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7036502光学部材用樹脂の製造方法、光学部材用樹脂、眼鏡レンズ及び眼鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】光学部材用樹脂の製造方法、光学部材用樹脂、眼鏡レンズ及び眼鏡
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20220308BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220308BHJP
   C08G 18/74 20060101ALI20220308BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220308BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C08G18/38 076
C08G18/08 038
C08G18/74
G02B1/04
G02C7/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017192163
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019065184
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2019-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100149250
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】上坂 昌久
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508207(JP,A)
【文献】特表2015-533874(JP,A)
【文献】特開2001-131420(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209104(WO,A1)
【文献】特開平11-231102(JP,A)
【文献】特開2006-235587(JP,A)
【文献】特開2012-181268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-301/00
C08G 2/00- 85/00
C08L 1/00- 99/00
G02B 1/04
G02C 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリチオール成分、ポリイソシアナート成分、及び紫外線吸収剤を含有する重合性組成物を重合する工程を含む、光学部材用樹脂の製造方法であって、
前記紫外線吸収剤は、その10質量%濃度のトルエン溶液において、ハーゼン色数(APHA)が、40以下であり、
前記紫外線吸収剤が、式(1):
【化1】

(式中、R は炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数1以上12以下のアルコキシ基であり、mは0~2の整数である。mが1又は2の場合、複数のR は、同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物を含む、光学部材用樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(2-ヒドロキシ-4-エチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤の含有量が、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリイソシアナート成分が、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートからなる群より選ばれる少なくとも1種類の化合物を含む、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリチオール化合物が、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4,8-ビス(メルカプトメチル)-1,3-ジチアン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール及び5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ポリチオール成分、ポリイソシアナート成分、及び紫外線吸収剤を含有する重合性組成物を重合して得られる光学部材用樹脂であって、
前記紫外線吸収剤は、その10質量%濃度のトルエン溶液において、ハーゼン色数(APHA)が、40以下であり、
前記紫外線吸収剤が、式(1):
【化2】

(式中、R は炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数1以上12以下のアルコキシ基であり、mは0~2の整数である。mが1又は2の場合、複数のR は、同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物を含む、光学部材用樹脂。
【請求項7】
請求項に記載の光学部材用樹脂からなる光学部材。
【請求項8】
請求項6に記載の光学部材用樹脂又は請求項7に記載の光学部材からなるレンズ基材を備える眼鏡レンズ。
【請求項9】
前記眼鏡レンズは、400~700nmの波長域における光線透過率が70%以上である、請求項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項10】
前記眼鏡レンズは、380nmの波長域における光線カット率が40%以上である、請求項又はに記載の眼鏡レンズ。
【請求項11】
請求項10のいずれか1項に記載の眼鏡レンズを備える眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡用レンズ等に用いられる、光学部材用樹脂の製造方法、光学部材用樹脂、眼鏡レンズ及び眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のレンズは、無機ガラス等の無機材料からなるレンズに比べて軽量で割れ難く、染色が可能であるという利点を有する。このため、現在、眼鏡レンズやカメラレンズ等の光学部材として、樹脂製のレンズが用いられることが主流となっている。
【0003】
特許文献1では、主としてウレタン樹脂材料を含む樹脂材料と、クロロホルム溶液中における極大吸収波長が345nm以上である紫外線吸収剤とを含有するプラスチックレンズ用組成物を用いて形成されることを特徴とするプラスチックレンズが記載されている。
当該プラスチックレンズによれば、紫外線吸収剤の影響によるレンズの黄色化、屈折率の変化等がなく、さらにレンズの機械的強度が低下しないと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-295502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプラスチックレンズによっても、製造ロットによって、わずかな変化ではあるが、黄色化を表すYI値を測定すると、同一の紫外線吸収剤を使用していたとしても、そのYI値にばらつきが生じることが明らかとなった。光学材料用樹脂の黄色化は劣化を想起させるため、顧客から嫌がられることから、紫外線吸収剤を添加したとしても、YI値が低く抑えられることが求められる。
そこで本開示の一実施形態は、紫外線吸収剤の添加による黄色化が抑制される、光学部材用樹脂の製造方法、光学部材用樹脂、眼鏡レンズ及び眼鏡に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、光学部材用樹脂の製造において、添加される紫外線吸収剤が、固体状態でその色調に違いがみられなくとも、当該紫外線吸収剤を溶液状態として、更に、比較的長い光路長で観察すると、同一の化合物であっても、その紫外線吸収剤毎に色味に違いが生じていることを知見した。当該紫外線吸収剤を特定の範囲のハーゼン色数(APHA)とすることで、紫外線吸収剤の添加による光学部材の黄色化が抑制されることを見出した。紫外線吸収剤は、光学部材に添加する量は光学部材全体からすれば数パーセントにすぎず、更に、わずか数ミリから数十ミリメータの厚みの光学部材において、上述の紫外線吸収剤の僅かな色調の変化に基づいて、光学部材の黄色化に影響が生じるとは予想できなかった。
【0007】
本開示の一実施形態は、
ポリチオール成分、ポリイソシアナート成分、及び紫外線吸収剤を含有する重合性組成物を重合する光学部材用樹脂の製造方法であって、
前記紫外線吸収剤は、その10質量%濃度のトルエン溶液において、ハーゼン色数(APHA)が、40以下である、光学部材用樹脂の製造方法に関する。
【0008】
また、本開示の一実施形態は、上述の製造方法により得られる光学部材用樹脂、当該光学部材用樹脂からなる光学部材、当該光学部材用樹脂からなるレンズ基材を備える眼鏡レンズ、及び当該眼鏡レンズを備える眼鏡に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、紫外線吸収剤の添加による黄色化が抑制される、光学部材用樹脂の製造方法、光学部材用樹脂、眼鏡レンズ及び眼鏡を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光学部材用樹脂の製造方法]
本開示の一実施形態に係る光学部材用樹脂の製造方法では、ポリチオール成分、ポリイソシアナート成分、及び紫外線吸収剤を含有する重合性組成物を重合する工程を含む。
そして、紫外線吸収剤は、その10質量%濃度のトルエン溶液において、ハーゼン色数(APHA)が、40以下である。
以上の構成により、得られる光学部材について、紫外線吸収剤の添加による黄色化が抑制される。
【0011】
本開示の一実施形態に係る光学部材用樹脂の製造方法は、例えば、
ポリチオール成分と、ポリイソシアナート成分と、紫外線吸収剤とを混合し、重合性組成物を得る工程(以下、「混合工程」ともいう)、
重合性組成物を脱気する工程(以下、「脱気工程」ともいう)、
重合性組成物を成形型内に注入する工程(以下、「注入工程」ともいう)、及び
重合性組成物を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)
を含む。
【0012】
(紫外線吸収剤)
一実施形態に係る製造方法において、紫外線吸収剤は、得られる光学部材の黄色化を抑制する観点から、その10質量%濃度のトルエン溶液において、ハーゼン色数(APHA)(以下、単に「ハーゼン色数(APHA)」ともいう)が、40以下である。
紫外線吸収剤のハーゼン色数(APHA)は、得られる光学部材の黄色化を抑制する観点から、好ましくは38以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは33以下である。
また紫外線吸収剤のハーゼン色数(APHA)は、好ましくは1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは25以上である。
紫外線吸収剤のハーゼン色数(APHA)の測定方法は、実施例に記載の方法による。
紫外線吸収剤のハーゼン色数(APHA)を調整する方法としては、例えば、有機溶媒中での再結晶等の精製方法が挙げられ、当該精製方法を繰り返し行うことで、より低いハーゼン色数(APHA)を示す紫外線吸収剤が得られる。
【0013】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ジベンゾイルメタン系化合物等が挙げられる。これらの中でもベンゾトリアゾール系化合物、又はベンゾフェノン系化合物が好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-エチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。なお、2-(2-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールは、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールが好ましい。
なお、tert-オクチル基は、1,1,3,3-テトラメチルブチル基を意味する。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メチルオキシベンゾフェノン-5-スルホニックアシッド、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メチルオキシベンゾフェノンが挙げられる。
ジベンゾイルメタン系化合物としては、例えば、4-tert-ブチル-4’-メチルオキシジベンゾイルメタンが挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0014】
これらの紫外線吸収剤の中でも、本願発明の効果をより顕著に得る観点から、好ましくは、式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数1以上12以下のアルコキシ基であり、mは0~2の整数である。mが1又は2の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物である。
【0015】
は、炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数1以上12以下のアルコキシ基を表し、アルキル基及びアルコキシ基のそれぞれについて、炭素数1以上8以下が好ましく、炭素数2以上8以下がより好ましく、炭素数4以上8以下がさらに好ましい。
アルキル基及びアルコキシ基は、分岐であっても直鎖であってもよい。アルキル基及びアルコキシ基の中でも、アルキル基が好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、へプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基が挙げられる。
これらの中でもエチルオキシ基、又はオクチルオキシ基が好ましい。
オクチルオキシ基である場合、1,1,3,3-テトラメチルブチル基が好ましい。
の置換位置は、ベンゾトリアゾリル基の置換位置を基準として、3位,4位又は5位が好ましく、4位がより好ましい。
mは好ましくは1である。
上述の化合物の中でも、本願発明の効果をより顕著に得る観点から、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(2-ヒドロキシ-4-エチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0016】
紫外線吸収剤の添加量は、本願発明の効果をより顕著に得る観点から、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.4質量部以上であり、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.2質量部以下である。
【0017】
<混合工程>
混合工程では、ポリチオール成分とポリイソシアナート成分と紫外線吸収剤との混合順序はいかなる順序であってもよいが、光学部材の透明性をより高める観点から、ポリイソシアナート成分と紫外線吸収剤を混合し(i)、その後、これらとポリチオール成分を混合する(ii)ことが好ましい。
(i)では、ポリイソシアナート成分は、一般的に粘度が低く、溶解性が良好であるため、紫外線吸収剤が溶解しやすい。(i)では、溶解時間を短縮するため、ポリイソシアナート成分全量に対して、紫外線吸収剤の全量を添加し、溶解させることが好ましい。
【0018】
〔重合性組成物〕
混合工程において得る重合性組成物は、ポリチオール成分、ポリイソシアナート成分、及び添加剤を含有する。以下、各成分について説明する。
【0019】
(ポリチオール成分)
ポリチオール成分としては、例えば、ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物、脂環構造を有するポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物が挙げられる。
【0020】
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物において、ポリオール化合物としては、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。
メルカプト基含有カルボン酸化合物としては、例えば、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸化合物、チオサリチル酸が挙げられる。
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0021】
直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物としては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメチルオキシブタン-1,2-ジチオール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトエチルチオ)エタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトエチルチオ)プロパン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、テトラキス(メルカプトエチルチオ)プロパン、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2-メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオールが挙げられる。
【0022】
脂環構造を有するポリチオール化合物としては、例えば、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、メチルシクロヘキサンジチオール、ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4,8-ビス(メルカプトメチル)-1,3-ジチアンが挙げられる。
【0023】
芳香族ポリチオール化合物としては、例えば、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、4,4’-ジメルカプトビフェニル、4,4’-ジメルカプトビベンジル、2,5-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール、2,7-ナフタレンジチオール、2,4-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、4,5-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、9,10-アントラセンジメタンチオール、1,3-ジ(p-メチルオキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、2,4-ジ(p-メルカプトフェニル)ペンタンが挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0024】
ポリチオール成分は、本願発明の効果をより顕著に得る観点から、好ましくは、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオールトリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトアセテート)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0025】
ポリチオール成分の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは43質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは53質量%以下である。
【0026】
(ポリイソシアナート成分)
ポリイソシアナート成分としては、例えば、芳香環を有するポリイソシアナート化合物、脂環式ポリイソシアナート化合物、直鎖又は分岐鎖の脂肪族ポリイソシアナート化合物が挙げられる。
【0027】
芳香環を有するポリイソシアナート化合物としては、例えば、ジイソシアナトベンゼン、2,4-ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジル-4,4’-ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、2-イソシアナトフェニル-4-イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-6-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチルオキシ-4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メチルオキシ-3-イソシアナトフェニル)ジスルフィドが挙げられる。
【0028】
脂環式ポリイソシアナート化合物としては、例えば、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、イソホロンジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-2-メチル-1,3-ジチオランが挙げられる。
【0029】
直鎖又は分岐の脂肪族ポリイソシアナート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11-ウンデカントリイソシアナート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアナート-2-イソシアナトメチル-3-ペンタン、1,2,3-トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5-ジチア-1,2,6,7-ヘプタンテトライソシアナート、2,6-ジイソシアナトメチル-3,5-ジチア-1,7-ヘプタンジイソシアナート、2,5-ジイソシアナートメチルチオフェン、4-イソシアナトエチルチオ-2,6-ジチア-1,8-オクタンジイソシアナート、1,2-ジイソチオシアナトエタン、1,6-ジイソチオシアナトヘキサンが挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0030】
ポリイソシアナート成分は、本願発明の効果をより顕著に得る観点から、好ましくは、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
ポリイソシアナート成分の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは43質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは53質量%以下である。
【0032】
ポリチオール成分とポリイソシアナート成分との好適な組み合わせとしては、例えば、
(1)1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、及び、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、
(2)1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、及び、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、
(3)2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、
(4)1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、及び、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、
が挙げられる。
【0033】
(添加剤)
添加剤は、例えば、重合触媒、離型剤、抗酸化剤、着色防止剤、蛍光増白剤が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
添加剤は、好ましくは、重合触媒、離型剤、及び紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
上記各種成分を通常の方法により混合することで、光学部材用樹脂が得られる。
【0034】
(重合触媒)
重合触媒としては、例えば、スズ化合物、含窒素化合物が挙げられる。
スズ化合物としては、例えば、アルキルスズ化合物、アルキルスズハライド化合物が挙げられる。
アルキルスズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートが挙げられる。
アルキルスズハライド化合物としては、例えば、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、モノメチルスズトリクロライド、トリメチルスズクロライド、トリブチルスズクロライド、トリブチルスズフロライド、ジメチルスズジブロマイドが挙げられる。
これらの中でも、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライドが好ましく、ジメチルスズジクロライドがより好ましい。
【0035】
含窒素化合物としては、例えば、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物が挙げられる。3級アミンは、好ましくはヒンダードアミンである。
3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリン、N,N'-ジメチルピペラジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が挙げられる。
ヒンダードアミンとしては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ヒドロキシエチル-4-ピペリジノール、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとの混合物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレートが挙げられる。
4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、ベンジルメチルイミダゾール、2-エチル-4-イミダゾールが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
これらの中でも、ヒンダードアミン等の3級アミン、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物が好ましく、より好ましくはヒンダードアミンがより好ましい。
【0036】
重合触媒の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.007質量部以上であり、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。
【0037】
(離型剤)
離型剤としては、例えば、酸性リン酸アルキルエステルが挙げられる。酸性リン酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは12以下である。
酸性リン酸エステルは、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルのいずれであってもよいが、リン酸モノエステル、及びリン酸ジエステルの混合物が好ましい。
酸性リン酸アルキルエステルとしては、例えば、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、ノニルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、トリデシルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、プロピルフェニルアシッドフォスフェート、ブチルフェニルアシッドフォスフェート、ブトキシエチルアシッドフォスフェートが挙げられる。
離型剤の添加量は、ポリチオール成分及びポリイソシアナート成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上であり、そして、好ましくは1.00質量部以下、より好ましくは0.50質量部以下、更に好ましくは0.30質量部以下である。
【0038】
<脱気工程>
混合工程で得られた重合性組成物は、好ましくは脱気する工程を有する。
脱気は、例えば、重合性組成物を減圧条件で処理することで行われる。
脱気における圧力は、好ましくは10Pa以上、より好ましくは50Pa以上、更に好ましくは100Pa以上であり、そして、好ましくは1000Pa以下、より好ましくは800Pa以下、更に好ましくは500Pa以下である。
【0039】
<注入工程>
注入工程では、例えば、得られた重合性組成物を成形型内に注入する。
光学部材として眼鏡レンズを製造する場合、例えば、眼鏡レンズの両主面を形成する1対のモールドと、これらのモールドを所定間隔で離隔させて固定するために片面に粘着層を有するテープ又はガスケットとを備える成形型が用いられる。なお上述のモールドは、ガラス・セラミック・樹脂・金属製であってもよい。
成形型への注入前に、重合組成物を濾過してもよい。濾過方法は特に限定されないが、孔径1~30μmのフィルターを用いて濾過を行ってもよい。
【0040】
<重合工程>
重合工程においては、例えば、加熱により重合性組成物を重合する。
重合条件は、重合性組成物、成形する光学部材の形状に応じて、適宜設定することができる。
重合開始温度及び時間は、通常0~50℃、好ましくは5~30℃で0.5~5.0時間である。重合開始温度から昇温し、その後、加熱して硬化形成することが好ましい。例えば、昇温後の最高温度は、通常110~130℃である。
重合終了後、光学部材を離型して、アニール処理を行ってもよい。
上述の方法により、光学部材用樹脂が得られる。
【0041】
[光学部材]
光学部材用樹脂の用途としては、例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、プリズム、光ファイバ、光ディスク若しくは磁気ディスク等に用いられる記録媒体用基板、コンピュータのディスプレイに付設する光学フィルタ等の光学部材が挙げられる。これらの中でも、眼鏡レンズが好ましい。
眼鏡レンズは、好ましくは、光学部材用樹脂からなるレンズ基材(以下、「眼鏡用レンズ基材」ともいう)を備える。
眼鏡用レンズ基材の表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等のいずれであってもよい。
眼鏡用レンズ基材は、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等のいずれであってもよい。例えば、一例として、累進屈折力レンズについては、通常、近用部領域(近用部)及び累進部領域(中間領域)が、下方領域に含まれ、遠用部領域(遠用部)が上方領域に含まれる。
眼鏡用レンズ基材は、フィニッシュ型眼鏡用レンズ基材であってもセミフィニッシュ型眼鏡用レンズ基材であってもよい。
【0042】
眼鏡用レンズ基材の直径は、特に限定されるものではないが、通常50~100mm程度である。
眼鏡用レンズ基材の幾何中心の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.8~30mm程度である。
眼鏡用レンズ基材の屈折率(ne)は、例えば、1.53以上、1.55以上、1.58以上1.60以上であり、上限は特に限定されないが、屈折率が高ければ高いほどレンズの厚さを薄くすることができる。
眼鏡用レンズ基材のアッベ数(νe)は、例えば、20以上、25以上、30以上、35以上であり、上限は特に限定されないが、高ければ高いほど色収差が少ないレンズとなる。
【0043】
眼鏡レンズは、好ましくは眼鏡用レンズ基材及びその眼鏡用レンズ基材の表面に機能層を備える。
機能層としては、例えば、ハードコート層、プライマー層、反射防止膜及び撥水膜からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
ハードコート層は、耐擦傷性向上のために設けられ、好ましくは有機ケイ素化合物、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の微粒子状無機物を含有するコーティング液を塗工して形成することができる。
プライマー層は、耐衝撃性を向上させるために設けられ、例えば、ポリウレタンを主成分とする。ここでポリウレタンの含有量は、プライマー層中、好ましくは50質量%以上である。
反射防止膜としては、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等の無機物を積層した膜が挙げられる。
撥水膜としては、フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を用いて形成することができる。
眼鏡レンズの400~700nmの波長域における光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上であり、そして、100%以下である。
眼鏡レンズの380nmの波長域における光線カット率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上であり、そして、100%以下である。
【0044】
[眼鏡]
本発明の一実施形態に係る眼鏡は、眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを取り付けたフレームとを有する。
フレームとしては、例えば、一対のリムと、当該リム間に設けられたブリッチと、当該リムの片端に設けられた一対のテンプルとを有する。
リムは、ハーフリムであってもよい。
フレームとしては、いわゆるリムレスフレームであってもよい。この場合、眼鏡は、例えば、一対の眼鏡レンズと、当該眼鏡レンズ間に設けられたブリッチと、当該眼鏡レンズの片端に設けられた一対のテンプルとを有する。
【実施例
【0045】
以下、本開示の実施形態に関して、具体的な実施例を示すが、本特許請求の範囲は、以下の実施例によって限定されるものではない。
各種数値の測定及び評価は以下の方法により行った。
【0046】
[測定方法]
<ハーゼン色数(APHA)>
紫外線吸収剤をトルエンに溶解させ、10質量%濃度のトルエン溶液を調製し、JIS K0071-1:1998の方法によりハーゼン色数(APHA)を測定した。
【0047】
<屈折率及びアッベ数>
精密屈折率計「KPR-2000型」(カルニュー光学工業株式会社製)を用いて、20℃でF’線(488.0nm)、C’線(643.9nm)及びe線(546.1nm)で、試料の屈折率を測定した。そして、下記の式からアッベ数を算出した。
アッベ数ν=(n-1)/(nF’-nC’
はe線で測定した屈折率であり、nF’はF’線で測定した屈折率であり、nC’はC’線で測定した屈折率である。
【0048】
〔透過特性〕
透過率は、分光光度計「U-4100」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。
(380nmの光のカット率)
上記透過率の測定において波長380nmの光の透過率から、以下の式を用いて380nm波長における光線カット率を算出した。
波長380nmの光のカット率=[1-波長380nmの光の透過率]×100
(400nm~700nmの波長域における光線透過率)
上記透過率の測定により、400nm~700nmの波長域における光線透過率を測定した。
【0049】
[評価方法]
<YI値>
眼鏡レンズについて、分光光度計「U-4100」(日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いて透過率分光を測定し、そのデータより標準光Cにおける3刺激値X、Y、Zを求め、下記式によりYI値を算出した。
YI値=100(1.28X-1.06Z)/Y
【0050】
[各試料の調製方法]
<紫外線吸収剤>
実施例及び比較例で使用した紫外線吸収剤は、市販品をそのまま又は再結晶を繰り返し行うことで、ハーゼン色数(APHA)を調整した。
実施例及び比較例で使用した紫外線吸収剤は以下のとおりである。
(UV-1P)
2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール「Seesorb707」(シプロ化成株式会社製)をトルエン溶液に、メタノールを加えて再結晶して精製した試料を使用した。ハーゼン色数(APHA)は30であった。
(UV-1C)
2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール「Seesorb707」(シプロ化成株式会社製)を精製せずにそのまま使用した。ハーゼン色数(APHA)は55であった。
(UV-2P)
2-(2-ヒドロキシ-4-エチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール「T-52」(大和化成工業株式会社製)をトルエン溶液にメタノールを加えて再結晶して精製した試料を使用した。ハーゼン色数(APHA)は30であった。
(UV-2C)
2-(2-ヒドロキシ-4-エチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール「T-52」(大和化成工業株式会社製)を精製せずにそのまま使用した。ハーゼン色数(APHA)は45であった。
【0051】
実施例1
(眼鏡用レンズ基材の作製)
ポリイソシアナート成分として、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン50.60質量部、重合触媒としてジメチルスズジクロライド0.012質量部、離型剤として酸性リン酸エステル「JP506H」(城北科学工業株式会社製)0.15質量部、紫外線吸収剤として、表に示すハーゼン色数(APHA)を示す、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール「Seesorb707」(シプロ化成株式会社製)0.45質量部を加えた。
各種添加剤が十分に溶解するまで撹拌した後、ポリチオール成分として、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールと4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールと5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールとの混合物を49.40質量部加えて混合し、重合性組成物を得た。重合性組成物の組成を表1に示した。
この重合性組成物を300Paにて45分間脱気を行った後、孔径5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにて濾過を行った。5mm厚のプラノレンズを形成するガラスモールドとガスケットからなる成形型へ注入した。重合性組成物が注入された成形型は10℃から120℃まで温度範囲で24時間かけてオーブンにて重合させた。
オーブンから成形型を取り出し、脱型して光学部材用樹脂からなる眼鏡用レンズ基材(幾何中心厚(CT)5mm)を得た。得られた眼鏡用レンズ基材は120℃2時間のアニール処理を行った。得られた眼鏡用レンズ基材のYI値及び透過特性を測定した。
その結果を表1に示した。
【0052】
実施例2~4,比較例1~4,参考例1~3
表1に示した種類及び量の成分としたこと以外、実施例1と同様にして、眼鏡用レンズ基材(幾何中心厚(CT)5mm)を得た。得られた眼鏡用レンズ基材のYI値及び透過特性を測定した。その結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1中の注釈及び略語は以下のとおりである。
*1 10質量%のトルエン溶液におけるハーゼン色数(APHA)
*2 各成分の使用量
〔ポリイソシアナート成分〕
A1:1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン
A2:2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物
A3:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
〔ポリチオール成分〕
B1:4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物
B2:4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン
B3:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
B4:2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン
B5:ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)
【0055】
最後に、本開示の実施の形態を総括する。
本開示の一実施の形態は、
ポリチオール成分、ポリイソシアナート成分、及び紫外線吸収剤を含有する重合性組成物を重合する工程を含む、光学部材用樹脂の製造方法であって、
前記紫外線吸収剤は、その10質量%濃度のトルエン溶液において、ハーゼン色数(APHA)が、40以下である、光学部材用樹脂の製造方法である。
上述した一実施例によれば、紫外線吸収剤の添加による黄色化が抑制される、光学部材用樹脂の製造方法等を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。