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  • 特許-希少糖を配合する鶏用餌 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】希少糖を配合する鶏用餌
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/75 20160101AFI20220308BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20220308BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20220308BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220308BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220308BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A23K50/75
A23K20/163
A61K31/7004
A61P3/06
A61P15/00 171
A61P3/00 171
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017170203
(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公開番号】P2019041710
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592167411
【氏名又は名称】香川県
(73)【特許権者】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(73)【特許権者】
【識別番号】506388060
【氏名又は名称】株式会社希少糖生産技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】川田 建二
(72)【発明者】
【氏名】萱原 由美
(72)【発明者】
【氏名】秋光 和也
(72)【発明者】
【氏名】何森 健
(72)【発明者】
【氏名】高岡 晴造
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/175119(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/010975(WO,A1)
【文献】特開平06-065081(JP,A)
【文献】特開平06-276959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 1/00-50/90
A61P 3/00- 3/06、15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D-プシコースを含む希少糖を配合することを特徴とする、卵巣重量の増大および産卵後期鶏の産卵率上昇のための採卵鶏餌。
【請求項2】
上記希少糖を餌の0.3重量%以上配合する請求項1に記載の採卵鶏餌。
【請求項3】
上記希少糖が、ぶどう糖、果糖および/または異性化糖をアルカリ異性化することによりD-プシコースを含ませた希少糖含有シロップに含まれる希少糖である請求項1または2に記載の採卵鶏餌。
【請求項4】
上記希少糖含有シロップに含まれる希少糖が、希少糖含有シロップを粉末化した希少糖含有粉末に含まれる希少糖である、請求項3に記載の採卵鶏餌。
【請求項5】
上記希少糖含有粉末が、希少糖含有シロップを粉末化基剤と撹拌混合した後、乾燥、粉砕された希少糖含有粉末である、請求項4に記載の採卵鶏餌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏、特に採卵鶏に給餌するための餌に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏は一般に、卵用種、肉用種、卵肉兼用種、愛玩用種の4種類の用途に大別されるといわれる。
肉用種の鶏には、「ブロイラー」と「地鶏」と呼ばれる二つのタイプがあり、一方、卵用種の鶏は、卵生産目的の採卵専門鶏として改良された鶏(卵用鶏、採卵鶏)であり、「レイヤー」と呼ばれる。
【0003】
採卵鶏の一生(飼育工程)を簡単に示すと、以下のとおりとなる。
1.孵化(ふか):種鶏からの卵は21日目で孵化する。雌の雛が選別される。
2.育雛(いくすう):1日目~50日目位まで飼養。中雛になる。
3.育成(いくせい):50日目~150日目位まで飼養。150日頃には体
重は1700g位になり、産卵を開始する。
4.産卵(採卵農場):150日目~500日前後。成鶏(親鳥ともいう)になる。210日頃の体重は1750g位で、産卵はピークになる。
5.強制換羽:500日頃には産む卵1個が大きくなりすぎるので、リセット
するために、冬を感じさせ、餌を与えないなどして強制換羽する。
6.産卵(採卵農場2):強制換羽から250日位まで採卵する。
7.廃鶏(食肉処理場):通常「ブロイラー」とは異なる処理場で処理される。
50年位前までは、鶏の肉用、卵用の区別ははっきりしていなかったが、現在では、肉用種と卵用種は区別して飼育、利用されており、採卵鶏は、鶏肉としてはあまり流通していない。
【0004】
鶏の身体状態を改善するための餌としては、アミノ酸としてグリシンのみを添加して暑熱ストレス緩和効果を与えるもの(特許文献1)や、ゲージ移動、強制換羽などによるストレスを緩和するためのラクトビオン酸またはその塩を含む産卵鶏用の飼料(特許文献2)などが報告されている。
【0005】
一方、希少糖のうちD-プシコースの機能に関して、特許文献3には、D-プシコースを有効成分とする、血糖降下剤、抗糖尿病剤、ケモカインMCP-1の分泌抑制剤、抗動脈硬化症剤、マイクログリアの遊走抑制剤、および抗虚血性脳神経系疾患剤からなる群から選ばれる生理活性化剤が開示され、特許文献4には、食物により摂取したD-グルコースによる急激な血糖値上昇を抑制し、かつ、一日を通じて血漿グルコース濃度の異常な上昇を抑制する必要のある哺乳動物に対して定時に少なくとも7週間継続して摂取させる、D-プシコースまたはその誘導体を有効成分とする血漿グルコース濃度の日内異常上昇抑制用組成物が開示されている。
また、特許文献5には、D―プシコース、または、D―プシコースおよびD-アロースを有効成分とする黒質のドーパミン作動性神経細胞の酸化傷害抑制剤が開示されており、さらに、実験動物への給餌試験においては、希少糖であるD-プシコースを含む異性化糖餌をラットに与えることにより、腎周囲脂肪と脂肪組織重量が減少したとの報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3827139号公報
【文献】特開2015-2748号公報
【文献】特許第4609845号公報
【文献】特許第5171249号公報
【文献】特許第4724823号公報
【文献】特開2002-17392号公報
【文献】国際公開第2010/113785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鶏の身体状態、器官の状態を改善できる餌を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鶏用餌にD-プシコースを含む希少糖を配合することにより、鶏の血液総コレステロール値を低下させ、卵巣重量を増大させることができ、さらには、産卵後期鶏の産卵率を上昇させて、サイズの小さい卵を産卵させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、以下の技術的事項から構成される。
(1)D-プシコースを含む希少糖を配合することを特徴とする、卵巣重量の増大および産卵後期鶏の産卵率上昇のための採卵鶏餌。
(2)上記希少糖を餌の0.3%以上配合する上記(1)に記載の採卵鶏餌。
(3)上記希少糖が、ぶどう糖、果糖および/または異性化糖をアルカリ異性化することによりD-プシコースを含ませた希少糖含有シロップに含まれる希少糖である上記(1)または(2)に記載の採卵鶏餌。
(4)上記希少糖シロップに含まれる希少糖が、希少糖含有シロップを粉末化した希少糖含有粉末に含まれる希少糖である、上記(3)に記載の採卵鶏餌。
(5)上記希少糖含有粉末が、希少糖含有シロップを粉末化基剤と撹拌混合した後、乾燥、粉砕された希少糖含有粉末である、上記(4)に記載の採卵鶏餌。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、D-プシコースを含む希少糖を餌の0.3重量%という微量配合するだけで、4週間の給餌後、鶏の血液総コレステロール値を低下させ、卵巣重量を有意に増大させることができるという効果が確認された。その卵巣には排卵前の発達した卵胞が確認された。
さらに、実験に用いた採卵鶏は505日齢の産卵後期鶏であるが、卵重量が有意に小さくなり、サイズの小さい卵を産卵していた。卵質検査に用いた鶏卵を鶏卵取引規格で区分すると、給餌前はM~Lサイズが中心であったが、給餌後はMS~Mサイズの規格が増加していた。
【0011】
一般的に、採卵鶏は140日齢前後で産卵開始し、200日齢前後で産卵ピークを迎えたあとは、次第に産卵率が低下していき、産卵率が65%程度になる500日~600日齢で廃用になる。また、日齢が上がるにつれ、大きな卵を産むようになるが、一般的にMS~Mサイズの市場価格が高くLLサイズ~規格外になると価格が半減する。希少糖を含有する餌を給餌することで、このようにサイズの小さい卵を産卵できるようになり、鶏の産卵寿命を延長できるという経済的効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】希少糖含有飼料を給餌前と4週間給餌後の卵巣の比較写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明でいう希少糖は、糖の基本単位である単糖のうち、自然界に大量に存在するD-グルコースに代表される「天然型単糖」に対して、自然界に微量にしか存在しない単糖(アルドース、ケトース)およびその誘導体(糖アルコール)と定義付けられている。
一般に自然界に多量に存在するアルドースとしてはD-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノースの6種類あり、それ以外のアルドースは希少糖と定義される。またケトースとしては、自然界にはD-フラクトースが比較的多く存在しているが、それ以外のケトースは希少糖といえる。ケトースの希少糖としては、D-プシコース、D-タガトース、D-ソルボース、L-フラクトース、L-プシコース、L-タガトース、L-ソルボースなどがあげられる。また糖アルコールは単糖を還元してできるが、自然界にはD-ソルビトールが比較的多いが、それ以外のものは量的には少ないので、これらも希少糖といえる。
【0014】
そのなかでも、現在、大量生産が可能な希少糖としては、D-プシコースやD-アロースがある。D-プシコースは、六単糖のケトース、D-アロースは六単糖のアルドースに分類される。D-プシコースは、自然界から抽出されたもの、化学的または生物学的な方法により合成されたもの等を含め、どのような手段によっても入手可能である。D-アロースは、D-プシコースを含有する溶液にD-キシロースイソメラーゼを作用させて、D-プシコースから酵素的手法によりD-アロースを生成させる(特許文献6)などして入手できる。
【0015】
また、本発明に用いるD-プシコースは、D-プシコースおよび/またはその誘導体として用いることができる。
誘導体とは、ある出発化合物から分子の構造を化学反応により変換した化合物の呼称である。例えば、六単糖であれば、糖アルコールやアミノ糖などが誘導体となる。D-プシコースの場合、ケトン基がアルコール基となった糖アルコール、アルコール基が酸化したウロン酸、アルコール基がNH基で置換されたアミノ糖がD-プシコースの誘導体となる。
【0016】
本発明におけるD-プシコースを含む希少糖は、粉末品として用いる代わりに、異性化糖を含むシロップ状としても利用することができる。このシロップは市販品「レアシュガースウィート」(松谷化学工業(株)社製)として、入手することができる。
「レアシュガースウィート」は、異性化糖を原料とし、特許文献7に開示される手法により得られる希少糖を含有するシロップであり、希少糖として主にD-プシコースおよびD-アロースが含まれるように製造されたものである。該手法により得られる希少糖含有シロップに含まれる希少糖は、全糖に対する割合でD-プシコース0.5~17重量%、D-アロース0.2~10重量%であるが、未同定の希少糖も含まれる。
【0017】
この希少糖含有シロップを得る方法は、上記手法に限られるものではなく、単糖(D-グルコースやD-フラクトース)にアルカリを作用させ、19世紀後半に発見された反応、ロブリー・ドブリュイン-ファン エッケンシュタイン転位反応やレトロアルドール反応とそれに続くアルドール反応を起こさせ(以上の反応をアルカリ異性化反応と呼ぶ)、生じた各種単糖(希少糖含む)を含むシロップを広く「希少糖含有シロップ」と呼ぶことができ、D-グルコースおよび/もしくはD-フラクトースを原料として、D-グルコースおよび/もしくはD-フラクトース含量が55~99重量%になるまでアルカリ異性化したシロップが主に使用される。本発明における「希少糖含有シロップ」とは、これらの希少糖含有シロップを意味する。
希少糖の測定方法は種々存在するが、高速液体クロマトグラフィーにより分離測定する方法が一般的であり、測定条件の一例として、特許文献6に記載の測定条件が挙げられる(検出器;RI、カラム;三菱化成(株)MCI GEL CK 08EC、カラム温度;80℃、移動相;精製水、移動相流量;0.4mL/min、試料注入量;10μL)。
【0018】
希少糖含有シロップの製造に使用される原料としては、でん粉、砂糖、異性化糖、フラクトース、グルコースなどが挙げられる。異性化糖とは、特定組成比のD-グルコースとD-フラクトースを主組成分とする混合糖として広く捉えられ、一般的には、でん粉をアミラーゼ等の酵素または酸により加水分解して得られた、主にブドウ糖からなる糖液を、グルコースイソメラーゼまたはアルカリにより異性化したブドウ糖および果糖を主成分とする液状の糖のことを指す。JAS規格においては、果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が50%未満のものを「ブドウ糖果糖液糖」、50%以上90%未満のものを「果糖ブドウ糖液糖」、90%以上のものを「高果糖液糖」、およびブドウ糖果糖液糖にブドウ糖果糖液糖を超えない量の砂糖を加えたものを「砂糖混合果糖ブドウ糖液糖」とよぶが、本発明の希少糖含有シロップの原料としては、何れの異性化糖を用いても構わない。
例えば、D-フラクトースを原料とした希少糖含有シロップは、D-プシコース5.2%、D-アロース1.8%、グルコース15.0%、D-フラクトース69.3%を含んでいる。また、異性化糖を原料とした希少糖含有シロップは、D-プシコース3.7%、D-アロース1.5%、グルコース45.9%、D-フラクトース37.7%を含み、D-グルコースを原料とすると、D-プシコース5.7%、D-アロース2.7%、グルコース47.4%、D-フラクトース32.1%を含んでいるが、原料および処理方法の違いにより含有糖組成は変化する。
【0019】
次に、希少糖含有シロップの粉末の製造方法について説明する。希少糖含有シロップ (商品名レアシュガースイート 松谷化学工業(株)社製、以下「RSS」ともいう)を、重量比約1対2の割合で粉末化基材と混合して撹拌分散し、乾燥、粉砕することにより製造する。
粉末化基材としては、もち種トウモロコシ澱粉、もち種米澱粉、うるち米粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ椰子澱粉、小麦澱粉、緑豆澱粉、キドニー豆澱粉、大豆搾油カス、きな粉、トウモロコシメイズ、圧変麦、各種麦ふすま、コンニャク粉、うるち及びもち米糠等を用いることができる。このように、粉末化基剤として、希少糖含有シロップと混合し粉末化できるものであれば、各種多糖のみならず蛋白性の基剤も用いることが可能である。
【0020】
RSSと粉末化基材とを混合後、撹拌分散させる工程で用いる攪拌造粒機としては、リボン式攪拌混合器、円錐スクリュー式攪拌混合器、フードプロセッサー等が例示され、乾燥工程で用いる棚式熱風乾燥機は、棚式冷風乾燥機、バンド式温熱冷風乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機、真空攪拌乾燥機、天日乾燥機のいずれでもよい。
また、粉砕工程では、フードプロセッサー、ボールミル、ビーズミル、ニカルミル、コロイドミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、ウイリーミル、VSIミル、ローラーミル、ジェットミル、乳鉢、すり鉢のいずれも用いることができる。
【0021】
そして、以上のような種々の形態のD-プシコースを含む希少糖を配合するための鶏用餌は、どのようなものでも鶏の飼料であればよく、市販の配合飼料を用いることができる。配合する希少糖として希少糖粉末を使用すれば、容易に均一に飼料に混合することができる。
D-プシコースを含む希少糖の鶏用餌における添加量は、実施例2では餌の0.3重量%であるが、このような僅かな量でも効果があるので、これより少ない含有量であってもある程度の効果があると予測される。また、D-プシコースを含む希少糖の非毒性は実証されており、それ以上の添加量であればどのような添加量であってもよいが、経済性を考慮すると約0.1~10重量%の範囲が好適である。
【0022】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
希少糖含有シロップ粉末の製造
希少糖含有シロップ (商品名レアシュガースイート 松谷化学工業(株)社製、RSS)及び異性化糖(F55タイプ 日本食品化工(株)社製、以下「HFSC」という)を、粉末化基材(コーンスターチ シキシマスターチ(株)社製)を用いて、RSSまたはHFSCと粉末化基材の重量比約1対2の割合で分散混合し、乾燥、粉砕した。
(RSS粉末の製造)
1)コーンスターチを2Kg計量し、奈良機械社製攪拌造粒機に投入し、RSS(Bx75)を1,333g計量したものを投入し攪拌分散混合した。
2)混合した物をアルミ製バットに薄く広げ、棚式熱風乾燥機にて70℃6時間乾燥させた。
3)乾燥した物を、フードプロセッサーを用いて粉砕し、32メッシュ篩にて篩別けした。
(HFSC粉末の製造)
1)コーンスターチを2Kg計量し、奈良機械社製攪拌造粒機に投入し、HFSC(Bx65)を1,538g計量したものも投入し攪拌分散混合した。
2)混合した物をアルミ製バットに薄く広げ、棚式熱風乾燥機にて70℃6時間乾燥させた。
3)乾燥した物を、フードプロセッサーを用いて粉砕し、32メッシュ篩にて篩別けした。
【実施例2】
【0024】
採卵鶏への希少糖含有粉末給与試験
1.材料および方法
供試鶏 :卵用讃岐コーチン28羽(H26年10月22日生、試験開始時
505日齢、産卵後期)
供試飼料:基礎飼料は市販配合飼料
混合粉末は、A(HFSC含有粉末)とB(RSS含有粉末)を使
用し、基礎飼料に混合した。
試験期間:平成28年3月9日~4月5日 (4週間)
調査項目:給与期間中及び前後の体重、産卵率、卵質検査、飼料要求率等
給与終了後解体調査、血清生化学検査
試験設定:対照区 配合飼料94% + 混合粉末A(HFSC1.93%、
コーンスターチ4.07%)
RSS区 配合飼料94% + 混合粉末B(RSS2%、コーンス
ターチ4%)
各区7羽、2反復とした。
※1 HFSC:異性化糖(果糖55%、ブドウ糖42%)
※2 RSS:レアシュガースウィート(異性化糖85%、D
-プシコース7%、その他の希少糖8%)
【0025】
結果の概要
1)体重:表1に示す。
【表1】
開始時、終了時ともに各区間に有意差はなかった。
2)産卵率および飼料消費量の推移:表2に示す。
【表2】
試験中および試験終了後のHD産卵率については、区間に有意差はなかった。
3)血清生化学検査(試験終了時):表3に示す。
【表3】
血清中総コレステロール量は、RSS区が低く5%で有意差があった。
その他の項目に有意差はなかった。
4)試験終了後の解体調査(体重、臓器重量、肝臓内脂質量):表4に示す。
【表4】
肝臓内脂質量はRSS区で高かった。
卵巣重量は、RSS区が大きく、排卵前の発達した卵胞が確認できた。(図1の比較写真参照)
5)卵質検査(試験開始前、終了後):表5および6に示す。
【表5】
【表6】
試験開始前にはどの項目も有意差がなかったが、4週間の投与終了後は、RSS区の卵が有意に小さくなっており、長径と短径、卵重、卵黄卵重比に1%の有意差があった。
卵黄重には変化がないことから、卵管で分泌される卵白量が少なくなったことが推察される。
また、卵質検査に用いた鶏卵を鶏卵取引規格で区分すると表7になり、試験開始前はM~Lサイズ中心であったが、試験終了後はRSS区ではMS~Mサイズの規格が増加した。
【表7】
6)鶏卵食味試験
畜産試験場職員を対象とし、固ゆで卵の食味試験を実施した。試験結果を表8に示す。
【表8】
RSS区が美味しいと答えたのは、12人中7名(58%)だった。
そのうち数名からは特に黄身が美味しいとの意見があった。
【0026】
一般的に、採卵鶏は140日齢前後で産卵開始し、200日齢前後で産卵ピークを迎えたあとは、次第に産卵率が低下していき、産卵率が65%程度になる500日~600日齢で廃用になる。また、日齢が上がるにつれ、大きな卵を産むようになるが、一般的にMS~Mサイズの市場価格が高くLLサイズ~規格外になると価格が半減する。希少糖を配合した餌を給餌することで、このようにサイズの小さい卵を産卵できるようになり、鶏の産卵寿命を延長できるという経済的効果が期待できる。
実施例2の505日齢の産卵後期鶏への4週間の希少糖含有粉末給与試験により、RSS区に血液総コレストロールの低下と卵巣重量増大、さらには卵重量が有意に小さくなることが確認できた。僅かな量の希少糖の添加だけで、産卵後期鶏の産卵率が上昇し、サイズの小さい卵を産卵することができ、経済寿命を延長できるという実用的に価値のある顕著な効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、D-プシコースを含む希少糖を餌に配合するだけで、4週間で、鶏の血液総コレステロール値を低下させ、卵巣重量を有意に増大させることができた。また、産卵する卵のサイズの低下が認められ、鶏の産卵寿命を延長できるという優れた効果が期待できる。
【0028】
さらに、強制換羽は動物愛護の観点から検討課題であることが指摘されている。本発明により強制換羽をせずに鶏の産卵寿命を延長できる可能性がある。
図1