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特許7036456化粧料からなる絵の具材料、絵の具材料用希釈剤、絵の具及び絵の具セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】化粧料からなる絵の具材料、絵の具材料用希釈剤、絵の具及び絵の具セット
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/06 20060101AFI20220308BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220308BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220308BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220308BHJP
   A61K 8/19 20060101ALN20220308BHJP
   A61K 8/25 20060101ALN20220308BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALN20220308BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALN20220308BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
C09D5/06
C09D7/61
C09D7/20
C09D7/65
A61K8/19
A61K8/25
A61Q1/10
A61Q1/08
A61Q1/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020094103
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187943
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-08-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519358977
【氏名又は名称】株式会社モーンガータ
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿典
(72)【発明者】
【氏名】田中 麻由里
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-056464(JP,A)
【文献】特開昭49-081130(JP,A)
【文献】特開昭48-087918(JP,A)
【文献】特開平07-268247(JP,A)
【文献】特開2003-081733(JP,A)
【文献】坂口翠,PLUS COSME PROJECT(プラスコスメプロジェクト)-未使用化粧品や不要になって余った化粧品のリユース活動-,廃棄物資源循環学会誌,Vol.25,No.3,2014年,pp.201-206
【文献】IV.処方設計とその評価法,パーソナルケアハンドブック ,2016年06月07日, 第839-855頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
A61K 8/19
A61K 8/25
A61Q 1/10
A61Q 1/08
A61Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体質粉体及び色材を含み、かつ、
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となる化粧料を含み、
下記の成分;
水:絵の具材料用希釈剤全体に対して49.5~89.0質量%、
低級アルコール:絵の具材料用希釈剤全体に対して10.0~35.0質量%、
ポリビニルアルコール:絵の具材料用希釈剤全体に対して0.5~15.0質量%、
を含有する絵の具材料用希釈剤と併用して使用されることを特徴とする化粧料からなる絵の具材料。
【請求項2】
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までに体質粉体を1種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧料からなる絵の具材料。
【請求項3】
前記上から3番目までに含まれる体質粉体が、マイカ、タルク、合成金雲母、シリカ及び硫酸バリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の化粧料からなる絵の具材料。
【請求項4】
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までにパール粉体を含まないことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化粧料からなる絵の具材料。
【請求項5】
前記化粧料が、アイシャドウ、チーク、ボディパウダー、フェイスパウダー、美白パウダー、スキンケアパウダー、ルースパウダー、プレストパウダー及びファンデーションよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化粧料からなる絵の具材料。
【請求項6】
化粧料からなる絵の具材料を希釈するための希釈剤であって、下記の成分;
水:希釈剤全体に対して49.5~89.0質量%、
低級アルコール:希釈剤全体に対して10.0~35.0質量%、
ポリビニルアルコール:希釈剤全体に対して0.5~15.0質量%、
を含有することを特徴とする絵の具材料用希釈剤。
【請求項7】
前記低級アルコールがエタノールであることを特徴とする請求項6に記載の絵の具材料用希釈剤。
【請求項8】
体質粉体及び色材を含み、かつ、
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となる化粧料、を含む化粧料からなる絵の具材料と、
請求項6または請求項7に記載の絵の具材料用希釈剤と、
を混合した混合体を含むことを特徴とする絵の具。
【請求項9】
体質粉体及び色材を含み、かつ、
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となる化粧料、を含む化粧料からなる絵の具材料と、
請求項6または請求項7に記載の絵の具材料用希釈剤と、
を含むことを特徴とする絵の具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料からなる絵の具材料、絵の具材料用希釈剤、絵の具及び絵の具セットに関する。さらに詳しくは、廃棄対象の化粧料等を利用可能な化粧料からなる絵の具材料、絵の具材料用希釈剤、絵の具及び絵の具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
粉末状化粧料をはじめとした化粧料が流通され、女性を中心に使用されている。一般的な粉末状化粧料は、ファンデーション、フェイスパウダー等のベースメイクやアイシャドウ、チーク等のポイントメイクがあり、これらはいずれも人の肌への塗抹等を目的として使用されるものである。また、粉末状化粧料を構成する体質粉体等の粉体は鉱物を由来とするものが大半であるが(例えば、特許文献1等を参照。)、一部の鉱物においては枯渇が叫ばれている。
【0003】
これに対して、個人消費者は粉末状化粧料を使い切らずに廃棄することが多く、また、化粧料を製造・販売する企業においてもある一定の品質をクリアしなかった粉末状化粧料のバルク(中身)を年間に大量廃棄している。持続可能的な社会を目指すべき近年の情勢を鑑みても、廃棄対象となる粉末状化粧料の有効利用を考えていくべきであり、それに対応する技術の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-012450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、粉末状化粧料等の化粧料には、顔料や光輝性のある粉体が配合されている場合が多く、その場合は視覚で多彩な色彩を楽しめるという特性がある。かかる特性を有したまま、廃棄対象となる粉末状化粧料を、例えば絵の具へと転化させることができれば、廃棄対象となる粉末状化粧料の新たな使用方法をもたらすことが可能となる。
【0006】
粉末状化粧料には、一般に、シリコーン油、炭化水素油等の油性成分(油剤)とマイカ、タルク、シリカ、硫酸バリウム、合成金雲母等の体質粉体や、酸化チタン等の色材等や必要により界面活性剤等が配合されており、これらを金皿等の容器に詰めてプレスされているものが多い。
【0007】
このため、粉末状化粧料中の粉体は部分的にある一定量の油性成分で被覆されている場合があり、粉末状化粧料を粉砕し、市販される水系の液体と混練しても、濡れが進まずに分離してしまうため、絵の具様のスラリー状にすることは困難であった。
【0008】
本発明は、前記に鑑みてなされたものであって、市販される一般の水彩絵の具と同等に使用することができる化粧料からなる絵の具材料、絵の具材料用希釈剤、絵の具及び絵の具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明に係る化粧料からなる絵の具材料は、
体質粉体及び色材を含み、かつ、
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となる化粧料を含み、
下記の成分;
水:絵の具材料用希釈剤全体に対して49.5~89.0質量%、
低級アルコール:絵の具材料用希釈剤全体に対して10.0~35.0質量%、
ポリビニルアルコール:絵の具材料用希釈剤全体に対して0.5~15.0質量%、
を含有する絵の具材料用希釈剤と併用して使用されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る化粧料からなる絵の具材料は、前記した本発明において、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までに体質粉体を1種以上含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る化粧料からなる絵の具材料は、前記した本発明において、前記上から3番目までに含まれる体質粉体が、マイカ、タルク、合成金雲母、シリカ及び硫酸バリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る化粧料からなる絵の具材料は、前記した本発明において、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までにパール粉体を含まないことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る化粧料からなる絵の具材料は、前記した本発明において、前記化粧料が、アイシャドウ、チーク、ボディパウダー、フェイスパウダー、美白パウダー、スキンケアパウダー、ルースパウダー、プレストパウダー及びファンデーションよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る絵の具材料用希釈剤は、化粧料からなる絵の具材料を希釈するための希釈剤であって、下記の成分;
水:希釈剤全体に対して49.5~89.0質量%、
低級アルコール:希釈剤全体に対して10.0~35.0質量%、
ポリビニルアルコール:希釈剤全体に対して0.5~15.0質量%、
を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る絵の具材料用希釈剤は、前記した本発明において、前記低級アルコールがエタノールであることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る絵の具は、
体質粉体及び色材を含み、かつ、
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となる化粧料、を含む化粧料からなる絵の具材料と、
前記した本発明の絵の具材料用希釈剤と、
を混合した混合体を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る絵の具セットは、
体質粉体及び色材を含み、かつ、
含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となる化粧料、を含む化粧料からなる絵の具材料と、
前記した本発明の絵の具材料用希釈剤と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る化粧料からなる絵の具材料は、絵の具材料用希釈剤と併用することにより、絵の具としての最低限の特性を有することとなり、一般の絵の具と同様に使用することができ、廃棄対象となる化粧料の有効利用を図ることを可能とする。特に、かかる希釈剤と併用することで、一般の絵の具よりも画用紙へ伸び広げたときの膜の透明感、速乾性、香り等において、化粧料をベースとした絵の具材料特有の良好な特性を期待することができる。
【0019】
本発明に係る絵の具材料用希釈剤は、化粧料からなる絵の具材料と併用することにより、絵の具材料用化粧料に対して絵の具材料として不足している成分を補う役割を果たすことができる。
【0020】
本発明に係る絵の具、及び絵の具セットは、本発明に係る化粧料からなる絵の具材料及び本発明に係る絵の具材料用希釈剤よりなり、一般の絵の具と同様に使用することができる絵の具、及び絵の具材料を専用の希釈剤とセットとした絵の具セットとして提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】試験例1及び試験例2で用いた評価基準を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一態様について説明する。
【0023】
(I)化粧料からなる絵の具材料:
本発明は、化粧料からなる絵の具材料であるが、市販される化粧料のうち、本発明に適用が可能と考えられる化粧料としては、例えば、パウダーアイシャドウ(アイカラー)等の各種アイシャドウ(アイカラー)、パウダーチーク等の各種チーク(チークカラー)、ボディパウダー、フェイスパウダー、美白パウダー、スキンケアパウダー、ルースパウダー、プレストパウダー、ファンデーション等のメイクアップ(メークアップ)化粧料等の粉末状化粧料を含む化粧料や、化粧下地等のメイクアップ化粧料の下地等となる下地化粧料等の粉末状化粧料を含む化粧料が挙げられる。
【0024】
これらの化粧料は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの化粧料は、廃棄対象となるものを使用しても問題はなく、本来廃棄する予定であった化粧料を使用することで、廃棄対象となる化粧料の有効利用を図ることができる。
【0025】
このうち、アイシャドウ(アイカラー)は、例えば、まぶた側のアイホールと、下まぶた、目尻といった目の周囲に、異なるトーンのカラーを付けて陰影を形成するために順に塗られる化粧料である。
【0026】
チーク(チークカラー)とは、いわゆる頬紅(ほおべに)のことであり、頬に塗布して顔色を明るく見せたり、頬に陰影をつけて 立体感をだすために用いられる化粧料である。剤型は固形状、粉末状、クリーム状、液状、スティック状などがあるが、本発明には粉末状が適する。
【0027】
ボディパウダーとは、油のぎらつきを抑え、マットで自然な仕上がりを与えるために用 いられる化粧料である。
【0028】
フェイスパウダーとは、化粧の仕上げに使用し、皮脂やファンデーションのいわゆるてかり(テカリ)やべたつきを抑えるための化粧料である。美白効果を有する美白パウダー、スキンケア効果を有するスキンケアパウダー、ルースパウダーもフェイスパウダーやボディパウダーの一種と考えられる。
【0029】
ブレストパウダーは、前記したフェイスパウダーの一種で、基本的には後記するファンデーションを用いた後に使用され。ファンデーションを整えコーティングし、より綺麗な肌に見せるための化粧料である。
【0030】
ファンデーションとは、肌のカラーを整えたり、肌のそばかすやしみ等を被覆して、紫外線から保護等をするためになされる化粧料である。後記する化粧下地を肌上に塗布した後、塗布されるメイクアップ化粧料である。
【0031】
化粧下地とは、ファンデーション等のメイクアップ化粧料を塗布する前に下地として用いるものであり、かかるメイクアップ化粧料の発色性を付着力(つき)、被覆力(のり)を良好にして、化粧仕上がりの美しさや、化粧くずれを防ぎメイクアップ効果の持続等を目的として使用されるベース材となる化粧料である。
【0032】
なお、本発明に係る絵の具材料に適する粉末状化粧料とは、一般に、粉体(粉体成分)を主成分(概ね、化粧料全体の60質量%以上と考えられており、60~95質量%であることが好ましいが、これには限定されない。)とし、必要により適宜水性成分や油性成分等を混合した化粧料を指し、概ね粒径1.0mm以下の粉体粒子からなり、常温、常圧下で各粒子が自由に流動できるものをいうものと解されるが、特にこれには限定されず、化粧業界で一般的に粉末状化粧料と呼ばれる化粧料を広く使用することができる。
【0033】
前記に代表される対象となる化粧料に含まれる成分としては、例えば、体質粉体(例えば、無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)等。)、色材(例えば、無機顔料、有機顔料、天然色素、パール粉体等。)、油性成分(例えば、天然由来の植物油や動物油等、炭化水素油、エステル油(グリセライド油を含む。)、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、ワックス、油性増粘剤、有機溶剤等。)、その他の成分(例えば、水性防腐剤、粉末状防腐剤、防腐剤、界面活性剤、表面処理剤、酸化防止剤、美容剤、紫外線吸収剤、被膜形成剤、エモリエント成分、水性成分等。)が挙げられる。これらの成分は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、下記に挙げる成分の個々についても、同様に、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。このうち、体質粉体及び色材については、化粧料を絵の具材料として適用するために必須の成分となるが、油性成分、その他の成分にあっては、特にそのようなことはない。また、油性成分については、後記するように、化粧料に含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となるようにしている。
【0034】
一般に、粉末状化粧料に含まれる粉体としては、無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)等が例に挙げられる体質粉体と、無機顔料(白色顔料含む。)、有機顔料、天然色素、パール粉体等が例に挙げられる色材等が考えられる。ここで、以下に挙げる粉体は、各種の表面処理が行われていてもいなくても構わない。
【0035】
体質粉体(体質顔料とも呼ばれる。)とは、化粧料の剤形を保つための増量剤的な役割として用いられ、加えて化粧料の伸展性や付着性、光沢等を調節や、色調の調整のための調整剤的な役割で用いるものと解される。
【0036】
体質粉体として用いられる成分は、無機粉体や、天然に産出する粘土鉱物の粉砕品である。それ以外には、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)などの合成無機粉体等や、無機顔料ではないが、有機高分子粉体等の有機粉体や、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)等も個々に分類される場合もある。
【0037】
体質粉体は、化粧料にあっては汗や皮脂の吸収による化粧くずれの防止、粉体形状、粒子径、硬度、表面状態の調整による使用感触の向上、化粧料の伸展性や付着性、白度、色調の調整、透明度の制御による化粧料の光沢の調整などの目的でも使用され、例えば、ファンデーション等のベース用成分として不可欠な成分である。
【0038】
体質粉体として、無機粉体としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム(硫酸Ba)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、合成金雲母(合成フルオロフロゴパイト)、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸(Na/K/Al)、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ジステアルジモニウムヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ、微粒子酸化セリウム、ジメチルシリル化シリカ、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウム(オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAl)、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム(オクテニルコハク酸デンプンAl)等が挙げられる。
【0039】
有機粉体としては、例えば、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー(ワックスにもなる。)、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、ナイロンパウダー(12ナイロン、6ナイロン等)等が挙げられる。なお、これらの「~パウダー」の記載は便宜上のものであり、「パウダー」の記載がつけられていないもの(例えば、「ポリエチレン」、「ポリプロピレン」等。)も含む。
【0040】
その他の有機粉体としては、例えば、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン(表面処理剤にもなる。)、ポリメチルシルセスキオキサン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー、コーンスターチ、加水分解水添デンプン等が挙げられる。
【0041】
界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム(ジステアリン酸Al)、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸Mg)、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム(ミリスチン酸Mg)、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
色材は、化粧料を所望の色に着色し、発色させるための粉体等であり、色材として、顔料である無機顔料としては、例えば、微粒子及び顔料級の(酸化チタン(ルチル)、酸化チタン(アナターゼ)等の)酸化チタン(白色顔料であり、パール粉体にもなる。)、微粒子及び顔料級の酸化亜鉛(白色顔料であり、粉末状防腐剤にもなる。)等の無機白色顔料、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、コンジョウ(紺青)、グンジョウ(群青)等の無機青色系顔料等が挙げられる。
【0043】
顔料である有機顔料としては、例えば、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等を使用することができ、例えば、赤2、赤3、赤102、赤104、赤105、赤106、黄4、黄5、緑3、青1、青2、赤201、赤202、赤203、赤204、赤205、赤206、赤207、赤208、赤213、赤214、赤215、赤218、赤219、赤220、赤221、赤223、赤225、赤226、赤227、赤228、赤230(1)、赤230(2)、赤231、赤232、橙201、橙203、橙204、橙205、橙206、橙207、黄201、黄202(1)、黄202(2)、黄203、黄204、黄205、緑201、緑202、緑204、緑205、青201、青202、青203、青204、青205、褐201、紫201、赤401、赤404、赤405、赤501、赤502、赤504、赤505、赤506、橙401、橙402、橙403、黄401、黄402、黄403、黄404、黄405、黄406、黄407、緑401、緑402、青403、青404、紫401、黒401等が挙げられる。
【0044】
色材である天然色素としては、例えば、カルミン、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン、サロールイエロー、β-カロチン、ハイビスカス色素、カプサインチン、ラッカイ酸、グルクミン、リボフラビン、シコニン等が挙げられる。
【0045】
色材であるパール粉体とは、一般に汎用されているパール光沢を有する粉体であれば良く、例えば、真珠光沢を有する通常の雲母チタンの他に、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン処理雲母チタン、合成金雲母、酸化チタン被覆合成金雲母、ガラス末、酸化チタン被覆ガラス末、ポリエチレンテレフタレート・ポリエステルフィルム積層末、雲母片、アクリル樹脂被覆アルミニウム末(色材を含有してもよい)、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、酸化チタン被覆板状アルミナ、酸化錫(スズ)、真珠殻、金箔、金蒸着樹脂フィルム、金属蒸着樹脂フィルム等が挙げられる。
【0046】
また、これ以外のパール粉体としては、例えば、酸化チタン(白色顔料にもなる。)、ホウケイ酸(Ca/Al)、ホウケイ酸(Ca/Na)、(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート、(PET/Al)ラミネート、(PET/Al/エポキシ樹脂)ラミネート等が挙げられる。
【0047】
油性成分(油剤とも呼ばれる。)としては、油分を含み、剤型を滑らかなものとすることに役立ち、例えば、天然由来の植物油や動物油等、炭化水素油、エステル油(グリセライド油を含む。)、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、ワックス、油性増粘剤、有機溶剤等が挙げられる。
【0048】
油性成分として、天然由来の植物油や動物油等としては、例えば、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、キョウニン油、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、水添野菜油、卵黄油等が挙げられる。
【0049】
炭化水素油としては、例えば、スクワラン、スクワレン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン(ミネラルオイル)、プリスタン、ポリイソブチレン、ワセリン、ポリイソブテン、ポリブテン等が挙げられる。
【0050】
エステル油(グリセライド油を含む。)としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル(パルミチン酸エチルヘキシル)、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル(ヒドロキシステアリン酸コレステリル)、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(トリイソステアリン酸グリセリル)(界面活性剤としても用いられる。)、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、トリメリト酸トリトリデシル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ジカプリン酸プロピレングリコール(ジカプリン酸PG)、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、イソステアリン酸水添ヒマシ油、水添トリ脂肪酸(C12-18)グリセリル等が挙げられる。
【0051】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸(ヒドロキシステアリン酸)が挙げられる。
【0052】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等が挙げられる。
【0053】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、シクロペンタシロキサン、メチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フェニルトリメチコン等が挙げられる。
【0054】
ワックスとしては、例えば、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン(体質粉体にもなる。)、セレシン、オゾケライト、ミツロウ、合成ワックス、水添パーム油脂肪酸、ステアリン酸ステアリル等が挙げられる。
【0055】
油性増粘剤としては、例えば、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマー、(エチレン/プロピレン)コポリマー、パルミチン酸デキストリン等が挙げられる。
【0056】
有機溶剤としては、例えば、イソドデカン等が挙げられる。
【0057】
その他の成分について、水性防腐剤としては、例えば、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール等が挙げられる。粉末状防腐剤としては、例えば、酸化亜鉛(白色顔料にもなる。)等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、ブチレングリコール(BG。水性成分にもなる。)メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン、プロパンジオール、デヒドロ酢酸ナトリウム(デヒドロ酢酸Na)、銀等が挙げられる。
【0058】
界面活性剤としては、例えば、セスキイソステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(油性成分としても用いられる。)、ステアリン酸ソルビタン、ポリヒドロキシステアリン酸、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3(油性成分としても用いられる。)等が挙げられる。
【0059】
表面処理剤としては、例えば、パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン、イソステアリン酸、ステアリン酸、水酸化アルミニウム(水酸化Al)、トリエトキシカプリリルシラン、パルミチン酸、ラウロイルリシン(体質粉体にもなる。)等が挙げられる。
【0060】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール、酢酸トコフェロール、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン等が挙げられる。
【0061】
美容剤としては、例えば、レシチン、カミツレエキス、イチゴ果実エキス、ラベンダー花エキス、マグワ根皮エキス、水溶性コラーゲン、キトサン、乳酸桿菌/ハイビスカス花発酵液、テンニンカ果実エキス、ツバキ種子油、加水分解コンキオリン、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(セラミドのこと。)等が挙げられる。
【0062】
紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等が挙げられる。
【0063】
被膜形成剤としては、例えば、トリメチルシロキシケイ酸等が挙げられる。
【0064】
エモリエント成分としては、例えば、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
【0065】
水性成分としては、例えば、ブチレングリコール(BG。防腐剤にもなる。)、水等が挙げられる。
【0066】
本発明に適用可能な前記の化粧料は、色材を含み、かつ、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までに体質粉体を1種以上含むことが好ましい。化粧料に含まれる色材は光輝性を備えていることが多く、また、体質粉体も絵の具材料のベース材料となるほか、発色を助ける場合が多いので、必須の成分とすることより視覚で多彩な色を楽しめ、絵の具材料として使用するのに適するものである。また、体質粉体は、絵の具として画用紙上へ塗り広げた際の隠ぺい力、着色力、被覆力、延展性、付着性等を調節する機能を有する。
【0067】
なお、色材は、概ね、化粧料全体に対して、0.05質量%以上含有することが好ましく、2.0~30.0質量%の範囲で含有することが特に好ましいが、絵の具材料として使用するに適するだけの発色を備えたものであれば、特にこの範囲には限定されない。また、化粧料を絵の具材料として適用するに際して発色の不足等を感じた場合に、色材を別途添加して、前記した含有量とすることも構わない。
【0068】
化粧料に含まれる体質粉体はこのように絵の具材料として適する一方、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までに体質粉体が1種以上含まれていれば、化粧料中に体質粉体が適度に含まれることが期待でき、化粧料全体として絵の具材料として有効に使用することができると考えられる。
【0069】
また、体質粉体は、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までの成分のうち2種を占めることがさらに好ましく、上から3番目のうち3種全てを占めることが特に好ましい。また、体質粉体は、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から2番目までに体質粉体が含まれることを含むことがさらに好ましく、上から1番目の体質粉体を含むことが特に好ましい。
【0070】
また、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までに含まれる体質粉体としては、マイカ、タルク、シリカ、合成金雲母(合成フルオロフロゴパイト)、硫酸バリウム(硫酸Ba)によりなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。これらの体質粉体は、給油量の多い嵩高い粉体であり、絵の具材料として適するとともに、絵の具材料として使用した場合には、紙上へ塗り広げた際の隠ぺい力、着色力、被覆力、延展性、付着性等を調節できる。すなわち、紙表面への付着の均一性、仕上がった絵の具膜の平滑性、視覚的透明性等を付与することが可能となる。
【0071】
対象となる化粧料は、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下となるようにしている。上から5番目までに油性成分が4種以上含まれる場合にあっては、化粧料に対して油性成分が占める割合が高くなると考えられ、併用する絵の具材料用希釈剤(後記する(II)で説明する。)と混合しても、化粧料に希釈剤がなじまず分離してしまい、市販される一般の水彩絵の具と同様な状態とすることができないため好ましくない。また、化粧料と希釈剤が混合できそうな場合でも、希釈剤との軽度な分離が認められ、水に溶いて画用紙に塗抹させた場合にあっては絵の具として使用することが難しい場合があり好ましくない。油性成分は、化粧料に含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が2種以下となることが好ましく、1種以下となることがさらに好ましく、油性成分を含有しない(0種となる)ことが特に好ましい。
【0072】
また、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から3番目までにパール粉体を含まないことが好ましい。真珠光沢顔料(パール剤)や光輝性顔料(ラメ剤)等のパール粉体は、比較的大きな粒径の粉体から形成されるため、上から3番目までに色材としてパール粉体が含まれると、化粧料に対してパール粉体の占める割合が高くなる可能性があり、絵の具化した場合に、画用紙への伸び広がり、画用紙への重ね塗り、画用紙上でできた膜の滑らかさ、画用紙上でできた膜の定着性において悪影響を与える場合があり、また、二次付着性を低下させる可能性もある。含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から2番目までにパール粉体を含まないことがさらに好ましく、パール粉体が1番多い成分とならないことが特に好ましい。なお、本発明に関し、「二次付着性」とは現象ではなく評価項目という認識であり、評価項目上の高低及び優劣を記載する。つまり、二次付着性が低くなる及び二次付着性が劣ることは、事象として捉えたとき、二次付着しやすいことを指す。
【0073】
含有される成分には、酸化チタン、酸化亜鉛及び窒化ホウ素よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの成分は、通常、メイクアップ化粧料等に配合されている成分であるため、汎用成分であると考えられる。
【0074】
本発明で使用される化粧料には、前記の成分のほかに、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、化粧料に一般的に使用される成分、例えば、薬剤、保湿剤、殺菌剤、樹脂等、一般的に化粧料に使用される所望の成分を添加することができる。
【0075】
本発明に係る化粧料からなる絵の具材料を水彩絵の具として用いるには、例えば、後記する絵の具材料用希釈剤と混合して(混合体として)絵の具化される。ここで、絵の具化とは、市販される一般の水彩絵の具と同様な状態(絵の具様)とされることを指す(以下同じ。)。また、絵の具様とされた後、市販される一般の水彩絵の具(以下、単に、「一般の絵の具」とする場合もある。)と同様、適量の水に溶かれて、筆により画用紙上に塗抹されて使用される。
【0076】
このような本発明に係る化粧料からなる絵の具材料は、絵の具材料用希釈剤と併用することにより、絵の具材料としての最低限の特性を有することとなり、一般の絵の具と同様に使用することができ、廃棄対象となる化粧料の有効利用を図ることを可能とする。特に、かかる希釈剤と併用することで、一般の絵の具よりも画用紙へ伸び広げたときの膜の透明感、速乾性、香り等において、化粧料をベースとした絵の具材料特有の良好な特性を期待することができる。
【0077】
なお、本発明のように化粧料を絵の具化した(以下、便宜上「化粧料絵の具」とする場合もある。)場合には、発色(色の出やすさ)において、化粧料絵の具は一般の絵の具より若干劣る場合もある。これは、人の肌へ塗抹する目的で製造された粉末状化粧料自体に配合されている顔料の濃度が一般の絵の具よりも低いためである。
【0078】
また、絵の具化する化粧料の種類によっては、二次付着性(例えば、画用紙へ塗抹して乾いた軌跡を手でなぞり、手に付着しないかどうかで確認できる。)においても、市販される一般の水彩絵の具よりも若干の低下が見られる場合がある。これは、化粧料に配合されている体質粉体等の粉体が、ほぼ顔料級粒径の粉体で構成された一般の絵の具と比較して、比較的大きいことに起因すると考えられる。
【0079】
一方、例えば、化粧料絵の具により仕上がった描写跡の膜には、化粧料絵の具独特の透明感があり、また、一般の絵の具にはない化粧料絵の具独特の透明感のあるタッチ感を備える場合もある。また、元来が化粧料であることから、香りもよく、後記する希釈剤と混合することにより、速乾性等も良好であると考えられる。
【0080】
(II)絵の具材料用希釈剤:
次に、化粧料からなる絵の具材料と併用して使用される絵の具材料用希釈剤(以下、単に「希釈剤」とする場合もある。)について説明する。希釈剤は、前記した本発明に係る化粧料からなる絵の具材料等と併用するのに適し、含有量特定範囲とした水、低級アルコール、ポリビニルアルコールを含む。かかる絵の具材料用希釈剤は、前記した化粧料等を絵の具材料(絵の具のベース材料)として適用するに際して、かかる化粧料と混合して使用されることにより、化粧料に対して絵の具材料として不足している成分を補う役割を果たす。
【0081】
すなわち、粉末状化粧料等の化粧料は、もともと絵の具材料を想定して製造されているわけではないので、一般の絵の具に対して不足する成分があるのは当然である。前記の成分により構成される絵の具材料等をそのまま水に溶いて使用した場合には、水への分散性や、水への濡れ特性等が不足し、また、仮に水に溶けたとしても、紙への付着性、被膜性、速乾性等が不足することが予想される。絵の具材料用希釈剤は、前記の成分を特定量含有することで、かかる不足する特性を補充することができる。
【0082】
水は、希釈剤を構成する各成分を分散させる溶媒となり、水道水、精製水、イオン交換水等といった、一般的に使用される水を使用することができる。かかる水の含有量は、例えば、希釈剤中の必須成分及び任意成分を除いた残部(希釈剤において、必須成分及び任意成分以外の部分を指す。)とすればよいが、概ね、希釈剤全体に対して、49.5~89.0質量%とし、60.5~86.0質量%とすることがさらに好ましく、66.5~83.5質量%であることが好ましい。
【0083】
低級アルコールは、化粧料と併用された場合に揮発剤的な役割を果たし、揮発性、速乾性を付与することができる。低級アルコールとしては、例えば、メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)、プロパノール(プロピルアルコール)、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の低級アルコール(炭素数5以下の1価アルコール。)を使用することができ、汎用性、安全性、化粧料との相性等という点で、エタノールを使用することが好ましい。
【0084】
低級アルコールの含有量は、総量で、希釈剤全体に対して、10.0~35.0質量%とする。低級アルコールの含有量が10.0質量%より少ないと、速乾性が損なわれ、紙への膜形成が遅延し、色むらができる場合がある。一方、含有量が35.0質量%を超えると、速乾性が強すぎ、伸ばし切らないまま膜形成がなされることで、これもまた色むらの原因となる場合がある。さらに、低級アルコールをエタノールとした場合、エタノール過多は顔料凝集の原因となる場合がある。低級アルコールの含有量は、総量で、希釈剤全体に対して、12.5~30.0質量%とすることがさらに好ましく、15.0~30.0質量%とすることが好ましい。
【0085】
ポリビニルアルコールは、化粧料と併用された場合の膜形成に役立ち(膜成分となる。)、形成される膜に対して、画用紙に対する乗り(のり)のよさ、膜に滑らかさ等を付与することができる。
【0086】
ポリビニルアルコールの含有量は、希釈剤全体に対して、0.5~15.0質量%とする。ポリビニルアルコールの含有量が0.5質量%より少ないと、形成される膜が薄くなり、膜の滑らかさや膜の均一性が失われる。一方、含有量が15.0質量%を超えると、膜が厚くなり、均一膜を損ない、摩擦による仕上がり膜の欠損を生じる場合がある。すなわち、含有量が少ないと、画用紙上にできる形成膜が薄くなることで粉体の凹凸が目立ち膜の均一性が失われる場合があり、また、ポリビニルアルコールは顔料分散作用があるので、少ないと絵の具自体や描写時の画用紙上での顔料分散性が落ち、色むらが生じる場合がある。一方、含有量が多いと、画用紙上にできる形成膜が厚くなりすぎることで膜の均一性が失われる場合がある。ポリビニルアルコールの含有量は、希釈剤全体に対して、1.0~9.0質量%とすることがさらに好ましく、1.0~3.0質量%とすることが特に好ましい。
【0087】
絵の具材料用希釈剤には、前記の必須成分のほか、本発明の目的及び効果を妨げない範囲で、例えば、フェノキシエタノール、トリエタノールアミン、多価アルコール、アクリル酸重合体(カルボマー)等の水溶性高分子、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)(前記したトリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムはアクリル酸重合体の中和剤となる。)、ノニオン性合成樹脂、ノニオン性合成高分子、アクリル酸系水溶性高分子、多糖類、界面活性剤等、水溶性の被膜形成剤やその他の水溶性の材料等の任意成分を適宜添加することができる。
【0088】
ここで、化粧料からなる絵の具材料に対して、分散性と濡れ(ぬれ)等を補うために界面活性剤を用いることで解決することが好ましいが、絵の具材料の対象と考えている粉末状化粧料等の化粧料には、界面活性剤が配合されている場合も多いため、絵の具として用いたときの環境に対する影響や人の肌へ付着したときの安全性を考えた場合を考慮し、希釈剤としては任意成分として挙げている。前記の任意成分は、添加する場合は、例えば、希釈剤全体に対して、例えば1.0質量%以下程度を含有するようにしてもよいが、これには限定されない。
【0089】
絵の具材料用希釈剤は、前記の必須成分及び任意成分(必須成分等)を混合、攪拌することにより調製することができる。一例としては、溶媒となる水に対して各成分を添加し、混合、攪拌して必須成分等を水の中に分散させるようにすればよい。
【0090】
以上説明した本発明に係る絵の具材料用希釈剤は、化粧料からなる絵の具材料と併用することにより、絵の具材料用化粧料に対して絵の具材料として不足している成分を補う役割を果たすことができる。
【0091】
(III)絵の具及び絵の具セット:
本発明に係る絵の具は、(I)で説明した化粧料からなる絵の具材料及び(II)で説明した絵の具材料用希釈剤を混合した混合体を含み、同様に、本発明に係る絵の具セットは、(I)で説明した化粧料からなる絵の具材料及び(II)で説明した絵の具材料用希釈剤を含むものである。絵の具セットとしては、化粧料からなる絵の具材料及び希釈剤は、それぞれ1種をその構成としてもよく、また、それぞれ2種以上をその構成としてもよい。
【0092】
化粧料からなる絵の具材料は、絵の具材料用希釈剤により希釈されて混合体とされることにより、一般に市販される一般の水彩絵の具と同様な状態(一般の絵の具様)とされる(これが本発明の絵の具となる。)。絵の具材料と希釈剤の配合割合としては、特に制限はなく、化粧料の種類、希釈剤を構成する成分の配合比、使用者が最終的に求める色彩等により適宜決定することができるが、概ね、質量比として、化粧料1に対して希釈剤を0.5~2として混合することが好ましく、0.7~1.5として混合することが特に好ましいが、特にこの範囲は限定されない。
【0093】
希釈剤により希釈化された絵の具材料(混合体である絵の具)は、例えば、市販される一般の水彩絵の具と同様、パレット上等で水に溶かれて使用される。使用される水の量については、概ね、質量比として、希釈化された絵の具材料(化粧料と希釈剤の混合体からなる、絵の具化された化粧料のこと。)を1に対して、水を0.5~3として混合して溶くようにして使用すればよいが、かかる混合比には限定されず、使用者の好み等により適宜決定すればよい。
【0094】
以上説明した本発明に係る絵の具、及び絵の具セットは、本発明に係る化粧料からなる絵の具材料及び本発明に係る絵の具材料用希釈剤よりなり、一般の絵の具と同様に使用することができる絵の具、及び絵の具材料を専用の希釈剤とセットとした絵の具セットとして提供することができる。
【0095】
(V)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0096】
例えば、前記した実施形態では、絵の具材料となり得る化粧料の種類として一定のものを例として挙げているが、絵の具材料となり得る化粧料についてはこれには限定されず、例として挙げた以外の粉末状化粧料等の化粧料を適用することを制限するものではない。同様に、前記した実施形態では、各成分の具体例を挙げているが、これらはあくまでも一例であり、挙げられていない成分が化粧料からなる絵の具材料に配合されていても問題はない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例
【0097】
以下、本発明を試験例等に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
表1~表9に示した組成からなる市販される化粧料A~化粧料Pの16種類の化粧料を用意した(表1に品名と種類等、表2~表9に組成等全成分情報を示す。)。化粧料A~化粧料Pは、成分として色材を、絵の具材料として使用するに適するだけの発色を備えたものである(後記する試験例2(4)でも評価している。)。
【0099】
また、化粧料A~化粧料Pは、体質粉体、油性成分等を含み、化粧料A~化粧料G、化粧料M~化粧料Pはアイシャドウ、化粧料Hはチーク、化粧料I~化粧料Kはフェイスパウダー、化粧料Lはファンデーション、にそれぞれ分類される。また、化粧料A、化粧料B、化粧料D、化粧料H~化粧料Pはいわゆる粉末状化粧料として一般に流通、販売されているものである。
【0100】
(品名及び製造販売元)
【表1】
【0101】
(組成等全成分情報:化粧料A、化粧料B)
【表2】
【0102】
(組成等全成分情報:化粧料C、化粧料D)
【表3】
【0103】
(組成等全成分情報:化粧料E、化粧料F)
【表4】
【0104】
(組成等全成分情報:化粧料G、化粧料H)
【表5】
【0105】
(組成等全成分情報:化粧料I、化粧料J)
【表6】
【0106】
(組成等全成分情報:化粧料K、化粧料L)
【表7】
【0107】
(組成等全成分情報:化粧料M、化粧料N)
【表8】
【0108】
(組成等全成分情報:化粧料O、化粧料P)
【表9】
【0109】
ここで、表2等の組成は、化粧料全体に対する成分量が多い順に並べて載せられている。また、表2等の組成において、「+/-」の表示は、メイクアップ用の化粧料等の色違いの多いシリーズ商品で使用される表示であり、その後に表示されている成分(色材等)が、そのシリーズ品に用いられていることを示す。よって、記載された品名の化粧料には必ずしも配合されていない成分が表示されている場合もある(ただし、「+/-」以下に示される少なくとも1種の色材は使用されている。)。
【0110】
そして、かかる16種類の化粧料について、下記の[試験例1]で選定した絵の具材料用希釈剤を用いて、[試験例2]に載せた方法により、絵の具材料としての諸特性を比較・評価した。
【0111】
[試験例1]
絵の具材料用希釈剤の評価:
下記の方法で得られた絵の具材料用希釈剤(希釈剤)について、化粧料Aを対照として用いて、絵の具材料用希釈剤としての適性を評価した。
【0112】
(絵の具材料用希釈剤の製造)
絵の具材料用希釈剤の成分として、水、低級アルコールであるエタノール、ポリビニルアルコール及びフェノキシエタノールをそれぞれ表10に示した含有量(希釈剤全体に対する質量%)として、溶媒となる水に他の成分を添加し、混合、攪拌して水の中に分散させて、希釈剤1~希釈剤3を製造した。
【0113】
(希釈剤の組成)
【表10】
【0114】
このようにして得られた希釈剤1~希釈剤3について、表1及び表2に載せた化粧料Aを用いて、下記の方法で絵の具化(市販される一般の水彩絵の具と同様の状態(一般の絵の具様)とすること。)した上で、評価サンプルを作製するとともに、下記の方法で絵の具材料用希釈剤としての適性を評価した。
【0115】
(絵の具化及び評価サンプルの作製)
化粧料3gと希釈剤3gを5分間ヘラで混練して混合体として、化粧料を絵の具化した。そして、絵の具化された化粧料0.2gと水(水道水)0.2gをパレット上で溶いて、評価サンプルとした。
【0116】
(評価方法)
かかる評価サンプルについて、下記(1)~(14)の14つの評価項目のうち、(1)(紙への)伸び広がり、(2)(紙への)乗りの良さ、(3)速乾性、(5)透明感、(8)(紙上でできた)膜の滑らかさ、の5項目を用いて、12人のパネラーにより図1に示した基準(市販される一般の水彩絵の具を3点(普通)とした時の5、4、3,2及び1点の5段階の基準であり、5点が一番良く、1点が一番悪い。)で評価してもらい、かかる12人のパネラーの平均点(平均値)を算出した。図1は、試験例1及び試験例2で用いた評価基準を示した図であり、後記する試験例2でもこの基準を用いている。
【0117】
そして、算出された平均点について下記の評価基準を用いて比較・評価した。結果を表11に示す(表11及び後記する表12には、結果の平均点及び下記の「◎」、「〇」、「△」、及び「×」の評価を載せている。)。なお、図1や下記の内容には、塗沫対象である「画用紙」については、単に「紙」と記載するところもある。また、表11及び後記する表12の平均値は、小数点第3位を四捨五入したところもある。
【0118】
(評価基準)
評 価 内 容
◎ : 平均点が3.5点以上
〇 : 平均点が2.5点以上3.5点未満
△ : 平均点が1.5点以上2.5点未満
× : 平均点が1.5点未満
【0119】
(評価項目)
(1)(紙への)伸び広がり:
筆で画用紙に塗った時の紙への伸び広がりやすさを確認した。
【0120】
(2)(紙への)乗りの良さ:
かすれたりせず、一般の絵の具と同じように紙に塗抹できるかどうかを確認した。
【0121】
(3)速乾性:
乾く速さを確認した。
【0122】
(4)発色:
色の出やすさを確認した。
【0123】
(5)透明感:
画用紙が透けて見える度合いを確認した。
【0124】
(6)(紙への)重ね塗り:
塗抹直後に再度上から塗抹し、最初に塗ったものがよれたり二度目の塗抹に持っていかれたりしないか確認した。
【0125】
(7)乾燥後の剥離性:
パレットに絵の具を出して数日固めた後にパレットから落ちたり剥がれたりするかどうかを確認した。
【0126】
(8)(紙上でできた)膜の滑らかさ:
画用紙に塗抹して乾いた軌跡を手でなぞり、ざらざらしたり、凹凸があったりしないかを確認した。
【0127】
(9)二次付着性:
画用紙へ塗抹して乾いた軌跡を手でなぞり、手に付着しないかどうかを確認した。
【0128】
(10)(紙上でできた)膜の定着性:
塗抹し乾燥後、手でなぞった時に膜がよれたりしないかどうかを確認した。
【0129】
(11)香り:
一般の絵の具の独特な香りに対して、よい香りがするかどうかを確認した。
【0130】
(12)調色:
パレット上で他の化粧料絵の具を混ぜた時に予想どおりの色となるかどうかを確認した(例えば、赤と青を混ぜた時に紫となる予想で、そのとおりになるか。)。
【0131】
(13)水への溶解性:
パレット上で水と混ぜる時に混ざりやすいかどうかを確認した。
【0132】
(14)固形化後の水での溶解性:
(7)と同じように絵の具をパレット上に載せ、乾燥させ固形化させた後に、水で再溶解できるかどうかを確認した。
【0133】
(結果)
【表11】
【0134】
表11に示すように、揮発剤となると考えられる低級アルコール(エタノール)の含有量及び膜成分となると考えられるポリビニルアルコール(PVA)の含有量に応じて、(2)(紙への)乗りの良さ、(3)速乾性、(8)膜の滑らかさの評価点数が高くなる(希釈剤3が一番高い。)という結果であった。また、(5)透明感については、3つの希釈剤いずれも、平均点が5点(満点)という結果であった。
【0135】
なお、その一方で、(1)伸び広がりの評価については、一般の絵の具の標準点数(3点)以上となるものの、エタノール及びポリビニルアルコールの含有量が一番多い希釈剤3の平均点が一番低かった。この点、揮発性と膜形成性を合わせた観点で考えると、希釈剤3を使用した場合にあっては、一般の絵の具程度に程よく伸び広がり、綺麗で均一な膜が素早くできるという利点があるとも考えられる。
【0136】
以上の結果を総合して、希釈剤1~希釈剤3は、いずれも、画用紙へ塗抹した際に絵の具の膜が伸び広がりすぎず、一般の絵の具と同等に伸び広がること、一般絵の具よりもかすれたりせずに綺麗にのっていくこと、仕上がった絵の具の膜が均一で凹凸が少ないこと、を相対評価し、一般の絵の具と同等以上の良好な特性を備えていることが確認できた。
【0137】
そして、3つの希釈剤の中では、これらの特性をバランスよく兼ね備えた希釈剤3が一番好ましいと判断し、下記の[試験例2]においては、希釈剤3を希釈剤として用いるようにした。
【0138】
[試験例2]
化粧料の絵の具材料としての評価:
前記の表1~表9に示した化粧料A~化粧料Pについて、希釈剤として試験例1で選定した希釈剤3を用いて、絵の具材料の諸特性を比較・評価した。
【0139】
まず、試験例1と同様、化粧料3gと希釈剤3gを5分間ヘラで混練して混合体として、化粧料を絵の具化するようにした。また、絵の具化された化粧料0.2gと水(水道水)0.2gをパレット上で溶いて評価サンプルとした。
【0140】
前記の操作を行った結果、化粧料C、化粧料E及び化粧料Fについては、希釈剤と分離してしまい、化粧料に希釈剤がなじまず、絵の具化することができなかった(そのため、水に溶いて画用紙に塗布することができなかった。)。また、化粧料Gも、希釈剤との軽度な分離が認められ、水に溶いて画用紙に塗抹させた場合にあっては絵の具として使用することが難しかった。よって、これらの化粧料C、化粧料E、化粧料F及び化粧料Gについては、絵の具材料としては不適合と判断し、以降の評価を行わないようにした。
【0141】
なお、絵の具化の可否に関しては、表2~表9に示した化粧料の全成分情報より、上から5番目までに、油性成分を4種以上含む場合には、油性成分により体質粉体等の粉体の表面積全体が被覆されるほどの多くの油性成分を含有していると考えられ、絵の具化が困難となると考えられる。また、絵の具化が困難であった化粧料は、全てクリーム状の剤型となっており、指で触れたときにスラリー状であると認識できるくらい柔らかいものであった。
【0142】
これに対して、含有される成分を含有量が多い順に並べた場合に、上から5番目までに、油性成分が3種以下であり、かつ、上から3番目までに体質粉体を1種以上含む化粧料である化粧料A、化粧料B、化粧料D、化粧料H~化粧料Pについては、絵の具化等について問題がなかった。以上より、化粧料A、化粧料B、化粧料D、化粧料H~化粧料Pの評価サンプルについて下記(1)~(14)の14評価項目(評価項目の内容は前記参照。)を、図1に示した基準(一般の絵の具を3点とした場合)で評価した。結果を表12に示す(化粧料Aについては、希釈剤1及び希釈剤2を使用した場合の結果も参考として載せた。)。
【0143】
(評価項目)
(1)(紙への)伸び広がり
(2)(紙への)乗りの良さ
(3)速乾性
(4)発色
(5)透明感
(6)(紙への)重ね塗り
(7)乾燥後の剥離性
(8)(紙上でできた)膜の滑らかさ
(9)二次付着性
(10)(紙上でできた)膜の定着性
(11)香り
(12)調色
(13)水への溶解性
(14)固形化後の水での溶解性
【0144】
(結果)
【表12】
【0145】
表12に示すように、評価した化粧料については、一部の化粧料について(4)発色及び(9)二次付着性について「△」の評価となるものが見られたものの((1)(紙への)伸び広がり、(6)(紙への)重ね塗り、(8)(紙上でできた)膜の滑らかさ、(10)(紙上でできた)膜の定着性が「△」であり、(9)「二次付着性」に「×」があった化粧料Nについては後記する。)、全体的に概ね良好な評価結果であり、これにより、本化粧料絵の具は、一般水彩絵の具と大差のない特性を有していると判断できる。
【0146】
なお、(1)~(14)の項目は、絵の具としての必須の特性というわけではなく、一般の絵の具に対して相対的に優れる点及び劣る点を確認したに過ぎず、(4)発色や(9)二次付着性等の項目も含め、これらの項目の評価結果が一般の絵の具に対して劣るからといって、絵の具として適用できないというわけではない。
【0147】
ここで、(4)発色において、今回絵の具化して評価した化粧料(化粧料絵の具)は、市販される一般の水彩絵の具(一般の絵の具)と比較して若干劣る結果のものがいくつかあるが、これは、人の肌への塗抹目的で製造された粉末状化粧料自体に配合されている顔料の含有量が一般の絵の具よりも低い場合があるためである。
【0148】
しかしながら、(3)速乾性及び(5)透明感について、化粧料絵の具により仕上がった描写跡の膜には化粧料絵の具独特の透明感があり、パネラーのコメントを総合すると一般の絵の具にはない化粧料絵の具独特のタッチ感があって好ましい印象を持っているということであった。以上より、発色において若干の劣りはあるものの、絵の具として捉えられる程度であり、また、発色の代わりに透明感のあるタッチで独自の描写感を演出できると考える。
【0149】
また、(9)二次付着性において、一般の絵の具よりも若干劣るものもあった。これは、化粧料に配合されている体質粉体等の粉体が、ほぼ顔料級粒径の粉体で構成された一般の絵の具と比較して比較的大きいことに起因すると考えられる。
【0150】
これは、画用紙表面の凹凸に染み込むように入り込んでいく一般の絵の具とは異なり、化粧料絵の具の中に含まれる大きな粉体は紙表面の凹凸に入り込むことができず、画用紙の表面に付着し膜成分によって固着している状態であると予想される。これにより、物理的摩擦力で絡めとられやすく、二次付着性が低下すると考えられる。
【0151】
加えて、前記したように(3)速乾性及び(5)透明感において一般の絵の具よりも良好な評価であり、透明感があることで淡いタッチで繊細なデザインを表現することができるというメリットや、アクリル絵の具の様な速乾性があることで描きやすく、乾燥までの時間を待たずして描写を継続できるメリットを有していることも確認できた。
【0152】
さらには、(11)香り、においても、一般の絵の具よりも概ね良好な評価であった。これは、化粧料には無賦香と賦香の製品があるが、希釈剤そのものに水彩絵の具独特の匂いは無く、更には、賦香された化粧料により形成される化粧料絵の具には、化粧料由来の香りが付与されており、不快感を与えない化粧料ならではの良好な香りがあるというメリットも確認できた。
【0153】
なお、パール粉体が全成分のうち1番含有量が多い化粧料Nは、(1)(紙への)伸び広がり、(6)(紙への)重ね塗り、(8)(紙上でできた)膜の滑らかさ、(10)(紙上でできた)膜の定着性、の各項目において比較的点数が低く、(9)二次付着性についても平均点が1点と、点数が低かった。
【0154】
この結果は、大粒径のパール粉体が、化粧料を構成する成分のうち1番多く含有されていることに起因する筆先への粉体の引っ掛かりが原因であると考えられる。筆先が紙へ触れた時に筆先の外表面についた大きな粉体が紙へ付着し、伸び広げていく初期段階で大きな粉体が筆毛先間に詰まり、それにからめとられるように小さな粉体も毛先に詰まるようになる。
【0155】
その後、液状成分のみが画用紙へ吸われるように伸び広がっていき、筆先の液状成分の流動性も落ちているため、伸び広がりが低下したように感じると考えられる。以上より、画用紙の上へと伸び広げた描写跡には粉体の局在性に偏りがみられ、(6)(紙への)重ね塗りが困難となり、乾燥後の描写跡の膜の凹凸も生じると考える。その結果、(8)(紙上でできた)膜の滑らかさにも影響し、乾燥後の描写跡の局在した紛体のダマにより、(9)二次付着性が低下し、(10)(紙上でできた)膜の定着性も落ちてしまうと考えられる。
【0156】
なお、一般の絵の具は、通常、パレットに絵の具を出した後、乾燥させ、固形化させて使用するものである。このように一般の絵の具と同じような使用方法を化粧料絵の具においても可能かどうかを検証するため、(7)乾燥後の剥離性及び(14)固形化後の水での溶解性の評価を行った。その結果、表12に示すように、一般の絵の具と同等程度であり、パレットからの剥がれ落ちや水への難溶性は確認されず、同等のレベルで使用することが可能であると確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、廃棄対象となる化粧料を絵の具材料ないしは絵の具として適用する手段として有利に利用することができ、産業上の利用可能性は高い。
図1