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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】放送受信装置および放送受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/43 20110101AFI20220308BHJP
   H04N 21/433 20110101ALI20220308BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20220308BHJP
   H04H 40/18 20080101ALI20220308BHJP
   H04H 20/22 20080101ALI20220308BHJP
【FI】
H04N21/43
H04N21/433
H04B1/16 A
H04H40/18
H04H20/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018213759
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020080514
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】田坂 宣明
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/056622(WO,A1)
【文献】特開2009-021900(JP,A)
【文献】特開2007-036815(JP,A)
【文献】特開2007-282185(JP,A)
【文献】特開2004-166173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/43
H04N 21/433
H04B 1/16
H04H 40/18
H04H 20/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した放送信号を復調する復調部と、
復調された信号に第1放送と、前記第1放送と同一内容であって前記第1放送から遅延して放送される第2放送とが含まれる場合に、前記第1放送に対応する第1映像音声信号および前記第2放送に対応する第2映像音声信号を再生する再生処理部と、
前記第1映像音声信号および前記第2映像音声信号を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の遅延量を算出する遅延検出部と、
前記第1映像音声信号および前記第2映像音声信号のいずれか一方を外部出力する出力部と、
前記第2映像音声信号の出力から前記第1映像音声信号の出力に切り替える場合、前記遅延検出部が算出する遅延量に応じて前記第1映像音声信号の出力を遅延させる制御部と、を備え、
前記遅延検出部は、過去に算出した第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号が前記出力部から外部出力されている場合、前記第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号および前記第2映像音声信号を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の現在の遅延量と前記第1遅延量との差分を算出し、前記第1遅延量および異なるタイミングに算出した複数の差分の候補値を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の第2遅延量を算出し、
前記制御部は、所定条件の充足後、前記第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を前記出力部から外部出力させることを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記遅延検出部は、遅延させていない第1映像音声信号が前記出力部から外部出力されている場合、異なるタイミングに算出した複数の遅延量の候補値を用いて前記第1遅延量を算出することを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記遅延検出部は、前記第1遅延量と前記第2遅延量との間の一以上の差分の候補値を保持し、新たに算出した前記第1遅延量と前記第2遅延量との間の差分の候補値と、保持する前記第1遅延量と前記第2遅延量との間の一以上の差分の候補値とを用いて前記第2遅延量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2遅延量の算出後に前記第2映像音声信号の外部出力から前記第1映像音声信号の外部出力に切り替える場合、前記第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を前記出力部から外部出力させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2遅延量の算出後に前記第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号の外部出力が継続している場合、前記出力部から外部出力される第1映像音声信号の遅延量を段階的に変化させ、所定時間後に前記第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を前記出力部から外部出力させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項6】
前記遅延検出部は、受信した放送信号の放送局ごとに前記第1遅延量の候補値または前記第1遅延量と前記第2遅延量との間の差分の候補値を保持し、放送局ごとに前記第1遅延量および前記第2遅延量を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項7】
前記遅延検出部は、前記第1放送および前記第2放送の音声信号の波形を比較して前記遅延量を算出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の放送受信装置。
【請求項8】
受信した放送信号を復調するステップと、
復調された信号に第1放送と、前記第1放送と同一内容であって前記第1放送から遅延して放送される第2放送とが含まれる場合に、前記第1放送に対応する第1映像音声信号および前記第2放送に対応する第2映像音声信号を再生するステップと、
前記第1映像音声信号および前記第2映像音声信号を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の遅延量を算出するステップと、
前記第1映像音声信号および前記第2映像音声信号のいずれか一方を外部出力するステップと、
前記第2映像音声信号の出力から前記第1映像音声信号の出力に切り替える場合、算出した前記遅延量に応じて前記第1映像音声信号の出力を遅延させるステップと、を備え、
過去に算出した第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号が外部出力されている場合、前記第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号および前記第2映像音声信号を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の現在の遅延量と前記第1遅延量との差分を算出し、前記第1遅延量および異なるタイミングに算出した複数の差分の候補値を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の第2遅延量を算出し、所定条件の充足後、前記第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を外部出力させることを特徴とする放送受信方法。
【請求項9】
受信した放送信号を復調する機能と、
復調された信号に第1放送と、前記第1放送と同一内容であって前記第1放送から遅延して放送される第2放送とが含まれる場合に、前記第1放送に対応する第1映像音声信号および前記第2放送に対応する第2映像音声信号を再生する機能と、
前記第1映像音声信号および前記第2映像音声信号を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の遅延量を算出する機能であって、異なるタイミングに算出した複数の遅延量の候補値を用いて前記遅延量を算出する機能と、
前記第1映像音声信号および前記第2映像音声信号のいずれか一方を外部出力する機能と、
過去に算出した第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号が外部出力されている場合、前記第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号および前記第2映像音声信号を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の現在の遅延量と前記第1遅延量との差分を算出し、前記第1遅延量および異なるタイミングに算出した複数の差分の候補値を用いて前記第1放送に対する前記第2放送の第2遅延量を算出する機能と、
所定条件の充足後、前記第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を外部出力させる機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置および放送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の地上デジタルテレビ放送では、一つのチャンネルが13セグメントに分割されており、12セグメントを利用した高画質のフルセグ放送と、1セグメントを利用した移動受信に適したワンセグ放送とが利用可能である。通常、ワンセグ放送とフルセグ放送は、放送内容が同一のサイマル放送である。車載用等のテレビでは、テレビ放送信号の受信状態に応じて、両者を適宜切り替えて出力するように構成されることがある。
【0003】
サイマル放送では複数の放送が同期して送信されるのではなく、一方の放送に対して他方の放送が遅延して送信されることがある。そのため、遅延する放送から遅延のない放送に切り替える場合には、遅延分だけ放送内容が飛んでしまう。このような放送内容の飛びを防ぐため、遅延のない放送への切替時に切替先の放送内容を遅延分だけ蓄積し、蓄積が完了してから放送を切り替える構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-125986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイマル放送における遅延量は、放送のチャンネルごとに異なることがあり、また、放送信号を出力する放送局や中継局によって異なることがある。したがって、放送内容をより適切に切り替えるためには、放送局ごとに正確な遅延量を得る必要がある。しかしながら、受信する放送信号には遅延量を直接的に示す情報は含まれておらず、受信する放送信号から適切な遅延量を得ることは容易ではない。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、サイマル放送間の遅延の補正精度を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の放送受信装置は、受信した放送信号を復調する復調部と、復調された信号に第1放送と、第1放送と同一内容であって第1放送から遅延して放送される第2放送とが含まれる場合に、第1放送に対応する第1映像音声信号および第2放送に対応する第2映像音声信号を再生する再生処理部と、第1映像音声信号および第2映像音声信号を用いて第1放送に対する第2放送の遅延量を算出する遅延検出部と、第1映像音声信号および第2映像音声信号のいずれか一方を外部出力する出力部と、第2映像音声信号の出力から第1映像音声信号の出力に切り替える場合、遅延検出部が算出する遅延量に応じて第1映像音声信号の出力を遅延させる制御部と、を備える。遅延検出部は、過去に算出した第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号が出力部から外部出力されている場合、第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号および第2映像音声信号を用いて第1放送に対する第2放送の現在の遅延量と第1遅延量との差分を算出し、第1遅延量および異なるタイミングに算出した複数の差分の候補値を用いて第1放送に対する第2放送の第2遅延量を算出する。制御部は、所定条件の充足後、第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を出力部から外部出力させる。
【0008】
本発明の別の態様は、放送受信方法である。この方法は、受信した放送信号を復調するステップと、復調された信号に第1放送と、第1放送と同一内容であって第1放送から遅延して放送される第2放送とが含まれる場合に、第1放送に対応する第1映像音声信号および第2放送に対応する第2映像音声信号を再生するステップと、第1映像音声信号および第2映像音声信号を用いて第1放送に対する第2放送の遅延量を算出するステップと、第1映像音声信号および第2映像音声信号のいずれか一方を外部出力するステップと、第2映像音声信号の出力から第1映像音声信号の出力に切り替える場合、算出した遅延量に応じて第1映像音声信号の出力を遅延させるステップと、を備える。この方法は、過去に算出した第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号が外部出力されている場合、第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号および第2映像音声信号を用いて第1放送に対する第2放送の現在の遅延量と第1遅延量との差分を算出し、第1遅延量および異なるタイミングに算出した複数の差分の候補値を用いて第1放送に対する第2放送の第2遅延量を算出し、所定条件の充足後、第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を外部出力させる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイマル放送間の遅延補正の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】放送受信装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
図2】遅延量の算出方法を模式的に示すフローチャートである。
図3】映像音声信号の切替方法を模式的に示すフローチャートである。
図4】遅延量の差分の計算方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、放送受信装置10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0014】
放送受信装置10は、デジタルテレビ放送を受信するための装置であり、車両などの移動体に搭載して用いられる車載用のデジタルテレビ受信装置である。放送受信装置10が受信した放送内容は、表示装置30およびスピーカ32を通じて再生される。ユーザは、入力装置34を通じて視聴しようとするチャンネルを選択する。選択したチャンネルの受信感度が良好であれば、指定したチャンネルの放送内容が表示ないし出力される。
【0015】
放送受信装置10は、表示装置30、スピーカ32および入力装置34と接続されている。表示装置30は、液晶ディスプレイ等であり、車両のセンターコンソールやダッシュボードの位置に取り付けられる。スピーカ32は、車載スピーカや表示装置30に隣接して設けられるスピーカなどである。入力装置34は、例えば、タッチパネル式のセンサであり、表示装置30の表示領域に設けられる。入力装置34はタッチ式ではなく、表示装置30の周辺に配置されるボタン等で構成されてもよい。
【0016】
放送受信装置10は、受信部12と、復調部14と、再生処理部16と、遅延検出部24と、出力部26と、制御部28とを備える。再生処理部16は、第1処理部18と、第2処理部20と、バッファ部22とを含む。
【0017】
受信部12にはアンテナが接続されており、アンテナを通じて選局されたチャンネルの放送信号を受信する。受信部12は、例えば、地上デジタルテレビ放送信号を受信するよう構成される。受信部12は、一つのチューナのみを備えてもよいし、複数のチューナを備えてもよい。受信部12が複数のチューナを備える場合、各チューナが互いに異なるチャンネルの放送信号を受信してもよいし、各チューナが同じチャンネルの放送信号を受信する、いわゆるダイバーシティ受信方式が実現されるようにしてもよい。
【0018】
復調部14は、受信部12が受信した放送信号を復調する。復調部14は、例えば、受信した地上デジタルテレビ放送信号からトランスポートストリーム(TS)信号を生成するよう構成される。受信部12が複数のチューナを備える場合、復調部14は、各チューナが受信する異なるチャンネルの放送信号に基づいて、複数のTS信号を復調するよう構成されてもよい。復調部14は、各チューナが受信する同一チャンネルの放送信号を合成して、いわゆるダイバーシティ受信方式でTS信号を復調するよう構成されてもよい。
【0019】
再生処理部16は、復調部14が生成したTS信号から映像音声信号を再生する。再生処理部16は、例えば、TS信号から地上デジタルテレビ放送の映像音声信号を生成する。再生処理部16は、TS信号にサイマル放送される複数の放送内容が含まれる場合、各放送に対応する映像音声信号を生成する。例えば、TS信号に第1放送としてフルセグ放送が含まれ、第2放送としてワンセグ放送が含まれる場合、フルセグ放送およびワンセグ放送のそれぞれの映像音声信号を再生する。
【0020】
ここで、フルセグ放送とは、日本の地上デジタルテレビ放送の一つのチャンネルに含まれる13セグメントのうち、12セグメントを利用した高画質の放送内容のことをいう。一方、ワンセグ放送とは、上記13セグメントのうち1セグメントを利用した移動受信に適した放送内容のことをいう。フルセグ放送とワンセグ放送は、一つのチャンネル内に設定される互いに階層の異なる放送である。通常、ワンセグ放送とフルセグ放送は、放送内容が同一のサイマル放送であり、フルセグの放送内容に対してワンセグの放送内容が遅延する放送信号が放送局から送出される。
【0021】
第1処理部18は、サイマル放送の一方である第1放送に対応する第1映像音声信号を再生する。第2処理部20は、サイマル放送の他方である第2放送に対応する第2映像音声信号を再生する。例えば、第1処理部18がフルセグ放送の映像音声信号を生成し、第2処理部20がワンセグ放送の映像音声信号を生成する。バッファ部22は、第1処理部18および第2処理部20が生成する映像音声信号を一時的に保持する。
【0022】
遅延検出部24は、サイマル放送である第1放送と第2放送の間の遅延量を検出する。遅延検出部24は、例えば、先行するフルセグ放送に対するワンセグ放送の遅延量を検出する。遅延検出部24は、第1映像音声信号と第2映像音声信号を比較し、より具体的には、両者の音声信号の波形を比較して遅延量を算出する。遅延検出部24は、一定時間内の音声信号に含まれるピーク波形の時間位置の差から遅延量を算出する。例えば、第1放送の第1音声信号のピーク波形の時間位置と、第2放送の第2音声信号のピーク波形の時間位置とがΔtだけずれていれば、そのΔtの時間を遅延量として算出する。
【0023】
遅延検出部24は、算出した遅延量を候補値として複数保持する。遅延検出部24は、遅延量の候補値を定期的に算出し、過去に算出した遅延量を複数保持しておく。遅延検出部24は、保持する複数の遅延量の候補値から補正処理に適用する最終的な遅延量を決定する。遅延検出部24は、例えば、複数の候補値の算術平均値、中央値、最頻値のいずれかを最終的な遅延量として決定する。複数の候補値から最終的な遅延量を決定することで、いずれか一つの候補値のみに基づく場合よりも算出精度を高めることができる。
【0024】
遅延検出部24は、遅延量の候補値としてチャンネル毎または放送局毎に所定数の候補値を保持してもよい。保持する候補値の上限数は、3~20程度であり、例えば、4~10程度である。遅延検出部24は、上限数まで候補値を保持している場合に新たな遅延量の候補値を算出した場合、保持している候補値および新たな候補値の中からより適切な候補値を上限数まで選択して保持し、選択しなかった候補値を削除する。例えば、上限数が5であれば、保持している5個の候補値と新たな1個の候補値の合計6個の中から適切な5個を選択し、不適切と考えられる1個の候補値を除外する。このとき除外対象となる候補値は、複数の候補値の算術平均値、中央値、最頻値のいずれかから離れた値のものである。より適当と考えられる値から外れた候補値を除外することで、遅延量の検出精度をより高めることができる。
【0025】
遅延検出部24は、放送受信装置10の電源がオフになる場合であっても、保持する候補値を消去せずに保持し続けるよう構成されてもよい。例えば、放送受信装置10がハードディスクやフラッシュメモリといった不揮発性のメモリ部を有する場合、そのメモリ部に遅延量の候補値が保持されるようにしてもよい。これにより、放送受信装置10の電源がオンになった直後であっても、過去に算出した候補値に基づいて遅延量を算出できる。
【0026】
遅延検出部24は、所定条件を満たす場合にのみ遅延量を算出してもよい。遅延検出部24は、十分な信号強度の放送信号が受信できる場合にのみ遅延量を算出してもよく、例えば、TS信号からフルセグ放送とワンセグ放送の双方の映像音声信号を好適に復号化できる場合にのみ遅延量を算出してもよい。遅延検出部24は、第1音声信号および第2音声信号に基準値を超えるピーク波形が含まれる場合にのみ遅延量を算出してもよい。このような遅延量の検出精度が高いと考えられる状況下において遅延量を算出することで、遅延量の検出精度をより高めることができる。
【0027】
出力部26は、再生処理部16が生成する映像音声信号を外部出力し、表示装置30に映像を表示させ、スピーカ32から音声を出力させる。出力部26は、制御部28からの指示に基づいて、再生処理部16が生成する第1映像音声信号と第2映像音声信号のいずれか一方が外部出力されるようにする。
【0028】
制御部28は、放送信号の受信状況に応じて、出力部26に出力させる映像音声信号を制御する。制御部28は、放送信号の受信状況が良好である場合、より高画質な第1映像音声信号が外部出力されるようにする。制御部28は、放送信号の受信状況が不良であり、第1映像音声信号が安定的に再生できないような場合、より安定的な第2映像音声信号が外部出力されるようにする。制御部28は、放送信号を適切に受信できず、第2映像音声信号を安定的に再生できないような場合には、受信不能である旨を通知する表示がなされるようにする。
【0029】
制御部28は、第2映像音声信号の出力中に受信状況が改善し、第1映像音声信号の出力に切り替える場合、遅延検出部24が算出した遅延量に応じて第1映像音声信号の出力を遅延させる。制御部28は、バッファ部22に第1映像音声信号を一時的に保持させ、遅延検出部24が算出した遅延量だけ遅れて第1映像音声信号が出力されるようにする。これにより、第1映像音声信号の出力タイミングを相対的に遅延している第2映像音声信号の出力タイミングと同期させることができ、映像や音声の飛びが生じないようにして映像音声信号を切り替えることができる。
【0030】
制御部28は、第1映像音声信号の出力中に受信状況が悪化し、第2映像音声信号の出力に切り替える場合、第2映像音声信号を遅延させずに出力させる。このとき、切替前に第1映像音声信号が遅延して出力されている場合には、第1映像音声信号から第2映像音声信号に即時に切り替えることで、シームレスに映像音声信号を切り替えることができる。一方、切替前に第1映像音声信号が遅延して出力されていない場合には、遅延検出部24が算出する遅延量だけ待ってから第2映像音声信号の出力を開始するようにしてもよい。つまり、第1映像音声信号および第2映像音声信号の双方の出力を遅延量の時間だけ一時的に停止するようにしてもよい。これにより、切替直前の第1放送の内容と切替直後の第2放送の内容が重複して出力されるのを防ぐことができる。
【0031】
図2は、遅延量の算出方法を模式的に示すフローチャートである。まず、復調された信号から第1音声映像信号の再生が可能であり(S10のY)、第1音声映像信号に基準値以上のピーク波形が含まれていれば(S12のY)、第1音声映像信号と第2音声映像信号のピーク波形を比較して遅延量の候補値を算出する(S14)。候補値が所定数保持されていれば(S16のY)、保持している過去に算出した候補値と新たに算出した候補値の中から適切な候補値を選択して更新し(S18)、保持する候補値から遅延量を算出する(S20)。候補値が所定数保持されていなければ(S16のN)、新たに算出した候補値を保持し(S22)、保持する候補値から遅延量を算出する(S20)。第1音声映像信号が再生可能でない場合(S10のN)や、基準値以上のピーク波形が含まれていない場合(S12のN)、S14~S20の処理をスキップする。S10~S20の処理は繰り返し実行される。
【0032】
図3は、映像音声信号の切替方法を模式的に示すフローチャートである。遅延する第2放送から遅延のない第1放送に切り替える場合(S30のY)、遅延検出部24が算出する遅延量だけ遅延させて第1映像音声信号の出力を開始させる(S32)。第2放送から第1放送への切り替えではなく(S30のN)、第1放送から第2放送に切り替える場合(S34のY)、切替前の第1映像音声信号に対する出力遅延がなければ(S36のY)、遅延検出部24が算出する遅延量だけ待機(S38)してから、第2映像音声信号の出力を遅延させずに開始させる(S40)。一方、切替前の第1映像音声信号に対する出力遅延があれば(S36のN)、S38の処理をスキップして第2映像音声信号の出力を遅延させずに開始させる(S40)。なお、第1放送から第2放送への切り替えではない場合(S34のN)、以降の処理をスキップする。
【0033】
本実施の形態によれば、サイマル放送である第1放送と第2放送の間の遅延量を複数回の算出結果に基づいて決定することにより、1回の算出結果に基づく場合よりも遅延量の算出精度を高めることができる。これにより、第2放送から第1放送への切替時においてより適切な遅延処理を施すことができ、サイマル放送間の遅延補正の精度高めることができる。
【0034】
遅延検出部24は、過去に算出した遅延量(第1遅延量ともいう)を遅延させた第1映像音声信号が外部出力されている場合、第1放送に対する第2放送の現在の遅延量と第1遅延量の差分を算出することで、遅延補正の精度をさらに高めてもよい。第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号が外部出力されている場合、外部出力用に遅延させた第1映像音声信号と、遅延されていない第2映像音声信号とを単に比較するだけで、現在の遅延量と第1遅延量の差分を算出することができる。この場合、第1放送に対する第2放送の現在の遅延量を直接的に算出するために、遅延させていない第1映像音声信号を別途生成する必要がないため、放送受信装置10の処理負荷を軽減させることができる。また、遅延量の異なる複数の第1映像音声信号を一時的に記憶するためのメモリ容量の増加を防ぐことができる。
【0035】
図4は、遅延量の差分の計算方法を模式的に示す図であり、再生処理または外部出力される映像音声信号40,42,44を示している。本図はサイマル放送における「おはようございます。朝のニュースです。」の音声内容を示しており、音声信号の「お」の音に対応するピーク波形を基準に音声信号のタイミングを検出している。上段の映像音声信号40は、第1放送を遅延させずにそのまま再生した場合の第1映像音声信号を示す。中段の映像音声信号42は、過去に算出した第1遅延量に基づいて第1放送を遅延させて外部出力される第1映像音声信号を示す。下段の映像音声信号44は、第2放送を遅延させずにそのまま再生した場合の第2映像音声信号を示す。
【0036】
図4では、第1放送に対する第2放送の現在の遅延量(第2遅延量)と、過去に算出した第1遅延量とが異なっており、両者の間に遅延量の差分が存在する状況を示している。この遅延量の差分は、第1遅延量を遅延させた外部出力用の第1映像音声信号42と第2映像音声信号44との間の遅延量に相当するため、両者を比較することで算出できる。現在の遅延量は、「第1遅延量」および「遅延量の差分」から算出できる。
【0037】
遅延検出部24は、上述の遅延量の算出方法と同様、現在の遅延量と第1遅延量の差分の候補値を定期的に算出し、算出した差分の候補値を複数保持しておく。遅延検出部24は、保持する複数の差分の候補値から補正処理に適用する最終的な差分を決定し、最終的な差分と第1遅延量とを加算することで、次回の遅延補正に用いるための遅延量(第2遅延量)を算出する。複数の候補値から最終的な遅延量を決定することで、いずれか一つの候補値のみに基づく場合よりも算出精度を高めることができる。第2遅延量を算出するためには、外部出力用に使用している第1遅延量と、複数の差分の候補値とを保持すれば十分であるため、遅延検出部24のメモリ容量の増加を抑えることができる。
【0038】
遅延検出部24が算出する遅延量の差分は、正の値または負の値を取ることができる。遅延量の差分が正の値である場合、現在の遅延量が第1遅延量よりも大きいことを意味する。一方、遅延量の差分が負の値である場合、現在の遅延量が第1遅延量よりも小さいことを意味する。
【0039】
遅延検出部24は、遅延量の差分の候補値の算出精度を第1遅延量の候補値の算出精度よりも高めてもよい。例えば、遅延検出部24の遅延量の計算精度が固定された桁数(例えば16ビットなど)である場合、小数点の位置をずらすことにより倍精度で計算してもよい。第1遅延量が精度良く算出されていれば、遅延量の差分の候補値は第1遅延量の1/4以下や1/8以下であるため、正負の符号を含めたとしても、同じ桁数を用いて高精度に遅延量を算出できる。
【0040】
制御部28は、第2遅延量が算出された場合、所定条件の充足後に第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を外部出力させる。制御部28は、例えば、第2映像音声信号の出力から第1映像音声信号の出力への次回の切替時に第2遅延量を反映し、第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号を外部出力させる。第2遅延量の算出時には、第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号が外部出力されているため、その後に第1放送から第2放送に切り替えされ、さらに第2放送から第1放送に切り替えされる場合に第2遅延量を反映させた第1放送を外部出力させる。なお、第1放送から第2放送に直接切り替えされる場合のみならず、特定のチャネルの第1放送から別のチャネルに切り替えされ、その後に特定のチャネルの第2放送に切り替えされ、さらに特定のチャネルの第2放送から第1放送に切り替えされる場合にも第2遅延量を反映させた第1放送が外部出力される。
【0041】
制御部28は、第2遅延量が算出された場合、第2放送から第1放送への次回の切替時ではなく、現在出力されている第1放送に第2遅延量を反映させてもよい。例えば、第1遅延量を遅延させた第1映像音声信号の遅延量を徐々に変化させ、遅延量が第1遅延量から第2遅延量に時間経過とともに段階的に変化するようにしてもよい。このようにして、遅延量の調整に必要な所定時間(例えば、1分、5分、10分、15分、30分)後に第2遅延量を遅延させた第1映像音声信号が外部出力されるようにしてもよい。
【0042】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0043】
上述の実施の形態では、地上デジタルテレビ放送を受信するための放送受信装置10について説明した。変形例においては、地上デジタルテレビ放送以外の放送を受信するための放送受信装置に上述の内容を適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…放送受信装置、12…受信部、14…復調部、16…再生処理部、24…遅延検出部、26…出力部、28…制御部、30…表示装置、32…スピーカ、34…入力装置。
図1
図2
図3
図4