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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】バッテリおよび充電器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220308BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220308BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220308BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220308BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H01M10/48 Z
H02J7/00 S
B64C39/02
B64D27/24
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020504961
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2019007743
(87)【国際公開番号】W WO2019172060
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2018041029
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 均
(72)【発明者】
【氏名】長野 博之
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和弘
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-091085(JP,A)
【文献】特開2017-175736(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006152(WO,A1)
【文献】特開2006-019194(JP,A)
【文献】特開平09-312172(JP,A)
【文献】特開2009-259837(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/44
H02J 7/00
B64C 39/02
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能なバッテリであって、
バッテリセルを有するバッテリパックと、
バッテリの機能に障害をもたらす現象を検出するセンサと、
前記センサの検出信号を記憶するメモリと、
前記検出信号によって前記バッテリパックからの出力を遮断する遮断回路と、を有し、
前記メモリは、充電器が有している診断回路によって当該バッテリが正常と判断された場合にデータがクリアされ、当該バッテリを使用可能にする、バッテリ。
【請求項2】
前記遮断回路は、前記バッテリパックの出力を遮断するスイッチと、
前記スイッチの動作を制御するスイッチ制御回路を有してなる
請求項1記載のバッテリ。
【請求項3】
前記遮断回路は、前記メモリに記憶されている前記検出信号によって前記バッテリパックからの出力ラインを遮断する
請求項1又は2記載のバッテリ。
【請求項4】
前記メモリは、前記センサの前記検出信号および前記遮断回路の動作に関する信号を含むバッテリの履歴を記憶する
請求項1乃至3のいずれかに記載のバッテリ。
【請求項5】
前記メモリに記憶されている前記履歴を表示する表示部を有する
請求項4記載のバッテリ。
【請求項6】
前記バッテリパックへの充電回数を記憶し、充電回数が所定回数に達すると前記遮断回路によって前記バッテリパックからの出力ラインを遮断させる充電記録部を有する
請求項1乃至5のいずれかに記載のバッテリ。
【請求項7】
充電可能なバッテリであって、
バッテリセルを有するバッテリパックと、
バッテリの機能に障害をもたらす現象を検出するセンサと、
前記センサの検出信号を記憶するメモリと、
前記検出信号によって前記バッテリパックからの出力を遮断すべき旨の指令信号出力する指令信号出力部と、を有し、
前記メモリは、充電器が有している診断回路によって当該バッテリが正常と判断された場合にデータがクリアされ、当該バッテリを使用可能にする、バッテリ。
【請求項8】
前記センサは、衝撃を検出するセンサである
請求項1乃至7のいずれかに記載のバッテリ。
【請求項9】
前記センサは、水没を検出するセンサである
請求項1乃至7のいずれかに記載のバッテリ。
【請求項10】
無人飛行体に搭載可能なバッテリを充電する充電器であって、
前記バッテリが正常に機能するか否かを診断する診断回路を有し、
前記バッテリが正常に機能することができないものと前記診断回路が判断すると、前記バッテリの充電を禁止し、
前記バッテリが正常であると前記診断回路が判断すると、前記バッテリにおけるメモリのデータがクリアされ、前記バッテリを使用可能にする、
充電器。
【請求項11】
前記バッテリへの充電を遮断する充電遮断回路を有し、前記診断回路の判断によって前記充電遮断回路を作動させ、前記バッテリの充電を禁止する
請求項10記載の充電器。
【請求項12】
前記診断回路による診断データは、前記バッテリ側のメモリに向けて出力される
請求項10または11記載の充電器。
【請求項13】
バッテリセルを有するバッテリパックと、バッテリの機能に障害をもたらす現象を検出するセンサと、前記センサの検出信号を記憶するメモリと、前記検出信号によって前記バッテリパックからの出力を遮断する遮断回路と、を有するバッテリの充電器であって、前記検出信号とバッテリを個体ごとに識別するIDとを記憶することができる充電器側メモリを有し、
前記充電器側メモリは、前記IDで識別されるバッテリが出力を遮断した履歴を有するものである場合に、前記バッテリの充電を禁止する
請求項10乃至12のいずれかに記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性を高めたバッテリ、およびこのバッテリを搭載する充電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人飛行体(以下「ドローン」ともいう。)の利用が進んでいる。ドローンの重要な利用分野の一つとして、農地すなわち圃場への農薬や液肥などの薬剤散布がある(例えば、特許文献1参照)。欧米と比較して農地が狭い日本においては、有人の飛行機やヘリコプターによる薬剤散布よりも、ドローンによる薬剤散布が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システム(QZSS)やRTK-GPSなどの技術を利用することにより、ドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができる。したがって、日本において典型的な、狭くて複雑な地形の農地においても、自律的な飛行によって人手による操縦を低減し、効率的かつ正確な薬剤散布が可能になっている。
【0004】
その一方、例えば農業用の薬剤散布などに用いられる自律飛行型ドローンにおいては、安全性に対する考慮が必要である。薬剤を搭載したドローンの重量は数10キログラムになるため、人の上に落下するなどの事故が起きた場合に重大な結果を招きかねない。また、ドローンの操作者はドローンに関する専門家ではないため、非専門家であっても安全性が確保されるフールプルーフの仕組みが必要である。今までに、人間による操縦を前提としたドローンの安全性技術は存在していたが(たとえば、特許文献2参照)、特に農業用の薬剤散布向けの自律飛行型ドローンに特有の安全性課題に対応するための技術は存在していなかった。
【0005】
ドローンは一般に電動モータを駆動源としており、電動モータを駆動する電源としてバッテリが搭載されている。したがって、前述のように安全性が厳しく要求されるドローンにおいては、バッテリの機能障害を防止し、バッテリの機能障害がドローンとしての機能障害の要因になることを防止することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-120151号公報
【文献】特開2017-163265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係るバッテリは、機能障害の要因となる現象を検出すると使用不能とすることにより、そのバッテリを使用する機器の機能障害を未然に防止することを目的とする。
本発明に係る充電器は、バッテリの機能障害を要因とする機能障害の発生を未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバッテリは、
バッテリセルを有するバッテリパックと、
バッテリの機能に障害をもたらす現象を検出するセンサと、
前記センサの前記検出信号を記憶するメモリと、
前記検出信号によって前記バッテリパックからの出力ラインを遮断する遮断回路と、
を有することを最も主要な特徴とする。
【0009】
本発明に係る充電器は、無人飛行体に搭載可能なバッテリを充電する充電器であって、バッテリが正常に機能するか否かを診断する診断回路を有し、バッテリが正常に機能することができないものと診断回路が判断すると、バッテリの充電を禁止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るバッテリは、バッテリの機能に障害をもたらす現象が生じると、これをセンサで検出し、この検出信号をメモリに記憶するとともに前記検出信号でバッテリパックの出力を遮断する。したがって、以後、機能障害を生じる可能性の高い上記バッテリは使用不能となり、バッテリの障害が外部機器の機能に及ぶことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るバッテリおよび無人飛行体の実施例の概要を示すブロック図である。
図2】本発明に係るバッテリおよび無人飛行体の別の実施例を示すブロック図である。
図3】本発明に係るバッテリおよび無人飛行体のさらに別の実施例を示すブロック図である。
図4】本発明に係るバッテリおよび無人飛行体のさらに別の実施例を示すブロック図である。
図5】本発明に係るバッテリおよび無人飛行体のさらに別の実施例を示すブロック図である。
図6】本発明に係るバッテリの例とこのバッテリの充電器の実施例を示すブロック図である。
図7】無人飛行体としてのドローンの概要を示す平面図である。
図8】上記ドローンの制御系統の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るバッテリ、このバッテリを用いる無人飛行体および充電器の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例
【0013】
[無人飛行体(ドローン)の概要]
図7に示すように、ドローン2は、軸を中心に回転駆動される複数の(図示の例では4つの)回転翼101を有している。上記各回転翼101は個別のモータ21によって回転駆動され、上記軸方向の空気の流れを発生することにより軸方向の推力を発生させる。上記各回転翼101は、ドローン2の本体104から延び出た4つのアームの先端部に、上記モータ21とともに取り付けられている。
【0014】
ドローン2は、上記各回転翼101の回転数および回転方向を個別に制御する飛行制御部30(図8参照)を本体104内に有している。飛行制御部30は、駆動ユニットを介して各回転翼101の回転を個別に制御することにより、ドローン2の離着陸、前進、後退、上昇、下降、左右への移動、ホバリングなど、ドローン2として必要な各種の動作を行わせることができる。
【0015】
図8に示すフライトコントローラが上記飛行制御部30を構成している。図8には、飛行制御部30を中心に、飛行制御部30への信号入力要素、飛行制御部30の出力信号によって動作が制御される制御対象が示されている。以下、これらの信号入力要素および制御対象のうち、本願発明に直接的に関係のあるものを重点的に説明する。
【0016】
図8において、飛行制御部30には、タブレット40から送信される指令信号、各種センサからの検出信号などが入力される。飛行制御部30は、上記各種入力信号に基づいて、前記各回転翼101を回転駆動する各モータ21への給電を制御し、各回転翼101の回転速度を制御する。ドローン2は、タブレット40によって設定されたプログラムに従い、GPSデータなどによって位置を確認しながら、また、各種センサからの信号を確認しながら動作する自律型のドローンである。
【0017】
図7では4個の回転翼101が示されているが、各回転翼101の回転軸の延長上にもう一つずつ回転翼が配置され、合計8個の回転翼が配置されている。図8には8個の回転翼を個別に回転駆動する8個のモータ21が描かれている。同軸上に配置されている2個の回転翼は互いに逆向きに回転駆動され、推力は同一の向きに生じるように回転翼の捩じりの向きが互いに逆になっている。ただし、本発明では、回転翼101の数は任意であり、1軸の回転翼を単数とするか複数とするか否かは任意である。
【0018】
図8に示すように、ドローン2は、各モータ21を駆動するバッテリ1を搭載することができる。バッテリ1はバッテリパック11を有し、飛行制御部30によって制御される駆動ユニットを介して各モータ21にバッテリパック11から電源が供給される。
【0019】
本発明の特徴の一つはバッテリ1にある。バッテリ1は、スイッチ16とこのスイッチ16のオン・オフを制御するスイッチ制御部を有する遮断回路20を備えている。スイッチ16はバッテリパック11からの電源供給ラインに直列に接続された開閉スイッチで、通常は、スイッチ制御部によってオン状態を維持するように制御されている。バッテリパック11は、例えばリチウムイオン型の充電可能な単数または複数のバッテリセルで構成されている。
【0020】
図8には記載されていないが、バッテリ1は、バッテリ1の負荷であるドローン2などの機能に障害をもたらす現象が生じた場合にこれを検出して信号を出力する検出部を有している。遮断回路20が備えている前記スイッチ制御部は、上記検出部の検出信号が入力されると、スイッチ16をオフに切り替える。以下、バッテリ1の詳細な構成および電源制御部によるスイッチ16のオン・オフ制御について説明する。
【0021】
[バッテリの実施例]
図1において、符号1はバッテリを示す。バッテリ1は、例えばリチウムイオンバッテリなどの充電可能なバッテリである。バッテリ1は、単数または複数のバッテリセルを有してなるバッテリパック11を有する。バッテリパック11は各種の機器を駆動する駆動電源となるもので、バッテリパック11からの電源出力ラインをオン、オフするスイッチ16が設けられている。
【0022】
図1に示すバッテリ1の特徴は、スイッチ16とともに、バッテリ1の機能に障害をもたらす現象を検出するセンサ12,13と、メモリ14と、スイッチ16をオン、オフ制御するスイッチ制御部15を有していることである。
【0023】
前記バッテリ1の機能に障害をもたらす現象を検出するセンサとして、図1に示す実施例では、衝撃センサ12、水没センサ13を有している。バッテリ1が例えばリチウムイオンバッテリの場合、衝撃力が加わってバッテリセルの構造に変化が生じると、温度の上昇、発火などの障害が生じる可能性がある。このような障害の要因を衝撃センサ12で検出する。また、バッテリ1が水没すると、バッテリ1が十分な性能を発揮することができず、バッテリ1を駆動電源とする機器の動作に障害を生じる可能性がある。このような障害の要因を水没センサ13で検出する。
【0024】
バッテリ1の機能に障害をもたらす現象を検出するセンサは、衝撃センサ12、水没センサ13に限られるものではない。例えば、極端な高温や低温に晒された履歴を持つことによってバッテリ1の機能に障害をもたらすことがあるとすれば、温度センサを設けてもよい。
【0025】
衝撃センサ12および水没センサ13の検出信号すなわちトラブルを示す信号は一旦メモリ14に入力され、トラブルがバッテリ1の履歴としてメモリ14に記録される。メモリ14は、前記検出信号をスイッチ制御部15に入力する。スイッチ制御部15は、前記検出信号が入力されることによりスイッチ16をオフに切り替える。
【0026】
スイッチ制御部15とスイッチ16は、衝撃センサ12および水没センサ13の検出信号によってバッテリパック11の出力を遮断する遮断回路を構成している。メモリ14は、衝撃センサ12および水没センサ13の検出信号を記憶し、かつ、上記検出信号を前記遮断回路に入力する。前記センサ12、13の検出信号は、メモリ14に入力するとともに、直接スイッチ制御部15に入力するように構成してもよい。
【0027】
通常、スイッチ16はオンになっていて、電源出力ラインから外部機器に電源を供給することができるとともに、バッテリ1内のメモリ14やスイッチ制御部15に動作電源を供給する。スイッチ制御部15は、通常の状態でスイッチ16をオンに自己保持させ、前記衝撃センサ12または水没センサ13の検出信号でスイッチ16の自己保持を解除する構成にしてもよい。
【0028】
バッテリ1は各種機器に搭載して各種機器の電源として使用することができる。図1に示す例では、上記電源出力ラインに無人飛行体であるドローン2を接続してドローン2にその駆動電源を供給するようになっている。
【0029】
上記電源出力ラインにはまた充電器3を接続することができる。図1に示す充電器3の例では交流電源を整流して所定の電圧の直流電源に変換し、バッテリパック11を充電する構成になっている。充電器3の内部構成は既に知られている充電器の内部構成と同じく、整流回路のほか、必要に応じて例えば平滑回路、電圧制御回路、電流制御回路などを有している。充電器3の出力ラインには、逆流防止用のダイオード31が接続されている。バッテリ1が正常な状態すなわちスイッチ16がオンの状態で電源出力ラインに充電器3の出力ラインを接続することによりバッテリパック11を充電することができる。
【0030】
以上説明したバッテリ1によれば、バッテリ1の機能に障害をもたらす現象、例えば衝撃力が加わったり水没したりすると、バッテリパック11からの出力ラインが遮断され、バッテリ1自身を使用不能になる。ドローン2の駆動電源として本来の性能を発揮することができないバッテリ1をドローン2に搭載したままバッテリ1を使用することができるとすると、ドローン2に重大なトラブルが発生することがあり得る。しかし、上記バッテリ1は、その機能に障害をもたらす可能性のある履歴を持っているとバッテリ1自身を使用不能にするため、これをドローン2に搭載してもドローン2は稼働することができず、ドローン2の重大なトラブルを未然に防止することができる。
【0031】
前記衝撃センサ12や水没センサ13の検出信号でバッテリパック11の出力を遮断する遮断回路を、ドローン2などの無人飛行体側に設けてもよい。以下、本発明に係る無人飛行体の実施例について説明する。
【0032】
[無人飛行体の実施例1]
図2において、バッテリ1-1は、図1に示すバッテリ1と同様に、バッテリパック11、衝撃センサ12、水没センサ13、メモリ14を有し、これらはバッテリ1の場合と同様に接続されている。バッテリ1-1が図1に示すバッテリ1と異なる点は、ドローン2-1側にスイッチ制御部25とスイッチ26を有してなる遮断回路が設けられている点である。バッテリ1-1のメモリ14に記憶されたデータはバッテリ1-1内のインターロック指令部17に入力される。インターロック指令部17の出力信号はドローン2-1側の受信部27で受信されスイッチ制御部25に入力されるように構成されている。
【0033】
インターロック指令部17は、メモリ14に前記衝撃センサ12や水没センサ13の検出信号が記憶されると、この記憶データによってインターロック指令信号を生成する。インターロック指令信号は、バッテリパック11からの出力を遮断してバッテリ1-1の使用を不可能にするための信号である。
【0034】
バッテリパック11からの出力ラインは適宜のコネクタを介してドローン2-1側に接続され、ドローン2-1の駆動ユニット22に電力が供給されるようになっている。駆動ユニット22は、既に説明したように、前記各モータ21への給電を制御して、ドローン2-1としての機能を発揮させる。ドローン2-1側におけるバッテリパック11からの出力ライン上に上記遮断回路を構成するスイッチ26が配置されている。インターロック指令部17で生成されるインターロック指令信号は、適宜のコネクタを介して、ドローン2-1の受信部27で受信され、スイッチ制御部25に入力される。
【0035】
図2に示す実施例のように、バッテリとドローンとの間の信号伝達をインターロック指令部17と受信部27で行うことにより信号の伝達を簡略化できる。仮にメモリのデータを伝達しようとすると、データの構造が複雑になる難点がある。
【0036】
バッテリ1-1のバッテリパック11からの出力ラインには、適宜のコネクタを介して、ドローン2-1に代えて充電器3を接続することができる。充電器3の出力ラインには逆流防止用のダイオード31が接続されている。バッテリ1-1に充電器3を接続することにより、バッテリパック11を充電することができる。
【0037】
以上説明した無人飛行体としてのドローンの実施例によれば、ドローンとしての機能に不具合を生じるようなバッテリ1-1をドローン2-1に接続すると、ドローン2-1側の遮断回路がバッテリパック11からの出力ラインを遮断する。すなわち、バッテリ1-1側のメモリ14に、センサ12やセンサ13からの検出信号が記録されており、この検出信号によってドローン2-1側の遮断回路がバッテリパック11からドローン2-1への電力供給を遮断する。よって、不具合のあるバッテリ1-1の再使用が禁止され、バッテリ1-1の不具合に基づくドローン2-1の墜落や制御不能による事故を未然に防止することができる。
【0038】
上記実施例におけるバッテリ1-1は、図1について説明したバッテリパックからの遮断回路を有するものではなく、外部に向かってインターロック指令信号を出力するインターロック指令部17を有している。インターロック指令部17は、バッテリパック11からの出力を遮断すべき旨の指令信号出力部を構成していて、特定のバッテリが使用するのに不適である場合、そのバッテリの再使用を禁止する。このような構成にすることにより、バッテリ1-1に遮断回路を設ける必要はなくなる。農業用ドローンの場合、一つのドローンにつき複数のバッテリが用意されるため、上記のようにバッテリの構成を簡略化することにより、コストの削減および省スペースを図ることができる。
【0039】
[無人飛行体の実施例2]
図3は、無人飛行体であるドローンの第2実施例を示す。この実施例の特徴は、バッテリ1-2が充電記録部18を有していることである。バッテリ1-2に充電器が接続されて充電電圧が印加され充電電流が流れてバッテリ1-2が充電されると、充電記録部18は充電回数をカウントし記録する。充電記録部18は、バッテリ1の寿命に影響のある予め定められた所定の充電回数に達すると、ドローン2-2側の前記遮断回路を構成するスイッチ制御部25を作動させ、スイッチ26をオフに切り替える。
【0040】
ドローン2-2側の構成は、図2に示すドローン2-1の構成とほぼ同じであるが、充電記録部18の出力信号が、コネクタ等を介してドローン2-2側のスイッチ制御部25に入力される点が異なる。また、充電器3の出力端子からバッテリ1-2側の充電記録部18に充電電圧が印加されることにより、充電記録部18は充電回数をカウントし、カウント値を記録する。充電記録部18のカウント値が、バッテリ1-2の寿命を判定するために定められた閾値を越えると、充電記録部18はドローン2-2側のスイッチ制御部25に信号を送る。スイッチ制御部25は充電記録部18からの信号が入力されると、スイッチ26をオフに切り替え、バッテリパック11からの出力ラインを遮断する。
【0041】
こうしてバッテリ1-2の寿命近くになると、バッテリパック11の出力ラインが遮断され、バッテリ1-2の使用を不可能にする。これにより、バッテリ1が搭載された機器の使用中にバッテリ1-2の性能が低下することによるドローン2-2のトラブルを未然に防止することができる。
【0042】
図3には記載されていないが、図2に示す実施例におけるインターロック指令部17をバッテリ1-2側に、受信部27をドローン側に設けるとよい。
【0043】
[無人飛行体の実施例3]
次に、前述のバッテリを搭載した無人飛行体すなわちドローンの第3実施例について図4を参照しながら説明する。
【0044】
図4に示すドローン2-3が、図3に示すドローン2-2と異なる点は、ドローン2-3自体がバッテリの機能に障害をもたらす現象を検出するセンサとして衝撃センサ23、水没センサ24を有している点である。衝撃センサ23、水没センサ24は、バッテリ側に設けられている前記衝撃センサ12、水没センサ13と同様のセンサである。ドローン2-3側の衝撃センサ23、水没センサ24の検出信号はスイッチ制御部25に入力される。スイッチ制御部25はバッテリ1-3のバッテリパック11からの出力ラインをオン・オフ制御する。
【0045】
上記衝撃センサ23および飛行体側水没センサ24の検出信号は、バッテリ1-3が有しているメモリ14に伝達される。バッテリパック11の機能に障害をもたらす現象、例えば衝撃力が加わり、あるいは水没した場合に、上記センサ23または上記センサ24から検出信号が出力され、この検出信号をメモリ14が記録する。すなわち、メモリ14は、トラブルを記録するもので、記録した上記センサ23または上記センサ24の検出信号を、ドローン2-3側のスイッチ制御部25に入力する。スイッチ制御部25は、上記検出信号が入力されるとバッテリ1-3のバッテリパック11からの出力ライン上のスイッチ26をオフにし、電力供給ラインを遮断する。
【0046】
ドローン2-3は周知のとおり複数のプロペラを有し、各プロペラを個別に回転駆動する複数のモータ21を有している。各モータ21はモータ駆動ユニット22を介してバッテリ1-3から電源が供給される。本実施例におけるモータ21の数は4個であるが、これに限定されるものではなく、4個以上でも4個以下でもよい。また、1軸に2枚のプロペラを設けてプロペラの回転方向を互いに逆にする場合は、モータの数は軸の数の2倍になる。
【0047】
モータ駆動ユニット22は、例えば予め設定されたプログラムなどによって各モータ21の回転を制御し、ドローン2-3の上昇、下降、前進、後退、ホバリングなど、ドローンとして必要な動作を行わせる。
【0048】
バッテリ1-3からドローン2-3への電源の供給、双方での信号の伝達は、適宜のコネクタおよびスイッチ26を介して行われる。
【0049】
ドローン2-3には、姿勢を制御するために通常6軸加速度センサが搭載されている。ロール軸とピッチ軸とヨー軸の3軸に関してそれぞれに加速度センサと角速度センサが搭載され、これらを合わせて6軸加速度センサと呼ばれている。これらの加速度センサおよび角速度センサは、ドローン2-3に通常の飛行ではありえない異常な衝撃力が加わると、これに応じた異常な信号を出力する。この異常な信号を衝撃検出信号として出力することにより、6軸加速度センサを無人飛行体側衝撃センサ23として利用することができる。
【0050】
また、ドローン2-3には、プロペラが障害物に接触するのを防止するとともに、プロペラが人体などに接触して人体などに損傷を与えることを防止するために、プロペラガードを備えている。このプロペラガードに異常な衝撃力が加わった場合に、この衝撃力によって動作するセンサを設けると、このセンサを無人飛行体側衝撃センサ23として利用することができる。
【0051】
ドローン2-3が異常な衝撃力を受けあるいは水没した場合、バッテリパック11の機能に障害をもたらす可能性がある。そこで、本実施例に係るドローン2-3では、ドローン2-3側の衝撃センサ23または水没センサ24の検出信号をバッテリ1-3側に伝達し、バッテリパック11の出力ラインを遮断する。以後、バッテリ1-3を使用することができなくなり、バッテリ1-3の機能障害を要因とするドローン2の機能障害を未然に防止することができる。
【0052】
本実施例においても、図2に示す実施例におけるインターロック指令部17をバッテリ1-2側に、受信部27をドローン側に設けるとよい。
【0053】
[無人飛行体の実施例4]
図5は、無人飛行体としてのドローンの第4実施例を示す。本実施例が前記実施例と異なる点の一つは、バッテリ1-4に個体ごとに識別するIDが付され、このID信号をドローン2-4側に伝達するように構成されている点である。また、ドローン2-4側には飛行体側メモリ28が設けられている。バッテリ1-4側からドローン2-4側に伝達されるID信号は、飛行体側メモリ28に記録される。
【0054】
飛行体側メモリ28は、飛行体側衝撃センサ23および飛行体側水没センサ24による検出信号も記録する。飛行体側メモリ28は、上記各センサ23,24の検出信号とそのとき使用されているバッテリ1-4のIDとを関連付けて記憶することにより、IDで識別される特定のバッテリ1-4が、出力を遮断したものであるかどうかの履歴を記録することができる。仮に、使用されているバッテリ1-4が過去に遮断されたものであることが判明した場合、メモリ28はバッテリ1-4のスイッチ制御部15に信号を伝達する。この信号を受けたスイッチ制御部15は、スイッチ16をオフに切り替え、バッテリ1-4を使用不可能にする。
【0055】
このように、図5に示すドローンの実施例は、機能に障害をもたらす現象が生じたことを履歴に有するバッテリ1-4をドローン2-4に搭載すると、バッテリ1-4の遮断回路がバッテリパック11の出力を遮断する。したがって、ドローン2-4の稼働中に、バッテリ1-4の障害を要因とするドローン2-4の機能障害を未然に防止することができる。
【0056】
本実施例においても、図2に示す実施例におけるインターロック指令部17をバッテリ1-2側に、受信部27をドローン側に設けるとよい。
【0057】
スイッチ制御部15とスイッチ16を有してなる遮断回路と同様の遮断回路をドローン2-4側に設け、不具合のあるバッテリがドローン2-4に搭載されると、ドローン2-4の遮断回路で電源供給ラインを遮断するようにしてもよい。
【0058】
スイッチ制御部とこのスイッチ制御部によって開閉されるスイッチ、およびメモリはドローン側にのみ設け、バッテリ側に設けることを省略してもよい。農業用ドローンはできるだけ多くの薬剤などを搭載できるようにかなり大きく、バッテリ容量もそれに応じてかなり大きく、コストも高くなる。したがって、バッテリに付属する部材はできるだけ少なくして小型化し、コストも削減できることが望ましい。上記のように、スイッチ制御部、スイッチ、およびメモリをバッテリ側に設けることを省略することにより、バッテリの小型化およびコストの低減を図ることができる。
【0059】
[充電器の実施例]
図6は、本発明に係るバッテリを充電する際に、そのバッテリが正常なものであるか否かを自動診断する機能を備えた充電器の実施例を示す。図6において、充電器3は充電回路32と診断回路33を有している。充電回路32は、商用交流電源4を整流し平滑して適宜の直流電圧に変換し、逆流防止ダイオード31を介してバッテリ1-5のバッテリパック11に充電電流を供給する。
【0060】
診断回路33には、上記バッテリパック11の電圧が印加され、また、バッテリ1-5のメモリ14に記憶されているバッテリ1-5の履歴データが、バッテリ1-5側のインターロック指令部17と充電器3側の受信部27を介して入力される。診断回路33の診断データは上記メモリ14に入力され記憶される。診断回路33はまた、バッテリ1-5の診断に必要な温度センサ、インピーダンスを用いた解析のための周期的な電圧振幅発生回路などを有している。バッテリ1-5を充電器3に装填することにより、またはドローンなどに搭載されている状態でバッテリ1-5のコネクタに充電器3のコネクタを接続することにより、バッテリ1-5が充電器3に接続される。
【0061】
診断回路33による診断手法の例として以下のものがある。
1.衝撃回数、水没回数:前記メモリ14に記憶されている履歴データによる
2.劣化:充放電回数、内部抵抗、バッテリ温度と電圧と充電量との相互関係による
3.インピーダンス解析:周期的な電圧信号をバッテリに印加して行う
バッテリ温度の計測は、診断回路33に内蔵した温度計のバッテリ1-5への接触、あるいは赤外線による測定などによって行うことができる。
【0062】
診断回路33による上記診断により、一つでも正常ではないとの結果が出た場合、充電を拒否するとともに、診断データをバッテリ1-5のメモリ14に入力し記憶させる。メモリ14に記憶されたこのデータに基づいて、スイッチ制御部15とスイッチ16からなる遮断回路がバッテリパック11からの出力ラインを遮断し、そのバッテリ1-5を使用不可とする。すなわち、バッテリ1-5にインターロックが掛けられ、バッテリ1-5は再使用不可の状態になる。
【0063】
診断回路33が正常と判断すると、バッテリ1-5を充電するとともに、正常である旨の診断データをバッテリ1-5のメモリ14に入力し記憶させる。このメモリ14の診断データに基づいてスイッチ制御部15とスイッチ16からなる遮断回路がバッテリパック11からの出力ラインをオンにしてバッテリ1-5の使用を許可する。
【0064】
診断回路33による診断項目によっては、バッテリ1-5の根本的な不具合ではなく、充電によって回復する項目もある。例えば、前述の内部抵抗や、バッテリ温度と電圧と充電量との相互関係による場合、あるいはインピーダンス解析による診断などである。充電を行った結果バッテリ1-5の不具合が解消すると、診断回路33がそのバッテリ1-5は正常である旨の診断データをバッテリ1-5のメモリ14に送信する。
【0065】
メモリ14は上記診断データが入力されることにより、バッテリ1-5の使用を不可としていたデータをクリアする。メモリ14の診断データがクリアされることにより、遮断回路を構成するスイッチ制御部15がスイッチ16をオンに復帰させ、バッテリ1-5を使用可能にする。
【0066】
ドローンのメンテナンスやサービスを行う拠点ないしは部署に、前記診断回路33と同様の診断機能を持った診断機を設置しておき、使用前に、あるいは定期的にバッテリを診断するようにするとよい。
【0067】
バッテリが、バッテリの機能に障害をもたらす現象を検出する前記衝撃センサや水没センサのようなセンサを有するものである場合、このセンサの検出信号を記憶するメモリを充電器側に設けてもよい。このメモリには、バッテリを個体ごとに識別するIDも記憶するようにし、前記IDで識別されるバッテリが出力を遮断した履歴を有するものである場合に、前記バッテリの充電を禁止するようにするとよい。
【0068】
バッテリが、衝撃や水没などのダメージを受けた履歴がある場合、このバッテリを充電し、あるいは負荷をかけて放電すると、バッテリが過熱あるいは発火などの不具合を生じることがある。充電器を上に述べたような構成にすることにより、不具合を生じる可能性のあるバッテリの再使用を実質的に禁止することができ、バッテリの不具合によるドローンの不具合を未然に防止することができる。
【0069】
[変形例]
本発明に係るバッテリ、無人飛行体および充電器は、以下のように変形したものであってもよい。
【0070】
本発明に係るバッテリの用途として、無人飛行体の実施例について説明したが、これに限定されない。例えば、陸上や水上、水中の移動体であってもよい。有人の移動体であってもよい。
【0071】
バッテリの出力を遮断するスイッチは、バッテリと無人飛行体の両側に設けてもよい。この場合のスイッチ制御部は、バッテリと無人飛行体の両側に設けてもよいし、一方側に設けたスイッチ制御部で両側のスイッチを制御するようにしてもよい。
【0072】
充電可能なバッテリは、過充電または過放電によって寿命が短くなる傾向にある。そこで、過充電または過放電を検出してメモリに記録し、過充電または過放電の履歴のあるバッテリについては、許容する充電回数を少なくする。これにより、バッテリのトラブルを要因とする各種機器のトラブル発生確率を低減することができる。
【0073】
充電器は、バッテリの過充電を防止する回路を備えているものがある。そこで、充電器の過充電防止回路を利用して、過充電の履歴をバッテリのメモリに記憶させてもよい。
【0074】
ドローン用のバッテリからは比較的高い端子電圧でドローン側のPMU(降圧分電機)に電源が供給される。PMUは、バッテリの端子電圧をドローンの各部位に適した電圧に降圧して各部位に電源を分配するようになっている。そこで、各部位への電源分配を遮断する遮断回路としての機能をPMUに持たせてもよい。すなわち、ドローンに装着されているバッテリが不適切なものであることが検出された場合、PMUの上記遮断回路としての機能によってバッテリパックからの出力ラインを遮断し、上記バッテリを実質的に使用できないようにする。
【0075】
バッテリ自体が表示部を備え、メモリに記憶されているそのバッテリの履歴ないしは記憶内容を表示部で表示するようにしてもよい。この表示部による表示は、そのバッテリが、「正常である」、「故障している」、「自己保護(インターロック)中である」といった現状を、表示素子によって、点灯、点滅、色分けなどで表示するとよい。表示素子の例としては、LED、有機EL素子、液晶表示素子などがある。
【0076】
バッテリがドローンまたは充電器に搭載されているか否かにかかわらず、すべての場合において、バッテリの履歴やバッテリの状態に関するデータを記憶するメモリを設けるとよい。メモリに記憶されているデータが、特定のバッテリが使用するのに不適であるとするデータである場合は、バッテリパックからの出力を遮断して、そのバッテリを使用不可能にする。
【符号の説明】
【0077】
1 バッテリ
2 ドローン(無人飛行体)
3 充電器
11 バッテリパック
12 衝撃センサ
13 水没センサ
14 メモリ
15 スイッチ制御部
16 スイッチ
17 充電記録部
21 モータ
22 モータユニット
23 衝撃センサ(無人飛行体側)
24 水没センサ(無人飛行体側)
25 メモリ(無人飛行体側)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8