(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】吊り戸構造
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
E05D15/06 125Z
E05D15/06 119
(21)【出願番号】P 2018238214
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390011903
【氏名又は名称】株式会社イリア
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂村 光一
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-23528(JP,A)
【文献】特開平10-339062(JP,A)
【文献】特開平9-209649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り具で吊持される吊り戸の構造において、
分断部材によって戸先側と戸尻側に分断された壁部と、当該分断されたえ壁部のうち戸先側の壁部に設けられた戸先側レールと、当該分断された壁部のうち戸尻側の壁部に設けられた戸尻側レールと、前記壁部の下方の出入り口を開閉する吊り戸と、当該吊り戸の戸先側領域に固設された戸先側吊り具と、当該吊り戸の戸尻側領域に固設された戸尻側吊り具と、当該吊り具の戸先側吊り具と戸尻側吊り具の間に設けられた上端側レール内に移動自在に設けられた可動吊り具を備え、
前記戸先側レールは前記戸先側吊り具が収まる収容部を備え、
前記吊り戸は、前記戸先側吊り具が前記戸先側レールの収容部に収まっているときには、当該戸先側吊り具、前記戸尻側吊り具及び可動吊り具によって吊持され、前記戸先側吊り具が前記戸尻側レールの収容部に収まっていないときには、戸先側領域を吊持する可動吊り具及び戸尻側領域を吊持する戸尻側吊り具によって吊持される、
ことを特徴とする吊り戸構造。
【請求項2】
請求項1記載の吊り戸構造において、
戸先側レールは上領域と下領域を備え、
戸先側吊り具が収まる収容部が前記下領域に設けられた、
ことを特徴とする吊り戸構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吊り戸構造において、
戸先側レールの収容部が分断部材の下端部よりも下側に突出している、
ことを特徴とする吊り戸構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吊り戸構造において、
戸先側レールの分断部材側の端部に、吊り戸の戸先側吊り具を当該戸先側レールの収容部内に案内するガイド体が設けられた、
ことを特徴とする吊り戸構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吊り戸構造において、
戸先側吊り具及び戸尻側吊り具は回転式の枠側部材と固定式の戸側部材を備えた上回転型吊り具であり、
可動吊り具は回転式の枠側部材と回転式の戸側部材を備えた双方回転型吊り具である、
ことを特徴とする吊り戸構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吊り戸構造において、
戸先側レールに吊り戸の閉方向の勢いを減衰するブレーキ装置が設けられた、
ことを特徴とする吊り戸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊下げ式の引き戸(本願において「吊り戸」という)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
介護施設や病院、一般家庭等(本願において「施設等」という)、介護や介抱が行われる現場では、被介護者や患者(本願において「被介護者等」という)を移動するために、吊下げ走行式のリフト(本願において「移動リフト」という)が使用されることがある。移動リフトの一種として、室内の天井側に設置されたレール(移動用レール)にリフト本体を吊下げ、そのリフト本体を移動用レールに沿って移動させて被介護者等を移動させるものが知られている(特許文献1)。特許文献1の介護用リフトでは、分断された移動用レール間で吊下げベルトを掛け替えることによって、鴨居で仕切られた部屋間を移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吊下げベルトを掛け替え可能な設備は高価なものが多く、資金的な理由で導入できない施設等もある。このような施設等では、移動用レールを部屋単位で設置し、その移動用レール間の移動は介護スタッフが被介護者等を抱えて行っている。一般的な被介護者等の体重は数十kg以上あるため、被介護者等を抱えて移動させるのは、介護スタッフにとって非常に負担が大きい。
【0005】
戸が開き戸の場合、鴨居などの仕切り(本願において「壁部」という)の一部を切欠き、その切欠き部分に部屋間を貫通する一本の移動用レールを通すことによって前記問題を解決することができるが、戸が吊り戸の場合には、吊り戸用レールが分断されることになり、その分断部分から吊り戸レール内を移動する吊り具が外れて、戸の開閉に支障をきたすおそれがある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、壁部に設けられたガイドレールが分断されていても、吊り戸が傾いたり、脱落したりすることなく開閉することができる吊り戸構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吊り戸構造は、戸先側レール、戸尻側レール、吊り戸、戸先側吊り具、戸尻側吊り具及び可動吊り具を備えた構造である。戸先側レールは戸先側吊り具が収まる収容部を備えている。吊り戸は、戸先側吊り具が戸先側レールの収容部に収まっているときには戸先側吊り具、戸尻側吊り具及び可動吊り具によって吊持され、戸先側吊り具が戸尻側レールの収容部に収まっていないときには、戸先側領域を吊持する可動吊り具及び戸尻側領域を吊持する戸尻側吊り具によって吊持されるようにしてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吊り戸構造は、吊り戸の幅方向の中心よりも戸先側の領域(本願において「戸先側領域」という)が、戸先側吊り具と可動吊り具の双方又は可動吊り具で吊持され、幅方向の中心よりも戸尻側の領域(本願において「戸尻側領域」という)が戸尻側吊り具で吊持されるようにしてあるため、ガイドレールが分断されていても、吊り戸が不用意に傾いたり、脱落したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明の吊り戸構造における吊り戸が閉じた状態を示す斜視図、(b)は本発明の吊り戸構造における吊り戸が開いた状態を示す斜視図。
【
図2】(a)は全閉状態の吊り戸の部分拡大図、(b)は全開状態の吊り戸の部分拡大図。
【
図3】(a)は戸先側レールに設けられたガイド体の説明図、(b)は戸先側レールと戸先側吊り具の位置関係の説明図。
【
図5】(a)は可動吊り具の説明図、(b)は戸尻側吊り具の説明図。
【
図6】(a)は戸先側吊り具の一例を示す斜視図、(b)は(a)の分解斜視図。
【
図7】(a)は戸先側吊り具の調整棒とストップピースの説明図、(b)はストップピースの脚部の説明図。
【
図8】(a)~(c)はベースブラケットの高さ調整手順の説明図。
【
図9】(a)は可動吊り具の一例を示す斜視図、(b)は(a)の分解斜視図。
【
図10】(a)は戸尻側吊り具の一例を示す斜視図、(b)は(a)の分解斜視図。
【
図11】(a)は吊り戸が完全に閉じた状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図12】(a)は戸先側吊り具が戸先側レールの下領域から離脱した状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図13】(a)は戸側ブロックが可動吊り具の突き当て具に突き当たった状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図14】(a)は吊り戸が完全に開いた状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図15】(a)は吊り戸が完全に開いた状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図16】(a)は可動吊り具の突き当て具が壁側ブロックに突き当たった状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図17】(a)は戸先側吊り具の枠側部材が戸先側レールの下領域に収まった状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図18】(a)は吊り戸が完全に閉じた状態の正面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
本発明の吊り戸構造の一例を、図面を参照して説明する。
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)において、1は壁部、2は吊り戸レール、3は吊り戸、4は上端側レール、5は介護リフト用の移動レール(分断部材)、6は戸先側吊り具、7は可動吊り具、8は戸尻側吊り具である。
【0011】
前記壁部1は部屋と部屋とを仕切る壁である。
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)に示すように、この実施形態の壁部1は、移動レール5によって、移動レール5よりも戸先側の戸先側壁部1aと、移動レール5よりも戸尻側の戸尻側壁部1bとに分断されている。壁部1の下側には前記吊り戸レール2が設けられている。
【0012】
前記吊り戸レール2は、吊り戸3を吊持する各吊り具6、7、8が走行するガイドレールである。なお、本願における「吊持」とは吊り下げて保持することをいい、各吊り具が吊り戸3に固定されているか否かを問わない。この実施形態の吊り戸レール2は、戸先側壁部1aに設けられた戸先側レール2aと、戸尻側壁部1bに設けられた戸尻側レール2bとで構成されている。戸先側レール2aは戸先側壁部1aの略全長に亘って設けられ、戸尻側レール2bは戸尻側壁部1bの略全長に亘って設けられている。戸先側レール2aと戸尻側レール2bは同一直線状に設置されている。戸先側レール2aには凹陥状のガイド溝2cが、戸尻側レール2bには凹陥状のガイド溝2dが設けられている。
【0013】
この実施形態の戸先側レール2aは、凹陥状のガイド溝2cを備えた端面視下向きU字状の長尺部材である。
図3(a)(b)に示すように、戸先側レール2aの両縦面2eの中段位置には内向きに突出する突条2fが設けられている。この実施形態のガイド溝2cは、突条2fの上側の領域(本願において「上領域」という)2gと下側の領域(本願において「下領域」という)2hの二つの領域から構成されている。ガイド溝2cのうち、上領域2gには吊り戸3の閉方向への勢いを減衰するブレーキ装置12(
図2(a)(b)参照)が、下領域2hには後述する戸先側吊り具6の枠側部材61が収まる(収容部として機能する)ようにしてある。上領域2gと下領域2hは連通している。下領域2hの移動レール5側の端部には、戸先側吊り具6の一部を下領域2h内に案内するガイド体13が設けられている。この実施形態では、ガイド溝2cの下領域2hに収容部が設けられた場合を一例としているが、ガイド溝2cは上領域2gと下領域2hに分かれていなくてもよく、この場合は、両縦面2eの間の空間が収容部として機能する。
【0014】
図3(a)(b)に示すように、この実施形態のガイド体13は、戸先側レール2aの表面に取り付けられた表側部材13aと、戸先側レール2aの裏面側に取り付けられた裏側部材13bを備えている。表側部材13a及び裏側部材13bは、戸先側レール2aの移動レール5側の端部よりも外側に突出する部分が外広がりに湾曲しており、当該湾曲部分の端部間に幅広の導入口13cが形成されている。外広がりの導入口13cを設けることによって、戸先側吊り具6を下領域2hに確実に案内することができる。ガイド体13は、戸先側吊り具6を下領域2hに導入しやすい形状であればこれ以外の構造とすることもできる。ガイド体13は省略することもできる。
【0015】
戸先側レール2aの上領域2gには前記ブレーキ装置12(
図2(a)(b)参照)が装備されている。なお、この実施形態では、戸先側レール2aの突条2fと移動レール5の下端が同じ又は略同じ位置となるようにしてあり、戸先側レール2aのうち下領域2hの部分が移動レール5の下端よりも下側に突出するようにしてある。
【0016】
前記戸尻側レール2bは、端面視下向きU字状の長尺部材である。
図2(a)(b)に示すように、戸尻側レール2bのガイド溝2dのうち、移動レール5側の端部には、直方体状の壁側ブロック9が設けられている。壁側ブロック9には磁石(図示しない)が設けてある。磁石を設ける代わりに、磁性を備えた材料で壁側ブロック9を構成することもできる。壁側ブロック9には、磁石以外の吸着手段を設けることもできる。この実施形態の壁側ブロック9は可動吊り具7の移動を停止させるストッパーとしての役割を果たすものである。
【0017】
前記吊り戸3は部屋間の壁部1の下方に設けられた出入り口Xを開閉するためのものである。一例として
図1(a)(b)に示す吊り戸3は縦長方形状であるが、吊り戸3は横長方形状であってもよい。
図4及び
図5(a)(b)に示すように、吊り戸3の上部には上端側レール4が設けられている。上端側レール4は吊り戸レール2と対向する位置に設けてある。上端側レール4は吊り戸3の中心付近に設けられており、上端側レール4よりも戸先側には戸先側吊り具6が、上端側レール4よりも戸尻側には、戸尻側吊り具8及び吊り戸3自閉用のゼンマイユニット10が設けられている。上端側レール4には、可動吊り具7の戸側部材72が収まる凹陥状のガイド溝4xが設けられている。
【0018】
前記ガイド溝4xには直方体状の戸側ブロック11が固設されている。戸側ブロック11には図示しない磁石が設けてある。壁側ブロック9と同様、磁石を設ける代わりに、磁性を備えた材料で戸側ブロック11を構成することもできる。この実施形態の戸側ブロック11は上端側レール4の戸先側の端部に固定されている。戸側ブロック11は、可動吊り具7の戸側部材72を吊り戸3が開く方向(本願において「開方向」という)に押す押し具の役割を果たすものである。
【0019】
図6(a)(b)にこの実施形態の戸先側吊り具6を示す。
図6(a)(b)において、61は枠側部材、62は戸側部材である。この実施形態の戸先側吊り具6は、枠側部材61に回転ローラー(上ローラー61b)が設けられ、戸側部材62に固定具(埋設ケース62a)が設けられた上回転型吊り具である。
【0020】
前記枠側部材61は、枠側ブラケット61aと上ローラー61bと突き当て具61cを備えている。枠側ブラケット61aは、断面視上向きU字状の部材であり、対向する両側面間に二つの上ローラー61bが間隔をあけて軸支されている。枠側ブラケット61aの長手方向両端側には、ネジ孔61dを備えた止め片61eが設けられている。一方の止め片61eのネジ孔61dには、突き当て具61c及び前記戸側部材62のベースブラケット62fとの固定に用いる固定ネジB2が螺合され、他方の止め片61eのネジ孔61dには、ベースブラケット62fとの固定に用いる固定ネジB3が螺合される。枠側ブラケット61aは前記戸側部材62の内ケース62b内に収容され、後述する可動ピン62dによって内ケース62bに連結されている。
【0021】
前記戸側部材62は、埋設ケース62aと、内ケース62bと、調整棒62cと、可動ピン62dと、ストップピース62eと、ベースブラケット62fを備えている。埋設ケース62aは断面視上向きU字状の部材であり、対向する立ち上がり面の上端には内向きに突出する係止部62gが設けられている。
図4に示すように、埋設ケース62aは、固定ネジB1によって吊り戸3の戸先側の端部に埋設固定されている。
【0022】
前記内ケース62bは前後及び左右に立設面を備えた上面開口の部材であり、対向する両側面の後端寄りの位置には、両端部が弧状の横長孔62hが形成されている。両横長孔62hの間には、雌ネジ孔62iを備えた筒状の可動ピン62dが配置されている。内ケース62bの対向する前後面には、前記調整棒62cを挿通する挿通孔62jが設けられている。
【0023】
前記調整棒62cは、皿状の頭部と雄ネジを有する軸部を備えた部材であり、軸部の途中には四つの偏平面62kが設けられている。調整棒62cは内ケース62bの前端面の挿通孔62j-可動ピン62dの雌ネジ孔62i-後端面の挿通孔62jの順に挿入され、後端面の挿通孔62jを通過した先端側にナットN1が締結されている。ナットN1の締結により、調整棒62cが不用意に脱落するのが防止される。
【0024】
図7(a)(b)に示すように、調整棒62cの偏平面62kが設けられた部分には、門型のストップピース62eが嵌合され、調整棒62cが不用意に回転しないように保持されている。ストップピース62eの脚部62mは、調整棒62cの偏平面62kに当接するときには間隔が狭くなり、偏平面62kの隙間の筒状部62nに当接するときには間隔が広くなるように、幅方向(
図7(b)の矢印方向)に弾性変形するようにしてある。ストップピース62eは、その上辺部62pの両端が内ケース62bの両側面に形成された嵌合凹部62rに嵌合して前後方向に移動しないようにしてある。
【0025】
前記ベースブラケット62fは、断面視下向きU字状の部材であり、対向する両側面には両端部弧状の横長孔62sが設けられている。両横長孔62sは、両側面の上辺及び下辺に対して斜めに形成されている。ベースブラケット62fの上面は枠側ブラケット61aを載せる載せ部であり、その長手方向一端側には突き当て具61c及び枠側ブラケット61aの固定に用いる固定ネジB2が螺合するネジ孔62tが、他端側には枠側ブラケット61aの固定に用いる固定ネジB3が螺合するネジ孔62tが設けられている。
【0026】
図8(a)~(c)に示すように、この実施形態の戸先側吊り具6は、調整棒62cを正逆方向に回転させることによって、ベースブラケット62fの高さ調整をすることができる。
図8(a)は可動ピン62dが内ケース62bの横長孔62h及びベースブラケット62fの横長孔62sの一番奥に位置した状態を示すもの、
図8(b)は可動ピン62dが内ケース62bの横長孔62h及びベースブラケット62fの横長孔62sの中間付近に位置した状態を示すもの、
図8(c)は可動ピン62dが内ケース62bの横長孔62h及びベースブラケット62fの横長孔62sの一番手前に位置した状態を示すものである。調整棒62cを反時計回りに回すと可動ピン62dが移動してベースブラケット62fは下降し、調整棒62cを時計回りに回すと可動ピン62dが移動してベースブラケット62fは上昇するように構成されている。
【0027】
図9(a)(b)にこの実施形態の可動吊り具7を示す。
図9(a)(b)において、71は枠側部材、72は戸側部材、73は連結部材である。この実施形態の可動吊り具7は、枠側部材71と戸側部材72の双方に回転ローラー(上ローラー71b及び下ローラー72b)が設けられた双方回転型吊り具である。
【0028】
前記枠側部材71は枠側ブラケット71aと、枠側ブラケット71aに間隔をあけて設けられた二つの上ローラー71bを備えている。枠側ブラケット71aの長手方向両端にはネジ孔71cを備えた止め片71dが設けられている。止め片71dは、枠側部材71と連結部材73とを連結する際にL字状の突き当て具71eを固定する部分である。
【0029】
前記戸側部材72は戸側ブラケット72aと戸側ブラケット72aに間隔をあけて設けられた二つの下ローラー72bを備えている。戸側ブラケット72aに設けられた両下ローラー72bの間には、接続ボルト73aを挿通するための挿通孔72cが設けられている。
【0030】
前記連結部材73は、接続ボルト73aと接続ボルト73aを吊る吊りブラケット73bと接続ボルト73aを抑える押さえ具73cを備えている。吊りブラケット73bの長手方向両端にはネジ孔73dを備えた止め片73eが設けられている。接続ボルト73aはその頭部と軸部の付け根部分が吊りブラケット73bのセット凹部73fにセットされ、その接続ボルト73aの上側に押さえ具73cが被せられて固定ネジB4で固定されていることによって、吊りブラケット73bと押さえ具73cで保持されている。固定ネジB4は吊りブラケット73bの固定片73gのネジ孔73hに螺合される。
【0031】
枠側部材71と連結部材73は、枠側ブラケット71aの止め片71d、吊りブラケット73bの止め片73e及びL字状の突き当て具71eが固定ネジB5で固定されることによって連結されている。また、戸側部材72と連結部材73は、戸側ブラケット72aの挿通孔72cに差し込まれた接続ボルト73aの先端側にナットN2が締結されることによって連結されている。
【0032】
図10(a)(b)にこの実施形態の戸尻側吊り具8を示す。
図10(a)(b)において、81は枠側部材、82は戸側部材、83は連結部材である。この実施形態の戸尻側吊り具8は、枠側部材81に回転ローラー(上ローラー81b)が設けられ、戸側部材82に固定具(固定プレート82a)が設けられた上回転型吊り具である。
【0033】
前記枠側部材81は、枠側ブラケット81aと、枠側ブラケット81aに間隔をあけて設けられた二つの上ローラー81bを備えている。枠側ブラケット81aの長手方向両端にはネジ孔81cを備えた止め片81dが設けられている。止め片81dは、枠側部材81と連結部材83とを連結する際に、固定ネジB6を固定する部分である。
【0034】
前記戸側部材82は横長方形状の固定プレート82aとその固定プレート82aの底面側に固定された固定ナット82bで構成されている。固定プレート82aには接続ボルト83aを挿通可能な挿通孔82cが設けられ、その挿通孔82cと連通する位置に固定ナット82bが設けられている。固定プレート82aは戸尻側吊り具8を吊り戸3に固定する際に吊り戸3の上端面にあてがう部材である。固定プレート82aは、固定ネジB7によって吊り戸3の上端面に固定される。
【0035】
前記連結部材83は、接続ボルト83aと接続ボルト83aを吊る吊りブラケット83bと接続ボルト83aを抑える押さえ具83cを備えている。吊りブラケット83bの長手方向両端にはネジ孔83dを備えた止め片83eが設けられている。接続ボルト83aはその頭部と軸部の付け根部分が吊りブラケット83bのセット凹部83fにセットされており、その接続ボルト83aの上側に押さえ具83cが被せられて固定ネジB8で固定されている。固定ネジB8は吊りブラケット83bの固定片83gのネジ孔83hに螺合される。
【0036】
前記枠側部材81と連結部材83は、枠側ブラケット81aの止め片81dと吊りブラケット83bの止め片83eが固定ネジB6で固定されることによって連結されている。戸側部材82と連結部材83は、固定プレート82aの挿通孔82cを通過した接続ボルト83aの先端が当該固定プレート82aに設けられた固定ナット82bにねじ込まれることによって連結されている。
【0037】
[吊り戸を開く際の動作]
(1)全閉状態にある吊り戸3(
図11(a)(b))を開方向へ移動させると、戸先側吊り具6が戸先側レール2aの下領域2hから離脱する(
図12(a)(b))。
(2)上記(1)の状態でさらに吊り戸3を開方向へ移動させると、上端側レール4に設けられた戸側ブロック11が可動吊り具7の戸側部材72に突き当たり(
図13(a)(b))、戸尻側レール2bの壁側ブロック9に磁着した可動吊り具7の枠側部材71が当該壁側ブロック9から離れて、全開位置まで移動する(
図14(a)(b))。
【0038】
上記吊り戸3を開く動作では、吊り戸3を開く途中で戸先側吊り具6を戸先側レール2aから離脱させるが、戸先側吊り具6が戸先側レール2aから離脱する前に、戸先側領域3aが可動吊り具7で吊持され、戸尻側領域3bが戸尻側吊り具8で吊持されるため、吊り戸3が不用意に傾いたり、脱落したりすることがない。
【0039】
[吊り戸を閉じる際の動作]
(1)全開状態にある吊り戸3(
図15(a)(b))を閉方向へ移動させると、可動吊り具7の枠側部材71の突き当て具71eが戸尻側レール2bの壁側ブロック9に突き当たり(
図16(a)(b))、枠側部材71が壁側ブロック9に磁着する。
(2)上記(1)の状態でさらに吊り戸3を閉方向へ移動させると、上端側レール4の戸側ブロック11に磁着していた可動吊り具7の戸側部材72が当該戸側ブロック11から離される(
図17(a)(b))とともに、戸先側吊り具6の枠側部材61が戸先側レール2aの下領域2hに収まり、吊り戸3が全閉位置まで移動する(
図18(a)(b))。
【0040】
上記吊り戸3を閉じる動作では、戸尻側領域3bが戸尻側吊り具8で常時吊持されていることに加えて、戸先側吊り具6が戸先側レール2aの下領域2hに収まるまでは可動吊り具7によって、戸先側吊り具6が戸先側レール2aの下領域2hに収まった後は戸先側吊り具6及び可動吊り具7によって戸先側領域3aが吊持されるため、吊り戸3が不用意に傾いたり、脱落したりすることがない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の吊り戸構造は、介護施設や病院等の施設、一般家庭など、レール式の移動装置(例えば、介護リフト)を設置する場合などに特に適する構造である。
【符号の説明】
【0042】
1 壁部
1a 戸先側壁部
1b 戸尻側壁部
2 吊り戸レール
2a 戸先側レール
2b 戸尻側レール
2c ガイド溝
2d ガイド溝
2e 両縦面
2f 突条
2g 上領域
2h 下領域
3 吊り戸
3a 戸先側領域
3b 戸尻側領域
4 上端側レール
4x ガイド溝
5 移動レール(分断部材)
6 戸先側吊り具
61 枠側部材
61a 枠側ブラケット
61b 上ローラー
61c 突き当て具
61d ネジ孔
61e 止め片
62 戸側部材
62a 埋設ケース
62b 内ケース
62c 調整棒
62d 可動ピン
62e ストップピース
62f ベースブラケット
62g 係止部
62h 横長孔
62i 雌ネジ孔
62j 挿通孔
62k 偏平面
62m 脚部
62n 筒状部
62p 上辺部
62r 嵌合凹部
62s 横長孔
62t ネジ孔
7 可動吊り具
71 枠側部材
71a 枠側ブラケット
71b 上ローラー
71c ネジ孔
71d 止め片
71e 突き当て具
72 戸側部材
72a 戸側ブラケット
72b 下ローラー
72c 挿通孔
73 連結部材
73a 接続ボルト
73b 吊りブラケット
73c 押さえ具
73d ネジ孔
73e 止め片
73f セット凹部
73g 固定片
73h ネジ孔
8 戸尻側吊り具
81 枠側部材
81a 枠側ブラケット
81b 上ローラー
81c ネジ孔
81d 止め片
82 戸側部材
82a 固定プレート
82b 固定ナット
82c 挿通孔
83 連結部材
83a 接続ボルト
83b 吊りブラケット
83c 押さえ具
83d ネジ孔
83e 止め片
83f セット凹部
83g 固定片
83h ネジ孔
9 壁側ブロック
10 ゼンマイユニット
11 戸側ブロック
12 ブレーキ装置
13 ガイド体
13a 表側部材
13b 裏側部材
13c 導入口
B1~B8 固定ネジ
N1~N2 ナット
X 出入り口