(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ガラス様層を含む複合構造物及び形成方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220308BHJP
C09J 183/10 20060101ALI20220308BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20220308BHJP
C09J 183/08 20060101ALI20220308BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220308BHJP
C08L 83/10 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B32B27/00 101
C09J183/10
C09J183/05
C09J183/08
C09J11/08
C08L83/10
(21)【出願番号】P 2018516553
(86)(22)【出願日】2016-09-27
(86)【国際出願番号】 US2016053906
(87)【国際公開番号】W WO2017058758
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-09-25
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】シャーマン,オードリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン-トンプソン,クレア
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,カレブ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ベッツォルト,ジョン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,トレントン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウォーク,マーティン ビー.
【審査官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-000636(JP,A)
【文献】特開2013-147016(JP,A)
【文献】特開2013-147018(JP,A)
【文献】特開2002-206033(JP,A)
【文献】特開2010-180367(JP,A)
【文献】特表2014-507011(JP,A)
【文献】特表2015-525249(JP,A)
【文献】特表2011-514418(JP,A)
【文献】特表2013-525572(JP,A)
【文献】特開2005-082692(JP,A)
【文献】特開平04-209633(JP,A)
【文献】特開平06-218881(JP,A)
【文献】特表2015-511332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-201/10
C08L 83/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンブロックコポリマーを含む第1の層、
前記第1の層と隣接し、前記第1の層の前記シリコーンブロックコポリマーから形成されている、移行層、
前記第1の層の反対側で前記移行層と隣接するガラス様層であって、前記ガラス様層の少なくとも一部が前記移行層から形成されている、ガラス様層、
を備え、
前記シリコーンブロックコポリマーが、シリコーンポリオキサミドコポリマー、シリコーンポリウレアコポリマー、又はこれらの組み合わせを含み、
前記第1の層が、酸素について正規化した炭素対酸素の比を有し、前記移行層が、酸素について正規化した炭素対酸素の比を有し、前記ガラス様層が、酸素について正規化した炭素対酸素の比を有し、
前記第1の層の酸素について正規化した炭素対酸素の比が、前記移行層及び前記ガラス様層の両方よりも高く、
前記移行層の酸素について正規化した炭素対酸素の比が、前記ガラス様層のものよりも高い、
複合構造物
。
【請求項2】
前記第1の層が、
【化1】
を含み、
式中、
各Rは、独立して
、
1~12個の炭素原子を有し、且つ
、トリフルオロアルキル
、若しくはビニル基、ビニルラジカル、若しくは式R
2(CH
2)
aCH=CH
2(式中、R
2は、-(CH
2)
b-又は-(CH
2)
cCH=CH-であり、aは1、2又は3であり、bは0、3又は6であり、cは3、4又は5である)によって表される高級アルケニルラジカルで置換されていてもよいアルキル部分
、
6~12個の炭素原子を有し、且つ、アルキル、フルオロアルキル、若しくはビニル基で置換されていてもよいシクロアルキル部分、又
は
6~20個の炭素原子を有し、且つ
、アルキル、シクロアルキル、フルオロアルキル、
若しくはビニル基で置換されていてもよいアリール部分であるか、あるい
は
Rは、ペルフルオロアルキル基
、フッ素含有基、又はペルフルオロエーテル含有基であり、
各Jは、6~20個の炭素原子を有するアリーレンラジカル又はアラルキレンラジカル、6~20個の炭素原子を有するアルキレン又はシクロアルキレンラジカルである多価ラジカルであり、
各Eは、独立して、1~10個の炭素原子のアルキレンラジカル、6~20個の炭素原子を有するアラルキレンラジカル又はアリーレンラジカルである多価ラジカルであり、
各Dは、水素、1~10個の炭素原子のアルキルラジカル、フェニル、及びA又はEを含む環構造を完結させて複素環を形成するラジカルからなる群から選択され、
各Aは、アルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、フェニレン、ヘテロアルキレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される多価ラジカルであり、
mは、0~1000である数であり、
qは、少なくとも1である数であり、
rは、少なくとも10である数である、請求項1に記載の複合構造物。
【請求項3】
前記第1の層が、
【化2】
を含み、
式中、
各R
2は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり、R
2基の少なくとも50パーセントはメチルであり、
各Xは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり、
Gは、式R
3HN-G-NHR
3のジアミンから、2個の-NHR
3基を除いたものに等しい残存単位である2価の基であり、
R
3は、水素若しくはアルキルであるか、又はR
3は、Gとこれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基を形成し、
nは、独立して、40~1500の整数であり、
下付きのpは、1~10の整数である、請求項1に記載の複合構造物。
【請求項4】
前記ガラス様層が、95°以下の静的水接触角を有する、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の複合構造物。
【請求項5】
前記ガラス様層が、前記接触角を少なくとも10日間実質的に維持する、請求項
4に記載の複合構造物。
【請求項6】
一次構造物、および
前記一次構造物の少なくとも一部の表面上に配置された請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の複合構造物
を備える、物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
シリコーンブロックコポリマーを含む第1の層と;第1の層と隣接する第1の表面及び反対側の第2の表面を有し、第1の層のシリコーンブロックコポリマーから形成されている、移行層と;移行層の第2の表面と隣接するガラス様層であって、ガラス様層の少なくとも一部が移行層から形成されている、ガラス様層とを含む、複合構造物が、本明細書において開示される。
【0002】
また、一次構造物、並びに一次構造物の一部の表面上に配置された複合構造物であって、シリコーンブロックコポリマーを含む第1の層と、第1の層と隣接する第1の表面及び反対側の第2の表面を有し、第1の層のシリコーンブロックコポリマーから形成されている、移行層と、移行層の第2の表面と隣接するガラス様層であって、ガラス様層の少なくとも一部が移行層から形成されている、ガラス様層とを含む、複合構造物を含む、物品も、本明細書において開示される。
【0003】
また、ガラス様層を含む構造物を形成する方法であって、シリコーンブロックコポリマーを含む前駆体状の第1の層を堆積させることと;前駆体状の第1の層をプラズマ処理して、シリコーンブロックコポリマーの少なくとも一部をガラス様層へと変換することとを含む、方法も開示される。
【0004】
これら及び様々な他の特色及び利点が、以下の詳細な説明を読むことで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示は、本開示の様々な実施形態に関する以下の発明を実施するための形態について、添付の図面と併せて検討することで、より完全に理解することができる。
【
図2】実施例からの、O
2-SiMe
4プラズマで処理したサンプルE1に関する、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)を使用して測定した炭素(C)、酸素(O)、及びケイ素(Si)の原子百分率を示す。
【
図3】実施例からの、O
2のみのプラズマで処理したサンプルE1に関する、X線光電子分光法(XPS)を使用して測定した炭素(C)、酸素(O)、及びケイ素(Si)の原子百分率を示す。
【
図4】実施例からの、O
2-SiMe
4プラズマで処理したサンプルE2に関する、X線光電子分光法(XPS)を使用して測定した炭素(C)、酸素(O)、及びケイ素(Si)の原子百分率を示す。
【
図5】実施例からの、O
2のみのプラズマで処理したサンプルE2に関する、X線光電子分光法(XPS)を使用して測定した炭素(C)、酸素(O)、及びケイ素(Si)の原子百分率を示す。
【
図6】実施例で形成された縁部シールの、倍率1500倍の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)画像を示す。
【
図7】実施例で形成された縁部シールの、倍率15,000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図8】六角構造のE3層の表面の光学顕微鏡画像を示す(構造化ライナーが取り外された後)。
【
図9】直線構造のE3層の表面の光学顕微鏡画像を示す(構造化ライナーが取り外された後)。
【
図10】O
2-SiMe
4プラズマ処理後の六角構造のE3層の表面の光学顕微鏡画像を示す。
【
図11】O
2-SiMe
4プラズマ処理後の直線構造のE3層の表面の光学顕微鏡画像を示す。
【
図12】O
2-SiMe
4プラズマ処理前の直線構造のE3層の表面のSEM画像を示す。
【
図13】O
2-SiMe
4プラズマ処理後の直線構造のE3層の表面のSEM画像を示す。
【
図14】六角構造のE3層の表面のSEM画像を示す(構造化ライナーが取り外された後)。
【
図15】O
2-SiMe
4プラズマ処理後の六角構造のE3層の表面のSEM画像を示す。
【
図16】延伸中にプラズマ処理されたE2サンプルの、倍率1500倍のSEM画像を示す。
【
図17】延伸中にプラズマ処理されたE2サンプルの、倍率5000倍のSEM画像を示す。
【
図18】マーカーで線を引いた後に処理を施さなかったE1の写真画像を示す。
【
図19】マーカーで線を引いた後にプラズマ処理を施してから11日後のE1の写真画像を示す。
【
図20】マーカーで線を引いた後にプラズマ処理を施してから11日後のC2の写真画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の発明を実施するための形態では、添付の図面を参照するが、これらの図面は本明細書の一部をなすものであり、いくつかの具体的な実施形態を例証として示すものである。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が企図され、実施され得ることが理解されるべきである。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0007】
本明細書において使用されるすべての科学用語及び技術用語は、別途明記しない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有するものである。本明細書において与えられる定義は、本明細書において頻繁に使用されるある特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0008】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、及び「その(the)」という単数形は、別途内容が明確に規定しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包括する。
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「又は」という用語は、概して、別途内容が明確に規定しない限り、「及び/又は」を含む意味で用いられる。「及び/又は」という用語は、列挙されている要素のうちの1つ若しくはすべて、又は列挙されている要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0010】
本明細書において使用される場合、「を有する」、「を有している」、「を含む」、「を含んでいる」、「を備える」、「を備えている」などは、非限定的な意味で使用されており、概して、「を含むが、それらに限定されない」ことを意味する。「から本質的になる」、「からなる」などは、「を含む」などに包含されることが理解されるであろう。本明細書において使用される場合、「から本質的になる」は、組成物、生成物、方法などに関する場合、その組成物、生成物、方法などの構成要素が、列挙されている構成要素と、その組成物、生成物、方法などの基本的特性及び新規の特性に対して実質的に影響を及ぼさない任意の他の構成要素とに限定されることを意味する。
【0011】
「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、ある特定の状況下において、ある特定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、請求項を含む本開示の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0012】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含み、あるいは10以下は、10、9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3などを含む)。値の範囲が特定の値「まで」である場合、その値は、その範囲内に含まれる。
【0013】
本明細書において言及される任意の方向、例えば「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「上側」、「下側」、並びに他の方向及び向きは、本明細書では、図に関する明確性のために記載されるものであり、実際のデバイス若しくはシステム、又はデバイス若しくはシステムの使用を限定するものではない。本明細書に記載されるようなデバイス又はシステムは、いくつかの方向及び向きで使用することができる。
【0014】
本明細書において使用される場合、「隣接する」という用語は、共通の境界を共有しているか、あるいは接触している2つの物体、例えば2つの表面又は層の関係性を説明するものである。本明細書において使用される場合、「近接する」という用語は、互いに対して接近しているが、必ずしも接触はしていない2つの物体、例えば2つの表面又は層の関係性を説明するものである。近接するは、隣接するを含む。
【0015】
本明細書において使用される場合、「接着剤」という用語は、2つの被着体を一緒に接着するのに有用なポリマー組成物を指す。接着剤の例は、感圧性接着剤である。
【0016】
感圧性接着剤組成物は、以下:(1)乾燥粘着性及び持続的粘着性、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体を繋ぎ止める十分な能力、並びに(4)被着体からきれいに取り外すのに十分な凝集力を含む特性を保有することが、当業者には周知である。感圧性接着剤として良好に機能することが見出されている材料は、粘着性、剥離接着力、及び剪断保持力の所望されるバランスをもたらす、必要な粘弾特性を呈するように設計及び配合されたポリマーである。特性の適正なバランスを得るのは、単純なプロセスではない。
【0017】
本明細書において使用される場合、「シリコーン系」という用語は、シリコーン単位を含有する巨大分子を指す。シリコーン又はシロキサンという用語は、交換可能に使用され、ジアルキル又はジアリールシロキサン(-SiR2O-)繰り返し単位を有する単位を指す。
【0018】
本明細書において使用される場合、「ウレア系」という用語は、少なくとも1つのウレア結合を含有する、セグメント化コポリマーである巨大分子を指す。
【0019】
本明細書において使用される場合、「アミド系」という用語は、少なくとも1つのアミド結合を含有する、セグメント化コポリマーである巨大分子を指す。
【0020】
本明細書において使用される場合、「ウレタン系」という用語は、少なくとも1つのウレタン結合を含有する、セグメント化コポリマーである巨大分子を指す。
【0021】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素であるアルケンのラジカルである1価の基を指す。アルケニルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には、2~20個の炭素原子を含有する。一部の実施形態において、アルケニルは、2~18個、2~12個、2~10個、4~10個、4~8個、2~8個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を含有する。例示的アルケニル基としては、エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニルが挙げられる。
【0022】
「アルキル」という用語は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである1価の基を指す。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には、1~20個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、アルキル基は、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。
【0024】
「ハロアルキル」という用語は、少なくとも1個の水素原子がハロで置き換えられているアルキルを指す。一部のハロアルキル基は、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、及びブロモアルキル基である。「ペルフルオロアルキル」という用語は、すべての水素原子がフッ素原子によって置き換えられているアルキル基を指す。
【0025】
「アリール」という用語は、芳香族及び炭素環である1価の基を指す。アリールは、芳香環に接続又は縮合した、1~5個の環を有し得る。他の環構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであり得る。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「アルキレン」という用語は、アルカンのラジカルである2価の基を指す。アルキレンは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってよい。アルキレンは、多くの場合、1~20個の炭素原子を有する。一部の実施形態において、アルキレンは、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子(すなわち、アルキリデン)であってもよく、あるいは異なる炭素原子であってもよい。
【0027】
「ヘテロアルキレン」という用語は、チオ、オキシ、又は-NR-(式中、Rはアルキルである)によって接続された、少なくとも2つのアルキレン基を含む、2価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖状、分枝状、環状であってよく、アルキル基によって置換されていてもよく、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。一部のヘテロアルキレンは、ヘテロ原子が酸素であるポリオキシアルキレン、例えば、
-CH2CH2(OCH2CH2)nOCH2CH2-
などである。
【0028】
「アリーレン」という用語は、炭素環及び芳香族である、2価の基を指す。この基は、接続しているか、縮合しているか、あるいはこれらの組み合わせである、1~5個の環を有する。他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってよい。一部の実施形態において、アリーレン基は、最大で5個の環、最大で4個の環、最大で3個の環、最大で2個の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであってよい。
【0029】
「ヘテロアリーレン」という用語は、炭素環及び芳香族であり、かつ硫黄、酸素、窒素、又はフッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素などのハロゲンなどのヘテロ原子を含有する、2価の基を指す。
【0030】
「アラルキレン」という用語は、式-Ra-Ara-(式中、Raはアルキレンであり、Araはアリーレンである)(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している)の2価の基を指す。
【0031】
「アルコキシ」という用語は、式-OR(式中、Rはアルキル基である)の1価の基を指す。
【0032】
シリコーンブロックコポリマーを含む第1の層と、ガラス様層と、これら2つの間に位置する移行層とを含む複合構造物が、本明細書において開示される。また、シリコーンブロックコポリマーを含む第1の層を堆積させることと、第1の層をプラズマ処理して、ガラス様層及びそれらの間の移行層を形成することとを含む、構造物を形成する方法も開示される。疎水性表面であるシリコーンブロックコポリマー層の表面をプラズマ処理することで、この表面を、親水性表面である安定したガラス様表面へと変換できるという驚くべき発見が、本明細書において開示される。ガラス様表面は、いかなる追加的な処理又は特別な操作も伴わずに、経時的に安定であり続ける。ガラス様表面は、その上に追加的な層を形成してもよく、様々な表面上に形成されてもよく、形成後にそれ自体に対して積層され(て、その多層構造体を形成し)てもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。本明細書において形成及び開示される複合構造物は、グラフィック用途及びディスプレイ用途を含む、多数の用途において有用であり得る。
【0033】
例証的複合物の断面図が、
図1に表される。複合構造物100は、第1の層110と、移行層120と、ガラス様層130とを含む。
図1において見られるように、移行層120は、第1の層110とガラス様層130との間に位置する。
【0034】
図1の第1の層110によって例証される第1の層は、概して、シリコーンブロックコポリマーを含み得る。本明細書において使用される場合、シリコーンブロックコポリマーは、1種又は2種以上のシリコーンブロックコポリマーを指し得る。第1の層は、1種又は2種以上のシリコーンブロックコポリマーを含んでもよく、代替的に、他の構成要素も含んでもよい。一部の例証的実施形態において、シリコーンブロックコポリマーは、縮合シリコーンブロックコポリマーであってよい。シリコーンブロックコポリマーの種類の例証的な具体例としては、シリコーンポリウレアコポリマー、シリコーンポリオキサミドコポリマー、シリコーンポリウレア-ウレタンブロックコポリマー、シリコーンカーボネートコポリマー、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。一部の例証的実施形態において、シリコーンブロックコポリマーは、接着剤組成物の一部であってもよく、あるいは一部の実施形態では、感圧性接着剤組成物の一部であってもよい。
【0035】
シリコーンブロックコポリマーの有用なクラスの一例は、シリコーンポリウレアブロックコポリマーなどのウレア系シリコーンポリマーである。シリコーンポリウレアブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミン(シリコーンジアミンとも呼ばれる)と、ジイソシアネートと、任意選択の有機ポリアミンとの反応生成物を含む。好適なシリコーンポリウレアブロックコポリマーは、繰り返し単位(I)によって表される。
【化1】
【0036】
式Iにおいて、各Rは、独立して、約1~12個の炭素原子を有し、且つ、例えばトリフルオロアルキル若しくはビニル基、ビニルラジカル、若しくは式R2(CH2)aCH=CH2(式中、R2は、-(CH2)b-又は-(CH2)cCH=CH-であり、aは1、2又は3であり、bは0、3又は6であり、cは3、4又は5である)によって表される高級アルケニルラジカルで置換されていてもよいアルキル部分、約6~12個の炭素原子を有し、且つ、アルキル、フルオロアルキル、及びビニル基で置換されていてもよいシクロアルキル部分、又は約6~20個の炭素原子を有し、且つ、例えばアルキル、シクロアルキル、フルオロアルキル、及びビニル基で置換されていてもよいアリール部分であるか、あるいはRは、米国特許第5,028,679号に記載されているようなペルフルオロアルキル基、又は米国特許第5,236,997号に記載されているようなフッ素含有基、又は米国特許第4,900,474号及び同第5,118,775号に記載されているようなペルフルオロエーテル含有基であり(これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる);典型的には、R部分の少なくとも50%はメチルラジカルであり、残りは、1~12個の炭素原子を有する1価のアルキル若しくは置換アルキルラジカル、アルケニルラジカル、フェニルラジカル、又は置換フェニルラジカルである。
【0037】
各Jは、約6~20個の炭素原子を有するアリーレンラジカル又はアラルキレンラジカル、約6~20個の炭素原子を有するアルキレン又はシクロアルキレンラジカルである多価ラジカルであり、一部実施形態においては、Jは、2,6-トリレン、4,4’-メチレンジフェニレン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレン、テトラメチル-m-キシリレン、4,4’-メチレンジシクロヘキシレン、3,5,5-トリメチル-3-メチレンシクロヘキシレン、1,6-ヘキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、2,2,4-トリメチルヘキシレン、及びこれらの混合物である。
【0038】
各Eは、独立して、1~10個の炭素原子のアルキレンラジカル、6~20個の炭素原子を有するアラルキレンラジカル又はアリーレンラジカルである多価ラジカルである。
【0039】
各Dは、水素、1~10個の炭素原子のアルキルラジカル、フェニル、及びA又はEを含む環構造を完結させて複素環を形成するラジカルからなる群から選択される。
【0040】
各Aは、アルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、フェニレン、ヘテロアルキレン(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、並びにこれらのコポリマー及び混合物を含む)からなる群から選択される多価ラジカルである。
【0041】
mは、0~約1000である数であり、qは、少なくとも1である数であり、rは、少なくとも10である数であり、一部の実施形態においては15~約2000であり、あるいは更には30~1500である。
【0042】
有用なシリコーンポリウレアブロックコポリマーについては、例えば、米国特許公開第20110020640号;米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、同第5,461,134号、及び同第7,153,924号;並びにPCT公開第WO96/35458号、同第WO98/17726号、同第WO96/34028号、同第WO96/34030号、及び同第WO97/40103号に開示されており、これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
シリコーンポリウレアブロックコポリマーの調製において使用することができる有用なシリコーンジアミンの例としては、式IIによって表されるポリジオルガノシロキサンジアミンが挙げられる。
【化2】
【0044】
各R1は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり、各Eは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり、qは、0~1500の整数である。
【0045】
式IIのポリジオルガノシロキサンジアミンは、任意の公知の方法によって調製することができ、任意の好適な分子量、例えば700~150,000g/モルの範囲内の平均分子量を有することができる。好適なポリジオルガノシロキサンジアミン及びこれらのポリジオルガノシロキサンジアミンを作製する方法については、例えば、米国特許第3,890,269号、同第4,661,577号、同第5,026,890号、同第5,276,122号、同第5,214,119号、同第5,461,134号、同第5,512,650号、同第6,355,759号、及び同第6,534,615号に記載されており、これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。一部のポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えばShin Etsu Silicones of America,Inc.,Torrance,Calif.及びGelest Inc.,Morrisville,Paから市販されている。
【0046】
2,000g/モル超又は5,000g/モル超の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンは、米国特許第5,214,119号、同第5,461,134号、及び同第5,512,650号に記載されている方法を使用して調製することができる。これらの記載されている方法のうちの1つは、反応条件下及び不活性雰囲気下において、(a)式IIaのアミン官能性末端ブロック剤
【化3】
[式中、E及びR
1は、上の式IIについて定義したものと同一である]と、(b)アミン官能性末端ブロック剤と反応して、2,000g/モル未満の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを形成するのに十分な環状シロキサンと、(c)式Iibの無水アミノアルキルシラノレート触媒
【化4】
[式中、E及びR
1は、式IIで定義したものと同一であり、M
+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ルビジウムイオン、又はテトラメチルアンモニウムイオンである]とを組み合わせることを伴う。この反応を、アミン官能性末端ブロック剤の実質的にすべてが消費されるまで継続し、その後、追加的な環状シロキサンを添加して分子量を増加させる。追加的な環状シロキサンは、緩徐に添加されることが多い(例えば、滴加)。反応温度は多くの場合、80℃~90℃の範囲内で、反応時間は5~7時間で実行される。結果として得られるポリジオルガノシロキサンジアミンは、高純度であり得る(例えば、シラノール不純物が、2重量パーセント未満、1.5重量パーセント未満、1重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.1重量パーセント未満、0.05重量パーセント未満、又は0.01重量パーセント未満である)。アミン官能性末端ブロック剤の環状シロキサンに対する比の変更を用いて、結果として得られる式IIのポリジオルガノシロキサンジアミンの分子量を変えることができる。
【0047】
式IIのポリジオルガノシロキサンジアミンを調製する別の方法には、反応条件下及び不活性雰囲気下において、(a)式Iicのアミン官能性末端ブロック剤
【化5】
[式中、R
1及びEは、式IIについて記載したものと同一であり、かつ下付きのaは、1~150の整数に等しい]と、(b)アミン官能性末端ブロック剤の平均分子量よりも大きい平均分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを得るのに十分な環状シロキサンと、(c)水酸化セシウム、セシウムシラノレート、ルビジウムシラノレート、セシウムポリシロキサノレート、ルビジウムポリシロキサノレート、及びこれらの混合物から選択される触媒とを組み合わせることが含まれる。この反応を、アミン官能性末端ブロック剤の実質的にすべてが消費されるまで継続する。この方法については、米国特許第6,355,759号に更に記載されている。この手順を用いて、任意の分子量のポリジオルガノシロキサンジアミンを調製することができる。
【0048】
式IIのポリジオルガノシロキサンジアミンを調製する更なる別の方法については、米国特許第6,531,620号に記載されており、この開示は、それに対する参照により本明細書に組み込まれる。この方法においては、以下の反応に示されるように、環状シラザンが、ヒドロキシ末端基を有するシロキサン材料と反応させられる。
【化6】
【0049】
R1基及びE基は、式IIについて記載したものと同一である。下付きのmは、2以上の整数である。
【0050】
ポリジオルガノシロキサンジアミンの例としては、ポリジメチルシロキサンジアミン、ポリジフェニルシロキサンジアミン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンジアミン、ポリフェニルメチルシロキサンジアミン、ポリジエチルシロキサンジアミン、ポリジビニルシロキサンジアミン、ポリビニルメチルシロキサンジアミン、ポリ(5-ヘキセニル)メチルシロキサンジアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
ポリジオルガノシロキサンジアミンという構成要素は、結果として得られるシリコーンポリウレアブロックコポリマーの弾性率を調整する手段を提供する。概して、高分子量のポリジオルガノシロキサンジアミンは、低弾性率のコポリマーを提供するが、一方で低分子量のポリジオルガノシロキサンポリアミンは、より高い弾性率のコポリマーを提供する。
【0052】
有用なポリアミンの例としては、例えばD-230、D-400、D-2000、D-4000、ED-2001及びEDR-148の商品名でHunstman Corporation(Houston,Tex.)から市販されているポリオキシアルキレンジアミンを含むポリオキシアルキレンジアミン、例えばT-403、T-3000及びT-5000の商品名でHunstmanから市販されているポリオキシアルキレントリアミンを含むポリオキシアルキレントリアミン、並びに例えばエチレンジアミン、並びにDYTEK A及びDYTEK EPの商品名でDuPont(Wilmington,Del.)から入手可能であるポリアルキレンを含むポリアルキレンが挙げられる。
【0053】
任意選択のポリアミンは、コポリマーの弾性率を修正する手段を提供する。有機ポリアミンの濃度、種類、及び分子量が、シリコーンポリウレアブロックコポリマーの弾性率に影響を及ぼす。
【0054】
シリコーンポリウレアブロックコポリマーは、約3モル以下、一部の実施形態においては約0.25~約2モルの量のポリアミンを含んでもよい。典型的には、ポリアミンは、約300g/モル以下の分子量を有する。
【0055】
例えば、上記のポリアミンと反応可能であるジイソシアネート及びトリイソシアネートを含む任意のポリイソシアネートを、シリコーンポリウレアブロックコポリマーの調製に使用することができる。好適なジイソシアネートの例としては、芳香族ジイソシアネート、例えば2,6-トルエンジイソシアネート、2,5-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o-クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、ポリカルボジイミド変性メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラエチル)ジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメトキシビフェニル(o-ジアニシジンジイソシアネート)、5-クロロ-2,4-トルエンジイソシアネート、及び1-クロロメチル-2,4-ジイソシアナトベンゼン、芳香族-脂肪族ジイソシアネート、例えばm-キシリレンジイソシアネート及びテトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、例えば1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,12-ジイソシアナトドデカン及び2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、並びに脂環式ジイソシアネート、例えばメチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)及びシクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネートが挙げられる。
【0056】
ポリアミンと、特にポリジオルガノシロキサンジアミンと反応可能である、任意のトリイソシアネートが好適である。このようなトリイソシアネートの例としては、例えばビウレット、イソシアヌレート、及び付加物から生成されるものなどの多官能イソシアネートが挙げられる。市販のポリイソシアネートの例としては、DESMODUR及びMONDURの商品名でBayerから、並びにPAPIの商品名でDow Plasticsから入手可能である、ポリイソシアネートのシリーズの一部が挙げられる。
【0057】
ポリイソシアネートは、典型的には、ポリジオルガノシロキサンジアミン及び任意選択のポリアミンの量に基づき、化学量論的な量で存在する。
【0058】
一部の実施形態において、第1の層は、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーなどのオキサミド系ポリマーであるシリコーンブロックコポリマーを含んでもよい。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーの例は、例えば、米国特許公開第20110020640号及び同第20070148475号に提示されており、これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーは、式IIIの繰り返し単位を少なくとも2つ含有する。
【化7】
【0059】
式IIIにおいて、各R2は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり、R2基の少なくとも50パーセントはメチルである。各Xは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。下付きのnは、独立して、40~1500の整数であり、下付きのpは、1~10の整数である。G基は、式R3HN-G-NHR3のジアミンから、2個の-NHR3基を除いたものに等しい残存単位である2価の基である。R3基は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、Gとこれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンなどである)を形成する。各アスタリスク(*)は、繰り返し単位が、コポリマー内の別の基、例えば別の式IIIの繰り返し単位などに結合する部位を示す。
【0060】
式IIIのR2にとって好適なアルキル基は、典型的には、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。例証的なアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、及びイソブチルが挙げられるが、これらに限定されない。R2にとって好適なハロアルキル基は、多くの場合、対応するアルキル基の水素原子の一部のみがハロゲンで置き換えられている。例示的なハロアルキル基としては、1~3個のハロ原子及び3~10個の炭素原子を有するクロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。R2にとって好適なアルケニル基は、多くの場合、2~10個の炭素原子を有する。エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニルなどの例示的なアルケニル基は、多くの場合、2~8個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を有する。R2にとって好適なアリール基は、多くの場合、6~12個の炭素原子を有する。フェニルは、例示的なアリール基である。アリール基は、非置換であってもよく、あるいはアルキル(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、若しくは1~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、若しくは1~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、又はハロ(例えば、クロロ、ブロモ、若しくはフルオロ)で置換されていてもよい。R2にとって好適なアラルキル基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6~12個の炭素原子を有するアリール基を有する。一部の例示的なアラルキル基において、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する(すなわち、アラルキルの構造は、アルキレン-フェニルであり、アルキレンがフェニル基に結合している)。
【0061】
R2基の少なくとも50パーセントはメチルである。例えば、R2基の少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも98パーセント、又は少なくとも99パーセントがメチルであり得る。残りのR2基は、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールから選択することができる。
【0062】
式IIIの各Xは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、典型的には、最大で10個の炭素原子、最大で8個の炭素原子、最大で6個の炭素原子、又は最大で4個の炭素原子を有する。例証的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。好適なアラルキレン基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基を有する。一部の例示的なアラルキレン基において、アリーレン部分はフェニレンである。すなわち、2価のアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、ここでフェニレンは、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、X基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン基及びアラルキレン基から選択される2種以上の基の組み合わせを指す。例えば、組み合わせは、単一のアルキレンに結合した単一のアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であり得る。1つの例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0063】
式IIIの下付きの各nは、独立して、40~1500の整数である。例えば、下付きのnは、最大で1000、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で100、最大で80、又は最大で60の整数であり得る。nの値は、多くの場合、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、又は少なくとも55である。例えば、下付きのnは、40~1000、40~500、50~500、50~400、50~300、50~200、50~100、50~80、又は50~60の範囲内であり得る。
【0064】
下付きのpは、1~10の整数である。例えば、pの値は、多くの場合、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、又は最大で2の整数である。pの値は、1~8、1~6、又は1~4の範囲内であり得る。
【0065】
式IIIのG基は、式R3HN-G-NHR3のジアミン化合物から、2個のアミノ基(すなわち、-NHR3基)を除いたものに等しい残存単位である。R3基は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、Gとこれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンである)を形成する。ジアミンは、第一級又は第二級アミノ基を有し得る。大部分の実施形態において、R3は、水素又はアルキルである。多くの実施形態において、ジアミンのアミノ基の両方が第一級アミノ基であり(すなわち、両方のR3基が水素である)、ジアミンの式は、H2N-G-NH2である。
【0066】
一部の実施形態において、Gは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレンは、多くの場合、2~10個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を有する。例証的なアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。好適なヘテロアルキレンは、多くの場合、少なくとも2つのエチレン単位を有するポリオキシエチレン、少なくとも2つのプロピレン単位を有するポリオキシプロピレン、又はこれらのコポリマーなどのポリオキシアルキレンである。好適なポリジオルガノシロキサンとしては、上述した式IIのポリジオルガノシロキサンジアミンから2個のアミノ基を除いたものが挙げられる。例示的なポリジオルガノシロキサンとしては、アルキレンE基を有するポリジメチルシロキサンが挙げられるが、これに限定されるものではない(式IIを参照されたい)。好適なアラルキレン基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基を含有する。一部の例示的なアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、ここでフェニレンは、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、G基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、及びアラルキレンから選択される2種以上の基の組み合わせを指す。例えば、組み合わせは、アルキレンに結合したアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であり得る。1つの例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0067】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、式-Ra-(CO)-NH-(式中、Raはアルキレンである)を有する基を含まない傾向がある。共重合性材料の主鎖に沿うカルボニルアミノ基のすべては、オキサリルアミノ基(すなわち、-(CO)-(CO)-NH-基)の一部である。すなわち、共重合性材料の主鎖に沿うあらゆるカルボニル基は、別のカルボニル基に結合しており、オキサリル基の一部となっている。より具体的には、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、複数のアミノオキサリルアミノ基を有する。
【0068】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、直鎖状ブロックコポリマーであってよく、エラストマー材料であってよい。一般的に脆性固体又は硬質プラスチックとして配合される公知のポリジオルガノシロキサンポリアミドの多くとは異なり、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、コポリマーの重量に基づいて、50重量パーセント超のポリジオルガノシロキサンセグメントを含むように配合することができる。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド中におけるジオルガノシロキサンの重量パーセントは、より高分子量のポリジオルガノシロキサンセグメントを使用することによって増加させることができ、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド中、60重量パーセント超、70重量パーセント超、80重量パーセント超、90重量パーセント超、95重量パーセント超、又は98重量パーセント超のポリジオルガノシロキサンセグメントを提供することができる。より多量のポリジオルガノシロキサンを使用することで、妥当な強度を維持しながら、より弾性率が低いエラストマー材料を調製することができる。
【0069】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドの一部は、当該材料の顕著な劣化を伴わずに、最高で200℃、最高で225℃、最高で250℃、最高で275℃、又は最高で300℃の温度まで加熱することができる。例えば、空気の存在下において熱重量分析計内で加熱した場合、20℃~約350℃の範囲内で毎分50℃の速度でスキャンすると、コポリマーは、10パーセント未満の重量損失を有する場合が多い。加えて、コポリマーは多くの場合、明白な劣化を伴わずに、空気中で1時間250℃などの温度で加熱することができる。これは、冷却した際に機械的強度の検出可能な喪失が存在しないことで判定される。
【0070】
利用することができる更なるシリコーンポリオキサミドコポリマーとしては、米国特許第7,705,101号及び同第7,705,103号のものを挙げることができ、これらの開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。このような更なるシリコーンポリオキサミドコポリマーは、分枝状シリコーンポリオキサミドコポリマーとして説明することができる。分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーは、(a)第一級又は第二級アミノ基を有する、少なくとも1種のポリアミンを含む1種以上のアミン化合物と、(b)少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2つのエステル基を有する前駆体との縮合反応生成物である。本明細書において使用される場合、「分枝状」という用語は、3つ以上の鎖セグメントを接続する分枝点を有するポリマー鎖を指すように使用される。分枝状ポリマーの例としては、主鎖と同じ繰り返し単位を含む、通常短い分枝を時折有する長鎖が挙げられる(名目上、分枝状ポリマーと名付ける)。分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーは、任意選択で、架橋された網状構造を形成してもよい。
【0071】
ある特定の実施形態において、ブロックコポリマーは、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーである。このような分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーは、(a)第一級又は第二級アミノ基を有する、少なくとも1種のポリアミンを含む1種以上のアミン化合物と、(b)少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2つのオキサリルアミノ基を有する前駆体との縮合反応生成物である。
【0072】
分枝状コポリマーは、低いガラス転移温度、熱安定性及び酸化安定性、紫外線耐性、低い表面エネルギー及び疎水性、並びに多くのガスに対する高い透過性などの、ポリシロキサンの望ましい特性の多くを有し得る。加えて、分枝状コポリマーは、ポリシロキサン及び直鎖状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーと比較して、向上した機械的強度及びエラストマー特性を有し得る。分枝状コポリマーの少なくとも一部は、光学的に透明であるか、低い屈折率を有するか、あるいはこれらの両方である。
【0073】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマー
少なくとも2つの式IV-aの繰り返し単位を含有する、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーを提供する。
【化8】
【0074】
式IV-aにおいて、各R1は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである。各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。下付きのnは、独立して、0~1500の整数であり、下付きのpは、1~10の整数である。G基は、3以上の整数であるqの価数を有する、多価の残基である。ある特定の実施形態において、qは、例えば3又は4に等しくてもよい。R3基は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、Gとこれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンなどである)を形成する。各Bは、独立して、共有結合、4~20個の炭素のアルキレン、アラルキレン、アリーレン、又はこれらの組み合わせである。各B基が共有結合である場合、式IV-aの繰り返し単位を有する分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーは、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーと呼ばれ、好ましくは下に示す式IV-bの繰り返し単位を有する。各アスタリスク(*)は、繰り返し単位が、コポリマー内の別の基、例えば別の式IV(IV-a又はIV-b)の繰り返し単位などに結合する部位を示す。分枝状コポリマーは、例えば、式IVの繰り返し単位ではあるものの、qが2に等しい繰り返し単位などの、異なる繰り返し単位を更に含んでもよい。
【0075】
一部の実施形態において、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーは、式IV-bの繰り返し単位を少なくとも2つ含有する。
【化9】
【0076】
式IV-bにおいて、各R1は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである。各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。下付きのnは、独立して、0~1500の整数であり、下付きのpは、1~10の整数である。G基は、3以上の整数であるqの価数を有する、多価の残基である。ある特定の実施形態において、qは、例えば3又は4に等しくてもよい。R3基は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、Gとこれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンなどである)を形成する。各アスタリスク(*)は、繰り返し単位が、コポリマー内の別の基、例えば別の式IV(IV-a又はIV-b)の繰り返し単位などに結合する部位を示す。
【0077】
式IV(IV-a又はIV-b)のR1にとって好適なアルキル基は、典型的には、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、及びイソブチルが挙げられるが、これらに限定されない。R1にとって好適なハロアルキル基は、多くの場合、対応するアルキル基の水素原子の一部のみがハロゲンで置き換えられている。例示的なハロアルキル基としては、1~3個のハロ原子及び3~10個の炭素原子を有するクロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。R1にとって好適なアルケニル基は、多くの場合、2~10個の炭素原子を有する。エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニルなどの例示的なアルケニル基は、多くの場合、2~8個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を有する。R1にとって好適なアリール基は、多くの場合、6~12個の炭素原子を有する。フェニルは、例示的なアリール基である。アリール基は、非置換である、又は、アルキル(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、若しくはハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)によって置換されている場合がある。R1にとって好適なアラルキル基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6~12個の炭素原子を有するアリール基を有する。一部の例示的なアラルキル基において、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する(すなわち、アラルキルの構造は、アルキレン-フェニルであり、アルキレンがフェニル基に結合している)。
【0078】
式IV(IV-a又はIV-b)の一部の繰り返し単位においては、すべてのR1基が、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールのうち1つであってよい(例えば、すべてのR1基が、メチルなどのアルキル又はフェニルなどのアリールである)。式IVの一部の化合物において、R1基は、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、及びアルキル、アルコキシ又はハロで置換されたアリールからなる群から選択される2種以上の任意の比での混合物である。したがって、例えば、式IVのある特定の化合物においては、R1基の0%、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%がメチルであってよく、R1基の100%、99%、98%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、又は0%がフェニルであってよい。
【0079】
式IV(IV-a又はIV-b)の一部の繰り返し単位においては、R1基の少なくとも50パーセントがメチルである。例えば、R1基の少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも98パーセント、又は少なくとも99パーセントがメチルであり得る。残りのR1基は、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールから選択することができる。
【0080】
式IV(IV-a又はIV-b)の各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、典型的には、最大で10個の炭素原子、最大で8個の炭素原子、最大で6個の炭素原子、又は最大で4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。好適なアラルキレン基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基を有する。一部の例示的なアラルキレン基において、アリーレン部分はフェニレンである。すなわち、2価のアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、ここでフェニレンは、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、Y基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン基及びアラルキレン基から選択される2種以上の基の組み合わせを指す。例えば、組み合わせは、単一のアルキレンに結合した単一のアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であり得る。1つの例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0081】
式IV(IV-a又はIV-b)の下付きの各nは、独立して、0~1500の整数である。例えば、下付きのnは、最大で1000、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で100、最大で80、最大で60、最大で40、最大で20、又は最大で10の整数であり得る。nの値は、多くの場合、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも40である。例えば、下付きのnは、40~1500、0~1000、40~1000、0~500、1~500、40~500、1~400、1~300、1~200、1~100、1~80、1~40、又は~20の範囲内であり得る。
【0082】
下付きのpは、1~10の整数である。例えば、pの値は、多くの場合、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、又は最大で2の整数である。pの値は、1~8、1~6、又は1~4の範囲内であり得る。
【0083】
式IV(IV-a又はIV-b)のG基は、式G(NHR3)qの1種以上のアミン化合物から、q個のアミノ基(すなわち、-NHR3基)を除いたものに等しい残存単位であり、ここでqは3以上の整数である。上で考察した通り、分枝状コポリマーは、例えば、式IVの繰り返し単位ではあるものの、qが2に等しい繰り返し単位などの、異なる繰り返し単位を更に含んでもよい。1種以上のアミン化合物は、第一級及び/又は第二級アミノ基を有し得る。R3基は、水素若しくはアルキル(例えば、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、Gとこれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンである)を形成する。大部分の実施形態において、R3は、水素又はアルキルである。多くの実施形態において、1種以上のアミン化合物のアミノ基のすべてが第一級アミノ基であり(すなわち、すべてのR3基が水素である)、1種以上のアミン化合物の式は、G(NH2)qである。
【0084】
ある特定の実施形態において、1種以上のアミン化合物は、(i)式R3HN-G-NHR3のジアミン化合物と、(ii)式G(NHR3)qのポリアミン化合物(式中、qは3以上の整数である)との混合物である。このような実施形態において、式G(NHR3)qのポリアミン化合物は、トリアミン化合物(すなわち、q=3)、テトラアミン化合物(すなわち、q=4)、及びこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されない。このような実施形態において、ジアミン(i)1当量当たりのポリアミン(ii)の当量数は、少なくとも0.001であることが好ましく、少なくとも0.005であることがより好ましく、少なくとも0.01であることが最も好ましい。このような実施形態において、ジアミン(i)1当量当たりのポリアミン(ii)の当量数は、最大で3であることが好ましく、最大で2であることがより好ましく、最大で1であることが最も好ましい。
【0085】
Gが、(i)式R3HN-G-NHR3のジアミン化合物から、2個のアミノ基(すなわち、-NHR3基)を除いたものに等しい残存単位を含む場合、Cは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり得る。好適なアルキレンは、多くの場合、2~10個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。好適なヘテロアルキレンは、多くの場合、少なくとも2つのエチレン単位を有するポリオキシエチレン、少なくとも2つのプロピレン単位を有するポリオキシプロピレン、又はこれらのコポリマーなどのポリオキシアルキレンである。好適なポリジオルガノシロキサンとしては、下に記載される式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンから2個のアミノ基を除いたものが挙げられる。例示的なポリジオルガノシロキサンとしては、アルキレンY基を有するポリジメチルシロキサンが挙げられるが、これに限定されるものではない。好適なアラルキレン基は、通常、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6~12個の炭素原子を有するアリーレン基を含有する。一部の例示的なアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、ここでフェニレンは、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、C基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、及びアラルキレンから選択される2種以上の基の組み合わせを指す。例えば、組み合わせは、アルキレンに結合したアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であり得る。1つの例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1~10個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を有する。
【0086】
好ましい実施形態において、ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドである。分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、式-Ra-(CO)-NH-(式中、Raはアルキレンである)を有する基を含まない傾向がある。共重合性材料の主鎖に沿うカルボニルアミノ基のすべては、オキサリルアミノ基(すなわち、-(CO)-(CO)-NH-基)の一部である。すなわち、共重合性材料の主鎖に沿うあらゆるカルボニル基は、別のカルボニル基に結合しており、オキサリル基の一部となっている。より具体的には、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、複数のアミノオキサリルアミノ基を有する。
【0087】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、分枝状ブロックコポリマーであり、エラストマー材料であってよい。一般的に脆性固体又は硬質プラスチックとして配合される公知のポリジオルガノシロキサンポリアミドの多くとは異なり、ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、コポリマーの重量に基づいて、50重量パーセント超のポリジオルガノシロキサンセグメントを含むように配合することができる。ポリジオルガノシロキサンポリアミド中におけるジオルガノシロキサンの重量パーセントは、より高分子量のポリジオルガノシロキサンセグメントを使用することによって増加させることができ、ポリジオルガノシロキサンポリアミド中、60重量パーセント超、70重量パーセント超、80重量パーセント超、90重量パーセント超、95重量パーセント超、又は98重量パーセント超のポリジオルガノシロキサンセグメントを提供することができる。より多量のポリジオルガノシロキサンを使用することで、妥当な強度を維持しながら、より弾性率が低いエラストマー材料を調製することができる。
【0088】
このような分枝状シリコーンポリオキシアミドブロックコポリマー(例えば、ポリジオルガノシロキサンポリアミドポリマー)は、例えば米国特許第7,705,101号及び同第7,705,103号において考察されているように調製することができる。
【0089】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーは、低いガラス転移温度、熱安定性及び酸化安定性、紫外線耐性、低い表面エネルギー及び疎水性、並びに多くのガスに対する高い透過性などの、ポリシロキサンの望ましい特性の多くを有する。加えて、コポリマーは、良好ないし優れた機械的強度を呈する。
【0090】
上で考察した通り、シリコーンブロックコポリマーの別の有用なクラスとしては、シリコーンポリウレア-ウレタンブロックコポリマーなどのウレタン系シリコーンポリマーが挙げられる。シリコーンポリウレア-ウレタンブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミン(シリコーンジアミンとも呼ばれる)と、ジイソシアネートと、有機ポリオールとの反応生成物を含む。このような材料は、下の式Vにおいて見られるように、-N(D)-A-N(D)-結合が-O-A-O-結合によって置き換えられていることを除き、構造的に式Iの構造と非常に類似している。
【化10】
【0091】
式Vにおいて、J、D、E、R、A、r、q及びmは、式Iにおいて上で定義した通りである。シリコーンポリウレア-ウレタンブロックコポリマーの例証的な具体例は、例えば、米国特許第5,214,119号に見出すことができ、この開示は、それに対する参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
例証的なシリコーンポリウレア-ウレタン系シリコーンポリマーは、有機ポリオールが有機ポリアミンに置き換わるという点を除き、式Iのウレア系シリコーンポリマーと同じ様式で調製されうる。典型的には、アルコール基とイソシアネート基との間の反応は、アミン基とイソシアネート基との間の反応よりも緩徐であるため、ポリウレタン化学において一般的に使用されているスズ触媒などの触媒を使用することができる。
【0093】
上で考察した通り、シリコーンブロックコポリマーの別の有用なクラスとしては、シリコーンカーボネートブロックコポリマーが挙げられる。このようなコポリマーは、シロキサンのブロックと、ポリカーボネートのブロックとを含む。このようなシリコーンカーボネートブロックコポリマーの更なる説明については、例えば米国特許公開第20140357781号に見出すことができ、この開示は、それに対する参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンカーボネートブロックコポリマーの例証的な例は、SABIC(商標)LEXAN(商標)樹脂 EXL1414T(SABIC Innovative Plastics Holding IP BV)として市販されている。
【0094】
また、第1の層を形成するために利用することができる組成物は、他の任意選択の構成要素を含むこともできる。一部の実施形態において、組成物は、例えばMQ粘着付与樹脂などの粘着付与樹脂を含むこともできる。MQ粘着付与樹脂及びシリコーンポリオキサミドコポリマーは、概してMQ粘着付与樹脂とシリコーンコポリマーとのブレンドという形態で存在する。典型的には、シリコーンコポリマーは、シリコーン系感圧性接着剤組成物として特徴付けることができる組成物中に、30重量%~90重量%、30重量%~85重量%、30重量%~70重量%、又は更には45重量%~55重量%の量で存在する。MQ粘着付与樹脂は、存在する場合には、典型的に、少なくとも10重量%の量で存在する。一部の実施形態において、MQ粘着付与樹脂は、組成物中に、15重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、又は45重量%以上の量で存在する。一部の実施形態において、MQ粘着付与樹脂は、組成物中に、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は55重量%以下の量で存在する。
【0095】
有用なMQ粘着付与樹脂としては、例えば、MQシリコーン樹脂、MQDシリコーン樹脂、及びMQTシリコーン樹脂が挙げられる。これらは、共重合性シリコーン樹脂と呼ばれることもあり、典型的には、約100~約50,000又は約500~約20,000の数平均分子量を有し、一般的にメチル置換基を有する。MQシリコーン樹脂は、非官能性樹脂及び官能性樹脂の両方を含み、官能性樹脂は、例えばケイ素結合水素、ケイ素結合アルケニル及びシラノールを含む、1種以上の官能基を有する。
【0096】
MQシリコーン樹脂は、R’3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)を有する共重合性シリコーン樹脂である。このような樹脂については、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,vol.15,John Wiley&Sons,New York,(1989),pp.265~270、並びに米国特許第2,676,182号、同第3,627,851号、同第3,772,247号及び同第5,248,739号に記載されており、これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。官能基を有するMQシリコーン樹脂については、米国特許第4,774,310号(シリルヒドリド基について記載している)、米国特許第5,262,558号(ビニル基及びトリフルオロプロピル基について記載している)、及び米国特許第4,707,531号(シリルヒドリド基及びビニル基について記載している)に記載されており、これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。上記の樹脂は、概して、溶媒中で調製される。乾燥させた又は無溶媒のMQシリコーン樹脂は、米国特許第5,319,040号、同第5,302,685号及び同第4,935,484号に記載されているように調製される。これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
MQDシリコーン樹脂は、例えば、米国特許第5,110,890号及び特開平2-36234に記載されている通り、R’3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、及びR’2SiO2/2単位(D単位)を有するターポリマーである。これらのすべての開示は、それらに対する参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
MQTシリコーン樹脂は、R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)を有するターポリマーである(MQT樹脂)。
【0099】
市販のMQ樹脂としては、Momentive Performance Materials(Waterford,N.Y.)から入手可能である、トルエン中のSR545シリコーン樹脂、PCR,Inc.(Gainesville,Fla.)から入手可能である、トルエン中のMQシリコーン樹脂であるMQOH樹脂が挙げられる。このような樹脂は、概して、有機溶媒中で供給される。MQシリコーン樹脂のこれら有機溶液は、そのまま使用してもよく、あるいは当該技術分野において公知の多数の技法のいずれか、例えばスプレー乾燥、オーブン乾燥、及び蒸気分離などによって乾燥させて、不揮発性含量100パーセントのMQシリコーン樹脂を提供してもよい。また、MQシリコーン樹脂は、2種以上のシリコーン樹脂のブレンドを含んでもよい。
【0100】
シリコーンブロックコポリマーが様々なプロセスによって作製され得るのと同様に、それらを含む組成物、例えば感圧性接着剤組成物などの接着剤組成物もまた、様々なプロセスによって調製され得る。組成物は、溶媒系プロセス、無溶媒プロセス、又はこれらの組み合わせで調製され得る。
【0101】
溶媒系プロセスにおいて、MQシリコーン樹脂は、使用される場合、シリコーンブロックコポリマーを形成するために使用される反応物質、例えばポリアミン及びポリイソシアネートなどが反応混合物中に導入される前、途中、又は後に導入され得る。反応は、溶媒中又は溶媒の混合物中で実行することができる。溶媒は、反応物質と非反応性であり得る。出発材料及び最終生成物は、重合中及び重合の完了後、溶媒中に完全に混和した状態であり得る。これらの反応は、室温又は反応溶媒の沸点以下で実行することができる。反応は、概して、50℃以下の周囲温度で実行される。加えて、シリコーンブロックコポリマーは、溶媒混合物中で調製し、MQ樹脂を、コポリマーが形成された後に後ほど添加してもよい。
【0102】
実質的に無溶媒のプロセスにおいては、シリコーンブロックコポリマーを形成するために使用される反応物質及びMQシリコーン樹脂は、使用される場合、反応器内で混合され、反応物質は、シリコーンブロックコポリマーを形成するように、したがって接着剤組成物、例えば感圧性接着剤組成物を形成するように反応させられる。加えて、シリコーンブロックコポリマーは、例えば、ミキサー又は押出機において無溶媒プロセスで作製され、単離されるか、あるいは単に押出機に移送されてMQシリコーン樹脂と混合されてもよい。
【0103】
溶媒系プロセス及び無溶媒プロセスの組み合わせを含む1つの有用な方法は、無溶媒プロセスを使用してシリコーンブロックコポリマーを調製した後、シリコーンブロックコポリマーをMQ樹脂溶液と溶媒中で混合することを含む。
【0104】
第1の層を形成するための組成物は、無溶媒であってもよく、又は溶媒を含有してもよい。好適な溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンなどのアルカン)、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、所望の特性を提供するために、他の添加剤を更に含んでもよい。例えば、染料及び色素を着色剤として添加することができ;接着剤を導電性及び/又は熱伝導性若しくは帯電防止性にするため、導電性及び/又は熱伝導性化合物を添加することができ;抗酸化剤及び抗菌剤を添加することができ;接着剤を紫外線劣化に対して安定化させ、ある特定の紫外線波長が物品を通過しないように遮断するため、紫外線安定剤及び吸収剤(例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)など)を添加することができる。他の添加剤としては、接着促進剤、充填剤(例えば、ヒュームドシリカ、炭素繊維、カーボンブラック、ガラスビーズ、ガラスバブル及びセラミックバブル、ガラス繊維、鉱物繊維、粘土粒子、ナイロンなどの有機繊維、金属粒子、又は未膨張の高分子ミクロスフェア)、粘着性エンハンサー、発泡剤、炭化水素可塑剤、並びに難燃剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本明細書に記載されるような第1の層は、自立型であってもよく、又は基材上に配置されてもよい。基材は、剥離ライナー、他の構造物若しくは層を含み得る剛性表面、テープバッキング、フィルム、シート、又は任意の他の材料、物品、若しくはデバイスの任意の他の表面であり得る。
【0106】
第1の層は、様々な一般的方法を使用して調製することができる。例えば、組成物は、剥離ライナー上にコーティングされてもよく、基材又はバッキング上に直接コーティングされてもよく、あるいは別の層として形成され(例えば、剥離ライナー上にコーティングされ)、その後基材に対して積層されてもよい。一部の実施形態において、感圧性接着剤組成物は、剥離ライナーとして機能する基材上に堆積されてもよく、その後第2のフィルムがその上に配置され、すなわち、該組成物は、2つの剥離ライナーの間に配置される。このような構造体において、第1の層は、表面上にガラス様外層(又は、ガラス様外層を含む何らかの構造体)が所望される任意の物品に対して適用され得る。また、第1の層は、例えば組成物を押出すること(例えば、共押出を含む)及び組成物を層へとブローイングすること(例えば、ブロー繊維)を含む他の方法を使用して形成することもできる。
【0107】
第1の層は、炭素対酸素の比(「C:O」)を有すると記載され得る。炭素対酸素の比は、第1の層を構成する材料の公知の分子構造に基づいて計算又は概算されてもよく、第1の層の原子的特性評価方法を使用して測定してもよく、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、炭素対酸素の比は、モル量、原子量、又は質量を基準とし得る。一部の実施形態において、炭素対酸素の比は、モルの量を使用して計算又は概算され、炭素対酸素の比を炭素対酸素のモル比にしてもよい。一部の実施形態において、炭素対酸素の比が計算される場合、この比は、第1の層の材料の性質によって概算することができる。これの第1の例としては、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)単位を含む1種以上のシリコーンブロックコポリマーを含む第1の層が挙げられる。PDMS単位は、比較的高い多分散度を有しうるため、不均一な構造、すなわち分子内のPDMS単位の数が不均一であることが示唆される。炭素対酸素の比を計算する場合、PDMS単位の数を推定しなければならず、単位の推定した数と単位の実際の数との間の差異によって、計算された炭素対酸素の比の、実際の炭素対酸素の比からの相違が生み出される。これの第2の例としては、MQ粘着付与樹脂を含む第1の層が挙げられる。MQ粘着付与樹脂は、典型的には、不正確に画定された構造を有する。しかしながら、炭素対酸素の比を計算するためには、MQ樹脂の構造を推定する必要がある。推定した構造と実際の構造との間の差異によって、計算された炭素対酸素の比の、実際の炭素対酸素の比からの相違が生み出される。
【0108】
炭素対酸素の比を測定する方法としては、X線光電子分光法(XPS)(化学分析用電子分光法(electron spectroscopy for chemical analysis、ESCA)としても公知である)を挙げることができる。XPS及び他の表面特性評価方法が、表面の測定をもたらす。炭素対酸素の比の測定における正確さは、測定に使用される特定の方法、得られたデータの異なった分析方法、利用される特定の装置、及びこれらの組み合わせに依存する。炭素対酸素の比を得るために測定される単位は、利用される特定の測定方法に基づいて異なり得る。一部の実施形態において、モルの量、原子濃度百分率、又は任意のこのような単位が利用され得る。一部の実施形態において、炭素対酸素の比を測定するためにXPSが利用される場合、原子濃度の百分率が利用され得る。
【0109】
XPSは、材料の表面を特性評価する。典型的には、XPSは、百分率として表すことができるピークの強度、所与の原子の強度/測定された原子の全強度*100を提供する。一部の実施形態において、炭素(C)、酸素(O)、及びケイ素(Si)は、XPSを使用して測定することができ、炭素及び酸素(並びにケイ素)の百分率を判定することができる。これらの百分率は、複合構造物の表面における炭素対酸素の比を判定するために利用することができる。ある層(例えば、第1の層、移行層、又はガラス様層)の炭素対酸素の比は、層の表面を特性評価し、その表面を取り除いて新しく露出した面を特性評価し、層全体の特性評価が終わるまでこのプロセスを繰り返すことによって判定することができる。XPSは、新しい表面を露出させるためにスパッタリング技法を利用することができ、特性評価工程と露出工程とを連続的プロセスとして組み合わせて、層の深さを通じて多くの表面を特性評価し、深さプロファイルを得ることができる。ある層内の多数の露出面の炭素対酸素の比を利用して、当該層の炭素対酸素の比を判定することができる。これは、例えば、層内の多数の表面の炭素対酸素の比を平均化することによって、あるいは層内の多数の表面の炭素対酸素の比の範囲を判定することによって実現することができる。一部の実施形態において、ある層(例えば、第1の層、移行層、又はガラス様層)の炭素対酸素の比は、当該層内の表面についてXPS(例えば)によって判定した多数の炭素対酸素の比の算術平均であり得る。
【0110】
本明細書において考察される炭素対酸素の比は、典型的には、酸素の量が1に正規化された(すなわち、酸素及び炭素に関する数の両方を、酸素の量の値で除した)、正規化した炭素対酸素の比として提示される。
【0111】
一部の実施形態において、第1の層は、2~4モルのC:1モルのOという、計算された炭素対酸素のモル比(C:O)を有し得る。一部の実施形態において、第1の層は、2~3モルのC:1モルのOという、計算された炭素対酸素のモル比を有し得る。一部の実施形態において、第1の層は、2~2.5モルのC:1モルのOという、計算された炭素対酸素のモル比を有し得る。
【0112】
一部の実施形態において、第1の層は、2~4原子百分率のC:1原子百分率のOという、測定された炭素対酸素のモル比(C:O)を有し得る。一部の実施形態において、第1の層は、2~3原子百分率のC:1原子百分率のOという、測定された炭素対酸素の比を有し得る。一部の実施形態において、第1の層は、2~2.5原子百分率のC:1原子百分率のOという、測定された炭素対酸素の比を有し得る。
【0113】
第1の層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも少ない酸素をその中に有する。換言すれば、第1の層の材料中の炭素の少なくとも一部は、移行層及びガラス様層の両方において、酸素で置き換えられている。第1の層は、移行層及びガラス様層の両方よりも多くの炭素をその中に有すると言うこともできる。したがって、酸素の量が1に正規化された(すなわち、酸素及び炭素に関する数の両方を、酸素量の値で除した)、炭素対酸素の比においては、炭素の値は常に、第1の層において、移行層及びガラス様層の両方よりも高くなる。
【0114】
また、第1の層は、特定の硬度レベル又は弾性を有するとして説明することもできる。一部の実施形態において、弾性率、押込硬度、又は弾性及び/若しくは硬度の他の尺度を利用して、第1の層の硬度を定量化又は特性評価することができる。第1の層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも硬度が低い。換言すれば、第1の層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも弾性を有する。
【0115】
また、第1の層は、何らかの種類のテクスチャーを有するとして説明することもできる。一部の実施形態において、テクスチャー分析、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy、AFM)、共焦点顕微鏡などを利用して、第1の層のテクスチャーを分析することができる。第1の層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも滑らかである。
【0116】
また、第1の層は、光学的特性を有するとして説明することもできる。一部の実施形態において、光学的特性は、例えば紫外可視近赤外(UV-Visible-Near Infrared、UV-Vis/NIR)分光計を使用して測定することができる。例証的特性としては、例えば、屈折率(n)及び吸収指数(k)を挙げることができる。第1の層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも低い屈折率を有する。また、第1の層の曇り度及び反射防止(antireflective、AR)特性などの光学的特性も、考慮及び/又は測定することができる。
【0117】
また、第1の層は、ガラス転移温度(Tg)又はTg範囲を有するとして説明することもできる。材料のTgは、例えば動機械的分析を使用することで測定することができる。第1の層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも幅広く、かつより低いTgを有する。
【0118】
また、第1の層は、いくらか流動性であるとして説明することもできる。材料が流動する能力は、動機械的手段(dynamic mechanical mean、DMA)を含む多数の様々なレオロジー方法のいずれかを使用することで測定することができる。第1の層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも流動性が高い。
【0119】
また、第1の層は、その厚さによって説明することもできる。第1の層の所望される厚さは、複合構造物が使用される用途、第1の層の材料、第1の層が形成又は堆積された構造物、形成後に複合構造物に対して実行され得る任意選択のプロセス、他の考慮事項、又はこれらの組み合わせに、少なくとも部分的に依存し得る。一部の実施形態において、第1の層は、100nm以上、2マイクロメートル以上、又は5マイクロメートル以上の厚さを有し得る。一部の実施形態において、第1の層は、100ミル以下(1ミルは、0.001インチ又は0.0254mmに等しい)、50ミル以下、200マイクロメートル以下、又は100マイクロメートル以下の厚さを有し得る。
【0120】
移行層
本明細書に記載される複合構造物は、移行層も含む。
図1に見られるように、移行層120は、第1の層110とガラス様層130との間に位置する。移行層120は、第1の表面121及び反対側の表面又は第2の表面122を有する。第1の層110は、移行層120の第1の表面121と隣接しており、ガラス様層130は、移行層120の第2の表面122と隣接している。移行層は、第1の層又は第1の層を構成する材料から形成されているとして説明することができる。移行層は、第1の表面121における実質的に第1の層110の組成から、第2の表面122における実質的にガラス様層130の組成へと組成が進行する、段階的層として説明することができる。
【0121】
移行層及びガラス様層は、第1の層110若しくは第1の層の材料、第1の層の上面若しくは上部、又は前駆体状の第1の層をプラズマ処理することによって形成される。プラズマ処理が始まると、前駆体状の第1の層の材料から移行層がまず形成され、その後、移行層の少なくとも一部がガラス様層へと変換されるため、複合構造物全体が、元々堆積されていた材料(例えば、前駆体状の第1の層)から形成される。依拠するわけではないが、プラズマ処理によって、ケイ素に結合していた炭素が酸素原子で置き換えられるものと考えられる。移行層は正に、第1の層の材料からガラス様層の材料への移行である。したがって、移行層は、第1の層の材料の構成要素及びガラス様層の材料の構成要素の両方を含有する。移行層の第1の表面(
図1の121)により近い場所では、材料は第1の層により似たものとなり、移行層の第2の層(
図1の122)により近い場所では、材料はガラス様層により似たものとなる。
【0122】
また、移行層も、その炭素対酸素の比(C:O)によって説明することができる。概して、移行層は、第1の層よりは多いが、ガラス様層よりは少ない酸素を含む。同様に、移行層は、第1の層よりは少ないが、ガラス様層よりは多い炭素を含む。したがって、酸素の量によって正規化された、移行層のC:O比における炭素に関する値は、移行層の形成元である第1の層のものよりも低いが、移行層上に形成されるか又は移行層から形成されるガラス様層のものよりも高い。移行層のC:O比は、その一方の表面と他方とでは異なる。一部の実施形態において、移行層のC:O比は、例えばXPSを使用することで測定することができる。一部の実施形態において、移行層のC:O比は、0.1~0.8の炭素対1の酸素(例えば、XPSによって測定した原子百分率)で異なり得る。一部の実施形態において、移行層は、0.12~0.75の炭素対1の酸素(例えば、XPSによって測定した原子百分率)というC:Oを有し得る。
【0123】
また、移行層は、その硬度又は弾性によって説明することもできる。移行層は、第1の層よりは硬質であるが、ガラス様層よりは軟質である。同様に、移行層は、第1の層よりは弾性が少ないが、ガラス様層よりは弾性を有する。硬度又は弾性は、様々な方法で測定することが可能であるが、第1の層、移行層、及びガラス層の硬度及び/又は弾性を比較するために、同じ方法及び手順を使用すべきである。
【0124】
また、移行層は、何らかの種類のテクスチャーを有するとして説明することもできる。一部の実施形態において、テクスチャー分析、原子間力顕微鏡(AFM)、共焦点顕微鏡などを利用して、移行層のテクスチャーを分析することができる。移行層は、概して、第1の層よりは滑らかさは少ないが、ガラス様層よりは滑らかである。
【0125】
また、移行層は、光学的特性を有するとして説明することもできる。一部の実施形態において、光学的特性は、例えば紫外可視近赤外(UV-Vis/NIR)分光計を使用して測定することができる。例証的特性としては、例えば、屈折率(n)及び吸収指数(k)を挙げることができる。移行層は、概して、第1の層よりも高い屈折率を有し、かつガラス様層よりも低い屈折率を有する。また、移行層の曇り度及び反射防止(AR)特性などの光学的特性も、考慮及び/又は測定することができる。
【0126】
また、移行層は、ガラス転移温度(Tg)又はTg範囲を有するとして説明することもできる。材料のTgは、例えば動機械的分析を使用することで測定することができる。移行層は、概して、第1の層よりも狭いTgを有し、かつガラス様層よりも幅広いTg範囲を有する。移行層は、概して、第1の層よりも高いTgを有し、かつガラス様層よりも低いTgを有する。
【0127】
また、移行層は、あるレベルの流動性を有するとして説明することもできる。材料が流動する能力は、例えば、多数のレオロジー方法のいずれかを使用することで測定することができる。移行層は、概して、第1の層よりは流動性が少ないが、ガラス様層よりは流動性が高い。
【0128】
また、移行層は、その厚さによって説明することもできる。移行層及びガラス様層の形成の性質上、移行層とガラス様層との間の厳密な線引きは、いくらか恣意的なものと考慮され得る。また、移行層の厚さは、プラズマ処理の条件(例えば、ガスの圧力、処理時間など)によって少なくとも部分的に制御可能であることについても留意すべきである。しかしながら、一部の実施形態において、移行層は、1マイクロメートル(μm)以下、一部の実施形態においては500ナノメートル(nm)以下、一部の実施形態においては200nm以下、又は一部の実施形態においては100nm以下の厚さを有するとして説明することができる。一部の実施形態において、移行層は、1nm以上、又は一部の実施形態においては5nm以上の厚さを有するとして説明することができる。一部の実施形態において、層間接着性を増加させるために、より厚い移行層の方が、より薄い移行層よりも有利であり得る。
【0129】
本明細書に記載される複合構造物は、ガラス様層も含む。
図1に見られるように、ガラス様層130は、移行層120の上に、より具体的には移行層120の第2の表面121の上に配置される。ガラス様層は、移行層120の第2の表面122と隣接しているとして説明することができる。ガラス様層は、第1の層、移行層、又はこれらのいくらかの組み合わせから形成された。上で考察した通り、移行層及びガラス様層は、第1の層110又は前駆体状の第1の層をプラズマ処理することによって形成される。プラズマ処理が始まると、移行層がまず形成され、その後、移行層の少なくとも一部がガラス様層へと変換されるため、複合構造物全体が、元々堆積されていた第1の層(例えば、前駆体状の第1の層)の材料から形成される。依拠するわけではないが、プラズマ処理によって、ケイ素に結合していた炭素が酸素原子で置き換えられるものと考えられる。
【0130】
ガラス様層は、少なくともいくつかの、ガラスの特性と同様の特性を有する。例えば、ガラス様層は、その形成元である第1の層のものよりも低い接触角(例えば、静的水接触角)を有する。ガラス様層は、一部のバリア特性、例えば少なくとも一部の液体、少なくとも一部のガス、又はこれらの組み合わせに対するバリアを有し得る。一部の実施形態において、ガラス様層は、層内に少なくとも一部のSiO4/2(例えば、ガラス)を有し得る。
【0131】
ガラス様層は、その炭素対酸素の比(C:O)によって説明することができる。概して、ガラス様層は、第1の層及び移行層の両方よりも多くの酸素を含む。同様に、ガラス様層は、概して、移行層及び第1の層の両方よりも少ない炭素を含む。したがって、酸素の量によって正規化された、ガラス様層のC:O比における炭素に関する値は、ガラス様層の形成元である第1の層及び移行層両方のものよりも低い。一部の実施形態において、酸素の量によって正規化された、ガラス様層のC:O比における炭素に関する値は、例えばXPSを使用することで測定することができる。一部の実施形態において、ガラス様層のC:O比は、0に近似する。一部の実施形態において、ガラス様層の正規化したC:O比は、0~0.1の炭素対1の酸素(例えば、XPSによって測定した原子百分率)である。一部の実施形態において、ガラス様層の正規化したC:O比は、0.001~0.009の炭素対1の酸素(例えば、XPSによって測定した原子百分率)である。一部の実施形態において、ガラス様層の正規化したC:O比は、0.01~0.08の炭素対1の酸素(例えば、XPSによって測定した原子百分率)である。
【0132】
また、ガラス様層は、その硬度又は弾性によって説明することもできる。ガラス様層は、移行層及び第1の層の両方よりも硬質である。同様に、ガラス様層は、移行層及び第1の層の両方よりも弾性が少ない。硬度又は弾性は、様々な方法で測定することが可能であるが、第1の層、移行層、及びガラス層の硬度及び/又は弾性を比較するために、同じ方法及び手順を使用すべきである。
【0133】
また、ガラス様層は、何らかの種類のテクスチャーを有するとして説明することもできる。一部の実施形態において、テクスチャー分析、原子間力顕微鏡(AFM)、共焦点顕微鏡などを利用して、ガラス様層のテクスチャーを分析することができる。ガラス様層は、概して、移行層及びガラス様層の両方よりも滑らかさが少ない。
【0134】
また、ガラス様層は、光学的特性を有するとして説明することもできる。一部の実施形態において、光学的特性は、例えば紫外可視近赤外(UV-Vis/NIR)分光計を使用して測定することができる。例証的特性としては、例えば、屈折率(n)及び吸収指数(k)を挙げることができる。ガラス様層は、概して、移行層及び第1の層の両方よりも高い屈折率を有する。また、第1の層の曇り度及び反射防止(AR)特性などの光学的特性も、考慮及び/又は測定することができる。
【0135】
また、ガラス様層は、ガラス転移温度(Tg)又はTg範囲を有するとして説明することもできる。材料のTgは、例えば動機械的分析を使用することで測定することができる。ガラス様層は、概して、移行層及び第1の層の両方よりも狭く、かつより高いTgを有する。
【0136】
また、ガラス様層は、その流動する能力又は流動不能性によって説明することもできる。材料が流動する能力は、例えば、多数のレオロジー方法のいずれかを使用することで測定することができる。ガラス様層は、概して、移行層及び第1の層の両方よりも流動性が少ない。このような流動性の特色を有する複合構造物は、例えば光学素子の領域において有用であり得る。シリコーン含有感圧性接着剤は、屈折率が低い一方で、近接する光学表面に対する結合を提供するため、光学素子(導光用途)において多く用いられている。しかしながら、抽出フィーチャーなどの一部の光学フィーチャーが接着剤を含まない状態でいることができれば、有利であり得る。PSA組成物からガラス様層を形成する能力を使用することで、領域(例えば、抽出フィーチャー)への接着剤の流入を防止しながらもなお、結合工程中に表面に対して従来通り圧力をかけている間にガラス様層に亀裂が入ることで、いくらかの結合を可能にし得る。
【0137】
また、ガラス様層は、その厚さによって説明することもできる。移行層及びガラス様層の形成の性質上、移行層とガラス様層との間の厳密な線引きは、いくらか恣意的なものと考慮され得る。また、ガラス様層の厚さは、プラズマ処理の条件(例えば、ガスの圧力、処理時間など)によって少なくとも部分的に制御可能であることについても留意すべきである。しかしながら、一部の実施形態において、ガラス様層は、500nm以上、一部の実施形態においては250nm以上、一部の実施形態においては200nm以上、又は一部の実施形態においては150nm以上の厚さを有するとして説明することができる。より厚いガラス様層を有することが所望される実施形態においては、ガラス様層又はガラスに更により近い層を、ケイ素源又は(プラズマが既にケイ素源を含んでいた実施形態においては)更なるケイ素源をプラズマに添加することによって、プラズマ蒸着を使用して、その上に堆積させることができる。また、ガラス様層がより厚くなればなるほど、そのバリア特性がより良好となる可能性が高くなることについても留意すべきである。また、そのバリア特性を更に増加させるために(例えば、層を貫通する割れ目又はピンホールが広まらないように)、ガラス様層/アドオン層を2つ以上の工程で堆積/形成することも有利であり得る。
【0138】
また、ガラス様層は、その安定性によって説明することもできる。一部の実施形態において、ガラス様層は、少なくとも3日間、一部の実施形態においては少なくとも5日間、一部の実施形態においては少なくとも10日間、その安定性を維持する。その安定性を維持するとは、ガラス様層の構造の再構成がより少なかったり、あるいは分子内の運動の自由度の再発がより少なかったりする(例えば、疎水性回復がより少ないか、又はより可撓性の層である)ことを意味する。一部の実施形態において、安定性は、接触角、例えば静的水接触角によって測定又は監視することができる。一部の実施形態において、ガラス様層は、その形成後から少なくとも3日間、少なくとも5日間、又は少なくとも10日間にわたって、30°+10°を超えて変化しない、静的水接触角を有する。一部の実施形態において、ガラス様層は、その形成後から少なくとも3日間、少なくとも5日間、又は少なくとも10日間にわたって、30°+5°を超えて変化しない、静的水接触角を有する。一部の実施形態において、ガラス様層は、その形成後から少なくとも3日間、少なくとも5日間、又は少なくとも10日間にわたって、95°以下である静的水接触角を有しうる。
【0139】
また、ガラス様層は、粘着性であるとして説明することができる第1の層とは反対に、タックフリーであるとして説明することもできる。また、ガラス様層は、接着特性(例えば、感圧性接着剤の特性)を有する第1の層とは反対に、接着特性(例えば、感圧性接着剤の特性)を有しないとして説明することもできる。複合構造物に対して圧力がかけられた場合、ガラス様層が破壊されて、先に被覆した第1の層及び移行層が露出され得ることに留意すべきである。このようにして露出された第1の層及び移行層は接着特性を有し得るが、破壊されたガラス様層は依然として接着特性を有しない。また、ガラス様層は、経時的に、例えば形成後から少なくとも3日間、少なくとも5日間、又は少なくとも10日間にわたって、タックフリーの状態である。
【0140】
また、ガラス様層は、例えば通常の周囲条件下において、流動性であるとして説明することができる第1の層とは反対に、流動不可能であるとして説明することもできる。
【0141】
方法
本明細書においては、ガラス様層を含む構造物又は開示される複合構造物を形成する方法も開示される。一部の実施形態において、このような方法は、シリコーンブロックコポリマーを含む層を堆積させる工程と、この層をプラズマ処理して、シリコーンブロックコポリマーの少なくとも一部をガラス様層へと変換することとを含みうる。依拠するわけではないが、プラズマ処理によって、シリコーンブロックコポリマーのケイ素に結合していた炭素の少なくとも一部が酸素原子で置き換えられるものと考えられる。プラズマ処理の工程は、より具体的には、移行層及びガラス様層を形成することとして説明することができる。一部の実施形態において、プラズマ処理は、移行層をまず形成することであり得、次いで、後続のプラズマ処理が、この移行層の一部をガラス様層へと変換することであり得る。
【0142】
開示される方法は、第1の層の材料を堆積させる工程、又は換言すれば前駆体状の第1の層を形成する工程を含み得る。この形成方法の文脈において、第1の層の材料は、プラズマ処理されるまでは前駆体状の第1の層とみなされ、プラズマ処理された時点で、第1の層とみなされる。概して、前駆体状の第1の層と第1の層との間の差異は、前駆体状の第1の層の材料の一部が、移行層及びガラス様層を形成するのに利用されるという点である。前駆体状の第1の層は、第1の層の構成要素に関して上述したものなどの材料を含む。本発明では、上で考察した第1の層を形成する方法を、前駆体状の第1の層を形成するのに利用することができる。前駆体状の第1の層の材料の一部は、究極的には移行層及びガラス様層へと変換されるため、前駆体状の第1の層を、所望される最終的な第1の層の厚さよりもわずかに厚く堆積させることが有用であり得る。前駆体状の第1の層から消費される材料の量は、プラズマ処理の条件などに少なくとも部分的に依存し得る。
【0143】
プラズマ処理の様々な特性又は特徴を制御及び/又は修正することで、移行層及び/又はガラス様層を変化させることができる。例えば、プラズマの構成要素を修正することができ(例えば、構成要素の独自性、構成要素の量、構成要素の導入の性質など)、プラズマ処理が実行される雰囲気を修正することができ(例えば、チャンバ内の圧力、チャンバ内の温度など)、プラズマ処理の長さを修正することができ、プラズマを形成する条件(例えば、出力、オン及びオフ時間のデューティサイクルなど)、本明細書において具体的には考察されていない他のパラメーター、又はこれらの任意の組み合わせを修正することができる。
【0144】
一部の実施形態において、プラズマ処理は、酸素(O2)の存在下で行われてもよい。一部の実施形態において、プラズマ処理は、いくらかのレベルのO2を含む雰囲気下で行われてもよい。一部の実施形態において、プラズマ自体が、O2(及び任意選択で他の構成要素)から形成されていてもよい。一部の実施形態において、プラズマはまた、O2以外の構成要素を含有してもよい。O2以外の構成要素は、液体、ガス、又はこれらの両方に由来してもよい。一部の実施形態において、プラズマは、ケイ素(Si)源又はSi含有構成要素を含有してもよい。一部の実施形態において、第1の層は、まず酸素のみのプラズマで処理され、その後続いて酸素+非酸素構成要素のプラズマで処理されてもよい。このような実施形態においては、プラズマ処理工程の両方又は一方のみが、移行層及びガラス様層を形成し得る。一部の実施形態において、第1の層は、まずO2プラズマで処理され、その後O2+Si含有構成要素のプラズマで処理されてもよい。プラズマへのケイ素の導入は、ガラス様層及び/又は実際のガラスと同様の特性を有する層を堆積させるように機能し得る。したがって、O2のみのプラズマでのプラズマ処理の後、続いてO2+ケイ素プラズマで処理することによって、第1の層から移行層及びガラス様層が形成され、その後続いて更なるガラス様材料又はガラスと同様の特性を有する材料(第1の層から形成されたガラス様層と実質的に同じであっても、同じでなくてもよい)が形成され得る。
【0145】
一部の実施形態において、プラズマ処理は、5秒間以上、一部の実施形態においては30秒間以上、又は一部の実施形態においては60秒間以上、実行され得る。また、非類似的プラズマ処理時間が利用されていない場合でも、本明細書に記載される効果と同様の効果が得られるように構成されたプラズマ処理、及び実施例において利用されている特定のプラズマ処理プロトコルと同様のプラズマ処理が利用されてもよい。
【0146】
開示される方法を実行するのに、任意のプラズマ発生システム又はプラズマ発生器を利用することができる。特定のシステムの例証的実施形態としては、反応性イオンエッチング(reactive ion etching、RIE)用に構成された、26インチの下部電力電極及び中央ガス排気を伴う商用バッチプラズマシステム(Plasmathermモデル3032)を挙げることができる。チャンバは、ドライメカニカルポンプ(EdwardsモデルiQDP80)によって補強されたルーツブロアー(EdwardsモデルEH1200)によってポンプ処理することができる。RF電力は、5kWの13.56Mhzソリッドステート発生器(RFPPモデルRF50S0)によって、インピーダンスマッチングネットワークを介して送達することができる。このシステムは、5mTorrの公称ベース圧力を有し得る。ガスの流速は、MKS流量調節器によって制御することができる。
【0147】
また、上の例証的システムを利用してガラス様層を形成するための例証的方法は、例えば、以下の具体的な工程、プロセス、又は詳細を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。表面改質又は表面堆積のための基材は、下部電力電極上に配置されてもよく、あるいはガラスプレートを使用することで持ち上げてシース領域から出てもよい。サンプルを挿入した後、反応器チャンバを、ポンプによって1.3Pa(10mTorr)未満のベース圧力まで下げてもよい。プラズマ処理は、規定された流速で、適切な種類のガス及び/又は液体前駆物質を供給することによって実現される。一旦流れが安定化したら、rf電力を電極に対して印加して、プラズマを発生させることができる。プラズマは、記載される量の時間の間、付けられたままであってよい。この処理の後、RF電力及びガスの供給を止めてもよく、チャンバは大気圧に戻すことができる。
【0148】
一部の実施形態において、前駆体状の第1の層の堆積とそのプラズマ処理との間で、1つ以上の工程が実行され得る。例えば、前駆体状の第1の層は、構造化されてもよい。構造は、前駆体状の第1の層上又はその内部に、例えばエンボス加工、プリンティング、フォトリソグラフィー法、研磨、又は機械的切断によって形成され得る。構造はまた、そのような構造を提供するような添加剤を利用することによって、前駆体状の第1の層に付与することもできる。一部の実施形態において、前駆体状の第1の層の一方又は両方の主面に対して、微細構造化表面を付与することが望ましい場合がある。該当する場合には、前駆体状の第1の層の少なくとも一方の表面に微細構造化表面を有して、積層中の空気の放出を助けることが望ましい場合がある。前駆体状の第1の層の一方又は両方の表面上に、微細構造化表面を有することが望ましい場合、コーティング又は層は、微細構造を含むツール又はライナー上に配置されてもよい。次いで、ライナー又はツールを取り除いて、微細構造化表面を有する前駆体状の第1の層を露出させてもよい。様々な構造及び/又はパターンが、前駆体状の第1の層内又はその上に形成され得る。例えば、光学的特性を付与するパターンが、前駆体状の第1の層に形成されてもよい。
【0149】
プラズマ処理を行ってガラス様層を形成した後、複合構造物に対して、任意の追加的な工程又はプロセスを実行することができる。例えば、追加的なプラズマ処理工程を実行して、ガラス様層上に追加的な材料を堆積させてもよい。このような追加的な材料は、ガラス様層と同様の特性を有してもよく、ガラスと同様の特性を有してもよく、あるいはガラスとは無関係の特性を有してもよい。一部の実施形態において、追加的な前駆体状の第1の層を、ガラス様層上に堆積させてもよい。その後、追加的な前駆体状の第1の層はプラズマ処理されて、多相複合構造物を形成してもよく;この第1の層は本質的に接着剤であってもよく、何らかの他の物品又は構造物に対して複合構造物を接着するのに利用されてもよく;あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、開示される方法において先に利用されていない材料を、ガラス様層上に堆積させてもよい。例えば、バリア特性を有する材料を、ガラス様層上に堆積させてもよい。このバリア特性を有する材料は、それが堆積されるガラス様層とは異なる、それより良好な、あるいはこれら両方の(例えば)バリア特性を有し得る。一部の実施形態において、事実上任意の材料が、ガラス様層上に堆積又は形成され得る。
【0150】
また、プラズマ処理を行ってガラス様層を形成した後、複合構造物を利用して、何らかの他の構造物とともに積層体を形成することもできる。例えば、接着剤、例えば感圧性接着剤であってよい第1の層を剥離ライナー上に形成してもよく、この剥離ライナーを取り外して、複合構造物を何らかの他の複合構造物又は物品に対して接着させてもよい。一部の他の実施形態においては、複合構造物を、複合構造物の2つ以上の部分が形成されるように機械的に切断してもよく、これら複合構造物の少なくとも2つの部分を使用して、それ自体で積層体を形成してもよく、任意選択で、このプロセスを繰り返したり、あるいは任意の他のプロセスを実行したりしてもよい。
【0151】
本明細書に開示される複合構造物は、単独で形成されてもよく、あるいは任意の他の表面、構造物、又は物品上に形成されてもよい。一部の実施形態において、複合構造物は、(上で考察した通りに)形成された後、何らかの他の物品に移送されてもよい。このような実施形態において、複合構造物は、ある表面又は基材、例えば剥離ライナー上に形成されてよく、その後、複合構造物は、二次的表面、構造物、又は物品に対して移送されてもよい。一部の実施形態において、複合構造物は、二次的表面、構造物、又は物品上に直接形成されてもよい。例えば、複合構造物が移送される最終的な表面、基材、又は物品(二次的表面)が、プラズマ処理又はそれと関連する条件に適していない場合、複合構造物をある表面上で形成し、それを二次的表面に対して移送することが有利であり得る。複合構造物が二次的表面、構造物、又は物品上に形成される実施形態においては、基材は、可撓性であっても剛性であってもよい。開示される複合構造物の利点は、ガラス様層が含まれていても、この複合構造物が少なくともいくらかは可撓性であり続けることである。これによって、複合構造物の使用に対して多数の利点が提供され得る。開示される複合構造物の別の利点は、これらの複合構造物が少なくともいくつかのバリア特性を提供し得ることである。したがって、複合構造物を表面上に適用すること又は複合構造物を表面上で形成することは、下にある構造物に対してバリア特性を付与する方法であり得る。
【0152】
また、複合構造物、それと関連する材料、又はこれらの組み合わせは、2つの構造物を一緒に接着するために利用することもできる。一部の実施形態において、第1の層の材料、例えば接着剤、例えば感圧性接着剤を含有するシリコーンブロックコポリマーを利用して、2つの構造物を一緒に接着することができる。例証のみを目的とするが、シリコーンブロックコポリマー感圧性接着剤の層を剥離ライナー上に堆積させてもよく、PSAの表面を、ある表面(例えば、スライドガラス)に対して積層させてもよい。また、この第1の工程は、PSAを当該表面に対して直接適用することによって実現することもできる。その後、第2の表面(例えば、第2のスライドガラス)を、PSAの露出面に対して積層させてもよい。その後、積層体の一方若しくは他方(又は両方)の端部においてガラス様層を形成するために、PSAの露出した縁部、例えば表面/PSA/表面積層体の端部のうちの一方若しくは他方(又は両方)におけるPSAの縁部をプラズマ処理してもよい。この例証的構築物は、2つの表面の両方を接着して、その後任意の露出されたPSAをガラス様層へと変換するために、複合構造物及び複合構造物を形成する方法をどのように利用できるかについて示している。このことは有利であり得る。その理由は、露出したPSAを非粘着性にできること(例えば、当該PSAが接着特性、例えば感圧性接着剤の特性を有しない)、4つの表面すべてにおいてバリア特性が得られること(2つは積層された表面自体に起因し、2つは露出したPSAをガラス様層に変換したことに起因する)、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0153】
複合構造物を形成できる(又は最終的に移送できる)基材の例としては、例えば、ガラスシート、剛性高分子シート、及びディスプレイ表面などの剛性基材が挙げられる。一部の実施形態において、複合構造物は、一次構造物の1つ以上の表面上に形成されてもよい。一次構造物としては、開示される複合構造物が有用であり得る、事実上任意の物品、デバイス、又は基材を挙げることができる。複合構造物が有用であり得る用途の例及び例証的一次構造物としては、例えば、電子デバイス、光学素子及び光学デバイス、例えばグラフィック表示デバイス、太陽電池デバイスなどを挙げることができる。このような積層体を利用することができるデバイスの例としては、パーソナルデジタルアシスタント、携帯電話、タッチセンシティブスクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、全地球測位システム、テレビスクリーン(例えば、OLED)、コンピュータモニター、ノート型パソコンディスプレイ、エレクトロルミネッセントディスプレイなどを含む携帯型又は非携帯型の情報表示デバイスなどのデバイスが挙げられる。本明細書に開示される複合構造物を利用することができる他のデバイス、例えば他の一次構造物としては、窓、マイクロフルイディクス、センサー、フォトリソグラフィクス、エレクトロルミネッセンス照明、パッケージ、及び接着剤を挙げることができる。剛性カバーをディスプレイスクリーンに対して結合させることで、それらの間のあらゆる空気間隙を排除することによって、表示される画像の質における改善がもたらされるということが観察されている。
【0154】
例証的な開示される実施形態を下に提供する。
【0155】
一部の例証的実施形態は、シリコーンブロックコポリマーを含む第1の層と;第1の層と隣接する第1の表面及び反対側の第2の表面を有し、第1の層のシリコーンブロックコポリマーから形成されている、移行層と;移行層の第2の表面と隣接するガラス様層であって、ガラス様層の少なくとも一部が移行層から形成されている、ガラス様層と、を備える、複合構造物を含み得る。
【0156】
シリコーンブロックコポリマーが、縮合シリコーンブロックコポリマーである、このような複合構造物。シリコーンブロックコポリマーが、シリコーンポリオキサミドコポリマー、シリコーンポリウレアコポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、このような複合構造物。シリコーンブロックコポリマーが、接着剤である、このような複合構造物。シリコーンブロックコポリマーが、感圧性接着剤である、このような複合構造物。シリコーンブロックコポリマーが、シリコーンポリオキサミドコポリマー、シリコーンポリウレアコポリマー、又はこれらの組み合わせと、粘着付与樹脂とを含む、このような複合構造物。粘着付与樹脂が、MQ粘着付与樹脂を含む、このような複合構造物。第1の層が、
【化11】
を含み、式中、
各Rは、独立して、1~12個の炭素原子を有し、且つ、例えばトリフルオロアルキル若しくはビニル基、ビニルラジカル、若しくは式R
2(CH
2)
aCH=CH
2(式中、R
2は、-(CH
2)
b-又は-(CH
2)
cCH=CH-であり、aは1、2又は3であり、bは0、3又は6であり、cは3、4又は5である)によって表される高級アルケニルラジカルで置換されていてもよいアルキル部分、6~12個の炭素原子を有し、且つ、アルキル、フルオロアルキル、若しくはビニル基で置換されていてもよいシクロアルキル部分、又は6~20個の炭素原子を有し、且つ、例えばアルキル、シクロアルキル、フルオロアルキル、及びビニル基で置換されていてもよいアリール部分であるか、あるいはRは、ペルフルオロアルキル基、又はフッ素含有基、又はペルフルオロエーテル含有基であり;各Jは、6~20個の炭素原子を有するアリーレンラジカル又はアラルキレンラジカル、6~20個の炭素原子を有するアルキレン又はシクロアルキレンラジカルである多価ラジカルであり;各Eは、独立して、1~10個の炭素原子のアルキレンラジカル、6~20個の炭素原子を有するアラルキレンラジカル又はアリーレンラジカルである多価ラジカルであり;各Dは、水素、1~10個の炭素原子のアルキルラジカル、フェニル、及びA又はEを含む環構造を完結させて複素環を形成するラジカルからなる群から選択され;各Aは、アルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、フェニレン、ヘテロアルキレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される多価ラジカルであり;mは、0~1000である数であり;qは、少なくとも1である数であり;rは、少なくとも10である数である、このような複合構造物。第1の層が、
【化12】
を含み、式中、各R
2は、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり、R
2基の少なくとも50パーセントはメチルであり;各Xは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり;Gは、式R
3HN-G-NHR
3のジアミンから、2個の-NHR
3基を除いたものに等しい残存単位である2価の基であり;R
3は、水素若しくはアルキルであるか、又はR
3は、Gとこれら両方が結合している窒素と一緒になって複素環式基を形成し;nは、独立して、40~1500の整数であり;下付きのpは、1~10の整数である、このような複合構造物。第1の層が、酸素について正規化した炭素対酸素の比を有し、移行層が、酸素について正規化した炭素対酸素の比を有し、ガラス様層が、酸素について正規化した炭素対酸素の比を有し、第1の層の酸素について正規化した炭素対酸素の比が、移行層及びガラス様層の両方よりも高い、このような複合構造物。移行層の酸素について正規化した炭素対酸素の比が、ガラス様層のものよりも高い、このような複合構造物。移行層の酸素について正規化した炭素対酸素の比が、第1の層から第2の層に向けて減少する、このような複合構造物。第1の層が、移行層及びガラス様層の両方よりも弾性を有する、このような複合構造物。移行層が、ガラス様層よりも弾性を有する、このような複合構造物。ガラス様層が、移行層及び第1の層の両方よりも硬質である、このような複合構造物。移行層が、第1の層よりも硬質である、このような複合構造物。移行層及びガラス様層が、第1の層の材料をプラズマ処理することによって形成された、このような複合構造物。移行層が、1nm~200nmの厚さを有する、このような複合構造物。移行層の厚さ、ガラス様層の厚さ、又はこれらの両方が、プラズマ処理の合計時間によって少なくともいくらか制御されている、このような複合構造物。ガラス様層が、95°以下の静的水接触角を有する、このような複合構造物。ガラス様層が、接触角を少なくとも10日間実質的に維持する、このような複合構造物。第1の層、移行層、及びガラス様層の第2のセットを少なくとも更に備える、このような複合構造物。第2の第1の層が、第1のガラス様層と近接する、このような複合構造物。第1の層に近接する、又はガラス様層に近接する追加的な層を更に備える、このような複合構造物。第1の層に近接し、移行層の反対側にあるバリアフィルムを更に備える、このような複合構造物。ガラス様層に近接し、移行層の反対側にあるバリアフィルムを更に備える、このような複合構造物。有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)構造物を更に備え、第1の層、移行層、及びガラス様層が、OLEDのディスプレイ表面に近接する、このような複合構造物。第1の層が、2つの基材の接合部と隣接する、このような複合構造物。2つの基材のうちの少なくとも1つが、ガラスを含む、このような複合構造物。第1の層が、追加的なシリコーンブロックコポリマー材料と隣接する、このような複合構造物。追加的なシリコーンブロックコポリマー材料が、2つの物品を一緒に接着する、このような複合構造物。2つの物品が、2つの剛性基材である、このような複合構造物。2つの剛性基材が、光学基材である、このような複合構造物。ガラス様層が、バリア特性を有する、このような複合構造物。ガラス様層が、ガスバリア特性、水バリア特性、又はこれらの両方を有する、このような複合構造物。
【0157】
一部の例証的実施形態は、ガラス様層を備える構造物を形成する方法であって、シリコーンブロックコポリマーを含む前駆体状の第1の層を堆積させることと;前駆体状の第1の層をプラズマ処理して、シリコーンブロックコポリマーの少なくとも一部をガラス様層へと変換することと、を含む、方法を含み得る。
【0158】
プラズマ処理する工程が、少なくとも酸素の存在下で行われる、このような方法。プラズマ処理する工程が、酸素含有プラズマによって行われる、このような方法。プラズマ処理する工程が、酸素含有雰囲気中で行われる、このような方法。前駆体状の第1の層をプラズマ処理する前に構造化することを更に含む、このような方法。前駆体状の第1の層を構造化する工程が、第1の層を成型すること、第1の層をエンボス加工すること、又はこれらの組み合わせを含む、このような方法。プラズマ処理が、前駆体状の第1の層に対して力が加えられている間に実行される、このような方法。力が、プラズマ処理後に取り除かれる、このような方法。構造物が、プラズマ処理後にプリントされる、このような方法。ガラス様層上に1種以上の追加的な材料を堆積させることを更に含む、このような方法。1種以上の追加的な材料が、シリコーンブロックコポリマーを含む、第2の前駆体状の第1の層を含む、このような方法。第2の前駆体状の第1の層をプラズマ処理して、第2のガラス様層を形成することを更に含む、このような方法。前駆体状の第1の層が、バリアフィルム上に堆積される、このような方法。前駆体状の第1の層が、有機発光ダイオード(OLED)構造物を備える構造物上に堆積される、このような方法。複合構造物を機械的に切断して、第1の複合部及び第2の複合部を形成することと、第1及び第2の複合部を一緒に接着することと、を更に含む、このような方法。切断工程及び接着工程を繰り返すことを更に含む、このような方法。前駆体状の第1の層を介して、複合構造物を物品に接着することを更に含む、このような方法。
【0159】
一部の例証的物品は、一次構造物;並びに一次構造物の少なくとも一部の表面上に配置された複合構造物であって、シリコーンブロックコポリマーを含む第1の層と、第1の層と隣接する第1の表面及び反対側の第2の表面を有し、第1の層のシリコーンブロックコポリマーから形成されている、移行層と、移行層の第2の表面と隣接するガラス様層であって、ガラス様層の少なくとも一部が移行層から形成されている、ガラス様層と、を含む、複合構造物を備える、物品を含み得る。
【0160】
一次構造物が、電子デバイスを含む、このような物品。一次構造物が、窓、マイクロフルイディクス、センサー、フォトリソグラフィクス、エレクトロルミネッセンス照明、パッケージ、及び接着剤から選択される、このような物品。一次デバイスが、表示デバイスである、このような物品。表示デバイスが、有機発光ダイオード(OLED)表示デバイスである、このような物品。
【0161】
以下の非限定的実施例は、複合構造物を形成する様式及び複合構造物自体について、より完全に説明する働きをする。これらの実施例は、本開示の範囲又は後に続く特許請求の範囲を制限するように働くことは決してなく、例証のみを目的として提示されるものであることが理解される。
【実施例】
【0162】
実施例におけるすべての部、百分率、比などは、別途断りのない限り、重量による。使用した溶媒及び他の試薬は、特に異なる指定のない限り、Sigma-Aldrich Corp.,St.Louis,Missouriから入手した。
【表1】
【0163】
調製例
実施例1(表ではE1)は、シリコーンポリオキサミドPSAの厚さ5マイクロメートルの層であった。使用されたMQ樹脂がR1であったという変更を伴って、米国特許第7,371,464号の実施例5に従ってPSAを調製するために使用した41K PDMSジアミン(米国特許第6,534,615号の実施例4に記載されているように調製された、分子量がおよそ41,000のポリジメチルシロキサンジアミン)から形成された。シリコーンポリオキサミド対R1の比は、50:50であった。使用した溶媒は、30:70の比のIPA及びトルエンであった。結果として得られた溶液の最終的な固形分%は、コーティング前に20%であった。このシリコーン接着剤溶液を、ライナーL1上にダイコーティングした。摂氏72度の溶媒オーブンを使用して溶媒を除去した後、ライナーL2を乾燥した表面に対して積層した。この実施例は、ライナーL1を取り外し、評価を行った後、下に記載されるプラズマ処理を使用して更に加工することによって、更に加工した。
【0164】
実施例2(表ではE2)は、シリコーンポリウレアPSAの厚さ2マイクロメートルの層であった。50重量%のR2とともに配合した1/1/2のモル比でシリコーンジアミン/ポリアミン-1/H12MDIを含有するエラストマーから形成された。この配合物は、14.86部のD1を、0.05部のP1、39.00部のトルエン及び21.00部の2-プロパノールとともにガラス反応器に入れることで調製した。0.23部のH12MDIを溶液に添加して、混合物を室温で2時間撹拌すると、粘性となった。これに、25.00部のR2を添加した。結果として得られた溶液を、剥離ライナー上にソルベントコーティングして、摂氏70度で10分間乾燥させた。このシリコーン接着剤溶液を、ライナーL1上にダイコーティングした。摂氏70度の溶媒オーブンを使用して溶媒を除去した後、ライナーL2を乾燥した表面に対して積層した。この実施例は、ライナーL1を取り外し、評価を行った後、下に記載されるプラズマ処理を使用して更に加工することによって、更に加工した。
【0165】
比較例1(表ではC1)は、2成分シリコーン接着剤の厚さ25マイクロメートルのコーティングであった。このシリコーン接着剤溶液ADH2を、ライナーL1上にダイコーティングした。摂氏72度の溶媒オーブンを使用して溶媒を除去した後、ライナーL2を乾燥した表面に対して積層した。この実施例は、ライナーL1を取り外し、評価を行った後、下に記載されるプラズマ処理を使用して更に加工することによって、更に加工した。
【0166】
比較例2(表ではC2)は、2成分シリコーン封止剤の厚さ25マイクロメートルのコーティングであった。このシリコーン溶液ADH3を、ライナーL1上にダイコーティングした。摂氏72度の溶媒オーブンを使用して溶媒を除去した後、ライナーL2を乾燥した表面に対して積層した。この実施例は、ライナーL1を取り外し、評価を行った後、下に記載されるプラズマ処理を使用して更に加工することによって、更に加工した。
【0167】
実施例3(E3 Hex及びE3 Linear)は、アクリレート構造でプリントされ、構造化(Hex及びLinear)ライナーに積層された、シリコーンポリオキサミドADH1であった。
【0168】
アクリレート配合物:プリントされた構造物は、1重量%のPI1を伴う、50重量%のAMI、25重量%のAM2、及び25重量%のAM3で構成されたアクリレート配合物である。
【0169】
プリンティング構造:サンプルは、FLEXI-PROOFERフレキソ印刷ユニット(Weller Patents Development,Putney,London England)を使用して、上述のアクリレート配合物をADH1に対してプリントすることによって調製した。使用したアニロックスロールは、60度で六角セルが刻まれた、4 BCM 700線/インチ(1,778線/cm)であった。ピッチが150マイクロメートルであり、フィーチャーの寸法が30マイクロメートルであるランダムサークルスタンプ(random circle stamp)を使用した。プリントした後、サンプルを、Dバルブを備えるLIGHTHAMMER 6 UV硬化システム(Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.,Gaitherburg,Maryland)において硬化させた。硬化は、出力100%及び25ft/分(7.6m/分)、1パスで行われた。
【0170】
接着剤の構造化:次いで、サンプルのプリントした構造化側を、構造化ライナーに積層した。E3 HexはL4であった。E3 LinearライナーはL5であった。これらの実施例は、それぞれライナーL4又はL5を取り外し、評価を行った後、下に記載されるプラズマ処理を使用して更に加工することによって、更に加工した。
【0171】
プラズマ処理
以下の一般的手順に従って、実施例(E1~E3及びC1、C2)をプラズマに曝した:シラン基及びシロキサン基を有する表面層を、反応性イオンエッチング(RIE)用に構成された、26インチの下部電力電極及び中央ガス排気を伴う商用バッチプラズマシステム(Plasmathermモデル3032)を使用して、PSA上に形成した。チャンバは、ドライメカニカルポンプ(EdwardsモデルiQDP80)によって補強されたルーツブロアー(EdwardsモデルEH1200)によってポンプ処理した。RF電力は、5kWの13.56Mhzソリッドステート発生器(RFPPモデルRF50S0)によって、インピーダンスマッチングネットワークを介して送達した。このシステムは、5mTorrの公称ベース圧力を有する。ガスの流速は、MKS流量調節器によって制御した。すべてのフィルムサンプルを、下部電力電極に繋いだ。縁部シールサンプルを、ガラスプレートを使用することで持ち上げてシース領域から出した。サンプルを挿入した後、反応器チャンバを、ポンプによって1.3Pa(10mTorr)未満のベース圧力まで下げた。プラズマ処理は、規定された流速で、適切な種類のガス及び/又は液体前駆物質を供給することによって実現された。使用した条件のうちの一方は、750ワットのrf電力で300秒間、500sccmのO2であった。他方の条件は、750ワットのrf電力で300秒間、500sccmのO2の後、750ワットのrf電力で300秒間、25sccmのO2-SiMe4(テトラメチルシラン)及び500sccmのO2で、堆積層を開始した。一旦流れが安定化したら、rf電力を電極に対して印加して、プラズマを発生させた。プラズマは、上で詳述したように、規定量の時間の間、付けられたままであった。この処理の後、RF電力及びガスの供給を止め、チャンバは大気圧に戻した。
【0172】
結果
時間の関数としての接触角
プラズマ処理されていないサンプル及びプラズマ処理されたサンプルにおいて、Kruss(Hamburg,Germany)DSA100接触角装置(5マイクロリットルの液滴を、毎分195マイクロリットルで送達する)を使用して、静的水接触角を室温で測定した。5回の反復の平均値(0.5~5度の範囲内の標準偏差)を、下の表1に与える。これらの結果は、E1及びE2が、プラズマ処理の10日後でも低減された接触角を保持した(より親水性のガラス状表面と一貫している)一方で、比較サンプルでは、プラズマ処理の10日後には疎水性の回復が起こったことを示している。
【表2】
【0173】
XPS表面特性評価
O
2プラズマ処理後又はO
2-SiMe
4プラズマ処理後のE1及びE2の表面を、スパッタリング(イオンガン 2keV Ar
+、3mm×3mmラスター)によるXPS(Physical Electronics Quantera II(商標))で特性評価して、深さ/スパッタ時間の関数として組成を判定した。これらの表面は、表面から10~170nmの範囲の距離にわたって、第1の層に向かう組成勾配を有する、ガラス状二酸化ケイ素の組成を有することが示された。表2は、複合構造について概説したものであり、表3は、炭素(C)、酸素(O)及びケイ素(Si)のXPS原子百分率、並びにE1に関するC:O(Oについて正規化した)対スパッタ時間について示している。このグラフは、
図2において見ることができる(表面から170nm(左側)から最終プラトー/層勾配の開始(中心~右側)まで)。表3の網掛け部は移行層を示している。
【表3】
【表4】
【0174】
図3は、O
2プラズマ条件下でプラズマ処理を行った後の、E1組成に関するXPSデータ由来の結果について示している。
図4は、O
2-SiMe
4プラズマのみの条件下でプラズマ処理を行った後の、E2に関するXPSデータについて示している。
図5は、O
2プラズマ条件下における、E2に関するXPSデータについて示している。
【0175】
SEM表面特性評価縁部シール
E1のサンプル(ライナーL1を取り外した)を、スライドガラスに積層させた。次いで、第2のライナーL2を取り外し、E1頂部のPSA表面に対して第2のスライドガラスを積層させた。その後、上の手順に従って、E1の露出した縁部を、O
2-SiMe
4プラズマで処理した。O
2-SiMe
4プラズマ処理後のE1の表面を、SEMで特性評価した。プラズマによって生成されたガラス状材料は、両方のサンプルの表面において見ることができた。2つの倍率での2枚の縁部画像を示しているが、ガラス状の断片を見ることができる。
図6は、倍率1500倍の縁部を示しており、
図7は、倍率15,000倍の縁部を示している。
【0176】
E3 Hex及びE3 LinearのSEM及び光学顕微鏡特性評価
六角構造のE3 Hexシリコーンポリオキサミド層の表面の光学顕微鏡及びSEM画像(構造化ライナーを取り外した後)を、
図8及び
図14において見ることができ、直線構造のE3 Linearシリコーンポリオキサミド層の表面の画像(構造化ライナーを取り外した後)を、
図9及び
図12において見ることができる。
【0177】
次いで、2つのサンプル(E3 Hex及びE3 Linear)を、上で考察した通り、O
2-SiMe
4プラズマ処理した。プラズマ処理後のE3 Hexシリコーンポリオキサミド層の表面の光学顕微鏡及びSEM画像を、
図10及び
図15において見ることができ、プラズマ処理後のE3 Linearシリコーンポリオキサミド層の表面の光学顕微鏡及びSEM画像を、
図11及び
図13において見ることができる。
図11及び
図13では、エンボス加工されたライナーの積層中に接着剤層に押し込まれた、プリントされた構造物を見ることができる。
【0178】
延伸加工
実施例2(E2)のサンプルからL1ライナーを取り外した。4インチ×6インチのFILM1のサンプル(ライナーは取り外した)を、露出面に積層させた。次いで、L2ライナーを取り外し、サンプルを1方向に延伸させてサンプルの長さを2倍にして、定位置で保持した。サンプルを、上述した通り、O
2-SiMe
4プラズマ処理した。処理が完了したら、サンプルを元々の寸法に弛緩させた。SEM画像を撮影したが、これは
図16(倍率1500倍)及び
図17(倍率5000倍)において見ることができる。
【0179】
インク受理性試験
O
2プラズマ処理前及びその11日後のサンプルE1及びC2に、MARKERで線を引いた。両方のサンプルに、MARKERで2本の平行な線を引き、画像を撮った。
図18は、処理前のE1の画像を示しており、
図19は、プラズマ処理の11日後のE1を示しており、
図20は、プラズマ処理の11日後のC2を示している。結果を表4に示す。なしは、湿潤なしに相当する。有りは、湿潤に相当する。
【表5】
【0180】
このように、ガラス様層を含む複合構造物及び形成方法の実施形態が開示される。開示される実施形態は、限定ではなく、例証を目的として提示されている。図面及び本明細書の実施形態に関して描写及び記載された構成要素は、交換可能であり得ることも理解されるであろう。