(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】培養パッチ、培養方法、培養試験方法、培養試験デバイス、薬物試験方法及び薬物試験デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20220308BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220308BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220308BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 Z
C12M1/34 B
C12M1/34 D
C12Q1/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020076739
(22)【出願日】2020-04-23
(62)【分割の表示】P 2018562491の分割
【原出願日】2017-02-23
【審査請求日】2020-04-24
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2016-0069936
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0069937
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0069938
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0095739
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0118462
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0144551
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0024392
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518299758
【氏名又は名称】ノウル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOUL Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リー, ドン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リム, チャン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ギョン ファン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08628787(US,B1)
【文献】LAB ON A CHIP,2013年,doi:10.1039/C3LC50887K,p.167-171
【文献】Journal of visualized experiments,2015年,doi:10.3791/52727,p.1-7
【文献】American society for microbiology [online],2009年,p.1-23,[検索日 2019.09.09],インターネット: <URL:https://www.asm.org/getattachment/2594ce26-bd44-47f6-8287-
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/26
C12M 1/00
C12M 1/34
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物試験対象物の増殖又は活性に影響を与える薬物、及び
薬物が含有されたマイクロキャビティを形成す
るゲル型のメッシュ構造体
を含む、薬物パッチ
であって、
薬物試験対象物が配置されるプレート上の反応領域に接触することで、含有された前記薬物の少なくとも一部を前記反応領域に提供し、前記反応領域と分離するときに、提供された前記薬物の少なくとも一部を再吸収する、薬物パッチ。
【請求項2】
薬物試験対象物の増殖に必要な成分をさらに含み、
増殖に必要な成分が、マイクロキャビティを形成する
ゲル型のメッシュ構造
体に含有される、請求項1に記載の薬物パッチ。
【請求項3】
マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質を含有する
ゲル型のメッシュ構造体を含むパッチを使用することによって、薬物の有効性を試験するための薬物試験方法であって、
プレート上の反応領域に試料を配置するステップ、
薬物を含有する
前記パッチを
前記反応領域に接触させることによって、
含有された前記薬物の少なくとも一部を
前記反応領域に提供するステップ、及び
提供された前記薬物の少なくとも一部を、前記パッチを前記反応領域から分離することによって前記パッチに再吸収させるステップを含み、
前記パッチが前記反応領域と接触している時に、前記反応領域
をイメージングすることによって、試料の画像を取得する
第1のサブステップ
、又は
前記パッチが前記反応領域と分離している時に、前記反応領域をイメージングすることによって、試料の画像を取得する第2のサブステップ
を
さらに含む、方法。
【請求項4】
画像に基づいて、試料のサイズの情報及び計数の情報のうちの少なくとも1つの情報を取得するステップ、並びに
少なくとも1つの情報に基づいて、薬物に起因する、試料の、増殖の程度、活性の程度、増殖阻害の程度、及び死亡の程度のうちの少なくとも1つを決定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のサブステップが、プレートの反応領域が位置する表面の反対側の表面側から光を受信することによって、反応領域の画像を取得することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のサブステップが、プレートの反応領域が位置する表面側から光を受信することによって、反応領域の画像を取得することを含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のサブステップが、プレートの反応領域が位置する表面の反対の表面側から光を受信することによって、反応領域の画像を取得することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のサブステップ又は前記第2のサブステップが、定期的に行われるものであり、且つ、
前記第1のサブステップ又は前記第2のサブステップにおいて定期的に行われる画像の取得において取得された複数の画像を比較して、薬物の効果を決定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
パッチによって薬物が保持された薬物シートを接触させるステップ、及びパッチによって薬物シートから薬物を吸収して、パッチ内に薬物を含有させるステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、培養パッチ、培養方法、培養試験方法、培養試験デバイス、薬物試験方法及び薬物試験デバイスに関し、より詳細には、細胞又は細菌の培養に必要な栄養素を含有する培養パッチ、培養パッチを使用する、培養方法、培養試験方法、培養試験デバイス、薬物試験方法及び薬物試験デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
急速な社会の高齢化及びクオリティオブライフの必要性の増加に起因して、早期診断及び早期処置を狙った診断市場は、韓国を含む世界中で、毎年、成長しており、迅速で容易な診断が重要な問題になっている。特に、診断の形態は、患者の隣で直ぐに行われる、インビトロ診断(IVD)又はポイントオブケア検査(POCT)などの、大きな診断装置を使用せずに、診断を行うことができる形態に移行している。IVDを行うための1つの特定の診断分野である血液検査は、IVD分野において大部分を占め、広く使用されている1つの診断方法である。
【0003】
臨床微生物学は、医学的検査の1つの特定の分野であり、試料として、微生物の感染が疑われる患者の体液を用いて、体液が実際に微生物に感染しているか否かを決定し、体液が感染していた場合、微生物を特定し、さらに、特定された微生物が感受性を有する抗生物質を決定する研究である。臨床微生物試験を行う際、ほとんどの場合において、試料中に存在する細菌の増殖及び分離のための細菌培養が、患者から採取された試料を直接使用する代わりに、使用される。
【0004】
細菌培養は、臨床試料中に存在する細菌が、病原体又は正常フローラであるか否かを決定することによって、感染を診断するために行われる。また、単一の細菌に由来する十分な量の純粋培養された細菌が得られ、コロニーの特徴、生化学的特性、可染性及び血清反応が、細菌種を特定し、抗生物質感受性試験を行うために、使用される。
【0005】
しかしながら、従来の細胞培養において、細菌は、プレートカウント寒天(PCA)培地又は寒天培地を保持するペトリ皿に適用され、次いで、ほとんどの場合において、コロニーのサイズに従って、増殖度が決定される。しかしながら、このような従来の培養法は、コロニーを外観検査で観察できるまでに、数日から数週間の時間を要するという問題がある。
【0006】
近年、幹細胞に対する研究及び開発が精力的に行われていることから、細胞のインビトロ培養に対する需要も高まっている。細胞培養は、上述の細菌培養と同様のやり方で行われるので、細胞培養は、同じ問題を有する。
【0007】
[発明の概要]
[開示]
[技術的課題]
本開示の一態様は、物質を保管する能力があるパッチを提供することである。
【0008】
本開示の一態様は、物質のための反応空間を提供する能力があるパッチを提供することである。
【0009】
本開示の一態様は、物質を提供する能力があるパッチを提供することである。
【0010】
本開示の一態様は、物質を吸収する能力があるパッチを提供することである。
【0011】
本開示の一態様は、環境を提供する能力があるパッチを提供することである。
【0012】
本開示の一態様は、細菌を含む微生物、又は細胞などの培養対象物の増殖に必要な必要栄養成分を含有する培養バッチを提供することである。
【0013】
本開示の一態様は、培養パッチを使用する培養方法を提供することである。
【0014】
本開示の一態様は、培養パッチを使用して、培養対象物の増殖の程度を試験する培養試験、及びこれを行うための培養試験デバイスを提供することである。
【0015】
本開示の一態様は、パッチを使用して、薬物に起因する培養対象物の増殖阻害又は死亡の程度を試験する薬物試験方法、及びこれを行うための薬物試験デバイスを提供することである。
【0016】
本開示の態様は、上記に列挙されたものに限定されず、言及されていない態様は、本明細書及び添付の図面から、本開示が関連する当業者によって、明確に理解されるであろう。
【0017】
[技術的解決手段]
本開示の一態様によれば、培養対象物の増殖に必要な成分、及び増殖に必要な成分が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、培養対象物が配置される反応領域と接触し、含有される増殖に必要な成分のいくつかを反応領域に送達するために構成されたメッシュ構造体を含む、培養パッチが提供される。
【0018】
本開示の別の態様によれば、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質を含有するメッシュ構造体を含むパッチを使用することによって、培養対象物を培養するための培養方法であって、反応領域に培養対象物を配置するステップ;及び増殖に必要な成分を含有するパッチを使用することによって、反応領域に培養対象物の増殖に必要な成分を送達するステップを含む、培養方法が提供される。
【0019】
本開示のさらに別の態様によれば、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質を含有するメッシュ構造体を含むパッチを使用することによって、培養対象物を培養するため、及び培養対象物の増殖の程度を試験するための培養試験方法であって、反応領域に培養対象物を配置するステップ、増殖に必要な成分を含有するパッチを使用することによって、反応領域に培養対象物の増殖に必要な成分を送達するステップ、反応領域の画像を取得することによって、培養対象物の画像を取得するステップを含む、培養試験方法が提供される。
【0020】
本開示のまた別の態様によれば、薬物試験対象物の増殖又は活性に影響を与える薬物、及び薬物が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、薬物試験対象物が配置される反応領域と接触し、含有される薬物のいくつかを反応領域に送達するために構成されたメッシュ構造体を含む、薬物パッチが提供される。
【0021】
本開示のまた別の態様によれば、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質を含有するメッシュ構造体を含むパッチを使用することによって、薬物の有効性を試験するための薬物試験方法であって、反応領域に試料を配置するステップ、薬物を含有するパッチを使用することによって、反応領域に薬物を送達するステップ、及び反応領域の画像を取得することによって、試料の画像を取得するステップを含む、薬物試験方法が提供される。薬物試験方法は、画像に基づいて、試料のサイズの情報及び計数の情報のうちの少なくとも一部の情報を取得するステップ、並びに少なくとも一部の情報に基づいて、薬物に起因する、試料の、増殖の程度、活性の程度、増殖阻害の程度、及び死亡の程度のうちの少なくとも1つを決定するステップを、含んでいてもよい。
【0022】
本開示の解決手段は、上記に言及されたものに限定されず、言及されていない解決手段は、本明細書及び添付の図面から、本開示が関連する当業者によって、明確に理解されるべきである。
【0023】
[有利な効果]
本開示によれば、物質の含有、提供及び吸収を、容易に行うことができる。
【0024】
本開示によれば、物質のための反応領域を提供することができ、又は所定の環境を標的領域に提供することができる。
【0025】
本開示によれば、培養対象物の培養、培養試験及び薬物試験をより好都合に行うことができ、試験結果を迅速に得ることができる。
【0026】
本開示によれば、十分な信頼性を有する診断結果を、わずかな増殖、又はわずかな増殖阻害から得ることができる。
【0027】
本開示によれば、物質の提供及び吸収は、パッチを使用して、適切に調整することができ、診断のために必要な栄養要求成分の量を、著しく減少させることができる。
【0028】
本開示の有利な効果は、上記に列挙されたものに限定されず、言及されていない有利な効果は、本明細書及び添付の図面から、本開示が関連する当業者によって、明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本出願によるパッチの詳細な一例を示す。
【
図2】
図2は、本出願によるパッチの詳細な一例を示す。
【
図3】
図3は、本出願によるパッチの機能の一例として、反応空間の提供を示す。
【
図4】
図4は、本出願によるパッチの機能の一例として、反応空間の提供を示す。
【
図5】
図5は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図6】
図6は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図7】
図7は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図8】
図8は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図9】
図9は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図10】
図10は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図11】
図11は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図12】
図12は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図13】
図13は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
【
図14】
図14は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図15】
図15は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図16】
図16は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図17】
図17は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図18】
図18は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図19】
図19は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図20】
図20は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図21】
図21は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図22】
図22は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
【
図23】
図23は、本出願によるパッチの機能の一例として、環境の提供を示す。
【
図24】
図24は、本出願によるパッチの機能の一例として、環境の提供を示す。
【
図25】
図25は、本出願によるパッチの機能の一例として、環境の提供を示す。
【
図26】
図26は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
【
図27】
図27は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
【
図28】
図28は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
【
図29】
図29は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
【
図30】
図30は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
【
図31】
図31は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供、並びに環境の提供の実施を示す。
【
図32】
図32は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供、並びに環境の提供の実施を示す。
【
図33】
図33は、本出願によるパッチの一実施形態として、複数のパッチの実施を示す。
【
図34】
図34は、本出願によるパッチの一実施形態として、複数のパッチ及び複数の標的領域を有するプレートの実施を示す。
【
図35】
図35は、本出願による培養方法の一実施形態に関するフローチャートである。
【
図36】
図36は、本出願による、培養対象物の適用を示す図である。
【
図37】
図37は、本出願による培養方法の一実施形態において、培養パッチを使用することによって、必要栄養成分を送達するフローチャートである。
【
図39】
図39は、本出願の一実施形態による、培養対象物の画像の取得に関する図である。
【
図40】
図40は、本出願の一実施形態による、培養対象物の画像の取得に関する図である。
【
図41】
図41は、本出願の一実施形態による、培養対象物の画像の取得に関する図である。
【
図42】
図42は、本出願の培養試験方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図43】
図43は、本出願の培養試験方法の実施形態の使用図である。
【
図44】
図44は、本出願の培養試験方法の実施形態の変形例のフローチャートである。
【
図45】
図45は、本出願の培養試験方法の実施形態の別の変形例のフローチャートである。
【
図46】
図46は、本出願による、培養対象物の画像の一例である。
【
図47】
図47は、本出願の培養試験方法の別の実施形態のフローチャートである。
【
図48】
図48は、本出願による培養試験方法の他の実施形態において画像を取得するフローチャートである。
【
図49】
図49は、本出願の培養試験方法の他の実施形態の使用図である。
【
図50】
図50は、本出願の培養試験方法の他の実施形態の変形例である。
【
図51】
図51は、本出願の薬物試験方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図52】
図52は、本出願の薬物試験方法の実施形態の使用図である。
【
図53】
図53は、本出願の薬物試験方法の別の実施形態のフローチャートである。
【
図54】
図54は、本出願の薬物試験方法の他の実施形態の使用図である。
【
図55】
図55は、本出願の薬物試験方法のさらに別の実施形態のフローチャートである。
【
図56】
図56は、本出願の薬物試験方法のさらに別の実施形態の使用図である。
【
図57】
図57は、本出願による、培養対象物の画像の一例である。
【
図58】
図58は、本出願による試験デバイスの一実施形態を示す。
【
図59】
図59は、本出願による試験デバイスの実施形態におけるパッチコントローラーの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で説明される実施形態は、本開示が関連する当業者に、本開示の要旨を明確に説明するためのものであるので、本開示は、本明細書で説明される実施形態に限定されず、本開示の範囲は、本開示の要旨から逸脱することなく、改変例又は変形例を含むものとして、解釈されるべきである。
【0031】
現在、可能な限り広く使用されている一般用語を、本開示における機能を考慮して本明細書において使用する用語として選択しているが、この用語は、本開示に関連する当業者の意図及び慣例、又は新たな技術の出現などに従って変更することができる。しかしながら、その代わりに、特定の用語が、ある意味として定義され、使用される場合、その用語の意味は、別々に説明される。それ故に、本明細書で使用される用語は、その用語の名前に単に基づく代わりに、本明細書にわたって用語及び内容の実質的な意味に基づいて、解釈されるべきである。
【0032】
本明細書に添付する図面は、本開示を容易に説明するためのものである。図面に示された形状は、本開示の理解を助けるために必要な程度に誇張して描かれていることがあるので、本開示は、図面によって限定されるものではない。
【0033】
本開示に関する公知の配置又は機能の詳細な説明が、本明細書における本開示の主旨を曖昧にすると考えられる場合、それらに関する詳細な説明は、必要により、省略する。
【0034】
本開示の一態様によれば、培養対象物の増殖に必要な成分、及び増殖に必要な成分が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、培養対象物が配置される反応領域と接触し、含有される増殖に必要な成分のいくつかを反応領域に提供するために構成されたメッシュ(網様)構造体を含む、培養パッチが提供される。
【0035】
本開示の別の態様によれば、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質を含有するメッシュ構造体を含むパッチを使用することによって、培養対象物を培養するための培養方法であって、反応領域に培養対象物を配置するステップ;及び増殖に必要な成分を含有するパッチを使用することによって、反応領域に培養対象物の増殖に必要な成分を提供するステップを含む、培養方法が提供される。
【0036】
培養対象物は、細菌、寄生生物、組織から分離された細胞及び初代培養細胞のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0037】
本開示のさらに別の態様によれば、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質を含有するメッシュ構造体を含むパッチを使用することによって、培養対象物を培養するため、及び培養対象物の増殖の程度を試験するための培養試験方法であって、反応領域に培養対象物を配置するステップ、増殖に必要な成分を含有するパッチを使用することによって、反応領域に培養対象物の増殖に必要な成分を提供するステップ、及び反応領域の画像を取得することによって、培養対象物の画像を取得するステップを含む、培養試験方法が提供される。
【0038】
培養試験方法は、画像に基づいて、培養対象物のサイズの情報及び計数の情報のうちの少なくとも一部の情報を取得するステップ、並びに少なくとも一部の情報に基づいて、培養対象物の増殖の程度を決定するステップをさらに含んでいてもよい。
【0039】
画像の取得は、反応領域からパッチを離して間隔をあけること、及び反応領域からパッチを離して間隔をあける間に、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0040】
反応領域からパッチを離して間隔をあける間の反応領域の画像の取得は、反応領域が位置するプレートの表面の反対側の表面から光を照射すること、及び反応領域が位置するプレートの表面に入射する光によって、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0041】
画像の取得は、パッチが反応領域と接触している間に、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0042】
パッチが反応領域と接触している間の反応領域の画像の取得は、反応領域が位置するプレートの表面から光を照射すること、及び反応領域が位置するプレートの表面の反対側の表面に入射する光によって、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0043】
パッチが反応領域と接触している間の反応領域の画像の取得は、反応領域が位置するプレートの表面から光を照射すること、及び反応領域が位置するプレートの表面の反対側の表面に入射する光によって、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0044】
反応領域の画像を取得することによる培養対象物の画像の取得は、定期的に行われてもよく、培養試験方法が、定期的に行われる画像の取得において取得された複数の画像を比較することによって、培養対象物の増殖の程度を決定することをさらに含んでいてもよい。
【0045】
本開示のまた別の態様によれば、薬物試験対象物の増殖又は活性に影響を与える薬物、及び薬物が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、薬物試験対象物が配置される反応領域と接触し、含有される薬物のいくつかを反応領域に提供するために構成されたメッシュ構造体を含む、薬物パッチが提供される。
【0046】
薬物パッチは、薬物試験対象物の増殖に必要な成分をさらに含んでいてもよく、増殖に必要な成分は、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造に含有されていてもよい。
【0047】
本開示のまた別の態様によれば、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質を含有するメッシュ構造体を含むパッチを使用することによって、薬物の有効性を試験するための薬物試験方法であって、反応領域に試料を配置するステップ、薬物を含有するパッチを使用することによって、反応領域に薬物を提供するステップ、及び反応領域の画像を取得することによって、試料の画像を取得するステップを含む、薬物試験方法が提供される。薬物試験方法は、画像に基づいて、試料のサイズの情報及び計数の情報のうちの少なくとも1つの情報を取得するステップ、並びに少なくとも1つの情報に基づいて、薬物に起因する、試料の、増殖の程度、活性の程度、増殖阻害の程度、及び死亡の程度のうちの少なくとも1つを決定するステップを含んでいてもよい。
【0048】
画像の取得は、反応領域からパッチを離して間隔をあけること、及び反応領域からパッチを離して間隔をあける間に、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0049】
反応領域からパッチを離して間隔をあける間の反応領域の画像の取得は、反応領域が位置するプレートの表面の反対側の表面から光を照射すること、及び反応領域が位置するプレートの表面に入射する光によって、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0050】
画像の取得は、パッチが反応領域と接触している間に、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0051】
パッチが反応領域と接触している間の反応領域の画像の取得は、反応領域が位置するプレートの表面から光を照射すること、及び反応領域が位置するプレートの表面の反対側の表面に入射する光によって、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0052】
パッチが反応領域と接触している間の反応領域の画像の取得は、反応領域が位置するプレートの表面から光を照射すること、及び反応領域が位置するプレートの表面の反対側の表面に入射する光によって、反応領域の画像を取得することを含んでいてもよい。
【0053】
反応領域の画像を取得することによる試料の画像の取得は、定期的に行われてもよく、薬物試験方法は、定期的に行われる画像の取得において取得された複数の画像を比較して、薬物の効果を決定するステップをさらに含んでいてもよい。
【0054】
薬物試験方法は、パッチによって薬物が保持された薬物シートを接触させるステップ、及びパッチによって薬物シートから薬物を吸収して、パッチ内に薬物を含有させるステップをさらに含んでいてもよい。
【0055】
1.パッチ
1.1 パッチの意味
本出願において、液体物質を管理するためのパッチが開示される。
【0056】
液体物質は、液体状態にあって、流動することができる、物質を意味し得る。
【0057】
液体物質は、流動性を有する単一成分で形成される物質であってもよい。或いは、液体物質は、複数の成分で形成される物質を含む混合物であってもよい。
【0058】
液体物質が、単一成分で形成される物質である場合、液体物質は、単一の化学元素で形成される物質又は複数の化学元素を含む化合物であってもよい。
【0059】
液体物質が混合物である場合、複数の成分で形成される物質の一部は、溶媒としての機能を果たしてもよく、他の部分は、溶質としての機能を果たしてもよい。すなわち、混合物は溶液であってもよい。
【0060】
物質を形成する混合物を構成する複数の成分は、均一に分布していてもよい。或いは、複数の成分で形成される物質を含む混合物は、均一に混合された混合物であってもよい。
【0061】
複数の成分で形成される物質は、溶媒、及び溶媒に溶解せず、均一に分布する物質を含んでいてもよい。
【0062】
複数の成分で形成される物質の一部は、不均一に分布していてもよい。不均一に分布した物質は、溶媒中に、不均一に分布した粒子成分を含んでいてもよい。この場合において、不均一に分布した粒子成分は、固相中にあってもよい。
【0063】
例えば、パッチを使用して管理され得る物質は、1)単一成分で形成される液体、2)溶液、又は3)コロイドの状態であってもよく、状況により、4)固体粒子が、別の液体物質内に不均一に分布している状態であってもよい。
【0064】
本明細書の以下において、本出願によるパッチをより詳細に説明する。
【0065】
1.2 パッチの一般的性質
1.2.1 配置
図1及び
図2は、本出願によるパッチの一例を示す図である。本出願によるパッチを、
図1及び
図2を参照して、以下に説明する。
【0066】
図1を参照すると、本出願によるパッチPAは、メッシュ構造体NS及び液体物質を含むことができる。
【0067】
液体物質として、塩基性物質BS及び添加物質ASを、別々に考慮に入れることができる。
【0068】
パッチPAは、ゲル状態(ゲル型)であってもよい。パッチPAは、コロイド分子が結合して、メッシュ組織を形成する、ゲル型の構造体として、実施されてもよい。
【0069】
本出願によるパッチPAは、液体物質SBを管理するための構造であり、三次元メッシュ(網様)構造体NSを含むことができる。メッシュ構造体NSは、連続的に分布した固体構造であってもよい。メッシュ構造体NSは、複数のマイクロスレッドがより合わされたメッシュ構造を有していてもよい。しかしながら、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロスレッドがより合わされたメッシュ形態に限定されず、複数のマイクロ構造の接続によって形成される任意の三次元マトリックスの形態で実施されてもよい。例えば、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロキャビティを含むフレーム構造体であってもよい。言い換えれば、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロキャビティMCを形成していてもよい。
【0070】
図2は、本出願の一実施形態によるパッチの構造を示す。
図2を参照すると、パッチPAのメッシュ構造体は、スポンジ構造SSを有することができる。スポンジ構造SSのメッシュ構造体は、複数のマイクロホールMHを含んでいてもよい。本明細書の以下において、マイクロホールMH及びマイクロキャビティMCという用語は、互換可能に使用することができ、他に特に言及がない限り、マイクロキャビティMCという用語は、マイクロホールMHの概念を包含するものとして定義される。
【0071】
メッシュ構造体NSは、規則的又は不規則なパターンを有していてもよい。さらにまた、メッシュ構造体NSは、規則的なパターンを有する領域、及び不規則なパターンを有する領域の両方を含んでいてもよい。
【0072】
メッシュ構造体NSの密度は、所定の範囲内の値を有していてもよい。所定の範囲は、パッチPAに捕捉された液体物質SBの形態が、パッチPAに対応する形態に維持される限度内に設定され得ることが好ましい。密度は、メッシュ構造体NSが、高密度である程度、又はメッシュ構造体NSがパッチ内で占める、質量比、体積比などとして、定義してもよい。
【0073】
本出願によるパッチは、三次元メッシュ構造を有することによって、液体物質SBを管理することができる。
【0074】
本出願によるパッチPAは、液体物質SBを含むことができ、パッチPAに含まれる液体物質SBの流動性は、パッチPAのメッシュ構造体NSの形態によって制限され得る。
【0075】
液体物質SBは、メッシュ構造体NS内で、自由に流動してもよい。言い換えれば、液体物質SBは、メッシュ構造体NSによって形成される複数のマイクロキャビティに配置される。液体物質SBの交換は、隣接するマイクロキャビティの間で生じてもよい。この場合において、液体物質SBは、液体物質SBがメッシュ組織を形成するフレーム構造体に浸透する状態で、存在することができる。このような場合において、液体物質SBが浸透することができるナノサイズの孔が、フレーム構造体に形成されていてもよい。
【0076】
さらに、液体物質SBが、メッシュ構造のフレーム構造体を満たしているか否かは、パッチPAに捕捉されている液体物質SBの分子量又は粒子径に応じて、決定することができる。比較的大きな分子量を有する物質は、マイクロキャビティに捕捉されてもよく、比較的小さな分子量を有する物質は、フレーム構造体によって捕捉されてもよく、メッシュ構造体NSのマイクロキャビティ及び/又はフレーム構造体を満たしていてもよい。
【0077】
本明細書において、「捕捉する」という用語は、液体物質SBが、メッシュ構造体NSによって形成される、複数のマイクロキャビティ及び/又はナノサイズの孔に配置されている状態として定義してもよい。上記の説明のように、液体物質SBがパッチPAに捕捉されている状態は、液体物質SBが、マイクロキャビティ及び/又はナノサイズの孔の間で流動することができる状態を含むものとして定義される。
【0078】
下記のように、塩基性物質BS及び添加物質ASは、液体物質SBとして、別々に考慮に入れることができる。
【0079】
塩基性物質BSは、流動性を有する液体物質SBであってもよい。
【0080】
添加物質ASは、塩基性物質BSと混合された、流動性を有する物質であってもよい。言い換えれば、塩基性物質BSは、溶媒であってもよい。添加物質ASは、溶媒に溶解した溶質であってもよく、又は溶媒に溶融していない粒子であってもよい。
【0081】
塩基性物質BSは、メッシュ構造体NSによって形成されたマトリックスの内部で流動する能力がある物質であってもよい。塩基性物質BSは、メッシュ構造体NSに均一に分布していてもよく、又はメッシュ構造体NSの一部の領域にのみ分布していてもよい。塩基性物質BSは、単一成分を有する液体であってもよい。
【0082】
添加物質ASは、塩基性物質BSと混合されるか、又は塩基性物質BSに溶解する物質であってもよい。例えば、塩基性物質BSが溶媒であると同時に、添加物質ASは、溶質としての機能を果たしてもよい。添加物質ASは、塩基性物質BSに均一に分布していてもよい。
【0083】
添加物質ASは、塩基性物質BSに溶解していない微粒子であってもよい。例えば、添加物質ASは、コロイド分子及び微生物などの微粒子を含んでいてもよい。
【0084】
添加物質ASは、メッシュ構造体NSによって形成されるマイクロキャビティよりも大きい粒子を含んでいていてもよい。マイクロキャビティのサイズが、添加物質ASに含まれる粒子のサイズよりも小さい場合、添加物質ASの流動性は、制限され得る。
【0085】
一実施形態によれば、添加物質ASは、パッチPAに選択的に含まれる成分を含んでいてもよい。
【0086】
添加物質ASは、上述の塩基性物質BSと比較して、量が少ないか、又は機能が劣る物質を、必ずしも指すわけではない。
【0087】
本明細書の以下において、パッチPAに捕捉された液体物質SBの特性は、パッチPAの特性と推定することができる。すなわち、パッチPAの特性は、パッチPAに捕捉された物質の特性に依存し得る。
【0088】
1.2.2 特性
上記の説明のように、本出願によるパッチPAは、メッシュ構造体NSを含むことができる。パッチPAは、メッシュ構造体NSによって、液体物質SBを管理することができる。パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBが、その固有の特性の少なくともいくつかを維持することを、可能にし得る。
【0089】
例えば、液体物質SBが分布するパッチPAの領域において、物質の拡散が生じてもよく、表面張力などの力が作用する状態であってもよい。
【0090】
パッチPAは、標的物質の拡散が、物質の熱運動又は物質の密度若しくは濃度の相違に起因して引き起こされる、液体環境を提供することができる。一般に、「拡散」とは、物質を構成する粒子が、濃度の相違に起因して、濃度が高い側から、濃度が低い側に広がる現象を指す。このような拡散現象は、基本的に、分子の運動(気体又は液体中での並進運動、固体中での振動運動など)に起因して引き起こされる現象として、理解され得る。本出願において、粒子が、濃度又は密度の相違に起因して、濃度が高い側から、濃度が低い側に広がる現象を指すのに加えて、「拡散」とは、粒子が、濃度が均一な場合であっても生じる分子の不規則運動に起因して移動する現象も指す。「不規則運動」という表現はまた、他に特に言及がない限り、「拡散」と同じ意味を有し得る。拡散した物質は、液体物質SBに溶解した溶質であってもよく、拡散した物質は、固体、液体又は気体状態で提供されてもよい。
【0091】
より詳細には、パッチPAによって捕捉された液体物質SB中に不均一に分布した物質は、パッチPAによって提供される空間に拡散することができる。言い換えれば、添加物質ASは、パッチPAによって規定される空間に拡散することができる。
【0092】
パッチPAによって管理される液体物質SB中に不均一に分布した物質又は添加物質ASは、パッチPAのメッシュ構造体NSによって提供されるマイクロキャビティ内に拡散することができる。不均一に分布した物質又は添加物質ASが拡散し得る領域は、別の物質と、接続又は接触しているパッチPAによって、変化し得る。
【0093】
パッチPA内又はパッチPAに接続された外部領域内での不均一に分布した物質又は添加物質ASの拡散の結果として、物質又は添加物質ASの濃度が均一になった後でさえ、物質又は添加物質ASは、パッチPAの内部及び/又はパッチPAに接続された外部領域内での分子の不規則運動に起因して、絶え間なく、移動することができる。
【0094】
パッチPAは、親水性又は疎水性の性質を示すように実施されてもよい。言い換えれば、パッチPAのメッシュ構造体NSは、親水性又は疎水性の性質を有し得る。
【0095】
メッシュ構造体NS及び液体物質SBの性質が類似している場合、メッシュ構造体NSは、液体物質SBを、より効果的に管理することが可能であり得る。
【0096】
塩基性物質BSは、極性の親水性物質又は非極性の疎水性物質であってもよい。添加物質ASは、親水性又は疎水性の性質を示してもよい。
【0097】
液体物質SBの性質は、塩基性物質BS及び/又は添加物質ASに関係していてもよい。例えば、塩基性物質BS及び添加物質ASの両方が、親水性である場合、液体物質SBは、親水性であってもよく、塩基性物質BS及び添加物質ASの両方が、疎水性である場合、液体物質SBは、疎水性であってもよい。塩基性物質BS及び添加物質ASの極性が異なる場合、液体物質SBは、親水性又は疎水性であってもよい。
【0098】
メッシュ構造体NS及び液体物質SBの両方の極性が、親水性又は疎水性である場合、引力が、メッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用する状態であり得る。メッシュ構造体NS及び液体物質SBの極性が正反対である場合、例えば、メッシュ構造体NSの極性が疎水性であって、液体物質SBの極性が親水性である場合、反発力が、メッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用し得る。
【0099】
上述の性質に基づけば、パッチPAは、単独で使用されてもよく、複数のパッチPAが使用されてもよく、又はパッチPAは、所望の反応を誘導する別の媒体とともに使用されてもよい。本明細書の以下において、パッチPAの機能的な態様を説明する。
【0100】
しかしながら、本明細書の以下において、説明の便宜上、パッチPAを、親水性溶液を含み得るゲル型であると仮定する。言い換えれば、他に特に言及がない限り、パッチPAのメッシュ構造体NSは、親水性の性質を有すると仮定する。
【0101】
しかしながら、本出願の範囲は、親水性の性質を有するゲル型パッチPAに限定されるものと解釈されるべきではない。疎水性の性質を示す溶液を含むゲル型パッチPAに加えて、溶媒が除去されたゲル型パッチPA及び、さらにゾル型パッチPAも、本出願による機能を実施する能力がある限り、本出願の範囲に属し得る。
【0102】
2.パッチの機能
上述の特性に起因して、本出願によるパッチは、いくつかの有用な機能を有し得る。言い換えれば、液体物質SBを捕捉することによって、パッチは、液体物質SBの挙動に関与するようになり得る。
【0103】
したがって、本明細書の以下において、パッチPAに関する物質の挙動の形態に従って、物質の状態がパッチPAによって形成された所定の領域に規定されたリザーバー機能、及び物質の状態がパッチPAの外部領域を含む領域に規定されたチャネリング機能を、別々に説明する。
【0104】
2.1 リザーバー
2.1.1 意味
上記で説明するように、本出願によるパッチPAは、液体物質SBを捕捉することができる。言い換えれば、パッチPAは、リザーバーとしての機能を果たすことができる。
【0105】
パッチPAは、メッシュ構造体NSを使用して、メッシュ構造体NSに形成された複数のマイクロキャビティに、液体物質SBを捕捉することができる。液体物質SBは、パッチPAの三次元メッシュ構造体NSによって形成された微細なマイクロキャビティの少なくとも一部を占めていてもよく、又はメッシュ構造体NSに形成されたナノサイズの孔中に浸透していてもよい。
【0106】
パッチPAに配置された液体物質SBは、液体物質SBが複数のマイクロキャビティに分布している場合でさえ、液体の性質を失わない。すなわち、液体物質SBは、パッチPA中においてさえ、流動性を有し、物質の拡散は、パッチPAに分布した液体物質SBにおいて生じてもよく、適切な溶質は、物質に溶解していてもよい。
【0107】
パッチPAのリザーバー機能を、より詳細に以下で説明する。
【0108】
2.1.2 含有
本出願において、パッチPAは、上述の特性に起因して、標的物質を捕捉することができる。パッチPAは、所定の範囲内で、外部環境の変化に対する抵抗性を有していてもよい。この方法において、パッチPAは、物質が捕捉された状態を維持することができる。捕捉される標的である液体物質SBは、三次元メッシュ構造体NSを占めていてもよい。
【0109】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「含有」と称する。
【0110】
しかしながら、「液体物質を含有するパッチPA」は、液体物質が、メッシュ構造によって形成される空間に含有される場合、及び/又は、液体物質が、メッシュ構造体NSを構成するフレーム構造体に含有される場合を包含するものとして定義される。
【0111】
パッチPAは、液体物質SBを含有することができる。例えば、パッチPAは、パッチPAのメッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用する引力に起因して、液体物質SBを含有することができる。液体物質SBは、所定の強度又はそれより高い引力でメッシュ構造体NSと結合することができ、パッチPAに含有され得る。
【0112】
パッチPAに含有される液体物質SBの性質は、パッチPAの性質に従って分類することができる。より詳細には、パッチPAが親水性の性質を示す場合、パッチPAは、一般に、極性である、親水性の液体物質SBと結合することができ、三次元マイクロキャビティに親水性の液体物質SBを含有することができる。或いは、パッチPAが疎水性の性質を示す場合、疎水性の液体物質SBは、三次元メッシュ構造体NSのマイクロキャビティに含有され得る。
【0113】
パッチPAに含有され得る物質の量は、パッチPAの体積に比例していてもよい。言い換えれば、パッチPAに含有される物質の量は、パッチPAの形態に寄与する支持体として機能する三次元メッシュ構造体NSの量に比例していてもよい。しかしながら、パッチPAに含有され得る物質の量及びパッチPAの体積の間に一定の比例係数は存在せず、したがって、パッチPAに含有され得る物質の量及びパッチPAの体積の間の関係は、メッシュ構造の設計又は製造方法に従って変化し得る。
【0114】
パッチPAに含有される物質の量は、時間とともに、蒸発、喪失などに起因して、減少することがある。パッチPAに含有される物質の含量を増加又は維持するために、物質を、パッチPAに追加で注入してもよい。例えば、水分の蒸発を抑制するための水分保持剤を、パッチPAに添加してもよい。
【0115】
パッチPAは、液体物質SBを保管するのに容易な形態で実施されてもよい。これは、物質が、湿度レベル、光の量及び温度などの環境要因によって影響を受ける場合に、パッチPAが、物質の変性を最小限にして、実施することができることを意味する。例えば、パッチPAが細菌などの外部要因に起因して変性するのを阻止するために、パッチPAは、細菌阻害剤で処理されてもよい。
【0116】
複数の成分を有する液体物質SBが、パッチPAに含有されていてもよい。この場合において、複数の成分で形成される物質は、基準時点の前に、パッチPAに一緒に配置されてもよく、又は、当初に注入された物質は、最初にパッチPAに含有されてもよく、次いで、二番目の物質は、所定の時間の後、パッチPAに含有されてもよい。例えば、2つの成分で形成される液体物質SBが、パッチPAに含有される場合、2つの成分は、パッチPAの製造の際にパッチPAに含有されてもよく、1つの成分のみがパッチPAの製造の際にパッチに含有され、他の成分は後でパッチPAに含有されてもよく、又は、2つの成分は、パッチPAが製造された後に、パッチPAに連続して含有されてもよい。
【0117】
上記で説明するように、パッチに含有される物質は、流動性を示してもよく、物質は、不規則に移動してもよく、又はパッチPA中での分子運動に起因して拡散してもよい。
【0118】
2.1.3 反応空間の提供
図3及び
図4は、本出願によるパッチの機能の一例として、反応空間を提供することを示す図である。
【0119】
図3及び
図4に示されるように、本出願によるパッチPAは、空間を提供する機能を果たすことができる。言い換えれば、パッチPAは、液体物質SBが、メッシュ構造体NSによって形成される空間及び/又はメッシュ構造体NSを構成する空間の至るところで移動することができる、空間を提供することができる。
【0120】
パッチPAは、粒子の拡散及び/又は粒子の不規則運動以外の活動(本明細書の以下において、拡散以外の活動と称する)のための空間を提供してもよい。拡散以外の活動は、限定されるものではないが、化学反応を指してもよく、物理状態の変化を指してもよい。より詳細には、拡散以外の活動としては、活動の後に物質の化学組成が変化する化学反応、物質に含まれる成分の間の特異的な結合反応、物質に含まれ、不均一に分布した溶質若しくは粒子の均質化、物質に含まれるいくつかの成分の縮合、又は物質の一部の生物学的な活動を挙げることができる。
【0121】
複数の物質が活動に関与するようになる場合、複数の物質は、基準時点の前に、パッチPAに一緒に配置されていてもよい。複数の物質は、パッチPAに、連続的に挿入されてもよい。
【0122】
パッチPAの環境条件を変更することによって、パッチPAにおける拡散以外の活動のための空間を提供する機能の効率を、増強することができる。例えば、活動は、促進されてもよく、又は活動の開始は、パッチPAの温度条件の変更又は電気的条件を加えることによって、誘発されてもよい。
【0123】
図3及び
図4によれば、パッチPAに配置された第1の物質SB1及び第2の物質SB2は、パッチPAの内部で反応することができ、第3の物質SB3に変形してもよく、又は第3の物質SB3を発生させてもよい。
【0124】
2.2 チャネル
2.2.1 意味
物質の移動は、パッチPA及び外部領域の間で生じてもよい。物質は、パッチPAからパッチPAの外部領域に移動してもよく、又は外部領域からパッチPAに移動してもよい。
【0125】
パッチPAは、物質の移動経路を形成してもよく、又は物質の移動に関与していてもよい。より詳細には、パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBの移動に関与してもよく、又はパッチPAに捕捉された液体物質SBを通じた外部物質の移動に関与してもよい。塩基性物質BS又は添加物質ASは、パッチPAから外に移動してもよく、又は外部物質は、外部領域からパッチPAに導入されてもよい。
【0126】
パッチPAは、物質の移動経路を提供することができる。すなわち、パッチPAは、物質の移動に関与してもよく、物質の移動チャネルを提供してもよい。パッチPAは、液体物質SBの固有の性質に基づいて、物質の移動チャネルを提供してもよい。
【0127】
パッチPAが、外部領域と接続されているか否かに従って、パッチPAは、液体物質SBがパッチPA及び外部領域の間で移動可能な状態であってもよく、又は液体物質SBがパッチPA及び外部領域の間で移動不可能な状態であってもよい。パッチPA及び外部領域の間でチャネリングが始まる場合、パッチPAは、固有の機能を有することができる。
【0128】
本明細書の以下において、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を最初に説明し、パッチPAの固有の機能を、パッチPA及び外部領域が接続されているか否かに関連して詳細に説明する。
【0129】
基本的に、物質の不規則運動及び/又は拡散は、パッチPA及び外部領域の間の液体物質SBの移動の根本的要因である。しかしながら、パッチPA及び外部領域の間の物質の移動を制御するために、外部環境要因を制御すること(例えば、温度条件を制御すること、電気的条件を制御することなど)は、既に説明されている。
【0130】
2.2.2 移動可能な状態
物質が移動可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び/又は外部領域に配置された物質の間で、流れが生じてもよい。物質が移動可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間で、物質の移動が生じてもよい。
【0131】
例えば、物質が移動可能な状態において、液体物質SB又は液体物質SBのいくつかの成分は、外部領域に拡散してもよく、又は不規則運動に起因して移動してもよい。或いは、物質が移動可能な状態において、外部領域に配置された外部物質又は外部物質のいくつかの成分は、パッチPA中の液体物質SBに拡散してもよく、又は不規則運動に起因して移動してもよい。
【0132】
物質が移動可能な状態は、接触によって引き起こされてもよい。接触は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間の接続を指してもよい。接触は、液体物質SB及び外部領域の流動領域の間で少なくとも部分的に重なり合うことを指してもよい。接触は、パッチPAの少なくとも一部と接続されている外部物質を指してもよい。捕捉された液体物質SBが流動し得る範囲は、物質が移動可能な状態に拡大していることが理解され得る。言い換えれば、物質が移動可能な状態において、液体物質SBが流動し得る範囲は、捕捉された液体物質SBの外部領域の少なくとも一部を含むように拡大してもよい。例えば、液体物質SBが外部領域と接触している場合、捕捉された液体物質SBが流動し得る範囲は、接触している外部領域の少なくとも一部を含むように拡大してもよい。より詳細には、外部領域が外部プレートである場合、液体物質SBが流動し得る領域は、液体物質SBと接触している外部プレートの領域を含んで拡大してもよい。
【0133】
2.2.3 移動不可能な状態
物質が移動不可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間で、物質の移動は生じなくてもよい。しかしながら、物質の移動は、パッチPAに捕捉された液体物質SBにおいて、及び外部領域に配置された外部物質において、それぞれ、生じてもよい。
【0134】
物質が移動不可能な状態は、接触が解放された状態であってもよい。言い換えれば、パッチPA及び外部領域の間で接触が解放された状態において、パッチPAに残留した液体物質SB及び外部領域又は外部物質の間で、物質の移動は不可能である。
【0135】
より詳細には、接触が解放された状態は、パッチPAに捕捉された液体物質SBが外部領域に接続されていない状態を指してもよい。接触が解放された状態は、液体物質SBが、外部領域に配置された外部物質に接続されていない状態を指してもよい。例えば、物質の移動が不可能な状態は、パッチPA及び外部領域の間の分離によって引き起こされてもよい。
【0136】
本明細書において、「移動可能な状態」は、「移動不可能な状態」と区別された意味を有するが、時間の経過、環境の変化などに起因して、状態の間で、移行が生じてもよい。言い換えれば、パッチPAは、移動可能な状態になった後に移動不可能な状態になってもよく、移動不可能な状態になった後に移動可能な状態になってもよく、又は移動可能な状態になった後、移動不可能な状態になった後に、再び移動可能な状態になってもよい。
【0137】
2.2.4 機能の区別
2.2.4.1 送達
本出願において、上述の特性に起因して、パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部を、所望の外部領域に送達することができる。物質の送達は、満足された所定の条件に起因する、パッチPAからの、パッチPAに捕捉された液体物質SBの一部の分離を指してもよい。液体物質SBの一部の分離は、パッチPAによって影響を受ける領域から、物質の一部の抽出、放出又は解放を指してもよい。これは、パッチPAの上述のチャネリング機能に従属する概念であり、パッチPAの外部へのパッチPAに配置された物質の移動(送達)を定義するものとして理解することができる。
【0138】
所望の外部領域は、別のパッチPA、乾燥領域又は液体領域であってもよい。
【0139】
送達が生じる所定の条件は、温度の変化、圧力の変化、電気的特性の変化及び物理的状態の変化などの環境条件として設定することができる。例えば、パッチPAが、液体物質SBに結合する力がパッチPAのメッシュ構造体NSに結合する力よりも大きい物体と接触する場合、液体物質SBは、接触した物体と化学的に結合することができ、結果として、液体物質SBの少なくとも一部が、物体に提供され得る。
【0140】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「送達」と称する。
【0141】
送達は、パッチPA及び外部領域の間で、液体物質SBが移動可能な状態、及び液体物質SBが移動不可能な状態を介して、パッチPA及び外部領域の間で生じてもよい。
【0142】
より詳細には、液体物質SBが移動可能な状態である場合、液体物質SBは、パッチPA及び外部領域の間で拡散してもよく、又は不規則運動に起因して外部領域に移動してもよい。言い換えれば、液体物質SBに含まれる塩基性溶液及び/又は添加物質ASは、パッチPAから外部領域に移動してもよい。液体物質SBが移動不可能な状態において、液体物質SBは、パッチPA及び外部領域の間で移動することは不可能である。言い換えれば、移動可能な状態から移動不可能な状態への移行に起因して、液体物質SBの拡散及び/又は不規則運動に起因してパッチPAから外部領域に移動した物質の一部は、パッチPAに戻ることは不可能になる。したがって、液体物質SBの一部は、外部領域に提供され得る。
【0143】
送達は、液体物質SB及びメッシュ構造体NSの間の引力、並びに液体物質SB及び外部領域又は外部物質の間の引力の間の相違に起因して行われてもよい。引力は、極性又は特異的な結合の関係の間で、同様に引き起こされ得る。
【0144】
より詳細には、液体物質SBが親水性であり、外部領域又は外部物質が、メッシュ構造体NSよりも親水性である場合、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、移動可能状態及び移動不可能状態を介して、外部領域に提供され得る。
【0145】
液体物質SBの送達は、選択的に行うこともできる。例えば、液体物質SB及び外部物質に含まれるいくつかの成分の間に特異的な結合の関係が存在する場合、いくつかの有効成分は、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を介して、選択的に送達され得る。
【0146】
より詳細には、パッチPAが、平板の形態である外部プレートPAに物質を提供すると仮定すると、パッチPAに捕捉された液体物質SBの一部(例えば、溶質の一部)と特異的に結合する物質を、外部プレートPLに適用することができる。この場合において、パッチPAは、移動可能状態及び移動不可能状態を介して、パッチPAからプレートPLに、外部プレートPLに適用された物質に特異的に結合する溶質の一部を、選択的に送達することができる。
【0147】
パッチPAの機能としての送達は、物質が移動される異なる領域のいくつかの例により、以下で説明する。しかしながら、詳細な説明を行うにあたり、液体物質SBの「解放」及び液体物質SBの「送達」の概念は、互換可能に使用することができる。
【0148】
ここで、液体物質SBがパッチPAから分離した外部プレートPLに提供される場合を説明する。例えば、物質がパッチPAからプレートPL、例えば、スライドガラスに移動する場合を考慮に入れてもよい。
【0149】
パッチPA及びプレートPLが接触すると、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、プレートPLに拡散するか、又は不規則運動に起因して移動する。パッチPA及びプレートPLの間の接触が解放されると、パッチPAからプレートPLに移動した物質の一部(すなわち、液体物質SBの一部)は、パッチPAに戻ることは不可能になる。結果として、物質の一部は、パッチPAからプレートPLに提供され得る。この場合において、提供される物質の一部は、添加物質ASであってもよい。接触及び分離によって「提供される」パッチPA中の物質のために、物質及びプレートPLの間で作用する引力並びに/又は結合力が存在しなければならず、引力及び/又は結合力は、物質及びパッチPAの間で作用する引力よりも大きくなければならない。したがって、上述の「送達条件」が満たされないと、物質の送達は、パッチPA及びプレートPLの間で生じ得ない。
【0150】
物質の送達は、温度条件又は電気的条件をパッチPAに提供することによって制御してもよい。
【0151】
パッチPAからプレートPLへの物質の移動は、パッチPA及びプレートPLの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及びプレートPLの間の物質移動効率は、パッチPA及びプレートPLが接触する面積の範囲に従って、増加又は減少し得る。
【0152】
パッチPAが複数の成分を含む場合、いくつかの成分のみが、外部プレートPLに選択的に移動してもよい。より詳細には、複数の成分のいくつかに特異的に結合する物質は、外部プレートPLに固定されていてもよい。この場合において、外部プレートPLに固定された物質は、液体状態若しくは固体状態であってもよく、又は異なる領域に固定されていてもよい。この場合において、複数の成分の物質の一部は、プレートPLに移動し、パッチPA及び異なる領域の間での接触に起因してプレートPLに特異的に結合し、パッチPAがプレートPLから分離されると、いくつかの成分のみが、プレートPLに選択的に開放され得る。
【0153】
図5~
図7は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の送達の一例として、パッチPAから外部プレートPLへの物質の送達を示す。
図5~
図7によれば、パッチPAが外部プレートPLと接触することによって、パッチPAに含有される物質の一部が、プレートPLに提供され得る。この場合において、物質の提供は、物質が移動可能なようにプレートと接触するパッチPAによって可能になり得る。この場合において、水膜WFは、プレート及びパッチPAが接触する接触面の近傍で形成されてもよく、物質は、形成された水膜WFを通して移動可能であり得る。
【0154】
ここで、液体物質SBがパッチPAから流動性を有する物質SLに提供される場合を説明する。流動性を有する物質SLは、他の含有空間に保持されるか、又は流動する、液体物質であってもよい。
【0155】
パッチPA及び流動性を有する物質が接触すると(例えば、パッチPAを、溶液中に入れる)、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、不規則運動に起因して、流動性を有する物質SLに拡散又は移動し得る。パッチPA及び流動性を有する物質SLが分離されると、パッチPAから流動性を有する物質に移動した液体物質SBの一部は、パッチPAに戻ることが不可能になり、パッチPA中の物質の一部は、流動性を有する物質に提供され得る。
【0156】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質の移動は、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質移動効率は、パッチPA及び流動性を有する物質SLが接触する面積の程度(例えば、パッチPAが、溶液に浸漬された深さなど)に従って、増加又は減少し得る。
【0157】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質の移動は、パッチPA及び流動性を有する物質の間の物理的な分離によって制御することができる。
【0158】
液体物質SB中の添加物質ASの部分濃度及び流動性を有する物質中の添加物質ASの部分濃度は、異なっていてもよく、添加物質ASは、パッチPAから流動性を有する物質に提供されてもよい。
【0159】
しかしながら、流動性を有する物質SLに液体物質SBを提供するパッチPAにおいて、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物理的な分離は必須ではない。例えば、パッチPAから流動性を有する液体に移動する物質が引き起こす力(推進力/偶然の力)が、消失するか、又は基準値若しくはそれより下に減少すると、物質の移動は停止し得る。
【0160】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の「送達」において、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の上述の「送達条件」は、必要ではないことがある。流動性を有する物質SLに既に移動した物質が、流動性を有する物質SL中の不規則運動に起因して拡散及び/又は移動し、移動した物質及びパッチPAの間の距離が、所定の距離より大きくなると、物質が、流動性を有する物質SLに提供されたと理解することができる。プレートPLの場合では、接触に起因して拡大した移動可能な範囲が極めて限定されており、したがって、パッチPA及びプレートPLに移動した物質の間の引力が大きな影響を与え得るので、パッチPA及び流動性を有する物質の間の関係において、パッチPA及びプレートPLの間の接触に起因して拡大した移動可能な範囲は、比較的大きくなり、したがって、パッチPA及び流動性を有する物質SLに移動した物質の間の引力は重要ではない。
【0161】
図8~
図10は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の送達の一例として、パッチPAから流動性を有する物質への物質の送達を示す。
図8~
図10によれば、パッチPAは、パッチPAに含有される物質の一部を、流動性を有する外部物質に送達することができる。含有された物質の一部の送達は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び流動性を有する物質の間で物質の移動が可能となるように、パッチPAを、流動性を有する物質に挿入又は接触させることにより、行うことができる。
【0162】
ここで、物質が、パッチPAから別のパッチPAに移動すると仮定する。パッチPA及び他のパッチPAが接触する接触領域において、パッチPAに提供された液体物質SBの少なくとも一部は、他のパッチPAに移動することができる。
【0163】
接触領域において、それぞれのパッチPAに提供された液体物質SBは、拡散して、他のパッチPAに移動することができる。この場合において、物質の移動に起因して、それぞれのパッチPAに提供された液体物質SBの濃度は変化し得る。また、本実施形態において、上記で説明するように、パッチPA及び他のパッチPAは、分離されていてもよく、パッチPA中の液体物質SBの一部は、他のパッチPAに提供され得る。
【0164】
パッチPA及び他のパッチPAの間の物質の移動は、物理的状態の変化を含む、環境条件の変化によって行うことができる。
【0165】
パッチPA及び他のパッチPAの間の物質の移動は、パッチPA及び他のパッチPAの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及び他のパッチPAの間の物質移動効率は、パッチPAが他のパッチPAと接触する面積の範囲に従って、増加又は減少し得る。
【0166】
図11~
図13は、本出願によるパッチPAの機能の中で、物質の送達の一例として、パッチPA1から別のパッチPA2への物質の送達を示す。
図11~
図13によれば、パッチPA1は、パッチPA1に含有される物質の一部を、他のパッチPA2に送達することができる。物質の一部の送達は、パッチPA1を他のパッチPA2と接触させることによって、並びにパッチPA1に捕捉された液体物質SB及び他のパッチPA2に捕捉された物質を交換可能な状態にすることによって、行うことができる。
【0167】
2.2.4.2 吸収
説明の前に、本出願によるパッチPAの機能の中で、「吸収」は、いくつかの実施形態において、上述の「送達」と同様に使用し得ることに留意すべきである。例えば、物質が、物質間の濃度の相違に起因して移動する場合において、「吸収」は、液体物質SBの濃度、特に、添加物質ASの濃度を変化させて、物質が移動する方向を制御し得る点で「送達」と同様であり得る。「吸収」は、パッチPAとの物理的な接触の解放によって、物質の移動及び選択的な吸収を制御する点で、「送達」と同様であり得、これは、本出願が関連する当業者によって、明確に理解され得る。
【0168】
上述の特性に起因して、本出願によるパッチPAは、外部物質を捕捉することができる。パッチPAは、パッチPAによって規定された領域の外側に存在する外部物質を、パッチPAによって影響を受ける領域の方向に引き込むことができる。引き込まれた外部物質は、パッチPAの液体物質SBと一緒に捕捉され得る。外部物質の引き込みは、外部物質及びパッチPAによって既に捕捉された液体物質SBの間の引力によって引き起こされてもよい。或いは、外部物質の引き込みは、外部物質及び液体物質SBによって占められていないメッシュ構造体NSの領域の間の引力によって引き起こされてもよい。外部物質の引き込みは、表面張力の力によって引き起こされてもよい。
【0169】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「吸収」と称する。吸収は、パッチPAの上述のチャネリング機能に従属する概念として理解することができ、この概念はパッチPAへの外部物質の移動を定義する。
【0170】
吸収は、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を介して、パッチPAによって生じ得る。
【0171】
パッチPAによって吸収可能な物質は、液体状態又は固体状態であってもよい。例えば、パッチPAが、固体状態の物質を含む外部物質と接触する場合、物質の吸収は、外部物質に含まれる固体状態の物質及びパッチPAに配置された液体物質SBの間の引力に起因して行われ得る。別の例として、パッチPAが、液体の外部物質と接触する場合、吸収は、液体の外部物質及びパッチPAに配置された液体物質SBの間の結合に起因して行われ得る。
【0172】
パッチPAに吸収された外部物質は、パッチPAを形成するメッシュ構造体NSのマイクロキャビティを通してパッチPAの内部に移動してもよく、又はパッチPAの表面に分布していてもよい。外部物質が分布する位置は、外部物質の分子量又は粒子径に基づいて設定することができる。
【0173】
吸収が行われる間に、パッチPAの形態は変化してもよい。例えば、パッチPAの体積、色などが変化してもよい。パッチPAへの吸収が行われる間、パッチPAへの吸収は、パッチPAの吸収環境に、温度の変化及び物理的状態の変化などの外部条件を加えることによって、活性化又は遅延させることができる。
【0174】
吸収を、吸収が生じるときにパッチPAに吸収される物質を提供する外部領域のいくつかの例に従って、パッチPAの機能として、以下に説明する。
【0175】
本明細書の以下において、パッチPAが、外部プレートPLから外部物質を吸収すると仮定する。外部プレートの一例として、外部物質が配置され得るが、外部物質が吸収されない、プレートPLを挙げることができる。
【0176】
物質は、外部プレートPLに適用されてもよい。特に、物質は、プレートPLに、粉末の形態で適用されてもよい。プレートPLに適用された物質は、単一成分、又は複数の成分の混合物であってもよい。
【0177】
プレートPLは、平板形状を有していてもよい。プレートPLの形状は、物質などと含有する能力を改善するために変形させてもよい。例えば、物質を含有する能力を改善するためにウェルを形成してもよく、プレートPLの表面をエッチング若しくはエンボス加工によって変形させてもよく、又はパッチPAとの接触を改善するためにパターン形成プレートPLを使用してもよい。
【0178】
本出願のパッチPAによるプレートPLからの物質の吸収は、プレートPL及びパッチPAの間の接触によって行うことができる。この場合において、プレートPL及びパッチPAの間の接触表面の近傍の接触領域において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び/又はプレートPLに適用された物質に起因して、水膜WFが形成されてもよい。水膜(アクアプレーン、ハイドロプレーン)WFが接触領域に形成されると、プレートPLに適用された物質は、水膜WFによって捕捉されてもよい。水膜WFに捕捉された物質は、パッチPA内で自由に流動してもよい。
【0179】
パッチPAが、プレートPLから、所定の距離又はそれ以上に離れて間隔が空いて、分離されると、水膜WFは、パッチPAと一緒に移動してもよく、プレートPLに適用された物質は、パッチPAに吸収され得る。パッチPAが、プレートPLから所定の距離又はそれ以上離れて、分離されるにつれて、プレートPLに適用された物質は、パッチPAに吸収され得る。パッチPA及びプレートPLが離れて分離されると、パッチPAに提供された液体物質SBは、プレートPLに移動しなくてもよく、又はそのわずかな量のみが、パッチPAに吸収されてもよい。
【0180】
プレートPLに適用された物質の一部又はすべてが、パッチPAに捕捉された物質の一部又はすべてと、特異的に反応してもよい。この点において、パッチPAによるプレートPLからの物質の吸収は、選択的に行われ得る。特に、吸収は、パッチPAが、パッチPAに捕捉された物質の一部に関して、プレートPLよりも強い引力を有する場合に、選択的に行われ得る。
【0181】
一例として、物質の一部は、プレートPLに固定されていてもよい。言い換えれば、物質の一部は、物質の別の一部が、流動性を有するか、又は固定されないように適用されると同時に、プレートPLに固定されてもよい。この場合において、パッチPA及びプレートPLが接触及び分離される場合、プレートPLに適用された物質のプレートPLに固定された物質の一部を除いて、物質は、パッチPAに選択的に吸収されてもよい。その代わりに、物質が固定されるか否かに関わらず、プレートPLに配置された物質及びパッチPAに捕捉された物質の極性に起因して、選択的な吸収が生じてもよい。
【0182】
別の例として、パッチPAに捕捉された液体物質SBが、プレートPLに適用された物質の少なくとも一部と特異的に結合する場合、パッチPAが、プレートPLに適用された物質と接触して、次いで、分離されるときに、液体物質SBと特異的に結合したプレートPLに適用された物質の一部のみが、パッチPAに吸収され得る。
【0183】
さらに別の例として、プレートPLに適用された物質の一部は、予めプレートPLに固定された物質と特異的に反応してもよい。この場合において、プレートPLに物質が適用されるより前に、プレートPLに予め固定された物質と特異的に反応する物質を除く、残留する物質のみが、パッチPAに吸収され得る。
【0184】
図14~
図16は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の吸収の一例として、パッチPAによる外部プレートPLからの物質の吸収を示す。
図14~
図16によれば、パッチPAは、外部プレートPLに配置された物質の一部を、外部プレートPLから吸収することができる。物質の吸収は、パッチPAを、外部プレートPL、外部プレートPA及びパッチPAの間の接触領域の近傍で形成される水膜WF、及び水膜WFを通じてパッチPAに移動可能な物質を、接触させることによって行うことができる。
【0185】
ここで、物質は、パッチPAに、流動性を有する物質SLから吸収されると仮定する。流動性を有する物質SLは、他の含有空間に保持されるか、又は流動する、液体の外部物質を指していてもよい。より詳細には、流動性を有する物質SL及びパッチPAに捕捉された液体物質SBが互いに流動し得る環境を有することによって、流動性を有する物質SLの一部又はすべてが、パッチPAに吸収され得る。この場合において、流動性を有する物質SL及び液体物質SBが互いに流動し得る環境は、パッチPAが、流動性を有する物質SLの少なくとも一部と、接触することによって形成され得る。
【0186】
パッチPAが、流動性を有する物質SLと接触すると、パッチPAは、物質が流動性を有する物質SLから移動可能である状態であり得る。パッチPAが、流動性を有する物質SLから分離されると、流動性を有する物質SLの少なくとも一部は、パッチPAに吸収され得る。
【0187】
流動性を有する物質SLからパッチPAへの物質の吸収は、パッチPAに捕捉された物質及び流動性を有する物質SLの間の濃度の相違に依存し得る。言い換えれば、所定の添加物質ASに対するパッチPAに捕捉された液体物質SBの濃度が、所定の添加物質ASに対する流動性を有する物質SLの濃度よりも低い場合、所定の添加物質ASは、パッチPAに吸収され得る。
【0188】
物質が、流動性を有する物質SLからパッチPAに吸収される場合、パッチPA及び流動性を有する物質SLが上記の説明のようにして接触する間の濃度の相違に応じた吸収に加えて、パッチPAへの吸収は、電気的要因の追加又は物理的状態の変化によって制御することもできる。さらに、パッチPAに捕捉された物質及び吸収される物質の間の直接的な接触がなく、物質の吸収は、媒体を介して、それらの間の間接的な接触を通して行われてもよい。
【0189】
図17~
図19は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の吸収の一例として、パッチPAによる流動性を有する物質SLからの物質の吸収を示す。
図17~
図19によれば、パッチPAは、流動性を有する物質SLの一部を吸収することができる。物質の吸収は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び流動性を有する物質SLが互いに移動可能であるように、パッチPAを、流動性を有する物質SLに浸漬、又は流動性を有する物質SLと接触させることによって、行うことができる。
【0190】
ここで、パッチPAが、別のパッチPAから外部物質を吸収すると仮定する。
【0191】
パッチPAによる別のパッチPAからの外部物質の吸収は、吸収された外部物質及びパッチPAに既に捕捉された物質の間、並びに吸収された外部物質及びパッチPAに吸収されていない外部物質の間の結合力の相違に起因して、行われてもよい。例えば、吸収された物質が親水性の性質を示す場合、パッチPAは、親水性の性質を示し、吸収された物質及びパッチPAの間の引力は、他のパッチPA及び吸収された物質の間の引力よりも強く(すなわち、パッチPAが、他のパッチPAよりも親水性である場合)、外部物質の少なくとも一部は、パッチPA及び他のパッチPAが、接触後に分離されたときに、パッチPAに吸収され得る。
【0192】
図20~
図22は、本出願によるパッチPAの機能の中で、物質の吸収の一例として、パッチPA3による別のパッチPA4からの物質の吸収を示す。
図20~
図22によれば、パッチPA3は、他のパッチPA4に配置された物質の一部を吸収することができる。物質の吸収は、パッチPA3を他のパッチPA4と接触させることによって、行うことができ、パッチPA3に捕捉された液体物質SB及び他のパッチPA4に捕捉された液体物質SBを交換可能にする。
【0193】
パッチPAと吸収された外部物質との結合力は、パッチPAの総体積に対する、パッチPAを構成する三次元メッシュ構造体NSのフレーム構造体の割合に従って、変化し得る。例えば、全パッチPA中、フレーム構造体によって占められている体積の割合が増加するにつれて、構造体に捕捉された物質の量が減少し得る。この場合において、パッチPA及び標的物質の間の結合力は、標的物質及びパッチPAに捕捉された物質の間の接触面積の減少などの理由に起因して、減少し得る。
【0194】
これに関して、メッシュ構造体NSを構成する原料の比率は、パッチPAの極性が制御されるように、パッチPAの製造プロセス中に、調整することができる。例えば、アガロースを使用して製造されたパッチPAの場合において、アガロースの濃度は、吸収の程度を調整するために制御することができる。
【0195】
ある領域が、パッチPAから提供される物質に対して、パッチPAよりも弱い結合力を有する場合、並びにパッチPA及び別のパッチPAが、接触して、次いで分離される場合、吸収された外部物質は、パッチPAとともに他のパッチPAから分離され得る。
【0196】
2.2.4.3 環境の提供
上述の特性に起因して、本出願によるパッチPAは、所望の領域の環境条件を調整する機能を果たすことができる。パッチPAは、所望の領域に、パッチPAに起因する環境を提供することができる。
【0197】
パッチPAに起因する環境条件は、パッチPAに捕捉された液体物質SBに依存し得る。パッチPAは、パッチPAに収容される物質の特性に基づいて、又はパッチPAに収容される物質の特性に対応する環境を作成する目的のために、外部領域に配置された物質に、所望の環境を発生させることができる。
【0198】
環境の調整は、所望の領域の環境条件を変化させるとして理解することができる。所望の領域の環境条件の変化は、パッチPAによって影響を受ける領域が、拡大して、所望の領域の少なくとも一部を含む形態、又はパッチPAの環境を所望の領域と共有する形態で、実施することができる。
【0199】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「環境の提供」と称する。
【0200】
パッチPAによる環境の提供は、物質が、パッチPA及び環境が提供される外部領域の対象の間で移動可能である状態で、行われてもよい。パッチPAによる環境の提供は、接触によって行われてもよい。例えば、パッチPAが、所望の領域(例えば、外部物質、プレートPLなど)と接触すると、特定の環境が、パッチPAによって所望の領域に提供され得る。
【0201】
パッチPAは、適切なpH、浸透圧、湿度レベル、濃度、温度などを伴う環境を提供することによって、標的領域TAの環境を調整することができる。例えば、パッチPAは、標的領域TA又は標的物質に流動性(fluidity)(流動性(liquidity))を提供することができる。このような流動性の提供は、パッチPAに捕捉された物質の一部の移動に起因して生じ得る。水分環境は、パッチPAに捕捉された液体物質SB又は塩基性物質BSによって、標的領域TAに提供されてもよい。
【0202】
パッチPAによって提供される環境要因は、目的に従って、一定に維持されてもよい。例えば、パッチPAは、所望の領域に、ホメオスタシスを提供してもよい。別の例として、環境の提供の結果として、パッチPAに捕捉された物質は、所望の領域の環境条件に適応し得る。
【0203】
パッチPAによる環境の提供は、パッチPAに含まれる液体物質SBの拡散からもたらされてもよい。すなわち、パッチPA及び所望の領域が接触すると、物質は、パッチPA及び所望の領域の間の接触に起因して形成される接触領域を通して移動可能になり得る。これに関して、浸透圧に起因する環境の変化、イオン濃度の変化に起因する環境の変化、水分環境の提供及びpHレベルの変化は、物質が拡散する方向に従って、実施することができる。
【0204】
図23~
図25は、本出願によるパッチPAの機能の中で、環境の提供の一例として、パッチPAによる外部プレートPLへの所定の環境の提供を示す。
図23~
図25によれば、パッチPAは、所定の環境を、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が配置された外部プレートPLに提供することができる。例えば、パッチPAは、所定の環境を、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が反応して、第6の物質SB6を形成するために、プレートPLに提供することができる。環境の提供は、水膜WFが、接触領域の近傍で形成され、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が、水膜WFに捕捉されるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって、行うことができる。
【0205】
3.パッチの適用
本出願によるパッチPAは、上述のパッチPAの機能を適切に適用することによって、実施して、様々な機能を果たすことができる。
【0206】
本出願の技術的要旨を、いくつかの実施形態を開示することによって、以下に説明する。しかしながら、本出願によって開示されるパッチPAの機能が適用される技術的範囲は、当業者によって容易に到達され得る範囲内で、広い意味で解釈することができ、及び本出願の範囲は、本明細書に開示される実施形態によって限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0207】
3.1 パッチ内
パッチPAは、物質のために反応領域を提供することができる。言い換えれば、物質の反応は、パッチPAによって影響を受ける空間領域の少なくとも一部で起こり得る。この場合において、物質の反応は、パッチPAに捕捉された液体物質SBの間の反応並びに/又は捕捉された液体物質SB及びパッチPAの外側から提供された物質の間の反応であってもよい。物質のための反応領域の提供は、物質の反応を活性化又は促進することができる。
【0208】
この場合において、パッチPAに捕捉された液体物質SBは、パッチPAの製造の際に添加される物質、パッチPAの製造後のパッチPAへの添加物であって、パッチPAに含有される物質、及びパッチPAに一時的に捕捉された物質のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。言い換えれば、物質がパッチPAに捕捉される形態に関わらず、パッチPA内での反応が活性化される時点で、パッチPAに捕捉されたあらゆる物質が、パッチPA内で反応することができる。さらに、パッチPAの製造後に注入された物質は、反応開始剤として作用することもできる。
【0209】
パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、実施形態の観点で、上述の2.1.3項(すなわち、反応空間の提供)に従属する概念であってもよい。或いは、パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、上述の2.1.3項及び2.2.4.2項(すなわち、吸収)の組み合わされた機能を果たす、複数の概念からなっていてもよい。パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、限定されないが、2つ又はそれ以上の機能が組み合わされた形態で実施されてもよい。
【0210】
3.1.1 第1の実施形態
本明細書の以下において、パッチPAへの吸収の機能及び反応空間の提供の機能(本明細書の以下において、「機能の提供」と称する)が、単一のパッチPAによって果たされると仮定することによって、説明を行う。この場合において、吸収機能及び機能の提供は、同時に果たされる機能、異なる時点で果たされる機能、又は連続して果たされて、別の機能を果たす機能であってもよい。吸収及び機能の提供に加えて他の機能をさらに含むパッチPAは、本実施形態に属するものとして考えることもできる。
【0211】
上記で説明するように、パッチPAは、物質を捕捉する機能を果たしてもよく、物質は、物質が捕捉されたときでさえ、流動性を有することができる。液体物質SBのいくつかの成分が不均一に分布している場合、不均一な成分は、拡散してもよい。液体物質SBの成分が均一に分布している場合でさえ、液体物質SBは、粒子の不規則運動に起因する所定のレベルの移動性を有することができる。この場合において、物質の間の反応、例えば、物質の間の特異的な結合は、パッチPAの内部で生じてもよい。
【0212】
例えば、パッチPAにおいて、捕捉された物質の間の反応に加えて、パッチPAに新たに捕捉された流動性を有する物質、及びパッチPAに捕捉されていた物質が、互いに特異的に結合する形態での反応も、可能であり得る。
【0213】
流動性を有する物質及びパッチPAに捕捉されていた物質の間の反応は、物質パッチが、提供された空間から分離された後に、起こってもよい。例えば、パッチPAが、任意の空間から、流動性を有する物質を吸収した後、パッチPAを、任意の空間から分離することができ、吸収された物質及びパッチPAに捕捉されていた物質の間の反応が、パッチPAにおいて起こり得る。
【0214】
加えて、パッチPAは、流動性を有する物質に関して、吸収機能を果たすことによって、パッチAに捕捉された物質の反応を起こすことが可能であり得る。言い換えれば、パッチPAによる流動性を有する物質の吸収は、吸収された物質及びパッチPAに捕捉されている物質の間の反応のための引き金として作用し得る。反応は、パッチPAによって規定された空間の内部で起こってもよい。
【0215】
パッチPAに捕捉された液体物質SBの組成は、パッチPAの内部で起こる反応に起因して、変化してもよい。特に、パッチPAの内部に捕捉された物質が、化合物である場合、その化学組成は、反応の前後で変化してもよい。或いは、物質の組成分布は、パッチPA中の物質の位置に従って、変化してもよい。例えば、これは、分散又は別の物質に特異的な引力を有する粒子に起因していてもよい。
【0216】
液体物質SBの組成が、パッチPAの内部での反応に起因して変化する場合、物質の一部が、パッチPA及びパッチPAの外側の物質(パッチPAと接触する物質が存在する場合、相当する物質)の間の濃度の相違に起因して、パッチPAに吸収されてもよく、又は物質は、パッチPAから、パッチPAの外側の物質に放出されてもよい。
【0217】
3.1.2 第2の実施形態
本明細書の以下において、少なくとも所定の時間で、パッチPAの含有する機能及び物質のための反応空間の提供の機能が一緒に果たされる実施態様を説明する。より詳細には、パッチPAは、パッチPAに含有される液体物質SBの少なくとも一部が反応するための空間を提供する機能を果たすことができる。
【0218】
パッチPAは、物質を含有することができ、含有された物質のための反応空間を提供することができる。この場合において、パッチPAによって提供される反応空間は、パッチPAのメッシュ構造体NSによって形成されるマイクロキャビティ、又はパッチPAの表面領域であってもよい。特に、パッチPAに含有される物質及びパッチPAの表面に適用される物質が反応する場合、反応空間は、パッチPAの表面領域であってもよい。
【0219】
パッチPAによって提供される反応空間は、特異的な環境条件を提供する機能を果たしてもよい。反応がパッチPAに配置された液体物質SB中で起こる間に、反応の環境条件は、パッチPAによって調整されてもよい。例えば、パッチPAは、緩衝液としての機能を果たすことができる。
【0220】
メッシュ構造によって物質を含有することによって、パッチPAは、独立して、容器を必要としない。パッチPAの反応空間がパッチPAの表面である場合、反応は、パッチPAの表面を通して、容易に観察することができる。このため、パッチPAの形状を、観察を容易にする形状に変形させてもよい。
【0221】
パッチPAに含有される液体物質SBは、異なる種類の物質で、変性又は反応してもよい。パッチPAに含有される液体物質SBの組成は、時間とともに変化してもよい。
【0222】
この反応は、化学式が変化する化学反応、物理的状態の変化、又は生体反応を指してもよい。この場合において、パッチPAに含有される液体物質SBは、単一成分で形成された物質、又は複数の成分を含む混合物であってもよい。
【0223】
3.2 移動経路の提供(チャネリング)
本明細書の以下において、物質の移動経路を提供する機能を果たすパッチPAを説明する。より詳細には、上記で説明するように、パッチPAは、流動性を有する物質を、捕捉、吸収、放出及び/又は含有することができる。物質の移動経路を提供する機能を果たすパッチPAの様々な実施形態は、上述のパッチPAの機能のそれぞれ、又はこれらの組み合わせによって実施することができる。しかしながら、いくつかの実施形態を、よりよい理解のために開示する。
【0224】
3.2.1 第3の実施形態
パッチPAは、上述のパッチPAの機能の中で、2.2.4.1項(すなわち、送達に関する項)及び2.2.4.2項(すなわち、吸収に関する項)に説明された機能を果たすために実施され得る。この場合において、吸収機能及び送達機能は、一緒に提供されてもよく、又は連続して提供されてもよい。
【0225】
パッチPAは、物質の移動経路を提供するために、吸収及び送達機能を一緒に果たすことができる。特に、パッチPAは、外部物質を吸収することができ、吸収した外部物質を、外部領域に提供することができ、それによって、外部物質への移動経路が提供される。
【0226】
パッチPAによる外部物質の移動経路の提供は、外部物質の吸収及び外部物質の放出によって行うことができる。より詳細には、パッチPAは、外部物質と接触し、外部物質を吸収し、外部領域と接触し、外部物質を外部領域に送達することができる。この場合において、外部物質の捕捉及びパッチPAによって捕捉された外部物質の外部領域への送達は、上述の吸収及び送達のプロセスと同様のプロセスによって行われてもよい。
【0227】
パッチPAに吸収され、提供される外部物質は、液相又は固相であってもよい。
【0228】
この方法において、パッチPAは、外部物質の一部を、別の外部物質に提供することを可能にし得る。外部物質及び他の外部物質は、同時に、パッチPAと接触してもよい。外部物質及び他の外部物質は、異なる時点で、パッチPAと接触してもよい。
【0229】
外部物質及び他の外部物質は、異なる時点で、パッチPAと接触してもよい。外部物質が、異なる時点で、パッチPAと接触する場合、外部物質は、最初のパッチPAと接触してもよく、外部物質及びパッチPAが分離された後、パッチPA及び他の外部物質が接触してもよい。この場合において、パッチPAは、外部物質から、捕捉された物質を一時的に含有し得る。
【0230】
パッチPAは、物質の移動経路を同時に提供してもよく、さらに、時間の遅延を提供してもよい。パッチPAは、別の外部物質に提供される物質の量及びそのような提供の速度を、適切に調整する機能を果たしてもよい。
【0231】
このような一連のプロセスは、パッチPAに対して、一方向で行われてもよい。具体例として、物質の吸収は、パッチPAの表面を通して行うことができ、環境は、パッチPAの内部表面に提供され得、物質は、表面に面した別の表面を通して放出され得る。
【0232】
3.2.2 第4の実施形態
パッチPAは、パッチPAの上述の機能の中で、物質の吸収及び放出、並びに、同時に、物質のための反応空間の提供を果たすことができる。この場合において、物質の吸収及び放出、並びに反応空間の提供は、同時に又は連続して行われてもよい。
【0233】
実施形態によれば、外部物質の吸収及び放出のプロセスを行うにあたり、パッチPAは、反応空間を、吸収された外部物質に、少なくとも所定の時間、提供することができる。パッチPAは、吸収された外部物質を含む、パッチPAに捕捉された液体物質SBに、少なくともある時間、特異的な環境を提供することができる。
【0234】
パッチPAに捕捉されている液体物質SB及びパッチPAに捕捉された外部物質は、パッチPAの内部で反応してもよい。パッチPAに吸収された外部物質は、パッチPAによって提供された環境の影響を受けてもよい。パッチPAから放出された物質は、反応中に発生した物質の少なくとも一部を含んでいてもよい。外部物質は、外部物質の組成、特性などが変化した後、パッチPAから放出されてもよい。
【0235】
吸収された物質は、パッチPAから放出されてもよい。パッチPAに吸収され、パッチPAから放出された外部物質は、パッチPAを通過する外部物質として理解され得る。パッチPAを通過した外部物質は、パッチPAの内部での反応又はパッチPAによって提供された環境の影響に起因して、完全性を失ってもよい。
【0236】
上述の外部物質の吸収、物質の反応及び物質の提供のプロセスは、一方向で行われてもよい。言い換えれば、物質の吸収は、パッチPAの1つの位置で行われてもよく、環境の提供は、パッチPAの別の位置で行われてもよく、物質の放出は、パッチPAのさらに別の位置で行われてもよい。
【0237】
図26~
図28は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、2つのプレートPLの間の物質の移動経路の提供を示す。
図26~
図28によれば、パッチPAは、第7の物質SB7が適用されたプレートPL1及び第8の物質SB8が適用されたプレートPL2の間の物質の移動経路を提供することができる。具体例として、第7の物質SB7が、第8の物質と結合する能力があり、第8の物質が、プレートPL2に固定される場合、パッチPAは、第7の物質SB7が、パッチPAを通って移動し、第8の物質SB8と結合するように、プレートPL1及びPL2と接触することができる。第7の物質SB7及び第8の物質SB8は、プレートPL1及びPL2と接触しているパッチPAによって形成された水膜WFを通して、パッチPAと接続されていてもよい。
【0238】
図29及び
図30は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、2つのパッチの間の物質の移動経路の提供を示す。
図29及び
図30によれば、移動経路を提供するために構成されたパッチPA6は、移動する物質を含有するように構成されたパッチPA5、及び移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7と接触することができる。移動経路を提供するために構成されたパッチPA6は、移動する物質を含有するように構成されたパッチPA5、移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7と接触することができ、移動する物質は、移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7に移動することができる。パッチ間の物質の移動は、パッチ間の接触領域の近傍で形成される水膜WFによって行われてもよい。
【0239】
図31及び
図32は、本出願によるパッチの一実施形態として、2つのパッチの間の物質の移動経路の提供を示す。
図29及び
図30によれば、移動経路を提供するために構成されたパッチPA9は、第9の物質SB9を含有するように構成されたパッチPA8、及び物質を受け取るために構成されたパッチPA10と接触することができる。移動経路を提供するパッチPA9は、第9の物質SB9を含有して、第9の物質SB9を吸収するために構成されたパッチPA8と接触することができる。吸収された第9の物質SB9は、移動経路を提供し、第11の物質を発生させるために構成されたパッチPA9に含有される第10の物質SB10と反応することができる。第11の物質SB11は、移動経路を提供するために構成されたパッチPA9から、物質を受け取るために構成されたパッチPA10に提供され得る。パッチPA間の物質の移動は、パッチPA間の接触領域の近傍で形成される水膜WFを通して行われてもよい。
【0240】
3.3 複数パッチ
パッチPAは、単独で使用されてもよく、又は複数のパッチPAが一緒に使用されてもよい。この場合において、一緒に使用することが可能な複数のパッチPAは、複数のパッチPAが連続的に使用される場合、及び複数のパッチPAが同時に使用される場合を含む。
【0241】
複数のパッチが同時に使用される場合、パッチPAは、異なる機能を果たしてもよい。複数のパッチPAのそれぞれのパッチPAは、同じ物質を含有していてもよいが、複数のパッチPAは、異なる物質を含有していてもよい。
【0242】
複数のパッチPAが、同時に使用される場合、パッチPAは、物質の移動が、パッチPA間で生じないように、互いに接触しなくてもよく、又は所望の機能は、パッチPAに含有された物質が交換可能である状態で果たされてもよい。
【0243】
一緒に使用される複数のパッチPAは、互いに類似の形状又は同じサイズで製造されてもよいが、複数のパッチPAは、複数のパッチPAが異なる形状を有する場合であっても、一緒に使用され得る。複数のパッチPAを構成するそれぞれのパッチPAは、メッシュ構造体NSの密度が異なるか、又はメッシュ構造体NSを構成する成分が異なるように、製造されてもよい。
【0244】
3.3.1 複数のパッチとの接触
複数のパッチPAが使用される場合、複数のパッチPAは、単一の標的領域TAと接触してもよい。複数のパッチPAは、単一の標的領域TAと接触し、所望の機能を果たすことができる。
【0245】
複数の標的領域TAが存在する場合、複数のパッチPAは、異なる標的領域TAと接触してもよい。複数の標的領域TAが存在する場合、複数のパッチPAは、それぞれ、対応する標的領域TAと接触し、所望の機能を果たすことができる。
【0246】
複数のパッチPAは、標的領域TAに適用された物質と接触してもよい。この場合において、標的領域TAに適用される物質は、固定されていてもよく、又は流動性を有していてもよい。
【0247】
所望の機能は、物質を提供又は吸収する機能であり得る。しかしながら、それぞれのパッチPAは、必ずしも、同じ物質を提供せず、又は同じ物質を吸収せず、パッチPAは、標的領域TAに異なる物質を提供してもよく、又は標的領域TAに配置された物質とは異なる成分を吸収してもよい。
【0248】
所望の機能は、複数のパッチPAを構成するそれぞれのパッチPAについて、異なっていてもよい。例えば、1つのパッチPAは、標的領域TAに物質を提供する機能を果たすことができ、別のパッチPAは、標的領域TAから物質を吸収する機能を果たすことができる。
【0249】
複数のパッチPAは、異なる物質を含んでいてもよく、異なる物質は、単一の標的領域TAに提供されて、所望の反応を引き起こすために使用することができる。複数の物質の成分が、所望の反応を起こすために必要である場合、複数の成分は、複数のパッチPAに、それぞれ含有され、標的領域TAに提供され得る。複数のパッチPAのそのような使用は、反応のために必要な物質が、単一のパッチPAに含有されるなどの理由のために混合されるときに、所望の反応のために必要な物質の性質が喪失又は変化する場合、特に有用であり得る。
【0250】
一実施形態によれば、複数のパッチPAが、異なる成分で形成される物質を含み、異なる成分で形成される物質が、異なる特異的な結合の関係を有する場合、異なる成分で形成される物質は、標的領域TAに提供され得る。複数のパッチPAは、異なる成分を含む物質を提供することによって、標的領域TAに適用された物質から、複数の特異的な結合を検出するために使用することができる。
【0251】
別の実施形態によれば、複数のパッチPAは、同じ成分で形成される物質を含んでいてもよいが、それぞれのパッチPAは、同じ成分で形成される物質に関して、異なる濃度を有していてもよい。同じ成分で形成される物質を含む複数のパッチPAは、標的領域TAと接触し、複数のパッチPAに含まれる物質の濃度に従って、影響を決定するために使用することができる。
【0252】
複数のパッチPAが、上記の説明のように使用される場合、パッチPAは、より効率的な形態にグループ化し、使用されてもよい。言い換えれば、使用される複数のパッチPAの配置は、複数のパッチPAが使用されるたびに変更することができる。複数のパッチPAは、カートリッジの形態で製造され、使用されてもよい。この場合において、使用されるそれぞれのパッチPAの形態は、適切に、規格化及び製造され得る。
【0253】
カートリッジの形態の複数のパッチPAは、複数の種類の物質を含有するように構成されたパッチPAが、製造され、必要により選択されることによって使用される場合に、適切であり得る。
【0254】
特に、複数の種類の物質を使用して、標的領域TAから、それぞれの物質の特異的な反応を検出しようとする場合、検出される特異的な反応の組み合わせは、検出が行われるたびに変更することができる。
【0255】
図33は、本出願によるパッチPAの実施形態として、複数のパッチPAが一緒に使用される場合を示す。
図33によれば、本出願の実施形態による複数のパッチPAは、プレートPLに配置された標的領域TAと、同時に接触することができる。複数のパッチPAを構成するパッチPAは、規格化された形態を有していてもよい。複数のパッチPAは、第1のパッチ及び第2のパッチを含むことができ、第1のパッチに含有される物質は、第2のパッチに含有される物質と異なっていてもよい。
【0256】
図34は、複数のパッチPAが使用され、プレートPLが複数の標的領域TAを含む場合を示す。
図34によれば、本出願の一実施形態による複数のパッチPAは、プレートPLに配置された複数の標的領域TAと、同時に接触することができる。複数のパッチPAは、第1のパッチPA及び第2のパッチPAを含むことができ、複数の標的領域TAは、第1の標的領域及び第2の標的領域を含むことができ、第1のパッチは、第1の標的領域と接触することができ、第2のパッチは第2の標的領域と接触することができる。
【0257】
3.3.2 第5の実施形態
複数のパッチPAは、複数の機能を果たすことができる。上記で説明するように、パッチPAは、複数の機能を同時に果たすことができ、パッチPAは、異なる機能を同時に果たすこともできる。しかしながら、実施形態は、上記に限定されず、機能を、組み合わせることもでき、複数のパッチPA中で果たすこともできる。
【0258】
最初に、パッチPAが、複数の機能を同時に果たす場合において、パッチPAは、物質の含有及び放出の両方を行うことができる。例えば、パッチPAは、異なる物質を含有し、標的領域TAに含有される物質を放出することができる。この場合において、含有される物質は、同時又は連続して、放出されてもよい。
【0259】
次に、パッチPAが、異なる機能を同時に果たす場合において、パッチPAは、別々に、物質の含有及び放出を行うことができる。この場合において、いくつかのパッチPAのみが、標的領域TAと接触し、標的領域TAに物質を放出してもよい。
【0260】
3.3.3 第6の実施形態
複数のパッチPAが使用される場合、上記で説明するように、複数のパッチPAは、複数の機能を果たすことができる。最初に、パッチPAは、物質の含有、放出及び吸収を同時に行ってもよい。或いは、パッチPAはまた、物質の含有、放出及び吸収を、別々に行ってもよい。しかしながら、実施形態は、これらに限定されず、機能を、組み合わせることもでき、複数のパッチPA中で果たすこともできる。
【0261】
例えば、複数のパッチPAの少なくともいくつかは、物質を含有することができ、含有された物質を、標的領域TAに放出することができる。この場合において、複数のパッチPAの少なくとも残りは、標的領域TAから物質を吸収することができる。複数のパッチPAのいくつかは、標的領域TAに配置された物質と特異的に結合する物質を放出することができる。この場合において、特異的な結合は、別のパッチPAを使用して、標的領域TAに配置された物質からの、特異的な結合を形成しない物質の吸収によって検出することができる。
【0262】
3.3.4 第7の実施形態
複数のパッチPAが使用される場合、パッチPAは、物質の含有及び放出、並びに環境の提供を、同時に行ってもよい。或いは、パッチPAは、物質の含有及び放出、並びに環境の提供を、別々に行ってもよい。しかしながら、実施形態は、これらに限定されず、機能は、複数のパッチPAを組み合わせて、果たすこともできる。
【0263】
例えば、複数のパッチPAの中で、パッチPAは、含有されている物質を、標的領域TAに放出することができる。この場合において、別のパッチPAは、標的領域TAに環境を提供することができる。ここで、環境の提供は、他のパッチPAに含有される物質の環境条件が、標的領域TAに提供される形態で、実施することができる。より詳細には、反応する物質は、パッチPAによって、標的領域TAに提供することができ、他のパッチPAは、標的領域TAと接触し、緩衝する環境を提供することができる。
【0264】
別の例として、複数のパッチPAは、互いに接触していてもよい。この場合において、少なくとも1つのパッチPAは、物質を含有し、含有されている物質を、環境を提供するために構成された別のパッチPAに、放出することができる。本実施形態において、環境を提供するために構成されたパッチPAは、物質を放出し、環境を提供するために構成されたパッチPAと接触していない少なくとも1つの他のパッチPAと接触し、パッチPAから物質を吸収することができる。
【0265】
4.培養
4.1 培養パッチ
本出願のパッチPAは、培養対象物の培養において使用することができる。
【0266】
培養対象物としては、細菌などの微生物、及びヒト又は動物から分離された細胞を挙げることができる。或いは、培養対象物としては、実験細胞、初代培養細胞、組織、器官などを挙げることができる。
【0267】
培養対象物は、上記に列挙した例に限定されず、以下に説明する本出願の培養パッチから必要栄養成分を受け取ることによって、増殖する能力がある、あらゆる生物学的物質であってもよい。
【0268】
しかしながら、説明の便宜上、培養対象物が細菌であると仮定することによって、以下に説明を行う。しかしながら、本開示の範囲は、これらによって限定されるものではないことに留意すべきである。
【0269】
一般に、細菌培養は、患者から採取された試料SA中に存在する細菌に対する薬物試験などの、染色又は診断試験を処理するために行われる。試料中に存在する細菌の量は、診断試験を行うために十分ではないことがあるので、細菌の量は、細菌培養によって増加させる。
【0270】
培養パッチPAは、細菌の培養に必要な必要栄養成分を含有することができる。必要栄養成分は、培養対象物の種類に従って、適切に変更することができる。例えば、特殊細菌を培養しようとする場合、必要栄養成分は、特殊細菌の培養に必要な成分を形成することができる。別の例として、非特殊細菌を培養しようとする場合、様々な必要栄養成分がパッチPAに含有されていてもよい。
【0271】
必要栄養成分に加えて、培養パッチPAは、緩衝液を含有していてもよい。緩衝液は、培養物の増殖に必要な環境条件を満たす溶液であってもよい。例えば、緩衝液は、酸性度、浸透圧などを調整することができる。
【0272】
要約すれば、培養パッチPAは、培養培地を含有すると解釈することができる。
【0273】
4.2 培養方法
上述の培養パッチPAを使用する培養方法を以下に説明する。
【0274】
本出願において、培養方法は、培養パッチPA及びプレートPLを使用する。プレートPLは、生命体の培養において従来使用されているペトリ皿、スライドガラスなどであってもよい。
【0275】
培養対象物は、以下の説明及び図面においてスライドガラス上で培養されると仮定する。しかしながら、このような仮定は、単に説明の便宜上であり、培養のためのプレートPLは、スライドガラスに限定されるものではない。
【0276】
図35は、本出願による培養方法の一実施形態に関するフローチャートである。
【0277】
図35を参照すると、本出願による培養方法の一実施形態は、反応領域に培養対象物を配置するステップ(S200)、及び培養パッチPAを使用することによって、反応領域に必要栄養成分を提供するステップ(S300)を含むことができる。
【0278】
4.2.1 培養対象物の調製
培養対象物の調製を説明する。
【0279】
培養対象物、すなわち、細菌BACは、プレートPL上で調製することができる。
【0280】
プレートPLは、一般的なスライドガラス、又はポリスチレン、ポリプロピレンなどで製造されたプレートなどの固体プレートを指し得る。プレートPLの底部の形態又は透明度は、検出方法に従って、異なってもよい。プレートPLは、パッチPAと接触するか、又は所望の反応を引き起し得る、反応領域を含むことができる。
【0281】
図36は、本出願による、培養対象物の適用を示す図である。
【0282】
細菌BACは、プレートPLの反応領域に適用され得る(S200)。適用は、様々な方法によって行うことができる。一例によれば、細菌BACの適用は、スワブなどのアプリケーターを使用して行うことができる。特に、操作者は、試験者などから、アプリケーターを使用することによって、細菌BACを採取し、プレートPLの反応領域にアプリケーターを擦り付けて、プレートPLに採取した細菌BACを配置することができる。当然ながら、細菌などの培養対象物の採取及び適用は、上述の例に必ずしも限定されず、培養対象物は、細菌又は細胞の採取及び適用のために一般に使用される様々な従来の方法によって、プレートPL上の反応領域に適用することができる。
【0283】
生物組織から取り出された培養細胞又は細菌の代わりに、培養組織も可能である。組織が培養される場合、培養対象物の調製のために、薄膜の形態の組織の切片を組織から採取することができ、次いで、組織の切片をプレートPL上の反応領域に配置することができる。
【0284】
4.2.2 培養対象物の培養
必要栄養成分は、培養パッチPAを使用することによって、反応領域に提供することができる(S300)。
【0285】
培養対象物が反応領域に適用されると、培養パッチPAは、反応領域に必要栄養成分を提供することができ、したがって、培養対象物は、必要栄養成分を受け取ることによって、増殖することができる。
【0286】
図37は、本出願による培養方法の実施形態において、培養パッチを使用することによる必要栄養成分の提供のフローチャートである。
【0287】
図37を参照すると、培養パッチPAを使用することによる反応領域への必要栄養成分の提供(S300)は、培養パッチPAを反応領域と接触させること(S310)、及び培養パッチを反応領域から分離すること(S320)を含むことができる。
【0288】
【0289】
図38を参照すると、培養パッチPAは、反応領域と接触させることができる(S310)。培養パッチPAが反応領域と接触すると、水膜WFが、培養パッチPA及びプレートPLの間で形成され得る。培養パッチPAに含有される必要栄養成分は、水膜WFによって、培養パッチPAから反応領域に提供され得る。培養対象物は、反応領域に提供された必要栄養成分を受け取ることによって、増殖することができる。
【0290】
再び
図38を参照すると、培養対象物の増殖が十分に行われると、培養パッチPAは、反応領域から分離することができる(S320)。培養パッチPAが反応領域から分離されると、水膜WFによる、培養パッチPAから反応領域への必要栄養成分の提供は停止する。必要栄養成分の提供が停止すると、培養対象物の増殖は停止し得る。したがって、培養対象物の増殖は、培養パッチPAを反応領域から分離することによって、制御することができる。
【0291】
水膜WFは、培養パッチPAが反応領域から分離されるプロセスにおいて、パッチPAに吸収され得、水膜WF中に存在する必要栄養成分は、水膜WFと一緒に、パッチPAに吸収され得る。
【0292】
培養パッチPAが分離されるプロセスに起因する水膜WFが吸収されるプロセスにおいて、培養対象物はまた、培養パッチPAに吸収され得るか、又は培養パッチPA及び反応領域の間の接触面の方に移動し得る可能性もある。培養対象物は、その種類又はサイズなどの培養対象物の様々な特性に従って、培養パッチPAに吸収されないことがある。培養パッチPAが分離されるプロセスにおいて、培養対象物が培養パッチPAに吸収されることを防ぐために、培養対象物を、培養パッチがプレートPLに接触する前に、プレートPLに固定することができる。
【0293】
固定は、様々な固定剤を使用して行うことができる。培養対象物の増殖を阻害することなく、又は培養対象物を死亡させることなく、プレートPL上に培養対象物を固定する能力があるあらゆる物質を、固定剤として選択することができる。
【0294】
溶液の形態の固定剤は、プレートPL上の反応領域に噴霧することができる。或いは、本出願において、培養対象物は、培養パッチPAが反応領域と接触する前に、固定剤が反応領域に提供されるように、固定化剤を含有する固定パッチPAを反応領域と接触させること、及び固定パッチPAを反応領域から分離することによって、プレートPLに固定することができる。
【0295】
エタノール又はメタノールを含むアルコール、及びホルムアルデヒドなどの疎水性物質が、固定液として使用される場合、固定液を含有するパッチPAは、疎水性の性質を有するように調製することができる。疎水性パッチPAの材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ゲル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ゲル、シリコーンゲルなどが挙げられる。
【0296】
或いは、培養対象物を固定するために、固定剤を凝固させることによって形成される固体物質を、固定パッチPAに代えて、使用することもできる。固体物質の例としては、凝固したメタノールなどが挙げられる。
【0297】
反応領域に提供された必要栄養成分が、パッチPAが分離されるプロセスにおいて、パッチPAに再吸収されることを上記で説明したが、反応領域に提供された必要栄養成分のいくつかは、培養パッチPAに再吸収されずに、反応領域に留まることがある。
【0298】
必要栄養成分を完全に除去するために、反応領域は、培養パッチPAの分離後に、洗浄することができる(S320)。
【0299】
洗浄は、反応領域上に洗浄液を噴霧することによって行うことができる。
【0300】
或いは、洗浄は、洗浄液を含有するパッチPA、すなわち、洗浄パッチPAを使用して行うこともできる。例えば、培養パッチPAの分離後、洗浄パッチPAを反応領域と接触させ、反応領域から分離することができる。洗浄パッチPAは、プレートPL上の不純物又は残留した必要栄養成分を吸収及び除去することができる。本明細書で使用される洗浄液としては、Tween20を含むトリス緩衝食塩水(TBS)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)を挙げることができる。
【0301】
従来、培養液若しくは液相中の培養液に浮遊する培養対象物が、ペトリ皿の壁に適用された培養対象物に提供される方法、又は培養対象物が、寒天などの培養培地上で培養される方法が使用されている。
【0302】
このような従来の方法と比較して、上述の培養方法では、培養対象物を、培養対象物がプレートPLに適用されている間に、パッチPAを使用して、培養することができる。
【0303】
液相の培養液が、従来の培養方法の中から使用される方法において、培養対象物は液体中で浮遊するので、培養対象物を二次元で観察することは難しい。また、寒天培地が使用される方法であっても、外観検査による培養対象物の観察は、寒天培地によって阻害され得る。
【0304】
対照的に、本方法によれば、培養対象物は、プレートPL上で自由に移動しないが、二次元で増殖するので、培養対象物の増殖の程度を決定することが容易であるという利点がある。
【0305】
また、本方法によれば、従来の方法と比較して、少量の必要栄養成分を効率的に利用することができるので、廃棄される必要栄養成分の量を減少することができるという利点がある。
【0306】
加えて、本方法によれば、必要栄養成分は、パッチPAが反応領域と接触すると提供することができ、必要栄養成分の提供は、パッチPAが反応領域から分離されると、停止することができる。詳細には、反応領域に既に提供された必要栄養成分が、パッチPAが分離されるプロセスにおいて、パッチPAに再吸収されるので、必要栄養成分の提供の妨害を、正確に制御することができる。したがって、培養対象物の増殖の程度を、従来の方法と比較して、より正確に制御することができるという利点がある。このような利点は、洗浄パッチPAを使用する洗浄プロセスに起因して、より明白になり得る。
【0307】
培養方法が、単一のプレートPL上で、単一のパッチPLを使用して行われることを上記で説明した。しかしながら、代わりに、少なくとも1つのプレートPL及びパッチPAは、複数であってもよい。
【0308】
例えば、培養対象物は、複数のプレートPLのそれぞれに適用することができ、培養パッチPAは、培養対象物を培養するためのそれぞれのプレートPL上の反応領域と接触させることができる。
【0309】
それぞれの培養パッチPAに含有される必要栄養成分の種類、濃度などは異なっていてもよい。異なる種類の必要栄養成分、又は異なる濃度を有する必要栄養成分は、それぞれのプレートPL上の同じ培養対象物に提供することができ、培養を同時に行うことができる。この方法において、必要栄養成分の最適な種類又は濃度を、特定の培養対象物に関して決定することができる。
【0310】
また、異なる種類の培養対象物をそれぞれのプレートPLに適用した後、培養対象物を、同じ濃度及び成分を有する必要栄養成分を含有する培養パッチPAを使用して培養することができる。或いは、異なる種類の培養対象物をそれぞれのプレートPLに適用することができ、使用される培養パッチPAは、異なる種類の必要栄養成分、又は異なる濃度を有する必要栄養成分を含有することができる。
【0311】
本出願の培養方法において、培養は、非常に少量の試料のみがスライドガラスに適用される状態であっても可能であるので、様々な種類の培養を同時に行うことによって、全体の実験時間を短縮することができる。
【0312】
5.培養試験
本出願の一実施形態による培養試験方法を以下に説明する。
【0313】
本出願による培養試験方法は、培養対象物の増殖の程度を試験することを指す。
【0314】
例えば、培養対象物の種類が公知である場合、培養試験は、様々な必要栄養成分に関して、培養対象物が増殖する範囲を決定するために利用することができる。逆に、培養対象物の種類が未知である場合、培養試験は、逆の方法において、特定の必要栄養成分を培養対象物に適用し、培養対象物が増殖する程度を得た後、培養対象物の種類を決定するために使用することができる。別の例として、培養試験は、培養対象物が、培養後、培養対象物の染色又は観察のために十分に増殖しているか否かを調べるために利用することもできる。
【0315】
当然ながら、本出願による培養試験方法は、上述の例に挙げられた目的のために必ずしも利用されないことに留意すべきである。
【0316】
本出願による培養試験方法は、本明細書に挙げていない様々な培養方法を使用して培養された培養対象物、又は培養することなく患者若しくは動物から直接採取された培養対象物、並びに培養パッチPAを使用して、上述の培養方法で培養された培養対象物の増殖の程度を試験するために使用することができる。
【0317】
培養試験は、プレートPL上の反応領域に配置された培養対象物の画像を取得すること、及び取得された画像を解析することによって、行うことができる。
【0318】
画像の取得は、画像取得のために追加処理されていない培養対象物について行ってもよい。或いは、培養対象物が染色され得るか、又は生化学反応が培養対象物中で誘発され得、次いで、培養対象物の画像を取得することができる。例えば、染色試薬を含有する染色パッチPAを培養対象物と接触させ、培養対象物から分離して、培養対象物を染色することができ、次いで、染色された培養対象物の画像を取得することができる。別の例として、染色試薬の代わりに、培養対象物と生化学的に反応する抗原若しくは抗体、又は培養対象物と特異的に結合する別の物質を含有するパッチPAを、培養対象物と接触させ、培養対象物から分離して、培養対象物中で生化学反応(例えば、発色、蛍光発生など)を誘発することができ、次いで、培養対象物の画像を取得することができる。
【0319】
画像の取得は、光学デバイスを使用して行うことができる。光学デバイスは、反応領域に配置された細胞又は細菌などの培養対象物を検出するために適した倍率で、画像を取得する能力がある、あらゆるデバイスであり得る。例えば、光学デバイスは、電荷結合素子(CCD)又は相補型MOS(CMOS)で形成された光学センサー、光学経路を提供するために構成された筒、倍率又は焦点距離を調節するために構成されたレンズ、及びCCD又はCMOSによって取得された画像を保存するために構成された記憶装置を備えることができる。
【0320】
図39~41は、本出願の一実施形態による、培養対象物の画像の取得に関する図である。
【0321】
図39~41を参照すると、光学デバイスODは、プレートPLに適用された培養対象物の画像を直接取得することができる。光学デバイスODは、光源LSから照射された光を受信し、培養対象物が適用されたプレートPLを通して伝え、培養対象物の画像を取得することができる。
【0322】
例えば、
図39及び40を参照すると、光学デバイスODは、培養パッチPAがプレートPLから分離されている間に、培養対象物が適用された領域の画像を取得することができる。光源からの光出力を、可能な限り容易に伝えることができる材料で、製造されたプレートPLが好ましくあり得る。また、光源は、白色光を出力することができ、又は特定の波長域の波長を出力することができる。
【0323】
再び
図39を参照すると、光学デバイスODは、培養対象物が適用されたスライドガラスの表面(本明細書の以下において、「前面」と称する)に配置することができ、光源LSは、スライドガラスの前面の反対側の表面、すなわち、スライドガラスの裏面側に配置することができる。このような配置に起因して、光学デバイスODは、スライドガラスの裏面側から光源LSによって照射され、スライドガラスを通過する光を受信し、培養対象物の画像を取得することができる。
【0324】
再び
図40を参照すると、光学デバイスODは、スライドガラスの裏面側に配置することができ、光源LSは、スライドガラスの前面側に配置することができる。このような配置に起因して、光学デバイスODは、スライドガラスの前面側から光源LSによって照射され、スライドガラスを通過する光を受信し、培養対象物の画像を取得することができる。
【0325】
別の例として、
図41を参照すると、光学デバイスODは、培養パッチPAがプレートPLと接触している間に、培養対象物が適用された領域の画像を取得することができる。
【0326】
再び
図41を参照すると、光学デバイスODは、スライドガラスの裏面側に配置することができ、光源LSは、スライドガラスの前面側に配置することができる。このような配置に起因して、光学デバイスODは、スライドガラスの前面側から光源LSによって照射され、スライドガラスを通過する光を受信し、培養対象物の画像を取得することができる。
【0327】
パッチPAがプレートPLと接触している間に画像が取得される場合、光学デバイスODは、スライドガラスの前面側に配置することができ、光源LSは、スライドガラスの裏面側に配置することができる。しかしながら、光学デバイスODが前面側に配置される場合、光学デバイスODは、パッチPAを介して画像を取得しなければならないので、光学デバイスODの焦点調節の困難などの理由に起因して鮮明な画像を取得することは難しいことがある。
【0328】
したがって、パッチPAがプレートPLと接触している間に画像が取得される場合、光学デバイスODが、プレートPLの裏面側に配置されることが好ましくあり得る。光がパッチPAを介してプレートPLに適用されるように、プレートPLの前面側に配置された光源LSは、むしろ、輝度が、パッチPAにおいて生じる光の散乱又は拡散現象に起因して、均一になるという利点を有し得る。
【0329】
また、光学デバイスODが、パッチPAを透過する光を受信するために、プレートPLの前面側に配置される場合、パッチPAの厚さを、精密又は均一に制御することが重要であり得る。
【0330】
パッチPAがプレートPLと接触している間に画像が取得される場合、パッチPAは、光学フィルターの一種としての役割を果たすこともできる。
【0331】
培養試験による培養対象物の増殖の程度の測定は、取得された画像から、様々な培養対象物の数の情報又は形態の情報を取得することによって、行うことができる。
【0332】
例えば、画像は、コンピューター又は医療機器のモニターなどを通して、操作者に提供され得る。操作者は、画像から、細胞、組織、血球又は細菌の、数、サイズ、形態などを決定し、培養対象物の増殖の程度を決定することができる。
【0333】
別の例として、画像解析プログラムがインストールされた電子デバイスは、光学デバイスから画像を取得し、画像から、細胞、組織、血球又は細菌の、数、サイズ、形態などを決定し、培養対象物の増殖の程度を決定することができる。
【0334】
画像解析プログラムは、取得された画像を解析することができる。特に、画像解析プログラムは、取得された画像から、培養対象物の数の情報及び形態の情報を取得することができる。数の情報は、培養対象物の数(計数)又はサイズを含むことができ、形態の情報は、培養対象物のサイズ、培養対象物の形状などを含むことができる。
【0335】
画像解析プログラムは、数の情報又は形態の情報に基づいて、培養対象物の種類又は培養対象物の増殖の程度を決定することもできる。
【0336】
上述の画像解析プログラムは、所定のアルゴリズムに従うか、又はディープラーニングなどの機械学習によって形成されたアルゴリズムに従う、上述の決定プロセスを行うこともできる。
【0337】
5.1 培養試験方法-第1の実施形態
図42は、本出願の培養試験方法の一実施形態のフローチャートである。
【0338】
図42を参照すると、本出願の一実施形態による培養試験方法は、反応領域に、試験対象物である培養対象物を配置するステップ(S200)、培養パッチPAを培養対象物と接触させるステップ(S310)、培養パッチPAを反応領域から分離するステップ(S320)、パッチPAが反応領域から分離された状態において、プレート上の培養対象物の画像を取得するステップ(S400’)、及び取得された画像を解析することによって、培養対象物の増殖の情報を決定するステップ(S500)を含むことができる。
【0339】
図43は、本出願の培養試験方法の実施形態の使用図である。
【0340】
図43を参照すると、培養試験は、プレートPL上の反応領域に培養対象物を配置するステップ(S200)、パッチPAを培養対象物と接触させて(S310)、培養対象物を増殖させるために、培養対象物に、必要栄養成分を提供するステップ、パッチPAを反応領域から分離するステップ(S320)、パッチPAが反応領域と接触していない状態で、プレートPL上の反応領域の画像を取得することによって、培養対象物の画像を取得するステップ、及び上述の培養方法に従って、取得された画像を解析するステップによって、行うことができる。培養対象物の増殖の程度は、画像の解析に従って、培養対象物の数又はサイズに基づいて、決定することができる(S500)。
【0341】
図44は、本出願の培養試験方法の実施形態の変形例のフローチャートである。
【0342】
図44を参照すると、本出願の培養試験方法の実施形態の変形例は、プレートPLに配置された培養対象物に関する初期画像を取得するステップ(S220)をさらに含むことができる。初期画像は、培養対象物がプレートPLに適用された後、増殖に必要成分が、培養対象物の増殖のために培養対象物に提供される前の、培養対象物の画像を指し得る。
【0343】
初期画像の取得は、培養対象物がプレートPLに適用された後、培養パッチPAが反応領域と接触する前の時点で行うことができる。したがって、培養対象物の増殖の程度の決定(S500)において、初期画像は、培養対象物の増殖の前の培養対象物の数又はサイズに関する情報を含有する。
【0344】
培養対象物の増殖の程度は、初期画像を解析することによって得られる培養対象物に関する情報、及びステップS400’において得られる画像を解析することによって得られる培養対象物に関する情報を比較して、決定することができる。或いは、増殖の程度は、初期画像及びステップS400’において取得された画像を比較することによって、決定することもできる(例えば、異なる操作など)。
【0345】
ステップS500において、増殖の程度は、培養時間、必要栄養成分の種類、及び提供された必要栄養成分の量をさらに考慮することによって、決定することができる。加えて、増殖の程度は、培養温度又は湿度レベルを含む様々な外部条件をさらに考慮することによって、決定することもできる。
【0346】
図45は、本出願の培養試験方法の実施形態の別の変形例のフローチャートである。
【0347】
図45を参照すると、本出願の培養試験方法の実施形態の他の変形例において、プレートPLに配置された培養対象物に関する画像を数回取得することができる。複数の画像は、培養が開始された後、異なる時点で取得される画像であってもよい。したがって、培養の程度を決定する場合、比較分析を、異なる時点で取得された複数の画像に対して行うことができ、培養対象物の増殖の程度を決定することができる。
【0348】
特に、本出願の培養試験方法の実施形態の他の変形例は、反応領域に、試験対象物である培養対象物を配置するステップ(S200)、培養パッチPAを培養対象物と接触させるステップ(S310)、培養パッチPAを反応領域から分離するステップ(S320)、パッチPAが反応領域から分離された状態において、プレート上の培養対象物に関する画像を取得するステップ(S400’)、及び複数の画像を比較することによって、培養対象物の増殖に対する情報を決定するステップ(S500’’)を含むことができる。この場合において、ステップS400’の終了後、プロセスは、ステップS310に戻り、ステップS310~S400’を数回繰り返すことができる。
【0349】
ステップS310及びS320は、単一の培養パッチPAを使用して、繰り返し行うことができる。或いは、複数の培養パッチPAを調製することができ、ステップS310及びS320は、パッチPAを再配置することによって、行うことができる。或いは、パッチPAは、ステップS310及びS320を、所定の回数、繰り返した後に、再配置することができる。
【0350】
画像の取得(S400’)は、異なる時点で行ってもよい。例えば、画像の取得(S400’)は、所定の間隔で行うことができる。例えば、画像は、20分ごとに取得することができる。
【0351】
増殖の情報の決定(S500)は、画像の取得(S400’)において取得された複数の画像を比較することを含むことができ、経時的な培養対象物の増殖の程度を決定することができる。例えば、第1の時点で取得された第1の画像及び第2の時点で取得された第2の画像を比較することによって、第1の時点及び第2の時点の間で生じた培養対象物の増殖の程度を決定することができる。
【0352】
すなわち、画像を比較することによる増殖の情報の決定(S500’)は、複数の画像を取得すること、画像から、培養対象物の数又は形態の情報を取得すること、画像の間で、培養対象物の数又は形態の情報の相違を計算すること、複数の画像が取得された時点に対する情報を取得すること、画像が取得された時点の間の時間の相違を得ること、及び時間の相違及び情報の相違を考慮して、培養対象物の経時的な増殖の程度を決定することを含むことができる。
【0353】
或いは、画像を比較することによる増殖情報の決定(S500’)は、複数の画像を取得すること、異なる操作などによる画像の間の相違を得ること、複数の画像が取得された時点に対する情報を取得すること、画像が取得された時点の間の時間の相違を計算すること、及び時間の相違及び情報の相違を考慮して、培養対象物の経時的な増殖の程度を決定することを含むことができる。
【0354】
本開示の培養試験方法の実施形態の他の変形例において、ステップS310~S400’が繰り返され、次いで、S500が行われることを上記で説明した。上記の説明によれば、所望の数の画像が取得された後、培養対象物の増殖に対する情報は、取得された画像を比較することによって、決定することができる。しかしながら、代わりに、ステップS310~S500’を繰り返し行うことができる。この時点で、ステップS500において、比較分析を、最も直近に取得された画像及びそのすぐ前の画像に対して行い、培養対象物の増殖に対する情報を決定することができる。ここで、この方法において、直近の画像及びそのすぐ前の画像を比較することによって、増殖の情報は、ステップS310~S500’が繰り返される間隔に従って、定期的に取得することができる。例えば、ステップS310~S500’が20分ごとに繰り返される場合、増殖の程度は、20分ごとに決定することができる。
【0355】
図46は、本出願による、培養対象物の画像の一例である。
【0356】
図46に示される画像は、n回行われたステップS400’において取得された画像、及び(n+1)回行われたステップ400’において取得された画像であり得る。2つの画像を比較すると、(n+1)回目の画像において、n回目の画像よりも、細菌がさらに増殖していることが分かり得る。ここで、nは、1又はそれ以上の自然数であり得る。
【0357】
5.2 培養試験方法-第2の実施形態
図47は、本出願の培養試験方法の別の実施形態のフローチャートである。
【0358】
図47を参照すると、本出願の他の実施形態による培養試験方法は、反応領域に、試験対象物である培養対象物を配置するステップ(S200)、培養パッチPAを培養対象物と接触させるステップ(S310)、パッチPAが反応領域と接触している間に、プレート上に配置された培養対象物の画像を取得するステップ(S400’’)、及び画像を解析することによって、培養対象物の増殖に対する情報を決定するステップ(S500)を含むことができる。
【0359】
培養パッチPAが反応領域から分離された後に画像が取得される
図42において示される本出願の培養試験方法の実施形態を参照して上記で説明した。しかしながら、本出願の培養試験の他の実施形態において、画像は、培養パッチPAが反応領域と接触している状態で取得することができる。
【0360】
図48は、本出願による培養試験方法の他の実施形態において画像を取得するフローチャートであり、
図49は、本出願の培養試験方法の他の実施形態の使用図である。
【0361】
図48を参照すると、本出願による培養試験方法の他の実施形態において、画像の取得(S400’’)は、光源LSによって、プレートPLの培養パッチPAが配置された表面(すなわち、前面)から光を照射すること(S410’’)、及び光学デバイスODによって、プレートPLの培養パッチPAが配置された表面の反対側の表面(すなわち、裏面)から光を受信すること(S420’’)を含むことができる。
【0362】
図49を参照すると、本実施形態において、培養パッチPAは、画像取得中であっても、継続的に、反応領域と接触したままである。それ故に、本実施形態によれば、培養パッチPAを分離しなければならないという不便さはない。また、本実施形態によれば、必要栄養成分が、画像取得中であっても、培養パッチPAから培養対象物に提供されるので、培養対象物の増殖が妨害されないという利点がある。また、培養パッチPAが分離されず、したがって、反応領域が空気にさらされないので、反応領域が、反応領域外の細菌を含む外来物質にさらされないという利点がある。
【0363】
この場合において、光学デバイスODが、画像の取得を容易にするために、プレートPLの裏面から、反応領域に配置された培養対象物の画像を取得することが好ましくあり得る。
【0364】
図50は、本出願の培養試験方法の実施形態の他の実施形態の変形例である。
【0365】
図50を参照すると、本出願の培養試験方法の他の実施形態の変形例において、プレートPLに配置された培養対象物に関する画像を数回取得することができる。複数の画像は、培養が開始された後、異なる時点で取得される画像であってもよい。したがって、培養の程度を決定する場合、培養対象物の増殖の程度は、異なる時点で取得された複数の画像を比較することによって、決定することができる。
【0366】
特に、本出願の培養試験方法の実施形態の他の変形例において、パッチPAが反応領域と接触している間のプレートに配置された培養対象物に関する画像の取得(S400’’)は、繰り返すことができる。この場合において、繰り返される画像の取得(S400’’)は、異なる時点で行ってもよい。例えば、画像の取得(S400’)は、所定の間隔で行うことができる。例えば、画像は、20分ごとに取得することができる。別の例として、画像の取得(S400’’)は、経時的なビデオ画像を取得することを含むことができる。
【0367】
増殖の情報の決定(S500)において、経時的な培養対象物の増殖の程度は、画像の取得(S400’’)において取得された複数の画像を比較することによって、決定することができる。例えば、第1の時点で取得された第1の画像及び第2の時点で取得された第2の画像を比較することによって、第1の時点及び第2の時点の間で生じた培養対象物の増殖の程度を決定することができる。
【0368】
ステップS400’’が繰り返され、次いで、ステップS500が行われる、本開示の培養試験方法の他の実施形態の変形例を参照して上記に説明した。しかしながら、代わりに、ステップS400’~S500’を繰り返すことができる。
【0369】
詳細には、本変形例において、画像は、反応領域からパッチPAを分離するプロセスがなく、パッチPAが反応領域と接触している間に取得されるので、所定の間隔で定期的に画像を取得することが可能であることに加えて、ビデオを取得すること、又は非常に短い間隔で画像を取得することによって、リアルタイムで、増殖の程度を解析することができる。
【0370】
6.薬物試験
本出願の一実施形態による薬物試験方法を以下に説明する。
【0371】
本出願による薬物試験方法は、薬物の効果を試験することを指す。
【0372】
薬物試験は、培養対象物に対する薬物の影響を決定するために利用することができる。例えば、薬物試験は、細菌に対する抗生物質の効果又は抗生物質に対する細菌の感受性を決定するために行うことができる。別の例として、薬物試験は、様々な細胞に対する薬物の効果を決定するために利用することができる。
【0373】
当然ながら、本出願による薬物試験方法は、上述の例に挙げられた目的のために必ずしも利用されないことに留意すべきである。
【0374】
本出願による薬物試験方法は、本明細書に挙げていない様々な培養方法を使用して培養された培養対象物、又は培養することなく患者若しくは動物から直接採取された培養対象物、並びにパッチPAを使用して、上述の培養方法で培養された培養対象物に対する薬物の影響を試験するために使用することができる。
【0375】
薬物試験は、プレートPL上の反応領域に配置された培養対象物の画像を取得するステップ、及び取得された画像を解析するステップによって行うことができる。画像の取得は、上述の培養試験におけるものと同様に行うことができる。
【0376】
薬物試験による薬物の効果(例えば、抗生物質に起因する、細菌の阻害又は死亡の程度)の測定は、取得された画像から、様々な培養対象物の数の情報又は形態の情報を取得することによって、行うことができる。この場合において、薬物の効果の測定は、上述の培養試験方法における培養対象物の増殖の程度の測定と同様に行うことができる。
【0377】
6.1 薬物試験方法-第1の実施形態
図51は、本出願の薬物試験方法の一実施形態のフローチャートである。
【0378】
図51を参照すると、本出願の一実施形態による薬物試験方法は、培養パッチPAが反応領域と接触している状態において(S310)、培養パッチPAによって薬物を吸収するステップ(S600)、培養パッチPAによって薬物を反応領域に提供するステップ(S700)、培養パッチPAを反応領域から分離するステップ(S320)、培養パッチPAが反応領域から分離された状態において、プレートに配置された培養対象物の画像を取得するステップ(S400’)、及び画像を解析することによって、培養対象物に対する薬物の影響を試験するステップ(S800)を含むことができる。
【0379】
図52は、本出願の薬物試験方法の実施形態の使用図である。
【0380】
図52を参照すると、本出願の薬物試験方法の実施形態において、薬物試験は、本開示の上述の培養方法に従って培養された培養対象物に対して行うことができる。したがって、本実施形態において、薬物試験は、培養パッチPAが、培養対象物が位置するプレートPL上の反応領域と接触している状態で開始することができる。
【0381】
培養パッチPAが反応領域と接触している状態において(S310)、培養パッチPAは薬物を吸収することができる(S600)。例えば、薬物DRを含有する薬物シートDSを、培養パッチPAの外側表面で提供することができる。培養パッチPAは、薬物DRを、薬物シートDSから培養パッチPA内に吸収することができる。
【0382】
薬物がパッチPAに吸収されると、培養パッチPAは、プレートPLと接触している間に、プレートPL及びパッチPAの間の水膜WFによって、薬物を反応領域に提供することができる。反応領域に配置された培養対象物は、反応領域に提供された薬物を受け取り、薬物による影響を受ける。例えば、培養対象物が細菌であって、薬物が抗生物質である場合、培養対象物は、抗生物質に起因して増殖阻害又は死亡し得る。
【0383】
薬物の提供後、十分な時間が経過すると、パッチPAを、反応領域から分離することができ(S320)、プレートPL上の反応領域の画像を取得することができる(S400’)。
【0384】
画像が取得されると、培養対象物の数の情報及び形態の情報を画像から取得することができ、取得された情報に基づいて、培養対象物に対する薬物の影響を得ることができる(S800)。例えば、抗生物質が細菌に提供されると、抗生物質に起因する、細菌の増殖阻害の程度及び細菌の死亡の程度は、抗生物質に起因する細菌のサイズ及び数の変化に基づいて、決定することができる。例えば、活性促進剤が細胞に提供されると、促進剤の効果は、細胞の増殖の程度又は細胞から分泌された物質の量を考慮して、決定することができる。
【0385】
薬物の影響の決定は、培養試験における培養対象物の増殖の程度の決定と同様に行うことができるので、その詳細な説明は省略する。
【0386】
本実施形態において、画像取得のために、ステップS310~S400’を繰り返すことができる。また、本実施形態において、薬物の効果の決定は、ステップS310~S800を繰り返すことによって、定期的に行うことができる。加えて、本実施形態において、ステップS310が行われる前に、初期画像を、ステップS310が行われる前に培養パッチPAがプレートPLから離された状態において、薬物が提供される前に取得することができる。
【0387】
初期画像が取得されたか、又は画像が数回取得された場合、経時的な薬物の影響を決定するために、複数の画像を互いに比較することも可能である。薬物の影響の決定は、本出願の培養試験方法に関して上記で説明したように、必要栄養成分の代わりに、薬物の種類又は濃度を考慮することを除いて、同様に行うことができるので、その詳細な説明は省略する。
【0388】
6.2 薬物試験方法-第2の実施形態
図53は、本出願の薬物試験方法の別の実施形態のフローチャートである。
【0389】
図53を参照すると、本出願の他の実施形態による薬物試験方法は、培養パッチPAが反応領域と接触している状態において(S310)、培養パッチPAによって薬物を吸収するステップ(S600)、培養パッチPAによって薬物を反応領域に送達するステップ(S700)、培養パッチPAが反応領域と接触している状態において、プレートに配置された培養対象物に関する画像を取得するステップ(S400’’)、及び画像を解析することによって、培養対象物に対する薬物の影響を試験するステップ(S800)を含むことができる。
【0390】
図54は、本出願の薬物試験方法の他の実施形態の使用図である。
【0391】
図54を参照すると、本出願の薬物試験方法の他の実施形態において、薬物試験は、本出願の上述の培養方法に従って培養された培養対象物に対して行うことができる。それ故に、本実施形態において、薬物試験は、培養パッチPAが、培養対象物が位置するプレートPL上の反応領域と接触している状態で開始することができる。
【0392】
培養パッチPAが反応領域と接触している状態において(S310)、培養パッチPAは、薬物を吸収することができ(S600)、培養パッチPAによる反応領域への薬物の提供(S700)は、本開示の薬物試験方法の先の実施形態に関して上記で行った説明と同様に行うことができる。
【0393】
薬物の提供後、十分な時間が経過したら、パッチPAが反応領域と接触している状態、すなわち、パッチPAが反応領域から分離されていない状態において、プレートPL上の反応領域の画像を取得することができる(S400’’)。
【0394】
パッチPAがプレートPLと接触している状態における画像の取得、及び接触が解放されている間の画像の取得の間の相違は、本出願の培養試験方法に関して既に説明したので、その詳細な説明は省略する。
【0395】
画像が取得されると、取得された画像に基づいて、薬物の影響を決定することができる。例えば、薬物の影響は、増殖阻害に対する情報などであってもよい。薬物の影響に対するさらなる詳細は、薬物試験の先の実施形態に関して既に説明したので、その詳細な説明は省略する。
【0396】
6.3 薬物試験方法-第3の実施形態
図55は、本出願の薬物試験方法のさらに別の実施形態のフローチャートである。
【0397】
図55を参照すると、本出願のさらに別の実施形態による薬物試験方法は、反応領域に培養対象物を配置するステップ(S200)、培養パッチPAによって、反応領域に薬物を提供するステップ(S700)、プレートPLに配置された培養対象物の画像を取得するステップ(S400)、及び画像を解析することによって、培養対象物に対する薬物の影響を試験するステップ(S800)を含むことができる。
【0398】
上記で説明した薬物試験方法の先の実施形態において、薬物は、培養対象物が本開示の培養パッチPAを使用して培養される状態において、薬物シートなどを通して、薬物を培養パッチPAに注入することによって、培養対象物に提供される。
【0399】
しかしながら、本出願において、薬物試験は、培養パッチPAを使用する培養対象物のみに必ずしも適用される必要はない。本実施形態のステップS200において、培養対象物は、本出願のもの以外の培養方法を使用して培養することもできる。また、薬物試験対象物を、本実施形態において、培養対象物として仮定するが、薬物試験対象物はまた、培養対象物に代えて、直接採取対象物であってもよい。
【0400】
したがって、反応領域への培養対象物の配置(S200)は、本出願による培養対象物又はプレートPL上の他の薬物試験対象物に適用されるものとして、広く解釈されるべきである。
【0401】
図56は、本出願の薬物試験方法のさらに別の実施形態の使用図である。
【0402】
図56を参照すると、薬物は、パッチPAをプレートPL上の反応領域と接触させることによって、薬物試験対象物に提供することができる(S700)。この場合において、パッチPAは、試験される薬物を含有する。このような薬物パッチPAは、本出願の培養方法において使用される培養パッチPAに、薬物を追加で含有するパッチであってもよい。或いは、薬物パッチPAは、本出願の培養方法において使用される培養パッチPAとは異なり、薬物を含有するパッチPAであってもよい。
【0403】
薬物に加えて、薬物パッチPAは、薬物試験対象物の基礎的増殖のために必要な成分を含有することもできる。
【0404】
この方法において、薬物が培養対象物に提供されると、薬物の影響に起因して、培養対象物の増殖が阻害されてもよく、培養対象物が死亡してもよく、培養対象物が、特定の反応を活発に行ってもよく、又は培養対象物の増殖が促進されてもよい。
【0405】
次いで、プレートPLに配置された培養対象物に関する画像を取得することができ(S400)、培養対象物に対する薬物の効果を、画像を解析することによって、試験することができる(S800)。この場合において、本実施形態において、ステップS400は、本出願の薬物試験方法の先の実施形態のステップS400’又は他の先の実施形態のステップS400’’と、完全に同じように、又は同様に、行うことができる。また、本実施形態のステップS800は、上述のステップS800と、完全に同じように、又は同様に、行うことができる。
【0406】
図57は、本出願による培養対象物の画像の一例である。
【0407】
図57を参照すると、薬物の注入に起因して、細菌が徐々に死亡することを観察することができる。
【0408】
先述の薬物試験方法において、薬物は、単一のパッチPAを使用することによって、単一のプレートPLに配置された培養対象物に提供され、次いで、薬物の効果が検出される。
【0409】
しかしながら、代わりに、本出願において、異なる種類の薬物又は異なる濃度を有する薬物を同時に試験することができる。例えば、プレートPL上の反応領域は分割することができ、第1のパッチPAを1つの領域と接触させることができ、第2のパッチPAを別の領域と接触させることができ、次いで、1つの領域及び他の領域の画像を取得して、領域における反応を解析し、第1のパッチPAに含有される薬物及び第2のパッチPAに含有される薬物の効果を比較することができる。或いは、薬物試験は、複数のプレートPL上の複数の異なるパッチPAを同時に使用することによって、行うこともできる。
【0410】
代わりに、本出願において、異なる培養対象物に対する薬物試験を、同時に行うこともできる。例えば、第1の培養対象物を第1のプレートPLに配置することができ、第2の培養対象物を第2のプレートに配置することができ、薬物を、異なるパッチPAを使用して、第1のプレートPL及び第2のプレートPLに提供することができ、次いで、その結果を観察することができる。この場合において、パッチPAが同じ成分で形成される場合、同じ薬物への応答における異なる培養対象物の反応結果を比較することができる。
【0411】
7.試験デバイス
本出願による、培養方法、培養試験方法及び薬物試験方法を行うための試験デバイスを以下に説明する。
【0412】
図58は、本出願による試験デバイスの一実施形態を示す。
【0413】
本出願の実施形態による試験デバイスは、プレートサポーター200、パッチコントローラー300及びイメージングデバイス400を備えることができる。本実施形態による試験デバイスは、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体NSを含み、液体物質SBがマイクロキャビティに含有されるパッチを、プレートPLと接触させ、又はプレートPLからパッチを分離及び画像を取得することができる。
【0414】
プレートサポーター200は、診断される試料SAが反応領域に配置されたプレートPLをサポートすることができる。
【0415】
パッチコントローラー300は、増殖に必要な成分が、上記に説明する本開示の実施形態による培養方法又は試験方法において使用される1つ又は複数のパッチPAによって、反応領域に提供されるように、反応領域に対するパッチPAの位置を制御することができる。
【0416】
イメージングデバイス400は、反応領域を画像化することによって、反応領域の画像を取得することができる。
【0417】
特に、イメージングデバイス400は、画像取得モジュールを含むことができる。この場合において、画像取得モジュールは、カメラモジュールを含むことができる。
【0418】
したがって、イメージングデバイス400は、反応領域の部分画像を取得することができる。また、イメージングデバイス400は、取得された反応領域の部分画像を組み合わせることができる。
【0419】
試験デバイスは、コントローラー100をさらに備えていてもよい。
【0420】
コントローラー100は、画像解析プログラムを使用することによって、培養対象物の数及び形態の情報を得ることができ、抽出された情報に従って、培養に起因する増殖の程度、及び薬物の注入に起因する、増殖阻害の程度、死亡の程度などを決定することができる。
【0421】
図59は、本出願による試験デバイスの実施形態におけるパッチコントローラーの一例を示す。
【0422】
本出願の実施形態による試験デバイス10において、パッチコントローラー300は、パッチ選択モジュール310及び接触制御モジュール330を含むことができる。
【0423】
パッチ選択モジュール310は、パッチPAを選択して、制御することができる。パッチセレクターによって制御されるパッチPAの選択は、複数のパッチPAの中で、反応領域と接触させるパッチを選択することを含むことができる。
【0424】
接触制御モジュール330は、選択されたパッチPA及び反応領域の間の接触の状態を制御することができる。接触状態の制御は、反応領域に対するパッチPAの位置を制御することを含むことができる。
【0425】
上記の説明は、本開示の技術的要旨を単に例示するものであって、本開示が関係する当業者は、本開示の実質的な特徴から逸脱しない範囲内で、様々な変形及び変更を行うことが可能であろう。したがって、上述の本開示の実施形態は、別々に、又は組み合わせて、実施することもできる。
【0426】
本明細書に開示される実施形態は、本開示の技術的要旨を、限定する代わりに、説明するためのものであって、本開示の技術的要旨の範囲は、そのような実施形態によって限定されるものではない。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲に基づいて解釈されるべきであり、均等範囲内のすべての技術的要旨は、本開示の範囲に属するものであると解釈されるべきである。
【0427】