本体のIDナンバー、運転が可能であることを示す情報、運転が不可であることを示す情報などが含まれる。
【0013】
例えば、工場出荷時にメーカーによって真空ポンプ本体10に固有のIDナンバーが情報サーバ30の記憶部32に登録される。出荷後にユーザでの運用が始まると、指定サービスマンないしはユーザ管理者により、記憶部32に真空ポンプ本体10の識別番号が記憶される。
【0014】
記憶部32には、IDナンバーに紐付けられてポンプ本体の運転可能情報、運転不可情報、各種パラメータ、諸特性値などが登録される。登録後に、真空ポンプ本体10に大きな外的衝撃が加わって故障した場合、修理不可で廃棄された場合には、その真空ポンプ本体10のIDナンバーに紐付けられて故障中であること、廃棄物であることなどが記録される。廃棄された場合は情報サーバ30の記憶部32から当該IDナンバーを削除してもよい。修理を行って運転可能な状態になった場合には、当該IDナンバーの故障中の情報を運転可能情報に更新される。
このように、情報サーバ30へIDナンバーを登録する権限、IDナンバーに付加される情報を更新する権限、IDナンバーを削除する権限は、特定の管理者、例えば、真空ポンプ本体10を製造しユーザから委託されたポンプメーカーのサービスマンや、真空ポンプ本体10の修理やメンテナンスをメーカーから許可された業者のサービスマンに限定されるものとする。以下、メーカーのサービスマン、および、メーカーが認定するメンテナンス業者のサービスマンを指定サービスマンと呼ぶ。
【0015】
図2は真空ポンプ本体10の起動処理の一例を示すフローチャートである。
図2(a)に示すフローチャートはポンプコントローラ20によって実行され、
図2(b)に示すフローチャートは情報サーバ30の処理部31によって実行される。ポンプコントローラ20の電源がオンされると、
図2(a)の処理がスタートする。
【0016】
ステップS101では、通信部25により、信号ライン262を介して真空ポンプ本体10の記憶部13からIDナンバーが取得される。ステップS102では、取得されたIDナンバーがポンプコントローラ20の記憶部23に記憶されているIDナンバーと一致するか否かの判定が行われる。ステップS102で一致(YES)と判定されると、ステップS108へ進んで真空ポンプ本体10の起動を許可する。その結果、真空ポンプ本体10は起動する。
【0017】
一方、ステップS102で不一致(NO)と判定されるとステップS103へ進む。ステップS102が否定されるのは例えば次の状況である。ポンプコントローラ20に接続されていた真空ポンプ本体10が故障して別の真空ポンプ本体10に変更された場合、ポンプ起動時にポンプコントローラ20には以前に接続されていた真空ポンプ本体10のIDナンバーが登録されている。そのため、IDナンバーが不一致となる。
ステップS102が否定されてステップS103に進むと、真空ポンプ本体10から取得したIDナンバーが情報サーバ30の記憶部32に登録されているか否かを確認する確認信号を、情報サーバ30へ送信する。ステップS104では、確認信号に対する回答信号を情報サーバ30から受信したか否かを判定する。ステップS104で受信して(YES)と判定されるとステップS105へ進む。ステップS105では、回答信号の内容が登録有りなのか登録無しなのかを判定し、登録有り(YES)の場合にはステップS106へ進み、登録無し(NO)の場合にはステップS107へ進む。
【0018】
起動対象の真空ポンプ本体10に該当するIDナンバーが情報サーバ30に登録されていないのは、たとえば次のような状況である。
起動対象である真空ポンプ本体10のIDナンバーは、メーカーが当該ポンプ本体を出荷する際に情報サーバ30に登録される。その後、指定サービスマンが当該ポンプ本体の点検をしたところ故障が判明し、その指定サービスマンが情報サーバ30にアクセスし、登録済みのIDナンバーを無効化したような状況である。無効化とは、IDナンバー自体のデータを削除し、あるいは、当該IDナンバーは削除せずに真空ポンプ本体10の使用を禁止する情報を付加することである。使用禁止情報が付されたIDナンバーも登録無しと判定される。この例では、指定サービスマンによって修理が完了すると、無効化したIDナンバーを有効化する。有効化されると登録有と判定される。
【0019】
ステップS105で登録有り(YES)と判定されてステップS106へ進んだ場合には、ステップS106において、記憶部23に記憶されているIDナンバーを取得したIDナンバーで書き換える。ステップS108では、ポンプコントローラ20に接続されている真空ポンプ本体10は運転可能と判断して通常通りの起動を許可する。起動許可により、真空ポンプ本体10は起動する。ステップS105で登録無し(NO)と判定されてステップS107へ進んだ場合には、運転をロックして真空ポンプ本体10の起動を禁止し、運転不可であること報知する表示を表示部24に表示するロック動作を行う。ロック状態ではオペレータが運転を促す指令をポンプコントローラ20に入力しても、ポンプが起動しないので真空ポンプ本体10の安全が確実に確保される。
ロック動作とは、ポンプ起動指令が出力されてもポンプの起動を禁止すること、あるいは、ポンプ起動指令を無効化することなどである。
なお、本実施形態では、運転不可をポンプコントローラ20の表示部24に表示したが、真空ポンプ本体10に表示部を設けてその表示部に運転不可を表示するようにしても良い。
【0020】
図2(b)は処理部31で実行される確認処理を示すフローチャートであり、
図2(a)のステップS102の処理によって送信された確認信号を情報サーバ30が受信すると処理を開始する。ステップS201では、受信したIDナンバーと記憶部32に登録されているIDナンバーとを比較し、一致するIDナンバーを検索する。ステップS202では、ステップS201の検索の結果、登録されているIDナンバーに一致するものがあるか否かを判定する。ステップS202で一致するものが有ると判定されるとステップS203へ進んで登録有りの信号を回答信号としてセットし、一致するものが無いと判定されるとステップS204へ進んで登録無しの信号を回答信号としてセットする。ステップS205では、ステップS203またはステップS204でセットされた回答信号をポンプコントローラ20へ送信する。
【0021】
なお、
図2(a)の処理では、電源オン前後で真空ポンプ本体10のIDナンバーが変化した場合のみ、ステップS103からステップS107およびステップS108までの処理(以下ではアクティベート処理と呼ぶ)を実行するようにした。ユーザが電源オフした直後に真空ポンプ本体10とポンプコントローラ20との組み合わせを変更することなく再び電源オンするような場合、当然、電源オン前後のIDナンバーに変化はない。このように真空ポンプ本体10とポンプコントローラ20との組み合わせを変更することなく正常に使用していて、電源オフと電源オンとの期間で真空ポンプ本体10の状態が変化しないような状況においては、真空ポンプ本体10が運転可能か否かを電源ONのたびに確認する必要性がない。
図2(a)では、記憶部13に記憶されているIDナンバーとポンプコントローラ20の記憶部23に記憶されているIDナンバーとが一致している場合にはステップS102からステップS108へ進むので、上述のアクティベート処理が省略されて直ちに真空ポンプ本体10が起動される。
この実施の形態におけるアクティベート処理とは、真空ポンプ本体10の起動に際し、起動対象である真空ポンプ本体10が信頼できるポンプであるか否かの確認を行う処理である。
【0022】
もちろん、真空ポンプ本体10の記憶部13に記憶されているIDナンバーとポンプコントローラ20の記憶部23に記憶されているIDナンバーとが一致しているか否かに関わらず、アクティベート処理を行うようにしても良い。
【0023】
なお、
図1に示す例では情報サーバ30には1台のポンプコントローラ20しか接続されていないが、情報サーバ30には複数のポンプコントローラ20が接続可能であり、情報サーバ30は複数のポンプコントローラ20の各々に対して
図2(b)に示す処理を行うことができる。
【0024】
以上説明した第1の実施の形態の真空ポンプ制御システムをまとめると以下のようである。
真空ポンプ本体10の記憶部13のIDナンバーと、ポンプコントローラ20の記憶部23のIDナンバーが一致していないときは、次の手順により、真空ポンプ本体10の起動処理を実行する。まず、真空ポンプ本体10の記憶部13に格納されているIDナンバーを情報サーバ30に送信する。情報サーバ30内の記憶部32に同一のIDナンバーが存在するか否か、すなわち登録されているか否かを判別する。登録されていると判定されると、真空ポンプ本体10の記憶部13に格納されているIDナンバーでコントローラの記憶部23の記憶内容を更新記録する。その後、起動許可フラグを設定する。真空ポンプ本体10の記憶部13に格納されているIDナンバーが情報サーバ30の記憶部32にないと判定されると、ポンプコントローラ20はロック動作処理を実行する。
【0025】
以上の処理により、起動対象である真空ポンプ本体10のIDナンバーが指定サービスマンにより無効化されている場合など、情報サーバ30の記憶部32に運転可能なポンプ情報がないと判定されているときは、ポンプコントローラ20が起動指令を受信しても真空ポンプ本体10が起動されない。
【0026】
-第2の実施の形態-
上述した第1の実施の形態では、情報サーバ30の記憶部32には、真空ポンプ本体10のポンプ情報として個体識別情報であるIDナンバーが登録されていた。第2の実施の形態では、IDナンバーに加えて分解履歴情報もポンプ情報として登録される場合について説明する。
第2の実施の形態における真空ポンプ制御システム1は、真空ポンプ本体10の構成と、ポンプコントローラ20と情報サーバ30の処理が異なるので、相違点を主に説明する。
【0027】
図3は真空ポンプ本体10の一例を示す断面図である。
図3に示す真空ポンプ本体10は、ターボ分子ポンプのポンプ本体を示している。複数の回転翼段2Aおよび円筒部2Bを備えるポンプロータ2は、磁気軸受11(
図3参照)によって磁気浮上支持されるシャフト5に締結されている。なお、磁気軸受11が作動していない状態では、シャフト5はメカニカルベアリング3a,3bによって支持される。
【0028】
ポンプロータ2の軸方向上下に並んだ回転翼段2Aに対して、複数の固定翼段4Aが交互に配設されている。これらの回転翼段2Aと固定翼段4Aにより、真空ポンプ本体10のタービン翼段が構成される。固定翼段4Aの後段(図示下方)には、回転する円筒部2Bと共にドラッグポンプ段を構成するネジステータ4Bが設けられている。
【0029】
磁気軸受11は、
図3に示すラジアル電磁石111,112およびアキシャル電磁石113と、ラジアル変位センサ111a,112aおよびアキシャル変位センサ113aとを備えている。真空ポンプ本体10のベース4に設けられたラジアル変位センサ111a,112aおよびアキシャル変位センサ113aによって、シャフト5の浮上位置が検出される。アキシャル電磁石113は、シャフト5の下端に設けられた円形のディスク118を上下に挟むように設けられている。
【0030】
ディスク118はナット部材115によりシャフト5の下端部に固定されている。ナット部材115は、アキシャル変位センサ113aおよび回転センサ116のターゲットとしても機能している。回転センサ116は、シャフト5の回転を検出するためのセンサである。ベース4の裏蓋119で覆われた空間には、分解検出器117が設けられている。
【0031】
図4は、分解検出器117が設けられている部分の拡大図である。
図4(a)はベース4に裏蓋119を固定した閉状態を示す、
図4(b)はベース4から裏蓋119を外した開状態を示す。裏蓋119をベース4に固定することによって形成される空間に、分解検出器117および
図1に示した記憶部13が収納されている。分解検出器117は、検出スイッチ117aと回路部117bとを備えている。裏蓋119には、検出スイッチ117aのプッシュボタン1170と対向する位置に凸部119aが形成されている。
【0032】
図4(a)のように裏蓋119をベース4に固定すると、検出スイッチ117aのプッシュボタン1170が凸部119aにより押し込まれた状態(オン状態)となる。一方、
図4(b)に示すようにベース4から裏蓋119を取り外すと、プッシュボタン1170の押し込みが解除(オフ状態)される。
【0033】
例えば、真空ポンプ本体10をオーバーホールする場合には、
図4(a)のように裏蓋119を外して、ナット部材115やアキシャル電磁石113にアクセスする。ディスク118をシャフト5に固定しているナット部材115を外して、ディスク118をシャフト5から抜き取ることで、ポンプロータ2およびシャフト5からなる回転体を真空ポンプ本体10から取り外すことが可能となる。
【0034】
例えば、ポンプロータ2に固着した生成物を除去するような場合には、ポンプロータ2をシャフト5から外して除去作業を行う。再組み立てを行う際には、ポンプロータ2をシャフト5に組み付けた後にバランス取りを行い、上述した手順とは逆の手順で回転体を真空ポンプ本体10に取り付ける。このような分解・組み立て作業を行うには特殊な技能を必要とするため、通常は、上述した指定サービスマンがメンテナンス作業を行う。
【0035】
本実施の形態では、メーカーや指定されたメンテナンス業者以外の業者によって不適切なメンテナンスが行われるのを防止するために、分解検出器117の検出スイッチ117aがオフになったタイミングを検出することで、裏蓋119の取り外し、すなわち、ポンプ分解を検出するようにした。例えば、回路部117bにタイマーを設けて、検出スイッチ117aがオフになった日時をタイマーにより計測し、計測された日時を記憶部13に記憶する。その場合、分解の度に取得される日時の全てを記憶部13に記憶しても良いし、記憶部13に記憶されている日時に取得した日時を上書きしても良い。後者の場合、最新の分解日時だけが記憶部13に記憶されることになる。
【0036】
また、分解日時に代えて分解回数を記憶部13に記憶するようにしても良い。例えば、検出スイッチ117aのオンオフに基づいてHigh/Low信号を回路部117bで生成し、High/Low信号がHigh(オン)からLow(オフ)に切り替わるタイミングをカウントし、カウント数を分解回数として記憶部13に記憶する。製品出荷時にはカウント数はゼロで、分解する度にカウント数が1ずつ増加する。
【0037】
メンテナンス作業が終了したときに、指定サービスマンは記憶部13に記憶されている分解日時または分解回数を読み出し、情報サーバ30にアクセスして分解履歴情報(分解日時または分解回数)の登録作業を行う。情報サーバ30の記憶部32には、運転可能な真空ポンプ本体10のIDナンバーとその真空ポンプ本体10の分解履歴情報とがセットで、ポンプ情報として登録されている。例えば、製品出荷直後の真空ポンプ本体10に関しては「日時データ無し」または「分解回数=0」というデータが分解履歴情報として登録されている。分解後、指定サービスマンなどにより「分解日時」または「分解回数=1」が分解履歴情報として登録される。指定サービスマンは情報サーバ30の記憶部32にアクセスして、メンテナンスをした真空ポンプ本体10のIDナンバーと一致するIDナンバーに対して、分解日時または分解回数を分解履歴情報として登録する。
指定サービスマン以外の作業者は、情報サーバ30へのアクセス権限がない。そのため、裏蓋19が開となった結果のみが情報サーバ30に登録される。これは、ポンプコントローラ20が自動的に裏蓋開検知信号を送信して行われる。
【0038】
図5は、第2の実施の形態における真空ポンプ本体10の起動処理の一例を示すフローチャートである。
図5(a)に示すフローチャートはポンプコントローラ20によって実行され、
図5(b)に示すフローチャートは情報サーバ30の処理部31によって実行される。ポンプコントローラ20の電源がオンされると、
図5(a)の処理がスタートする。
なお、電源オン前に指定サービスマンがポンプ分解を伴うメンテナンス作業を行った場合、指定サービスマンは、情報サーバ30の記憶部32へIDナンバーおよび分解履歴情報を登録する。ここでは、指定サービスマンによりこのような登録作業が既に終了しているものとして説明する。
【0039】
ステップS301では、通信部25により、ポンプコントローラ20は信号ライン262を介して真空ポンプ本体10の記憶部13からIDナンバーおよび分解履歴情報が取得される。ステップS302では、取得したIDナンバーおよび分解履歴情報が情報サーバ30の記憶部32に登録されているか否かの確認信号を情報サーバ30へ送信する。ステップS303では、確認信号に対する回答信号を情報サーバ30から受信したか否かを判定する。ステップS303で受信(YES)と判定されるとステップS304へ進む。ステップS304では、回答信号の内容が登録有りなのか登録無しなのかを判定し、登録有り(YES)の場合にはステップS305へ進み、登録無し(NO)の場合にはステップS306へ進む。
【0040】
ステップS304で登録有り(YES)と判定されてステップS305へ進んだ場合には、ステップS305において、記憶部23に記憶されているIDナンバーを取得したIDナンバーで書き換える。ステップS307では、ポンプコントローラ20に接続されている真空ポンプ本体10は運転可能と判断して通常通りの起動を許可する。起動許可により、真空ポンプ本体10は起動する。一方、ステップS304で登録無し(NO)と判定されてステップS306へ進んだ場合には、真空ポンプ本体10の運転をロックして起動を禁止し、運転不可であること報知する表示を表示部24に表示するロック動作を行う。ロック状態ではオペレータが運転を促す指令をポンプコントローラ20に入力しても真空ポンプ本体10は起動しない。
【0041】
図5(b)は情報サーバ30の処理部31で実行される確認処理を示すフローチャートであり、
図5(a)のステップS302の処理によって送信された確認信号を情報サーバ30が受信すると処理を開始する。ステップS401では、受信したIDナンバーと記憶部32に登録されているIDナンバーとを比較し、一致するIDナンバーを検索する。ステップS402では、ステップS401の検索の結果、登録されているIDナンバーに一致するものがあるか否かを判定する。ステップS402で一致するものが有ると判定されるとステップS403へ進み、一方、一致するものが無いと判定されるとステップS404へ進んで登録無しの信号を回答信号としてセットする。
【0042】
ステップS403では、検索されたIDナンバーとセットで記憶されている分解履歴情報の分解日時と、ポンプコントローラ20から受信した分解履歴情報と分解日時とが一致するか否かを判定する。ステップS403で一致あり(YES)と判定されるとステップS405へ進んで登録有りの信号を回答信号としてセットし、一方、一致無し(NO)と判定されるとステップS404へ進んで登録無しの信号を回答信号としてセットする。ステップS406では、ステップS404またはステップS405でセットされた回答信号をポンプコントローラ20へ送信する。
【0043】
以上説明した第2の実施の形態の真空ポンプ制御システムをまとめると以下のようである。
ポンプ起動時、ポンプコントローラ20は、真空ポンプ本体10の記憶部13のIDナンバーと分解履歴情報とを取得し、これら2つを情報サーバ30に送信する。情報サーバ30は、受信したIDナンバーと分解履歴情報とが一致すると情報有り信号をポンプコントローラ20に送り返す。ポンプコントローラ20は、情報サーバ30から受信した情報有り信号に基づいて、情報サーバ30に登録されていたIDナンバーを記憶部23に記憶する。その後、ポンプコントローラ20は、起動許可フラグをセットする。情報サーバ30は、受信したIDナンバーと分解履歴情報のいずれか一方が一致しない場合は情報無し信号をポンプコントローラ20に送り返す。ポンプコントローラ20は、情報サーバ30から受信した情報無し信号に基づいて、起動禁止フラグをセットしてポンプの起動動作をロックする。
【0044】
以上の処理により、起動対象である真空ポンプ本体10に対して分解を伴う保守作業が行われたとき、真空ポンプ本体10の記憶部13の分解履歴情報が自動的に更新される。また、指定サービスマンによる保守作業であれば、保守作業を行った指定サービスマンにより、真空ポンプ本体10のIDナンバーと分解履歴情報が情報サーバ30に登録される。
指定サービスマンによる保守作業が行われた場合、その後に真空ポンプ本体10に対して起動処理が実行された際、真空ポンプ本体10の記憶部13から読み出したIDナンバーと分解履歴情報と一致するデータが情報サーバ30に登録されており、真空ポンプ本体10の起動が許可される。
【0045】
一方、指定サービスマン以外の作業者が分解を伴う保守作業を行った場合、真空ポンプ本体10の記憶部13の分解履歴情報は自動的に更新される、しかし、その作業者は情報サーバ30へのアクセス権限を持たないので、保守作業後にIDナンバーと分解履歴情報を情報サーバ30に登録することができない。したがって、その後に真空ポンプ本体10に対して起動処理が実行された際、真空ポンプ本体10の記憶部13から読み出したIDナンバーと分解履歴情報と一致するデータが情報サーバ30に登録されていないので、真空ポンプ本体10の起動が禁止される。
【0046】
-第3の実施の形態-
上述した第2の実施の形態では、情報サーバ30の記憶部32には、真空ポンプ本体10のポンプ情報としてIDナンバー(個体識別情報)と分解履歴情報とが登録されていたが、以下で説明する第3の実施の形態では、情報サーバ30はポンプメーカーの管理下にあり、ポンプ情報としてIDナンバー、分解履歴情報および真空ポンプ本体10の制御情報が記憶部32に登録される。そして、アクティベート処理時には、記憶部32に登録されている制御情報をコントローラ側に取り込み、取り込んだ制御情報に基づいて真空ポンプ本体10の制御(軸受制御およびモータ制御)を行うようにした。真空ポンプ本体10の制御情報とは真空ポンプ本体10のばらつきを含む数値であり、例えば、(A)ポンプ部品の加工寸法、(B)ポンプ組み立て時の隙間寸法、(C)センサの出力特性などがある。これらの諸特性値、パラメータを用いてモータ制御、磁気浮上型軸受制御が行われる。
第3の実施の形態におけるポンプ制御システムの構成は第2の実施の形態の構成と同一である。ポンプコントローラ20と情報サーバ30の処理が異なるので、相違点を主に説明する。
【0047】
以下の説明に際して、真空ポンプ本体10を指定サービスマンが分解し、ロータシャフトを交換した場合を一例として説明する。指定サービスマンは交換したロータシャフトの外径寸法、ナット部材115の取付位相角αを実測し、これらの値を真空ポンプ本体10のIDナンバーと紐づけて情報サーバ30に登録しているものとする。
【0048】
図6は、第3の実施の形態における起動処理を説明するフローチャートである。
図6(a)のフローチャートは
図5(a)のステップS305をステップS510で置き換えたものであり、
図6(b)のフローチャートは
図5(b)のステップS405をステップS610で置き換えたものである。その他のステップの処理は、
図5の同一ステップの処理と同様である。
【0049】
情報サーバ30は、
図6(a)のステップS302において送信された確認信号を受信すると、
図6(b)のステップS401からステップS403までの処理を実行する。そして、ステップS403において分解履歴情報が一致すると判定されるとステップS610へ進み、登録有りの信号と、受信したIDナンバーとセットで登録されている制御情報とを回答信号としてセットする。なお、ステップS402およびステップS403でNoと判定された場合には、すなわちIDナンバーまたは分解履歴情報が一致しない場合には、第2の実施の形態の場合と同様にステップS404へ進んで登録無しの信号を回答信号としてセットする。
【0050】
ポンプコントローラ20は、情報サーバ30から回答信号を受信すると、
図6(a)のステップS304において登録の有無を判定する。ステップS304で登録無しと判定されると、第2実施の形態の場合と同様にステップS306へ進んでロック動作を行う。一方、ステップS304で登録有りと判定されると、ステップS510へ進んで、真空ポンプ本体10から取得したIDナンバーおよび情報サーバ30から受信した制御情報を記憶部23に記憶する。ポンプコントローラ20は、記憶部23に記憶した制御情報に基づいて真空ポンプ本体10を制御する。
【0051】
(軸受制御に関する制御情報の例)
情報サーバ30から取得する制御情報の一例として、軸受制御に関係するシャフト5とステータ側との間のギャップ寸法について説明する。真空ポンプ本体10の分解修理によって、例えば、ポンプロータ2とシャフト5とから成る回転体を交換した場合には、シャフト5の径寸法のばらつきによって、シャフト5とステータ側との間、例えばシャフト5とラジアル電磁石111,112およびラジアル変位センサ111A,112Aとの間のギャップ寸法が変化する。
【0052】
図7はシャフト5とラジアル電磁石111との関係を示す図である。シャフト5の軸心方向(z軸方向)と直交する2方向をx軸方向とy軸方向と定義する。また、x軸マイナス方向をxm方向、x軸プラス方向をxp方向とする。なお、ラジアル電磁石111は、x軸方向に配置された一対の電磁石111xp,111xmとy軸方向に配置された一対の電磁石111yp,111ym(いずれも不図示)とで構成されている。ラジアル変位センサ111aも電磁石に対応して、4つの変位センサ111axp,111axm,111ayp,111aym(いずれも不図示)で構成されている。
【0053】
図7(a)は交換前のシャフト5とラジアル電磁石111との関係を示す図で、
図7(b)は交換後のシャフト5とラジアル電磁石111との関係を示す図である。シャフト5に対して一対の電磁石111xp,111xmと一対の変位センサ111axp,111axmとが配置されており、可動範囲Xmax1,Xmax2は、シャフト5が4つの電磁石111xp,111xm,111yp,111ymの中心位置にある場合のギャップ寸法である。一般には、この中心位置が目標浮上位置とされる。交換後のシャフト径r2(=r1+Δr)が交換前のシャフト径r1よりも大きい場合、シャフト5の可動範囲はXmax1>Xmax2のように小さくなる。
【0054】
図7(c)は、シャフト5が、目標浮上位置から電磁石111xmのxm方向にΔdxだけ変位した場合の電磁石電流を示したものである。なお、変位Δdxは電磁石111xp側に変位した場合を正とする。
図7(c)では、シャフト5は電磁石111xpから遠ざかって電磁石111xmに近づくので、ポンプコントローラ20の軸受制御部21(
図1参照)は電磁石111xmの電流を減らすとともに電磁石111xpの電流を増加させてシャフト5を目標浮上位置へ戻すように制御する。
【0055】
電磁石電流には、シャフト5を所定の磁気力で目標浮上位置に支持するためのバイアス電流Iと、目標浮上位置からのずれを解消するための制御電流Δiとが電流成分として含まれている。例えば、シャフト5が目標浮上位置にある場合にはΔi=0で、
図7(c)の場合には電磁石111xpの電流はI+Δi、電磁石111xmの電流はI-Δiのように制御される。変位Δdxと制御電流Δiは、ゲインGを用いて次式(1)のように表される。
Δi=-G・Δdx …(1)
図7(c)の場合にはΔdx<0なので、Δi>0である。
【0056】
一般に、シャフト径が
図7(a),(b)のようにばらついている場合でも、シャフト5と電磁石とのギャップXg(不図示)が等しいときにはシャフト5を目標浮上位置へ戻そうとする吸引力がほぼ等しくなるようにゲインGは設定される。そのため、式(1)のゲインGは可動範囲Xmaxが小さい場合ほど大きく設定される。
【0057】
例えば、電磁石中心位置(目標浮上位置)から電磁石111xpまでの距離をr0としたとき、
図7(a),(b)におけるギャップXgが等しい場合には、
図7(a)における変位Δdx1と
図7(b)における変位Δdx2との間には、次式(2)のような関係が成立している。また、
図7(a)の場合のゲインおよび制御電流をG1およびΔi1、
図7(b)の場合のゲインおよび制御電流をG2およびΔi2とすると、Δi1およびΔi2は次式(3),(4)で表される。
Δdx1=Δdx2+(r2-r1) …(2)
Δi1=-G1・Δdx1 …(3)
Δi2=-G2・Δdx2 …(4)
【0058】
吸引力は制御電流の大きさに比例するので、式(3),(4)の制御電流Δi1,Δi2が等しくなるためには、ゲインG1,G2を次式(5)のように設定すれば良く、G1<G2となることが分かる。
G2・Δdx2=G1{Δdx2+(r2-r1)} …(5)
式(5)ではG1とG2との関係が変位Δdx2に依存するので、例えば、Δdx2が最大限まで変位したとき、すなわち、Δdx2=r0-r2のときの制御電流Δi1,Δi2を一致させるように設定する場合を考えると、ゲインG2は式(6)のように表される。
G2=G1(r0-r1)/(r0-r2) …(6)
【0059】
情報サーバ30の記憶部32には、軸受制御に関する制御情報の一例として寸法r0、r1、r2が記憶されている。なお、寸法r1は真空ポンプ本体10と同一の機種におけるシャフト5の標準寸法であり、寸法r2は真空ポンプ本体10に固有の寸法である。例えば、メンテナンスによってシャフト5が交換された場合には、指定サービスマンによって交換後のシャフト5の寸法r2が情報サーバ30の記憶部32に登録される。ポンプコントローラ20は、情報サーバ30から取得した寸法r0,r1,r2に基づき式(6)を用いてゲインGを設定し、そのゲインGを用いて軸受制御を行う。そのため、メンテナンス後の真空ポンプ本体10の状態に応じた適切な軸受制御を行うことが可能となる。
【0060】
(モータ制御に関する制御情報の例)
情報サーバ30から取得する制御情報の他の例として、モータ制御に関係する制御情報の一例について説明する。ポンプコントローラ20のモータ制御部22は回転センサ116の検出信号に基づいてモータ12の回転を制御する。
図3に示すように、回転センサ116は、ディスク118をシャフト5に固定しているナット部材115に対向するように設けられている。回転センサ116は、ナット部材115のターゲット面との距離を検出する距離センサであり、例えば、インダクタンス式のセンサが用いられる。
【0061】
図8は、ナット部材115の斜視図である。ナット部材115のターゲット面(回転センサ116が対向する面)は段差hの凹凸面となっている。凸面115aおよび凹面115bは、それぞれ回転角度に関して180度ずつに振り分けられている。回転センサ116からは、段差hによるインダクタンスの変化に応じた信号が出力される。モータ制御部22では、このインダクタンス変化を表す信号に基づいて回転信号が生成される。
【0062】
図9は回転信号とモータ駆動時の転流タイミングとの関係を説明する図であり、(a)は回転信号Sの時間的変化を示し、(b)は回転するモータ磁極の変化を示す。
図9(a)において、回転センサ116が凸面115aと対向すると回転信号SはHigh状態となり、回転センサ116が凹面115bと対向すると回転信号SはLow状態となる。
図8に示すように凸面115aおよび凹面115bはそれぞれ回転角度に関して180度ずつなので、回転信号Sは、
図9(a)のように半周期ごとにHigh状態とLow状態が繰り返し現れる。これに対して、モータ磁極(2極モータの場合)のS極・N極はΔtだけ遅れて現れる。そして、モータ駆動時の転流タイミングTは次式(7)で表される。
T=t0+Δt …(7)
【0063】
ずれ時間Δtは、ディスク118をナット部材115によりシャフト5に固定する際の、ナット部材115の位相角αによって変化する。位相角αを用いると式(7)は次式(8)のように書き換えられる。
T=t0+α/ω …(8)
式(8)において、ωはモータ12の回転速度(rad/sec)であり、例えば、回転信号Sの周期から求まる。この位相角αは真空ポンプ本体10の出荷時に、ポンプ駆動時に用いる制御情報として真空ポンプ本体10の記憶部23に格納されるとともに、情報サーバ30の記憶部32にも登録される。また、上述したように、メンテナンス作業で分解した場合にも、指定サービスマンはこの位相角αを情報サーバ30に登録する。
【0064】
ポンプ分解時にナット部材115を取り外した場合、再度組み立てたときのモータ磁極位置に対するナット部材115の相対的な位相角αが変化する。メンテナンス後は、ナット部材115の位相角αを計測し、その計測結果を情報サーバ30の記憶部32に制御情報として登録する。メンテナンス後に、真空ポンプ本体10にポンプコントローラ20を接続してポンプコントローラ20の電源をオンすると、
図6に示す起動処理が行われ、情報サーバ30の記憶部32に登録されている制御情報(位相角α)がポンプコントローラ20の記憶部23に記憶される。ポンプコントローラ20のモータ制御部22は記憶部23に記憶した制御情報(位相角α)に基づいてモータ回転を制御するので、メンテナンス後の真空ポンプ本体10の状態に応じた適切なモータ制御を行うことが可能となる。
【0065】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)実施の形態の真空ポンプ制御システムは、起動対象の真空ポンプ本体10から個体識別情報を取得する取得部(ポンプコントローラ20に実装したステップS101)と、登録されている複数の真空ポンプ本体10の個体識別情報の中で、ポンプコントローラ20に実装された取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定部(実施の形態ではポンプコントローラ20に実装したステップS105、または、情報サーバ30に実装したステップS202)と、判定部によって一致する個体識別情報が登録されていると判定された場合、起動対象の真空ポンプ本体10の起動を許可し、判定部によって一致する個体識別情報が登録されていないと判定されると、起動対象の真空ポンプ本体10の起動を禁止する許可部とを備える。
【0066】
例えば、故障等で真空ポンプ本体10が運転可能でなくなった場合には、アクセス権限のある者によって、その真空ポンプ本体10のIDナンバーは情報サーバ30の記憶部32から削除されるので、不注意でそのポンプ本体を運転しようとした場合でもIDナンバーの一致が判定されず起動が許可されない。すなわち、情報サーバ30に登録されている運転可能とされた真空ポンプ本体10がポンプコントローラ20に接続された場合のみ起動が許可されるので、安全が確保される。
【0067】
(2)上記(1)の真空ポンプ制御システムにおいて、ポンプコントローラ20に実装された取得部は、起動対象の真空ポンプ本体10から、個体識別情報に加えてポンプ分解履歴情報を取得し、情報サーバ30に実装された判定部(ステップS403)は、一致する個体識別情報が登録されていると判定した場合、取得部が取得した分解履歴情報が、個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かをさらに判定し、取得した分解履歴情報が、個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致すると判定された場合、ポンプコントローラ20に実装された許可部(ステップS307)は、起動対象の真空ポンプ本体の起動を許可し、取得した分解履歴情報が、個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致しないと判定された場合、許可部は、起動対象の真空ポンプ本体の起動を禁止する。
【0068】
このような構成を採用するため、上述したものと同様の効果を奏すると共に、さらに以下のような作用効果を奏する。すなわち。ポンプ分解履歴情報の登録や削除は予め決められた管理者のみしかできない構成であるので、例えば、許可されていないメンテナンス業者によって不適切な修理やメンテナンスが行われた場合には、情報サーバ30のポンプ分解履歴情報の書換えができず、真空ポンプ本体10の運転が許可されない。そのため、不具合の可能性のある真空ポンプ本体10が起動されるのを防止することができる。
【0069】
(3)例えば、上記(1)の真空ポンプ制御システムにおいて、真空ポンプ本体10を制御するコントローラ20と、コントローラ20と接続される情報サーバ30とを備え、情報サーバ30は、起動許可すべき複数の真空ポンプ本体10の個体識別情報を登録する記憶部32(第1記憶部)を有し、コントローラ20は、取得部と、取得部によって取得された個体識別情報を情報サーバ30に送信する通信部25とを有し、情報サーバ30は、通信部25から送信された個体識別情報が、記憶部32に登録されているか否かを判断し、登録有無の回答信号を、コントローラ20に送信する通信部33をさらに有し、コントローラ20は、通信部33からの回答信号を参照することにより、取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否かを判定する判定部と、許可部と、をさらに有するようにしても良い。
【0070】
(4)例えば、上記(2)の真空ポンプ制御システムにおいて、真空ポンプ起動制御システムが、真空ポンプ本体10を制御するコントローラ20と、コントローラ20と接続される情報サーバ30とを備え、情報サーバ30は、起動許可すべき複数の真空ポンプ本体10の個体識別情報と、個体識別情報に対応付けて分解履歴情報とを登録する記憶部32を有し、コントローラ20は、取得部と、取得部によって取得された個体識別情報および分解履歴情報を、情報サーバ30に送信する通信部25とを有し、情報サーバ30は、記通信部25から送信された個体識別情報が、記憶部32に登録されているか否かを判断し、登録されている場合には、通信部25から送信された分解履歴情報が、個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かをさらに判断し、登録有無およびポンプ分解履歴についての回答信号を、コントローラ20に送信する通信部33をさらに有し、コントローラ20は、通信部33からの回答信号を参照することにより、取得部で取得した個体識別情報と一致する個体識別情報が登録されているか否か、および、取得部で取得した分解履歴情報が、個体識別情報に対応付けて登録されているポンプ分解履歴情報に一致するか否かを判定する判定部と、許可部と、をさらに有するようにしても良い。
【0071】
(5)上記(3)または(4)の真空ポンプ制御システムにおいて、真空ポンプ本体10はポンプ制御情報に基づき駆動制御されるものであり、第1記憶部(記憶部32)は、個体識別情報に対応付けて、ポンプ制御情報をさらに登録し、第2送信部(通信部33)は、第1送信部(通信部25)から送信された個体識別情報に対応付けて第1記憶部(記憶部32)に登録されているポンプ制御情報を読み出して、コントローラ20にさらに送信し、コントローラ20は、第2送信部から送信されたポンプ制御情報を使用して、真空ポンプ本体10を制御する。その結果、メンテナンスにより真空ポンプ本体10のポンプ制御情報(制御情報)が変更された場合でも、真空ポンプ本体10を適切に制御することができる。例えば、制御情報がモータ駆動に関する制御情報であれば、その制御情報に基づいて真空ポンプ本体10のモータ制御を行い、制御情報が磁気軸受の制御に関する制御情報であれば、その制御情報に基づいて磁気軸受を制御することが可能となる。
【0072】
上記(1)から(3)までのいずれかの真空ポンプ制御システムとして用いられるポンプコントローラ20は、上記取得部(ステップS101)、上記判定部(ステップS105)、上記許可部(ステップS108)を有し、真空ポンプ本体10を駆動制御する。
この形態では、ポンプコントローラ20単独で、すなわち、サーバなどの外部処理装置を必要とせずに、信頼性の高いアクティベート処理を実行することができ、
【0073】
上記(1)から(3)までのいずれかの真空ポンプ制御システムとして用いられる外部処理装置である情報サーバ30は、真空ポンプ本体10を駆動制御し、取得部(ステップS101)と許可部(ステップS108)とを備えたポンプコントローラ20と通信する通信部33と、処理部31とを有する。処理部31は、通信部33を介して受信した個体識別情報に一致する個体識別情報があるか否かを判定し、または通信部33を介して受信した個体識別情報とポンプ分解履歴情報に一致する個体識別情報とポンプ分解履歴情報があるか否かを判定する判定部(ステップS202、ステップS402、ステップS403)を有する。判定部での判定結果を通信部33を経由してポンプコントローラ20に送信する。
【0074】
情報サーバ30は、IDナンバーと分解履歴情報の両方が一致するとポンプコントローラ20に登録有と回答するので、ポンプ起動時の安全確認をより確実に行うことができる。この形態の情報サーバ30とポンプコントローラ20とで構成する真空ポンプ起動制御装置では、各ポンプコントローラ20にアクティベート処理機能をそれぞれ実装する必要がなく、また、アクティベート処理機能の変更などをサーバ側で集中して行うことができる。
【0075】
真空ポンプ装置は、上記(3)に記載の真空ポンプ制御システムのポンプコントローラ20と、起動対象の真空ポンプ本体10であって、ポンプ制御情報に基づきモータ制御部22で制御されるモータ12を有する真空ポンプ本体10とで構成することができる。また、真空ポンプ装置は、上記(3)に記載の真空ポンプ制御システムのポンプコントローラ20と、起動対象の真空ポンプ本体10であって、ポンプ制御情報に基づき軸受制御部21で浮上制御される磁気軸受11を有する真空ポンプ本体10とで構成することができる。
以上の形態では、メンテナンス作業で制御情報が更新された場合、ポンプ起動時に、指定サービスマンが更新した情報サーバ30の制御情報をポンプコントローラ20に取り込み、起動後のポンプ制御に用いられる。したがって、メンテナンスでシャフトなどの部品が交換されても、その後のポンプ駆動制御に新たな制御情報を反映することができる。
【0076】
上記(1)から(3)までのいずれかの真空ポンプ制御システムの真空ポンプ本体10は、真空ポンプ本体10の起動指令が出力され、かつ、ポンプコントローラ20に実装された許可部が真空ポンプ本体10の起動を許可しているときに起動され、起動を許可していないときは起動が禁止される。
この形態では、信頼性の高いアクティベート処理を実現する真空ポンプ本体10を提供できる。
【0077】
上記(2)の真空ポンプ制御システムの真空ポンプ本体10は、ポンプの分解を検出する検出部である分解検出器117と、検出された分解の履歴を分解履歴情報として記憶する記憶部13とを有する。
この形態では、分解履歴情報も考慮した信頼性の高いアクティベート処理を実現する真空ポンプ本体10を提供できる。
【0078】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、真空ポンプがターボ分子ポンプである場合を例に説明したが、本発明はターボ分子ポンプに限定されない。
【符号の説明】
【0079】
1…真空ポンプ制御システム、2…ポンプロータ、5…シャフト、10…真空ポンプ本体、11…磁気軸受、12…モータ、13,23,32…記憶部、20…ポンプコントローラ、21…軸受制御部、22…モータ制御部、24…表示部、25,33…通信部、30…情報サーバ、31…処理部、117…分解検出器