(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ろ過方法及び該ろ過方法に用いるろ過布
(51)【国際特許分類】
B01D 29/00 20060101AFI20220308BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20220308BHJP
B01D 24/46 20060101ALI20220308BHJP
B01D 29/62 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B01D23/02 A ZAB
C02F11/121
B01D23/24 Z
(21)【出願番号】P 2018044279
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231431
【氏名又は名称】日本植生株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 泰良
(72)【発明者】
【氏名】大倉 卓雄
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 博文
(72)【発明者】
【氏名】竹内 英夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克治
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-093626(JP,A)
【文献】特開昭60-104206(JP,A)
【文献】特開2006-305468(JP,A)
【文献】特開2001-107675(JP,A)
【文献】特開2018-176062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04、35/08-37/08
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のろ過布を備え、該複数のろ過布が重ね合わされた積層体に積層方向における上層側から懸濁液を注いで懸濁液をろ過するろ過方法であって、
前記積層体の最上層に位置する上ろ過布のろ過方向上流側を向く一方の面から下層に向けて懸濁液を注いでろ過する第1ろ過工程と、
前記第1ろ過工程の後、前記上ろ過布を前記積層体から取り除く除去工程と、
前記除去工程後の積層体の最下層に新たなろ過布を追加する追加工程と、を備えるろ過方法。
【請求項2】
前記第1ろ過工程を行った後、前記上ろ過布を反転させる反転工程と、
前記反転工程の後、前記上ろ過布の他方の面から下層に向けて懸濁液を注いでろ過する第2ろ過工程と、を備え、
前記第2ろ過工程の後に前記除去工程と前記追加工程とを行う、請求項1に記載のろ過方法。
【請求項3】
前記第1ろ過工程は、ろ過を複数回実施する請求項1又は請求項2に記載のろ過方法。
【請求項4】
前記第2ろ過工程は、ろ過を複数回実施する請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載のろ過方法。
【請求項5】
前記追加工程は、前記新たなろ過布より上層側のろ過布が該新たなろ過布の追加の際に一層ずつ上層へ移動する工程であり、該追加工程を複数回実施して、各ろ過布を、その一方の面が上流側を向いた状態で最下層から最上層まで移動させる請求項1~4の何れか1項に記載のろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンクリート等の粉粒物を含む懸濁液をろ過するためのろ過方法及び該ろ過方法に用いるろ過布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設現場等で発生するコンクリート等の粉粒物を含む懸濁液をろ過するためにシート状のろ過材が使用されることがある。
【0003】
特許文献1には、不織布から成るろ過材と、該ろ過材を支持する枠と、ろ過材及び枠を設置するためのろ過槽と、懸濁液をろ過槽に搬送する水中ポンプとを備えるろ過装置が開示されている。特許文献1のろ過装置では、水中ポンプは、懸濁液が貯留された貯留槽に設置され、該貯留槽から懸濁液を汲み上げる。汲み上げられた懸濁液は、ろ過槽の上からろ過材に注がれる。ろ過材に注がれた懸濁液は固形分と水分とに分離され、固形分はろ過材に堆積し、水分はろ過槽に溜まっていく。
【0004】
特許文献1には、ろ過材の上流側に目の粗い繊維構造体を接合して複合積層体とすることが開示されており、ろ過材を複合積層体として使用することで目詰まりを緩和することができ、長期間ろ過速度を維持することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のろ過装置では、ろ過材の構造を工夫することでろ過性能を維持することはできるものの、ろ過材に目詰まりが生じれば直ちに全体を交換する必要があるためろ過材の交換にコストがかってしまう。このように、上記従来のろ過装置では、ろ過材の交換にかかるコストを低減しながらもろ過性能を維持することについては着目されておらず、改善の余地がある。
【0007】
なお、このような改善の余地は、セメント等の粉粒物をろ過する場合に限られず、河川や湖沼に堆積する土壌や、排水中の汚泥等、その他の懸濁液をろ過する場合にも存在する。
【0008】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、コスト的に有利で、且つろ過性能を維持することができるろ過方法及び該ろ過方法に用いるろ過布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るろ過方法は、複数のろ過布を備え、該複数のろ過布が重ね合わされた積層体に積層方向における上層側から懸濁液を注いで懸濁液をろ過するろ過方法であって、
前記積層体の最上層に位置する上ろ過布のろ過方向上流側を向く一方の面から下層に向けて懸濁液を注いでろ過する第1ろ過工程と、
前記第1ろ過工程の後、前記上ろ過布を前記積層体から取り除く除去工程と、
前記除去工程後の積層体の最下層に新たなろ過布を追加する追加工程と、を備える。
【0010】
かかる構成によれば、積層された複数のろ過布のうちの最上層に位置する上ろ過布の一方の面から下層に向けて懸濁液を注いでろ過した後、ろ過に使用された上ろ過布が取り除かれ、該上ろ過布が取り除かれた積層体の最下層に新しいろ過布が追加される。このように、前記過方法では、積層体を構成するろ過布のうちの一部のものが新しいろ過布に取り換えられるため、ろ過性能を維持することができる。
【0011】
この場合、前記第1ろ過工程を行った後、前記上ろ過布を反転させる反転工程と、前記反転工程の後、前記上ろ過布の他方の面から下層に向けて懸濁液を注いでろ過する第2ろ過工程と、を備え、前記第2ろ過工程の後に前記除去工程と前記追加工程とを行う、ように構成されていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、上ろ過布を反転させて更に他方の面から下層に向けて懸濁液を注いでろ過することができるので、上ろ過布の両面を使用して懸濁液をろ過することができる。ここで、上ろ過布を反転させた際、仮に上ろ過布の一方の面に堆積した固形分が剥離して落下しても、該固形分は上ろ過布より下層に位置するろ過布上に落ちる。このように、一枚のろ過布の両面を使用して懸濁液をろ過することができると共に固形分を確実に受け止めることができるので、コスト的に有利で且つろ過性能を維持し易くなる。
【0013】
本発明の一態様として、前記第1ろ過工程は、ろ過を複数回実施するようにしてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、上ろ過布の一方の面を複数回のろ過に使用することができる。
【0015】
本発明の他態様として、前記第2ろ過工程は、ろ過を複数回実施するようにしてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、上ろ過布の他方の面を複数回のろ過に使用することができる。
【0017】
本発明の別の態様として、前記追加工程は、前記新たなろ過布より上層側のろ過布が該新たなろ過布の追加の際に一層ずつ上層へ移動する工程であり、
該追加工程を複数回実施して、各ろ過布を、その一方の面が上流側を向いた状態で最下層から最上層まで移動させてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、積層体の最下層に追加されたろ過布は、一方の面を上にして一層ずつ上の層に移動して、最終的に最上層まで移動する。ここで、このような積層体でのろ過においては、上層側に位置するろ過布から順に懸濁液がろ過されることにより、下層側に位置するろ過布には、上層側に位置するろ過布に堆積した固形分よりも小さな固形分が堆積する。従って、最下層に追加されたろ過布の一方の面には、一層ずつ上層に移動する間に、下層側が小さな固形分で上層側ほど大きな固形分が堆積した、固形分による堆積層が形成される。よって、上層側のろ過布ほど前記堆積層によってろ過性能を向上させることができる。
【0019】
本発明に係るろ過布は、上記のろ過方法に用いられるろ過布であって、懸濁液をろ過するシート状のろ過部と、ろ過部に取り付けられ、該ろ過部を広げた状態で所定の固定対象物に固定するための固定部と、を備える。
【0020】
かかる構成によれば、ろ過部を広げた状態で固定部を固定対象物に固定するだけでろ過布を固定対象物に設置できるので、ろ過布を簡易に設置することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明によれば、コスト的に有利で、且つろ過性能を維持することができるろ過方法及び該ろ過方法に用いるろ過布を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るろ過方法に用いるろ過布の正面図である。
【
図2】同実施形態に係るろ過方法に用いるろ過布の背面図である。
【
図3】同実施形態に係るろ過方法に用いるろ過布の平面図である。
【
図4】同実施形態に係るろ過方法に用いるろ過布の右側面図である。
【
図5】
図5において、(a)は角部の正面側の拡大図であり、(b)は角部の背面側の拡大図である。
【
図6】同実施形態に係るろ過布の断面図であって、
図5(b)におけるVI-VI線位置における断面図である。
【
図7】
図7において、(a)は直線部の正面側の拡大図であり、(b)は直線部の背面側の拡大図である。
【
図8】同実施形態に係るろ過布の断面図であって、
図7(b)におけるVIII-VIII線位置における断面図である。
【
図9】同実施形態に係るろ過方法の使用状態を説明するための図である。
【
図10】同実施形態に係るろ過布の反転工程を説明するための図である。
【
図11】同実施形態に係る上ろ過布を反転させる前後の状態について説明するための図であって、(a)は、上ろ過布の一方の面に固形分が堆積している状態の図、(b)は、上ろ過布を反転させ、一方の面から固形分が落下する様子を表した図である。
【
図12】
図11のろ過布の表面状態を100倍に拡大した写真であって、(a)は、反転させる前における上ろ過布の一方の面の状態、(b)は、上ろ過布から落下した固形分を受けた2層目のろ過布の表面状態、(c)は、反転させた後における上ろ過布の一方の面の状態である。
【
図13】同実施形態に係るろ過布の追加工程を説明するための図である。
【
図14】積層体における各層への固形分の堆積状態を説明するための写真及び図であって、左側はろ過布の表面状態を1000倍に拡大した写真であり、右側は該写真に写った部分の側断面を摸式的に表した側断面図である。(a)は、1層目に位置するろ過布、(b)は、2層目に位置するろ過布、(c)は、3層目に位置するろ過布である。
【
図15】積層体における各層への固形分の堆積状態を説明するための写真及び図であって、左側はろ過布の表面状態を1000倍に拡大した写真であり、右側は該写真に写った部分の側断面を摸式的に表した側断面図である。(a)は、4層目に位置するろ過布、(b)は、5層目に位置するろ過布、(c)は、6層目に位置するろ過布である。
【
図16】積層体の最下層に追加された新たなろ過布への固形分の堆積状態を説明するための図であって、(a)は、最下層に位置した状態、(b)は、5層目に位置した状態、(c)は、4層目に位置した状態、(d)は、3層目に位置した状態、(e)は、2層目に位置した状態、(f)は、最上層に位置した状態の図である。
【
図17】積層体の枚数によってろ過性能が向上するかを確認した結果のグラフであって、モルタル、着色剤、減水剤及び水を混合して作成した懸濁液をろ過した結果のグラフである。
【
図18】積層体の枚数によってろ過性能が向上するかを確認した結果のグラフであって、モルタル及び水を混合して作成した懸濁液をろ過した結果のグラフである。
【
図19】本発明の他実施形態に係るろ過布の説明図であり、(a)は固定部が角部のみに取り付けられたろ過布の説明図であり、(b)は固定部が直線部のみに取り付けられたろ過布の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るろ過方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
例えば、コンクリートの排出を終えたコンクリートポンプ車のポンプや配管内を洗浄して得られた洗浄済み水には、コンクリート等の粒状物が含まれ、懸濁している。本実施形態に係るろ過方法は、この洗浄済み水としての懸濁液Sをろ過してコンクリート成分(固形分S1)と、水分S2とに分離するために使用される(
図9参照)。本実施形態のろ過方法は、例えば、
図1~
図8に示すようなろ過布1を用いて実施される。具体的には、本実施形態のろ過方法は、
図1~
図8に示すようなろ過布1を複数枚備え、該複数のろ過布1が重ね合わされた積層体10(
図10参照)を用いて実施される。そのため、まず、ろ過布1の構成について説明する。
【0025】
なお、本実施形態では、ろ過布1の平面図(
図1のろ過布1を上方側から見た図)を
図3に図示しているが、ろ過布1の底面図(
図1のろ過布1を下方側から見た図)は、
図3に図示するろ過布1と上下対称な形状となっている。
【0026】
また、本実施形態では、ろ過布1の右側面図(
図1のろ過布1を右方側から見た図)を
図4に図示しているが、ろ過布1の左側面図(
図1のろ過布1を左方側から見た図)は、
図4に図示するろ過布1と左右対称な形状となっている。
【0027】
図1、及び
図2、
図9に示すように、ろ過布1は、懸濁液Sをろ過するシート状のろ過部2と、ろ過部2に取り付けられ、該ろ過部2を広げた状態で所定の固定対象物T(
図9参照)に固定するための固定部3と、固定部3をろ過部2に接続するための接続手段4(
図2参照)とを備える。固定対象物Tについては後述する。
【0028】
図2に示すように、ろ過部2は、該ろ過部2の外周形状を画定する端縁20に沿って形成された環状の端縁部21と、ろ過部2の面方向における該端縁部21の内方に位置する本体部22とを備える。本実施形態のろ過部2は、矩形状に形成されている。具体的には、ろ過部2は、長方形状に形成されている。以下、ろ過部2の長辺が延びる方向を横方向、短辺が延びる方向を縦方向とする。また、ろ過布1が積層される方向を積層方向とする。なお、ろ過部2は、例えば、長辺が176cm、短辺が130cmとなるように形成されていればよい。
【0029】
ろ過部2は、樹脂素材で形成されている。ろ過部2は、樹脂繊維が織られた織布である。ろ過部2は、平織りの織布である。そのため、
図12(c)に示すように、ろ過部2の表面には、横方向に延びる横繊維25と、縦方向に延びる縦繊維24とが交互に現れている。本実施形態のろ過部2の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の樹脂素材を採用し得るが、ろ過性能の観点からポリエステル又はナイロンが好ましい。また、コストを抑える点からは、ろ過部2の材料は、ポリエステルであるのがより好ましい。
【0030】
端縁部21は、
図1に示すように、横方向に延びる横端縁部21aと、縦方向に延びる縦端縁部21bとを備える。本実施形態の端縁部21は、シート部材が重ね合わされて形成されている。即ち、端縁部21は、多層構造を成している。
図8に示すように、端縁部21は、本体部22に連続する第1帯状部211と、該第1帯状部211に重ね合わされた第2帯状部212と、該第2帯状部212に重ね合わされた第3帯状部213とを備え、3枚のシート部材が重ね合わされて形成されている。
【0031】
端縁部21は、ろ過部2の端縁20部分が内側に向けて折り返されることで形成されている。本実施形態では、端縁部21は、ろ過部2の端縁20部分が両面のうちの一方の面11から他方の面12に向けて複数回折り返されることで形成されている。本実施形態の端縁部21は、ろ過部2が同方向に折り返されることで形成されている。具体的には、ろ過部2が2回同方向に折り返されることで、端縁20が折り返しの中心側に入るので、ろ過部2の端縁20側から順に第2帯状部212、第3帯状部213、第1帯状部211が形成される。即ち、ろ過部2が1回折り返されることで第2帯状部212が形成され、該第2帯状部212を内側に巻き込むようにろ過部2が更に折り返されることで、第2帯状部212に重なる第3帯状部213及び第1帯状部211が形成される。
【0032】
第1帯状部211、第2帯状部212、及び第3帯状部213は、縫い糸Lによって縫い付けられ、互いに拘束されている。第1帯状部211、第2帯状部212、及び第3帯状部213は、重なった状態で本体部22側の近傍で縫い付けられている。
【0033】
本体部22は、一枚のシート状の部材である。即ち、本体部22は、単層構造を成している。このように、ろ過部2は、端縁部21では多層構造を成し、本体部22では単層構造を成している。
【0034】
図2に示すように、固定部3は、長尺に形成されている。また、固定部3は、扁平な紐体が重ね合わされて構成されている。
図6及び
図8に示すように、本実施形態の固定部3は、長手方向における中央部に折返し部30を有し、1枚の紐体が折り返された形状を成している。固定部3は、ろ過部2に対して複数取り付けられている。本実施形態では、固定部3は、ろ過部2の角部200及び直線部201に取り付けられている。直線部201に取り付けられた固定部3は、該直線部201の中央部分に取り付けられている。本実施形態の固定部3は、8個取り付けられている。
図2は、ろ過布1を他方の面12側から見た図である。固定部3は、ろ過部2における他方の面12側に取り付けられている。
【0035】
固定部3は、長手方向における一端がろ過部2に取り付けられ、他端がフリーな状態となっている。固定部3は、折返し部30を一端側としてろ過部2に取り付けられた状態で、他端側では、折り返された一対の紐体同士が離間可能となっている。一対の紐体は、固定対象物Tの所定箇所に結び付けられる。本実施形態では、固定部3は、ろ過部2の端縁部21に取り付けられる。
【0036】
接続手段4は、固定部3をろ過部2に接続するための手段である。
図5~
図8に示すように、本実施形態の接続手段4は、縫い糸であり、縫目部40を形成している。具体的には、固定部3は、ろ過部2に対して縫い糸を用いて縫い付けられている。
【0037】
縫目部40は、固定部3の長手方向に交差するように形成されている。縫目部40は、固定部3の長手方向で離間する一対の第1縫目部41と、該一対の第1縫目部41を繋ぐように形成された第2縫目部42とを有する。一対の第1縫目部41は、固定部3の長手方向に対して略直交する方向に延びている。第2縫目部42は、一対の第1縫目部41のうちの一方の第1縫目部41の一端と、他方の第1縫目部41の他端とを繋ぐように延びている。即ち、本実施形態の縫目部40は、Z字状に形成されている。
【0038】
以下、ろ過部2と固定部3との取付状態について説明する。
【0039】
図5(a)は、ろ過部2の角部200をろ過部2の一方の面11側から見た拡大図であり、
図5(b)は、ろ過部2の角部200をろ過部2の他方の面12側から見た拡大図である。固定部3は、横端縁部21aと縦端縁部21bとが重なった位置に取り付けられている。ろ過部2の端縁部21は、例えば、
図6に示すように、横方向に延びる端縁20部分が折り返された状態で、縦方向に延びる端縁20部分が折り返されて形成されている。即ち、角部200では、横端縁部21aが縦端縁部21bの一部として2回折り返される。そのため、縦端縁部21bの第1帯状部211、第2帯状部212、及び第3帯状部213の各帯状部がそれぞれ3層構造を有して重なるので、角部200では、シート部材(ろ過部2)が9層に重なった多層構造を成している。
【0040】
固定部3は、横端縁部21aと縦端縁部21bとが重なった重なり部210に接続されている。固定部3は、該重なり部210に縫い糸によって接続されている。固定部3を多層構造の重なり部210に接続することで、ろ過部2と固定部3との接続部分の強度を高めることができる。具体的には、9層構造の重なり部210及び該重なり部210に重ね合わされた一対の紐体によって構成された11層の多層体Wに縫い糸が貫通することで、ろ過部2と固定部3とが接続されている。また、縫目部40のうちの一対の第1縫目部41が、固定部3の長手方向に略直交する方向に延びることで、固定部3が引っ張られる長手方向に対する強度が増し、ろ過部2と固定部3との接続強度を確保している。
【0041】
図7(a)は、ろ過部2の直線部201をろ過部2の一方の面11側から見た拡大図であり、
図7(b)は、ろ過部2の直線部201をろ過部2の他方の面12側から見た拡大図である。直線部201では、固定部3は、端縁部21に取り付けられている。
図7(b)は、固定部3が横端縁部21aに取り付けられた状態を示しているが、固定部3が縦端縁部21bに取り付けられた状態も
図7(b)と同様である。
図8に示すように、直線部201では、3層構造の横端縁部21aに重ね合わされた一対の紐体によって構成された5層の多層体Wに縫い糸が貫通することで、ろ過部2と固定部3とが接続されている。
【0042】
ろ過布1の説明は以上である。以下、本実施形態に係るろ過方法の使用方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0043】
本実施形態のろ過方法は、
図9に示すように、複数のろ過布1が重ね合わされた積層体10に積層方向における上層側から懸濁液Sを注いで懸濁液Sをろ過するろ過方法である。ろ過方法は、前記積層体10の最上層に位置する上ろ過布1aのろ過方向上流側を向く一方の面11から下層に向けて懸濁液Sを注いでろ過する第1ろ過工程と、前記第1ろ過工程の後、前記上ろ過布1aを反転させる反転工程と、前記反転工程の後、前記上ろ過布1aの他方の面12から下層に向けて懸濁液Sを注いでろ過する第2ろ過工程と、前記第2ろ過工程の後、前記上ろ過布1aを積層体10から取り除く除去工程と、前記除去工程後の積層体10の最下層に新たなろ過布1を追加する追加工程と、を備える。本実施形態では、前記第1ろ過工程は、ろ過を複数回実施するようになっている。また、前記第2ろ過工程は、ろ過を複数回実施するようになっている。以下、各工程について具体的に説明する。
【0044】
本実施形態では、ろ過方法を使用する(実施する)主体を作業者として説明するが、ろ過方法を使用する主体は、例えばロボット等の装置であってもよい。
【0045】
作業者は、各ろ過布1の中央部分を凹状に窪ませた状態で積層体10を固定対象物Tに設置する。本実施形態の所定の固定対象物Tとは、例えば、ろ過布1でろ過した水分S2が通過できるように下方側に開口部が形成されたカゴ状の部材である。作業者は、積層体10の各ろ過布1に取り付けられた固定部3を固定対象物Tの枠等に結び付け、積層体10を固定対象物Tに固定する。固定対象物Tの下方側には、ろ過により得られた水分S2を受けるための水受部Pが設けられてもよい。
【0046】
第1ろ過工程では、作業者は、積層体10の上方から、該積層体10の最上層に位置する上ろ過布1aの一方の面11から下層に向けて懸濁液Sを注ぐ。該懸濁液Sは、コンクリートポンプ車などを洗浄した洗浄済み水であって、未ろ過状態の洗浄済み水でもよし、他のろ過手段によって一次ろ過済みの洗浄済み水であってもよい。また、懸濁液Sを積層体10に注ぐ注ぎ手段としては、例えば、積層体10の上流側に設置された輸送手段でもよいし、作業者がバケツ等に溜められた懸濁液Sを注ぎ入れる手動による手段でもよい。また、注ぎ手段としては、他のろ過手段から浸み出した懸濁液Sを該ろ過手段から直接積層体10に落下させる手段でもよく、注ぎ手段については特に限定されるものではない。^懸濁液Sは、第1ろ過工程で固形分S1と水分S2とに分離される。分離された固形分S1はろ過布1上に堆積し、ろ過布1を透過した水分S2は水受部Pに溜まっていく。
【0047】
本実施形態では、例えば、ろ過現場においてろ過を要する懸濁液Sの全量をろ過した状態を、第1ろ過工程が1回実施されたと状態とする。または、ろ過布1の大きさ及び性能等の諸条件に基づいて定められた所定量の懸濁液Sをろ過した状態を、第1ろ過工程が1回実施された状態とする。第1ろ過工程は、一方の面11が固形分S1により略覆われるまでろ過を複数回実施する。第1ろ過工程は、例えば、ろ過を3回実施するようになっている。
【0048】
図10に示すように、反転工程では、作業者は、上ろ過布1aを固定対象物Tから取り外して表裏を逆にする。
図10では、積層体10を平らに表現しているが、積層体10が固定対象物Tに固定された状態で上ろ過布1aを反転させてもよい。作業者は、上ろ過布1aを反転後、固定部3を固定対象物Tに結び付け、固定する。
【0049】
図11及び
図12は、上ろ過布1aを反転させる前後の状態を示している。
図11(a)の図及び
図12(a)の写真に示すように、反転工程前における上ろ過布1aの一方の面11には、固形分S1が所定の厚みで堆積している。反転工程で上ろ過布1aを反転させると、
図11(b)の図及び
図12(b)の写真に示すように、ブロック状の固形分S1が塊となって下層側のろ過布1に落下する。
図12(b)は、反転工程後における上ろ過布1aの下層側に位置するろ過布1の表面である。
図12(b)から、上ろ過布1aから落下した固形分S1は、ブロック状の塊となって下層側に位置するろ過布1で受けられることが分かる。尚、
図12(c)は、反転直後の上ろ過布1aの一方の面11の写真であり、上ろ過布1aに堆積していた固形分S1のほとんどは、反転させることで一方の面11から剥がれ、落下することが分かる。
【0050】
このように、反転工程によって上ろ過布1aから落下する固形分S1は、ブロック状の塊となって落下することによって、固形分S1が下層側に位置するろ過布1の目に入り込み難く、続く第2ろ過工程において、下層側に位置するろ過布1の目詰まりを遅らせ、積層体10全体として長持ちさせることができる。
【0051】
第2ろ過工程では、作業者は、積層体10の上方から、該積層体10の最上層に位置する上ろ過布1aの他方の面12から下層に向けて懸濁液Sを注ぐ。懸濁液Sの状態及び注ぎ手段は、第1ろ過工程と同様である。また、第2ろ過工程は、他方の面12が固形分S1により略覆われるまでろ過を複数回実施する。第2ろ過工程は、例えば、ろ過を3回実施するようになっている。
【0052】
第2ろ過工程では、上ろ過布1aの他方の面12から懸濁液Sを注ぐことで、上ろ過布1aの一方の面11が逆洗される。そのため、上ろ過布1aが除去された後において該上ろ過布1aを再利用する際に、上ろ過布1aの洗浄に係る洗浄水を節約することができ、且つ洗浄に係る作業負担を低減することができる。
【0053】
除去工程では、作業者は、上ろ過布1aを固定対象物Tから取り外して上ろ過布1aを固定対象物Tから取り除く。そして、作業者は、該除去工程の後の積層体10の最下層に新たなろ過布1を追加する。
図13は、上ろ過布1aが除去された後の図であり、5枚のろ過布1が残った状態の積層体10に新たなろ過布1を追加する状態を示している。新たなろ過布1は、積層方向における最下層に位置する下ろ過布1bより下層側に追加される。
図13では、積層体10を平らに表現しているが、積層体10が固定対象物Tに固定された状態で新たなろ過布1を下ろ過布1bの下に敷き込んでもよい。
【0054】
追加工程の後、第1ろ過工程から順に実施され、再度追加工程を終えると、更に第1ろ過工程が実施される。このように、本実施形態のろ過方法は、第1ろ過工程から追加工程までを繰り返すことで、積層体10を部分的に交換しつつ、ろ過性能を維持しながら連続的にろ過することができる。
【0055】
ここで、積層体10の最上層(1層目)から最下層(6層目)までの各ろ過布1への固形分S1の堆積状態について
図14(a)~(c)、及び
図15(a)~(c)を参照しつつ説明する。各ろ過布1に対する固形分S1の堆積状態を観察するため、モルタル及び減水剤の混合物に水を加えて懸濁液Sを作成し、これを積層体10に注いだ。減水剤をモルタルに対して1%混合して混合物を作成し、これに体積比で水/混合物=49となるように水を加えて懸濁液Sを作成した。
【0056】
ろ過布1を6枚重ね合せ、最上層に位置する上ろ過布1aの一方の面11から下層に向けて懸濁液Sを注いでろ過を行った。各ろ過布1に堆積した固形分S1が乾燥した後、各ろ過布1の堆積状態を観察した。
図14(a)に最上層(1層目)に位置するろ過布1の表面を示し、
図14(b)以降に2層目から順にろ過布1の表面を示した。
図15(c)は、最下層(6層目)に位置する下ろ過布1bの表面である。
図14(a)~(c)、及び
図15(a)~(c)から、最上層から順に固形分S1の堆積量が減少していくと共に、固形分S1の粒子径が小さくなっていることが分かる。
【0057】
本実施形態のろ過方法では、前記追加工程は、前記新たなろ過布1より上層側のろ過布1が該新たなろ過布1の追加の際に一層ずつ上層へ移動する工程であり、該追加工程を複数回実施して、各ろ過布1を、その一方の面11が上流側を向いた状態で最下層から最上層まで移動させる。追加工程が複数回実施された場合に、例えば、最下層に位置する下ろ過布1bが1層ずつ上層に移動した際の、下ろ過布1bの一方の面11の表面状態について説明する。
【0058】
第2ろ過工程が終了した状態の下ろ過布1bの表面状態を、
図14、及び
図15を参照しつつ、
図16(a)~(f)に順に示す。
図16(f)及び
図16(a)に示すように、第2ろ過工程が終了した状態では、下ろ過布1bの表面には粒子径の小さな固形分S1が少量堆積している。追加工程により、積層体10の最下層、即ち、下ろ過布1bの下側に新たなろ過布1が追加されると、該下ろ過布1bは、最上層から計数して5層目に位置することになる。下ろ過布1bは最下層に位置するものではなくなるが、説明上、最上層に位置するまで下ろ過布1bと称するものとする。
【0059】
下ろ過布1bが5層目に位置した状態で再度、第1ろ過工程、反転工程、第2ろ過工程が実施されることで、5層目に位置した下ろ過布1bの表面には、
図16(b)に示すように、最下層に位置していた際に堆積した固形分S1に加え、該固形分S1よりも粒子径の大きな固形分S1が堆積する(
図15(b)の固形分S1に相当)。そのため、最下層から5層目に移動した下ろ過布1bには、最下層に位置していた際よりも多量の固形分S1が堆積し、且つ該固形分S1の粒子径は、下方側から上方側に向けて粒子径が大きくなっている。
【0060】
除去工程及び追加工程が実施されると、下ろ過布1bは、5層目から4層目に移動する。下ろ過布1bが4層目に位置した状態で再度、第1ろ過工程、反転工程、第2ろ過工程が実施されることで、4層目に位置した下ろ過布1bの表面には、
図16(c)に示すように、最下層及び5層目に位置していた際に堆積した固形分S1に加え、該固形分S1よりも粒子径の大きな固形分S1が堆積する(
図15(a)の固形分S1に相当)。以上のように、下ろ過布1bは、一層ずつ上層へ移動するに従って、粒子径の小さい固形分S1の上に粒子径の大きな固形分S1が順に堆積するということを繰り替えし、最上層に位置した状態では、
図16(f)のように固形分S1が積層された状態となる。
【0061】
下ろ過布1bが最上層まで移動して上ろ過布1aとなった状態で第1ろ過工程が実施されると、積層体10は、
図16の(f)の状態のろ過布1を最上層の上ろ過布1aとして、2層目に
図16(e)の状態のろ過布1、3層目に
図16(d)の状態のろ過布1、4層目に
図16(c)の状態のろ過布1、5層目に
図16(b)の状態のろ過布1、及び最下層(6層目)に
図16(a)の状態のろ過布1が積層された状態となっている。
【0062】
このような積層体10では、下ろ過布1bが最上層まで移動して上ろ過布1aとなると、上ろ過布1a上の固形分S1の堆積層は、下から上に向けて粒子径が大きくなる層構造となっているので、第1ろ過工程が開始されると、大きな固形分S1は堆積層の上方側で、小さな固形分S1は堆積層の下方側で捕捉されることとなる。そのため、各ろ過布1は、上層側に移動するほど固形分S1を捕捉する能力が向上する。
【0063】
以上のように、上記実施形態のろ過方法は、第1ろ過工程と、除去工程と、追加工程とを備えている。ろ過に使用された上ろ過布1aが取り除かれ、該上ろ過布1aが取り除かれた積層体10の最下層に新しいろ過布1が追加される。このように、前記過方法では、積層体を構成するろ過布のうちの一部のものが新しいろ過布に取り換えられるため、ろ過性能を維持することができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係るろ過方法では、第1ろ過工程の後に、反転工程と、第2ろ過工程とを行うため、積層された複数のろ過布1のうちの最上層に位置する上ろ過布1aの一方の面11から下層に向けて懸濁液Sを注いでろ過した後、上ろ過布1aを反転させて更に他方の面12から下層に向けて懸濁液Sを注いでろ過することができるので、上ろ過布1aの両面を使用して懸濁液Sをろ過することができる。ここで、上ろ過布1aを反転させた際、仮に上ろ過布1aの一方の面11に堆積した固形分S1が剥離して落下しても、該固形分S1は上ろ過布1aより下層に位置するろ過布1上に落ちる。このように、一枚のろ過布1の両面を使用して懸濁液Sをろ過することができると共に固形分S1を確実に受け止めることができるので、コスト的に有利で且つろ過性能を維持し易くなる。
【0065】
また、上記実施形態によれば、前記第1ろ過工程は、ろ過を複数回実施するようになっている。そのため、上ろ過布1aの一方の面11を複数回のろ過に使用することができる。
【0066】
また、上記実施形態によれば、前記第2ろ過工程は、ろ過を複数回実施するようになっている。そのため、上ろ過布1aの他方の面12を複数回のろ過に使用することができる。
【0067】
また、上記実施形態によれば、前記追加工程は、前記新たなろ過布1より上層側のろ過布1が該新たなろ過布1の追加の際に一層ずつ上層へ移動する工程であり、該追加工程を複数回実施して、各ろ過布1を、その一方の面11が上流側を向いた状態で最下層から最上層まで移動させる。
【0068】
かかる構成によれば、積層体10の最下層に追加されたろ過布1は、一方の面11を上にして一層ずつ上の層に移動して、最終的に最上層まで移動する。ここで、このような積層体10でのろ過においては、上層側に位置するろ過布1から順に懸濁液Sがろ過されることにより、下層側に位置するろ過布1には、上層側に位置するろ過布1に堆積した固形分S1よりも小さな固形分S1が堆積する。従って、最下層に追加されたろ過布1の一方の面11には、一層ずつ上層に移動する間に、下層側が小さな固形分S1で上層側ほど大きな固形分S1が堆積した、固形分S1による堆積層が形成される。よって、上層側のろ過布1ほど前記堆積層によってろ過性能を向上させることができる。
【0069】
また、上記実施形態の除去工程は、最上層の上ろ過布1aのみを除去する工程となっている。即ち、上記実施形態では、ろ過布1が最下層に位置した状態から上層に移動する間に複数回使用され、最も古い上ろ過布1aのみが除去される。そのため、例えば、表1に示すように、上ろ過布1aの除去前後においてろ過性能のバラつきを抑えることができ、一定のろ過性能を維持することができる。
【0070】
【0071】
例えば、表1に示すように、新たなろ過布1を追加後、第1ろ過工程が実施される前の積層体10における各ろ過布1の汚れ度(表1の「a.第1ろ過工程実施前」)を最上層側から順に75、60、45、30、15、0とする。第1ろ過工程を経て第2ろ過工程が実施された後、各ろ過布1は第1ろ過工程が実施される前よりも汚れた状態となっている。この状態の積層体10における各ろ過布1の汚れ度(表1の「b.第2ろ過工程実施後」)を最上層側から順に90、75、60、45、30、15とする。続いて、上ろ過布1aが除去され、新たなろ過布1が追加された積層体10における各ろ過布1の汚れ度(表1の「c.第2ろ過工程実施後上ろ過布1a交換」)は、各ろ過布1が1層ずつ上層に移動した結果、最上層側から順に汚れ度が75、60、45、30、15、0となり、汚れが改善される。そして、上ろ過布1aの除去及び新たなろ過布1の追加後の積層体10の状態(表1の「c.第2ろ過工程実施後上ろ過布1a交換」の状態)が、第1ろ過工程が実施される前の積層体10の状態(表1の「a.第1ろ過工程実施前」の状態)に近く、上ろ過布1aの除去前後におけるろ過性能が大きく変動することはない。しかしながら、第2ろ過工程の実施後(表1の「b.第1ろ過工程実施後」)全てのろ過布1を交換すると、全てのろ過布1の汚れ度(表1の「d.第2ろ過工程実施後全ろ過布1交換」)が0となり、上ろ過布1aの除去前後におけるろ過性能の変動が大きくなる。以上のように、本実施形態に係るろ過方法では、ろ過性能を一定に維持することで、積層体10のろ過性能の管理や各ろ過布1の汚れ状態の管理が容易となるという効果も奏し得る。
【0072】
また、本実施形態に係るろ過布1によれば、懸濁液をろ過するシート状のろ過部2に対して、該ろ過部2を広げた状態で所定の固定対象物Tに固定するための固定部3が取り付けられているため、ろ過部2を広げた状態で固定部3を固定対象物Tに固定するだけでろ過布1を固定対象物Tに設置することでろ過布を簡易に設置することができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係るろ過布1では、ろ過部2の角部200に加えて直線部201にも固定部3が取り付けられているため、ろ過部2を広げた状態で固定対象物Tに固定し易くなる。
【0074】
さらに、本実施形態に係るろ過布1では、固定部3をろ過部2に接続している縫目部40がZ字状に形成されているため、固定部3とろ過部2の接続強度が高まる。
【0075】
尚、本発明のろ過方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0076】
上記実施形態では、ろ過方法の発明として説明したが、該ろ過方法に用いるろ過布1の発明としても捉えることもできる。また、複数のろ過布1を備え、該複数のろ過布1が重ね合わされた積層体10の発明としても捉えることができる。ろ過布1及び積層体10の構成については上記実施形態におけるろ過布1及び積層体10の構成と共通するため、説明は繰り返さない。
【0077】
上記実施形態では、積層体10は、6枚のろ過布1によって構成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。積層体10を構成するろ過布1の枚数は限定されるものではない。積層体10は2枚以上のろ過布1によって構成されていればよく、ろ過布1は、6枚以上であっても6枚以下であってもよい。
【0078】
ここで、積層体10を構成するろ過布1の枚数を変更して、ろ過性能が変化するか否かについてろ過性能の確認試験を行った。試験結果を
図17及び
図18に示す。確認試験では、モルタル、着色剤、減水剤及び水を混合した第1の懸濁液S、モルタル及び水を混合した第2の懸濁液Sの2種類の懸濁液Sを準備した。また、確認試験では、1枚のろ過布1、及び2枚から6枚のろ過布1から構成された5種類の積層体10を準備し、計6種類をフィルターとして各フィルターに第1の懸濁液S及び第2の懸濁液Sを注いでろ過を行った。フィルターをろ過して得られた水分S2の吸光度を吸光光度計(島津製作所製 UVmini-1240)で測定し、フィルターの枚数と吸光度との関係をグラフにした。吸光度が低いほど水分S2が透明であり、ろ過性能が良いことを意味している。
図17は、第1の懸濁液Sを注いだ結果のグラフであり、
図18は、第2の懸濁液Sを注いだ結果のグラフである。
【0079】
図17から、第1の懸濁液Sをろ過する場合、3枚のろ過布1で構成された積層体10と4枚のろ過布1で構成された積層体10との間で吸光度が急激に減少した。即ち、第1の懸濁液Sをろ過する場合、積層体10は、4枚以上のろ過布1で構成されるのが好ましい。また、
図18から、第2の懸濁液Sをろ過する場合、2枚のろ過布1で構成された積層体10と3枚のろ過布1で構成された積層体10との間で吸光度が急激に減少した。即ち、第2の懸濁液Sをろ過する場合、積層体10は、3枚以上のろ過布1によって構成されるのが好ましい。以上から、積層体10は、少なくとも3枚以上のろ過布1で構成されるのが好ましく、4枚以上のろ過布1で構成されるのがより好ましいことが分かる。
【0080】
上記実施形態では、ろ過部2は折り返されることによって端縁部21で多層構造を成している場合について説明したが、ろ過部2は折り返されていなくてもよい。例えば、ろ過部2は、独立した帯状の部材が複数枚重ね合わされて端縁部21で多層構造を成していてもよい。また、端縁部21が単層構造であってもよい。この場合、ろ過部2の端縁は溶断により繊維がほつれないように処理されていてもよい。
【0081】
上記実施形態では、ろ過部2は、長方形状に形成されている場合について説明したがこれに限定されるものではない。ろ過部2は、正方形状に形成されていてもよい。また、ろ過部2は、円形状、楕円形状、三角形状等の多角形状に形成されていてもよい。
【0082】
上記実施形態では、固定部3は、長尺で扁平な紐体によって構成されている場合について説明したがこれに限定されるものではない。紐体の形状は限定されず、紐体は、ロープのように外周形状が円形状を成したものであってもよい。また、固定部3は、ろ過布1を固定対象物Tに固定することができる構造を有していればよく、例えばクリップであってもよい。
【0083】
上記実施形態では、ろ過部2と固定部3とは縫い糸を用いて縫い付けられている場合について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、固定部3は、ホットメルト樹脂接着剤のような接着剤を用いてろ過部2に固定されていてもよい。
【0084】
また、ろ過部2には厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、固定部3には紐体を取り付け、該紐体を貫通孔に通してろ過部2に結びつけることで、固定部3をろ過部2に取り付けるようにしてもよい。この場合、ろ過部2の貫通孔の内周縁にはリング状部材を取り付けてもよい。
【0085】
上記実施形態では、固定部3は、ろ過部2の角部200及び直線部201に取り付けられ、計8個取り付けられている場合について説明したがこれに限定されるものではない。固定部3の取り付け位置及び個数については自由に設定可能である。例えば、固定部3は、角部200のみに取り付けられていてもよいし、直線部201のみに取り付けられていてもよく、各角部200と直線部201の各長辺とで計6個取り付けられてもよい。
【0086】
なお、固定部3が角部200のみに接続されているろ過布1(
図19(a)参照)と、固定部3が直線部201のみに接続されているろ過布1(
図19(b)参照)とを交互に重ねて積層して積層体10を構成すれば、固定対象物Tに対する各ろ過布1の固定部3の固定位置を分散させることができるため、積層体10を固定対象物Tに取り付け易くすることができる。
【0087】
上記実施形態では、第1ろ過工程の後に反転工程と第2ろ過工程とを行っていたが、この構成に限定されない。例えば、第1ろ過工程の後、反転工程と第2ろ過工程とを行わずに除去工程を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…ろ過布、1a…上ろ過布、1b下ろ過布、11…一方の面、12…他方の面、2…ろ過部、21…端縁部、21a…横端縁部、21b…縦端縁部、22…本体部、24…縦繊維、25…横繊維、200…角部、201…直線部、211…第1帯状部、212…第2帯状部、213…第3帯状部、3…固定部、4…接続手段、40…縫目部、41…第1縫目部、42…第2縫目部、10…積層体、P…水受部、S…懸濁液、S1…固形分、S2…水分、T…固定対象物、W…多層体