(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び重合体
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20220308BHJP
C08F 222/38 20060101ALI20220308BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08F222/38
C08F222/40
G02F1/1337 520
(21)【出願番号】P 2020514015
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019010111
(87)【国際公開番号】W WO2019202884
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2018080881
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敬
(72)【発明者】
【氏名】村上 嘉崇
(72)【発明者】
【氏名】面手 真人
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 陽一
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523486(JP,A)
【文献】特開2003-057659(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0130873(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08F 222/40
C08F 222/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位U1と、下記式(
6)で表され
る化合物に由来する構造単位であって前記構造単位U1とは異なる構造単位U2と、を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
(E
1)
i-(G
1)
j …(1)
(式(1)中、G
1は、架橋性を示す環状構造を有する基、芳香族縮合多環構造を有する基、又は窒素含有複素環構造を有する基である。E
1は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する基であり、重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する少なくとも一方の炭素原子が、G
1が有する、架橋性を示す環状構造、芳香族縮合多環構造又は窒素含有複素環構造の環に対し単結合で結合しているか、又は**-COO-、**-CONR
50-、**-CH
2-CONR
50-、-O-若しくはフェニレン基(ただし、「**」は、重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する炭素原子に結合する結合手であることを示す。)を介して結合している。R
50は、水素原子であるか、又はR
50が他の基に結合して構成される環構造を表す。i及びjは、一方が1であって他方が2であるか、又はi=j=1である。)
【化1】
(式(6)中、B
1
は、下記式(7)、式(8)、式(9)又は式(10)で表される1価の基であり、D
1
は、下記式(11)で表される2価の基であり、X
1
及びX
2
は、それぞれ独立して、単結合、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CH
2
-、-CH
2
-O-又は炭素数1~3のアルカンジイル基であり、A
1
及びA
2
は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基、シクロへキシレン基又はナフチレン基であり、R
18
は、炭素数2~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基又は-R
19
-Y
1
(ただし、R
19
は炭素数2~20のアルカンジイル基であり、Y
1
はトリアルキルシリル基である。)である。mは0~2の整数であり、nは1~3の整数である。mが2の場合、複数のA
1
、X
1
は、それぞれ独立して上記定義を有する。nが2又は3の場合、複数のR
18
は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【化3】
(式(7)中、R
2
及びR
3
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。式(8)中、R
5
は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、R
6
及びR
7
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。式(9)中、R
11
は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、R
9
及びR
10
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。X
10
及びX
11
のうち一方は単結合であり、他方はメチレン基である。式(10)中、R
13
及びR
14
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。「*」は結合手であることを示す。)
【化4】
(式(11)中、A
3
、A
4
及びA
5
は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロへキシレン基であり、L
1
及びL
2
は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~5のアルカンジイル基、又は当該アルカンジイル基の少なくとも1個のメチレン基が「-O-」で置き換えられた基であり(ただし、酸素原子は連続しない。)、X
3
及びX
4
は、それぞれ独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-又は-O-であり、R
16
及びR
17
は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基である。k及びrは、それぞれ独立して0又は1である。「*
1
」及び「*
2
」は結合手であることを示す。ただし、「*
1
」がB
1
に結合している場合と、「*
2
」がB
1
に結合している場合とを含む。)
【請求項2】
前記重合体(P)は、オキセタニル基及びオキシラニル基(ただし、前記構造単位U1が有するオキセタニル基及びオキシラニル基を除く。)の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記重合体(P)は、加熱によりオキセタニル基及びオキシラニル基の少なくとも一方と反応する官能基を有する、請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記重合体(P)は、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基、アミノ基及び保護されたアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体をさらに含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記重合体(P)は、光配向性基を有する重合体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記構造単位U2は、下記式(b-1)で表される部分構造を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化5】
(式(b-1)中、A
6、A
7及びA
8は、それぞれ独立して、置換又は無置換の1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基であり、X
5は単結合又は酸素原子であり、R
80は、フルオロメチル基又はメチル基であり、a1は0~2の整数であり、a2は1~20の整数であり、a3は0又は1である。ただし、R
80がメチル基である場合、a1=0である。「*」は結合手であることを示す。)
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項9】
請求項
8に記載の液晶配向膜を具備する液晶素子。
【請求項10】
下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位U1と、下記式(
6)で表され
る化合物に由来する構造単位であって前記構造単位U1とは異なる構造単位U2と、を有する重合体。
(E
1)
i-(G
1)
j …(1)
(式(1)中、G
1は、架橋性を示す環状構造を有する基、芳香族縮合多環構造を有する基、又は窒素含有複素環構造を有する基である。E
1は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する基であり、重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する少なくとも一方の炭素原子が、G
1が有する、架橋性を示す環状構造、芳香族縮合多環構造又は窒素含有複素環構造の環に対し単結合で結合しているか、又は**-COO-、**-CONR
50-、**-CH
2-CONR
50-、-O-若しくはフェニレン基(ただし、「**」は、重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する炭素原子に結合する結合手であることを示す。)を介して結合している。R
50は、水素原子であるか、又はR
50が他の基に結合して構成される環構造を表す。i及びjは、一方が1であって他方が2であるか、又はi=j=1である。)
【化6】
(式(6)中、B
1
は、下記式(7)、式(8)、式(9)又は式(10)で表される1価の基であり、D
1
は、下記式(11)で表される2価の基であり、X
1
及びX
2
は、それぞれ独立して、単結合、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CH
2
-、-CH
2
-O-又は炭素数1~3のアルカンジイル基であり、A
1
及びA
2
は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基、シクロへキシレン基又はナフチレン基であり、R
18
は、炭素数2~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基又は-R
19
-Y
1
(ただし、R
19
は炭素数2~20のアルカンジイル基であり、Y
1
はトリアルキルシリル基である。)である。mは0~2の整数であり、nは1~3の整数である。mが2の場合、複数のA
1
、X
1
は、それぞれ独立して上記定義を有する。nが2又は3の場合、複数のR
18
は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【化7】
(式(7)中、R
2
及びR
3
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。式(8)中、R
5
は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、R
6
及びR
7
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。式(9)中、R
11
は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、R
9
及びR
10
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。X
10
及びX
11
のうち一方は単結合であり、他方はメチレン基である。式(10)中、R
13
及びR
14
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。「*」は結合手であることを示す。)
【化8】
(式(11)中、A
3
、A
4
及びA
5
は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロへキシレン基であり、L
1
及びL
2
は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~5のアルカンジイル基、又は当該アルカンジイル基の少なくとも1個のメチレン基が「-O-」で置き換えられた基であり(ただし、酸素原子は連続しない。)、X
3
及びX
4
は、それぞれ独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-又は-O-であり、R
16
及びR
17
は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基である。k及びrは、それぞれ独立して0又は1である。「*
1
」及び「*
2
」は結合手であることを示す。ただし、「*
1
」がB
1
に結合している場合と、「*
2
」がB
1
に結合している場合とを含む。)
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年4月19日に出願された日本出願番号2018-80881号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子及び重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶素子は、テレビやパーソナルコンピュータ、スマートフォンなどの表示装置をはじめとする各種用途に用いられている。これら液晶素子は、液晶分子を一定の方向に配向させる機能を有する液晶配向膜を具備している。液晶配向膜は一般に、重合体成分が有機溶媒に溶解されてなる液晶配向剤を基板上に塗布し、好ましくは加熱することにより基板上に形成される。液晶配向剤の重合体成分としては、機械的強度や液晶配向性、液晶との親和性に優れていることから、ポリアミック酸や可溶性ポリイミドが広く使用されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/176822号
【文献】特開2017-138575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶配向膜による液晶分子の配向規制力が弱いと、液晶素子を長時間動作させた場合に、初期配向の方向が液晶素子の製造当初の方向からずれてきてしまい、AC残像と称する焼き付きが発生することがある。特に、光配向処理によって液晶配向膜を得る場合、ラビング処理に比べて液晶分子の配向規制力が十分でなく、AC残像が生じやすい傾向にある。液晶素子としては、近年の更なる高性能化の要求を満たすべく、AC残像が十分に低減されていることに加え、液晶素子の基本特性である電気特性に優れている(電圧保持率が高い)ことが望まれる。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、高い電圧保持率を示し、かつAC残像が低減された液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、以下の手段が提供される。
[1] 下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位U1と、下記式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表される部分構造を有する化合物に由来する構造単位であって前記構造単位U1とは異なる構造単位U2と、を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
(E
1)
i-(G
1)
j …(1)
(式(1)中、G
1は、架橋性を示す環状構造を有する基、芳香族縮合多環構造を有する基、又は窒素含有複素環構造を有する基である。E
1は、重合性炭素-炭素不飽和結合を有する基であり、重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する少なくとも一方の炭素原子が、G
1が有する、架橋性を示す環状構造、芳香族縮合多環構造又は窒素含有複素環構造の環に対し単結合で結合しているか、又は**-COO-、**-CONR
50-、**-CH
2-CONR
50-、-O-若しくはフェニレン基(ただし、「**」は、重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する炭素原子に結合する結合手であることを示す。)を介して結合している。R
50は、水素原子であるか、又はR
50が他の基に結合して構成される環構造を表す。i及びjは、一方が1であって他方が2であるか、又はi=j=1である。)
【化1】
(式(2)中、R
1は、炭素数1以上の1価の有機基であり、R
2及びR
3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。式(3)中、R
4は、炭素数1以上の1価の有機基であり、R
5は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、R
6及びR
7は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。式(4)中、R
8は、炭素数1以上の1価の有機基であり、R
11は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、R
9及びR
10は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。X
10及びX
11のうち一方は単結合であり、他方はメチレン基である。式(5)中、R
12は、炭素数1以上の1価の有機基であり、R
13及びR
14は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。)
[2] 上記[1]の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
[3] 上記[2]の液晶配向膜を具備する液晶素子。
[4] 上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位U1と、上記式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表される部分構造を有する化合物に由来する構造単位であって前記構造単位U1とは異なる構造単位U2と、を有する重合体。
[5] 下記式(6)で表される化合物。
【化2】
(式(6)中、B
1は、下記式(7)、式(8)、式(9)又は式(10)で表される1価の基であり、D
1は、下記式(11)で表される2価の基であり、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-又は炭素数1~3のアルカンジイル基であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基、シクロへキシレン基又はナフチレン基であり、R
18は、炭素数2~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基又は-R
19-Y
1(ただし、R
19は炭素数2~20のアルカンジイル基であり、Y
1はトリアルキルシリル基である。)である。mは0~2の整数であり、nは1~3の整数である。mが2の場合、複数のA
1、X
1は、それぞれ独立して上記定義を有する。nが2又は3の場合、複数のR
18は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【化3】
(式(7)中、R
2及びR
3はそれぞれ上記式(2)と同義である。式(8)中、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ上記式(3)と同義である。式(9)中、R
9、R
10、R
11、X
10及びX
11はそれぞれ上記式(4)と同義である。式(10)中、R
13及びR
14はそれぞれ上記式(5)と同義である。「*」は結合手であることを示す。)
【化4】
(式(11)中、A
3、A
4及びA
5は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロへキシレン基であり、L
1及びL
2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~5のアルカンジイル基、又は当該アルカンジイル基の少なくとも1個のメチレン基が「-O-」で置き換えられた基であり(ただし、酸素原子は連続しない。)、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-又は-O-であり、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基である。k及びrは、それぞれ独立して0又は1である。「*
1」及び「*
2」は結合手であることを示す。ただし、「*
1」がB
1に結合している場合と、「*
2」がB
1に結合している場合とを含む。)
【発明の効果】
【0008】
重合体(P)を含有する液晶配向剤によれば、高い電圧保持率を示し、かつAC残像が低減された液晶素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪液晶配向剤≫
本開示の液晶配向剤は、上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位U1と、上記式(2)、式(3)、式(4)又は式(5)で表される部分構造を有する化合物に由来する構造単位であって前記構造単位U1とは異なる構造単位U2と、を有する重合体(P)を含有する。以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0010】
なお、本明細書において「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
【0011】
<重合体(P)>
・構造単位U1について
上記式(1)において、G1が、架橋性を示す環状構造を有する基である場合、当該環状構造は、熱又は光によって同一又は異なる分子間に共有結合を形成可能な基であることが好ましい。G1が、架橋性を示す環状構造を有する基である場合の具体例としては、環状エーテル構造、環状(チオ)カーボネート構造、ラクトン構造、ラクタム構造又はオキサゾリン構造を有する基等が挙げられる。環状エーテル構造は、好ましくは、オキシラニル基(1,2-エポキシエタン構造)又はオキセタニル基(1,3-エポキシプロパン構造)であり、熱や光による反応性が高い点で、オキシラニル基がより好ましい。
【0012】
G
1が、架橋性を示す環状構造を有する基である場合の好ましい具体例としては、下記式(2-A-1)~式(2-A-6)のそれぞれで表される構造が挙げられる。
【化5】
(式(2-A-1)~式(2-A-6)中、R
51~R
56は、それぞれ独立して1価の置換基である。r1、r3、r5、r7、r9及びr11は、それぞれ独立して0~2の整数であり、r2、r4、r6、r8及びr10は、それぞれ独立して1~5の整数である。「*」は、E
1中の重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する炭素原子に結合する結合手であることを示す。)
【0013】
上記式(2-A-1)~式(2-A-6)において、R51~R56の具体例としては、メチル基、エチル基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。r1、r3、r5、r7、r9及びr11は、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0014】
芳香族縮合多環構造としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環等の芳香族炭化水素環;ナフトキノン環、アントラキノン環、キノリン環、キナゾリン環、ベンゾイミダゾール環、インドール環等の芳香族複素環、又はこれらの環の環部分に置換基が導入された構造等が挙げられる。置換基としては、例えばメチル基、エチル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基、アミノ基、保護されたアミノ基等が挙げられる。芳香族縮合多環構造は、これらのうち、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、ナフトキノン環又はアントラキノン環を有する構造であることが好ましく、ナフタレン環又はアントラセン環を有する構造であることがより好ましい。
【0015】
窒素含有複素環構造としては、単環でも縮合環でもよく、例えばピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、フェナジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、カルバゾール、アクリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、オキサゾール、イソオキサゾール、4,5-ジヒドロオキサゾール、4,5-ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロマレイミド、ベンゾマレイミド等の窒素含有複素環、及び当該窒素含有複素環に置換基が導入された構造等が挙げられる。当該置換基としては、例えば炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
G1が、窒素含有複素環構造を有する1価の基である場合、G1の好ましい具体例としては、ピロール、イミダゾール、カルバゾール、プリン、インドール、モルホリン、ベンゾイミダゾール、ジヒドロマレイミド又はベンゾマレイミドの窒素原子に結合する水素原子を取り除いた基;ピリジン、ピリミジン、ピラジン、アクリジン、フェナジン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、イソオキサゾール、4,5-ジヒドロオキサゾール又はベンゾオキサゾールの炭素原子に結合する少なくとも1個の水素原子を取り除いた基、等が挙げられる。
【0016】
上記式(1)において、E
1が有する重合性炭素-炭素不飽和結合は、当該重合性炭素-炭素不飽和結合を形成する少なくとも1個の炭素原子が、架橋性を示す環状構造、芳香族縮合多環構造又は窒素含有複素環構造中の環に対し、単結合、**-COO-、**-CONR
50-、**-CH
2-CONR
50-、-O-又はフェニレン基を介して結合している。具体的には、E
1は、下記式(e-1)~式(e-11)のそれぞれで表される基のいずれかであることが好ましい。
【化6】
(式(e-1)~式(e-11)中、R
20~R
34、R
36~R
40、R
42、R
43及びR
45~R
49は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。R
35、R
41及びR
44は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基である。「*3」は、G
1が有する環との結合手であることを示し、「*4」は、R
50との結合手であることを示す。)
【0017】
R35、R41、R44が1価の有機基である場合の具体例としては、炭素数1~30の1価の炭化水素基、当該炭化水素基の少なくとも1個のメチレン基が-O-、-CO-、-COO-又は-NR60-(ただし、R60は水素原子又は1価の炭化水素基である。以下同じ。)で置換された基(以下「基α」ともいう。)、炭素数1~30の1価の炭化水素基又は基αの少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換された基等が挙げられる。R36、R42は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましい。
E1は、得られる液晶素子の電圧保持率をより高くできる点、AC残像をより低減できる点、及びモノマーの選択の自由度が高い点で、上記のうち、上記式(e-1)~式(e-4)のそれぞれで表される基のいずれかであることが好ましく、上記式(e-1)~式(e-3)のそれぞれで表される基のいずれかであることがより好ましい。
i及びjは、共に1であることが好ましい。
【0018】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、G
1が架橋性を示す環状構造を有する基である化合物(以下、「化合物(G-1)」ともいう。)として、例えば下記式(1-1-1)~式(1-1-18)のそれぞれで表される化合物、下記式(1-3-11)で表される化合物等を;G
1が芳香族縮合多環構造を有する基である化合物(以下、「化合物(G-2)」ともいう。)として、例えば下記式(1-2-1)~式(1-2-19)のそれぞれで表される化合物等を;G
1が窒素含有複素環構造を有する基である化合物(以下、「化合物(G-3)」ともいう。)として、例えば下記式(1-3-1)~式(1-3-18)、式(1-1-10)、式(1-1-11)、式(1-2-8)及び式(1-2-9)のそれぞれで表される化合物等を、挙げることができる。なお、重合体(P)は、これらのうちの1種の化合物に由来する構造単位を有していてもよく、2種以上の化合物に由来する構造単位を有していてもよい。
【化7】
【化8】
【化9】
(式中、Rは水素原子又はメチル基である。)
【0019】
重合体(P)は、構造単位U1として、化合物(G-1)に由来する構造単位、化合物(G-2)に由来する構造単位、及び化合物(G-3)に由来する構造単位のうちの1種のみを有していてもよく、これらのうちの2種以上を有していてもよい。また、重合体(P)が、化合物(G-1)に由来する構造単位と化合物(G-2)に由来する構造単位と化合物(G-3)に由来する構造単位とを有していてもよい。
重合体(P)中の構造単位U1の含有割合は、電圧保持率の向上効果及びAC残像の低減効果を十分に得る観点から、重合体(P)が有するモノマー由来の構造単位の全量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、3~60モル%とすることがより好ましく、4~50モル%とすることがさらに好ましい。
【0020】
・構造単位U2について
上記式(2)~式(5)において、R5及びR11の1価の有機基の具体例については、上記式(e-6)のR35及び式(e-8)のR41の1価の有機基の説明が適用される。
R1、R4、R8及びR12の1価の有機基としては、例えば炭素数1~30の1価の炭化水素基、当該炭化水素基の少なくとも1個のメチレン基が-O-、-CO-、-COO-又は-NR60-で置換された基α、炭素数1~30の1価の炭化水素基又は基αの少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換された基、光配向性基を有する1価の基、架橋性基を有する基等が挙げられる。
重合体(P)を用いて形成した有機膜に対し、偏光又は非偏光の放射線を照射することによって膜に異方性を与え、これにより液晶の配向を制御可能にすることができる点で、重合体(P)が有する構造単位U2の少なくとも一部は、光配向性基を有していることが好ましい。この場合、重合体(P)は、構造単位U2として、R1、R4又はR8が光配向性基を有する1価の基である構造単位を有する。
【0021】
光配向性基は、光照射による光異性化反応、光二量化反応、光フリース転位反応又は光分解反応によって膜に異方性を付与可能な官能基であることが好ましい。光配向性基の具体例としては、アゾベンゼン又はその誘導体を基本骨格として含むアゾベンゼン含有基、桂皮酸又はその誘導体(桂皮酸構造)を基本骨格として含む桂皮酸構造含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含むカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含むベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含むクマリン含有基、シクロブタン又はその誘導体を基本骨格として含むシクロブタン含有構造等が挙げられる。光に対する感度が高い点や、重合体側鎖に導入しやすい点で、光配向性基は、これらのうち、桂皮酸構造含有基であることが好ましい。
【0022】
重合体(P)は、構造単位U2として、下記式(6)で表される化合物(以下、「特定モノマー」ともいう。)に由来する構造単位を有していることが好ましい。
【化10】
(式(6)中、B
1は、下記式(7)、式(8)、式(9)又は式(10)で表される1価の基であり、D
1は、下記式(11)で表される2価の基であり、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-又は炭素数1~3のアルカンジイル基であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基、シクロへキシレン基又はナフチレン基であり、R
18は、炭素数2~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基又は-R
19-Y
1(ただし、R
19は炭素数2~20のアルカンジイル基であり、Y
1はトリアルキルシリル基である。)である。mは0~2の整数であり、nは1~3の整数である。mが2の場合、複数のA
1、X
1は、それぞれ独立して上記定義を有する。nが2又は3の場合、複数のR
18は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【化11】
(式(7)中、R
2及びR
3はそれぞれ上記式(2)と同義である。式(8)中、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ上記式(3)と同義である。式(9)中、R
9、R
10、R
11、X
10及びX
11はそれぞれ上記式(4)と同義である。式(10)中、R
13及びR
14はそれぞれ上記式(5)と同義である。「*」は結合手であることを示す。)
【化12】
(式(11)中、A
3、A
4及びA
5は、それぞれ独立して、置換又は無置換のフェニレン基又はシクロへキシレン基であり、L
1及びL
2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~5のアルカンジイル基、又は当該アルカンジイル基の少なくとも1個のメチレン基が「-O-」で置き換えられた基であり(ただし、酸素原子は連続しない。)、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CS-O-、-O-CS-、-CO-S-、-S-CO-又は-O-であり、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基である。k及びrは、それぞれ独立して0又は1である。「*
1」及び「*
2」は結合手であることを示す。ただし、「*
1」がB
1に結合している場合と、「*
2」がB
1に結合している場合とを含む。)
【0023】
上記式(6)において、B
1は、重合反応が進行しやすく、分子量が十分に大きい重合体を得る観点から、上記式(7)、式(8)又は式(9)で表される基であることが好ましく、上記式(7)又は式(8)で表される基であることが特に好ましい。上記式(9)には、下記式(9-1)及び式(9-2)が含まれる。
【化13】
(式(9-1)及び式(9-2)中、R
9、R
10、R
11、X
10及びX
11はそれぞれ上記式(4)と同義である。「*」は結合手であることを示す。)
X
1及びX
2は、得られる液晶素子の電圧保持率の改善効果をより高くできる点で、単結合、-CO-O-、-O-CO-、-O-又は炭素数1~3のアルカンジイル基であることが好ましく、単結合、-CO-O-又は-O-CO-であることがより好ましい。A
1及びA
2が置換基を有する場合、当該置換基としては、例えばメチル基、エチル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。R
16及びR
17がハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R
16及びR
17は、好ましくは水素原子である。
【0024】
得られる液晶素子のAC残像をより低減できる点で、mは1又は2であることが好ましい。この場合、式(6)中の「-A
2-X
2-(A
1-X
1)m-」は、液晶素子の電気特性及びAC残像特性の改善効果をより高くできる点で、下記式(a-1)~式(a-9)のそれぞれで表される基のいずれかであることが好ましい。これらのうち、より好ましくは、下記式(a-1)~式(a-3)、及び式(a-6)~式(a-8)のそれぞれで表される基であり、さらに好ましくは、下記式(a-1)、式(a-7)及び式(a-8)のそれぞれで表される基であり、下記式(a-1)及び式(a-8)のそれぞれで表される基が特に好ましい。
【化14】
(式中、「*
5」はR
18に結合する結合手であることを示し、「*
6」はB
1に結合する結合手であることを示す。)
【0025】
R18のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基及び-R19-Y1は、直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。液晶素子の電圧保持率の向上及びAC残像の低減の効果をより高くできる点で、R18は、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基又は-R19-Y1であることが好ましく、フルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基であることがより好ましく、「-R61-Y2」で表される基(ただし、R61はアルカンジイル基であり、Y2はパーフルオロアルキル基であり、R61とY2との合計の炭素数が2以上である。)であることが特に好ましい。nは1又は2であることが好ましい。R18がアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基である場合、R18の炭素数は、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。
【0026】
得られる液晶素子の電気特性及びAC残像低減の改善効果をより高くできる点で、上記式(6)で表される化合物は、下記式(b-1)で表される基を有していることが好ましい。なお、式(b-1)中の「R
80-(CF
2)
a1-(CH
2)
a2-X
5-」は、式(6)のR
18に対応している。
【化15】
(式(b-1)中、A
6、A
7及びA
8は、それぞれ独立して、置換又は無置換の1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基であり、X
5は単結合又は酸素原子であり、R
80は、フルオロメチル基又はメチル基であり、a1は0~2の整数であり、a2は1~20の整数であり、a3は0又は1である。ただし、R
80がメチル基である場合、a1=0である。「*」は結合手であることを示す。)
【0027】
上記式(b-1)において、A6は、AC残像の低減効果及び電圧保持率をより高くできる点で、置換又は無置換の1,4-シクロヘキシレン基であることが好ましく、1,4-シクロヘキシレン基であることが特に好ましい。
a3が0である場合、A8は1,4-シクロヘキシレン基であることが好ましく、a3が1である場合、A8は1,4-フェニレン基であることが好ましく、A7が1,4-シクロへキシレン基であって、A8が1,4-フェニレン基であることがより好ましい。
A6~A8が有していてもよい置換基としては、例えばメチル基、エチル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。a1は0又は1であることが好ましい。a2は2以上であることが好ましい。a3は、合成や入手の容易性の点で1であることが好ましく、残像特性の改善効果が高い点で2であることが好ましい。R80は、液晶素子の電気特性及びAC残像低減の改善効果をより高くできる点で、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0028】
上記式(11)について、A3、A4及びA5が有していてもよい置換基については、上記A1及びA2の置換基の説明が適用される。
X3及びX4は、得られる液晶素子の電圧保持率の向上効果がより高い点で、-CO-O-、-O-CO-、-O-又は炭素数1~3のアルカンジイル基であることが好ましく、-CO-O-又は-O-CO-であることがより好ましい。
「*2」がB1に結合している場合、AC残像の低減効果をより高くできる点で、L1は単結合であることが好ましく、L1が単結合であって、かつk=0であるか、又はL1が単結合であって、かつX3が-CO-O-又は-O-CO-であることが特に好ましい。同様の理由から、「*1」がB1に結合している場合、r=1の場合にはL2が単結合であることが好ましく、L2が単結合であって、かつX4が-CO-O-又は-O-CO-であることが特に好ましい。
【0029】
特定モノマーの具体例としては、例えば下記式(6-1)~式(6-41)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。特定モノマーは、これらのうち、式(11)中の「*
2」がB
1に結合している化合物を好ましく使用することができる。なお、重合体(P)は、構造単位U1として、1種の特定モノマーに由来する構造単位のみを有していてもよいし、2種以上の特定モノマーに由来する構造単位を有していてもよい。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
(式(6-1)~式(6-41)中、B
1は上記式(6)と同義である。R
64は、炭素数2~20のアルキレン基又はオキシアルキレン基であり、b1は2~20の整数であり、b2は1又は2である。)
【0030】
特定モノマーを合成する方法は特に限定されず、所望とする化合物の分子構造に応じて、有機化学の定法を適宜組み合わせることによって合成することができる。例えば、B1が上記式(7)で表される基の化合物は、ヒドロキシ基含有マレイミド(4-ヒドロキシフェニルマレイミド、4-ヒドロキシシクロヘキシルマレイミド、3-ヒドロキシフェニルマレイミド、4-ヒドロキシ-2-メチルフェニルマレイミド、4-ヒドロキシ-3-メチルフェニルマレイミド等)と、対応する基「R18-A2-X2-(A1-X1)m-」を有する桂皮酸誘導体とを反応させる方法により得ることができる。また、B1が上記式(8)で表される基の化合物は、例えば、「R18-A2-X2-(A1-X1)m-D1-NH2」で表されるアミン化合物と、マレイン酸無水物とを反応させる方法により得ることができる。B1が上記式(9)で表される基の化合物は、例えば、「R18-A2-X2-(A1-X1)m-D1-NH2」で表されるアミン化合物と、イタコン酸無水物とを反応させる方法により得ることができ、B1が上記式(10)で表される基の化合物は、例えば、B1が上記式(9)で表される基の化合物のB1中のケトン部分を還元することにより得ることができる。ただし、特定モノマーの合成方法は上記に限定されるものではない。
【0031】
重合体(P)は、構造単位U2として、光配向性基を有する構造単位(以下、「構造単位U2A」ともいう。)のみを有していてもよいが、構造単位U2Aと共に、光配向性基を有さない構造単位(以下、「構造単位U2B」ともいう。)を有していてもよい。構造単位U2Bは、特に限定されないが、例えばN-メチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(4-グリシジルオキシフェニル)マレイミド、N-グリシジルマレイミド、3-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸、4-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸、4-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸メチル、N-メチルイタコンイミド、N-(m-メトキシフェニル)イタコンイミド、及びこれらの開環体等が挙げられる。
【0032】
重合体(P)中の構造単位U2の含有割合(構造単位U2A及び構造単位U2Bを有する場合にはその合計量)は、重合体(P)が有するモノマー由来の構造単位の全量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、3~60モル%とすることがより好ましく、4~40モル%とすることがさらに好ましい。
構造単位U2Aの含有割合は、AC残像の低減効果を十分に得ることができる点で、重合体(P)が有するモノマー由来の構造単位の全量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、3~50モル%とすることがより好ましく、4~30モル%とすることがさらに好ましい。
【0033】
本開示の液晶配向剤は、構造単位U1及び構造単位U2を有する重合体を含有することによって電気特性及びAC残像特性を改善できるものであるが、当該特性の改善効果をさらに高くするために、重合体(P)は、構造単位U1及び構造単位U2以外のその他の構造単位を有していてもよい。重合体(P)は、その他の構造単位として、下記の(x1)及び(x2)のうち少なくともいずれかを側鎖に有することが好ましく、(x1)及び(x2)の両方を側鎖に有することが特に好ましい。
(x1)オキセタニル基及びオキシラニル基(ただし、構造単位U1が有するオキセタニル基及びオキシラニル基を除く。)の少なくとも一方の官能基(以下、「官能基(x1)」ともいう。)
(x2)加熱によりオキセタニル基及びオキシラニル基の少なくとも一方と反応する官能基(以下、「官能基(x2)」ともいう。)
【0034】
(官能基(x1)について)
重合体(P)が官能基(x1)を有している場合、配向膜形成時の焼成温度を低くした場合にも高い液晶配向性を発現する液晶配向膜を得ることができる点で好ましい。官能基(x1)としては、オキセタニル基及びオキシラニル基(以下、単に「エポキシ基」ともいう。)のうち、反応性が高い点でオキシラニル基が好ましい。
【0035】
(官能基(x2)について)
AC残像の低減及び高い電圧保持率をより十分に奏するものとすることができる点で、重合体(P)は、官能基(x2)を有していることが好ましい。官能基(x2)としては、例えばカルボキシル基、水酸基、イソシアネート基及びアミノ基、並びにこれら各基が保護基で保護された基、アルコキシメチル基等が挙げられる。官能基(x2)は、得られる液晶配向剤の保存安定性をより良好にでき、かつ加熱によるオキセタン環及びオキシラン環との反応性が高い点で、中でも、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基(以下、「保護カルボキシル基」ともいう。)、アミノ基、及び保護されたアミノ基(以下、「保護アミノ基」ともいう。)よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、アミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基を含む。
【0036】
保護カルボキシル基は、熱によって脱離してカルボキシル基を生成するものであれば特に限定されない。保護カルボキシル基の好ましい具体例としては、下記式(12)で表される構造、カルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造等が挙げられる。
【化20】
(式(12)中、R
31,R
32及びR
33は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基若しくは炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又は、R
31とR
32とが相互に結合してR
31及びR
32が結合している炭素原子とともに炭素数4~20の2価の脂環式炭化水素基又は環状エーテル基を形成し、かつR
33が炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基又は炭素数6~20のアリール基である。「*」は結合手であることを示す。)
【0037】
保護アミノ基は、熱によって脱離して1級アミノ基を生成するものであれば特に限定されない。保護基としては、例えばカルバメート系保護基、アミド系保護基、イミド系保護基、スルホンアミド系保護基等が挙げられる。これらのうち、熱による脱離性が高い点、及び脱離した保護基に由来する化合物の膜中における残存量をできるだけ少なくできる点で、t-ブトキシカルボニル基(BOC基)が特に好ましい。
【0038】
官能基(x1)及び官能基(x2)は、得られる液晶素子の電気特性をより良好にできる点、及びモノマーの選択の自由度が高い点で、スチレン系化合物及び(メタ)アクリル系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種によって重合体(P)に導入されることが好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル系化合物」は、一分子内に(メタ)アクリル基を1個のみ有する化合物をいい、マレイミド系化合物及びイタコンイミド系化合物とは区別される。
【0039】
その他の構造単位として、官能基(x1)を有する化合物(以下、「化合物E1」ともいう。)に由来する構造単位を有する場合、化合物E1は、エポキシ基を有する基として、下記式(13)で表される部分構造を有していることが好ましい。下記式(13)中のR70は、好ましくは炭素数2以上である。
*-R70-G2 …(13)
(式(13)中、R70は、炭素数1~20のアルカンジイル基又は当該アルカンジイル基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-又は-OCO-を有する基であり、G2は、オキセタニル基、オキシラニル基又は3,4-エポキシシクロヘキシル基である。「*」は結合手であることを示す。)
【0040】
化合物E1、及び官能基(x2)を有する化合物(以下、「化合物E2」ともいう。)は、構造単位U1を形成するモノマー及び構造単位U2を形成するモノマーと重合可能であれば特に限定されないが、重合反応が進行しやすい点及びモノマーの選択の自由度が高い点で、上記式(e-1)、式(e-3)~式(e-7)及び式(e-10)よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、上記式(e-3)及び式(e-5)~式(e-7)よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
【0041】
化合物E1の具体例としては、スチレン系化合物として、例えば3-(グリシジルオキシメチル)スチレン、4-(グリシジルオキシメチル)スチレン、4-グリシジル-α-メチルスチレン等を、
(メタ)アクリル系化合物として、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、α-n-プロピルアクリル酸グリシジル、α-n-ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル、α-エチルアクリル酸3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6,7-エポキシヘプチル、α-エチルアクリル酸6,7-エポキシヘプチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル等を、それぞれ挙げることができる。なお、化合物E1としては、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
化合物E2の具体例としては、スチレン系化合物として、例えば3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸、下記式(m1-1)~(m1-4)のそれぞれで表される化合物等を、
(メタ)アクリル化合物として、例えば(メタ)アクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、3-マレイミド安息香酸、3-マレイミドプロピオン酸等のカルボキシル基含有化合物;下記式(m2-1)~式(m2-12)のそれぞれで表される保護カルボニル基含有化合物;下記式(m1-5)~式(m1-7)のそれぞれで表されるアミノ基含有化合物;下記式(m1-8)及び式(m1-9)のそれぞれで表される保護アミノ基含有化合物等を、それぞれ挙げることができる。なお、重合体(P)の合成に際し、化合物E2は、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化21】
【化22】
(式中、R
15は水素原子又はメチル基である。)
【0043】
重合体(P)において、化合物E1に由来する構造単位の含有割合は、重合体(P)が有するモノマー由来の構造単位の全量に対して、2モル%以上とすることが好ましく、5~70モル%とすることがより好ましく、10~60モル%とすることがさらに好ましい。
化合物E2に由来する構造単位の含有割合は、重合体(P)が有するモノマー由来の構造単位の全量に対して、2モル%以上とすることが好ましく、3~60モル%とすることがより好ましく、5~50モル%とすることがさらに好ましい。
【0044】
重合体(P)は、その他の構造単位として、官能基(x1)及び官能基(x2)をいずれも有さないモノマーに由来する構造単位を有していてもよい。当該モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル系化合物;スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン化合物、無水マレイン酸等が挙げられる。当該モノマーに由来する構造単位の含有割合は、重合体(P)が有するモノマー由来の構造単位の全量に対して、20モル%以下とすることが好ましく、10モル%以下とすることがより好ましく、3モル%以下とすることがさらに好ましい。
【0045】
(重合体(P)の合成)
重合体(P)を合成する方法は特に限定されないが、例えば上記モノマーを重合開始剤の存在下、有機溶媒中でラジカル重合することにより得ることができる。使用する重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が好ましい。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する全モノマー100質量部に対して、0.01~30質量部とすることが好ましい。使用する有機溶媒としては、例えばアルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物等が挙げられる。
上記の重合反応では、反応温度は30℃~120℃とすることが好ましく、反応時間は1~36時間とすることが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。重合体を溶解してなる反応溶液は、例えば、反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等の公知の単離方法を用いて、反応溶液中に含まれる重合体(P)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供するとよい。重合体(P)の合成は、例えばRAFT試薬を用いたリビングラジカル重合等により行ってもよい。
【0046】
重合体(P)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~300,000であり、より好ましくは2,000~100,000である。Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。なお、液晶配向剤の調製に使用する重合体(P)は、1種のみでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0047】
液晶配向剤中における重合体(P)の含有割合は、液晶素子の電気特性及び低残像特性の改善効果を十分に得ることができる点で、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全量に対し、1質量%以上とすることが好ましく、2質量%以上とすることがより好ましく、3質量%以上とすることがさらに好ましい。重合体(P)の含有割合の上限値は特に制限されないが、重合体(P)とは異なる重合体の併用による各種特性(例えば、液晶配向性や電気特性等)の改善効果を十分に得るため、及び低コスト化を図るために、液晶配向剤に含まれる全重合体に対して、90質量%以下とすることが好ましく、60質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0048】
<その他の成分>
本開示の液晶配向剤は、必要に応じて、重合体(P)以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、本開示の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば以下の成分が挙げられる。
【0049】
(重合体(Q))
本開示の液晶配向剤は、重合体(P)と共に、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(以下、「重合体(Q)」ともいう。)を含有していることが好ましい。この場合、重合体(P)を上層へ偏在させることにより、重合体(P)による電気特性及びAC残像特性の改善効果を、できるだけ少ない量の重合体(P)によって実現できる点で好適である。重合体(P)がハロゲン原子又はケイ素原子を有する重合体であって、重合体(Q)が、ハロゲン原子及びケイ素原子を有さない重合体の組み合わせとすることにより相分離を生じやすくすることができる点で好ましい。
【0050】
重合体(Q)は、従来公知の方法に従って合成することができる。例えばポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。なお、本明細書において「テトラカルボン酸誘導体」は、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を含む意味である。
【0051】
重合に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されず、種々のテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。それらの具体例としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3-プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、等を挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。なお、テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
上記重合に使用するジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;p-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環式ジアミン;ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、2,5-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン、下記式(2-1)~式(2-3)
【化23】
【0053】
のそれぞれで表される化合物等の側鎖型の芳香族ジアミン;p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3-カルボン酸、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、ビス(4-アミノフェニル)アミン、N,N-ビス(4-アミノフェニル)メチルアミン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4-(4-アミノフェノキシカルボニル)-1-(4-アミノフェニル)ピペリジン、4,4’-[4,4’-プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリン等の非側鎖型の芳香族ジアミン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等のジアミノオルガノシロキサン、等を挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。なお、ジアミンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計量が、反応溶液の全量に対して、0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0055】
重合体(Q)がポリアミック酸エステルの場合、当該ポリアミック酸エステルは、例えば、上記で得られたポリアミック酸と、エステル化剤(例えばメタノールやエタノール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール等)とを反応させる方法、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン化合物とを適当な脱水触媒の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを適当な塩基の存在下で反応させる方法、等により得ることができる。
【0056】
重合体(Q)がポリイミドの場合、当該ポリイミドは、例えば、上記で得られたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミドは、そのイミド化率が20~95%であることが好ましく、30~90%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。
【0057】
重合体(Q)につき、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。なお、液晶配向剤に含有させる重合体(Q)は、1種のみでもよく、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0058】
液晶配向剤の重合体成分として重合体(P)と重合体(Q)とを使用する場合、重合体(P)の配合割合は、AC残像特性及び電気特性の改善効果を十分に得る観点から、液晶配向剤の調製に使用する重合体(Q)の100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましい。より好ましくは2~50質量部であり、さらに好ましくは5~30質量部である。なお、重合体(P)及び重合体(Q)は、それぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
(溶剤)
本開示の液晶配向剤は、重合体成分、及び必要に応じて任意に配合される成分が、好ましくは有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。当該有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等が挙げられる。溶剤成分は、これらの1種でもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0060】
液晶配向剤の溶剤成分としては、重合体の溶解性及びレベリング性が高い溶剤(以下、「第1溶剤」ともいう。)、濡れ広がり性が良好な溶剤(以下、「第2溶剤」ともいう。)、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
溶剤の具体例としては、第1溶剤として、例えばN-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジイソブチルケトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N-エチル-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-(t-ブチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等を;
第2溶剤として、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ダイアセトンアルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブタノール、シクロペンタノン、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル等を、それぞれ挙げることができる。なお、溶剤は、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0061】
液晶配向剤の溶剤成分を第1溶剤と第2溶剤との混合溶剤とする場合、第1溶剤の含有割合は、溶剤成分の全量に対して、10質量%以上とすることが好ましく、15~85質量%とすることがより好ましい。
【0062】
液晶配向剤に含有させるその他の成分としては、上記のほか、例えば、重合体(P)及び重合体(Q)とは異なる重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する分子量1000以下の低分子化合物(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等)、官能性シラン化合物、多官能(メタ)アクリレート、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0063】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10質量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
【0064】
≪液晶配向膜及び液晶素子≫
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定されず、例えばTN型、STN型、VA型(VA-MVA型、VA-PVA型などを含む。)、IPS(In-Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA型(Polymer Sustained Alignment)など種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
【0065】
<工程1:塗膜の形成>
先ず基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In2O3-SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。基板への液晶配向剤の塗布は、電極形成面上に、好ましくはオフセット印刷法、フレキソ印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行う。
【0066】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~250℃であり、より好ましくは80~200℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。
【0067】
<工程2:配向処理>
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることによって塗膜に液晶配向能を付与するラビング処理、基板上に形成した塗膜に光照射を行って塗膜に液晶配向能を付与する光配向処理等が挙げられる。これらのうち、光配向処理が好ましい。垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、液晶配向能を更に高めるために、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
【0068】
光配向のための光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線の場合の照射方向は斜め方向とする。
【0069】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。放射線の照射量は、好ましくは400~50,000J/m2であり、より好ましくは1,000~20,000J/m2である。配向能付与のための光照射後において、基板表面を例えば水、有機溶媒(例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル等)又はこれらの混合物を用いて洗浄する処理や、基板を加熱する処理を行ってもよい。
【0070】
<工程3:液晶セルの構築>
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面とシール剤で囲まれたセルギャップ内に液晶を注入充填し注入孔を封止する方法、ODF方式による方法等が挙げられる。シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。PSAモードでは、液晶セルの構築後に、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する処理を行う。
【0071】
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせ、液晶素子とする。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
【0072】
本開示の液晶素子は種々の用途に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置や、調光フィルム、位相差フィルム等に適用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により具体的に説明するが、本開示内容は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の例において、重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は以下の方法により測定した。
<重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でMw及びMnを測定した。また、分子量分布(Mw/Mn)は、得られたMw及びMnより算出した。
装置:昭和電工(株)の「GPC-101」
GPCカラム:(株)島津ジーエルシー製の「GPC-KF-801」、「GPC-KF-802」、「GPC-KF-803」及び「GPC-KF-804」を結合
移動相:テトラヒドロフラン(THF)、又はリチウムブロミド及びリン酸含有のN,N-ジメチルホルムアミド溶液
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
以下の例で使用した化合物の構造式を以下に示す。
【0074】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0075】
【0076】
<モノマーの合成>
[合成例1:化合物(MI-01)の合成]
下記スキーム1に従って化合物(MI-01)を合成した。
【化26】
【0077】
・化合物(MI-01)の合成
攪拌子を入れた100mLナスフラスコに(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸14.0g、塩化チオニル20g、及びN,N-ジメチルホルムアミド0.01gを加え,80℃で1時間攪拌した。その後、過剰の塩化チオニルをダイヤフラムポンプで除去し、テトラヒドロフランを100g加え、溶液Aとした。
新たに、攪拌子を入れた500mL三口フラスコに4-ヒドロキシフェニルマレイミドを5.67g、テトラヒドロフラン200g、及びトリエチルアミン12.1gを加え、氷浴した。そこに溶液Aを滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を水800mLで再沈殿し、得られた白色固体を真空乾燥することで化合物(MI-01)を14.3g得た。
【0078】
[合成例2:化合物(MI-02)の合成]
下記スキーム2に従って化合物(MI-02)を合成した。
【化27】
【0079】
・化合物(M-2-1)の合成
攪拌子を入れた1000mL三つ口フラスコに4-アミノ-シクロヘキサノール11.5gを取り、テトラヒドロフランを150g加えて氷浴した。そこに、無水マレイン酸9.81gとテトラヒドロフラン150gからなる溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(M-2-1)を20.2g得た。
・化合物(M-2-2)(4-ヒドロキシシクロヘキシルマレイミド)の合成
攪拌子を入れた500mL三つ口フラスコに化合物(M-2-1)を17.1g、塩化亜鉛(II)を10.9g、トルエンを250g加え、80℃に加熱撹拌した。そこに、ビス(トリメチルシリル)アミン23.2gとトルエン100gからなる溶液を滴下し、80℃で5時間撹拌した。その後、反応液に酢酸エチル300gを加え1mol/L塩酸で2回、炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、水で3回分液洗浄した。その後、有機層をロータリーエバポレータにより濃縮した。得られた白色固体をTHF/エタノール/水の混合溶媒中に入れ、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(M-2-2)を7.99g得た。
・化合物(MI-02)の合成
合成例1において、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに、4-ヒドロキシシクロヘキシルマレイミドを用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-02)を14.0g得た。
【0080】
[合成例3:化合物(MI-03)の合成]
下記スキーム3に従って化合物(MI-03)を合成した。
【化28】
【0081】
・化合物(M-3-1)の合成
攪拌子を入れた2000mL三つ口フラスコにN-Boc-4-ヒドロキシアニリンを11.5g、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸を23.3g取り、ジクロロメタンを1000g加え、氷浴した。そこに、N,N-ジメチルアミノピリジン1.21g、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩11.5gの順で加え、室温で8時間攪拌した後、蒸留水500gで4回分液洗浄した。その後、有機層をロータリーエバポレータにより、内容量が100gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(M-3-1)を31.6g得た。
・化合物(M-3-2)の合成
攪拌子を入れた300mLナスフラスコに化合物(M-3-1)を30.3g、トリフルオロ酢酸を33.8g取り、ジクロロメタンを50g加え、室温で1時間攪拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液により中和した後、蒸留水50gで4回分液洗浄した。その後、有機層をロータリーエバポレータにより、内容量が50gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(M-3-2)を24.8g得た。
・化合物(MI-03)の合成
攪拌子を入れた2000mL三つ口フラスコに化合物(M-3-2)24.7gを取り、テトラヒドロフランを200g加えて氷浴した。そこに、無水マレイン酸4.34gとテトラヒドロフラン200gからなる溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、析出してきた固体を濾過により回収した。この黄色固体を真空乾燥することで化合物(MI-03)を28.9g得た。
【0082】
[合成例4:化合物(MI-04)の合成]
下記スキーム4に従って化合物(MI-04)を合成した。
【化29】
【0083】
・化合物(MI-04)の合成
撹拌子を入れた500mLナスフラスコに、マレイン酸モノメチル6.53g、塩化チオニル25g、及びN,N-ジメチルホルムアミド0.01gを加え,60℃で2時間攪拌した。その後、過剰の塩化チオニルをダイヤフラムポンプで除去し、テトラヒドロフランを50g加え、溶液Aとした。
新たに、攪拌子を入れた1000mL三口フラスコに化合物(M-3-2)を26.8g、テトラヒドロフラン500g、及びトリエチルアミン13.2gを加え、氷浴した。そこに溶液Aを滴下し、室温で8時間撹拌した。反応液を水1200mLで再沈殿し、得られた白色固体を真空乾燥することで化合物(MI-04)を25.4g得た。
【0084】
[合成例5:化合物(MI-05)の合成]
合成例3において、原料として化合物(M-3-2)、及びマレイン酸無水物の代わりにイタコン酸無水物を用いた以外は、合成例1-3と同様の方法で、化合物(MI-05)を19.1g得た。
[合成例6:化合物(MI-06)の合成]
合成例1において、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに、4-ヒドロキシ-2-メチルフェニルマレイミドを用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-06)を14.4g得た。なお、4-ヒドロキシ-2-メチルフェニルマレイミドは、合成例2のM-2-1の合成において、4-ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに2-メチル-4-ヒドロキシアニリンを用いて合成した。
[合成例7:化合物(MI-07)の合成]
合成例1において、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに、4-ヒドロキシ-3-メチルフェニルマレイミドを用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-07)を14.5g得た。なお、4-ヒドロキシ-3-メチルフェニルマレイミドは、合成例2の化合物(M-2-1)の合成において、4-ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに3-メチル-4-ヒドロキシアニリンを用いて合成した。
【0085】
[合成例8:化合物(MI-08)の合成]
下記スキーム8に従って化合物(MI-08)を合成した。
【化30】
【0086】
・4-ヒドロキシ-α-メチル桂皮酸(化合物(M-8-1))の合成
攪拌子を入れた200mL三つ口フラスコに、4-ヒドロキシベンズアルデヒド9.74g、プロピオン酸無水物25g、及びプロピオン酸ナトリウム15.2gを混合し、窒素雰囲気下145℃で16時間撹拌した。反応後、氷浴で冷却し、水100mlを加えて3時間撹拌し、固体を析出させ、ろ過した。得られた固体を10%水酸化ナトリウム水溶液に加え、0℃で30分撹拌した。不溶物をろ過後、ろ液に塩酸を加えて酸性にし、生じた固体をろ過した。固体を酢酸エチル200mlに溶かし、水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、4-ヒドロキシ-α-メチル桂皮酸(これを化合物(M-8-1)とする。)を8.73g得た。
・化合物(M-8-2)の合成
4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボン酸と4-ヒドロキシ-α-メチル桂皮酸を合成例1と同様の方法により反応させ、化合物(M-8-2)を15.0g得た。
・化合物(MI-08)の合成
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-8-2)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-08)を14.6g得た。
【0087】
[合成例9:化合物(MI-09)の合成]
下記スキーム9に従って化合物(MI-09)を合成した。
【化31】
【0088】
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-9-1)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-09)を14.5g得た。なお、化合物(M-9-1)は、合成例8において、4-ヒドロキシ-α-メチル桂皮酸の代わりに2-メチル-4-ヒドロキシ桂皮酸を用いた以外は同様の方法で合成した。
【0089】
[合成例10:化合物(MI-10)の合成]
下記スキーム10に従って化合物(MI-10)を合成した。
【化32】
【0090】
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-10-1)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-10)を14.5g得た。なお、化合物(M-10-1)は、合成例8において、4-ヒドロキシ-α-メチル桂皮酸の代わりに、3-メチル-4-ヒドロキシ桂皮酸を用いた以外は同様の方法で合成した。
【0091】
[合成例11:化合物(MI-11)の合成]
下記スキーム11に従って化合物(MI-11)を合成した。
【化33】
【0092】
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)チオ)フェニル)アクリル酸を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-11)を14.4g得た。
なお、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)チオ)フェニル)アクリル酸は、4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボン酸と、4-メルカプト桂皮酸とを用いて上記スキーム8と同様の方法で合成した。4-メルカプト桂皮酸は特許第2646314号公報に記載の方法で合成した。
【0093】
[合成例12:化合物(MI-12)の合成]
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、(E)-3-(4-((4’-ペンチル-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸を用いた以外は合成例1と同様の方法により化合物(MI-12)を13.4g得た。
【0094】
[合成例13:化合物(MI-13)の合成]
下記スキーム13に従って化合物(MI-13)を合成した。
【化34】
【0095】
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに(E)-3-(4-((4-(4-(4,4,4-トリフルオロブチル)シクロヘキシル)ベンゾイル)オキシ)フェニル)アクリル酸を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-13)を12.3g得た。なお、(E)-3-(4-((4-(4-(4,4,4-トリフルオロブチル)シクロヘキシル)ベンゾイル)オキシ)フェニル)アクリル酸は、4-(4-(4,4,4-トリフルオロブチル)シクロヘキシル)安息香酸とクマル酸を用いて上記スキーム8と同様の方法で合成した。
【0096】
[合成例14:化合物(MI-14)の合成]
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに(E)-3-(4-((4-(4-(3-(トリメチルシリル)プロポキシ)シクロヘキシル)ベンゾイル)オキシ)フェニル)アクリル酸を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-14)を15.7g得た。
【0097】
[合成例15:化合物(MI-15)の合成]
下記スキーム15に従って化合物(MI-15)を合成した。
【化35】
【0098】
・化合物(M-15-1)の合成
300mL三口フラスコに、カリウムtert-ブトキシド6.36gを入れ、窒素置換した。次いで、テトラヒドロフラン180mlに溶解させたヨウ化4,4,4-トリフルオロブチルトリフェニルホスホニウム28.3gを滴下し、室温で1時間反応させた。その後、4-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)シクロヘキサノン10.4gを加え、室温で72時間反応させた。ロータリーエバポレータにて溶媒を留去した後、ジエチルエーテルで抽出し、ヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒として、シリカゲルカラムで精製した。ロータリーエバポレータにより溶剤を除去して化合物(M-15-1)を8.1g得た。
・化合物(M-15-2)の合成
500mL三口フラスコに、化合物(M-15-1)7.7gを入れ、窒素置換した。次いで、メタノール225mlとパラジウム-活性炭素(Pd10%)1.23gを加え、フラスコ内を水素で置換して、水素を満たしたバルーンを付けた。室温で12時間激しく撹拌させた後、セライトでろ過し、残留物をジクロロメタンで洗浄した。ろ液を水で3回分液洗浄し、ロータリーエバポレータにより溶剤を除去して化合物(M-15-2)を7.5g得た。
・化合物(M-15-3)の合成
200mL三口フラスコに、化合物(M-15-2)7.5gを入れ、窒素置換した。次いで、アセトン30mlと水15mlを加えた後、トリフルオロ酢酸23.4mlを滴下し、室温で16時間反応した。ロータリーエバポレータにより溶剤を除去して、酢酸エチル抽出液をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。ロータリーエバポレータにより溶剤を除去した後、真空乾燥することで化合物(M-15-3)を4.6g得た。
・化合物(M-15-4)の合成
100mL三口フラスコに、マグネシウム0.44gを入れ、窒素置換した。次いで、脱水テトラヒドロフラン10mlを加えて、氷浴で冷却した。脱水テトラヒドロフラン4mlに溶解したヨウ化ベンゼン0.15mlをゆっくり滴下し、室温で30分、70℃で30分反応させた。室温まで戻し氷浴で冷却して、脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解させた化合物(M-15-3)4.6gをゆっくり滴下した。室温に戻して5時間反応させた溶液を塩化アンモニウム飽和水溶液に投入した。有機層を回収し、塩化アンモニウム飽和水溶液で2回分液洗浄した後、ヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒として、シリカゲルカラムで精製した。ロータリーエバポレータにより溶剤を除去して化合物(M-15-4)を4.1g得た。
・化合物(M-15-5)の合成
100mL三口フラスコに、化合物(M-15-4)4.1gを入れ、窒素置換した。次いで、酢酸2.5mlとパラジウム-活性炭素(Pd10%)0.25g、テトラヒドロフラン20mlを加え、水素雰囲気に置換して室温で6時間撹拌した。反応液をセライトでろ過し、テトラヒドロフランで洗浄した。ろ液をロータリーエバポレータで濃縮し、酢酸エチルを加えて、0℃で1時間撹拌した。析出した固体をろ過し、真空乾燥することで、化合物(M-15-5)を3.4g得た。
・化合物(M-15-6)の合成
100mL三口フラスコに、化合物(M-15-5)3.4gと塩化鉄(III)0.03gを入れ、窒素置換した。次いで、15%臭化水素酸水溶液5.5gを加えた後、10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液7.4gを滴下し、室温で2時間撹拌した。有機層を回収し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水の順で分液洗浄した。ロータリーエバポレータにより溶剤を除去した後、真空乾燥することで化合物(M-15-6)を2.5g得た。
・化合物(M-15-7)の合成
100mL三口フラスコに、アクリル酸0.43g、カリウムtert-ブトキシド2.02gを入れ、窒素置換した。次いで、水12mlを加えて室温で10分撹拌した後、酢酸パラジウム1.35gと化合物(M-15-6)2.5gを加え、100℃で24時間撹拌した。室温に戻した後、pH1になるまで塩酸水溶液を滴下した。その後、ジクロロメタンで抽出し、ブライン、硫酸ナトリウム水溶液、水の順で分液洗浄した。フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、ロータリーエバポレータで溶剤を除去して真空乾燥することで、化合物(M-15-7)を2.1g得た。
・化合物(MI-15)の合成
合成例1-1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-15-7)を用いた以外は、合成例1-1と同様の方法で化合物(MI-15)を1.7g得た。
【0099】
[合成例16:化合物(MI-16)の合成]
下記スキーム16に従い化合物(MI-16)を合成した。
【化36】
【0100】
・化合物(M-16-1)の合成
500mL三口フラスコに、4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボン酸22.4gを入れ、窒素置換した。次いで、THFを200mL加え、0℃で撹拌した。そこに、水素化ホウ素ナトリウム3.3gを加えた後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル12.1gをゆっくりと滴下し、18時間反応させた。反応終了後、反応液を2Lのビーカーに移し、塩酸で中和し、そこに水1.5Lを加えた。析出した固体をろ取後、真空乾燥させることで、化合物(M-16-1)を20.6g得た。
・化合物(M-16-2)の合成
1L三口フラスコに、化合物(M-16-1)20.6g、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン0.819g、ジクロロメタン200mL、トリエチルアミン13.6gを加え、0℃に冷却した。そこに、ジクロロメタン100mLにp-トルエンスルホニルクロリド14.1gを溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、その後20時間反応させた。反応終了後、ジクロロメタン100mLを加え、反応液を水500mLで3回分液し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過にて硫酸マグネシウムを除去した。次いで、ロータリーエバポレータにてろ液の溶媒を留去し、生じた固体を真空乾燥することで、化合物(M-16-2)を29.3g得た。
・化合物(M-16-3)の合成
1L三口フラスコに、化合物(M-16-2)29.3g、4-ヒドロキシベンズアルデヒド7.82g、炭酸カリウム13.3g、N,N-ジメチルホルムアミド200mLを加え、100℃で5時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル500mLを加え、水500mLで3回分液後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、ろ過にて硫酸マグネシウムを除去した。次いで、ろ過にて硫酸マグネシウムをろ過し、ロータリーエバポレータにてろ液の溶媒を留去し、生じた固体を真空乾燥することで、化合物(M-16-3)を23.4g得た。
・化合物(M-16-4)の合成
1Lナスフラスコに、化合物(M-16-3)23.4g、マロン酸11.9g、ピリジン300mL、ピペリジン7.29gを加え、還流条件下で8時間反応させた。その後、反応液を室温に冷ました後、エタノール300mLを加え、固体をろ取した。得られた固体をエタノールで洗浄した後、真空乾燥することで、化合物(M-16-4)を18.1g得た。
・化合物(MI-16)の合成
合成例1-1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-16-4)を用いた以外は、合成例1-1と同様の方法で、化合物(MI-16)を17.8g得た。
【0101】
[合成例17:化合物(MI-17)の合成]
下記スキーム17に従って化合物(MI-17)を合成した。
【化37】
【0102】
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、(E)-3-(4-((4-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)ベンゾイル)オキシ)フェニル)アクリル酸を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-17)を12.6g得た。
【0103】
[合成例18:化合物(MI-18)の合成]
下記スキーム18に従って化合物(MI-18)を合成した。
【化38】
【0104】
・化合物(M-18-1)の合成
1Lのナス型フラスコに4-ヒドロキシ安息香酸メチル82g、炭酸カリウム166g、及びN,N-ジメチルアセトアミド400mLを仕込み、室温で1 時間撹拌を行った後、4,4,4-トリフルオロ-1-ヨードブタン95gを加え、室温で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、水で再沈殿を行った。次に、この沈殿に水酸化ナトリウム32g及び水400mLを加えて4時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(M-18-1)を80g得た。
・化合物(MI-18-2)の合成
化合物(M-18-1)46.4gを反応容器にとり、これに塩化チオニル200mL及びN,N-ジメチルホルムアミド0.2mLを加えて80℃で1 時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去した後、テトラヒドロフランを加えて溶液Aとした。次に、上記とは別の2L三口フラスコに4-ヒドロキシ安息香酸30g、炭酸カリウム55g、テトラブチルアンモニウム2.4g、テトラヒドロフラン200mL、及び水400mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、溶液Aをゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、化合物(M-18-2)の白色結晶を39g得た。
・化合物(M-18-3)の合成
原料として、化合物(M-18-1)の代わりに化合物(M-18-2)、4-ヒドロキシ安息香酸の代わりに4-ヒドロキシ桂皮酸を用いた以外は、化合物(M-18-2)と同様の方法で化合物(M-18-3)を33g得た。
・化合物(MI-18)の合成
合成例1-1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(MI-18-3)を用いた以外は、合成例1-1と同様の方法で、化合物(MI-18)を15.4g得た。
【0105】
[合成例19:化合物(MI-19)の合成]
下記スキーム19に従って化合物(MI-19)を合成した。
【化39】
【0106】
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-19-3)を用いた以外は、合成例1と同様の方法で化合物(MI-19)を16.1g得た。なお、化合物(M-19-1)~化合物(MI-19-3)は、合成例18において、4,4,4-トリフルオロ-1-ヨードブタンの代わりに1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-4-ヨードブタンを用いて合成した。
【0107】
[合成例20:化合物(MI-20)の合成]
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、(E)-4-((3-(4-((4-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)ベンゾイル)オキシ)フェニル)アクリロイル)オキシ)安息香酸を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-20)を16.1g得た。
【0108】
[合成例21:化合物(MI-21)の合成]
下記スキーム21に従って化合物(MI-21)を合成した。
【化40】
【0109】
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(MI-21-3)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-21)を15.8g得た。なお、化合物(M-21-1)~化合物(M-21-3)は、合成例22において、出発物質を4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル安息香酸から3-フルオロ-4-ヒドロキシ安息香酸に代えた以外は同様の方法で合成した。
【0110】
[合成例22:化合物(MI-22)の合成]
下記スキーム22に従って化合物(MI-22)を合成した。
【化41】
【0111】
・化合物(M-22-1)の合成
攪拌子を入れた1000mL三つ口フラスコに、4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル安息香酸21.0g、4,4,4-トリフルオロ-1-ヨードブタン53.0g、炭酸カリウム83.2g、及びジメチルアセトアミド500mLを加え、窒素雰囲気下、90℃で10時間加熱した。反応後、水500mLに注ぎ込み、酢酸エチル300mLで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗製物にTHF100mL、エタノール100mL、及び水50mLを加え、さらに水酸化リチウム一水和物を9.2g加え、室温で5時間撹拌した。反応後、1規定塩酸で酸性にしたのち、酢酸エチル100mLで3回抽出をした。有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル/ヘキサンで再結晶を行い、化合物(M-22-1)を25.0g得た。
・化合物(M-22-2)の合成
合成例18において化合物(M-18-2)の代わりに化合物(M-22-1)を用いた以外は同様の方法で合成し、化合物(M-22-2)を22.1g得た。
・化合物(M-21-3)の合成
合成例18において、化合物(M-18-1)の代わりに化合物(M-22-2)を用いた以外は同様の方法で合成し、化合物(M-22-3)を17.1g得た。
・化合物(MI-22)の合成
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-22-3)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-22)を17.2g得た。
【0112】
[合成例23:化合物(MI-23)の合成]
下記スキーム23に従って化合物(MI-23)を合成した。
【化42】
【0113】
・化合物(M-23-1)の合成
攪拌子を入れた500mL三つ口フラスコに、3、4-ジヒドロキシ安息香酸メチル16.8g、4,4,4-トリフルオロ-1-ヨードブタン53.0g、炭酸カリウム83.2g、及びジメチルアセトアミド500mLを加え、窒素雰囲気下、90℃で10時間加熱した。反応後、水500mLに注ぎ込み、沈殿をろ過した。濾過した固体を10%水酸化ナトリウム水溶液に加え、室温で5時間撹拌した。反応後、1規定塩酸で酸性にし、生じた沈殿をろ過後、真空乾燥機で乾燥させて化合物(M-23-1)を28.0g得た。
・化合物(M-23-2)の合成
合成例18において、化合物(M-18-2)の代わりに化合物(M-23-1)を用いた以外は同様の方法で合成し、化合物(M-23-2)を23.4g得た。
・化合物(M-23-3)の合成
合成例18において、化合物(M-18-1)の代わりに化合物(M-23-2)を用いた以外は同様の方法で合成し、化合物(M-23-2)を17.3g得た。
・化合物(MI-23)の合成
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(MI-23-3)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-23)を17.2g得た。
【0114】
[合成例24:化合物(MI-24)の合成]
下記スキーム24に従って化合物(MI-24)を合成した。
【化43】
【0115】
・化合物(M-24-1)の合成
撹拌子を入れた500mLナスフラスコに、4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボン酸10.0g、塩化チオニル37g、及びN,N-ジメチルホルムアミド0.02gを加え,60℃で2時間攪拌した。その後、過剰の塩化チオニルをダイヤフラムポンプで除去し、テトラヒドロフランを250g加え、溶液Aとした。
新たに、攪拌子を入れた1000mL三口フラスコに、ヒドロキノン6.8g、テトラヒドロフラン140g、及びピリジン4.9gを加え、氷浴した。そこに溶液Aを滴下し、室温で8時間撹拌した。反応液を水2500mLで再沈殿し、得られた白色固体を真空乾燥した。酢酸エチルで抽出し、ヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒として、シリカゲルカラムで精製した。ロータリーエバポレータにより溶剤を除去した後、真空乾燥することで化合物(M-24-1)を3.8g得た。
・化合物(MI-24)の合成
(E)-3-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル)アクリル酸1.77g、塩化チオニル8.7g、及びN,N-ジメチルホルムアミド0.01gを加え,60℃で2時間攪拌した。その後、過剰の塩化チオニルをダイヤフラムポンプで除去し、テトラヒドロフランを50g加え、溶液Bとした。
新たに、攪拌子を入れた100mL三口フラスコに、化合物(M-24-1)3.0g、テトラヒドロフラン25g、及びピリジン1.2gを加え、氷浴した。そこに溶液Bを滴下し、室温で8時間撹拌した。反応液を水1000mLで再沈殿し、得られた白色固体を真空乾燥することで化合物(MI-24)を3.7g得た。
【0116】
[合成例25]
下記スキーム25に従って化合物(MI-25)を合成した。
【化44】
【0117】
・化合物(M-25-1)の合成
合成例18において、4-ヒドロキシ安息香酸メチルの代わりに6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチルを用いた以外は同様の方法で合成し、化合物(M-25-1)を30.1g得た。
・化合物(M-25-2)の合成
合成例18において、化合物(M-18-2)の代わりに化合物(M-25-1)を用いた以外は同様の方法で合成し、化合物(M-25-2)を15.0g得た。
・化合物(MI-25)の合成
合成例1において、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、化合物(M-25-2)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-25)を13.5g得た。
【0118】
[合成例26:化合物(MI-26)の合成]
合成例1において、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに、3-ヒドロキシフェニルマレイミドを用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(MI-26)を14.2g得た。
【0119】
[合成例27:化合物(MI-27)の合成]
下記スキーム27に従って化合物(MI-27)を合成した。
【化45】
【0120】
・化合物(M-27-1)の合成
攪拌子を入れた2000mL三つ口フラスコに、(4-アミノフェニル)エタノール6.90gを取り、テトラヒドロフランを200g加えて氷浴した。そこに、無水マレイン酸5.11gとテトラヒドロフラン200gからなる溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、析出してきた固体を濾過により回収した。この固体を真空乾燥することで化合物(M-27-1)を11.5g得た。
・化合物(M-27-2)の合成
攪拌子を入れた500mL三つ口フラスコに、化合物(M-27-1)を10.9g、塩化亜鉛(II)を9.38g、トルエンを250gを加え、80℃に加熱撹拌した。そこに、ビス(トリメチルシリル)アミン14.8gとトルエン100gからなる溶液を滴下し、80℃で5時間撹拌した。その後、反応液に酢酸エチル300gを加え1mol/L塩酸で2回、炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回分液洗浄した。その後、有機層をロータリーエバポレータにより、内容量が50gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(M-27-2)を5.86g得た。
・化合物(MI-27)の合成
攪拌子を入れた100mLナスフラスコに(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸9.37g、塩化チオニル25g、N,N-ジメチルホルムアミド0.02gを加え,80℃で1時間攪拌した。その後、過剰の塩化チオニルをダイヤフラムポンプで除去し、化合物(M-27-3)を得た。そこに、テトラヒドロフランを100g加え、溶液Aとした。
新たに、攪拌子を入れた500mL三口フラスコに化合物(M-27-2)を4.34g、テトラヒドロフラン200g、及びトリエチルアミン2.58gを加え、氷浴した。そこに溶液Aを滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を水800mLで再沈殿し、得られた白色固体を真空乾燥することで化合物(MI-27)を8.78g得た。
【0121】
[合成例28:化合物(MI-28)の合成]
下記スキーム28に従って化合物(MI-28)を合成した。
【化46】
【0122】
合成例27の化合物(MI-27)の合成において、原料として、化合物(M-27-3)及び化合物(M-27-2)の代わりに1-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]ピロール-2,5-ジオンを用いた以外は、合成例27の化合物(MI-27)の合成と同様の方法で、化合物(MI-28)を24.1g得た。
【0123】
[合成例29:化合物(MI-29)の合成]
下記スキーム29に従って化合物(MI-29)を合成した。
【化47】
【0124】
・化合物(M-29-1)の合成
攪拌子を入れた2000mL三つ口フラスコに4-(4-アミノフェニル)プロパン-1-オール15.1g、テトラヒドロフランを1000g取り、トリエチルアミンを15.2g加え、氷浴した。そこに、二炭酸t-ブチル26.1gとテトラヒドロフラン100gからなる溶液を滴下し、室温で10時間攪拌した後、反応液に酢酸エチル300gを加え、蒸留水200gで4回分液洗浄した。その後、有機層をロータリーエバポレータにより、内容量が100gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(M-29-1)を23.6g得た。
・化合物(M-29-2)~化合物(M-29-4)の合成
合成例3において、原料として、(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸及びN-Boc-4-ヒドロキシアニリンの代わりに化合物(M-29-1)を用いた以外は、合成例3と同様の方法で化合物(M-29-4)を30.0g得た。
・化合物(MI-29)の合成
攪拌子を入れた2000mL三つ口フラスコに、化合物(M-29-4)を30.0g、塩化亜鉛(II)を8.79g、及びトルエンを250g加え、80℃に加熱撹拌した。そこに、ビス(トリメチルシリル)アミン13.8gとトルエン100gからなる溶液を滴下し、80℃で5時間撹拌した。その後、反応液に酢酸エチル300gを加え、1mol/L塩酸で2回、炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回分液洗浄した。その後、有機層をロータリーエバポレータにより、内容量が50gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(MI-29)を9.18g得た。
【0125】
[合成例30:化合物(MI-30)の合成]
下記スキーム30に従って化合物(MI-30)を合成した。
【化48】
【0126】
・化合物(M-30-1)の合成
攪拌子を入れた500mL三つ口フラスコに、N-Boc-4-ヒドロキシアニリンを20.9g、2-ブロモエタノール15.0g、炭酸カリウム20.7g、N,N-ジメチルホルムアミド250mLを加え、60℃で4時間反応させた。反応後、蒸留水1500mLに反応液を注ぎ、析出した固体をろ取した。その後、固体を真空乾燥することで、化合物(M-30-1)を24.8g得た。
・化合物(MI-30)の合成
合成例29の化合物(M-29-1)~化合物(M-29-4)及び化合物(MI-29)の合成において、原料として、化合物(M-29-1)の代わりに化合物(M-30-1)を用いた以外は、合成例29と同様の方法で化合物(MI-30)を32.0g得た。
【0127】
[合成例31:化合物(MI-31)の合成]
合成例27において、原料として(E)-3-(4-((4’-(4,4,4-トリフルオロブチル)-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸の代わりに、(E)-3-(4-((4’-ペンチル-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-カルボニル)オキシ)フェニル)アクリル酸を用いた以外は、合成例27と同様の方法で、化合物(MI-31)を14.4g得た。
【0128】
[比較合成例1及び2]
化合物(MI-32)については、特許第4296821号公報の記載の方法に従って合成し、化合物(MI-33)については、特許第3055062号公報の記載の方法に従って合成した。
【0129】
[合成例32:化合物(MI-34)の合成]
合成例15において、アクリル酸の代わりにメタクリル酸を用いた以外は、化合物(MI-15)と同様の方法で化合物(MI-34)を得た(下記スキーム32参照)。
【化49】
【0130】
[合成例33:化合物(MI-35)の合成]
合成例15において、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに4-ヒドロキシ-3-メチルフェニルマレイミドを用いた以外は、化合物(MI-15)と同様の方法で化合物(MI-35)を得た(下記スキーム33参照)。
【化50】
【0131】
[合成例34:化合物(MI-36)の合成]
合成例15において、アクリル酸の代わりにメタクリル酸を用い、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに4-ヒドロキシ-3-メチルフェニルマレイミドを用いた以外は、化合物(MI-15)と同様の方法で化合物(MI-36)を得た。
【0132】
[合成例35:化合物(MI-37)の合成]
化合物(MI-34)の合成において、ヨウ化4,4,4-トリフルオロブチルトリフェニルホスホニウムの代わりにヨウ化ペンチルトリフェニルホスホニウムを用いた以外は、化合物(MI-34)と同様の方法で化合物(MI-37)を得た(下記スキーム35参照)。
【化51】
【0133】
[合成例36:化合物(MI-38)の合成]
化合物(MI-35)の合成において、ヨウ化4,4,4-トリフルオロブチルトリフェニルホスホニウムの代わりにヨウ化ペンチルトリフェニルホスホニウムを用いた以外は、化合物(MI-35)と同様の方法で化合物(MI-38)を得た。
[合成例37:化合物(MI-39)の合成]
化合物(MI-36)の合成において、ヨウ化4,4,4-トリフルオロブチルトリフェニルホスホニウムの代わりにヨウ化ペンチルトリフェニルホスホニウムを用いた以外は、化合物(MI-36)と同様の方法で化合物(MI-39)を得た。
[合成例38:化合物(MI-40)の合成]
化合物(MI-37)の合成において、メタクリル酸の代わりに2-(トリフルオロメチル)アクリル酸を用いた以外は、化合物(MI-37)と同様の方法で化合物(MI-40)を得た。
【0134】
[合成例39:化合物(MI-41)の合成]
合成例15において、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルマレイミドを用いた以外は、化合物(MI-15)と同様の方法で化合物(MI-41)を得た。なお、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルマレイミドについては、合成例2の化合物(M-2-1)の合成において、4-ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに4-ヒドロキシ-3-メトキシアニリンを用いることにより合成した。
[合成例40:化合物(MI-42)の合成]
化合物(M-37)の合成において、4-ヒドロキシフェニルマレイミドの代わりに4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニルマレイミドを用いた以外は、化合物(MI-37)と同様の方法で化合物(MI-42)を得た。なお、4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニルマレイミドについては、合成例2の化合物(M-2-1)の合成において、4-ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに3-フルオロ-4-ヒドロキシアニリンを用いることにより合成した。
[合成例41:化合物(MI-43)の合成]
化合物(M-36)の合成において、メタクリル酸の代わりに2-フルオロアクリル酸を用いた以外は、化合物(MI-36)と同様の方法で化合物(MI-43)を得た。
【0135】
<重合体の合成>
[実施例1-1:重合体(P-1)の合成]
窒素下、100mL二口フラスコに、重合モノマーとして、上記合成例27で得られた化合物(MI-27)5.00g(7.5mmol)、化合物(A-3)1.05g(7.5mmol)、化合物(D-1)4.80g(33.8mmol)、及び化合物(D-4)2.26g(26.3mmol)、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.39g(1.6mmol)、連鎖移動剤として2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン0.39g(1.7mmol)、並びに溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)52.5mlを加え、70℃で6時間重合した。メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、室温で8時間真空乾燥することで目的の重合体(P-1)を得た。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは30000、分子量分布Mw/Mnは2であった。
【0136】
[実施例1-2~1-45、及び比較重合例1-1~1-8]
重合モノマーを下記表7及び表8に示す種類及びモル比とした以外は実施例1-1と同様に重合を行い、重合体(P-1)と同等の重量平均分子量及び分子量分布の重合体(P-2)~(P-45)及び(R-1)~(R-8)の各重合体を得た。なお、重合モノマーの総モル数は実施例1-1と同様に75.1mmolとした。表7及び表8中の数値は、重合体の合成に使用した全モノマーに対する各モノマーの仕込み量[モル%]を表す。
【0137】
【0138】
[合成例42:ポリアミック酸の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物11.0g(49.0mmol)、ジアミンとして4,4’-メチレンジアニリン10.0g(50.0mmol)をNMP84gに溶解し、60℃で24時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を20質量%含有する溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(PAA)を得た。
【0139】
<光垂直型液晶表示素子の製造及び評価>
[実施例2-1]
1.液晶配向剤(AL-1)の調製
実施例1-1で得た重合体(P-1)10質量部、及びポリアミック酸(PAA)100質量部が入った容器に、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP/BC=50/50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
2.光垂直型液晶表示素子の製造
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記で調製した液晶配向剤(AL-1)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、庫内を窒素置換したオーブン中、230℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg-Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/m2を、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向能を付与した。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを130℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0140】
3.電圧保持率(VHR)の評価
上記2.で製造した液晶表示素子につき、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR-1を使用した。このとき、電圧保持率が90%以上の場合に「優良(A)」、70%以上90%未満の場合に「良好(B)」、70%未満の場合に「不良(C)」とした。その結果、この実施例では電圧保持率は「優良(A)」の評価であった。
【0141】
4.プレチルト角の評価
上記2.で製造した液晶表示素子につき、非特許文献(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19. p2013(1980))に記載の方法に準拠してHe-Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した液晶分子の基板面からの傾き角の値をプレチルト角とした。このとき、プレチルト角が85.0°以上88.0°未満の場合に「優良(A)」、88.0°以上89.0°未満の場合に「良好(B)」、89.0°以上又は85.0°未満の場合に「不良(C)」とした。その結果、この実施例ではプレチルト角は「良好(B)」の評価であった。
【0142】
5.AC残像特性の評価
上記2.で製造した液晶表示素子につき、交流電圧15Vで20時間駆動した後にプレチルト角を測定し、下記数式(1)によりチルト差Δθを求めた。
Δθ=θ1-θ2 …(1)
(数式(1)中、θ1は駆動前のプレチルト角であり、θ2は駆動後のプレチルト角である。)
Δθが0.05°以下の場合に「優良(A)」、0.05°よりも大きく0.10°未満の場合に「良好(B)」、0.10°以上の場合に「不良(C)」とした。その結果、この実施例では「優良(A)」の評価であった。
【0143】
[実施例2-2~2-49,及び比較例2-1~2-8]
配合組成を下記表9~11に示す通り変更した以外は実施例1と同じ固形分濃度で調製を行い、液晶配向剤をそれぞれ得た。また、それぞれの液晶配向剤を用いて実施例2-1と同様にして光垂直型液晶表示素子を製造して各種評価を行った。それらの結果を下記表9~11に示した。なお、実施例2-8及び2-24では、添加剤として化合物(ad-1)、(ad-2)をそれぞれ液晶配向剤に配合した。
【0144】
【0145】
表9~11に示すように、重合体(P)を含有する液晶配向剤を用いた実施例2-1~2-49では、電圧保持率は「A」又は「B」であった。また、プレチルト角特性及びAC残像特性についても「A」又は「B」であって、かつ少なくとも一方は「A」の評価であり、電気特性、プレチルト角特性及びAC残像特性がバランス良く改善されていた。これに対し、重合体(P)を含有しない液晶配向剤を用いた比較例2-1~2-8では、実施例2-1~2-49よりも劣る結果であった。なお、比較例2-2及び2-4では、プレチルト角の評価が「C」であったが、これらはいずれもプレチルト角が89°以上と高い値であった。