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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】生体磁気測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/242 20210101AFI20220308BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20220308BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20220308BHJP
   G01R 33/035 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61B5/242
G01R33/02 R
G01R33/09
G01R33/035
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018531902
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2017027794
(87)【国際公開番号】W WO2018025829
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2016152306
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂徳
(72)【発明者】
【氏名】福井 崇人
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 朝彦
【審査官】大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-042120(JP,A)
【文献】特許第5839527(JP,B1)
【文献】実開平02-091508(JP,U)
【文献】特開平08-098820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
G01R 33/02、33/04、33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体磁気を常温域で検出可能な複数の磁気センサと、
前記複数の磁気センサを個別に可動自在に保持する保持孔を有する保持部と、
前記磁気センサを測定対象に対して接離する接離方向へ個別に移動させる移動機構と、を備え、
前記磁気センサは、SQUIDセンサを除いた、巨大磁気抵抗センサ(GMRセンサ)、トンネル磁気抵抗センサ(TMRセンサ)、異方的磁気抵抗センサ(AMRセンサ)、磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)、又はフラックスゲートセンサであり、かつ前記磁気センサは、検出面を有し、前記検出面は、前記磁気センサの鉛直方向の上端に前記測定対象に対向する位置に形成され、前記測定対象の重力によって前記測定対象と前記磁気センサの検出面との密着性が向上するように構成された、
生体磁気測定装置。
【請求項2】
前記移動機構は、空気圧機構、油圧機構、弾性体機構、ネジ機構又は歯車機構の少なくとも一つである、
請求項1に記載の生体磁気測定装置。
【請求項3】
前記移動機構は、非磁性材料から構成される、
請求項1又は2に記載の生体磁気測定装置。
【請求項4】
前記移動機構による前記磁気センサの移動量を、外部からの生体情報に基づき制御する制御手段を備える、
請求項1から3のいずれかに記載の生体磁気測定装置。
【請求項5】
前記磁気センサは、測定対象との接触の有無を検出する接触検出手段をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の生体磁気測定装置。
【請求項6】
前記磁気センサは、測定対象の直下に配される、請求項1から5のいずれかに記載の生体磁気測定装置。
【請求項7】
前記保持部は、可撓性材料から構成される、請求項1から6のいずれかに記載の生体磁気測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサを用いた生体磁気測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気を検出する磁気センサに関し、従来より、磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いたMRセンサが知られている。磁界の強さに応じて、MR素子にかかる直流抵抗が変化する。この直流抵抗の変化の程度を利用して、MRセンサは、磁界の変化や磁性体の有無を電圧の変化として検出する。
【0003】
MRセンサは、ハードディスク装置の磁気ヘッドや、回転センサ(エンコーダ)、位置センサとして広く利用されている。また、近年、スマートフォンやタブレット機器等のモバイル機器が普及しており、モバイル機器には地磁気を利用して方位を計測するMRセンサを用いた方位センサが内蔵されている。方位センサから得られる情報は、GPS(Global Positionning System)による位置情報を利用したナビゲーション等に用いられる。
【0004】
しかしながら、これら工業応用分野では、高感度な磁気検出技術を必要としていない。例えば、回転センサや位置センサにおいては、磁石等を基準信号とするので、高感度の磁気検出を必須としていない。また、方位センサは、地磁気を基準として絶対方位を検出すれば足り、高感度の磁気検出を必須としていない。
【0005】
ところで、近年、医療現場において、生体の脳、心臓、筋肉の電気活動に伴って発生する微弱な低周波の磁気を検出する脳磁計、心磁計、筋磁計といった生体磁気測定装置が使用されている。脳の電気的活動に伴って発生する脳磁は、地磁気の約1億分の1程度の強度であり、心臓の心筋の電気的活動に伴って発生する心磁は、地磁気の百万分の1程度の大きさである。そのため、生体が発生する磁気(以下、「生体磁気」ともいう。)を検出するに際し、磁気センサには、極めて高感度な検出性能が要求される。
【0006】
高感度な磁気検出を可能にする高感度磁気センサとして、超電導量子干渉素子(Superconducting Quantum Interference Device、以下、「SQUID」ともいう。)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
SQUIDセンサは、超電導現象を利用した磁気センサであり、ジョセフソン接合を有する。そのため、SQUIDセンサを用いるに際し、液体ヘリウムや液体窒素といった冷媒による冷却を要する。したがって、SQUIDセンサは、冷媒を貯蔵するデュワー内に設けられなければならず、生体磁気を検出するにあたり、SQUIDセンサを生体と密着させることが難しい。
【0008】
また、SQUIDセンサは、デュワー内にアレイ状に複数配置されている。しかしながら、SQUIDセンサを配置するにあたって、SQUIDセンサは、SQUID内部のジョセフソン接合に電磁気的な影響が及ばないように配置しなければならない。そのため、SQUIDセンサの配置変更、取替え、取り出し等は、容易ではない。
【0009】
このように、SQUIDセンサは、超高感度な磁気センサであるにもかかわらず、生体に対して十分に近づけることができず、取り扱いが難しい等の課題がある。
【0010】
そこで、冷却が不要な常温域で、微弱な磁気の検出が可能なMRセンサを用いた生体磁気測定装置が提案されている。例えば、特許文献2には、生体を外部磁場からシールドする被覆部材をヘルメット状又は円筒状に形成し、この被覆部材にMRセンサをアレイ状に内張りした生体磁気測定装置が提案されている。MRセンサを用いた生体磁気測定装置では、MRセンサをデュワー内に配置する必要がなく、SQUIDセンサを用いる場合に比べ、取り扱いが簡単で、MRセンサを生体に近づけやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-020143号公報
【文献】特開2012-095939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載の生体磁気測定装置のように、MRセンサの位置が固定されていると、測定対象(生体)によっては、測定対象とMRセンサとの密着性がなくなり、MRセンサが磁気を検出できない場合がある。例えば、大人や子供、ヒト以外の動物等のように体型が異なる測定対象では、最適なMRセンサの位置が異なる。また、頭部、心臓、四肢等、測定対象の部位によっても、最適なMRセンサの位置が異なる。
【0013】
本発明は、測定対象によらず、生体磁気を精度よく検出可能な生体磁気測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、複数の磁気センサを可動自在に保持させ、測定対象に応じて磁気センサを最適な位置に移動させることにより、測定対象によらず、生体磁気を精度よく検出可能な生体磁気測定装置を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【0015】
(1)本発明は、生体磁気を検出する複数の磁気センサと、前記複数の磁気センサを個別に可動自在に保持する保持孔を有する保持部と、前記磁気センサを測定対象に対して接離する接離方向へ個別に移動させる移動機構と、を備える生体磁気測定装置である。
【0016】
(2)本発明は、前記移動機構は、空気圧機構、油圧機構、弾性体機構、ネジ機構又は歯車機構の少なくとも一つである、(1)に記載の生体磁気測定装置である。
【0017】
(3)本発明は、前記移動機構は、非磁性材料から構成される、(1)又は(2)に記載の生体磁気測定装置である。
【0018】
(4)本発明は、前記移動機構による前記磁気センサの移動量を、外部からの生体情報に基づき制御する制御手段を備える、(1)から(3)のいずれかに記載の生体磁気測定装置である。
【0019】
(5)本発明は、前記磁気センサは、測定対象との接触の有無を検出する接触検出手段をさらに備える、(1)から(4)のいずれかに記載の生体磁気測定装置である。
【0020】
(6)本発明は、前記磁気センサは、生体情報を取得する生体情報取得手段をさらに備える、(1)から(5)のいずれかに記載の生体磁気測定装置である。
【0021】
(7)本発明は、前記磁気センサは、測定対象の直下に配される、(1)から(6)のいずれかに記載の生体磁気測定装置である。
【0022】
(8)本発明は、前記保持部は、可撓性材料から構成される、(1)から(7)のいずれかに記載の生体磁気測定装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、測定対象によらず、生体磁気を精度よく検出可能な生体磁気測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る生体磁気測定装置の構成の一例を示す平面図である。
図2】被験者と生体磁気測定装置の各磁気センサとの位置関係を説明する模式図である。
図3】磁気センサが被験者の直下に配される構成を説明する説明図である。
図4】磁気センサが被験者の直下に配される別の構成を説明する説明図である。
図5】空気圧・油圧機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す模式図である。
図6】弾性体機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す要部拡大模式図である。
図7】ネジ機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す要部拡大模式図である。
図8】歯車機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す要部拡大模式図である。
図9】生体磁気測定装置の構成を示すブロック図である。
図10】(a)(b)(c)は、磁気センサが圧力センサを備えている構成の一例を示す要部拡大模式図である。
図11】圧力センサの構成を示す模式図である。
図12】磁気センサが生体情報を検出する検出手段を備えている構成の一例を示す模式図である。
図13】生体電極の構成を示す模式図である。
図14】保持部が可撓性材料で構成される生体磁気測定装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0026】
<生体磁気測定装置1>
図1は、本発明の実施形態に係る生体磁気測定装置の一例を示す平面図である。図2は、被験者と生体磁気測定装置の各磁気センサとの位置関係を説明する模式図であって、図1に示す生体磁気測定装置におけるA-A’断面を示す。図1及び図2に示すように、生体磁気測定装置1は、生体磁気を検出する複数の磁気センサ11と、磁気センサ11を可動自在に保持する保持孔12aを有する保持部12と、磁気センサ11の検出面を測定対象である生体(以下、「被験者」ともいう)100に対して接離する方向へ移動させる移動機構とを備えている。
【0027】
[磁気センサ11]
磁気センサ11は、測定対象である生体100から生じる生体磁気を検出する。磁気センサ11としては、巨大磁気抵抗センサ(GMRセンサ)、トンネル磁気抵抗センサ(TMRセンサ)、異方的磁気抵抗センサ(AMRセンサ)、磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)、フラックスゲートセンサ等が挙げられる。本実施形態で使用する磁気センサ11は、10-4T(テスラ)~10-10T(テスラ)程度の磁界(法線成分)を検出することができれば、いずれの磁気センサであってもよい。本実施形態で使用する磁気センサ11は、SQUIDセンサと同程度の情報を得ることができ、かつ、常温で使用可能で、冷却を貯蔵するデュワー内に配置する必要がなく、SQUIDセンサを用いる場合に比べ、取り扱いが簡単で、生体100に近づけやすい。
【0028】
磁気センサ11は、信号の授受や電力供給のための配線を有していてもよいし、有していなくてもよい。ただし、図1に示すように、生体磁気測定装置1においては、複数の磁気センサ11が配置されることから、混線を避けるためには、配線を有していることが好ましい。
【0029】
上記磁気センサ11で検出された信号は、制御部に送られる。制御部では、各磁気センサ11で検出された信号から生体磁気情報を生成し、画像情報化して表示装置に出力する。
【0030】
[保持部12]
保持部12には、複数の磁気センサ11を個別に可動自在に保持する保持孔12aがアレイ状に配置される。なお、図1では、保持孔12aが5×5のアレイ状に配置されている例を図示しているが、保持孔12a(磁気センサ11)の配列方向やその個数は、測定対象や測定部位によって適宜選択されればよい。
【0031】
上述した保持部12は、アクリル樹脂等のプラスチック材料、アルミ、チタン、銅、真鍮、特殊加工したステンレス合金等の非鉄金属、木材等の非磁性材料で構成されることが好ましい。被験者100の呼吸等の動きによって、保持部12が振動しても、保持部12が非磁性材料であることにより、環境磁気の変動を抑制することができる。よって、環境磁気の変動による影響が磁気センサ11に及ぶことを抑制することができる。
【0032】
また、上記保持部12は、磁気センサ11の検出面と測定対象との密着性を高める上で、測定対象の直下に配されることが好ましい。例えば、図3に示すように、被験者100は、保持部12が組み込まれた診療台2上に仰向けに横たわってもよい。または、図4に示すように、被験者100は診療台2上にうつ伏せで横たわってもよい。保持部12が組み込まれた診療台2に被験者100が横たわることにより、被験者100に重力が作用し、被験者100の体表面と磁気センサ11の検出面との密着性を向上させやすい。その結果、生体磁気測定装置1は、より精度の高い生体磁気情報を得ることが可能となる。
【0033】
[移動機構]
移動機構は、磁気センサ11を生体100に対して接離する接離方向へ個別に移動させ、磁気センサ11の検出面と測定対象である生体100とを密着させる。移動機構としては、磁気センサ11を所定の位置に移動させることができれば、特に制限はないが、例えば、空気圧機構、油圧機構、弾性体機構、ネジ機構、歯車機構等が挙げられる。
【0034】
(空気圧・油圧機構20)
図5は、空気圧・油圧機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す模式図である。なお、図5中、図1及び図2で示した部材と同一部材には、同一符号を付し、説明を省略する。図5に示すように、空気圧・油圧機構20は、保持孔12b内の空気圧又は油圧をポンプ21により増減させることにより、保持孔12b内の磁気センサ11の検出面を、測定対象に接触させる方向、又は離間する方向に移動させる。空気圧・油圧機構20は、磁気センサ11の感度に影響を与えない空気や油を用いる点で好ましい。
【0035】
(弾性体機構30)
図6は、弾性体機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す要部拡大模式図である。なお、図6中、図1及び図2で示した部材と同一部材には、同一符号を付し、説明を省略する。図6に示すように、弾性体機構30は、保持孔12a内にコイル状ばね等の弾性体31を有し、測定対象からの反力により弾性体31の伸縮量を増減させて、保持孔12a内の磁気センサ11の検出面と測定対象とを密着させる。弾性体機構30は、駆動源を必要とせず、簡易な構成である点で好ましい。
【0036】
(ネジ機構40)
図7は、ネジ機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す要部拡大模式図である。なお、図7中、図1及び図2で示した部材と同一部材には、同一符号を付し、説明を省略する。図7に示すように、ネジ機構40は、ネジ軸41と、ネジ軸41が螺合するネジナット42とを備え、図示しない駆動モーターによりネジナット42を回転駆動させることにより、ネジ軸41の回転量を増減させて、保持孔12a内の磁気センサ11の検出面を、測定対象に接触する方向、又は離間する方向に移動させる。ネジ機構40は、後述するように、制御部によって、ネジ軸41の回転量を増減させ、磁気センサ11を所望の位置に個別に移動させることができる点で好ましい。
【0037】
(歯車機構50)
図8は、歯車機構を備えた生体磁気測定装置の一例を示す要部拡大模式図である。なお、図8中、図1及び図2で示した部材と同一部材には、同一符号を付し、説明を省略する。図8に示すように、歯車機構50は、歯車51と、歯車51に噛み合う噛合部52とを備え、図示しない駆動モーターにより歯車51を回転駆動させることにより、噛合部52の移動量を増減させて、保持孔12a内の磁気センサ11を移動させる。歯車51は、複数の歯車で構成してもよいことは言うまでもない。歯車機構50は、後述するように、制御部によって、噛合部52の移動量を増減させ、磁気センサ11を所望の位置に個別に移動させることができる点で好ましい。
【0038】
上述した、弾性体機構30、ネジ機構40、歯車機構50等の移動機構を構成する部材は、アクリル樹脂等のプラスチック材料、アルミ、チタン、銅、真鍮、特殊加工したステンレス合金等の非鉄金属、木材等の非磁性材料で構成されることが好ましい。移動機構の作動により各部材が移動しても、各部材が非磁性材料で構成されることにより、環境磁気の変動を抑制することができる。よって、環境磁気の変動による影響が磁気センサ11に及ぶことを抑制することができる。
【0039】
[制御部]
本実施形態に係る生体磁気測定装置1は、移動機構による各磁気センサ11の移動量を、制御部によって制御してもよい。例えば、制御部は、外部からの生体情報等に基づき、上述した空気圧・油圧機構20、ネジ機構40、歯車機構50等の移動機構を制御し、各磁気センサ11の移動量を調整してもよい。
【0040】
図9は、外部からの生体情報に基づき移動量を決定する制御部を含む、生体磁気測定装置の構成を示すブロック図である。例えば、図9に示すように、生体磁気測定装置1の制御部13は、事前に取得された生体情報101をメモリ14に格納し、中央演算処理装置(CPU)15で、格納した生体情報101に基づき、例えば、移動機構に備えられる複数の駆動モーター16の回転数を演算し、各磁気センサ11の移動量を制御してもよい。これにより、生体磁気測定装置1は、生体情報101に応じて、各磁気センサ11を適正な位置に移動可能である。外部からの生体情報101としては、例えば、MRI測定によって得られた被験者100の体格等の生体断面情報等が挙げられる。
【0041】
[磁気センサの変形例]
ところで、磁気センサ11は、さらに、生体100の磁気情報以外の情報を検出する検出手段、例えば、磁気センサ11と生体100との接触の有無を検出する接触検出手段や、生体100の情報を取得する生体情報取得手段を備えていてもよい。
【0042】
(接触検出手段を備えた磁気センサ)
磁気センサ11は、生体100との接触の有無を検出する接触検出手段として、圧力センサや位置センサを備えていてもよい。図10(a)(b)(c)は、磁気センサが生体との接触の有無を検出する圧力センサを備えている構成の一例を示す要部拡大模式図である。例えば、磁気センサ11は、図10(a)に示すように、測定対象と対向する検出面11aに、生体100との接触の有無を検出する圧力センサ61を備えていてもよい。また、磁気センサ11は、図10(b)に示すように、磁気センサ11の検出面11aに対向する面11bに、圧力センサ61を備えていてもよい。また、図10(c)に示すように、磁気センサ11は、磁気センサ11の検出面11aと、検出面11aに対向する面11bとの両方に圧力センサ61を備えていてもよい。なお、磁気センサ11の検出面11aに対向する面11bに設置された圧力センサ61は、測定対象からの応力と移動機構からの応力とを合わせた応力を検知し、制御部13は、この圧力センサ61の検出結果を基に、磁気センサ11と生体100との接触の有無を判別する。
【0043】
圧力センサ61は、加えられた圧力に応じた圧力信号を制御部13に出力するセンサであればよい。圧力センサ61は、例えば、図11に示すように、測定対象からの圧力をダイヤフラム61aを介して、感圧素子で計測し、これを電気信号に変換して2本の接続ケーブル61b、61cを介して制御部13に送る。
【0044】
制御部13では、圧力センサ61や位置センサから出力された電気信号に基づいて、磁気センサ11と生体100との接触の有無を判別することができる。制御部13は、測定対象と接触していない磁気センサ11との間で、信号の授受や電力供給を行わないようにしてもよく、省電力化を図ることができる。また、制御部13は、測定対象と接触している磁気センサ11からの情報のみを選択して、生体磁気情報を生成することができる。
【0045】
(生体情報取得手段を備えている磁気センサ)
さらに、磁気センサ11は、生体磁気情報を取得する生体情報取得手段として、生体電極や圧力センサを備えていてもよい。図12は、磁気センサが生体情報を検出する検出手段を備えている構成の一例を示す模式図である。磁気センサ11は、図12に示すように、測定対象と対向する検出面に、生体情報取得手段である生体電極62を有してもよい。生体電極62は、例えば、図13に示すように、電極部62aを備え、電極部62aで取得した生体情報を接続ケーブル62bを介して制御部13に送る。生体電極62や圧力センサで取得される生体情報としては、例えば、心電図、心拍、脈拍、呼吸回数、筋電位等が挙げられる。
【0046】
制御部13では、生体磁気情報以外の生体情報を付随的に得ることができ、これらの生体情報を画像情報化して表示装置に出力することができる。よって、測定者は、1台の生体磁気測定装置で、かつ1回の測定で、複数の情報を得ることができる。
【0047】
[保持部の変形例]
図2に示す保持部12は、剛性材料で構成されていたが、保持部は、可撓性材料で構成されてもよい。図14は、保持部が可撓性材料で構成される生体磁気測定装置の一例を示す模式図である。保持部12’は、図14に示すように、可撓性材料で構成されるため、測定対象に曲面や凹凸があっても、その形状に応じて変形する。よって、保持部12’に保持される磁気センサ11は、その検出面と測定対象との密着面積を大きくすることができ、より精度よく生体磁気の検出が可能となる。
【0048】
また、図14に示すように、保持部12’の磁気センサ11は、磁気センサ11の位置を検出する位置センサ63や、磁気センサ11の傾きを検出する角度センサ64を備えていてもよい。制御部13では、位置センサ63や角度センサ64の検出結果に基づき、磁気センサ11と測定対象との相対位置を算出し、生体磁気の磁気分布や、電流源推定等を行ってもよい。また、制御部13は、これらを画像情報化して表示装置に表示出力するとよい。
【0049】
保持部12’に用いられる可撓性材料としては、天然ゴムや合成ゴム等の弾性材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂といった合成樹脂を挙げることができる。なお、保持部12’全体が可撓性材料で構成される必要はなく、例えば、保持孔をそれぞれ固定する複数の固定部が剛性材料で構成され、これら複数の固定部が可撓性材料からなるヒンジにより連結された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 生体磁気測定装置
2 診療台
11 磁気センサ
12 保持部
12a、12b 保持孔
13 制御部
14 メモリ
15 CPU
20 空気圧・油圧機構
21 ポンプ
30 弾性体機構
31 弾性体
40 ネジ機構
41 ネジ軸
42 ネジナット
50 歯車機構
51 歯車
52 噛合部
61 圧力センサ
62 生体電極
63 位置センサ
64 角度センサ
100 生体(被験者)
101 生体情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
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図14