(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】食品の切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20220308BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B26D3/28 610S
B26D3/28 610J
B26D3/28 610E
B26D7/08 C
(21)【出願番号】P 2017203789
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】507152202
【氏名又は名称】吉村 清己
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 清己
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-044797(JP,U)
【文献】実開昭58-170000(JP,U)
【文献】実開昭55-075493(JP,U)
【文献】特開2008-290159(JP,A)
【文献】特開2008-290160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 7/08
B26D 3/22
A47J 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断する食品を載置する載置台と、前記食品を切断する切断刃を備え、
前記切断刃に
200~500℃に過熱した過熱蒸気を噴霧する
ことで切断刃の表面に水膜を形成するための噴霧手段を有することを特徴とする食品の切断装置。
【請求項2】
前記載置台は、前記切断刃の切断方向に沿って相対的にスライド往復するスライド手段を有し、
前記載置台に載置した食品の切断寸法が一定になるようにした定板を有することを特徴とする請求項1記載の食品の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食パンのように弾力性のある食品を任意の厚さに切断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食パンはブロック状に焼き上げた後に任意の厚さに切断したパン片にし、食されたりサンドイッチに用いられる。
このような食品の切断装置としては、切断刃として帯状刃や丸刃が用いられている。
効率よく切断できるように特許文献1,2等、各種切断装置が提案されている。
しかし、いずれの場合にも食品に弾力性があるために切断刃による切断抵抗が大きく切断しにくく、無理に切断しようとすると切断面にムラや食片が発生し、きれいに切断できない技術的課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-290159号公報
【文献】特開2008-290160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食パン等の弾力性のある食品も切断が良好で、コンパクトな構造からなる食品の切断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る食品の切断装置は、切断する食品を載置する載置台と、前記食品を切断する切断刃を備え、前記切断刃に過熱蒸気を噴霧する噴霧手段を有することを特徴とする。
【0006】
ここで、過熱蒸気は水蒸気を100℃を超える温度に過熱した蒸気をいい、好ましくは200℃~500℃に過熱したものがよい。
切断刃は帯刃でも丸刃でもよく、金属製が好ましい。
切断刃に過熱蒸気を僅かな量だけ少量噴霧すると、切断刃の表面にて凝縮し、極めて薄い水膜を形成し、これが潤滑剤として作用する。
過熱蒸気が切断刃の刃先に当たることで、刃先部分が加熱され温まる。
これらの作用により切断抵抗が過熱蒸気を噴霧しない場合に比較して1/2~1/5以下になり弾力性がある食パンでも容易に切断できる。
また、過熱蒸気の噴霧量が極く少量でよく、切断刃の表面に接触しなかった過熱蒸気は高温であることから、そのまま空気中に飛散するので食パンや切断載置の周囲に何ら影響を与えない。
【0007】
本発明において、前記載置台は、前記切断刃の切断方向に沿って相対的にスライド往復するスライド手段を有し、前記載置台に載置した食品の切断寸法が一定になるようにした定板を有するようにすると、構造が簡単でコンパクトな装置となりメンテナンスも容易である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る切断装置においては、切断時に切断刃の表面に過熱蒸気を少量噴霧することにより、切断抵抗が小さくなるとともにパンの切断面が滑らかできれいになる。
また、表面にて凝縮する水膜が極く薄く、それ以外の余分な蒸気は空気中に飛散するので、きれいな環境を維持しつつ良好に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る食品の切断装置は、切断刃に向けて過熱蒸気を少量噴霧できる点に特徴があり、切断装置そのものは各種構造を採用することができる。
【0011】
図1,2に手動式の切断装置の例を示す。
ブロック状の食パンBを載置するスライダー12を有し、このスライダー12はベース部11のスライド溝部12aにそって、前後方向に往復スライド可能になっている。
スライダー12は略L字形状になっていて、食パンBを載せ、押込部12bを操作し、食パンBを切断刃13に向けて移動させる。
駆動部14に回転軸14aを介して連結し、回転制御された丸刃13を有し、この丸刃の上部から過熱蒸気を噴霧するための過熱蒸気噴霧部17を有する。
図3に、過熱蒸気発生器20の構造例を示す。
略L字形状のハウジング21の底部側に水Wを注入し、この部分に沸騰ヒーター22を取り付け沸騰させる。
沸騰した水蒸気はL字型のハウジング21の上部に設けた過熱ヒーター23にて200℃以上に過熱され、噴出口24を連結パイプや蛇管18等にて切断装置の過熱蒸気噴霧部17に連結してある。
図示を省略したが、センサー及びソレノイドバルブ等を用いて、回転している切断刃13に食パンBが近づくの検知をすると、少量の過熱蒸気を1回噴霧し、噴霧を止める。
噴霧方法は、切断刃13の両側面に過熱蒸気がスプレーされるようになっていれば、その構造に制限は無い。
本実施例は、断面コ字形状のハウジングを形成し、その内側に設けたノズルから過熱蒸気が噴霧されるようになっている。
少量の過熱蒸気を噴霧するタイミングは食パンBの位置をセンサーで検知してもよく、スライダー12のスライド位置を検知してもよい。
過熱蒸気の噴霧量は、回転する切断刃13に向けて1回スプレーするだけで、この切断刃の回転する遠心力にて均一に極く薄い水膜を形成されるので0.1~0.5秒等の極短時間でよい。
【0012】
図2に示した平面視で、食パンの切断の流れを説明する。
スライダー12に食パンBを載せ、スライド溝部12aに沿って、押込部12bを手等で押し込み操作する。
食パンBが丸刃からなる切断刃13に当たる直前に過熱蒸気が過熱蒸気噴霧部17から一回のみスプレーされる。
切断されたパン片B
1は、末広がりに形成した分離板に沿って切り離され、切断が完了すると下側に落下する。
この際に、切断されるパン片B
1の厚みが一定になるように、定板16が設けられていて、食パンBの側面をこの定板に当てながらスライダー12を前進させる。
【0013】
本実施例は手動にてパン片を1枚ずつ切断する例を示したが、複数の切断刃を平行に配置し、1回で複数のパン片を切り出すものや、切断刃が自動で前進及び後退する自動式の切断装置であってもよい。
【符号の説明】
【0014】
11 ベース部
12 スライダー
13 切断刃
14 駆動部
15 分離板
16 定板
17 過熱蒸気噴霧部
18 連結パイプ