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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20220308BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20220308BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20220308BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20220308BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20220308BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20220308BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220308BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/02 900
B60W10/10 900
B60W20/17
B60L50/16
B60L15/20 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018038653
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2019151256
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】進矢 義之
(72)【発明者】
【氏名】大石 潔
(72)【発明者】
【氏名】横倉 勇希
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089735(JP,A)
【文献】特開2015-007459(JP,A)
【文献】特開2017-192248(JP,A)
【文献】特許第5360032(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296106(US,A1)
【文献】特開2016-159767(JP,A)
【文献】特開2013-183503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 10/02
B60W 10/10
B60W 20/17
B60L 50/16
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両の制御装置であって、
エンジン及びモータを備える動力源と、
前記動力源との間にクラッチを介して駆動力を伝達可能に連結されたトランスミッションと、
前記トランスミッション側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第1動力伝達作動部と、この第1動力伝達作動部と噛合し、車輪側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第2動力伝達作動部と、を前記トランスミッションと前記車輪との間に備えるデファレンシャルギヤ機構と、
前記ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、解放状態にある前記クラッチを締結した後に、前記車輪側から前記第2動力伝達作動部を介して前記第1動力伝達作動部へと動力が伝達されるような前記第1及び第2動力伝達作動部の第1接触状態から、前記動力源側から前記第1動力伝達作動部を介して前記第2動力伝達作動部へと動力が伝達されるような前記第1及び第2動力伝達作動部の第2接触状態へと移行させるように、前記第1動力伝達作動部と前記第2動力伝達作動部との間に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行うべく、前記モータのトルクを制御するよう構成された制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記ガタ詰め制御の開始時に、前記第2動力伝達作動部に対する前記第1動力伝達作動部の相対角速度が0よりも大きい所定速度となるように、前記モータのトルクを制御するよう構成される、ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
ハイブリッド車両の制御装置であって、
エンジン及びモータを備える動力源と、
前記動力源との間にクラッチを介して駆動力を伝達可能に連結されたトランスミッションと、
前記トランスミッション側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第1動力伝達作動部と、この第1動力伝達作動部と噛合し、車輪側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第2動力伝達作動部と、を前記トランスミッションと前記車輪との間に備えるデファレンシャルギヤ機構と、
前記ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、解放状態にある前記クラッチを締結した後に、前記車輪側から前記第2動力伝達作動部を介して前記第1動力伝達作動部へと動力が伝達されるような前記第1及び第2動力伝達作動部の第1接触状態から、前記動力源側から前記第1動力伝達作動部を介して前記第2動力伝達作動部へと動力が伝達されるような前記第1及び第2動力伝達作動部の第2接触状態へと移行させるように、前記第1動力伝達作動部と前記第2動力伝達作動部との間に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行うべく、事前に求められた制御プロファイルに基づき前記モータのトルクを制御するよう構成された制御装置と、
を有し、
前記制御プロファイルは、前記ガタ詰め制御の開始時に設定されるべき初期状態と、前記ガタ詰め制御の終了時に設定されるべき終端状態とを拘束条件として用いて、事前に求められる、ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御プロファイルを求められるために用いられる前記初期状態は、(1)前記第1及び第2動力伝達作動部が前記第1接触状態にあること、及び、(2)前記第2動力伝達作動部に対する前記第1動力伝達作動部の相対角速度が0よりも大きい所定速度である状態にあること、を含み、
前記制御プロファイルは、前記初期状態及び前記終端状態を拘束条件として終端状態制御に基づき求められる、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御プロファイルを求められるために用いられる前記終端状態は、(1)前記第1及び第2動力伝達作動部が前記第2接触状態にあること、(2)前記第1動力伝達作動部と前記第2動力伝達作動部との相対角速度が0であること、及び、(3)前記動力源のトルクが0であること、を含み、
前記制御プロファイルは、前記初期状態及び前記終端状態を拘束条件として終端状態制御に基づき求められる、請求項2又は3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御プロファイルは、前記ガタ詰め制御を行う時間であるガタ詰め時間と、前記ガタ詰め制御での前記モータの必要エネルギーと、前記ガタ詰め制御のロバスト性と、に基づき求められる、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記必要エネルギーを低減しつつ、前記ロバスト性が確保されるような前記ガタ詰め時間の中において最小の時間が前記制御プロファイルに適用される、請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ガタ詰め制御の前に、前記クラッチを一時的に締結して、前記第1及び第2動力伝達作動部を前記第1接触状態に設定するよう構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記ガタ詰め制御の後に、前記ハイブリッド車両のドライブシャフトのねじれに起因して発生する振動を抑制するために前記モータを制御するよう構成される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源と車輪との間に設けられたクラッチの締結と解放とを制御することで、走行モードを切り替え可能なハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン及びモータを備える動力源と、この動力源との間に断続可能なクラッチを介して駆動力を伝達可能に連結されたトランスミッションと、このトランスミッションと車輪との間に配設されたデファレンシャルギヤ機構と、エンジンとモータに回転数及びトルク指令信号を夫々出力すると共にクラッチの締結状態を制御する制御装置と、を有するハイブリッド車両が知られている。このハイブリッド車両は、モータの動力で走行する電気走行モードとエンジンとモータの動力で走行するハイブリッド走行モードとを切り替え可能に構成されている。
【0003】
また、このようなハイブリッド車両では、アクセルペダルが踏み戻されて車速が所定車速以下、所謂運転者による加速要求がない定常走行や緩減速走行の場合、エンジンを停止すると共にクラッチを解放操作するコースティング走行(惰性走行)が行われている。このコースティング走行では、動力源(エンジン)が車輪から物理的に切り離されるため、停止状態のエンジンを連れ回すことがなく、エンジンの引き摺りに伴うエネルギー損失を回避し、燃費効率を高くすることができる。
【0004】
一方、コースティング走行中に運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作によって車両の駆動トルクを負から正に切り替える際、クラッチの締結操作に起因して動力伝達系の作動部であるデファレンシャルギヤやファイナルギヤ等のガタ(バックラッシュ)に起因したギヤ歯打ち現象によりクラッチの締結に伴うショックが発生する虞がある。このようなショックを抑制すべく、例えば特許文献1のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作によって車両の駆動トルクを負から正に切り替える際、ギヤのガタ詰め判定手段で判定した駆動状態の切り替え中、エンジントルクを一定のガタ詰めトルクに維持すると共に目標エンジントルクとエンジンの要求トルクとの差分を補完するようにモータトルク値を増加補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5360032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなハイブリッド車両においては、運転者の加速要求によってクラッチを締結する際、エンジントルクとクラッチの締結力とを略一致させるため、エンジン(側クラッチ板)回転数とインプットシャフト(側クラッチ板)回転数とを収束させる必要がある。このクラッチの締結力は摩擦材の摩擦係数に比例し、摩擦係数は温度により変化する。だが、使用環境等から、クラッチの摩擦材の温度は不安定であり、特に、乾式多板クラッチは湿式多板クラッチに比べて温度変化が顕著であるため、摩擦材の摩擦係数を調整することは容易ではない。
【0007】
このようなことを踏まえ、半クラッチ状態を長期化することで、摩擦材の摩擦係数調整を必要とすること無く、エンジン回転数とインプットシャフト回転数とを同一回転数に収束させることができ、締結ショックの少ない円滑なクラッチ締結操作が可能になる。しかし、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作後、エンジン再始動(クランキング)期間に加え、長期にわたる半クラッチ期間が存在する場合、運転者の加速要求時点と車両による加速動作時点との間に知覚可能な時間差が生じ、運転者が違和感を覚える虞がある。したがって、車両の操作応答性改善とクラッチ締結に伴うショック低減とは、トレードオフの関係にあると言える。
【0008】
ところで、減速走行時やコースティング走行時には、デファレンシャルギヤ機構においては、車輪側ギヤがトランスミッション側ギヤに対して当接する接触状態(減速用接触状態)となっており、それにより、車輪側ギヤからトランスミッション側ギヤへと動力が伝達される。減速用接触状態では、車輪側ギヤ及びトランスミッション側ギヤがそれぞれ主動側作動部及び従動側作動部に相当し、車輪側からの動力が車輪側ギヤを介してトランスミッション側ギヤへと伝達される。一方、加速走行時には、トランスミッション側ギヤが車輪側ギヤに対して当接する接触状態(加速用接触状態)となっており、それにより、トランスミッション側ギヤから車輪側ギヤへと動力が伝達される。加速用接触状態では、トランスミッション側ギヤ及び車輪側ギヤがそれぞれ主動側作動部及び従動側作動部に相当し、動力源側からの動力がトランスミッション側ギヤを介して車輪側ギヤへと伝達される。このようなデファレンシャルギヤ機構の各々のギヤにおける減速用接触状態から加速用接触状態までの相対角度差を、状態変位に関するガタ(バックラッシュ)と見做すことができる。
【0009】
上記の特許文献1に記載された技術では、駆動状態の切り替え中、換言すると減速用接触状態から加速用接触状態までの変位期間中、要求トルクよりも小さいギヤガタ詰めトルクをエンジンの出力トルクとして保持することで、ギヤガタ詰めトルクの精度を向上しつつ、ギヤのガタ詰め時間(減速用接触状態から加速用接触状態までの変位に要する時間)を短縮化するようにしている。しかし、特許文献1に記載の技術は、ガタ詰め制御のとき、モータのガタ詰めトルクに含まれる駆動軸の共振成分が大きい場合、駆動軸の共振に起因したショックが発生する虞がある。また、コースティング走行中、運転者の加速要求に伴ってエンジン再始動を行った後にクラッチを締結操作した場合、エンジンの初爆トルクがトルクコンバータにより増幅されて車輪に伝達されるため、運転者が知覚するショックが発生する虞もある。このようなことから、特許文献1に記載の技術は、クラッチ締結に伴うショックを低減しつつ、ガタ詰め時間を適切に短縮するには十分でなかった。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、動力源とトランスミッションとの間に設けられたクラッチの締結に伴うショックを低減しつつ、デファレンシャルギヤ機構のガタ詰め時間を適切に短縮することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、ハイブリッド車両の制御装置であって、エンジン及びモータを備える動力源と、動力源との間にクラッチを介して駆動力を伝達可能に連結されたトランスミッションと、トランスミッション側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第1動力伝達作動部と、この第1動力伝達作動部と噛合し、車輪側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第2動力伝達作動部と、をトランスミッションと車輪との間に備えるデファレンシャルギヤ機構と、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、解放状態にあるクラッチを締結した後に、車輪側から第2動力伝達作動部を介して第1動力伝達作動部へと動力が伝達されるような第1及び第2動力伝達作動部の第1接触状態から、動力源側から第1動力伝達作動部を介して第2動力伝達作動部へと動力が伝達されるような第1及び第2動力伝達作動部の第2接触状態へと移行させるように、第1動力伝達作動部と第2動力伝達作動部との間に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行うべく、モータのトルクを制御するよう構成された制御装置と、を有し、制御装置は、ガタ詰め制御の開始時に、第2動力伝達作動部に対する第1動力伝達作動部の相対角速度が0よりも大きい所定速度となるように、モータのトルクを制御するよう構成される、ことを特徴とする。
【0012】
このように構成された本発明では、車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、動力源とトランスミッションとの間に設けられたクラッチを締結した後に、デファレンシャルギヤ機構の第1及び第2動力伝達作動部を減速側の第1接触状態(減速用接触状態)から加速側の第2接触状態(加速用接触状態)へと移行させるように、モータのトルクを調整して第1及び第2動力伝達作動部のガタ詰め制御を行う。これにより、車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、クラッチの締結に伴うショックを低減しつつ、デファレンシャルギヤ機構のガタ詰め時間を適切に短縮することができる。特に、本発明では、第1及び第2動力伝達作動部の相対角速度を0よりも大きい所定速度に設定した状態においてガタ詰め制御を開始するようにするので、ガタ詰め時間を効果的に短縮することができると共に、たとえガタ詰め制御がずれたとしても、負の加速度が発生することを適切に抑制することができる。
【0013】
他の観点では、上記の目的を達成するために、本発明は、ハイブリッド車両の制御装置であって、エンジン及びモータを備える動力源と、動力源との間にクラッチを介して駆動力を伝達可能に連結されたトランスミッションと、トランスミッション側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第1動力伝達作動部と、この第1動力伝達作動部と噛合し、車輪側に設けられた少なくとも1つ以上のギヤを含む第2動力伝達作動部と、をトランスミッションと車輪との間に備えるデファレンシャルギヤ機構と、ハイブリッド車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、解放状態にあるクラッチを締結した後に、車輪側から第2動力伝達作動部を介して第1動力伝達作動部へと動力が伝達されるような第1及び第2動力伝達作動部の第1接触状態から、動力源側から第1動力伝達作動部を介して第2動力伝達作動部へと動力が伝達されるような第1及び第2動力伝達作動部の第2接触状態へと移行させるように、第1動力伝達作動部と第2動力伝達作動部との間に存在するギヤのガタを詰めるためのガタ詰め制御を行うべく、事前に求められた制御プロファイルに基づきモータのトルクを制御するよう構成された制御装置と、を有し、制御プロファイルは、ガタ詰め制御の開始時に設定されるべき初期状態と、ガタ詰め制御の終了時に設定されるべき終端状態とを拘束条件として用いて、事前に求められる、ことを特徴とする。
【0014】
このように構成された本発明でも、車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、動力源とトランスミッションとの間に設けられたクラッチを締結した後に、デファレンシャルギヤ機構の第1及び第2動力伝達作動部を減速側の第1接触状態から加速側の第2接触状態へと移行させるように、モータのトルクを調整して第1及び第2動力伝達作動部のガタ詰め制御を行う。特に、本発明では、所定の初期状態及び終端状態を拘束条件として用いて事前に求められた制御プロファイルに基づき、ガタ詰め制御を行う。これにより、車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、クラッチの締結に伴うショックを低減しつつ、デファレンシャルギヤ機構のガタ詰め時間を適切に短縮することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、制御プロファイルを求められるために用いられる初期状態は、(1)第1及び第2動力伝達作動部が第1接触状態にあること、及び、(2)第2動力伝達作動部に対する第1動力伝達作動部の相対角速度が0よりも大きい所定速度である状態にあること、を含み、制御プロファイルは、初期状態及び終端状態を拘束条件として終端状態制御に基づき求められる。
このように構成された本発明では、制御プロファイルのための終端状態制御において、第1及び第2動力伝達作動部の相対角速度が0よりも大きい所定速度である状態を初期状態として適用する。これにより、ガタ詰め時間を効果的に短縮することができると共に、たとえガタ詰め制御がずれたとしても、負の加速度が発生することを適切に抑制することができる。また、終端状態制御に関する初期状態を適切に安定化することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、制御プロファイルを求められるために用いられる終端状態は、(1)第1及び第2動力伝達作動部が第2接触状態にあること、(2)第1動力伝達作動部と第2動力伝達作動部との相対角速度が0であること、及び、(3)動力源のトルクが0であること、を含み、制御プロファイルは、初期状態及び終端状態を拘束条件として終端状態制御に基づき求められる。
このように構成された本発明によれば、相対角速度が0であること及び動力源のトルクが0であることを終端状態制御における終端状態として適用するので、第1及び第2動力伝達作動部のガタが詰まったときの衝撃(ショック)、換言すると第1動力伝達作動部が第2動力伝達作動部に勢いよく衝突することを効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、制御プロファイルは、ガタ詰め制御を行う時間であるガタ詰め時間と、ガタ詰め制御でのモータの必要エネルギーと、ガタ詰め制御のロバスト性と、に基づき求められる。
このように構成された本発明によれば、ガタ詰め時間を短縮すること、必要エネルギーを低減すること、及び制御のロバスト性を確保すること、を考慮に入れた制御プロファイルをガタ詰め制御に適用することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、必要エネルギーを低減しつつ、ロバスト性が確保されるようなガタ詰め時間の中において最小の時間が制御プロファイルに適用される。
このように構成された本発明によれば、ガタ詰め時間を短縮すること、必要エネルギーを低減すること、及び制御のロバスト性を確保すること、をそれぞれ適切に実現することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、制御装置は、ガタ詰め制御の前に、クラッチを一時的に締結して、第1及び第2動力伝達作動部を第1接触状態に設定するよう構成される。
このように構成された本発明によれば、ガタ詰め制御前に、第1及び第2動力伝達作動部の初期状態を第1接触状態に容易に設定することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、制御装置は、ガタ詰め制御の後に、ハイブリッド車両のドライブシャフトのねじれに起因して発生する振動を抑制するためにモータを制御するよう構成される。
このように構成された本発明によれば、ガタ詰め制御後に、車両を振動無く加速させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のハイブリッド車の制御装置によれば、車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、動力源とトランスミッションとの間に設けられたクラッチの締結に伴うショックを低減しつつ、デファレンシャルギヤ機構のガタ詰め時間を適切に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるハイブリッド車両のパワートレインモデルを示す図である。
図2】(a)は減速用接触状態の説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
図3】(a)は過渡状態の説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
図4】(a)は加速用接触状態の説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
図5】本発明の実施形態によるパワートレインの制御システムを示す制御ブロック図である。
図6】本発明の実施形態によるガタ詰め制御ステップにおける機能ブロック図である。
図7】本発明の実施形態によるパワープラント指令値演算機構を示す機能ブロック図である。
図8】本発明の実施形態による各要素のタイムチャートである。
図9】本発明の実施形態による制御処理手順を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態による制御プロファイルの説明図である。
図11】本発明の実施形態による終端状態制御の評価関数の説明図である。
図12】本発明の実施形態によるバウンド抑制制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御装置を説明する。
【0024】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態によるハイブリッド車両のパワートレインPTの概略について説明する。
【0025】
図1に示すように、このハイブリッド車両のパワートレインPTは、第1動力源として直列4気筒レシプロエンジン1と、このエンジン1の下流側位置に配設された第2動力源としてのモータジェネレータ(以下、「モータ」と略す。)2と、このモータ2の下流側位置に配設されたオートマチックトランスミッション(以下、「AT」と略す。)3と、駆動力を左右1対の車輪5に対して分配するデファレンシャルギヤ機構(以下、「デフ機構」と略す。)4等を備えている。
【0026】
エンジン1の出力軸とモータ2の回転軸とは、断続可能な第1クラッチ11を介して軸6によって同軸状に連結されている。第1クラッチ11は、モータ(図示略)によりクラッチ作動油流量及びクラッチ作動油圧を連続的又は段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な乾式多板クラッチによって構成されている。この第1クラッチ11の上流側端部は、軸部6aを介してエンジン1の出力軸に連結され、第1クラッチ11の下流側端部は、軸部6bを介してモータ2の回転軸の上流側端部に連結されている。
【0027】
モータ2の回転軸とAT3の回転軸とは、断続可能な第2クラッチ12を介して軸7によって同軸状に連結されている。第2クラッチ12は、第1クラッチ11と同様に、モータ(図示略)によりクラッチ作動油流量及びクラッチ作動油圧を連続的又は段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な乾式多板クラッチによって構成されている。この第2クラッチ12の上流側端部は、軸部7aを介してモータ2の回転軸の下流側端部に連結され、第2クラッチ12の下流側端部は、軸部7bを介してAT3の回転軸に連結されている。軸部7aには、所定重量を有する上流側フライホイールが配設され、軸部7bには、下流側フライホイールが配設されている(何れも図示略)。なお、第2クラッチ12は、少なくともモータ2とAT3との駆動力の伝達を断続可能であれば良く、AT3の内部に形成しても良い。
【0028】
図1に示すように、デフ機構4は、AT3の出力軸8を介して駆動力が入力され、操舵状態に応じて左右の車輪5に夫々対応した駆動軸9(ドライブシャフト)への駆動力分配率を変更可能に構成されている。軸6、軸7、出力軸8、及び駆動軸9は、何れもねじり変形可能に形成され、特に、駆動軸9は、バネマスモデルを用いてモデル化可能な特性を有している。
【0029】
次に、図2に示すように、デフ機構4は、デファレンシャルギヤ、ファイナルギヤ及びピニオン等からなる複数の動力伝達作動部13、14を備えている。動力伝達作動部13(第1動力伝達作動部に相当する)は、AT3側に設けられ、動力伝達作動部14(第2動力伝達作動部に相当する)は、車輪5側に設けられ、動力伝達作動部13と噛合可能に構成されている。これら動力伝達作動部13、14は、車両の走行状態に応じて、隣り合う作動部を各々のギヤの噛み合いを介して駆動する主動側作動部と、この主動側作動部から各々のギヤの噛み合いを介して駆動される従動側作動部とにそれらの機能が切り替え可能に構成されている。
【0030】
具体的には、減速走行時或いはコースティング走行時、車輪5の回転速度(駆動軸9の角速度)が動力源、例えばモータ2の角速度よりも速いため、下流側(車輪5側)の動力伝達作動部14が主動側作動部の機能を果たし、この主動側作動部から駆動される上流側(AT3側)の動力伝達作動部13が従動側作動部の機能を果たしている。なお、下流側の動力伝達作動部14によって駆動される従動側作動部としての動力伝達作動部13であっても、その作動部よりも上流側の作動部に対しては駆動力を伝達する主動側作動部の機能を果たしている。
【0031】
一方、図4に示すように、加速走行時、動力源の角速度が車輪5の回転速度よりも速いため、上流側の動力伝達作動部13が主動側作動部の機能を果たし、この主動側作動部から駆動される下流側の動力伝達作動部14が従動側作動部の機能を果たしている。
【0032】
本明細書では、下流側に位置する動力伝達作動部14が主動側作動部で且つ上流側に位置する動力伝達作動部13が従動側作動部である状態、つまり、下流側作動部からの動力が上流側作動部に円滑に伝達される状態(図2)を減速用接触状態と定義する。この減速用接触状態では、動力伝達作動部14のギヤにおいて回転方向側の面が、動力伝達作動部13のギヤにおいて回転方向と反対側の面と当接する。また、上流側に位置する動力伝達作動部13が主動側作動部で且つ下流側に位置する動力伝達作動部14が従動側作動部である状態(図4)を加速用接触状態と定義する。この加速用接触状態では、動力伝達作動部13のギヤにおいて回転方向側の面が、動力伝達作動部14のギヤにおいて回転方向と反対側の面と当接する。
【0033】
また、動力伝達作動部13と動力伝達作動部14との間には、所定の隙間(ガタ又はバックラッシュとも言う)が夫々形成されている。図3に示すように、車両の運転状態が減速走行から加速走行に操作された直後において、上流側の動力伝達作動部13が従動側作動部の機能から主動側作動部の機能への機能変更途中、動力伝達作動部13のギヤが隣り合う動力伝達作動部14のギヤから所定距離離隔した過渡状態になる。そして、動力伝達作動部13、14には、構造全体として、下流側作動部の動力が上流側作動部に伝達される減速用接触状態から上流側作動部の動力が下流側作動部に伝達される加速用接触状態にわたって変位するための相対角度差Δθが形成されている。本実施形態の相対角度差Δθは、例えば、比較的大きな約4°に予め設定されている。なお、加速用接触状態から減速用接触状態にわたって変位するための相対角度差Δθは、減速用接触状態から加速用接触状態にわたって変位するための相対角度差Δθと同じである。
【0034】
ところで、ハイブリッド車両のパワートレインPTでは、低負荷・低速運転時に実行される電気走行モード(以下、「EVモード」と表す。)が要求された場合、第1クラッチ11が解放され、第2クラッチ12が締結される。この状態でモータ2を駆動した場合、モータ2の回転出力がAT3側に伝達される。AT3は、伝達された回転出力を選択中の変速段に変速してAT3の出力軸8から出力する。AT3の出力軸8からの駆動力は、デフ機構4を介して左右の車輪5に至り、EVモードによる走行が実行される。
【0035】
他方で、高負荷・高速運転時に実行されるハイブリッド走行モード(以下、「HVモード」と表す。)が要求された場合、第1、第2クラッチ11、12が共に締結される。この状態では、エンジン1の回転出力又は、エンジン1の回転出力及びモータ2の回転出力の双方がAT3側に伝達される。AT3は、伝達された回転出力を選択中の変速段に変速してAT3の出力軸8から出力する。出力軸8からの駆動力は、デフ機構4及び駆動軸9を介して左右の車輪5に至り、HVモードによる走行が実行される。なお、EVモード及びHVモードの走行モード切り替えタイミングは、車速と負荷とをパラメータとして設定されたマップが予め用意されており、このマップに基づき判定される。
【0036】
また、パワートレインPTは、運転者による加速解除操作、つまり運転者によりアクセルペダルの踏み戻し操作がなされた場合、燃料カット制御によってエンジン1を停止すると共に第1、第2クラッチ11、12が解放されたコースティング走行(惰性走行)が実行される。これで、エンジン1は停止状態になり、デフ機構4の作動部の状態は、下流側作動部の動力が上流側作動部に伝達される減速用接触状態になっている。このように、停止中のエンジン1が車輪5から物理的に切り離されるため、エンジン1の引き摺りに伴うエネルギー損失を回避し、燃費効率を高くしている。
【0037】
次に、図5を参照して、VCM20について説明する。図5に示すように、このパワートレインPTは、統合コントローラとしてのVCM(Vehicle Control Module)20(制御装置)によって統合制御されている。
【0038】
VCM20は、エンジン1に対して目標回転数及び目標トルクの指令信号を出力するPCM21と、モータ2に供給する電気量を制御するインバータ15に対してモータ2の目標回転数及び目標トルクに応じた指令信号を出力するTMCM22と、第1、第2クラッチ11、12のモータに対して作動指令信号を出力するTCM23とに電気的に接続され、これらの制御モジュール対して周期的に制御指令を出力している。
【0039】
また、VCM20は、エンジン回転数センサ31と、モータ回転数センサ32と、モータトルクセンサ33と、車両の走行速度を検出する速度センサ34と、アクセルペダル(図示略)の踏込量を検出するアクセルセンサ35と、インバータ15に電気を供給するバッテリ16の蓄電状態を検出する蓄電センサ36と、ブレーキセンサ(図示略)等に電気的に接続され、これらのセンサから周期的に夫々の検出信号を入力している。これにより、VCM20は、検出されたスロットルバルブ開度や車速等に応じて、運転者が要求する走行状態(運転状態)を実現するように、PCM21に対してエンジン1の目標回転数及び目標トルクを指令し、TMCM22に対してAT3の目標回転数及び目標トルクを指令している。
【0040】
更に、VCM20は、初期状態設定機能と、エンジン回転数増加機能と、第2クラッチ締結機能と、コースティング走行或いは緩減速走行から加速走行に移行するときに実行されるガタ詰め制御機能と、バウンド抑制制御機能と、制振制御機能と、を備えている。なお、コースティング走行中におけるアクセルセンサ35によるオン操作検出時、所謂運転者によるアクセルペダルの踏込操作検出時、運転者による加速要求検出と同時に第1クラッチ11の締結操作とエンジン1の再始動とを実行している。
【0041】
まず、初期状態設定機能について説明する。VCM20は、初期状態設定機能に係る初期状態設定ステップにおいて、ガタ詰め制御ステップを実行する前に第2クラッチ12を一時的且つ瞬間的に締結することにより、デフ機構4の動力伝達作動部13、14を初期状態としての減速用接触状態に設定している。これにより、動力伝達作動部13、14を随時一定の状態に精度良く初期設定することができる。なお、この初期状態設定ステップは、軸7の回転数NISがエンジン1の回転数Neよりも高いことを実行条件としている。
【0042】
次に、エンジン回転数増加機能について説明する。VCM20は、エンジン回転数増加機能に係るエンジン回転数増加ステップにおいて、エンジン1の回転数Neが軸部7aの回転数NISとクラッチ締結前に予めクラッチ前後に作り出す所定の回転数差Ndとの和を超えるまでエンジン1を最大トルクで駆動する。エンジン1の回転数Neが軸部7aの回転数NISとモータ2の回転数Nmとの和を超え且つ軸部7aの回転数NISと軸部7bの回転数NDSとの差が所定の第1判定値を超えたとき、VCM20は、第2クラッチ締結機能を実行する。第2クラッチ12は、上流側クラッチ板及び下流側クラッチ板の回転数を一致させるための摺動動作である半クラッチ期間を介することなく、モータの最大能力で締結される。
【0043】
次に、ガタ詰め制御機能について説明する。ここでは、ガタ詰め制御機能の概要を説明する。VCM20は、軸部7bの回転数NDSが増加して軸部7aの回転数NISと軸部7bの回転数NDSとの差が所定の第2判定値(<第1判定値)未満になったとき、ガタ詰め制御機能に係るガタ詰め制御ステップを実行する。VCM20は、ガタ詰め制御ステップでは、コースティング走行或いは緩減速走行から加速走行に移行する場合、減速用接触状態から加速用接触状態に移行する期間内において、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角速度ωを収束させるようにモータ2を制御する。つまり、VCM20は、動力伝達作動部13、14を減速用接触状態から加速用接触状態へと移行させるべく、この移行期間において動力伝達作動部13と動力伝達作動部14との間に存在するギヤのガタを詰めるように、モータ2のトルクを制御する。
【0044】
より具体的には、図6に示すように、ガタ詰め制御ステップは、パワープラント指令値演算機構Pと、パワープラントモデルMと、外乱オブザーバR等を含む機能ブロック図で表すことができる。パワープラントモデルMは、エンジン1と、モータ2と、AT3と、デフ機構4等のパワープラントPTから、車輪5及び駆動軸9を除いた制御対象モデルである。外乱オブザーバRは、推定エンジントルクeTeと、軸部7aの推定角速度eωISと、軸部7bの推定軸捩れ角θDS等を所定の観測値に基づいて推定可能なオブザーバ機構である。
【0045】
また、図7に示すように、上記のパワープラント指令値演算機構Pは、目標相対角度差設定手段P1と目標相対角速度設定手段P2と目標トルク設定手段P3とからなるオープンループ系制御と、エンジン角速度(回転数)Neと軸部7aの推定角速度eωISとに基づき動力伝達作動部13、14の推定相対角速度(減速用接触状態から加速用接触状態への遷移速度)を演算する状態フィードバック系制御によって構成され、最終的にエンジン目標トルクTe *とモータ目標トルクTm *の和を演算している。
【0046】
目標相対角度差設定手段P1は、相対角度差プロファイルを予め制御特性マップとして格納している。この相対角度差プロファイルは、基本的には、所定の期間において、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角度差が、減速用接触状態に対応する減速側下限から加速用接触状態に対応する加速側上限へと収束するように設定されている。例えば、これら減速側下限と加速側上限との相対角度差Δθは、予め設定された4°である。目標相対角速度設定手段P2は、上記のような相対角度差プロファイルを微分することにより目標相対角速度を演算し、目標トルク設定手段P3は、目標相対角速度を微分することにより角加速度を演算している。この角加速度は、動力源のトルク、つまりエンジン1及びモータ2の合成トルクに相当する。
【0047】
このようなガタ詰め制御ステップによれば、減速用接触状態(図2参照)から加速用接触状態(図3参照)への移行期間において、デフ機構4の動力伝達作動部13、14が衝突するときの相対角速度ωを低減することができ、動力伝達作動部13、14の衝突に伴うショックを生じることなく、第2クラッチ12の早期締結を図っている。
【0048】
次に、バウンド抑制制御機能について説明する。VCM20は、バウンド抑制制御機能に係るバウンド抑制制御ステップにおいて、ガタ詰め制御により動力伝達作動部13、14の接触状態が減速用接触状態から加速用接触状態へと移行したときに、動力伝達作動部13、14の相対角速度ωが0よりも大きいことに起因する、動力伝達作動部13、14の衝撃によるバウンド動作(具体的には動力伝達作動部13が動力伝達作動部14に勢いよく衝突して、動力伝達作動部13が動力伝達作動部14に対してはね返るような動作)を抑制すべく、ガタ詰め制御の終了タイミングにおいてモータ2から正の所定トルクを発生させる。
【0049】
次に、制振制御機能について説明する。VCM20は、バウンド抑制制御ステップ後に、制振制御機能に係る制振制御ステップにおいて、軸部7a及び駆動軸9などのねじれに起因する振動を抑制しながら車両を加速させる。VCM20は、この制振制御ステップでは、モータ2のトルクTmとエンジン1の回転数Neとを観測点とした外乱オブザーバRを用いて軸部7bの推定軸捩れ角eθDS及び駆動軸9の推定捩れトルクTSを推定し、これらの推定軸捩れ反力トルクeTDS及びeTsを考慮してエンジン1及びモータ2に対する制御指令を設定している。
【0050】
次に、図8のタイムチャートを参照して、VCM20の制御処理手順の概要について説明する。図8のタイムチャートは、1段目から順に、アクセル踏込操作、制御フェーズ、クラッチ締結トルク、エンジン回転数Ne、動力伝達作動部13、14の相対角度差Δθを夫々示している。
【0051】
まず、VCM20は、コースティング走行中に運転者から加速要求が発せられたときに(時刻t0)、停止中のエンジン1を再始動して第1フェーズを開始する。この第1フェーズでは、VCM20は、第1クラッチ11を最大トルクで締結した後、モータ2を用いてエンジン1のクランキングを行う。
【0052】
そして、VCM20は、第2フェーズである初期状態設定制御(初期状態設定ステップ)を実行する。具体的には、VCM20は、時刻t1において、解放中の第2クラッチ12を一時的且つ瞬間的に締結することにより、デフ機構4の動力伝達作動部13、14を減速用接触状態に設定する。この後、VCM20は、振動を抑制しつつ第2クラッチ12前後の回転数を合わせるようにエンジン回転数Neをフィードバック制御し、エンジン回転数Neがモータ回転数Nmと軸部7aの回転数NISの和と一致したときに(時刻t2)、第2クラッチ12を最大トルクで締結操作する。この場合、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の間に相対角度差が存在するため、第2クラッチ12を半クラッチ状態を介すことなく締結しても、クラッチ締結ショックは抑制される。
【0053】
そして、VCM20は、時刻t2以降において、第3フェーズであるガタ詰め制御(ガタ詰め制御ステップ)を実行する。VCM20は、デフ機構4の動力伝達作動部13、14が減速用接触状態から加速用接触状態に移行する期間内において、主動側作動部と従動側作動部との相対角速度を予め設定されている制御プロファイルに基づき算出し、これを収束させるようにする。図8の相対角度差Δθ(ガタ/バックラッシュ)に示すように、動力伝達作動部13、14が時刻t2から時刻t3に渡り、減速用接触状態から加速用接触状態へ早期且つ滑らかに移行するため、状態変位に伴うショックの発生が抑制される。この後、VCM20は、デフ機構4の動力伝達作動部13、14が減速用接触状態から加速用接触状態に移行完了した時刻t3において、第4フェーズである制振制御を実行する。なお、図8では、ガタ詰め制御後にバウンド抑制制御を実行しない場合のタイムチャートを例示している。
【0054】
次に、図9のフローチャートを参照して、VCM20の制御処理手順について、より具体的に説明する。
【0055】
まず、S1にて、VCM20は、各センサ31~36の検出値及び各種マップ等の情報を読み込み、S2に移行する。S2では、VCM20は、コースティング走行中に運転者による加速要求が有るか否か判定する。S2の判定の結果、コースティング走行中に運転者による加速要求が有る場合、VCM20は、エンジン1が停止されているため、エンジン1を再始動する(S3)。S3では、VCM20は、第1クラッチ11を最大トルクで締結した後、モータ2を用いてエンジン1のクランキングを行う。一方、VCM20は、S2の判定の結果、コースティング走行中に運転者による加速要求がない場合、リターンする。
【0056】
S4では、VCM20は、初期状態設定制御を実行する。VCM20は、解放中の第2クラッチ12を一時的且つ瞬間的に締結することにより、デフ機構4の動力伝達作動部13、14を減速用接触状態に設定している。S4の初期状態設定制御の後、VCM20は、エンジン1の回転数Neを増加し(S5)、S6に移行する。
【0057】
S6では、VCM20は、エンジン回転数Neがモータ回転数Nmと軸部7aの回転数NISの和を超えたか否か判定する。S6の判定の結果、エンジン回転数Neがモータ回転数Nmと軸部7aの回転数NISの和を超えた場合、VCM20は、S7に移行し、振動を抑制しつつ第2クラッチ12前後の回転数を合わせるため、エンジン回転数Neについて状態フィードバック回転数制御を実行する。一方、S6の判定の結果、エンジン回転数Neがモータ回転数Nmと軸部7aの回転数NISの和以下の場合、VCM20は、S5にリターンしてエンジン1の回転数Ne増加を継続する。
【0058】
S8では、VCM20は、エンジン回転数Neが軸部7aの回転数NISとクラッチ締結前に予めクラッチ前後に作り出す所定の回転数差Ndの和と一致したか否か判定する。S8の判定の結果、エンジン回転数Neがモータ回転数Nmと軸部7aの回転数NISの和と一致した場合、VCM20は、S9に移行し、第2クラッチ12を最大トルクで締結操作する。一方、S8の判定の結果、エンジン回転数Neがモータ回転数Nmと軸部7aの回転数NISの和と一致しない場合、VCM20は、S7にリターンして状態フィードバック回転数制御を継続する。
【0059】
S10では、VCM20は、ガタ詰め制御を実行する。具体的には、まず、VCM20は、S10の開始時におけるデフ機構4の動力伝達作動部13、14の状態(初期状態)、例えば動力伝達作動部13、14の相対角速度などを計測する。加えて、VCM20は、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の間に存在するガタを詰めるために、つまり動力伝達作動部13、14が減速用接触状態から加速用接触状態に移行する期間内においてこれらの間の相対角速度を収束させるために、事前に求められた制御プロファイルを所定のメモリから読み込む。そして、VCM20は、計測された初期状態及び読み込んだ制御プロファイルに基づき、動力伝達作動部13、14の間に存在するガタを詰めるように、つまり動力伝達作動部13、14の相対角速度を収束させるように、モータ2のトルクを制御する。この場合、VCM20は、制御プロファイルから動力源の目標トルクを求め、この目標トルクからエンジントルクを推定し、目標トルクとエンジントルクとの差分をモータ2から出力させるようにする。
【0060】
ここで、図10及び図11を参照して、本発明の実施形態によるガタ詰め制御において使用する制御プロファイルについて具体的に説明する。
【0061】
図10は、本発明の実施形態による制御プロファイルの一例を示しており、上から順に、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角度差(ガタ/バックラッシュ)、動力伝達作動部13、14の相対角速度、動力伝達作動部13、14の角加速度(動力源のトルク、つまりエンジン1及びモータ2の合成トルクに相当する)、を示している。相対角度差において、「下限(減速側)」は減速用接触状態に相当し、「上限(加速側)」は加速用接触状態に相当する。図10に示す制御プロファイルは、時刻t11においてガタ詰め制御を開始し、時刻t12においてガタ詰め制御を終了するように規定されている。時刻t11から時刻t12までの時間は、ガタ詰め時間に相当する。例えば、このガタ詰め時間は0.1秒程度である。
【0062】
具体的には、制御プロファイルは、ガタ詰め制御の開始時に設定されるべき初期状態と、ガタ詰め制御の終了時に設定されるべき終端状態とを拘束条件として用いて、終端状態制御に基づき事前に求められるものである。この終端状態制御は、システムの状態を初期状態から所望の終端状態まで有限ステップで移行させるようにするフィードフォワード制御である。また、終端状態制御は、初期状態及び終端状態を規定した上での最適制御であり、一般的に、入力エネルギーを最小にすることを最適化対象とすることが多い。本実施形態では、初期状態をガタ詰め制御の開始時の状態とし、終端状態をガタ詰め制御の終了時の状態とした上で、モータ2のエネルギーを最小にすることを最適化対象としている。基本的には、終端状態制御は、巨大な行列演算を要するため、必要となる計算リソースが大きく、量産用コントローラでのリアルタイム演算が困難である。そのため、本実施形態では、終端状態制御による最適な制御プロファイルをオフラインで生成し、この制御プロファイルを車両内の所定のメモリに事前に記憶させておき、車両の走行中においては、メモリに記憶された制御プロファイルを読み出してフィードフォワード制御を行うこととした。
【0063】
図10に示すように、まず、制御プロファイルに関する初期状態(換言すると時刻t11において適用する条件)は、(1)動力伝達作動部13、14が減速用接触状態にあること、つまり動力伝達作動部13、14のガタが0であること(矢印A11参照)、及び、(2)動力伝達作動部14に対する動力伝達作動部14の相対角速度が0よりも大きい所定速度であること(矢印A12参照)、によって規定される。ここで、上述したようにオフラインで生成した制御プロファイルに基づきフィードフォワード制御を行う場合には、制御対象を前提とする初期状態に設定する必要がある、特に初期状態の安定化が必要となる。そのため、本実施形態では、ガタ詰め制御の前段階(具体的にはエンジン回転数を所定回転数に設定するための段階)において、動力伝達作動部13、14の相対角速度を所定速度に設定するようにした。加えて、本実施形態では、ガタ詰め時間をできる限り短縮するため、及び、たとえガタ詰め制御がずれたとしても負の加速度が発生しないようにするために、動力伝達作動部13、14の相対角速度の初期値(ガタ詰め制御の開始時の相対角速度)を0よりも大きい値(正値)に設定するようにした。このような観点より、初期状態として相対角速度に適用する実際の所定速度が定められる。
【0064】
時刻t11において上記の初期状態が適用されるが、この時刻t11以降の制御プロファイルでは、まず、相対加速度がほぼ一定となっており、また、角加速度がほぼ0になっている。この後、制御プロファイルでは、相対加速度が低下し(矢印A13参照)、角加速度が負の値になっている(矢印A14参照)、換言する動力源のトルクが負の値になっている。こうすることで、動力伝達作動部13、14の相対角速度を適切に減速させて、動力伝達作動部13、14を緩やかに加速用接触状態へと移行させるようにしている。ただし、初期状態において角加速度をほぼ0にするよう制御プロファイルを規定することに限定はされず、初期状態の後に相対加速度をほぼ一定にするよう制御プロファイルを規定することに限定はされない。
【0065】
次いで、制御プロファイルに関する終端状態(換言すると時刻t12において適用する条件)は、(1)動力伝達作動部13、14が加速用接触状態にあること、つまり動力伝達作動部13、14のガタが0であること(矢印A15参照)、(2)動力伝達作動部13、14の相対角速度が0であること(矢印A16参照)、及び、(3)角加速度が0であること(矢印A17参照)、つまり動力源のトルクが0であること、によって規定される。こうすることで、動力伝達作動部13、14のガタが詰まったときの衝撃(ショック)、換言すると動力伝達作動部13が動力伝達作動部14に勢いよく衝突することを抑制するようにしている。
【0066】
次に、図11を参照して、制御プロファイルを作成するための終端状態制御の評価関数について説明する。図11において、グラフG1は、ガタ詰め時間(横軸)とロバスト性(縦軸)との関係を示し、グラフG2は、ガタ詰め時間(横軸)とモータ2の必要エネルギー(縦軸)との関係を示している。
【0067】
まず、終端状態制御では、終端状態を満足する解が無数に存在するため、本実施形態では、終端状態を満足する解の中で入力エネルギー(具体的にはモータ2のエネルギー)を最小化するように終端状態制御を行うこととした。他方で、システムとして最適化したいこととしては、終端状態を満足する解の中でガタ詰め時間が最小となる解を選択することである。しかしながら、終端状態制御は固定の行列次数しか扱えない。以上より、本実施形態では、事前に時間と必要エネルギーとロバスト性との関係を評価した上で(図11参照)、目標のガタ詰め時間を決めるようにした。
【0068】
すなわち、ガタ詰め時間を最小にすることを優先したいが、ガタ詰め時間のみから制御プロファイルを決めるのが困難であるので、本実施形態では、目標のガタ詰め時間を決めて(例えば0.1秒)、モータ2のエネルギー最小を条件として適用して、制御プロファイルを求めるようにした。具体的には、複数設定したガタ詰め時間のそれぞれについて、エネルギー最小の条件から制御プロファイルを求めていくと共に(グラフG2参照)、ガタ詰め時間とロバスト性との関係を求めると(グラフG1参照)、ガタ詰め時間を短くしていくとロバスト性が急激に悪化するガタ詰め時間があるので、この時間の手前の時間T1を制御プロファイルに適用するガタ詰め時間として採用した。つまり、モータ2の必要エネルギーを低減しつつ、制御のロバスト性が確保されるようなガタ詰め時間の中において最小の時間T1を、制御プロファイルのガタ詰め時間として適用することとした。
【0069】
図9に戻ると、S10の後のS11では、VCM20は、デフ機構4の動力伝達作動部13、14が減速用接触状態から加速用接触状態に移行完了したか否か判定する。S11の判定の結果、動力伝達作動部13、14が減速用接触状態から加速用接触状態に移行完了した場合、VCM20は、S12に移行し、動力伝達作動部13、14の衝撃によるバウンド動作を抑制するためのバウンド抑制制御を実行する。一方、S11の判定の結果、動力伝達作動部13、14が減速用接触状態から加速用接触状態に移行完了していない場合、VCM20は、S10にリターンしてガタ詰め制御を継続する。
【0070】
ここで、図12を参照して、本発明の実施形態によるバウンド抑制制御について具体的に説明する。図12も、上から順に、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角度差(ガタ/バックラッシュ)、動力伝達作動部13、14の相対角速度、動力伝達作動部13、14の角加速度、を示している。図12に示すように、時刻t21から時刻t22まで、ガタ詰め制御が行われ、時刻t22以降でバウンド抑制制御が行われる。この図12は、図10のように、制御プロファイルに対応する相対角度差、相対角速度及び角加速度を示しているのではなく、制御プロファイルを用いてガタ詰め制御を行ったときの実際の相対角度差、相対角速度及び角加速度の変化の一例を示している。また、図12では、時刻t22以降において実線と破線のグラフを示しているが、実線は、本実施形態によるバウンド抑制制御を行った場合のグラフを示しており、破線は、バウンド抑制制御を行わなかった場合(比較例)のグラフを示している。
【0071】
上述した制御プロファイルを用いてガタ詰め制御を行っても、ばらつき(例えばエンジントルクの応答遅れやクラッチの応答遅れなど)により、ガタ詰め完了時において(時刻t22)、デフ機構4の動力伝達作動部13、14の相対角速度が0よりも大きくなることがある(矢印A21参照)。このときには、動力伝達作動部13が動力伝達作動部14に勢いよく衝突して、動力伝達作動部13が動力伝達作動部14に対してはね返るような動作(バウンド動作)が発生する場合がある。
【0072】
したがって、本実施形態では、VCM20は、このようなバウンド動作を抑制すべく、ガタ詰め制御の終了タイミングにおいて、典型的にはガタ詰めが完了した瞬間に、モータ2から正の所定トルクを発生させるバウンド抑制制御を行う(矢印A22参照)。具体的には、ガタ詰め制御終了時にはトルクはほぼ0であるので、VCM20は、このガタ詰め制御が終了した瞬間に、モータ2から正の所定トルクを一気に(ステップ状に)立ち上げる制御を行う。
【0073】
ガタ詰め制御後に制振制御が行われるが、これらの間に行われるバウンド抑制制御は、ガタ詰め制御から制振制御へ切り替えるときの初期値補償をモータ2から余分に付与する制御に相当する。つまり、VCM20は、バウンド抑制制御により所定トルク分だけモータ2のトルクをかさ上げした状態で、制振制御によりモータ2からトルクを発生させるようにする。なお、バウンド抑制制御において適用する所定トルクは、上記したバウンド動作を抑制するためにモータ2から発生させるべきトルクであり、事前にシミュレーションや実験などを行うことで求められる。例えば、この所定トルクには固定値が適用される。
【0074】
以上の本実施形態によるバウンド抑制制御によれば、比較例と比較すると、ガタ詰め制御後の動力伝達作動部13、14のバウンド動作を適切に抑制することができる(矢印A23参照)。具体的には、本実施形態によれば、ガタ詰め完了時にモータ2から正の所定トルクを発生させることで、つまり動力伝達作動部13に正のトルクを付与することで、動力伝達作動部14に対する動力伝達作動部13の衝突によるはね返りを抑制し、動力伝達作動部13が動力伝達作動部14に接触した状態(加速用接触状態)をできるだけ維持させられるようになる。
【0075】
図9に戻ると、S12の後のS13では、VCM20は、制振制御を実行する。そして、S14では、VCM20は、運転者による加速要求が終了したか否か判定する。S14の判定の結果、運転者による加速要求が終了した場合、VCM20は、制振制御を終了し(S15)、リターンする。一方、S14の判定の結果、運転者による加速要求が終了していない場合、VCM20は、S13にリターンして制振制御を継続する。
【0076】
次に、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の制御装置の作用効果について説明する。
【0077】
本実施形態では、車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、解放状態にある第2クラッチ12を締結した後に、所定の初期状態及び終端状態を拘束条件として用いて終端状態制御により事前に求められた制御プロファイルに基づき、デフ機構4の動力伝達作動部13、14のガタ詰め制御を行う。これにより、車両が減速状態から加速状態へと変化するときに、第2クラッチ12の締結に伴うショックを低減しつつ、デフ機構4のガタ詰め時間を適切に短縮することができる。
【0078】
特に、本実施形態では、動力伝達作動部13、14の相対角速度を0よりも大きい所定速度に設定した状態においてガタ詰め制御を開始する。換言すると、制御プロファイルのための終端状態制御において、動力伝達作動部13、14の相対角速度が0よりも大きい所定速度である状態を初期状態として適用する。これにより、ガタ詰め時間を効果的に短縮することができると共に、たとえガタ詰め制御がずれたとしても、負の加速度が発生することを適切に抑制することができる。また、終端状態制御に関する初期状態を適切に安定化することができる。
【0079】
また、本実施形態では、ガタ詰め制御により動力伝達作動部13、14の接触状態が減速用接触状態から加速用接触状態へと移行したときに、モータ2から正の所定トルクを発生させるバウンド抑制制御を行う。これにより、動力伝達作動部14に対する動力伝達作動部13の相対角速度が0よりも大きいことに起因する、動力伝達作動部13、14の衝撃によるバウンド動作を適切に抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態では、バウンド抑制制御により所定トルク分だけモータ2のトルクをかさ上げした状態で、制振制御によりモータ2からトルクを発生させるので、バウンド抑制制御の後の制振制御によって、ドライブシャフト(駆動軸9)などのねじれに起因する振動の抑制効果を適切に確保することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 エンジン
2 モータ
3 オートマチックトランスミッション(AT)
4 デファレンシャルギヤ機構(デフ機構)
5 車輪
9 駆動軸(ドライブシャフト)
11 第1クラッチ
12 第2クラッチ
13、14 動力伝達作動部
20 VCM(制御装置)
PT パワートレイン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12