IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デザインアンドイノベーション株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層パネル材 図1
  • 特許-積層パネル材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】積層パネル材
(51)【国際特許分類】
   B32B 21/00 20060101AFI20220308BHJP
   B32B 25/18 20060101ALI20220308BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B32B21/00
B32B25/18
E04B1/86 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021123386
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2021-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519350384
【氏名又は名称】デザインアンドイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明男
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-098351(JP,A)
【文献】実開昭58-075177(JP,U)
【文献】特開2017-042965(JP,A)
【文献】特開2018-187939(JP,A)
【文献】特表2010-517864(JP,A)
【文献】特開平11-148185(JP,A)
【文献】特開2000-352146(JP,A)
【文献】特開2008-247028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04B 1/00-9/36
E04C 1/00-5/20
B60R 13/00-13/10
B62D 25/00-25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
450MPa以上の引張強度を有する高強度シート材と450MPa未満の引張強度を有する低強度シート材を組み合わせて積層してパネル材とした積層パネル材であって、
最外層または前記最外層と接する内側の層に前記高強度シート材として少なくとも一部に炭素繊維強化プラスチックが配置され、
積層した各層を接着する層間接着剤にブチルゴムを含有するブチルゴム系粘着剤または弾性接着剤が用いられ
前記低強度シート材は、木質系板材であること
を特徴とする積層パネル材。
【請求項2】
40GPa以上のヤング率を有する高剛性シート材と40GPa未満のヤング率を有する低弾性率シート材を組み合わせて積層してパネル材とした積層パネル材であって、
最外層または前記最外層と接する内側の層に前記高剛性シート材として少なくとも一部に炭素繊維強化プラスチックが配置され、積層した各層を接着する層間接着剤にブチルゴム系粘着剤または弾性接着剤が用いられ
前記低強度シート材は、木質系板材であること
を特徴とする積層パネル材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度の素材と安価で軽量な低強度の素材を積層してパネル状のパネル材とした積層パネル材に関し、詳しくは、防振性、防音性や振動減衰性を付与した積層パネル材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)などの比較的高価だが軽量で高強度、高剛性の素材が開発され、発泡樹脂や木材などの安価で軽量の素材に高強度の素材を組み合わせて積層した様々な用途の積層パネルが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、板状の樹脂発泡体5などの芯材の両面に金属シート4を接着し、その長辺の縁沿いにCFRPからなる補強層3を接着した積層パネル1が開示されている(特許文献1の明細書の段落[0061]~[0064]、図面の図1図2等参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の積層パネル1は、軽量、高剛性、安価で、かつ放熱性、耐熱寸法安定性に優れたとされ、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品、フラットパネルディスプレイなどの種々の電気・電子機器の筐体用パネルに用いることができるとされている。
【0005】
また、このような特許文献1に記載の積層パネル1は、種々の筐体や床材、壁材などの用途に応じた所定の強度を有する構造用パネルとして用いる。このため、樹脂発泡体5と金属シート4、金属シート4とCFRPからなる補強層3とを接着する接着剤は、一般的に、硬化した時の接着強度(引張せん断接着強度)の高い、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤が使用されている(特許文献1の明細書の段落[0032],[0054]等参照)。
【0006】
このため、積層パネルに防振性、防音性、または振動減衰性を付与するためには、支持フレームや支持材と縁を切り、別途、ゴム弾性体からなるゴム材を貼着(接着)することで対処している。しかし、そうすると、ゴム材の分だけ重さや厚みが増え、接着手間が増えるだけでなく、せっかく極限まで積層パネルを軽量化したり厚さを薄くしたりしたことが台無しになってしまうという問題がある。
【0007】
一方、ブチルゴムは、ポリマー自体に自己粘着性を有し、反発力が非常に小さく、衝撃を吸収できる非常に高い衝撃エネルギー吸収性を有していることが知られており、振動減衰効果が高く、防振(振動防止)や免振・制振に活用されている。
【0008】
例えば、特許文献2には、拘束層としての床下パネル(3)と、被拘束層としての減衰層(2)とが設けられており、該減衰層(2)が、床下パネル(3)よりも小さな弾性係数を有しており、振動ダンパが車両底板(1)に固定された時に前記減衰層(2)が車両底板(1)と床下パネル(3)との間に配置されるようになっている車両底板(1)に使用するための振動ダンパが開示されている。また、減衰層(2)の材料としてブチルゴム、ブチルゴム箔が例示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1,14,20、明細書の段落[0035],[0036],[0040]、図面の図2図5図7等参照)。
【0009】
しかし、特許文献2に記載の振動ダンパは、減衰層(2)の材料としてブチルゴムが念頭に置かれているものの、層間の結合は締結具で結合するものであり、高強度の素材と安価で軽量な低強度の素材を積層した構造用積層パネルの層間の接着剤にブチルゴムを使用するという着想はなく、車両の底板を兼用する振動ダンパの用途にとどまっていた。例えば、特許文献2には、減衰層を車両底板に固定するために、接着剤を設けるべきことが記載されている(特許文献2の明細書の段落[0010],[0011],[0038]、図面の図5参照)。
【0010】
接着剤自体に防振性を付与するとの着想に至っていないのは、前述のように、所定の強度が求められる構造用パネルに積層パネルを採用した場合、その層間の接着剤は、硬化した時の接着強度(引張せん断接着強度)が高いものでないと、高強度の素材を用いても積層パネル材全体のせん断剛性(せん断弾性率)が低下してしまうと考えられていたからと推測される。
【0011】
しかし、本願発明者は、CFRPなどの高強度素材は、目付量を増加するなど、比較的簡単に強度調整が可能であり、積層パネル材全体のせん断剛性(せん断弾性係数)が低下しても他の素材の組み合わせ等により、この問題を解決できることを見出し、接着剤に衝撃吸収性能や振動減衰効果の高い自己粘着性を有するゴム状の弾性体材料を採用することを想到するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2012-240302号公報
【文献】特開2010-517864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、接着剤に衝撃吸収性能の高い自己粘着性を有するゴム状の弾性体材料を用いることにより重さや厚さを大きく変更しなくてもパネル材自体に防振性、防音性や振動減衰性を付与した積層パネル材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係る積層パネル材は、450MPa以上の引張強度を有する高強度シート材と450MPa未満の引張強度を有する低強度シート材を組み合わせて積層してパネル材とした積層パネル材であって、最外層または前記最外層と接する内側の層に前記高強度シート材して少なくとも一部に炭素繊維強化プラスチックが配置され、積層した各層を接着する層間接着剤にブチルゴムを含有するブチルゴム系粘着剤または弾性接着剤が用いられ、前記低強度シート材は、木質系板材であることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る積層パネル材は、40GPa以上のヤング率を有する高剛性シート材と40GPa未満のヤング率を有する低弾性率シート材を組み合わせて積層してパネル材とした積層パネル材であって、最外層または前記最外層と接する内側の層に前記高剛性シート材として少なくとも一部に炭素繊維強化プラスチックが配置され、積層した各層を接着する層間接着剤にブチルゴムを含有するブチルゴム系粘着剤または弾性接着剤が用いられ、前記低強度シート材は、木質系板材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1発明発明によれば、最外層または最外層と接する内側の層に高強度シート材または高剛性シート材が配置されているので、積層パネル材を軽量としつつ断面性能を向上させることができるとともに、接着剤に衝撃吸収性能の高い材料を用いることにより重さや厚さを大きく変更しなくてもパネル材自体に防振性、防音性および振動減衰性を付与することができる。このため、積層パネル材を薄くしても振動が速やかに収束し、振動による不快感やビビり音などの騒音問題も解消することができる。
また、第1発明発明によれば、層間接着剤にブチルゴム系粘着剤または弾性接着剤を用いるので、ブチルゴムの極めて高い振動減衰効果や弾性接着剤の振動減衰効果により積層パネル材の振動を速やかに収束させることができ、振動による起因する騒音問題や振動が続くことによる不快感や機器の誤作動などの不具合を解消することができる。
その上、第1発明発明によれば、高強度シート材の少なくとも一部に炭素繊維強化プラスチックを用いるので、FRPの軽量、高強度、高剛性の性能を発揮して構造用積層パネル材を軽量で薄くすることができるとともに、薄く軽量としても振動による起因する不具合を解消することができる。
さらに、第1発明、第2発明によれば、低強度シート材が、木質系板材であるので、積層パネル材自体の断面性能を維持しつつ安価で軽量とすることができる。
【0021】
特に、第3および第4発明によれば、層間接着剤にブチルゴム系粘着剤または弾性接着剤を用いるので、ブチルゴムの極めて高い振動減衰効果や弾性接着剤の振動減衰効果により積層パネル材の振動を速やかに収束させることができ、振動による起因する騒音問題や振動が続くことによる不快感や機器の誤作動などの不具合を解消することができる。
【0022】
特に、第5発明によれば、高強度シート材の少なくとも一部に炭素繊維強化プラスチックを用いるので、FRPの軽量、高強度、高剛性の性能を発揮して積層パネル材を軽量で薄くすることができるとともに、薄く軽量としても振動による起因する不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る積層パネル材を示す模式断面図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る積層パネル材を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る積層パネル材について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
[第1実施形態]
先ず、図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る積層パネル材1について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る積層パネル材1を示す模式断面図である。なお、図中のXは、積層パネル材1の長手方向Xを示し、Yは、積層パネル材1の短手方向Yを示し、Zは、上下方向Zを示している。
【0027】
第1実施形態に係る積層パネル材1は、高強度シート材2と低強度シート材3を組み合わせて積層して、種々の用途に応じた所定の設計強度を有する平面視矩形状のパネル材とした構造用積層パネル材である。図1に示すように、この積層パネル材1は、低強度シート材3の表裏両面に層間接着剤4で高強度シート材2を接着して積層したものである。
【0028】
(高強度シート材)
高強度シート材2は、補強繊維を熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂で含侵硬化させてシート状とした繊維強化プラスチック(FRP: Fiber Reinforced Plastics)や金属シートなどの引張強度が450MPa以上となっている高強度の素材からなるシート状の部材である。450MPa以上としたのは、汎用鋼材である一般構造用圧延鋼材の強度を基準としたものである。また、高強度シート材2の引張強度の上限値としては、入手の容易なものを考慮すると後述の炭素繊維強化プラスチックの3300MPaと考えられる。
【0029】
補強繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維、などがあげられる。特に、補強繊維をカーボン繊維とした炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、引張強度が700~3300MPaと非常に強度の幅が広くて高強度であり、且つ、剛性率(引張弾性率)が55~450GPaと高剛性であり、軽量であるため好ましい。
【0030】
また、炭素繊維強化プラスチックは、炭素繊維シートの厚さや目付量の設定や変更を容易に行うことができ、比較的簡単に強度調整が可能である。このため、炭素繊維強化プラスチックは、接着剤変更に伴う接着強度低下に起因する積層パネル材1全体のせん断剛性(せん断弾性係数)の低下を補うことができる点で利点がある。
【0031】
図1に示すように、第1実施形態に係る積層パネル材1は、低強度シート材3の表裏両面に、最外層となる高強度シート材2が配置されて接着されている。ここで、積層パネル材1に曲げ応力が作用した場合、部材断面の端部に生じる縁応力が最大となる。このため、最外層となる低強度シート材3の表裏両面に引張強度の高い高強度シート材2が配置されていることで、この縁応力に効果的に対抗することができ、積層パネル材1の断面性能(断面積、断面二次モーメント、断面係数、断面二次半径などの断面に関する性能)が向上するからである。
【0032】
但し、本発明に係る積層パネル材は、高強度シート材2の外側にさらに化粧用シートなどの被覆層を設けてもよい。最外層に被覆層を設けることにより、積層パネル材1と同様の強度や剛性を確保しつつ見栄えを良くして、防傷性や耐久性を向上させることができるからである。要するに、本発明に係る積層パネル材は、最外層または最外層と接する内側の層に高強度シート材2や後述の高剛性シート材が設けられていればよい。
【0033】
また、高強度シート材2は、40GPa以上のヤング率(引張弾性率)を有する高剛性シート材としても構わない。高剛性シート材は、高強度シート材2と同様に積層パネル材とした際に種々の用途に応じた所定の設計強度や断面性能を発揮することができるからである。また、40GPaを基準としたのは、入手容易な汎用金属のマグネシウム合金のヤング率を基準としたものである。また、高剛性シート材のヤング率の上限値としては、入手の容易なものを考慮すると前述の炭素繊維強化プラスチックの450GPaと考えられる。
【0034】
(低強度シート材)
低強度シート材3は、安価で軽量な板状の部材であり、高強度シート材2と比べて低強度、即ち、引張強度が450MPa未満の部材である。なお、低強度シート材3の引張強度の下限値は、後述の樹脂発泡体程度のMPa(例えば、3MPa)以上と考えられる。具体的には、低強度シート材3は、木質系板材、樹脂プレート、樹脂発泡体、ハニカム構造体など、が好適に用いられる。汎用部材であり、安価でいつでも入手できるとともに積層パネル材1全体を軽量とすることができるからである。
【0035】
ここで、木質系板材とは、原料の木材を大小のエレメント(構成要素)に分解し、再構成した木質系材料からなる板材であり、具体的には、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、ファイバーボードなどが挙げられる。
【0036】
樹脂プレートは、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリイミドなどの汎用樹脂からなる板状の部材である。
【0037】
樹脂発泡体は、樹脂を発泡させて発泡状(フォーム状)や多孔質形状として容積を大きくし、かさ比重を低下させた発泡プラスチックである。具体的には、樹脂発泡体は、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、EVA架橋発泡体、PET樹脂発泡体、フェノールフォームなどが挙げられる。
【0038】
ハニカム構造体は、軽量な素材から三角形・四角形・六角形などの平面視で同一図形の仕切で平面充填されたハチの巣状の構造体である。ハニカム構造体は、空間を多くとることで軽量化できるとともに、ハニカム構造で面圧縮に対抗できるため、積層パネル材1全体の曲げ剛性をあまり低下させることがない。
【0039】
なお、低強度シート材3も、40GPa未満のヤング率(引張弾性率)を有する低剛性シート材としても構わない。複数層積層した積層シート材が全体として用途に応じた所定の設計強度や断面性能を有するパネル材であればよいからである。
【0040】
(層間接着剤)
層間接着剤4は、図1に示すように、高強度シート材2と低強度シート材3とを接着する自己粘着性を有するゴム材を含有する接着剤である。勿論、同種または異種の高強度シート材2同士、同種または異種の低強度シート材3同士などの積層パネル材1の層間に介装されて接着するのに用いられてもよいことは云うまでもない。
【0041】
また、層間接着剤4は、ブチルゴムを含有するブチルゴム系粘着剤が好適である。ブチルゴムは、従来のエポキシ系接着剤やアクリル系接着剤よりは接着力や硬化時の接着強度(引張せん断接着強度)は低下する。しかし、一方、ブチルゴムは、天然ゴムと同等にポリマー自体に自己粘着性があり、振動減衰効果が高く衝撃吸収性が良好であり、積層パネル材自体に防振性、防音性、および振動減衰性を付与することができるという利点がある。なお、自己粘着性を有するゴム材としては、ブチルゴムの他、プロロプレンゴムを挙げることができる。
【0042】
同様に、層間接着剤4は、シリコーン系・変成シリコーン系またはポリオロールとポリイソジンアネート硬化剤で構成されるウレタン系など、からなり、硬化後も約-40℃~80℃の温度帯でせん断弾性率の変化がなだらかなゴム状弾性領域有し、ゴム状弾性を示す弾性接着剤としても構わない。弾性接着剤も、ブチルゴム系粘着剤と同様に、振動減衰効果が高く衝撃吸収性が良好だからである。
【0043】
なお、当然ながら、積層パネル材1は、特許文献2に記載の振動ダンパと相違して、高強度シート材2と低強度シート材3との接着に、締結具で結合して補う必要はなく、層間接着剤4の接着力だけで足りる。
【0044】
以上説明した第1実施形態に係る積層パネル材1によれば、最外層に高強度シート材2が配置されているので、積層パネル材1を軽量としつつ断面性能を向上させることができる。また、層間接着剤4に衝撃吸収性能の高い材料を用いることにより重さや厚さを大きく変更しなくても積層パネル材1自体に防振性、防音性、および振動減衰性を付与することができる。このため、積層パネル材1を薄くしても振動が速やかに収束し、振動による不快感やビビり音などの騒音問題も解消することができる。
【0045】
また、積層パネル材1によれば、層間接着剤4にブチルゴム系粘着剤を用いるので、ブチルゴムの極めて高い振動減衰効果で振動を速やかに収束させることができ、振動による起因する騒音問題や振動が続くことによる不快感や機器の誤作動などの不具合を解消することができる。
【0046】
さらに、積層パネル材1によれば、高強度シート材2に炭素繊維強化プラスチックを用いることにより、炭素繊維強化プラスチックの軽量、高強度、高剛性の性能を発揮して積層パネル材1を軽量で薄くすることができる。その上、積層パネル材1薄く軽量としてもブチルゴム系粘着剤からなる層間接着剤4を介装するので、振動に起因する不具合を解消することができる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、図2を用いて、本発明の第2実施形態に係る積層パネル材1’について説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る積層パネル材1’を示す模式断面図である。なお、図中のXは、積層パネル材1の長手方向Xを示し、Yは、積層パネル材1の短手方向Yを示し、Zは、上下方向Zを示している。第2実施形態に係る積層パネル材1’が、前述の第1実施形態に係る積層パネル材1と相違する点は、高強度シート材2と低強度シート材3の層数と層間接着剤の層数の違いであり、同一構成は同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0048】
第2実施形態に係る積層パネル材1’は、図2に示すように、3層の低強度シート材3と、それらの間に介装される2層の高強度シート材2と、3層の低強度シート材3の表裏外側に配置された2層の高強度シート材2と、それらの間を接着する6層の層間接着剤4など、から構成されている。
【0049】
また、最外層の2層の高強度シート材2と、低強度シート材3の間に介装される2層の高強度シート材2とは、種類が相違する。例えば、最外層の2層の高強度シート材2は、炭素繊維強化プラスチック2aであり、低強度シート材3の間に介装される2層の高強度シート材2は、厚さ3mm以下の薄鋼板2bである。
【0050】
このように、第2実施形態に係る積層パネル材1’も積層パネル材1と同様に、少なくとも、最外層または被覆層を最外層としてその内側の層には、高強度シート材2(炭素繊維強化プラスチック2a)が配置されている。積層パネル材1と同様に、積層パネル材1’の断面性能が向上するからである。
【0051】
勿論、高強度シート材2および低強度シート材3は、前述の高剛性シート材および低剛性シート材としても構わない。複数層積層した積層シート材が全体として用途に応じた所定の設計強度を有するパネル材であればよいからである。
【0052】
以上説明した第2実施形態に係る積層パネル材1’によれば、前記作用効果に加え、積層パネル材1’の積層数が増えるために、接着剤変更に伴う接着強度低下に起因する積層パネル材1全体のせん断剛性(せん断弾性係数)の低下を補い易くなる。
【0053】
また、積層パネル材1’によれば、繊維方向に強くこれと直交する方向に力の弱い異方性を有し、強度の高い炭素繊維強化プラスチック2aを最外層または最外層と接する内側の層に配置するとともに、それより内側に等方性を有してせん断力に対抗できる金属シートである薄鋼板2bを配置することにより、接着強度低下に起因する積層パネル材1全体のせん断剛性の低下を補うことができる。
【0054】
このように、本実施形態に係る積層パネル材1’は、パネル材の設計段階で従来の接着剤と比べて層間接着剤4の接着強度の低下を見込み、他の複数層の高強度シート材2のせん断剛性等の強度を上げて補うことで、積層パネル材1’自体に防振性、防音性、および振動減衰性を付与することができる。また、防振性を付与する際に、積層パネル材1’自体の重さや厚さを大きく変更する必要もない。
【0055】
以上、本発明の実施形態に係る積層パネル材1,1’について詳細に説明した。しかし、前述したまたは図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、例示した実施形態によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0056】
1,1’:積層パネル材
2:高強度シート材
2a:炭素繊維強化プラスチック(繊維強化プラスチック)
2b:薄鋼板(金属シート)
3:低強度シート材
4:層間接着剤
【要約】
【課題】接着剤に衝撃吸収性能の高い自己粘着性を有するゴム状の弾性体材料を用いることにより重さや厚さを大きく変更しなくてもパネル材自体に防振性、防音性、および振動減衰性を付与した積層パネル材を提供する。
【解決手段】450MPa以上の引張強度を有する高強度シート材2と450MPa未満の引張強度を有する低強度シート材3を組み合わせて積層してパネル材とした積層パネル材1において、最外層または最外層の内側の層に高強度シート材2を配置し、積層した各層を接着する層間接着剤4に自己粘着性を有するゴム状の弾性体材料を含有させる。
【選択図】図1
図1
図2