IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人電気通信大学の特許一覧 ▶ 学校法人慶應義塾の特許一覧 ▶ 有限会社メカノトランスフォーマの特許一覧 ▶ 株式会社リーデンスの特許一覧 ▶ 第一医科株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-可動性評価システム 図1
  • 特許-可動性評価システム 図2
  • 特許-可動性評価システム 図3
  • 特許-可動性評価システム 図4
  • 特許-可動性評価システム 図5
  • 特許-可動性評価システム 図6
  • 特許-可動性評価システム 図7
  • 特許-可動性評価システム 図8
  • 特許-可動性評価システム 図9
  • 特許-可動性評価システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】可動性評価システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
A61B10/00 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017135735
(22)【出願日】2017-07-11
(65)【公開番号】P2018122077
(43)【公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2017016331
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示による公開、最先日:平成29年01月19日、日本機械学会 第29回バイオエンジニアリング講演会(他2件) 刊行物による公開、平成29年01月18日、第29回バイオエンジニアリング講演会 講演論文集
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(73)【特許権者】
【識別番号】597173037
【氏名又は名称】株式会社リーデンス
(73)【特許権者】
【識別番号】594204446
【氏名又は名称】第一医科株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】小池 卓二
(72)【発明者】
【氏名】高桑 加以
(72)【発明者】
【氏名】入江 優花
(72)【発明者】
【氏名】神崎 晶
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】肥後 武展
(72)【発明者】
【氏名】林 正晃
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-121070(JP,A)
【文献】高桑加以 外4名,耳小骨可動性の定量的評価に向けた耳科探針用アタッチメントの開発,日本機械学会2016年度年次大会講演論文集,日本,一般社団法人日本機械学会,2016年09月10日,S0220106
【文献】竹田泰三 外4名,蝸牛マイクロフォン電位(CM)遅発反応 -その特性と分析法-,耳鼻咽喉科臨床,1993年,第86巻第7号,第1025~1032頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/11
A61B 5/12
A61B 10/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳小骨の可動性を評価する可動性評価システムであって、
前記耳小骨に接触し、振動を与える加振装置と、
前記加振装置を振動させるアクチュエータと、
前記加振装置を前記耳小骨に接触させたときに前記アクチュエータにかかる反力を測定し、前記測定結果に基づき、電圧を出力する力センサと、
を含む計測プローブと、
前記計測プローブから出力された前記電圧に基づき、FFT解析をして、所定の周波数成分値を求める解析部と、
前記所定の周波数成分値に基づき、前記耳小骨の可動性を評価する評価部と、
前記評価結果を出力する出力部と、
を備え、
前記加振装置は細長い棒状の探針であり、前記探針は、その重心付近と端部の2点において、固定支点と前記力センサにより取り外し可能に支持され、
前記力センサは、横ぶれ防止機構部を備える圧電センサを含み、
前記横ぶれ防止機構部は、前記探針の前記端部が接触するマグネット部の上部の中央に前記探針の長手方向と直交する向きに半円柱状の突起部分を形成するとともに前記半円柱状の突起部分の両サイドに前記半円柱状の突起部分より高さを高くした左右ブレ防止の突起部分を形成して前記探針の前記端部を支持する探針受けを形成し前記マグネット部の磁力により前記探針の前記端部を支持している
ことを特徴とする可動性評価システム。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記探針の重心付近の支点を中心として一定振幅の振動を与え、
前記力センサは、前記圧電センサおよびチャージアンプを含み、前記圧電センサは前記アクチュエータが前記探針に与えている力を前記探針により加えられることで電荷信号を発生させ、前記チャージアンプは、前記発生した電荷信号を電圧に変換して出力し、
前記解析部は、ADコンバータを含み、前記ADコンバータで前記電圧をデジタル信号の電圧情報に変換し、前記電圧情報をFFT解析すること、
を特徴とする請求項1に記載の可動性評価システム。
【請求項3】
前記探針は、重心付近に窪みが形成され、
前記支点は、前記窪みに嵌めて支持するための、球状に形成されたマグネットを備えること、
を特徴とする請求項2に記載の可動性評価システム。
【請求項4】
前記計測プローブは、
前記探針に弾性的に接する弾性体を備えること
を特徴とする請求項2または3に記載の可動性評価システム。
【請求項5】
前記アクチュエータは、5Hz以上で前記探針に振動させ、
前記所定の周波数成分値は、前記電圧情報における各波形の5Hz以上の周波数成分の値であること、
を特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の可動性評価システム。
【請求項6】
前記可動性評価システムは、
蝸牛窓または蝸牛窓近傍に設置し、前記加振装置により前記耳小骨に振動を与えているときの蝸牛マイクロホン電位を検出する電極と、
前記検出した蝸牛マイクロホン電位を増幅させ、計測する増幅器と、
を備え、
前記出力部は、前記計測した蝸牛マイクロホン電位を表示すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の可動性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動性評価システム関し、特に耳小骨の可動性を定量化する可動性評価システム関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耳科手術に関して、中耳疾患に対する診断および治療において、術者が探針により耳小骨を押し動かすことで、耳小骨の可動性を確認する方法が存在する。
【0003】
具体的には、中耳は、外耳道に入射された音波を鼓膜の振動に変換し、その機械的振動を耳小骨連鎖によって、内耳蝸牛へ効率よく伝達する役割を果たしている器官であり、耳小骨連鎖は、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨からなり、靱帯および筋腱によって鼓室内に振動しやすいよう保持されている。これらの靱帯および筋腱が加齢や病変により固着してしまうと、伝音難聴が生じ、中耳疾患となる。
【0004】
そこで、聴力を回復させるため、外科手術により当該固着を直接取り除き、耳小骨の可動性を正常な状態に復元する必要があるが、術式決定に重要な固着部位の特定と、その程度の判断は術者が探針を用いて押し動かす方法により行われていた。
しかしながら、そのような方法では、明確な基準がなく、術者の経験に依存するところが大きかった。
【0005】
特許文献1には、耳小骨可動性を定量的に評価する方法として、鼓膜形成術において耳小骨連鎖の可動性を評価する微細手術用器具のための光学式力検出要素であって、光ファイバ測定技術を用いて微細手術用機器またはツールの先端部と診察または治療されるべき組織または臓器との間の、3次元の接触力を検出しモニタリングする方法によって、構造体のz方向軸において当該軸に垂直なx-y方向においてよりも5~20倍高い感度を有する光学式力検出要素を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-160756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、耳小骨の可動性の評価結果を情報処理装置に備えられたディスプレイに表示するにあたって、3次元の接触力を検出し情報処理する必要があるため、処理負荷が高く、効率の面で問題がある。また、構造体に固定された光ファイバを用いるため、例えば、衛生面を考慮して、または、光ファイバに不具合が生じた場合などにおいて、測定機器を取り替える必要がある際に、コストの面および交換可能性に問題があり、使い勝手が必ずしも十分でなかった。また、光ファイバの品質を確保するにあたって、光ファイバは破損や汚れ(コンタミネーション)に弱いため、取扱いには慎重にならざるを得ず、使い勝手が必ずしも十分ではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、耳小骨の可動性を定量的に評価するにあたって、使い勝手の良い可動性評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る可動性評価システムは、耳小骨の可動性を評価する可動性評価システムであって、耳小骨に接触し、振動を与える加振装置と、加振装置を振動させるアクチュエータと、加振装置を耳小骨に接触させたときにアクチュエータにかかる反力を測定し、当該測定結果に基づき、電圧を出力する力センサとを含む計測プローブと、計測プローブから出力された電圧に基づき、FFT解析をして、所定の周波数成分値を求める解析部と、所定の周波数成分値に基づき、耳小骨の可動性を評価する評価部と評価結果を出力する出力部とを備える。
【0010】
さらに、本発明に係る可動性評価システムにおいて、加振装置は細長い棒状の探針であり、当該探針はその重心付近と端部の2点において、固定支点と力センサにより取り外し可能に支持され、アクチュエータは、探針の重心付近の支点を中心として一定振幅の振動を与え、力センサは、圧電センサおよびチャージアンプを含み、当該圧電センサはアクチュエータが探針に与えている力を探針により加えられることで電荷信号を発生させ、チャージアンプは、当該発生した電荷信号を電圧に変換して出力し、解析部は、ADコンバータを含み、当該ADコンバータで電圧をデジタル信号の電圧情報に変換し、当該電圧情報をFFT解析してもよい。
【0011】
さらに、本発明に係る可動性評価システムにおいて、探針は、重心付近に窪みが形成され、支点は、窪みに嵌めて支持するための、球状に形成されたマグネットを備えてもよい。
【0012】
さらに、本発明に係る可動性評価システムにおいて、計測プローブは、探針に弾性的に接する弾性体を備えてもよい。
【0013】
さらに、本発明に係る可動性評価システムにおいて、アクチュエータは、5Hz以上で探針を振動させ、所定の周波数成分値は、電圧情報における各波形の5Hz以上の周波数成分の値であってもよい。
【0014】
さらに、本発明に係る可動性評価システムは、蝸牛窓または蝸牛窓近傍に設置し、加振装置により耳小骨に振動を与えているときの蝸牛マイクロホン電位を検出する電極と、検出した蝸牛マイクロホン電位を増幅させ、計測する増幅器とを備え、出力部は、計測した蝸牛マイクロホン電位を表示してもよい。
【0015】
本発明に係る可動性評価方法は、耳小骨の可動性を評価する可動性評価方法であって、アクチュエータにより振動させた探針の先端を耳小骨に接触させることにより耳小骨に振動を与える加振ステップと、探針の先端を耳小骨に接触させたときのアクチュエータにかかる反力を測定し、当該測定結果に基づき、電圧を出力する電圧測定ステップと、計測プローブから出力された電圧に基づき、FFT解析をして、所定の周波数成分値を求める解析ステップと、所定の周波数成分値に基づき、耳小骨の可動性を評価する評価ステップと、評価結果を出力する出力ステップとを備える。
【0016】
本発明に係る可動性評価システムは、耳小骨の可動性を評価する可動性評価システムであって、耳小骨に接触し、振動を与える加振装置と、加振装置を振動させるアクチュエータと、加振装置を耳小骨に接触させたときにアクチュエータにかかる反力を測定し、当該測定結果に基づき、電圧を出力する力センサとを含む計測プローブと、計測プローブから出力された電圧に基づき、FFT解析をして、所定の周波数成分値を求める解析部と、所定の周波数成分値に基づき、前記耳小骨の可動性を評価する評価部と、評価結果を出力する出力部とを備える可動性評価システムである。これらの構成により、耳小骨の可動性を定量的に評価するにあたって、所定の周波数成分値を求めることができるため、ハンドピースとして用いたときの手振れの影響を低減できる可動性評価システムを提供でき、使い勝手を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る可動性評価システム、耳小骨の可動性を定量化するにあたって、使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る可動性評価システムの構成を示すシステム図である。
図2】本発明の一実施形態に係る可動性評価システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る計測プローブの内部構造の概念を示す概念図である。
図4】本発明の一実施形態に係る計測プローブの分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る計測プローブの斜視図である。
図6】(a)本発明の一実施形態に係る計測プローブの平面図である。(b)本発明の一実施形態に係る計測プローブの側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る計測プローブの断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る可動性評価システムが実行する処理を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る力センサの斜視図である。
図10】本発明の一実施形態に係る探針及び支点金具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(可動性評価システム700の構成)
図1は、可動性評価システム700の構成の一例を示すシステム図である。
【0021】
図1に示すように、可動性評価システム700は、計測プローブ100、情報処理装置300、表示装置400(400a、400b)、増幅器500、電極600を含んで構成される。なお、図1において、説明を簡単にするために、表示装置400を、表示装置400a、400bの2台示しているが、1台でもよくまた、2台以上存在してもよい。なお、以下においては、特に区別の必要がない場合に、表示装置を総称して、表示装置400と記載する。また、可動性評価システム700において、表示装置400と後述する情報処理装置300の音声出力部340を、耳小骨の可動性の評価結果および蝸牛マイクロホン電位の計測結果を出力(表示、音声出力等)するものとして総称して出力部と記載する。出力部は、評価部の評価結果を出力する。
【0022】
計測プローブ100は、耳小骨に接触し、振動を与える加振装置と、加振装置を振動させるアクチュエータと、加振装置を耳小骨に接触させたときにアクチュエータにかかる反力を測定し、当該測定結果に基づき、電圧を出力する力センサとを含んで構成される。
【0023】
計測プローブ100は、一例として、後述するように、加振装置は細長い棒状の探針であり、当該探針はその重心付近と端部の2点において、固定支点と力センサにより支持され、アクチュエータは、当該探針の重心付近の支点を中心として一定振幅の振動を与え、力センサは、圧電センサおよびチャージアンプを含み、当該圧電センサは当該アクチュエータが当該探針に与えている力を当該探針により加えられることで電荷信号を発生させ、当該チャージアンプは、当該発生した電荷信号を電圧に変換して出力してもよい。
【0024】
情報処理装置300は、具体的には、例えば、計測プローブ100、表示装置400、増幅器500等と有線または無線により接続し、これらの周辺装置および周辺機器からの情報処理要求を受けて情報処理を行い。当該処理の結果を提供するサーバ等のコンピュータ機器であればよく、また、計測プローブ100専用のハードウェア機器でもよい。
【0025】
表示装置400は、情報処理装置300に接続され、情報処理装置300から出力された表示情報を画面表示させるディスプレイ装置であれば、どの様な装置でもよい。表示装置400は、例えば、情報処理装置300が評価した耳小骨の可動性の評価結果を表示する。表示装置400は、一例として、電極600および増幅器500によって、計測された蝸牛マイクロホン電位を表示してもよい。
【0026】
増幅器500は、電極600が計測した蝸牛マイクロホン電位等の微弱信号を増幅させる差動増幅器等のアンプ機器であればよい。
【0027】
電極600は、蝸牛窓または蝸牛窓近傍に設置でき、蝸牛マイクロホン電位(CM)を計測できる銀電極であればよい。
【0028】
図1に示すように、可動性評価システム700は、一例として、計測プローブ100の先端を振動させ、計測対象である耳小骨800に接触させたときに計測プローブ100にかかる反力を電圧として情報処理装置300に伝達し、情報処理装置300は、伝達された電圧に基づき、耳小骨の可動性を評価する。可動性評価システム700は、当該評価結果を、図1に示すように表示装置400bにグラフ等を用いて表示してもよいし、情報処理装置300の音声出力機能によって音声で通知してもよい。このように耳小骨の可動性の評価結果を視覚化することで、術者が術前および術中に、耳小骨の可動性を定量的な評価を確認することができ、術式の決定等を効率良く行うことができる。このような構成によれば、耳小骨可動性を数値と共にグラフ等により画面表示し、必要に応じて音声により術者に通知することにより、術中でも容易に耳小骨の可動性、すなわち、耳小骨の固着状態を診断することができる。
【0029】
図1に示すように、可動性評価システム700は、一例として、蝸牛窓または蝸牛窓近傍に設置し、加振装置により耳小骨に振動を与えているときの蝸牛マイクロホン電位を検出する電極と、検出した蝸牛マイクロホン電位を増幅させ、計測する増幅器とを備え、出力部は、計測した蝸牛マイクロホン電位を表示してもよい。
【0030】
可動性評価システム700は、より具体的には、図1に示すように、一例として、蝸牛窓801に電極600を設置し、計測プローブ100を鼓膜、耳小骨800または耳小骨の替わりに挿入した人工耳小骨等に接触させ振動を与え、当該振動を与えたときに生じる蝸牛マイクロホン電位を計測してもよい。また、このとき、蝸牛マイクロホン電位を計測する際に耳小骨に与える振動は、125~2000Hz程度の可聴周波数で振動させてもよい。可動性評価システム700は、当該計測した蝸牛マイクロホン電位をグラフに描画等して表示してもよい。
【0031】
このように蝸牛マイクロホン電位を計測および表示することで、中耳の伝音特性を評価することできる。また、このように蝸牛マイクロホン電位を視覚化することで、例えば、術中に一度中耳の伝音特性を評価して、処置前後に再度中耳の伝音特性を評価することで、蝸牛マイクロホン電位の振幅が十分大きくなったことを確認し、中耳の伝音特性に問題がないことを評価して手術を終了することができ、再手術のリスクを軽減することができる。
【0032】
(情報処理装置300の構成)
以下、情報処理装置300の構成について詳細に説明する。
【0033】
図2は、情報処理装置300の機能構成の例を示すブロック図である。一例として、図2に示すように、情報処理装置300は、通信部310と、I/O部320と、制御部330と、音声出力部340、記憶部350等を含んで構成される。
【0034】
通信部310は、ネットワークを介して、制御部330の制御に従い、周辺装置および他の情報処理装置と通信(各種メッセージの送受信等)を実行する機能を有する。具体的には、例えば、通信部310は、ネットワークを介して、制御部330の制御に従い、各部から伝達されたメッセージを他の装置へ送信し、他の装置からメッセージを受信し、当該受信したメッセージを他の部に伝達する。当該通信は有線、無線のいずれでもよく、また、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。さらに、当該通信は、セキュリティを確保するために、暗号化処理を施してもよい。ここでいう「メッセージ」には、テキスト、画像(写真、イラスト)、音声、動画等およびこれらに付帯する情報(テキスト、画像、音声、動画に付帯する日付および位置等に関する情報)が含まれる。
【0035】
I/O部320は、制御部330の制御に従い、他の機器、他の装置または媒体と、無線または有線による接続する機能を有する。I/O部320は、具体的には、WiFi(Wireless Fidelity)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、USB(Universal Serial Bus)、電源コネクタ、I2C(Inter-Integrated Circuit)等の接続装置をいう。
【0036】
制御部330は、各部を制御する機能を有するプロセッサである。制御部330は、解析部(不図示)および評価部(不図示)を含んで構成される。制御部330は、具体的には、例えば、記憶部350に記憶されているプログラム等から出力された命令を受信し、当該命令に基づいて、各部を動作させるよう制御してもよい。また、制御部330は、例えば、耳小骨の可動性の評価結果、蝸牛マイクロホン電位の計測結果に基づいて、表示装置400に表示する表示情報を生成してもよい。
【0037】
解析部は、計測プローブ100から出力された電圧に基づき、FFT解析をして、所定の周波数成分値を求める。ここでいう「FFT解析」とは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)による解析をいい、周波数ごとの成分値を解析して求めることができる。解析部は、具体的には、例えば、ADコンバータを含み、計測プローブ100から出力された電圧を、当該ADコンバータがデジタル信号の電圧情報に変換し、当該電圧情報をFFT解析してもよい。ADコンバータは、情報処理装置300に内蔵するAD変換回路を用いてもよいし、外付けのAD変換器を用いてもよい。
【0038】
本発明に係る可動性評価システムにおいて、計測プローブ100は、術中に術者が手で保持して計測するハンドピースとして用いることを想定しており、そのとき、手振れによる影響を考慮する必要がある。計測プローブ100から出力された電圧に及ぼす手振れの影響を低減するために、一例として、当該所定の周波数成分値を5Hz以上としてもよい。また、さらに好ましくは、可聴域を考慮して、計測プローブ100が耳小骨に与える振動の加振周波数を可聴域の下限である20Hzとしてもよい。このとき、解析部は、アクチュエータ116が探針103に与える振動の加振周波数(アクチュエータ116への入力周波数)と等しい電圧情報の成分値を、当該所定の周波数成分値として求めてもよい。具体的には、例えば、解析部において、アクチュエータの加振周波数を20Hzとした場合、電圧情報における各波形の20Hzの周波数成分の値を、当該所定の周波数成分値として求めてよい。これにより、可聴域まで周波数をあげると蝸牛障害等を引き起こす可能性があるが、可聴域まで周波数をあげることなく手振れの影響を低減することができる。換言すれば、解析部によるFFT解析によって、計測プローブ100が出力する電圧から手振れの影響を除外できるため、計測プローブ100を術者が手で保持した状態で計測可能であり、術中に簡便に計測できる。
【0039】
ここで、本発明に係る可動性評価システムのFFT解析に関して、図3に示すようにアブミ骨122とそれを支える靱帯121を模した校正器の可動性を、計測プローブ100によって計測した場合の結果を用いて説明する。当該校正器を計測プローブ100によって計測した結果、当該校正器の可動性が低下する(ばね定数が大きくなる)と、FFT解析の結果の20Hz成分が増加する。当該増加量により、耳小骨の可動性を定量化する。5Hz以下に見られる周波数成分は手振れによるものであるが、20Hz成分とは明確に区別可能であるため、計測プローブ100を用いて手持ち計測でも、本発明に係る可動性評価システムは、手振れによる影響をほとんど受けずに耳小骨可動性の評価が可能である。
【0040】
評価部は、所定の周波数成分値に基づき、耳小骨の可動性(コンプライアンス)を評価する。具体的には、例えば、評価部は、計測プローブ100が耳小骨に与える回転振動等の振動の加振周波数と等しい(アクチュエータ116への入力周波数と等しい)20Hz成分値に基づき、耳小骨の固着度合を評価する。評価部は、例えば、当該20Hz成分値のコンプライアンスが、正常耳の耳小骨および靱帯からなる系のばね定数の逆数(コンプライアンス)の範囲内であれば、正常と評価し、範囲外であれば、異常(耳小骨が固着している)と評価してもよい。これにより、耳小骨が振動しにくくなっていることを定量的に示すことができる。
【0041】
一例として、耳小骨の可動性(コンプライアンス)Cは、アクチュエータ116が耳小骨に与える変位をD[単位:m]と、アクチュエータ116が耳小骨に当該変位を与えた際の反力をP[単位:N]とを用いて、次の式(1)により求めることができる。
【0042】
【数1】
【0043】
音声出力部340は、制御部330の制御に従い、音声を出力する機能を有する。音声出力部340は、評価結果を通知する。音声出力部340は、情報処理装置300に内蔵されたスピーカであってもよいし、外付けの音声出力デバイスであってもよい。
【0044】
記憶部350は、制御部330の制御に従い、情報処理装置300が動作するうえで必要とする各種プログラム、データおよびパラメータを記憶する機能を有する。記憶部350、具体的には、例えば、ROM、RAMで構成される主記憶装置、不揮発性メモリ等で構成される補助記憶装置、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等各種の記録媒体によって構成される。記憶部350は、例えば、制御部330の制御に従い、計測プローブ100から出力された電圧を、ADコンバータ(不図示)を介してデジタル信号に変換したデジタル信号の電圧情報として記憶してもよい。
【0045】
(計測プローブ100の構成)
(実施形態1)
以下、計測プローブ100の構成の一実施形態(実施形態1)について詳細に説明する。
図3は、実施形態1に係る計測プローブ100の内部構造の概念の一例を示す概念図である。実施形態1は、本発明に係る計測プローブ100の原理を構成する態様の形態である。
【0046】
計測プローブは、耳小骨反力を計測する。図3に示すように、計測プローブ100は、一例として、探針103およびアタッチメント120を含んで構成される。また、アタッチメント120は、一例として、アクチュエータ116、圧電センサ117、ひずみゲージ118、探針用固定用磁石119を含んで構成される。図3は、探針103をアタッチメント120に取り付けた状態を示す。図3において、説明のため、耳小骨を構成するアブミ骨122と靱帯121をモデル化して記載する。
【0047】
探針103は、具体的には、耳科用探針を用いてもよい。このように、実際に耳科手術等で使用している探針を用いることで、術者が違和感なく耳小骨反力を計測することができる。アクチュエータ116は、具体的には、探針を駆動するための変位拡大機構付き圧電アクチュエータ等を用いればいい。圧電センサ117は、具体的には、圧電センサ(ピエゾ式圧電セラミックス)等を用いればよい。
【0048】
探針103は、その重心付近と端部の2点において、それぞれ固定支点と圧電センサ117により取り外し可能に支持されており、当該支持部分には、探針固定用磁石119を用いる。このように、探針103をアタッチメント120に取り付ける構成とすることにより、探針103の脱着が容易となり、例えば探針103のみ交換したり滅菌処理を施したりすることができるため、衛生面を向上させることができる。
【0049】
計測プローブ100は、具体的には、例えば、探針103先端の側部を耳小骨に当てアクチュエータ116により重心付近の支点を中心として一定振幅の回転振動等の振動を探針103に与え、圧電センサ117により、アクチュエータ116が与えている力(すなわち探針103からの反力)を測定し、電圧を出力する。このような構成とすることで、アクチュエータ116による探針103の動きが、術者が通常計測時に行う動きと類似しているため、違和感なく耳小骨反力を計測することができる。
【0050】
計測プローブ100は、より具体的には、例えば、アクチュエータ116により、探針103を20Hzで振動させ、探針先端を計測対象の耳小骨を構成するアブミ骨122に接触させたときに、アクチュエータ116にかかる反力を圧電センサ117で測定して、電圧を出力する。ここで、当該出力した電圧は、耳小骨へ与える変位は蝸牛の保護の観点からすると可能な限り微小であったほうがよいため、計測プローブ100のアクチュエータ116が与える変位を40μm以下とし、実際の手術手技と同程度にし、チャージアンプ等(不図示)を用いて増幅して、当該測定した反力に比例した電圧を出力する。なお、アクチュエータ116の変位は、ひずみゲージ118により計測する。
【0051】
(実施形態2)
以下、計測プローブ100の構成の一実施形態(実施形態2)について詳細に説明する。
【0052】
図4は、計測プローブ100の構成の一例を示す分解斜視図である。
実施形態2に係る計測プローブ100の構成は、図4に示すように、一例として、上カバー101、下カバーB102、探針103、ロック用ツマミ104、コードブッシュ105、下カバーA106、板バネ107(107a、107b)、タッピングネジ108(108a、108b、108c、108d、108e、108f、108g、108h)、支点用金具109、Eリング110、アクチュエータ116、チャージアンプ112、コード113、123、アクチュエータ用ホルダ114、標準ネジ115(115a、115b、115c)、圧電センサ117、支点用金具固定ピン111、を含んで構成される。実施形態2に係る計測プローブ100の構成において、アタッチメントは、支点用金具109、アクチュエータ116、圧電センサ117を含んで構成される。
【0053】
探針103は、細長い棒状で形成されている。探針103は、具体的には、耳科用探針等を用いればよく、固定支点として支点用金具109と、アクチュエータ116に取り付けられる圧電センサ117とに載置することでこれらの部品に支持され取り付けられる。これにより、通常術中に用いられる耳科用探針である探針103を、支点用金具109と、アクチュエータ116に取り付けられる圧電センサ117とに載置する(すなわち、探針103をアタッチメントに取り付ける)だけでよく、簡易に取り付けられて、定量的な耳小骨反力を計測することができ、使い勝手のよい計測プローブを提供することができる。また、探針103の先端は直接耳小骨に触れるため、このように簡易な取り付けであれば、探針103の交換もしやすく衛生面の向上を図ることもできる。
【0054】
また、探針103は、重心付近に窪み(凹状の部分)が形成されてもよい。探針103は、具体的には、例えば、図10に示すように、支点金具109等で支持するために、その重心付近に球状又は円形状等の凹状の掘り込み部分を設けてもよく、また、逆に、凸状の突起部分を設けてもよい。この様な構成とすることで、支持部材(支点金具109等)に対して座りよく設置でき、また、回転方向にブレが生じることを防ぐことができる。また、探針103を計測プローブ100から取り外して使用する際にも、術者の持ち手の位置決めのためのしるしにもなり、術者が手で探針103を持つ際に、目視で確認しなくとも簡単に探針103の重心の付近の位置が特定できるため、使い勝手のよい探針を提供することができる。
【0055】
支点用金具109と探針103の取り付けについて、一例として、支点用金具109の支点が計測プローブ100の長手方向に山形状を形成し、探針103の短手方向に、凹部(例えば、探針103の長さが160mmで、支点用金具109から圧電センサ117の計測点(探針103がアクチュエータ116に取り付けられる圧電センサ117に載置されて、計測される点)まで55mmの場合、幅1.1mm、深さ0.6mmの矩形状の溝など)を設け、一方、支点用金具109には凸部(例えば、上記探針103の溝に対して、幅1.0m、高さ0.6mmの矩形状の出っ張りなど)を設け、当該凹凸部を嵌め合わせることで取り付けてもよい。さらに、探針103を支点用金具109に載置した時に、探針103が長手方向に対して水平時には、探針103の凹部と支点用金具109の凸部の間の両側にクリアランス(例えば、片側0.05mmの隙間)ができるように探針103を支点用金具109に配置してもよい。このような構成により、アクチュエータ116により探針103に回転振動が与えられ、探針103が傾いた際(例えば支点用金具109が探針103を支える支点(回転中心)を中心に傾き1°で傾いた時など)に、探針103は支点用金具109と干渉し、当該干渉により、探針103の先端が短手方向にそって、上下に精度よく動くことができ(例えば、上記傾き1°で傾いた際には、tan1°×105mm=約1.8mm動くことができる)、かつ、探針103の取り外し取り付けを容易とすることができる。
【0056】
また、支点用金具109と探針103の取り付けの別の一例について、図10を用いて説明する。図10は、支点用金具109及び探針103の取付方法の一例を説明する支点用金具109及び探針103の図6(a)のX-X’線断面図の一部である。支点用金具109は、図10に示すように、球状に形成したマグネット部136と、マグネット部136を嵌め込んで支持する土台部135を含んで構成してもよい。また、探針103は、図10に示すように、一部に、マグネット部136を嵌め込むようにSR形状の掘り込み加工を設けてもよい。マグネット部136には、例えば、上から薄板状のアルミウムを被せて形成してもよい。この様な構成とすることで、探針103は、球状のマグネット136によって点支持で支持されるため、探針103がアクチュエータ116により回転振動を与えられた際に並進運動方向にブレが生じず回転方向に柔軟に動くことができ、かつ、探針103の計測プローブ100からの取り外しと計測プローブ100への取り付けを容易とすることができる。さらに、この様な構成とすることで、マグネット136の磁力で探針103を支点用金具109に固定することができるため、探針103の計測プローブ100からの脱落を防止することができる。
【0057】
計測プローブ100は、探針103に弾性的に接する弾性体を備えてもよい。当該弾性体は、探針103に接して弾性抵抗力を付与するものであればどの様なものでもよく、例えば、板バネなどが考えられる。本例では、一例として、板バネ107を使用した例として説明する。板バネ107は、探針103に弾性的に接して、弾性抵抗力を付与してもよい。具体的には、板バネ107a、107bは、図4に示すように、タッピングネジ108a、108bによって上カバー101にネジ留めされており、上カバー101を下カバーB102にセットした際に、探針103に接するように取り付けられていてもよい。このような構成とすることで、探針103の慣性項を打ち消すことができ、精度よく耳小骨反力を計測することができる。また、このような構成とすることにより、板バネ107は交換可能となるため、使い勝手のよい計測プローブを提供することができる。
【0058】
支点用金具109は、探針103の固定支点として、図4に示すように、支点用金具固定ピン111により下カバーA106にピン留めされて取り付けられていてもよい。
【0059】
また、支点用金具109は、図10に示すように、球状に形成したマグネット136と、マグネット136の重心付近の窪みに嵌め込んで支持する土台135を含んで構成してもよい。
【0060】
圧電センサ117は、探針103とアクチュエータ116に挟み込まれるように配置され、回転振動する探針103によってアクチュエータ116にかかる反力を測定する。測定した反力はチャージアンプ112に伝達され、チャージアンプ112が当該反力を電圧に変換して出力する。圧電センサ117は、具体的には、アクチュエータ116が探針103に与えている力が探針103により加えられることで電荷信号を発生させる。このとき、チャージアンプ112は、当該発生した電荷信号を電圧に変換して出力する。圧電センサ117は、具体的には、圧電センサ(ピエゾ式圧電セラミックス)、積層圧電センサ等を用いればよい。
【0061】
また、圧電センサ117は、一例として、探針103を点支持ではなく、面又は線で支持してもよい。圧電センサ117が探針103を線で接触して支持する例について図9を用いて説明する。図9は、圧電センサ117の一例を示す斜視図である。圧電センサ117は、図9に示すように、圧電センサ117は、横ぶれ防止機構部131、マグネット部132、センサ本体部133、センサ保持部134、含んで構成してもよい。
【0062】
横ぶれ防止機構部131は、探針103の横ぶれを防止するための部材である。横ぶれ防止機構部131は、例えば、略円板状の部材であり、その上部には、略中央に、凹状の両サイドの高さを高くした探針受けを形成(言い換えれば、中央サイドに半円柱状の突起部分を、両サイドに中央サイドの突起部分より高さを高くした左右ブレ防止の突起部分を形成)してもよい。この様な構成により、マグネット部132の磁力によって、取り外し可能かつ拘束力をもって支持しつつ、両サイドに形成された突起部分の傾斜面により、探針103の芯を自動的にマグネット部132に対して揃え、探針103の横ぶれを防止することができる。さらに、この様な構成により、線接触で支持されるため、センサの応答が点接触より向上させることができ、精度よく探針103から加えられる力を測定することができる。横ぶれ防止機構部131の材質は、軽量で一定の剛性があればどのような材質でもよく、例えばステンレス等を用い考えられる。
【0063】
マグネット部132は、探針103を、磁力によって取り外し可能かつ拘束力をもって横ぶれ防止機構部131の凹状の探針受けに支持させる部材である。マグネット部132の材質は、探針103を、磁力によって、取り外し可能かつ拘束力を与えるものであれば、どの様な材質でもよく、例えば、ネオジム磁石等を用いることが考えられる。
【0064】
センサ本体部133は、圧電センサ117のセンサ本体である。センサ本体部133は、圧電効果を有する圧電素子を有し、探針103により加えられる力を電荷信号に変換して出力する。
【0065】
センサ保持部134は、センサ本体部133を保持(接着)する部材である。また、センサ保持部134は、1以上の丸溝(図9の例では、4か所ある丸溝)を設けて、センサ本体部133からの信号線(コード)を保持してもよい。
【0066】
また、圧電センサ117は、一例として、横ぶれ防止機構部131及びマグネット部132とセンサ本体部133の間に非導電性の部材を挟んで構成してもよい。この様な構成により、力センサ117のセンサ本体部133と横ぶれ防止機構部131を介した探針103との間に絶縁領域を設けることができ、耳小骨800周辺は電気的に非常にセンシティブであるため、より安全に、計測プローブ100の探針103を用いて耳小骨に接触させることができる。
【0067】
アクチュエータ116は、図4に示すように、アクチュエータ用ホルダ114に格納されて、標準ネジ115によりアクチュエータ用ホルダ114にネジ留めされることで取り付けられている。アクチュエータ116は、具体的には、例えば、変位拡大機構付き圧電アクチュエータ等を用いればよい。
【0068】
チャージアンプ112は、アクチュエータ用ホルダ114にタッピングネジ108cによりネジ留めされて取り付けられており、アクチュエータ用ホルダ114はタッピングネジ108d、108e、108fにより下カバーA106にネジ留めされて取り付けられている。
【0069】
チャージアンプ112は、コード113、123が接続されており、コード113、123は、コードブッシュ105を通って外部の装置(情報処理装置300等)と接続する。なお、コードブッシュ105は、例えば六角ナット固定リブ等の固定手段を用いて、下カバーA106に取り付けてもよい。この様な構成とすることで、コードブッシュ105の取り付けが容易となる。また、チャージアンプ112は、(1)アナログ演算及び増幅するOPアンプ部と(2)アクチュエータに電源を供給するための電源供給部に分離して構成してもよく、それに伴い、コード113、123は、(1)OPアンプ部に接続しアナログ信号を出力するための線(信号線)と(2)電源供給部に接続しアクチュエータ116に電源を供給するための線(電源線)を分離して形成してもよい。この様な構成により、OPアンプ部は、ノイズを拾ってしまう関係上、力センサ117の近傍に設ける必要があるが、それ以外の部分(電源供給部)については計測プローブ100の外に設けることで、計測プローブ100のハンドピース化において、よりコンパクトにすることができる。また、この様な構成により、信号線と電源線を分けたことで出力した信号に対する誘導ノイズの影響を低減することもできる。
【0070】
実施形態2に係る計測プローブ100は、図4に示すように、上記のとおり各部品が取り付けられた状態で、上カバー101と下カバーB102を取り付け、下カバーB102と下カバーA106を取り付け、ロック用ツマミ104をEリング110によりEリング留めによって取り付けられて使用される。なお、上カバー101は、図4に示すように、短手方向の一部と下カバーB102の一部が折りたたみのヒンジ機構を形成し、上カバー101は下カバーB102に一部が取り付けられた状態で回動し、下カバーB102に対し上カバー101を開閉することが可能としてもよい。このような構成にすることによりタッピングネジ108a、108bによりネジ留めされている板バネ107a、107bが交換可能となり、使い勝手のよい計測プローブを提供することができる。上カバー101の一部を下カバーB102の一部に取り付ける際のヒンジ機構の一例として、ヒンジ機構を形成し、回動する上カバー101の一部に山形状の凸部を設け、一方、当該一部に対応する下カバーB102の一部に谷形状の凹部を設け、当該凹凸部が嵌めこんだ状態で上カバー101の回動を固定するように形成してもよい。
【0071】
計測プローブ100は、図4に示すように、加振装置は細長い棒状の探針103であり、探針103はその重心付近と端部の2点において、固定支点と力センサにより支持され、アクチュエータ116は、探針103の重心付近の支点を中心として一定振幅の回転振動等の振動を与え、力センサは、圧電センサ117およびチャージアンプ112を含み、圧電センサ117はアクチュエータが探針103に与えている力を探針103により加えられることで電荷信号を発生させ、チャージアンプ112は、当該発生した電荷信号を電圧に変換して出力してもよい。このような構成とすることで、定量的な耳小骨反力を計測することを可能とし、耳小骨固着耳の処置前後の可動性の改善度を定量化することができ、術後成績の向上および再手術のリスクを低減することができる。
【0072】
図5は、計測プローブ100の構成の一例を示す斜視図である。
図5は、実施形態2に係る計測プローブ100が上述のとおり各部品が取り付けられ、使用される状態を示す。図5(a)は、実施形態2に係る計測プローブ100をコードブッシュ105側からの斜め視た斜視図であり、図5(b)は、実施形態2に係る計測プローブ100を探針103の先端側からの斜め視た斜視図である。実施形態2に係る計測プローブ100は、図5に示すように、術者が計測プローブ100の下カバーB102と下カバーA106を手に掴んで保持する際に握りやすいよう、下カバーB102および下カバーA106は、人間の手の握る形にそった形状を構成している。このような構成とすることにより、計測プローブ100をハンドピース化し、使い勝手のよい計測プローブ100を提供することができる。
【0073】
なお、図5において、説明のためロック用ツマミ104を下カバーB102の両側に取り付けた状態を示しているが、片側のみでロックすることができるよう、ロック用ツマミ104を左右のいずれかに設けてもよい。さらに、片側のみにロック用ツマミ104を設けた際、もう片方の側には、下カバーBに対して上カバー101をワンタッチで上下に開閉するための開閉用ツマミを設けてもよい。
【0074】
図6(a)は、計測プローブ100の構成の一例を示す平面図である。
図6(a)に示すように、術者が計測プローブ100の下カバーB102を手に掴んで保持する際に握りやすいよう、下カバーB102は、人間の手の握る形にそった形状を構成している。このような構成とすることにより、計測プローブ100をハンドピース化し、使い勝手のよい計測プローブ100を提供することができる。また、計測プローブ100は、ハンドピース化して用いることを想定しており、その一例として、図6(a)に各部の寸法(単位はmm)を記載しているが、当該寸法の限りでなく、ハンドピースとして人間の手に握り易い寸法であればどのような寸法でもよい。
【0075】
図6(b)は、計測プローブ100の構成の一例を示す側面図である。
図6(b)に示すように、術者が計測プローブ100の下カバーB102と下カバーA106を手に掴んで保持する際に握りやすいよう、下カバーB102および下カバーA106は、人間の手の握る形にそった形状を構成している。このような構成とすることにより、計測プローブ100をハンドピース化し、使い勝手のよい計測プローブ100を提供することができる。また、計測プローブ100は、ハンドピース化して用いることを想定しており、その一例として、図6(b)に各部の寸法(単位はmm)を記載しているが、当該寸法の限りでなく、ハンドピースとして人間の手に握り易い寸法であればどのような寸法でもよい。
【0076】
図7は、計測プローブ100の構成の一例を示す断面図である。図7は、図6(a)のX-X’線断面図である。
図7に示すように、探針103は板バネ107a、107bが上方(術者が計測プローブ100を使用時において、接地面に対して上の方向をいう)から接している。また、探針103は、その重心付近と端部の2点において支持されるよう、探針103の重心付近に位置する支点用金具109と圧電センサ117の2点によって支持されて取り付けられている。圧電センサ117は、探針103の端部が上方下方に上下することによる加わる力によって、アクチュエータ116が探針103に与えている力を加えられることで電荷信号を発生させる。このような構成により、アクチュエータ116は、探針103に、その重心付近の支点を中心とした一定振幅の回転振動等の振動を与えることができる。
【0077】
(可動性評価システム700が実行する処理)
図8は、可動性評価システム700が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0078】
可動性評価システム700は、加振装置を回転振動させる(ステップS10)。可動性評価システム700は、より具体的には、アクチュエータ116により回転振動させた探針103の先端を耳小骨に接触させることにより耳小骨に振動を与える(ステップS10)。
【0079】
可動性評価システム700は、可動性を評価する場合(ステップS11の「可動性を評価する」の場合)、探針103の先端を耳小骨に接触させたときのアクチュエータ116にかかる反力を測定する(ステップS12)。可動性評価システム700は、当該測定結果に基づき、電圧を出力する(ステップS13)。可動性評価システム700は電圧情報の周波数を解析する(ステップS14)。可動性評価システム700は、より具体的には、計測プローブから出力された電圧に基づき、FFT解析をして、所定の周波数成分値を求める(ステップS14)。可動性評価システム700は、所定の周波数成分値に基づき、耳小骨の可動性を評価する(ステップS15)。
【0080】
可動性評価システム700は、電位を計測する場合(ステップS11の「電位を計測する」の場合)、蝸牛マイクロホン電位を計測する(ステップS16)。
【0081】
可動性評価システム700は、これらの計測および評価結果を出力する(ステップS17)。
【0082】
(その他)
本発明に係る可動性評価システムについて、耳小骨の可動性を評価する実施形態を取りあげているが、それに限らず、微細空間における生体の一部の硬化状態等を評価する場合においても用いることができる。例えば、内視鏡により胃壁を振動させて周辺領域のがんの有無を検出する場合にも用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
100 計測プローブ
300 情報処理装置
400 表示装置
500 増幅器
600 電極
700 可動性評価システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10