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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】捺染前処理用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/12 20060101AFI20220308BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20220308BHJP
   C08F 2/24 20060101ALI20220308BHJP
   D06P 1/44 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C08F220/12
C08F290/12
C08F2/24 A
D06P1/44 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018063157
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019172841
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 彰啓
(72)【発明者】
【氏名】井ケ田 和博
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特公平08-030101(JP,B2)
【文献】特開2005-139340(JP,A)
【文献】特開2012-206895(JP,A)
【文献】特開2009-235139(JP,A)
【文献】特開2007-231164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位、エチレン性不飽和二重結合を有するアニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有する樹脂の粒子と、
水性媒体と、
を含む捺染前処理用樹脂組成物。
【請求項2】
前記アニオン型反応性界面活性剤及び前記ノニオン型反応性界面活性剤のいずれもが、オキシアルキレン基を有し、
前記アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及び前記ノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bが、下記の式(1)を満たす請求項1に記載の捺染前処理用樹脂組成物。
b>a ・・・式(1)
【請求項3】
前記アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及び前記ノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bが、下記の式(2)を満たす請求項2に記載の捺染前処理用樹脂組成物。
1.5≦b/a≦5.0 ・・・式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、捺染前処理用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性インクを使用して布に印刷する技術が知られている。一般に、布への印刷では、布の表面の毛羽立ちに起因する意匠性の低下(画像の鮮明性の低下)が問題となる。そのため、布に画像を印刷する前に、布の表面に前処理液を塗布することが行われており、様々な前処理液の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、非イオン性アクリルと、水溶性多価金属と、有機酸成分及び/又は無機酸成分と、を含む水性基材前処理材料が開示されている。
特許文献2には、無機多孔性微粒子、固着剤(例えば、アクリル樹脂)等を含むインク吸着層形成用バインダー組成物(所謂、前処理液)が開示されている。
特許文献3には、カルボキシ基含有単量体、エポキシ基含有単量体等を、コハク酸エステル型アニオン系共重合性界面活性剤の存在下で乳化共重合させたアクリル系共重合体の微粒子であって、かつ、特定のガラス転移温度(Tg)及び平均粒子径を有する微粒子を含有する捺染加工用アクリル系共重合体水性組成物が開示されている。
特許文献4には、アクリル系共重合体と、水溶性有機溶剤(例えば、ポリエチレングリコール)と、を含むインク保持層用の処理液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-517640号公報
【文献】特開2016-117975号公報
【文献】特開2005-139340号公報
【文献】特開2005-154936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水性インクを使用する布印刷(所謂、捺染)に用いられる前処理液には、架橋型の樹脂エマルションが使用されている。つまり、樹脂エマルションを架橋させることで、画像を印刷する前の布の表面の毛羽立ちを抑制し、意匠性の低下(画像の鮮明性の低下)を改善する。
【0006】
前処理液には、一般に、金属系架橋剤として無機金属塩が使用される。しかし、前処理液が、樹脂のエマルション粒子と無機金属塩とを含むと、樹脂のエマルション粒子と無機金属塩との間で架橋反応が起こり、凝集物が発生する場合がある。
また、前処理液によって布の表面に形成される膜は、処理後に印刷される画像の鮮明性を高める観点から、できるだけ薄いことが望ましく、そのためには、前処理液に使用する樹脂エマルションの濃度を低く調整する必要がある。前処理液には、溶媒として、一般に、水と水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混合溶媒が使用される。この場合、混合溶媒中の水の割合が多くなると、前処理液の表面張力が高まることで、前処理液の布への浸透性が変化するため、布の表面への均一な膜の形成が困難となり、捺染の前処理液としての機能を発揮し得ない。
一方、前処理液中における樹脂エマルションの濃度を低く調整するために、水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)の割合が多い混合溶媒を使用すると、前処理液が増粘する場合がある。
【0007】
前処理液中に凝集物が発生したり、前処理液が増粘したりすると、例えば、スクリーン印刷では、網目の詰まりが発生する不具合が生じ得る。また、例えば、インクジェット印刷では、ノズルの詰まりが発生する不具合が生じ得る。これらの不具合が生じると、前処理液の塗布量を制御できなくなるため、布の表面への均一な膜の形成が困難となり、捺染の前処理液としての機能を発揮し得ない。
【0008】
また、一般に、捺染に用いられる前処理液には、布の表面に形成した膜が洗濯した際に剥落しないこと(所謂、耐洗濯性)が求められる。
【0009】
上述の点に関し、特許文献1~特許文献4に記載の前処理液では、無機金属塩及び水溶性有機溶剤との混和性の問題については、着目していない。また、特許文献1~特許文献4に記載の前処理液を用いて形成された膜の耐洗濯性には、更なる改善の余地がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性に優れ、かつ、耐洗濯性に優れる膜を形成し得る捺染前処理用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> (メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位、エチレン性不飽和二重結合を有するアニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有する樹脂の粒子と、
水性媒体と、
を含む捺染前処理用樹脂組成物。
<2> 上記アニオン型反応性界面活性剤及び上記ノニオン型反応性界面活性剤のいずれもが、オキシアルキレン基を有し、上記アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及び上記ノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bが、下記の式(1)を満たす<1>に記載の捺染前処理用樹脂組成物。
b>a ・・・式(1)
<3> 上記アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及び上記ノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bが、下記の式(2)を満たす<2>に記載の捺染前処理用樹脂組成物。
1.5≦b/a≦5.0 ・・・式(2)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性に優れ、かつ、耐洗濯性に優れる膜を形成し得る捺染前処理用樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0014】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本明細書において「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する用語である。
【0016】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0017】
無機金属塩の具体例としては、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸アルミニウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
本明細書における「水溶性有機溶剤」としては、例えば、グリコール系溶剤が挙げられる。本明細書において、「グリコール系溶剤」とは、炭化水素の2つ以上の炭素原子にそれぞれ1つずつ水酸基が置換した構造の溶剤をいう。
【0018】
本明細書における「耐洗濯性」には、水を用いた洗濯(所謂、ウェットクリーニング)に対する耐性(以下、「ウェットクリーニング耐性」ともいう。)と、溶剤を用いた洗濯(所謂、ドライクリーニング)に対する耐性(以下、「ドライクリーニング耐性」ともいう。)と、の両方が包含される。
【0019】
[捺染前処理用樹脂組成物]
本発明の捺染前処理用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位、エチレン性不飽和二重結合を有するアニオン型反応性界面活性剤(以下、単に「アニオン型反応性界面活性剤」ともいう。)に由来する構成単位、及びエチレン性不飽和二重結合を有するノニオン型反応性界面活性剤(以下、単に「ノニオン型反応性界面活性剤」ともいう。)に由来する構成単位を有する樹脂の粒子(以下、「樹脂粒子」ともいう。)と、水性媒体と、を含む樹脂組成物である。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、捺染の前処理に用いられる樹脂組成物であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位、及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有する樹脂の粒子が、水性媒体中に分散している状態で存在し得る、所謂、樹脂エマルションである。
本発明の樹脂組成物は、そのまま捺染の前処理液として、また、捺染の前処理液の原料として、好適に使用できる。
本発明の樹脂組成物によれば、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性に優れ、かつ、耐洗濯性に優れる膜を形成し得る。
本発明の樹脂組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0021】
前処理液には、一般に、金属系架橋剤として無機金属塩が使用される。しかし、前処理液が、樹脂のエマルション粒子と無機金属塩とを含むと、樹脂のエマルション粒子と無機金属塩との間で架橋反応が起こり、凝集物が発生する場合がある。
前処理液に使用される樹脂エマルションでは、樹脂のエマルション粒子の形成に界面活性剤が使用される。界面活性剤として非反応性界面活性剤を使用すると、非反応性界面活性剤は樹脂粒子に物理吸着する。樹脂粒子に物理吸着した非反応性界面活性剤は、水性媒体中では、樹脂粒子に吸着した状態と樹脂粒子から離脱した状態との平衡状態にある。樹脂エマルションの原液では、非反応性界面活性剤が樹脂粒子に吸着した状態が支配的であるため、樹脂のエマルション粒子は安定であるが、相対的に水性媒体中の非反応性界面活性剤の割合が少なくなる前処理液では、非反応性界面活性剤が樹脂粒子から離脱した状態となる確率が高まるため、樹脂のエマルション粒子は不安定となる。そうすると、前処理液中では、非反応性界面活性剤が離脱した樹脂のエマルション粒子と無機金属塩との間で架橋反応が起こり、凝集物が発生し得る。前処理液中に凝集物が発生すると、例えば、スクリーン印刷では、網目の詰まりが発生する不具合が生じ得る。また、インクジェット印刷では、ノズルの詰まりが発生する不具合が生じ得る。これらの不具合が生じると、前処理液が塗布できなくなるか、或いは、前処理液の塗布量を制御できなくなる。その結果、布の表面への均一な膜の形成が困難となり、捺染の前処理液としての機能を発揮し得ない。
【0022】
これに対し、本発明の樹脂組成物では、樹脂粒子(樹脂のエマルション粒子;以下、同じ)の形成に反応性界面活性剤を使用している。反応性界面活性剤は、樹脂を形成する単量体と化学結合(具体的には、共有結合)することで、樹脂粒子を形成する。すなわち、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂粒子では、単量体〔(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び架橋性官能基を有する単量体〕と反応性界面活性剤(アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤)とが共重合しているため、樹脂組成物が希釈された場合でも界面活性剤が離脱し難い。そのため、本発明の樹脂組成物は、無機金属塩との混和により凝集物を発生し難いと考えられる。
【0023】
また、前処理液によって布の表面に形成される膜は、処理後に印刷される画像の鮮明性を高める観点から、できるだけ薄いことが望ましく、そのためには、前処理液に使用する樹脂エマルションの濃度を低く調整する必要がある。前処理液には、溶媒として、一般に、水と水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混合溶媒が使用される。この場合、混合溶媒中の水の割合が多くなると、前処理剤の表面張力が高まることで、前処理液の布への浸透性が変化するため、布の表面への均一な膜の形成が困難となり、捺染の前処理液としての機能を発揮し得ない。
一方、前処理液中の樹脂エマルションの濃度を低く調整するために、水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)の割合が多い混合溶媒を使用すると、前処理液が増粘する場合がある。前処理液の増粘は、前処理液中で凝集物が発生した場合と同様の不具合を生じさせる。その結果、布の表面への均一な膜の形成が困難となり、捺染の前処理液としての機能を発揮し得ない。
【0024】
これに対し、本発明の樹脂組成物では、樹脂粒子がアニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有するため、アニオン型反応性界面活性剤による電気化学的な作用(所謂、電荷反発)と、ノニオン型反応性界面活性剤による物理的な作用(例えば、アルキレンオキサイド鎖等による物理的な障害)と、が樹脂粒子に対して相乗的に働く。これにより、本発明の樹脂組成物では、樹脂粒子が水性媒体中に非常に安定した状態で分散し得ると考えられる。そのため、本発明の樹脂組成物は、水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)と混和しても、樹脂粒子の分散安定性が保持される結果、増粘し難いと考えられる。
【0025】
膜を形成する前の液状態の本発明の樹脂組成物では、アニオン型反応性界面活性剤による電気化学的な作用及びノニオン型反応性界面活性剤による物理的な作用により、樹脂粒子と無機金属塩との架橋反応が妨げられている。液状態の本発明の樹脂組成物を布の表面に塗布し、形成された塗布膜を乾燥させると、膜中では、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を有する樹脂粒子と無機金属塩とが密に詰まった状態になるため、適切な架橋反応が起こると考えられる。本発明の樹脂組成物は、既述のとおり、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性に優れ、布の表面に均一な塗布膜を形成し得るため、架橋のバラツキが生じ難い。その結果、形成される膜は、耐洗濯性に優れると考えられる。
【0026】
なお、上記の推測は、本発明の樹脂組成物の効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0027】
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について説明する。
【0028】
〔樹脂粒子〕
本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位、及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有する。
まず、樹脂の構成単位について説明する。
【0029】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を有する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、形成される膜の靭性の向上に寄与する。
【0030】
本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0031】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、その種類は特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基の炭素数は、例えば、1~12の範囲が好ましく、1~8の範囲がより好ましく、1~4の範囲が更に好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、n-ブチルアクリレート(n-BA)、メチルメタクリレート(MMA)、及びエチルメタクリレート(EMA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチルアクリレート(EA)、n-ブチルアクリレート(n-BA)、及びメチルメタクリレート(MMA)からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、n-ブチルアクリレート(n-BA)とメチルメタクリレート(MMA)との組み合わせ、又は、n-ブチルアクリレート(n-BA)とエチルアクリレート(EA)との組み合わせが更に好ましく、n-ブチルアクリレート(n-BA)とメチルメタクリレート(MMA)との組み合わせが特に好ましい。
【0033】
樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0034】
樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して、55質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して55質量%以上であると、形成される膜の靭性がより向上する傾向がある。膜の靭性が向上すると、ウェットクリーニング耐性が向上し得る。
また、樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0035】
<架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位>
樹脂は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を有する。
架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位は、無機金属塩との混和性、水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性、及び形成される膜の耐洗濯性の向上に寄与する。
【0036】
本明細書において、「架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位」とは、架橋性官能基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0037】
架橋性官能基としては、架橋剤との架橋反応により架橋構造を形成し得る官能基であれば、特に制限されず、例えば、カルボキシ基、ケトン基、水酸基、アミド基、N-置換アミド基、エポキシ基等の官能基が挙げられる。
架橋性官能基としては、例えば、架橋剤との反応性及び架橋密度の観点から、カルボキシ基、水酸基、アミド基、及びN-置換アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性の観点から、カルボキシ基及び水酸基から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、カルボキシ基が更に好ましい。
【0038】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、架橋剤との反応性及び架橋密度の観点から、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、及びイタコン酸(IA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性の観点から、アクリル酸(AA)がより好ましい。
【0039】
ケトン基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
ケトン基を有する単量体の具体例としては、ジアセトンアクリルアミド(DAAD)、等が挙げられる。
【0040】
水酸基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
アミド基又はN-置換アミド基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
アミド基又はN-置換アミド基を有する単量体の具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
樹脂は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0043】
樹脂における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。
樹脂における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して0.1質量%以上であると、形成される膜の耐洗濯性がより優れる傾向がある。
また、樹脂における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
樹脂における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して20質量%以下であると、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体との共重合性がより向上する傾向がある。また、形成される膜に対し、捺染の前処理皮膜に適した伸縮性がより良好に付与される傾向がある。
【0044】
<シアン化ビニル単量体に由来する構成単位>
樹脂は、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位を有していてもよい。
シアン化ビニル単量体に由来する構成単位は、形成される膜のドライクリーニング耐性の向上に寄与する。
【0045】
本明細書において、「シアン化ビニル単量体に由来する構成単位」とは、シアン化ビニル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0046】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル等が挙げられる。
これらの中でも、シアン化ビニル単量体としては、例えば、形成される膜のドライクリーニング耐性がより向上し得るとの観点から、アクリロニトリル(AN)が好ましい。
【0047】
樹脂は、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位を有する場合、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0048】
樹脂がシアン化ビニル単量体に由来する構成単位を有する場合、樹脂におけるシアン化ビニル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。
樹脂におけるシアン化ビニル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して2質量%以上であると、形成される膜のドライクリーニング耐性がより優れる傾向がある。
また、樹脂におけるシアン化ビニル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
樹脂におけるシアン化ビニル単量体に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、後述するアニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計質量に対して25質量%以下であると、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び架橋性官能基を有する単量体との共重合性がより向上する傾向がある。
【0049】
<その他の単量体に由来する構成単位>
樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び架橋性官能基を有する単量体、並びにシアン化ビニル単量体以外の単量体に由来する構成単位(以下、「その他の単量体に由来する構成単位」ともいう。)を有していてもよい。
なお、本明細書でいう「単量体」には、反応性界面活性剤は含まれない。
【0050】
その他の単量体の種類は、特に制限されない。
その他の単量体の具体例としては、芳香族モノビニル〔スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等〕、ビニルエステル〔ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等〕、これらの単量体の各種誘導体などが挙げられる。
【0051】
樹脂は、その他の単量体に由来する構成単位を有する場合、その他の単量体に由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0052】
<アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位>
樹脂は、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有する。
アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位は、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性の向上に寄与する。
【0053】
本明細書において、「アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位」とは、アニオン型反応性界面活性剤が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0054】
アニオン型反応性界面活性剤は、エチレン性不飽和二重結合を有していれば、その種類は、特に制限されない。
アニオン型反応性界面活性剤のエチレン性不飽和二重結合は、エチレン性不飽和二重結合を有する基に由来する。
エチレン性不飽和二重結合を有する基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、アリルオキシ基、スチリル基等が挙げられる。
これらの中でも、エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、イソプロペニル基、1-プロペニル基、アリルオキシ基、及びスチリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0055】
アニオン型反応性界面活性剤は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、架橋性官能基を有する単量体等の単量体との共重合性の観点から、オキシアルキレン基を有していることが好ましい。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等の炭素数2~4のアルキレン基を有するオキシアルキレン基が挙げられる。
これらの中でも、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基が好ましい。オキシエチレン基は、例えば、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基よりも親水性が高く、樹脂粒子の表面に密度の高い水和層を形成できるため、水性媒体中における樹脂粒子の分散性がより高まる。そのため、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性により優れる傾向を示す。
【0056】
アニオン型反応性界面活性剤がオキシアルキレン基を有する場合、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、特に制限されないが、例えば、水性媒体中における樹脂粒子の分散性の観点から、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、例えば、電荷反発に基づく樹脂粒子の分散性がより向上し得るとの観点から、30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0057】
アニオン型反応性界面活性剤の市販品の例としては、アクアロン(登録商標)KH-05[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:5〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)KH-10[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)AR-10[有効成分:ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)HS-10[有効成分:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)BC-10[有効成分:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)BC-20[有効成分:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]、アデカリアソープ(登録商標)SR-10[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:100質量%、(株)ADEKA]、アデカリアソープ(登録商標)SR-20[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分量:100質量%、(株)ADEKA]、アデカリアソープ(登録商標)SR-3025[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:30〕、有効成分量:25質量%、(株)ADEKA]、エレミノール(登録商標)JS-2[有効成分:アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、有効成分量:38質量%、三洋化成工業(株)]等が挙げられる。
【0058】
樹脂は、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0059】
樹脂におけるアニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が更に好ましい。
樹脂におけるアニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して0.1質量%以上であると、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性により優れる樹脂組成物を実現し得る。
また、樹脂におけるアニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
アニオン型反応性界面活性剤が多量に含まれると、樹脂粒子の形成に寄与し得ない余剰のアニオン型反応性界面活性剤が可塑的に作用することで、形成される膜の強度が低下する場合がある。
樹脂におけるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して15質量部以下であると、アニオン型反応性界面活性剤が多量に含まれることに起因する膜強度の低下が生じ難いため、耐洗濯性により優れる膜を形成できる傾向がある。
【0060】
<ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位>
樹脂は、ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有する。
ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位は、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性の向上に寄与する。
【0061】
本明細書において、「ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位」とは、ノニオン型反応性界面活性剤が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0062】
ノニオン型反応性界面活性剤は、エチレン性不飽和二重結合を有していれば、その種類は、特に制限されない。
ノニオン型反応性界面活性剤のエチレン性不飽和二重結合は、エチレン性不飽和二重結合を有する基に由来する。
ノニオン型反応性界面活性剤におけるエチレン性不飽和二重結合を有する基の具体例及び好ましい態様は、アニオン型反応性界面活性剤におけるエチレン性不飽和二重結合を有する基の具体例及び好ましい態様と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0063】
ノニオン型反応性界面活性剤は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、架橋性官能基を有する単量体等の単量体との共重合性の観点から、オキシアルキレン基を有していることが好ましい。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等の炭素数2~4のアルキレン基を有するオキシアルキレン基が挙げられる。
これらの中でも、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基が好ましい。オキシエチレン基は、例えば、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基よりも親水性が高く、樹脂粒子の表面に、密度の高い水和層を形成できるため、水性媒体中における樹脂粒子の分散性がより高まる。そのため、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性により優れる傾向を示す。
【0064】
ノニオン型反応性界面活性剤がオキシアルキレン基を有する場合、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、特に制限されないが、例えば、10以上が好ましく、30以上がより好ましい。
ノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数が、10以上であると、物理的な嵩高さに基づく樹脂粒子の分散安定性がより向上する傾向がある。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、例えば、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。
ノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数が、60以下であると、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、架橋性官能基を有する単量体等の単量体との共重合性がより向上する傾向がある。
【0065】
ノニオン型反応性界面活性剤の市販品の例としては、アデカリアソープ(登録商標)ER-10[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:100質量%、(株)ADEKA]、アデカリアソープ(登録商標)ER-20[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分量:75質量%、(株)ADEKA]、アデカリアソープ(登録商標)ER-30[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:30〕、有効成分量:65質量%、(株)ADEKA]、アデカリアソープ(登録商標)ER-40[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:40〕、有効成分量:60質量%、(株)ADEKA]、アクアロン(登録商標)RN-20[有効成分:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分量:100質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)RN-30[有効成分:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:30〕、有効成分量:100質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)RN-50[有効成分:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:50〕、有効成分量:65質量%、第一工業製薬(株)]、アクアロン(登録商標)KN-5065[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:50〕、有効成分量:65質量%、(株)ADEKA]、ラテムル(登録商標)PD-420[有効成分:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)/オキシブチレン基(BO)、平均付加モル数:20〕、有効成分量:100質量%、花王(株)]、ラテムル(登録商標)PD-430S[有効成分:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)/オキシブチレン基(BO)、平均付加モル数:30〕、有効成分量:25質量%、花王(株)]、ラテムル(登録商標)PD-450[有効成分:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)/オキシブチレン基(BO)、平均付加モル数:50〕、有効成分量:100質量%、花王(株)]等が挙げられる。
【0066】
樹脂は、ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0067】
樹脂におけるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が更に好ましい。
樹脂におけるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して0.1質量%以上であると、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性により優れる樹脂組成物を実現し得る。
また、樹脂におけるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)は、例えば、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
ノニオン型反応性界面活性剤が多量に含まれると、樹脂粒子の形成に寄与し得ない余剰のノニオン型反応性界面活性剤が可塑的に作用することで、形成される膜の強度が低下する場合がある。
樹脂におけるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して25質量部以下であると、ノニオン型反応性界面活性剤が多量に含まれることに起因する膜強度の低下が生じ難いため、耐洗濯性により優れる膜を形成できる傾向がある。
【0068】
アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤のいずれもが、オキシアルキレン基を有する場合、アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及びノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bは、下記の式(1)を満たすことが好ましい。
b>a ・・・式(1)
【0069】
樹脂粒子の表面の電荷がアニオン性に保たれると、無機金属塩との相互作用により、架橋し、凝集物が発生しやすい。アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及びノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bが、式(1)を満たすと、ノニオン型反応性界面活性剤のオキシアルキレン鎖による物理的な障害により、樹脂粒子と無機金属塩との架橋反応を妨げることができるため、凝集物の発生をより抑制し得る。
【0070】
また、アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及びノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bは、下記の式(2)を満たすことがより好ましい。
1.5≦b/a≦5.0 ・・・式(2)
アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及びノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bが、式(2)を満たすと、無機金属塩との混和性がより向上し得る。
【0071】
更に好ましい態様としては、アニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数a及びノニオン型反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数bは、下記の式(3)を満たす態様である。
2.0≦b/a≦3.5 ・・・式(3)
【0072】
-樹脂粒子の平均粒子径-
樹脂粒子の平均粒子径は、水性媒体中における分散性の観点から、30nm以上700nm以下が好ましく、70nm以上500nm以下がより好ましく、100nm以上300nm以下が更に好ましい。
本明細書中において「樹脂粒子の平均粒子径」は、日本化学会編「新実験化学講座4 基礎技術3 光(II)」第725頁~第741頁(昭和51年7月20日丸善(株)発行)に記載された動的光散乱法により測定された値である。具体的な方法は、以下のとおりである。
樹脂組成物を蒸留水で希釈し、十分に撹拌混合した後、10mm角のガラスセル中にパスツールピペットを用いて5mL採取し、これを動的光散乱光度計(例えば、シスメックス(株)のゼータサイザー 1000HS)にセットする。減衰率(Attenuator)の設定値をx16(16倍)に設定し、減衰率のCount Rateが150kCps~200kCpsになるように、樹脂組成物の希釈液の濃度を調整した後、測定温度25℃±1℃、及び光散乱角90°の条件で測定した結果をコンピュータ処理することにより、樹脂組成物中の樹脂粒子の平均粒子径を求める。また、平均粒子径の値は、Z平均の値を用いる。
【0073】
-樹脂粒子の含有率-
本発明の樹脂組成物における樹脂粒子の含有率は、特に制限されず、例えば、樹脂組成物の全質量に対して、15質量%以上65質量%以下が好ましく、25質量%以上55質量%以下がより好ましく、30質量%以上45質量%以下が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物における樹脂粒子の含有率が、樹脂組成物の全質量に対して、上記範囲内であると、工業的な生産性がより良好となる傾向がある。また、樹脂粒子同士の凝集がより生じ難い傾向がある。
【0074】
〔水性媒体〕
本発明の樹脂組成物は、水性媒体を含む。
本発明の樹脂組成物に含まれる水性媒体は、樹脂粒子の分散媒として機能し得る。
水性媒体は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。
水性媒体としては、水、水とアルコール系溶剤との混合液等が挙げられる。
水性媒体としては、例えば、樹脂粒子の分散性の観点から、水が好ましい。
本発明の樹脂組成物における水性媒体の含有率は、特に制限されず、例えば、樹脂組成物の全質量に対して、35質量%以上85質量%以下が好ましく、45質量%以上75質量%以下がより好ましく、55質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物における水性媒体の含有率が、樹脂組成物の全質量に対して、上記範囲内であると、工業的生産性により優れる傾向がある。また、樹脂粒子の分散性がより良好となる傾向がある。
【0075】
〔その他の成分〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、帯電防止剤、pH調整剤、消泡剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0076】
架橋剤の具体例としては、ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。
ヒドラジド系架橋剤としては、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド(SDH)、ドデカンジオヒドラジド(DDH)、イソフタル酸ジヒドラジド(IDH) サリチル酸ヒドラジド(SAH)等のヒドラジド基を有する化合物が挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤としては、2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-アクリロイル-オキシメチル-2,4-ジメチル-2-オキサゾリン、4-メタクリロイルオキシメチル-2,4-ジメチル-2-オキサゾリン、4-メタクリロイルオキシメチル-2-フェニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-(4-ビニルフェニル)-4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、4-エチル-4-ヒドロキシメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-エチル-4-カルボエトキシメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等のオキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。また、これらのオキサゾリン基を有する化合物に由来する構成単位に有するポリマー組成物も好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物における架橋剤の含有量は、特に制限されず、例えば、形成される膜に対して耐洗濯性等の特性をより効果的に付与し得るとの観点から、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して、有効成分換算値で、0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0077】
[樹脂組成物のpH]
本発明の樹脂組成物のpHは、例えば、水性媒体中における樹脂粒子の分散性の観点から、2~10が好ましい。
本発明の樹脂組成物のpHの測定方法は、特に制限されない。
本発明の樹脂組成物のpHは、pHメーターを用い、JIS Z 8802:2011に準拠した方法により、液温25℃の条件にて測定した値を採用する。測定装置としては、例えば、(株)堀場製作所のpHメーター(商品名:F-51)を使用できる。
【0078】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、既述の樹脂組成物を製造できればよく、特に制限されない。
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、樹脂組成物を製造しやすいとの観点から、以下で説明する、本実施形態の樹脂組成物の製造方法が好ましい。
【0079】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」ともいう。)は、アニオン型反応性界面活性剤、ノニオン型反応性界面活性剤、及び水性媒体の存在下、少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、架橋性官能基を有する単量体と、を重合させて、樹脂の粒子を得る工程(以下、「乳化重合工程」ともいう。)を含む。
【0080】
以下、本実施形態の製造方法における各工程について説明するが、既述の樹脂組成物と共通する事項、例えば、樹脂組成物に含まれる成分の詳細については、説明を省略する。
【0081】
<乳化重合工程>
乳化重合工程は、アニオン型反応性界面活性剤、ノニオン型反応性界面活性剤、及び水性媒体の存在下、少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、架橋性官能基を有する単量体と、を重合させて、樹脂の粒子を得る工程である。
乳化重合工程では、少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、架橋性官能基を有する単量体と、アニオン型反応性界面活性剤と、ノニオン型反応性界面活性剤と、が共重合して、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤による水和層が表面に形成された樹脂の粒子が得られる。
【0082】
重合方法としては、特に制限されず、例えば、以下に示す(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)温度計、撹拌棒、還流冷却器、滴下ロート等を備えた反応容器内に、少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、架橋性官能基を有する単量体と、アニオン型反応性界面活性剤と、ノニオン型反応性界面活性剤と、水性媒体(例えば、水)と、を仕込み、反応容器内を昇温させた後、適宜、重合開始剤、還元剤等を加えて、乳化重合反応を進行させる方法(所謂、一括仕込み方式)、
(2)温度計、撹拌棒、還流冷却器、滴下ロート等を備えた反応容器内に、少なくとも、アニオン型反応性界面活性剤と、ノニオン型反応性界面活性剤と、水性媒体(例えば、水)と、を仕込み、反応容器内を昇温させた後、単量体成分〔少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び架橋性官能基を有する単量体〕を滴下し、適宜、重合開始剤、還元剤等を加えて、乳化重合反応を進行させる方法(所謂、モノマー滴下法)、
(3)単量体成分〔少なくとも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び架橋性官能基を有する単量体〕を予め、少なくとも、アニオン型反応性界面活性剤、ノニオン型反応性界面活性剤、及び水性媒体(例えば、水)を用いて乳化させ、プレエマルションを得た後、得られたプレエマルションを、温度計、撹拌棒、還流冷却器、滴下ロート等を備えた反応容器内に滴下し、適宜、重合開始剤、還元剤等を加えて、乳化重合反応を進行させる方法(所謂、乳化モノマー滴下法)、
等が挙げられる。
これらの中でも、重合方法としては、例えば、工業的生産性の観点から、上記(3)の乳化モノマー滴下法が好ましい。
【0083】
重合温度は、例えば、50℃~80℃であり、好ましくは60℃~80℃である。
重合時間は、例えば、4時間~10時間であり、好ましくは4時間~8時間である。
【0084】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、55質量部以上が好ましく、65質量部以上がより好ましく、75質量部以上が更に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して55質量部以上であると、例えば、架橋性官能基を有する単量体との共重合性が低下することによる樹脂の分子量の低下が生じ難いため、形成される膜の耐洗濯性がより優れる傾向がある。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、98質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量が多いと、相対的に架橋性官能基を有する単量体の割合が減少するため、形成される膜の架橋密度が低下する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して98質量部以下であると、形成される膜の架橋密度が架橋性官能基を有する単量体の割合の減少の影響を受け難いため、膜の耐洗濯性がより優れる傾向がある。
【0085】
架橋性官能基を有する単量体の使用量は、例えば、形成される膜の耐洗濯性がより向上し得るとの観点から、単量体の総量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。
架橋性官能基を有する単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して0.1質量部以上であると、形成される膜の耐洗濯性がより優れる傾向がある。
また、架橋性官能基を有する単量体の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
架橋性官能基を有する単量体の使用量が多いと、架橋の際に、同一の共重合体同士で架橋反応が進行し、3次元架橋構造が形成できない傾向がある。
架橋性官能基を有する単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して20質量部以下であると、3次元架橋構造を良好に形成できるため、膜の耐洗濯性がより優れる傾向がある。
【0086】
アニオン型反応性界面活性剤の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。
アニオン型反応性界面活性剤の使用量が、単量体の総量100質量部に対して0.1質量部以上であると、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性により優れる樹脂組成物を実現し得る。
また、アニオン型反応性界面活性剤の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
アニオン型反応性界面活性剤が多量に含まれると、樹脂粒子の形成に寄与し得ない余剰のアニオン型反応性界面活性剤が可塑的に作用することで、形成される膜の強度が低下する場合がある。
樹脂におけるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の割合(含有率)が、樹脂の構成単位(但し、アニオン型反応性界面活性剤及びノニオン型反応性界面活性剤を含む反応性界面活性剤に由来する構成単位を除く。)の合計100質量部に対して15質量部以下であると、アニオン型反応性界面活性剤が多量に含まれることに起因する膜強度の低下が生じ難いため、耐洗濯性により優れる膜を形成できる傾向がある。
【0087】
ノニオン型反応性界面活性剤の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が更に好ましい。
ノニオン型反応性界面活性剤の使用量が、単量体の総量100質量部に対して0.1質量部以上であると、無機金属塩及び水溶性有機溶剤(例えば、グリコール系溶剤)との混和性により優れる樹脂組成物を実現し得る。
また、ノニオン型反応性界面活性剤の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
ノニオン型反応性界面活性剤を多量に使用すると、樹脂粒子の形成に寄与し得ない余剰のノニオン型反応性界面活性剤が可塑的に作用することで、形成される膜の強度が低下する場合がある。
ノニオン型反応性界面活性剤の使用量が、単量体の総量100質量部に対して25質量部以下であると、ノニオン型反応性界面活性剤を多量に使用することに起因する膜強度の低下が生じ難いため、耐洗濯性により優れる膜を形成できる傾向がある。
【0088】
乳化重合工程において、シアン化ビニル単量体を使用する場合、シアン化ビニル単量体の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。
シアン化ビニル単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して2質量部以上であると、形成される膜のドライクリーニング耐性がより優れる傾向がある。
また、シアン化ビニル単量体の使用量は、例えば、単量体の総量100質量部に対して、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
シアン化ビニル単量体の使用量が、単量体の総量100質量部に対して25質量部以下であると、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及び架橋性官能基を有する単量体との共重合性がより向上する傾向がある。
【0089】
乳化重合工程では、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤、pH調整剤等の各種添加剤を用いてもよい。
【0090】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用できるものであれば、特に制限なく、使用できる。
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムに代表される過硫酸塩、t-ブチルヒドロパーオキサイド及びクメンヒドロパーオキサイドに代表される有機過酸化物、並びに過酸化水素が挙げられる。
乳化重合工程において重合開始剤を用いる場合、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0091】
重合開始剤は、通常用いられる量で使用される。
重合開始剤の使用量は、原料である単量体の合計100質量部に対して、例えば、0.1質量部~2質量部であり、好ましくは0.3質量部~1.5質量部である。
【0092】
(還元剤)
乳化重合工程では、既述の重合開始剤とともに、還元剤を用いてもよい。
還元剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム(「二亜硫酸ナトリウム」ともいう。)、ピロリン酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等が挙げられる。
乳化重合工程において還元剤を用いる場合、還元剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0093】
還元剤は、通常用いられる量で使用される。
還元剤の使用量は、原料である単量体の合計100質量部に対して、例えば、0.1質量部~2質量部であり、好ましくは0.3質量部~1.5質量部である。
【0094】
<他の工程>
本実施形態の製造方法は、必要に応じ、乳化重合工程以外の他の工程を有していてもよい。
【0095】
既述の本実施形態の製造方法では、樹脂の粒子を得る方法として、乳化重合法を一例として挙げたが、本発明における樹脂の粒子を得る方法は、上記の乳化重合法に限定されるものではなく、例えば、懸濁重合法を用いることもできる。
【実施例
【0096】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、樹脂粒子の平均粒子径及び樹脂組成物のpHは、既述の方法により測定した。また、測定装置には、例として記載したものと同様のものを使用した。
【0097】
[樹脂組成物の製造]
〔実施例1〕
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン交換水59.5質量部を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら60℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン交換水28.7質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)KH-10」[第一工業製薬(株)]2.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]3.1質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基:カルボキシ基、架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を60℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションの内の1.5質量%(2.0質量部)を反応容器内に添加した後、2.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]3.6質量部と、2.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]3.6質量部と、を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温が60℃であることを確認した後、上記にて調製したプレエマルションの残り全量を、3時間にわたって均一に逐次添加するとともに、2.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]8.3質量部と、2.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]8.3質量部と、を3時間30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。
次に、プレエマルションの逐次添加終了の1時間後から、3.2質量%のt-ブチルハイドロパーオキサイド水溶液[商品名:パーブチル(登録商標)H、日油(株)、重合開始剤]9.4質量部と、2.1質量%の二酸化チオ尿素[商品名:テックライト、(株)ADEKA、還元剤]9.4質量部と、を30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合物を得た。
得られた乳化重合物を60℃で30分熟成させてから室温まで冷却し、12.5質量%のアンモニア水1.8質量部を加え、pH7.6の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、42.0質量%であった。
【0098】
〔実施例2〕
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン交換水38.5質量部を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら60℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-10」[(株)ADEKA]5.7質量部及び「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]8.8質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基:カルボキシ基、架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を60℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションの内の1.5質量%(3.0質量部)を反応容器内に添加した後、5.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]2.8質量部と、5.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]2.8質量部と、を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温が60℃であることを確認した後、上記にて調製したプレエマルションの残り全量を、3時間にわたって均一に逐次添加するとともに、2.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]18.5質量部と、2.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]18.5質量部と、を3時間30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。
次に、プレエマルションの逐次添加終了の1時間後から、3.2質量%のt-ブチルハイドロパーオキサイド水溶液[商品名:パーブチル(登録商標)H、日油(株)、重合開始剤]11.1質量部と、2.1質量%の二酸化チオ尿素[商品名:テックライト、(株)ADEKA、還元剤]11.1質量部と、を30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合物を得た。
得られた乳化重合物を60℃で30分熟成させてから室温まで冷却し、12.5質量%のアンモニア水0.8質量部を加え、pH7.4の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、38.2質量%であった。
【0099】
〔実施例3〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.5の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.8質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]17.5質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0100】
〔実施例4〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.4の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、38.0質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-20」[(株)ADEKA]15.2質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0101】
〔実施例5〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.4の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.5質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-40」[(株)ADEKA]19.0質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0102】
〔実施例6〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.4の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.8質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)KN-5065」[(株)ADEKA]17.5質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0103】
〔実施例7〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.3の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.6質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)KH-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]17.5質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0104】
〔実施例8〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.4の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.7質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)SR-10」[(株)ADEKA]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]17.5質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0105】
〔実施例9〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.5の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.8質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)SR-20」[(株)ADEKA]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]17.5質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0106】
〔実施例10〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.1の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.8質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]17.5質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、アクリル酸(AA)[架橋性官能基:カルボキシ基、架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0107】
〔実施例11〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、乳化重合物を得た。得られた乳化重合物を60℃で30分熟成させてから室温まで冷却し、12.5質量%のアンモニア水0.7質量部と、架橋剤である「アジピン酸ジヒドラジド(ADH)」[ヒドラジド系架橋剤、(株)日本ファインケム、有効成分量:98質量%]0.2質量部と、を加え、pH7.1の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、41.7質量%であった。
「脱イオン交換水78.7質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-10」[(株)ADEKA]5.7質量部及び「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]8.8質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]43.0質量部と、エチルアクリレート(EA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]43.0質量部と、イタコン酸(IA)[架橋性官能基:カルボキシ基、架橋性官能基を有する単量体]1.0質量部と、ジアセトンアクリルアミド(DAAD)[架橋性官能基:ケトン基、架橋性官能基を有する単量体]0.7質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]12.3質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0108】
〔実施例12〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.5の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.8質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-10」[(株)ADEKA]11.4質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0109】
〔実施例13〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.4の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、42.5質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)SR-3025」[(株)ADEKA]20.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-40」[(株)ADEKA]19.0質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0110】
〔実施例14〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.4の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、44.6質量%であった。
「脱イオン交換水82.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「エレミノール(登録商標)JS-2」[三洋化成工業(株)]13.2質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-10」[(株)ADEKA]11.4質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0111】
〔比較例1〕
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン交換水50.0質量部を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら60℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン交換水68.7質量部と、非反応性界面活性剤である「ハイテノール(登録商標)08E」[第一工業製薬(株)]0.1質量部及び「エマルゲン(登録商標)1135S-70」[花王(株)]4.1質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]43.0質量部と、エチルアクリレート(EA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]43.0質量部と、イタコン酸(IA)[架橋性官能基を有する単量体]1.0質量部と、ジアセトンアクリルアミド(DAAD)[架橋性官能基を有する単量体]0.7質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]12.3質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を60℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションの内の3質量%(5.1質量部)を反応容器内に添加した後、5.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]1.7質量部と、5.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]1.3質量部と、を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温が60℃であることを確認した後、上記にて調製したプレエマルションの残り全量を、5時間にわたって均一に逐次添加するとともに、2.5質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]8.2質量部と、2.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]8.2質量部と、を5時間30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。
次に、プレエマルションの逐次添加終了の1時間後から、3.2質量%のt-ブチルハイドロパーオキサイド水溶液[商品名:パーブチル(登録商標)H、日油(株)、重合開始剤]3.4質量部と、2.1質量%の二酸化チオ尿素[商品名:テックライト、(株)ADEKA、還元剤]6.1質量部と、を30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合物を得た。
得られた乳化重合物を60℃で30分熟成させてから室温まで冷却し、12.5質量%のアンモニア水0.8質量部を加えた後、架橋剤である「アジピン酸ジヒドラジド(ADH)」[ヒドラジド系架橋剤、(株)日本ファインケム、有効成分量:98質量%]0.2質量部を加え、pH7.2の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、40.6質量%であった。
【0112】
〔比較例2〕
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン交換水38.5質量部を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら60℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン交換水82.0質量部と、非反応性界面活性剤である「ハイテノール(登録商標)08E」[第一工業製薬(株)]2.1質量部及び「エマルゲン(登録商標)1135S-70」[花王(株)]2.9質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を60℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションの内の4.0質量%(7.5質量部)を反応容器内に添加した後、5.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]2.8質量部と、5.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]2.8質量部と、を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温が60℃であることを確認した後、上記にて調製したプレエマルションの残り全量を、4時間にわたって均一に逐次添加するとともに、2.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]18.5質量部と、2.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]18.5質量部と、を4時間30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。
次に、プレエマルションの逐次添加終了の1時間後から、3.2質量%のt-ブチルハイドロパーオキサイド水溶液[商品名:パーブチル(登録商標)H、日油(株)、重合開始剤]11.1質量部と、2.1質量%の二酸化チオ尿素[商品名:テックライト、(株)ADEKA、還元剤]11.1質量部と、を30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合物を得た。
得られた乳化重合物を60℃で30分熟成させてから室温まで冷却し、12.5質量%のアンモニア水0.8質量部を加え、pH7.3の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、35.9質量%であった。
【0113】
〔比較例3〕
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン交換水38.5質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-10」[(株)ADEKA]2.1質量部と、を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら60℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン交換水82.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-10」[(株)ADEKA]9.3質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を60℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションの内の1.5質量%(2.9質量部)を反応容器内に添加した後、5.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]2.8質量部と、5.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]2.8質量部と、を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温が60℃であることを確認した後、上記にて調製したプレエマルションの残り全量を、3時間にわたって均一に逐次添加するとともに、2.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]18.5質量部と、2.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]18.5質量部と、を3時間30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。
次に、プレエマルションの逐次添加終了の1時間後から、3.2質量%のt-ブチルハイドロパーオキサイド水溶液[商品名:パーブチル(登録商標)H、日油(株)、重合開始剤]11.1質量部と、2.1質量%の二酸化チオ尿素[商品名:テックライト、(株)ADEKA、還元剤]11.1質量部と、を30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合物を得た。
得られた乳化重合物を60℃で30分熟成させてから室温まで冷却し、12.5質量%のアンモニア水0.8質量部を加え、pH7.2の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.4質量%であった。
【0114】
〔比較例4〕
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン交換水38.5質量部を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら60℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン交換水82.0質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]10.0質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]13.9質量部と、メタクリル酸(MAA)[架橋性官能基:カルボキシ基、架橋性官能基を有する単量体]5.0質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を60℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションの内の1.0質量%(1.9質量部)を反応容器内に添加した後、5.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]2.8質量部と、5.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]2.8質量部と、を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温が60℃であることを確認した後、上記にて調製したプレエマルションの残り全量を、3時間にわたって均一に逐次添加するとともに、2.0質量%の過硫酸カリウム水溶液[重合開始剤]18.5質量部と、2.0質量%の二亜硫酸ナトリウム水溶液[還元剤]18.5質量部と、を3時間30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。
次に、プレエマルションの逐次添加終了の1時間後から、3.2質量%のt-ブチルハイドロパーオキサイド水溶液[商品名:パーブチル(登録商標)H、日油(株)、重合開始剤]11.1質量部と、2.1質量%の二酸化チオ尿素[商品名:テックライト、(株)ADEKA、還元剤]11.1質量部と、を30分にわたって均一に逐次添加し、乳化重合物を得た。
得られた乳化重合物を60℃で30分熟成させてから室温まで冷却し、12.5質量%のアンモニア水0.8質量部を加え、pH7.2の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、37.1質量%であった。
【0115】
〔比較例5〕
実施例2において、プレエマルションの調製方法を以下のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、pH7.6の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の固形分は、39.0質量%であった。
「脱イオン交換水82.0質量部と、アニオン型反応性界面活性剤である「アクアロン(登録商標)AR-10」[第一工業製薬(株)]5.0質量部と、ノニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)ER-10」[(株)ADEKA]5.0質量部及び「アデカリアソープ(登録商標)ER-30」[(株)ADEKA]8.8質量部と、を入れて撹拌した後、更に、n-ブチルアクリレート(n-BA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]70.6質量部と、メチルメタクリレート(MMA)[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]18.9質量部と、アクリロニトリル(AN)[シアン化ビニル単量体]10.5質量部と、を入れて撹拌することで、プレエマルションを調製した。」
【0116】
[評価]
上記にて得られた実施例1~実施例14及び比較例1~比較例5の樹脂組成物について、以下の評価を行った。以下の各評価では、各樹脂組成物に対し、脱イオン水を加えて、固形分を30質量%に調整した樹脂組成物(以下、「評価用樹脂組成物」という。)を用いた。
【0117】
1.無機金属塩との混和性
評価用樹脂組成物に対し、更に脱イオン水を加えて、固形分を20質量%に調整し、評価用樹脂組成物の希釈液を得た。次に、50mL容量のビーカーに、評価用樹脂組成物の希釈液10gを量り取った。次いで、量り取った評価用樹脂組成物の希釈液を、回転子を用いて撹拌し、撹拌している評価用樹脂組成物の希釈液中に、20質量%の硫酸マグネシウム(MgSO)水溶液2.5gを、ピペットを用いて滴下した。滴下終了後、目視にて、液の状態及び凝集物の有無を確認した。また、滴下終了後の液を、ステンレス製の金網を用いて濾過し、得られた凝集物の、評価用樹脂組成物の希釈液及びMgSO水溶液の合計質量(12.5g)に対する割合を測定した。そして、下記の評価基準に従って、樹脂組成物の無機金属塩との混和性を評価した。下記の評価基準における「#400」は、濾過に使用した金網のメッシュ数を示す。結果を表2に示す。
無機金属塩との混和性が優れる樹脂組成物は、「5」、「4」、又は「3」に分類されるものである。
【0118】
(評価基準)
5:凝集物がほとんど発生しなかった(凝集物の割合:2質量%未満)。
4:凝集物が僅かに発生した(凝集物の割合:2質量%以上5質量%未満)。
3:凝集物が少し発生した(凝集物の割合:5質量%以上10質量%未満)。
2:凝集物が多く発生した(凝集物の割合:10質量%以上)。
1:液全体が固化し、撹拌が停止した。
【0119】
2.水溶性有機溶剤との混和性
50mL容量のビーカーに、エチレングリコールモノブチルエーテル(以下、「ブチルセロソルブ」ともいう。)200gを量り取った。次いで、量り取ったブチルセロソルブを、回転子を用いて撹拌し、撹拌しているブチルセロソルブ中に、評価用樹脂組成物100g(固形分換算量:30g)を、ピペットを用いて滴下した。滴下終了後、目視にて、液の状態及び不溶物の有無を確認した。また、滴下終了後の液を、ステンレス製の金網を用いて濾過し、ブチルセロソルブ及び評価用樹脂組成物の合計質量(300g)に対する不溶物の割合を測定した。さらに、滴下終了後の液の粘度を、B型粘度計[英弘精機(株)]を用い、JIS Z 8803に準拠した方法(測定温度:25℃、回転速度:20rpm)により測定した。そして、下記の評価基準に従って、樹脂組成物の水溶性有機溶剤との混和性を評価した。下記の評価基準における「#400」は、濾過に使用した金網のメッシュ数を示す。結果を表2に示す。
水溶性有機溶剤との混和性が優れる樹脂組成物は、「5」、「4」、又は「3」に分類されるものである。
【0120】
(評価基準)
5:不溶物が発生せず、かつ、液がほとんど増粘しなかった(濾過によって濾物が確認されず、かつ、液の粘度が評価用樹脂組成物の粘度に対して10倍未満であった。)。
4:不溶物は発生しなかったが、液が僅かに増粘した(濾過によって濾物は確認されなかったが、液の粘度が評価用樹脂組成物の粘度に対して10倍以上であった。)。
3:不溶物が僅かに発生した(濾過によって1質量%未満の濾物が確認された。)。
2:不溶物が多く発生した(濾過によって1質量%以上の濾物が確認された。但し、「1」に該当するものを除く。)。
1:液が分離した。
【0121】
3.耐洗濯性
(1)捺染糊の調製
下記の組成に示す成分を混合し、捺染糊を調製した。なお、下記の組成に示すレデューサーは、ミネラルターペン65質量部を、ノニオン型界面活性剤[商品名:DKS-NL-70、第一工業製薬(株)]4質量部用いて、脱イオン水31質量部中に乳化分散させたものである。
【0122】
-捺染糊の組成-
・レデューサー 63.5質量部
・評価用樹脂組成物 30.0質量部
・5質量%アンモニア水 1.5質量部
・顔料ペースト 5.0質量部
[商品名:BLUE FL2B Conc、青色、大日精化工業(株)]
【0123】
(2)試験シートの作製
上記にて調製した捺染糊を用いて、綿ブロード(24cm×36cm)に対し、300メッシュのシルクスクリーンを用いて、幅10mm、長さ約160mmの縞模様を間隔10mmで10本捺染加工を施し、23℃、65%RHの室内にて24時間乾燥を行い、試験シートとした。
【0124】
(3)評価試験
(3-1)ドライクリーニング耐性
試験シートに対し、ドライクリーニングに対する染色堅ろう度試験方法(JIS L 0860:2016)のB-2法に基づく試験を行い、試験シートの退色度合い、及び、添付白布の着色度合いを目視にて観察し、下記の評価基準に従って、ドライクリーニング耐性を評価した。結果を表2に示す。
ドライクリーニング耐性に優れる膜を形成できる樹脂組成物は、「5」、「4」、又は「3」に分類されるものである。
【0125】
(評価基準)
5:試験シートの退色及び添付白布の着色のいずれも確認できなかった。
4:試験シートの退色は確認できなかったが、添付白布に僅かな着色が確認できた。
3:試験シートに僅かな退色が確認でき、かつ、添付白布に着色が確認できた。
2:試験シートに退色が確認できた。
1:試験シートに激しい退色が確認された。
【0126】
(3-2)ウェットクリーニング耐性
40L(リットル)容量のうず巻き反転式家庭用洗濯機に、40℃の温水を30L入れ、洗剤[商品名:トッププラチナクリア、ライオン(株)」120gと、負荷布としての新品の綿製のタオル1kgと、試験シートを縫い付けた綿製のタオル1枚と、を入れ、洗濯15分間、すすぎ5分間、脱水1分間、及び室温乾燥を1サイクルとして、合計5サイクルの洗濯を行った。洗濯後の試験シートを目視にて観察し、下記の評価基準に従って、ウェットクリーニング耐性を評価した。結果を表2に示す。
ウェットクリーニング耐性に優れる膜を形成できる樹脂組成物は、「5」又は「4」に分類されるものである。
【0127】
(評価基準)
5:試験シートに損傷が確認されなかった。
4:試験シートに僅かな損傷が確認された。
3:試験シートに明らかな損傷が確認された。
2:試験シートの損傷が目立っていた。
1:試験シートの損傷が顕著であった。
【0128】
【表1】
【0129】
表1中、「-」は、該当成分を配合していないことを意味する。
表1に示す界面活性剤の配合量は、有効成分換算値である。
【0130】
表1に記載の各成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<アニオン型反応性界面活性剤>
「AR-10」:アクアロン(登録商標)AR-10[有効成分:ポリオキシエチレンスチレン化プロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]
「KH-10」:アクアロン(登録商標)KH-10[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:99質量%、第一工業製薬(株)]
「SR-10」:アデカリアソープ(登録商標)SR-10[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:100質量%、(株)ADEKA]
「SR-20」:アデカリアソープ(登録商標)SR-20[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分量:100質量%、(株)ADEKA]
「SR-3025」:アデカリアソープ(登録商標)SR-3025[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:30〕、有効成分量:25質量%、(株)ADEKA]
「JS-2」:エレミノール(登録商標)JS-2[有効成分:アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、有効成分量:38質量%、三洋化成工業(株)]
<ノニオン型反応性界面活性剤>
「ER-10」:アデカリアソープ(登録商標)ER-10[有効成分量:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:100質量%、(株)ADEKA]
「ER-20」:アデカリアソープ(登録商標)ER-20[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分量:75質量%、(株)ADEKA]
「ER-30」:アデカリアソープ(登録商標)ER-30[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:30〕、有効成分量:65質量%、(株)ADEKA]
「ER-40」:アデカリアソープ(登録商標)ER-40[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:40〕、有効成分量:60質量%、(株)ADEKA]
「KN-5065」:アクアロン(登録商標)KN-5065[有効成分:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:50〕、有効成分量:65質量%、(株)ADEKA]
<非反応性界面活性剤>
「08E」:ハイテノール(登録商標)08E[有効成分:ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸エステルアンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分量:95質量%、第一工業製薬(株)]
「1135S-70」:エマルゲン(登録商標)1135S[有効成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:40〕、有効成分量:70質量%、花王(株)]
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
「EA」:エチルアクリレート
「MMA」:メチルメタクリレート
<架橋性官能基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸(架橋性官能基:カルボキシ基)
「IA」:イタコン酸(架橋性官能基:カルボキシ基)
「DAAD」:ジアセトンアクリルアミド(架橋性官能基:ケトン基)
「MAA」:メタクリル酸(架橋性官能基:カルボキシ基)
<シアン化ビニル単量体>
「AN」:アクリロニトリル
<架橋剤>
「ADH」:アジピン酸ジヒドラジド[ヒドラジド系架橋剤、(株)日本ファインケム、有効成分量:98質量%]
【0131】
【表2】
【0132】
表2に示すように、実施例1~実施例14の樹脂組成物は、いずれも無機金属塩及び水溶性有機溶剤との混和性に優れていた。また、実施例1~実施例14の樹脂組成物によれば、耐洗濯性に優れる膜を形成できた。
一方、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位のいずれの構成単位も有しない樹脂粒子を含む比較例1の樹脂組成物は、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の両方を有する樹脂粒子を含む実施例(例えば、実施例11)の樹脂組成物と比較して、無機金属塩との混和性に劣る傾向を示した。また、水溶性有機溶剤との混和性にも劣る傾向を示した。さらに、形成される膜の耐洗濯性が劣る傾向を示した。
これらの傾向は、樹脂を構成する単量体の組成が異なる比較例2の樹脂組成物においても確認された。
ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有し、かつ、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有しない樹脂粒子を含む比較例3の樹脂組成物は、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の両方を有する樹脂粒子を含む実施例(例えば、実施例12)の樹脂組成物と比較して、無機金属塩との混和性に劣る傾向を示した。また、水溶性有機溶剤との混和性にも劣る傾向を示した。
アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有し、かつ、ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位を有しない樹脂粒子を含む比較例4の樹脂組成物は、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構成単位の両方を有する樹脂粒子を含む実施例(例えば、実施例12)と比較して、無機金属塩との混和性に劣る傾向を示した。
架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を有しない樹脂粒子を含む比較例5の樹脂組成物は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を有する実施例(例えば、実施例2)と比較して、無機金属塩との混和性に劣る傾向を示した。また、水溶性有機溶剤との混和性にも劣る傾向を示した。さらに、形成される膜の耐洗濯性が劣る傾向を示した。