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特許7036359地図データ構造、送信装置、及び、運転支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】地図データ構造、送信装置、及び、運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220308BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220308BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20220308BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220308BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 D
G01C21/26 A
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017120501
(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公開番号】P2019008350
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】321011767
【氏名又は名称】ジオテクノロジーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】中尾 和浩
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
【審査官】田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058343(JP,A)
【文献】特開2013-045397(JP,A)
【文献】特開2015-009599(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002276(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0295604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶する記憶部と、
前記地図データを、車両に送信する送信部と、
を備え
前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む送信装置。
【請求項2】
地図データを取得する取得部と、
走行中の道路における交差点を検出する検出部と、
前記地図データを参照して、前記交差点において車両が停止すべきか否かを判定する判定部と、
判定結果を出力する出力部と、
を備え
前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む運転支援装置。
【請求項3】
前記交点の座標は、前記交差点の範囲を示す多角形の領域の頂点の座標である請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
送信装置により実行される送信方法であって、
地図データを記憶した記憶部から前記地図データを取得する取得工程と、
取得した前記地図データを、車両に送信する送信工程と、
を備え、
前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む送信方法。
【請求項5】
運転支援装置により実行される運転支援方法であって、
地図データを取得する取得工程と、
走行中の道路における交差点を検出する検出工程と、
前記地図データを参照して、前記交差点において車両が停止すべきか否かを判定する判定工程と、
判定結果を出力する出力工程と、
を備え、
前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む運転支援方法。
【請求項6】
コンピュータにより実行されるプログラムであって、
地図データを記憶した記憶部から前記地図データを取得する取得工程と、
取得した前記地図データを、車両に送信する送信工程と、
を前記コンピュータに実行させ、
前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含むプログラム。
【請求項7】
コンピュータにより実行されるプログラムであって、
地図データを取得する取得工程と、
走行中の道路における交差点を検出する検出工程と、
前記地図データを参照して、前記交差点において車両が停止すべきか否かを判定する判定工程と、
判定結果を出力する出力工程と、
を前記コンピュータに実行させ、
前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、
前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含むプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援のために使用される地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転支援や自動運転に適した地図データの開発が進んでいる。特許文献1では、車線情報と信号機情報とを対応付けて記憶し、信号機に応じて運転支援を行う手法が記載されている。さらに特許文献1では、信号機と対応付けられた停止線の位置を示す停止線情報を記憶し、停止線の位置で車両が停止するように運転支援を行うことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-40644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、交差点の位置や範囲を特定し、運転支援などに利用することについては特に考慮されていない。
【0005】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、状況に応じて適切に交差点での停止要否の判定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、送信装置であって、地図データを記憶する記憶部と、前記地図データを、車両に送信する送信部と、を備え、前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む
請求項に記載の発明は、運転支援装置であって、地図データを取得する取得部と、走行中の道路における交差点を検出する検出部と、前記地図データを参照して、前記交差点において車両が停止すべきか否かを判定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を備え、前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む
請求項に記載の発明は、送信装置により実行される送信方法であって、地図データを記憶した記憶部から前記地図データを取得する取得工程と、取得した前記地図データを、車両に送信する送信工程と、を備え、前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む。
請求項に記載の発明は、運転支援装置により実行される運転支援方法であって、地図データを取得する取得工程と、走行中の道路における交差点を検出する検出工程と、前記地図データを参照して、前記交差点において車両が停止すべきか否かを判定する判定工程と、判定結果を出力する出力工程と、を備え、前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む。
請求項に記載の発明は、コンピュータにより実行されるプログラムであって、地図データを記憶した記憶部から前記地図データを取得する取得工程と、取得した前記地図データを、車両に送信する送信工程と、を前記コンピュータに実行させ、前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む。
請求項に記載の発明は、コンピュータにより実行されるプログラムであって、地図データを取得する取得工程と、走行中の道路における交差点を検出する検出工程と、前記地図データを参照して、前記交差点において車両が停止すべきか否かを判定する判定工程と、判定結果を出力する出力工程と、を前記コンピュータに実行させ、前記地図データは、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されており、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分の交点の座標を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例に係る運転支援システムの構成を示す。
図2】道路及び車線の例を示す。
図3】道路リンクデータ及び車線リンクデータの例を示す。
図4】停止線データ及び交差点データの例を示す。
図5】交差点の例を示す。
図6】交差点データの他の例を示す。
図7】交差点データの他の例を示す。
図8】交差点の例を示す。
図9】運転支援装置の構成を示す。
図10】運転支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好適な実施形態では、地図を示す地図データ構造であって、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されている。
【0009】
上記の地図データ構造は、交差点の識別情報と、当該交差点の位置情報とを対応付けた交差点データを含み、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線の位置座標により規定されている。よって、交差点データを参照することにより、交差点に存在する停止線において車両を停止させる必要があるか否かを判定することができる。
【0010】
上記の地図データ構造の一態様では、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する全ての停止線の位置情報を含む。この態様では、交差点データから直接的に停止線の位置情報を取得することができる。
【0011】
上記の地図データ構造の他の一態様では、前記交差点の位置情報は、当該交差点に存在する停止線を延長した線分により規定される。この場合の好適な例では、前記交差点の位置情報は、前記線分の交点の座標を含む。
【0012】
上記の地図データ構造の他の一態様では、前記交差点データは、当該交差点における信号機の有無を示す情報を含む。この態様では、交差点に存在する信号機の状態に応じて、交差点での車両を停止させるか否かを判定することができる。
【0013】
本発明の他の好適な実施形態では、送信装置は、上記の地図データ構造を有する地図データを記憶する記憶部と、前記地図データを、車両に送信する送信部と、を備える。この送信装置により、上記の地図データを車両に送信して利用させることができる。
【0014】
本発明の他の好適な実施形態では、運転支援装置は、上記の地図データ構造を有する地図データを取得する取得部と、走行中の道路における交差点を検出する検出部と、前記交差点データを参照して、前記交差点において車両が停止すべきか否かを判定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を備える。これにより、交差点において、適切に車両の運転支援を行うことができる。
【実施例
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[システム構成]
図1は、本発明を適用した運転支援システムの構成を示す。運転支援システムは、サーバ10と、車両3に搭載された運転支援装置20とを含む。サーバ10と運転支援装置20とは無線通信可能に構成されている。なお、図1においては説明の便宜上1つの車両3のみが示されているが、実際には多数の車両3がサーバ10と通信する。
【0016】
サーバ10は、地図データを記憶しており、運転支援装置20からの要求により車両3の現在位置周辺の地図データを運転支援装置20へ提供する。本実施例では、車両3の走行車線を考慮した運転支援が行われるため、地図データとしては、道路毎の情報を含む道路リンクデータに加えて、車線毎の情報を含む車線リンクデータが用意されている。具体的に、サーバ10は、道路リンクデータベース(以下、データベースを「DB」と記す)11と、車線リンクDB12と、停止線DB13と、交差点DB14とを有する。道路リンクDB11は道路リンクデータを記憶しており、車線リンクDB12は車線リンクデータを記憶しており、停止線DB13は停止線データを記憶し、交差点DB14は交差点データを記憶している。
【0017】
[地図データ]
(道路リンクデータと車線リンクデータ)
まず、道路リンクデータと車線リンクデータについて説明する。いま、図2(A)に示すように、片側2車線の「道路1」があるとする。東行きの2車線を「道路1A」と呼び、西行きの2車線を「道路1B」と呼ぶことにする。東行きの道路1Aは「車線1A-1」と「車線1A-2」を有し、西行きの道路1Bは「車線1B-1」と「車線1B-2」を有する。
【0018】
この場合、道路1に関するデータは、図2(B)に示すように、道路リンクデータとして、道路1Aに対応する「道路リンクRL1A」と、道路1Bに対応する「道路リンクRL1B」が用意される。これに加えて、車線リンクデータとして、車線1A-1に対応する「車線リンクLL1A-1」と、車線1A-2に対応する「車線リンクLL1A-2」と、車線1B-1に対応する「車線リンクLL1B-1」と、車線1B-2に対応する「車線リンクLL1B-2」とが用意される。なお、図2の例では、各道路リンク及び車線リンクの両端であるノードは、「ノードN1」と「ノードN2」であるものとする。
【0019】
図3(A)は、図2の場合における道路リンクデータの例を示す。図3(A)に示すように、道路リンクデータは、道路リンクIDと、始点ノードと、終点ノードと、対応する車線リンクと、属性とを含む。
【0020】
「道路リンクID」は、各道路リンクに一意に付与された識別情報であり、「始点ノード」はその道路リンクの始点となるノードのIDであり、「終点ノード」はその道路リンクの終点となるノードのIDである。「対応する車線リンク」は、図2(B)に示すような、その道路リンクに対応する車線リンクのIDである。「属性」は、その道路リンクに関する各種の属性情報であり、例えば車線数、道路幅などを含む。
【0021】
一方、図3(B)は、図2の場合における車線リンクデータの例を示す。図3(B)に示すように、車線リンクデータは、車線リンクIDと、始点ノードと、終点ノードと、対応する道路リンクと、属性とを含む。
【0022】
「車線リンクID」は、各車線リンクに一意に付与された識別情報であり、「始点ノード」はその車線リンクの始点となるノードのIDであり、「終点ノード」はその車線リンクの終点となるノードのIDである。「対応する道路リンク」は、図2(B)に示すような、その車線リンクに対応する道路リンクのIDである。「属性」は、その道路リンクに関する各種の属性情報であり、例えば、車線幅、車線数、交差点内レーンなどの情報を含む。
【0023】
なお、図3に示す道路リンクデータ及び車線リンクデータの内容は一例であり、両者の対応関係が明確になっていれば、共通する情報(例えば始点ノード、終点ノードなど)はいずれか一方のデータのみに含めても良い。
【0024】
(停止線データ)
次に、停止線データについて説明する。停止線データは、車線毎、かつ、道路に設けられた停止線毎に用意され、その停止線においてどのような運転支援を行うべきかを決定する際に使用されるデータである。図4(A)は、停止線データの一例を示す。停止線データは、停止線IDと、位置情報と、対応する車線リンクとを含む。
【0025】
「停止線ID」は、各停止線に一意に付与された識別情報である。「位置情報」は、その停止線の地理上の位置を示し、具体的には緯度及び経度により示される。緯度、経度に加えて、高度の情報を含んでいても良い。「対応する車線リンク」は、その停止線が設けられている車線の車線リンクIDである。停止線データは、車線毎に設けられるため、基本的に1つの停止線に対応する車線リンクは1つとなる。
【0026】
(交差点データ)
次に、交差点データについて説明する。交差点データは、交差点毎に用意され、その交差点の位置や範囲を規定するものである。なお、交差点データは、信号のある交差点のみならず、信号の無い交差点についても用意される。
【0027】
図5は、交差点の一例を示す。この交差点の交差点IDを「IS1」とする。この交差点では、南北方向に延びる片側2車線の道路と、東西方向に延びる片側1車線の道路とが交わっている。また、この交差点には、4つの信号機SIG10~SIG13が設置されている。各方向に延びる道路には停止線が設けられており、各停止線には車線毎に停止線IDが付与され、図4(A)に示すように、対応する停止線データが用意されている。具体的に、北行きの2車線の道路には停止線ST1及びST2の停止線データが用意され、南行の2車線の道路には停止線ST4及びST5の停止線データが用意されている。また、東行きの1車線の道路には停止線ST6の停止線データが用意され、西行きの1車線の道路には停止線ST3の停止線データが用意されている。なお、各停止線データが示す位置は、図5における各停止線ID(ST1~ST6)が示す黒点の位置、即ち、各車線における停止線の中央位置となっている。
【0028】
交差点の範囲は、各道路に設けられた停止線の位置により規定される。即ち、図5に示すように、各道路に設けられた停止線ST1~ST6を接続してなる破線の矩形領域30がこの交差点の範囲を示している。このように、交差点の範囲は、その交差点に含まれる停止線の位置により規定される。詳しくは、交差点の範囲は、各停止線を延長してなる4本の線分により規定される矩形の領域となる。
【0029】
図4(B)は、交差点データの第1の例を示す。この例では、交差点データは、交差点IDと、位置情報と、信号機IDとを含む。「交差点ID」は、各交差点に一意に付与された識別情報である。「位置情報」は、その交差点の地理上の位置を示し、具体的には緯度及び経度により示される。ここで、交差点の位置は、その交差点に属する停止線の位置により規定される。この例では、交差点データ中の「位置情報」としては、交差点IS1に含まれる6個の停止線データ(停止線ST1~ST6)の位置情報が使用されている。因みに、図4(B)に示す交差点IS2の交差点は、片側1車線の道路が交わる交差点であり、「位置情報」としては、各方向に延びる道路上に設けられた停止線の停止線データの位置情報が含まれている。
【0030】
また、交差点データには、信号機IDが含まれる。図5に示すように、交差点IS1には信号機SIG10~13が設けられているので、交差点IS1の交差点データには、信号機IDとしてSIG10~13が含まれている。なお、図4(B)に示す交差点IS2は信号機の無い交差点である。
【0031】
以上のように、交差点データにおける位置情報を、その交差点に属する停止線の位置情報を用いて規定することにより、交差点の位置及び範囲を明確に表すことができる。また、交差点に進入する車両の運転支援を行うときには、交差点データを参照すれば、停止線の位置、即ち、車両が停止すべき位置が直ちにわかるという利点がある。
【0032】
図6は、交差点データの第2の例を示す。この例では、「位置情報」として、位置座標の代わりに、対応する停止線の停止線IDを含んでいる。これにより、交差点IDと、その交差点に属する停止線の停止線IDとの対応関係が明確となる。運転支援処理などにおいては、位置情報に含まれる停止線IDに基づいて図4(A)に例示する停止線データを参照することにより、交差点の位置及び範囲を規定する停止線の位置座標を取得することができる。なお、信号機IDについては第1の例と同様である。
【0033】
以上のように、交差点データにおける位置情報を、その交差点に属する停止線の停止線IDを用いて規定することにより、交差点とその交差点に属する停止線との関係を明確に表すことができる。
【0034】
図7は、交差点データの第3の例を示す。この例では、「位置情報」として、交差点の範囲を示す矩形の領域30の頂点座標を用いる。この領域30は、前述のように、交差点IS1に含まれる停止線ST1~ST6の位置を結んでなる矩形の領域である。図8に示すように、交差点IS1の範囲を規定する領域30の4つの頂点をC1~C4とすると、交差点データの第3の例では、これらの頂点C1~C4の座標が位置情報として使用される。なお、三叉路や五叉路以上の多叉路においては、交差点の範囲を示す領域が三角形や多角形となるが、その場合でも位置情報にはそれらの頂点の座標を使用すればよい。なお、信号機IDについては第1の例と同様である。
【0035】
[運転支援装置]
次に、運転支援装置20について詳しく説明する。
(構成)
図9は、運転支援装置20の構成を示す。運転支援装置20は、車両3に搭載される。なお、運転支援装置20は、車両3に内蔵される他、ナビゲーション装置などとして車両に搭載されてもよい。
【0036】
運転支援装置20は、通信部21と、測位部22と、カメラ23と、地図DB24と、記憶部25と、制御部26と、表示部27と、音声出力部28とを備える。通信部21は、無線通信によりサーバ10と通信する。通信部21は、主としてサーバ10から地図データをダウンロードするために使用される。測位部22は、GPS受信機、自立型測位装置などを含み、車両3の現在位置を測位する。カメラ23は、車両3の前部又は車室内のフロントガラス付近などに取り付けられ、車両3の前方を撮影する。
【0037】
図DB24は、通信部21を通じてサーバ10からダウンロードされた地図データを記憶する。記憶部25は、RAM、ROMなどを含み、運転支援装置20を動作させるためのプログラムを記憶している。また、記憶部25は、各種の処理を実行する際の作業メモリを提供する。
【0038】
制御部26は、運転支援装置20の全体を制御する。具体的に、制御部26は、地図データをサーバ10からダウンロードする地図データ取得処理、交差点に関する運転支援処理などを実行する。運転支援処理により運転者に提供される情報は、表示部27に表示されたり、音声出力部28により音声メッセージとして出力される。
【0039】
(地図データ取得処理)
まず、地図データ取得処理について説明する。制御部26は、測位部22から車両3の現在位置を受け取り、通信部21を通じて、その周辺の所定範囲における地図データをサーバ10へ要求する。そして、制御部26は、サーバ10から受信した地図データを地図DB24に記憶する。こうして、車両3の現在位置から所定範囲内の地図データが地図DB24に記憶された状態となる。なお、地図データは、前述のように道路リンクデータ、車線リンクデータ、停止線データ、及び、交差点データを含む。
【0040】
(運転支援処理)
次に、地図データを利用した、交差点に関する運転支援処理について説明する。図10は、運転支援処理のフローチャートである。この処理は、主として運転支援装置20の制御部26により実行される。なお、この処理は、車両3の走行中に所定時間毎に繰り返し実行される。
【0041】
まず、制御部26は、測位部22から取得した車両の現在位置と、カメラ23から取得した撮影画像とに基づいて、車両3の前方に交差点を検出したか否かを判定する(ステップS10)。カメラ23の車両3に対する取付位置、向きなどにより、カメラ23による撮影画像が車両の前方のどの程度の距離(何m先)の位置を撮影しているか、即ち、撮影画像の位置と車両位置との距離差は予めわかっている。よって、まず制御部26は、カメラ23の撮影画像の画像解析により交差点を検出する。例えば、制御部26は、撮影画像中の信号機、信号機に付属している交差点名の看板、横断歩道などを認識することにより、交差点を検出する。そして、制御部26は、交差点が検出されたときの車両の現在位置と、撮影画像の位置と車両位置との距離差とに基づいて、交差点の位置座標を算出する。こうして、制御部26は、カメラ23で検出した交差点の位置座標を取得する。
【0042】
次に、制御部26は、地図DB24内の交差点データを参照し、ステップS10で検出した交差点の位置座標に基づいて、その交差点の交差点IDを取得する(ステップS11)。具体的には、制御部26は、取得した交差点の位置座標と一致する位置情報を有する交差点を交差点データから探して、その交差点IDを取得する。
【0043】
次に、制御部26は、交差点データを参照して、その交差点の範囲を決定し、車両3の前方に存在する停止線の位置を決定する(ステップS12)。具体的には、制御部26は、交差点データの位置情報に基づいて、現在車両が走行している車線に対応する停止線の位置を決定する。前述のように、交差点データ中の位置情報は、その交差点に属する停止線データにより規定されているので、制御部26は、交差点データ中の位置情報に基づいて停止線の位置を特定する。
【0044】
次に、制御部26は、撮影画像の画像解析により交差点の状況を認識し、その結果に基づいて、車両3の停止要否を判定する(ステップS13)。例えば、制御部26は、交差点データに信号機IDが含まれている場合には、撮影画像に基づいて車両3が走行している車線に対応する信号機の色を検出し、信号機が赤又は黄色の場合は車両3の停止が必要と判定し、信号機が青の場合には車両3の停止は不要と判定する。また、制御部26は、撮影画像に基づいて車両3が走行している車線に存在する横断歩道周辺の物体(人、自転車、その他の障害物)の有無を検出し、横断歩道周辺に物体がある場合には車両3の停止が必要と判定し、物体が無い場合には車両3の停止は不要と判定する。
【0045】
車両の停止が不要と判定された場合(ステップS14:No)、処理は終了する。一方、車両の停止が必要と判定された場合(ステップS14:Yes)、制御部26は、表示部27への表示や音声出力部28による音声メッセージの出力により、運転者に停止を指示する(ステップS15)。そして、処理は終了する。
【0046】
以上のように、本実施例では、交差点データを参照して交差点に存在する停止線の位置を認識するとともに、その交差点の現在の状況に応じて、交差点で車両を停止させる必要の有無を判定し、運転者に提示することができる。
【0047】
[変形例]
上記の実施例では、交差点データを含む地図データを車両に搭載された運転支援装置により利用しているが、その代わりに、自動運転車両による自動運転に利用してもよい。自動運転に利用する際には、図10の運転支援処理のフローチャートにおける車両の停止が必要かどうかの判定(ステップS14)において、車両の停止が不要と判定された場合(ステップS14:No)、運転支援装置は、例えば自動運転車両の自動運転を制御する制御部に対して、車両の停止不要を示す信号又は車両の走行を示す信号を出力する。一方、車両の停止が必要と判定された場合(ステップS14:Yes)、運転支援装置は、例えば自動運転車両の自動運転を制御する制御部に対して、車両の停止を示す信号を出力する。
【符号の説明】
【0048】
3 車両
10 サーバ
11 道路リンクDB
12 車線リンクDB
13 停止線DB
14 交差点DB
20 運転支援装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10