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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】駐車スペース付建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20220308BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
E04H1/02
E04H6/02 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017229036
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2018127876
(43)【公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2017019532
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】坂田 晃一
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-129934(JP,A)
【文献】特開2010-144427(JP,A)
【文献】特開2017-145664(JP,A)
【文献】特開2002-115406(JP,A)
【文献】特開2000-328793(JP,A)
【文献】特開2005-273179(JP,A)
【文献】特開2010-138638(JP,A)
【文献】特開2000-352202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0028674(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0083661(US,A1)
【文献】今までの仕事より 1.デザインの理由 ---曲面壁のある家,インターネット,[online],2011年08月22日,<URL:https://web.archive.org/web/20110822181021/http://www.studiopeak1.jp/shigoto/design.html>,[2021年10月29日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
E04H 6/00-6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が駐車可能な駐車スペースは建物本体の一部を構成するインナガレージ内に設けられ、
前記インナガレージ内における当該駐車スペースへ車両が進入する進入経路側のコーナー壁において、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部が設けられ、当該インナガレージは出口側へ向かうにつれて開口幅が徐々に大きくなるように形成されている駐車スペース付建物。
【請求項2】
前記R形状部が設けられた外壁に玄関部が設けられ、前記R形状部は前記玄関部へ繋がるアプローチ部に形成されている請求項1に記載の駐車スペース付建物。
【請求項3】
前記アプローチ部に袖壁が設けられている請求項2に記載の駐車スペース付建物。
【請求項4】
前記袖壁と対向して室内空間が設けられている請求項3に記載の駐車スペース付建物。
【請求項5】
前記室内空間は玄関部である請求項4に記載の駐車スペース付建物。
【請求項6】
前記袖壁に耐力壁が設けられている請求項5に記載の駐車スペース付建物。
【請求項7】
前記R形状部は、少なくとも建物本体の一階部分に設けられている請求項1~請求項6の何れか1項に記載の駐車スペース付建物。
【請求項8】
前記R形状部は、180度の範囲で設けられている請求項1~請求項7の何れか1項に記載の駐車スペース付建物。
【請求項9】
前記R形状部が設けられている範囲が、建物本体の階によって異なる請求項1~請求項8の何れか1項に記載の駐車スペース付建物。
【請求項10】
建物本体の一階は、前記R形状部が90度の範囲で設けられ、前記建物本体の二階は、前記R形状部が180度の範囲で設けられている請求項9に記載の駐車スペース付建物。
【請求項11】
前記R形状部は、板状の外壁パネルを複数繋げて湾曲状に形成されている請求項1~請求項10の何れか1項に記載の駐車スペース付建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車スペース付建物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1では、インナガレージが設けられた建物(駐車スペース付建物)に関して、インナガレージの開口側のコーナー壁に可動壁装置が設けられた技術が開示されている。この可動壁装置は、コーナー壁に対して回動可能に軸支されており、コーナー壁に配置(出隅形成状態)、又はコーナー壁から退避(退避状態)可能とされている。そして、この可動壁装置をコーナー壁から退避させることで、車両の入出庫をし易くするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-144427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、コーナー壁において、出隅形成状態又は退避状態とする度に可動壁装置を可動させなければならず面倒である。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、前面道路が狭くても、面倒な操作を必要とすることなく、車両の入出庫を容易にすることができる駐車スペース付建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の態様に係る駐車スペース付建物は、車両が駐車可能な駐車スペースと、前記駐車スペースへ車両が進入する進入経路側のコーナー壁に設けられ、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る駐車スペース付建物では、車両が駐車可能な駐車スペースを備えており、当該駐車スペースへ車両の進入する進入経路側のコーナー壁には、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部が設けられている。
【0008】
例えば、建物に接する前面道路が狭く、前面道路に対して車両を直交させた状態でそのまま駐車スペース(いわゆるインナガレージや屋外駐車スペース)に車両を駐車させることができない場合において、当該前面道路から駐車スペースに車両を駐車させる際、車両は、前面道路から弧を描くようにして駐車スペースに駐車させることになる。この場合、駐車スペースへ車両が進入する進入経路側のコーナー壁の角部に車両が干渉しないようにするため注意が必要であり、特に、駐車スペースの開口が狭い場合は、車両のステアリングを何度も切り返さなければならなくなる。
【0009】
これに対して、本態様では、車両の進入経路側のコーナー壁には、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部が設けられている。つまり、車両の進入経路側のコーナー壁には角部は存在しない。したがって、仮に、前面道路から弧を描くようにして車両を駐車スペースに駐車させる場合でも、車両の移動軌跡(進入経路)上にはコーナー壁の角部は存在しないため、当該コーナー壁の角部に車両が干渉することはなく、車両のステアリングの操作は容易になる。
【0010】
なお、ここでの「車両」には、自動車以外に原動機付自転車や自転車等が含まれる。また、ここでの「R形状部」において、R形状部が形成される角度は、90度以外に180度でもよく、さらにはこれら以外の角度範囲でR形状部が形成されてもよい。
【0011】
第2の態様に係る駐車スペース付建物は、第1の態様に係る駐車スペース付建物において、前記駐車スペースは建物本体内に設けられたインナガレージであり、前記R形状部は前記建物本体における前記インナガレージの開口側の前記コーナー壁に設けられている。
【0012】
第2の態様に係る駐車スペース付建物では、駐車スペースが建物本体内に設けられたインナガレージであり、建物本体におけるインナガレージの開口側のコーナー壁には、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部が設けられている。
【0013】
このように、本態様では、インナガレージの開口側に位置するコーナー壁が当該R形状部とされているため、当該コーナー壁には角部は存在しない。このため、前面道路から弧を描くようにして車両をインナガレージに入庫させる場合でも、車両の移動軌跡上にはコーナー壁の角部は存在しないので、当該コーナー壁の角部に車両が干渉することはなく、車両のステアリングの操作は容易になる。
【0014】
第3の態様に係る駐車スペース付建物は、第1の態様又は第2の態様に係る駐車スペース付建物において、前記R形状部が設けられた外壁に玄関部が設けられ、前記R形状部は前記玄関部へ繋がるアプローチ部に形成されている。
【0015】
第3の態様に係る駐車スペース付建物では、R形状部が設けられた外壁には玄関部が設けられており、R形状部は玄関部へ繋がるアプローチ部に形成されている。インナガレージの開口側のコーナー壁にR形状部が形成されることにより、当該コーナー壁に角部が設けられたままの場合と比較して、アプローチ部の面積を広くすることができる。
【0016】
第4の態様に係る駐車スペース付建物は、第3の態様に係る駐車スペース付建物において、前記アプローチ部に袖壁が設けられている。
【0017】
第4の態様に係る駐車スペース付建物では、アプローチ部に袖壁が設けられているため、袖壁によってアプローチ部が建物外から遮蔽可能とされる。これにより、建物内に対して、防犯上の効果を得ることができる。
【0018】
第5の態様に係る駐車スペース付建物は、第4の態様に係る駐車スペース付建物において、前記袖壁と対向して室内空間が設けられている。
【0019】
第5の態様に係る駐車スペース付建物では、袖壁と対向して室内空間が設けられているため、当該袖壁によってアプローチ部だけでなく、室内空間も建物外から遮蔽可能とされ、建物内に対して、さらに防犯上の効果を得ることができる。
【0020】
第6の態様に係る駐車スペース付建物は、第5の態様に係る駐車スペース付建物において、前記室内空間は玄関部である。
【0021】
第6の態様に係る駐車スペース付建物では、室内空間は玄関部であるため、当該玄関部は袖壁と対向して設けられることとなる。このため、袖壁によって玄関部が建物外から遮蔽可能とされ、建物外からは直接玄関部が見えないようにすることができる。
【0022】
第7の態様に係る駐車スペース付建物は、第4の態様~第6の態様の何れか1の態様に係る駐車スペース付建物において、前記袖壁に耐力壁が設けられている。
【0023】
第7の態様に係る駐車スペース付建物では、袖壁に耐力壁が設けられているため、袖壁の上に上階の室内空間を設けることができ、アプローチ部を軒下とすることができる。
【0024】
第8の態様に係る駐車スペース付建物は、第1の態様に係る駐車スペース付建物において、前記駐車スペースは建物本体に隣接して設けられた屋外駐車スペースであり、前記R形状部は前記建物本体における前記屋外駐車スペース側の前記コーナー壁に設けられている。
【0025】
第8の態様に係る駐車スペース付建物では、駐車スペースが建物本体に隣接し設けられた屋外駐車スペースであり、建物本体における屋外駐車スペース側のコーナー壁には、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部が設けられている。このように、本形態では、建物本体における屋外駐車スペース側のコーナー壁が当該R形状部とされてるため、当該コーナー壁には角部は存在しない。
【0026】
したがって、仮に、前面道路から弧を描くようにして車両を駐車スペースに駐車させる場合でも、車両の移動軌跡(進入経路)上にはコーナー壁の角部は存在しないため、当該コーナー壁の角部に車両が干渉することはなく、車両のステアリングの操作は容易になる。なお、ここでの「駐車スペース」は、単に車両が駐車可能なオープンスペースだけでなく、カーポートやガレージが設けられたスペースであってもよい。
【0027】
第9の態様に係る駐車スペース付建物は、第1の態様~第8の態様の何れか1の態様に係る駐車スペース付建物において、前記R形状部は、少なくとも建物本体の一階部分に設けられている。
【0028】
第9の態様に係る駐車スペース付建物では、少なくとも建物本体の一階部分にR形状部が設けられており、駐車スペースへ車両が進入する際に、コーナー壁の角部に車両が干渉しないようにしている。
【0029】
第10の態様に係る駐車スペース付建物は、第1の態様~第9の態様の何れか1の態様に係る駐車スペース付建物において、前記R形状部は、180度の範囲で設けられている。
【0030】
第10の態様に係る駐車スペース付建物では、R形状部が180度の範囲で設けられることによって、建物本体の正面から見て右側又は左側に駐車スペースを設けることができるため、建物本体の設計プランの汎用性が向上する。
【0031】
第11の態様に係る駐車スペース付建物は、第1の態様~第9の態様の何れか1の態様に係る駐車スペース付建物において、前記R形状部が設けられている範囲が、建物本体の階によって異なる。
【0032】
第11の態様に係る駐車スペース付建物では、建物本体の階によってR形状部が設けられている範囲が異なるため、駐車スペース付建物の設計の自由度が増し、デザイン性を向上させることができる。
【0033】
第12の態様に係る駐車スペース付建物は、第11の態様に係る駐車スペース付建物において、前記建物本体の一階は、前記R形状部が90度の範囲で設けられ、当該建物本体の二階は、前記R形状部が180度の範囲で設けられている。
【0034】
第12の態様に係る駐車スペース付建物では、建物本体の一階は、R形状部が90度の範囲で設けられ、当該建物本体の二階は、R形状部が180度の範囲で設けられているため、建物本体の一階では、二階のR形状部の一部が跳ね出した状態となって軒天を構成することができる。
【0035】
第13の態様に係る駐車スペース付建物は、第1の態様~第12の態様の何れか1の態様に係る駐車スペース付建物において、前記R形状部は、板状の外壁パネルを複数繋げて湾曲状に形成されている。
【0036】
第13の態様に係る駐車スペース付建物では、R形状部が板状の外壁パネルを複数繋げて湾曲状に形成されることにより、既存の外壁パネルの使用を可能としている。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、第1の態様に係る駐車スペース付建物は、前面道路が狭くても、面倒な操作を必要とすることなく、駐車スペースにおいて車両の入出庫を容易にすることができる、という優れた効果を有する。
【0038】
第2の態様に係る駐車スペース付建物は、インナガレージにおいて車両の入出庫を容易にすることができる、という優れた効果を有する。
【0039】
第3の態様に係る駐車スペース付建物は、アプローチ部にR形状部が形成されることによって、建物のデザイン性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0040】
第4の態様に係る駐車スペース付建物は、建物外に袖壁を設けることによって、建物外から建物内が見えないようにすることができ、防犯上の効果を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0041】
第5の態様に係る駐車スペース付建物は、室内空間と対向して袖壁を設けることにより、当該室内空間に対して防犯上の効果を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0042】
第6の態様に係る駐車スペース付建物は、袖壁により、屋外からは直接玄関部が見えないようにすることができ、防犯上の効果を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0043】
第7の態様に係る駐車スペース付建物は、アプローチ部を軒下とすることで、例えば、降雨時に雨に濡れずに車両と玄関部との間を移動することができる、という優れた効果を有する。
【0044】
第8の態様に係る駐車スペース付建物は、屋外駐車スペースに対して車両の入出を容易にすることができる、という優れた効果を有する。
【0045】
第9の態様に係る駐車スペース付建物は、インナガレージや屋外駐車スペースに対して車両の入出を容易にすることができる、という優れた効果を有する。
【0046】
第10の態様に係る駐車スペース付建物は、建物本体の正面から見て右側又は左側に駐車スペースを設けることができ、建物本体の設計プランの汎用性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0047】
第11の態様に係る駐車スペース付建物は、建物本体の階によってR形状部が設けられている範囲を変えることで、設計の自由度を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0048】
第12の態様に係る駐車スペース付建物は、軒下に玄関を設けることで、前面道路側に車両を停車させると、降雨時に雨に濡れずに車両と玄関部との間を移動することができる、という優れた効果を有する。
【0049】
第13の態様に係る駐車スペース付建物は、既存の外壁パネルを活用することで、コストアップを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】第1の実施形態に係る駐車スペース付建物の斜視図である。
図2図1に示される駐車スペース付建物の一階部分を示す平面図である。
図3図1に示される駐車スペース付建物の二階部分を示す平面図である。
図4図1に示される駐車スペース付建物の三階部分を示す平面図である。
図5】比較例としての駐車スペース付建物を示す図2に対応する平面図である。
図6】(A)~(C)は、第1実施形態に係る駐車スペース付建物の変形例を示す斜視図である。
図7】第2の実施形態に係る駐車スペース付建物の斜視図である。
図8図7に示される駐車スペース付建物の一階部分を示す平面図である。
図9】(A)、(B)は、第2の実施形態に係る駐車スペース付建物の変形例を示す斜視図である。
図10】第2の実施形態に係る駐車スペース付建物の他の変形例を示す斜視図である。
図11図10に示される駐車スペース付建物の一階部分を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を用いて、本発明の一実施の形態に係る駐車スペース付建物(以下、単に「建物」という)について説明する。
【0052】
<第1実施形態>
(建物の全体構成)
【0053】
まず、本発明の一実施の形態に係る建物の全体構成について説明する。
図1には、本実施の形態に係る建物10の斜視図が示されている。この建物10は、例えば、梁勝ち架構を有する鉄骨軸組工法により構築された三階建ての住宅とされており、図2には、図1に示す建物10の一階部分12の平面図が示されている。また、図3には、図1に示す建物10の二階部分14の平面図が示されており、図4には、図1に示す建物10の三階部分16の平面図が示されている。
【0054】
図1に示されるように、本実施の形態に係る建物10は、道路18に面して配置されている。以下、この道路18を「前面道路18」という。また、建物10は、略直方体状を成しており、建物10の外形を形成する外壁20、22、24、26を含んで構成されている。外壁26は、建物10の正面側とされており、前面道路18に面して配置されている。また、外壁22は、建物10の奥側に配置されており、外壁20及び外壁24は、前面道路18に対して略直交するようにそれぞれ直線状に配置されている。
【0055】
図2に示されるように、建物10の一階部分12は、当該建物10を斜めに二分するようにして室内空間28と室外空間30とで構成されている。具体的に説明すると、建物10の斜め前部側には室外空間30が設けられ、建物10の斜め後部側には室内空間28が設けられている。そして、室内空間28と室外空間30とは、外壁20と外壁24の間を建物10の正面側から奥側へ向かって略クランク状に繋ぐ区画壁(外壁)32によって区画されている。
【0056】
なお、室外空間30には、車両Sが駐車可能なガレージ(駐車スペース)36が設けられている。すなわち、このガレージ36は、建物本体11(図1参照)内に設けられた、いわゆるインナガレージとされている(以下、インナガレージ36という)。
【0057】
ここで、前述した区画壁32について具体的に説明する。区画壁32は、直線壁部38、40、R状壁部42及び直線壁部44を含んで構成されている。直線壁部38は、建物10の奥側において、外壁22との間にスペース46が設けられた状態で、外壁20に対して略直交して配置されている。
【0058】
そして、当該直線壁部38の一端部38Aが外壁20に連結されており、直線壁部38の他端部38Bには直線壁部40の一端部40Aが連結されている。当該直線壁部40は、外壁20及び外壁24に対して略平行に配置されている。つまり、直線壁部38は、インナガレージ36の奥壁とされ、直線壁部40は、外壁20と共にインナガレージ36の側壁を構成している。
【0059】
さらに、直線壁部40の他端部40Bには、R状壁部42の一端部42Aが連結されている。このR状壁部42は、室内空間28側に円弧中心が設定されるように形成されており、R状壁部42の他端部42Bには、直線壁部44の一端部44Aが連結されている。
【0060】
当該R状壁部42は、インナガレージ36の奥側から開口36A側(前面道路18側)へ向かうにつれて、外壁20から離間する方向へ湾曲しており、インナガレージ36の開口幅Wは、前面道路18側へ向かうにつれて徐々に大きくなっている。
【0061】
つまり、直線壁部40と直線壁部44とが交差して形成されるコーナー壁45には、角部は設けられておらず、平面視で外側へ向かって凸状に膨らんで約90度の範囲で湾曲状に形成されたR状壁部(R形状部)42が設けられている。そして、このR状壁部42は、例えば、図示はしないが、板状の外壁パネルを複数繋げて湾曲状に形成されている。
【0062】
なお、当該R状壁部42は、本実施形態では、約90度の範囲で湾曲状に形成されているが、約180度の範囲で形成されてもよい。この場合、図示はしないが、直線壁部44の位置から後述する袖壁48側へ向かって突出させるようにして約180度の範囲でR状壁部を形成し直線壁部40と繋ぐようにする。また、これら以外の角度範囲で当該R形状部42が形成されてもよい。
【0063】
ところで、当該直線壁部44は、外壁26との間にスペース46が設けられた状態で、外壁24に対して略直交して配置されており、直線壁部44の他端部44Bが外壁24に連結されている。そして、この直線壁部44には、玄関ドア(玄関部)50が設けられている。
【0064】
すなわち、外壁26は、室外空間30側に配置されることとなる。このため、当該外壁26において、一階部分12ではこの外壁26のことを特に袖壁48という。袖壁48の先端48Aの位置は、建物10の正面視でR状壁部42の他端部42B側と重なるように設定されており、建物10の正面側からはR状壁部42が露出するようになっている。
【0065】
そして、袖壁48と玄関ドア50とは対向して配置されており、袖壁48と直線壁部44の間には、外壁24における袖壁部24Aが設けられている。なお、当該袖壁48には耐力壁が設けられている。
【0066】
さらに、前述のように、直線壁部44には玄関ドア50が設けられており、当該玄関ドア50を通じて、建物10の室内空間28と室外空間30との間で人の往来が可能となる。そして、室外空間30では、前面道路18と玄関ドア50との間で繋がるアプローチ部52がインナガレージ36と一体的に設けられている。
【0067】
したがって、本実施形態における室外空間30とは、インナガレージ36とアプローチ部52を含んで構成されており、前述のスペース46はこのアプローチ部52の一部を成している。
【0068】
一方、室内空間28には、玄関ドア50を間において、アプローチ部52と連通可能な玄関部54が設けられている。この玄関部54に隣接して、R状壁部42を含んで構成された玄関部56が配置されている。玄関部56は、R状壁部42によって外壁が構成されているため、平面視で扇状を成している。
【0069】
また、室内空間28における奥部には、外壁22に沿ってトイレ58、洗面室60、浴室62がそれぞれ設けられている。なお、浴室62及び洗面室60は、前述した直線壁部38と外壁22との間でスペース46を確保することで配置可能とされる。また、一階部分12では、外壁22は、その一部22Aが室内空間28側へ向かって凹んで形成されているが、必ずしも凹ませる必要はない。
【0070】
さらに、室内空間28における中央部には、二階部分14(図3参照)と繋がる階段64が設けられている。そして、図3に示されるように、二階部分14では、室内空間66が平面視で略矩形状を成しており、階段64は二階部分14の中央部に設けられている。この階段64により、二階部分14と、一階部分12、三階部分16(図4参照)とがそれぞれ繋がり、一階部分12から三階部分16への移動が可能となる。
【0071】
また、二階部分14では、この階段64を間において、建物10の正面側には、ダイニングキッチン68が設けられ、建物10の奥側には、リビングルーム70が設けられている。そして、外壁20には、建物10の正面側にバルコニー72が設けられており、建物10の奥側にはバルコニー74が設けられている。さらに、二階部分14では、バルコニー72とバルコニー74の間には、トイレ76や物入れ78が設けられている。
【0072】
すなわち、図2に示すインナガレージ36及びアプローチ部52の上には、図3に示す二階部分14において、ダイニングキッチン68、バルコニー72、トイレ76等が設けられている。そして、これらによって、図1に示すインナガレージ36及びアプローチ部52の天井部が構成される。つまり、アプローチ部52は、いわゆる軒下空間とされる。
【0073】
一方、図4に示されるように、三階部分16では、階段64を間において、建物10の正面側には、居室80及びバルコニー82が設けられ、建物10の奥側には、寝室84及びウォークインクロゼット86等が設けられている。
【0074】
そして、外壁20には、建物10の正面側にバルコニー82が設けられており、建物10の奥側にはバルコニー88が設けられている。なお、バルコニー82は、外壁26及び外壁20に設けられている。また、バルコニー82とバルコニー88の間には、居室90が設けられている。したがって、三階部分16において、インナガレージ36の上には、居室80、バルコニー82、居室90等が設けられている。
【0075】
(建物の作用及び効果)
次に、本実施形態に係る建物の作用及び効果について説明する。
【0076】
図1及び図2に示されるように、本実施形態では、建物10にインナガレージ36が設けられており、インナガレージ36の一部を構成する区画壁32において、インナガレージ36の開口36A側にはR状壁部42が形成されている。つまり、区画壁32において、直線壁部40と直線壁部44とが交差して形成されるコーナー壁45には、角部は設けられておらず、平面視で湾曲状に形成されたR状壁部42が設けられている。
【0077】
例えば、建物10に接する前面道路18が狭く、前面道路18に対して車両Sを直交させた状態でそのままインナガレージ36に入庫させることはできない場合、当該前面道路18からインナガレージ36に車両Sを入庫させる際、車両Sは、前面道路18から弧を描くようにしてインナガレージ36に入庫させることになる。
【0078】
この場合、図5に示されるように、インナガレージ100の開口100A側(前面道路18側)のコーナー壁102に角部104が設けられている場合、当該角部104に車両Sが干渉しないようにするため注意が必要であり、特に、インナガレージ100の開口100Aが狭い場合は、車両Sのステアリングを何度も切り返さなければならなくなる。
【0079】
また、インナガレージ100の開口幅Wが狭い場合、インナガレージ100に駐車させる車両SのフロントドアFDを開閉させることができない。したがって、フロントドアFDを開閉させるための駐車スペースを確保するため、インナガレージ100の開口幅Wをその分広くする必要がある。つまり、フロントドアFDを開閉させるための駐車スペースを確保するため、インナガレージ100に隣接する室内空間106がその分狭くなってしまう。
【0080】
これに対して、本実施形態では、図2に示されるように、インナガレージ36の開口36A側に位置するコーナー壁45がR状壁部42により湾曲状に形成されているため、図5に示されるような、コーナー壁102の角部104は存在しない。
【0081】
このため、図2に示されるように、前面道路18から弧を描くようにして車両Sをインナガレージ36に入庫させる場合でも、車両Sの移動軌跡上にはコーナー壁102(図5参照)の角部104(図5参照)は存在しないため、当該コーナー壁102の角部104に車両Sが干渉することはなく、車両Sのステアリングの操作が容易になる。
【0082】
つまり、本実施形態では、図2に示されるように、前面道路18が狭くても、面倒な操作を必要とすることなく、インナガレージ36に対して車両Sの入出庫を容易にすることができる。換言すると、インナガレージ36の開口36Aが狭くてもインナガレージ36に対する車両Sの入出庫が可能となるため、本実施形態によれば、狭小スペースに建築させる建物10であっても、インナガレージ36を設けることができる。
【0083】
また、本実施形態では、建物10の一階部分12に袖壁48が設けられているが、袖壁48の先端48Aの位置は、建物10の正面視でR状壁部42の他端部42B側と重なるように設定されており、建物10の正面側からはR状壁部42が露出するようになっている。
【0084】
このため、インナガレージ36の開口36Aを広くすることができ、前面道路18から弧を描くようにして車両Sをインナガレージ36に入庫させる場合にR状壁部42の効果を十分に得ることができる。
【0085】
ところで、本実施形態では、R状壁部42は、前面道路18側へ向かうにつれて、外壁20から離間する方向へ湾曲しており、インナガレージ36の開口幅Wは、前面道路18側へ向かうにつれて徐々に大きくなっている。
【0086】
このため、インナガレージ36が最小限の駐車スペースしか確保できない場合であっても、車両SのフロントドアFDを開閉させることができる。したがって、フロントドアFDを開閉させるためのスペースを確保するために、インナガレージ36に隣接する室内空間28のスペースを狭くすることはない。
【0087】
また、本実施形態では、図2に示されるように、R状壁部42はアプローチ部52に形成されている。このため、図5に示されるように、インナガレージ100の開口100A側のコーナー壁102に角部104が設けられたままの場合と比較して、図2では、アプローチ部52の面積を広くすることができる。また、アプローチ部52にR状壁部42が形成されることによって、建物10のデザイン性を向上させることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、R状壁部42は、図示しない板状の外壁パネルを複数繋げて湾曲状に形成されている。つまり、これにより、既存の外壁パネルの使用を可能としている。このように、既存の外壁パネルを活用することで、コストアップを抑制することができる。
【0089】
さらに、本実施形態では、図2に示されるように、インナガレージ36と玄関ドア50との間を繋ぐアプローチ部52に袖壁48が設けられているため、当該袖壁48によってアプローチ部52が建物10の外側(前面道路18側)から遮蔽される。これにより、建物10の室内空間28に対して、防犯上の効果を得ることができる。また、この袖壁48は、これ以外にも、防火、防音等の効果も得られる。
【0090】
特に、本実施形態では、袖壁48と対向して玄関ドア50が設けられているため、袖壁48によって当該玄関ドア50は、前面道路18側から遮蔽される、つまり、前面道路18側からは直接玄関ドア50が見えないようにすることができる。なお、本実施形態では、袖壁48と対向して玄関ドア50が設けられているが、建物10の間取りによっては、玄関ドア50だけでなく、他の室内空間28が袖壁48と対向するようにしてもよい。
【0091】
また、本実施形態では、袖壁48に耐力壁が設けられている。このため、袖壁48の上に二階部分14及び三階部分16の室内空間(ダイニングキッチン68や居室80等)を設けることができる。なお、耐力壁は外壁24における袖壁部24Aに設けられてもよい。また、耐力壁は、建物10全体として必要な耐力を得ることができれば良いため、必ずしも袖壁48や袖壁部24Aに設けなくてもよく、外壁20や区画壁32の一部に設けられてもよい。
【0092】
そして、本実施形態では、図3で示す二階部分14におけるダイニングキッチン68及びバルコニー72等によって、図1に示すインナガレージ36及びアプローチ部52の天井部が構成される。つまり、アプローチ部52は、いわゆる軒下空間となっている。このため、降雨時に雨に濡れずに車両Sと玄関ドア50との間を移動することができる。
【0093】
また、本実施形態では、梁勝ち架構を有する鉄骨軸組工法により建築された建物10であるため、上下階に通じた通し柱を用いる必要がない。このため、柱の位置を各階毎に配置することができる。すなわち、図2図4に示されるように、各階(一階部分12、二階部分14、三階部分16)毎に自由に室内空間を区画することができるため、設計プランの自由度が向上する。
【0094】
(本実施形態の補足)
本実施形態では、図2に示されるように、コーナー壁45に設けられたR状壁部42に隣接する直線壁部44に玄関ドア50が設けられているが、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、R状壁部42に隣接する直線壁部40側に玄関ドア50が設けられてもよいし、またこれ以外の壁部に玄関ドア50が設けられてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、R状壁部42は、図示しない板状の外壁パネルを複数繋げて平面視で湾曲状に形成されているが、これに限るものではない。必ずしも板状の外壁パネルを複数繋げて湾曲状に形成する必要はない。つまり、予め湾曲状に形成された外壁パネルを用いてもよい。
【0096】
また、R状壁部42は、必ずしも外壁が一つの曲率で形成された曲面である必要はない。このため、板材を複数繋ぐことによって全体として湾曲状に形成されてもよい。さらに、異なる曲率を有する複数の曲面で連続的に繋ぐことによって湾曲状に形成されてもよい。
【0097】
さらに、本実施形態では、図2に示されるように、インナガレージ36は、建物10の幅方向の一方側に設けられているが、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、建物10の幅方向の中央部にインナガレージ36が設けられてもよい。この場合、コーナー壁はインナガレージ36の幅方向の両側に設けられることとなる。
【0098】
さらにまた、本実施形態では、図1に示されるように、インナガレージ36を備えた建物10について説明したが、本発明の実施の形態に係る建物はこれに限るものではない。例えば、図6(A)に示されるように、建物110において、必ずしもインナガレージ36(図1参照)が備わっている必要はない。すなわち、本実施形態では、私有地112内において、建物110に隣接して駐車スペース(屋外駐車スペース)114が設けられている。
【0099】
具体的に説明すると、当該建物110は、略直方体状を成しており、建物110の正面111側(前面道路18側)には、車両S(図2参照)の進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁116において、一階部分118及び二階部分120に、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部122が設けられている。
【0100】
また、図6(B)に示されるように、建物124では、二階部分128のコーナー壁が切り欠かれた形状とされており、二階部分128は平面視で略逆L字状を成している。一方、建物124の一階部分126のコーナー壁116には、R形状部132が設けられており、一階部分126に設けられたR形状部132の上側には、バルコニー134が設けられている。なお、このバルコニー134は、図6(C)に示されるように、必ずしも必要ではない。
【0101】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と略同じ内容については、同じ符号を用いて説明を割愛する。
【0102】
前述した第1実施形態では、図1及び図2に示されるように、建物10のインナガレージ36の開口36A側に位置するコーナー壁45において、約90度の範囲でR状壁部(R形状部)42が設けられているが、R形状部が設けられる範囲は、90度に限るものではない。
【0103】
例えば、図8に示されるように、第2の実施形態に係る建物140では、車両Sの進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁142において、図7に示されるように、一階部分144は、90度の範囲でR形状部146が設けられており、建物140の二階部分148は、当該コーナー壁142を含んで180度の範囲でR形状部150が設けられている。なお、図7は、本実施の形態に係る建物140の外形を示す概略斜視図であり、図8は、建物140の一階部分144を示す概略平面図である。
【0104】
具体的に説明すると、図7及び図8に示されるように、この建物140は、平面視で、矩形状に区画された私有地112内において、略逆L字状を成して形成されており、当該建物140に隣接して、駐車スペース114が設けられている。そして、この建物140の正面141側(前面道路18側)には、車両Sの進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁142に、平面視で外側へ向かって凸状に膨らむ湾曲状のR形状部146が設けられている。
【0105】
前述のように、この建物140の一階部分144は、コーナー壁142において、R形状部146が90度の範囲で設けられており、建物140の二階部分148は、R形状部150が当該コーナー壁142を含んで180度の範囲で設けられている。
【0106】
つまり、図7に示されるように、この建物140では、R形状部146、150が形成されている範囲が一階部分144と二階部分148とで異なっており、一階部分144では、入隅部152を構成し、駐車スペース114と略平行して配置された壁部154側に玄関ドア156が設けられている。このため、建物140の一階部分144では、二階部分148のR形状部150の一部が跳ね出した状態となっており、玄関ポーチ(玄関部)158が設けられている。
【0107】
そして、図8に示されるように、玄関ドア156を隔て、建物140の室内空間160側には、玄関ホール162が設けられている。この玄関ホール162に隣接して、駐車スペース114と略平行に廊下164が設けられており、廊下164の奥方には、駐車スペース114の奥方となる位置に、リビングダイニングルーム166が設けられている。なお、間取りについては自由に設定可能である。
【0108】
本実施形態では、前述のように、車両Sの進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁142に、平面視で湾曲状のR形状部146が設けられているため、当該コーナー壁142には角部は存在しない。
【0109】
したがって、仮に、前面道路18から弧を描くようにして車両Sを駐車スペース114に駐車させる場合でも、車両Sの移動軌跡(進入経路;矢印Aで示す)上にはコーナー壁142の角部は存在しないため、当該コーナー壁142の角部に車両Sが干渉することはなく、車両Sのステアリングの操作は容易になる。すなわち、面倒な操作を必要とすることなく、車両Sの入出庫を容易にすることができる。
【0110】
また、図7に示されるように、本実施形態では、建物140の階によってR形状部146、150が設けられている範囲が異なるため、建物140の設計の自由度が増し、デザイン性を向上させることができる。
【0111】
そして、本実施形態では、建物140の一階部分144は、R形状部146が90度の範囲で設けられ、建物140の二階部分148は、R形状部150が180度の範囲で設けられており、建物140の一階部分144では、二階部分148のR形状部146の一部が跳ね出した状態となって軒天を構成することができる。
【0112】
したがって、この軒下に玄関ポーチ158を設けることができ、これにより、前面道路18側に車両S(図8参照)を停車させると、降雨時に、雨に濡れずに車両Sと玄関ポーチ158との間を居住者等が移動することができる。
【0113】
以上のように、上記実施形態では、建物140の一階部分144は、R形状部146が90度の範囲で設けられ、建物140の二階部分148は、R形状部150が車両Sの進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁142を含んで180度の範囲で設けられている。しかし、本実施形態における建物は、階によってR形状部が設けられている範囲が異なっていればよいため、これに限るものではない。
【0114】
例えば、図9(A)に示されるように、略直方体状を成す建物本体172と、建物本体172の正面174側の一階部分176に設けられた略半円筒状の半円部178と、を含んで構成された建物170でもよい。この場合、例えば、半円部178は居室とされ、半円部178は屋上が全てバルコニー180となっている。
【0115】
半円部178を構成するR形状部182は、車両Sの進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁142を含んで180度の範囲で設けられており、建物本体172の正面174側の一階部分176は、直線壁184及びR形状部182を含んで構成されている。
【0116】
このように、本実施形態では、車両Sの進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁142に、R形状部182が設けられていればよいため、それ以外の壁部については、当該R形状部182と繋がるR形状部であってもよいし、直線壁であってもよい。
【0117】
そして、本実施形態における建物170では、R形状部182が180度の範囲で設けられている。このため、車両Sの進入経路(矢印Aで示す)側のコーナー壁142は二つ分となる。つまり、R形状部182を間において、当該R形状部182の両側に駐車スペース114、186を設けることが可能となり、建物170の設計プランの汎用性を向上させることができる。
【0118】
なお、建物170の正面174側には直線壁184が設けられているため、駐車スペース114と駐車スペース186とでは、駐車面積が異なり、駐車スペース186は駐車スペース114より狭く奥行方向で短くなっている。したがって、図示はしないが、駐車スペース114側には自動車を駐車させ、駐車スペース186側には原動機付自転車や自転車を駐車させてもよい。さらに、図示はしないが、この建物170の直線壁184側にインナガレージが設けられてもよい。
【0119】
また、バルコニー180が180度の範囲に亘って平面視で略半円状に設けられることによって、例えば、図示はしないが、バルコニーが平面視で矩形状に設けられる場合と比較して、死角領域が減り、防犯効果に寄与する。
【0120】
その一方で、建物170では、建物本体172の正面174側の一階部分176に半円部178が設けられ、半円部178の屋上が全てバルコニー180となっているが、これに限るものではない。
【0121】
例えば、図9(B)に示されるように、建物190では、建物本体172の正面174側に設けられた半円部192が一階部分194と二階部分196で構成されてもよい。ここでは、半円部192において、二階部分196の一部が切り欠かれた状態でバルコニー198が形成され、当該バルコニー198には屋根部200が設けられている。
【0122】
上記以外にも、図10に示されるように、建物202の一階部分204及び二階部分206に180度の範囲でR形状部208が設けられてもよい。なお、この建物202では、図9(A)に示されるような、建物170の正面174側の直線壁184は設けられていない。
【0123】
つまり、図11に示されるように、建物202において、互いに対向して配置された外壁210と外壁212がR形状部208によって繋がっている。このため、図9(A)に示される建物170と異なり、図11に示す建物202では、R形状部208の右側及び左側に駐車スペース114を設けることが可能となる。なお、図11では、R形状部208の右側に駐車スペース114が設けられている。
【0124】
以上のように、建物202の右側、左側に駐車スペース114を設けることが可能となることで、建物202の設計プランの汎用性を向上させることができる。
【0125】
また、この建物202では、外壁212にアルコーブ214(図10参照)が設けられ、アルコーブ214の奥方に玄関ドア156が設けられている。これにより、前面道路18側から直接玄関ドア156を見ることができないようになっている。これによって、防犯効果を向上させることができ、また、車両Sの近くに玄関ドア156が設けられることになるため、車両と玄関部との間を移動する際に便利である。
【0126】
以上、本発明を実施するための一形態として一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を行うことができる。
【符号の説明】
【0127】
10 建物(駐車スペース付建物)
11 建物本体(駐車スペース付建物)
28 室内空間
32 区画壁(外壁)
36 インナガレージ(駐車スペース)
36A 開口
40 直線壁部(外壁)
42 R状壁部(R形状部、外壁)
44 直線壁部(外壁)
45 コーナー壁
48 袖壁
50 玄関ドア(玄関部)
52 アプローチ部
54 玄関部(室内空間)
110 建物(駐車スペース付建物)
114 駐車スペース(屋外駐車スペース)
116 コーナー壁
122 R形状部
124 建物(駐車スペース付建物)
132 R形状部
140 建物(駐車スペース付建物)
142 コーナー壁
146 R形状部
150 R形状部
170 建物(駐車スペース付建物)
172 建物本体(駐車スペース付建物)
178 半円部(R形状部)
182 R形状部
190 建物
192 半円部(R形状部)
202 建物
208 R形状部
S 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11