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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ポリ(環状イミノエーテル)
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/02 20060101AFI20220308BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220308BHJP
【FI】
C08G73/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K45/00
A61K38/02
A61K47/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018566217
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017066489
(87)【国際公開番号】W WO2018002382
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】16177411.2
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513008731
【氏名又は名称】ユニヴェルシテイト ヘント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ホーヘンボーム, リシャルト
(72)【発明者】
【氏名】フェルブラーケン, バルト
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-182724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00-73/26
A61K 31/00-48/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
Ini-[Ox]-[Oz]-Nuc (I)
{式中:
Iniはカチオン性重合の開始剤の残基を表し、
Nucは求核剤の残基を表し、
OxはN(R)CHRCHRを表し;各Rは独立してH又はC(O)R11を表し;R11は独立して任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル又は任意選択で置換されたアリールを表し;
OzはN(R)CHRCHRCHRを表し;各Rは独立してC(O)R21又はHを表し;R21は独立して任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル又は任意選択で置換されたアリールを表し;
各Rは独立してH、直鎖状又は分枝状C1~3アルキルを表し;
m≧5;
n≧5;
m+n≧20;
3:97≦m:n≦97:3}
によって表されるグラジエントコポリマーであって、
等しいサイズの3つの断片、Ini隣接断片(Ini断片)、Nuc隣接断片(Nuc断片)、及びIni断片とNuc断片を分ける中心断片を含み、
前記コポリマーのIni断片のモノマー比[Oz]/[Ox]が前記コポリマーのNuc断片の同じ比よりも少なくとも2倍高い又は低い、グラジエントコポリマー
【請求項2】
がHを表す、請求項1に記載のグラジエントコポリマー。
【請求項3】
10≦m≦250である、請求項1又は2に記載のグラジエントコポリマー。
【請求項4】
10≦n≦250である、請求項1~3のいずれか一項に記載のグラジエントコポリマー。
【請求項5】
各R21が独立して、任意選択で置換されたC1~9アルキルを表す、請求項1~4のいずれか一項に記載のグラジエントコポリマー。
【請求項6】
各R11が独立して、任意選択で置換されたC1~9アルキル又はシクロプロピルを表す、請求項1~5のいずれか一項に記載のグラジエントコポリマー。
【請求項7】
請求項1に記載のグラジエントコポリマーを調製する方法であって、前記方法が、2位が置換されていてもよい2-オキサゾリン及び2位が置換されていてもよい2-オキサジンを3:97~97:3の範囲のモル比で含むモノマー反応混合物のカチオン性開環重合を含み、前記2-オキサゾリンの2位の任意選択の置換基が、請求項1に規定された 11 あり、前記2-オキサジンの2位の任意選択の置換基が、請求項1に規定された 21 ある、方法。
【請求項8】
カチオン性開環重合が、ハロゲン化アルキル、スルホン酸アルキル、ハロゲン化アシル、オキサゾリニウム塩又はスルホン酸から選択されるカチオン性重合開始剤の存在下で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
反応混合物中で形成されるグラジエントコポリマーがペンダントアシル残基の少なくとも50%を除去することによって加水分解される、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
請求項のいずれか一項に記載のグラジエントコポリマー及び前記コポリマーに非共有結合される薬物を含むミセル薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、ポリ(環状イミノエーテル)に関する。より詳細には、本発明は、2-オキサゾリンモノマー及び2-オキサジンモノマーの統計コポリマーに関する。
【0002】
本発明のコポリマーは、医療分野、特にミセル型薬物送達システム及びポリプレックスなどのポリマー治療剤において用いられ得る有用な特性を示す。
【0003】
本発明はまた、任意選択で2-置換2-オキサゾリン及び任意選択で2-置換2-オキサジンを含むモノマー反応混合物のカチオン性開環重合による統計コポリマーを調製する方法も提供する。
【0004】
[発明の背景]
ポリマー治療剤は、合理的に設計された高分子薬物、ポリマー-薬物及びポリマー-タンパク質複合体、共有結合型又は非共有結合型薬物を含有するポリマーミセル、並びにDNA送達のためのポリプレックスを含む。
【0005】
ポリマーミセルは、様々な治療薬の送達に広く使用されている。両親媒性ブロックコポリマーからなるポリマーミセルは疎水性コアを形成し、脂溶性薬物が物理的に取り込まれ得る。親水性ブロック又はセグメントは、親水性の冠を生成し、疎水性コアをカプセル化する。この方法で、難溶性の薬物は、水性媒体中にうまく可溶化され得る。
【0006】
遺伝子治療は、遺伝性障害、がん疾患及びいくつかの網膜疾患など、現在は不治のいくつかの疾患を処置する有望な新しい手段である。遺伝子治療の基本概念は単純である:欠損遺伝子によってコードされたいくつかのタンパク質の産生の失敗を、新しい無傷の遺伝子を細胞の核に送達することにより克服する。ネイキッドDNA自体は細胞によって通常効率的に取り込まれないため、遺伝子送達には担体システム(ベクター)が必要とされる。送達方法としては、組換えウイルス及び合成材料、特にカチオン性ポリマーの使用が挙げられる。ウイルスは現在利用可能な最も効率的な送達ビヒクルであるが、ポリマーは、非常にフレキシブルな化学的性質、生体適合性の能力、簡単、及び安価な合成を含むいくつかの特性を示し、遺伝子送達ビヒクルの優れた候補になる。
【0007】
刺激応答性ポリマー(又はインテリジェントポリマー)は、非ウイルスベクターとして部位、タイミング及び期間特異的な遺伝子発現を得る大きな可能性を有する。刺激応答性ポリマーは、温度、pH、光、イオン強度、電場及び磁場などの環境条件の小さな変化に急な及び可逆的な応答を示し、「スマート」材料として公知の材料のクラスとして出現した。pH及び温度応答性ポリマーは、インテリジェントポリマーシステムの2つの最も一般的なメンバーである。pH応答特性を有するポリマーは通常、疎水性モノマー及びより親水性のイオン化コモノマーからなる。pH、したがって正味電荷の変化は、コポリマーの疎水性と親水性のバランスに依存する相変化を引き起こす。典型的な例は、メタクリル酸(MAc)又はメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)とのメタクリル酸メチル(MMA)のコポリマーである。MMAは疎水性部分であるが、MAcは鎖の親水性部分である。MAcは、COOH基が脱プロトン化される場合、高いpHで親水性であるが、-COOH基がプロトン化される場合、より疎水性になる。DMAEMAとのMMAのコポリマーは、アミノ基がプロトン化される場合、低いpHで親水性であるが、アミノ基が脱プロトン化される場合より疎水性である。これらのコポリマーは低いpHで可溶性であるが、わずかにアルカリ条件下では沈殿する。
【0008】
様々な構造及び化学官能性のポリ(環状イミノエーテル)がリビング、したがってカチオン性開環重合(CROP)によって制御される方法で調製され得る。2-オキサゾリンは、カチオン性開環重合メカニズム及び生じるポリマー特性が熱心に研究された5員環イミノエーテルである。しかしながら、6員環イミノエーテル(2-オキサジン)及び7員環イミノエーテル(2-オキサゼピン)もまたCROPによって重合され得る。
【0009】
ポリオキサゾリンは、顔料分散剤のコーティングに渡る幅広い適用が見出されている。さらに、いくつかのポリオキサゾリンが水溶性又は両親媒性であり、比較的非毒性であるため、生体材料として興味深い。
【0010】
ポリオキサゾリンのホモポリマーだけでなく、ポリオキサゾリンのブロックコポリマー及び統計コポリマーも、当技術分野で公知である。
【0011】
Hrubyら(Polyoxazoline Thermoresponsive Micelles as Radionuclide Delivery Systems、Macromol. Biosci. 2010、10(8)、916~924)は、ABAトリブロックコポリマー、ポリ[2-メチル-2-オキサゾリン-ブロック-(2-イソプロピル-2-オキサゾリン-co-2-ブチル-2-オキサゾリン)-ブロック-2-メチル-2-オキサゾリン]の合成を記載している。コポリマーに導入されたフェノール部分は、モデル条件下での十分なin vitro安定性により好収率で進行するヨウ素125による放射線核種標識を可能にする。
【0012】
国際公開第2009/156180号は、
a)[N(CO)(R)CHCH]-{式中、Rは、任意選択で-OH、-SH、-COOH、-NR’、-COOR’、-CONR’、-CHOによって置換される炭化水素基であり、R’はH又はC1~3アルキルを表し、Rは、第1の繰返し単位が親水性であるように選択される}
によって表される第1の繰返し単位、及び
-「N(CO)(RB)CHCH]-{式中、Rは、任意選択でハロゲン、-OH、-SH、-COOH、-NR”、-COOR”、-CONR”、-CHOによって置換される炭化水素基であり、R”はH、アルキル又はアルケニルを表し、Rは、第2の繰返し単位が第1の繰返し単位より疎水性であるように選択される}
によって表される第2の繰返し単位
を含む少なくとも1つのコポリマー、並びに
b)1つ又は複数の活性剤
を含む活性剤のポリマー送達システムを記載している。
【0013】
国際公開第2013/103297号はポリ(2-オキサゾリン)ポリマーに関する。実施例4は、統計コポリマーを産生する2-エチル-2-オキサゾリン又は2-メチル-2-オキサゾリンとの(2-メトキシカルボニルエチル)-2-オキサゾリンの共重合を記載している。
【0014】
Schultzら(Drug-Induced Morphology Switch in Drug Delivery Systems Based on Poly(2-oxazoline)s、ACS Nano、2014 Mar 25、8(3):2686~96)は、パクリタキセルを両親媒性ABAポリ(2-オキサゾリン)トリブロックコポリマーへ組み込んだ。親水性ブロックAはポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)を含むが、中間ブロックBはかろうじて疎水性のポリ(2-n-ブチル-2-オキサゾリン)又は高疎水性のポリ(2-n-ノニル-2-オキサゾリン)のいずれかであった。
【0015】
Lambermont-Thijsら(Efficient Cationic Ring-Opening Polymerization of Diverse Cyclic Imino Ethers:Unexpected Copolymerization Behavior、Macromolecules 2011、44、4320~4325)は、2-メチル-2-オキサゾリン及び/又は2-フェニル-2-オキサゾリンとの4-エチル-2-ブチル-2-オキサゾリンの共重合を記載している。この共重合の動態解析により、2-メチル-2-オキサゾリンリッチドメインから始まり、4-エチル-2-ブチル-2-オキサゾリンリッチドメインを介して、重合の最終段階で2-フェニル-2-オキサゾリンリッチドメインへのグラジエントコポリマー構造の形成が明らかになった。
【0016】
Jakschら(The collapse and aggregation of thermoresponsive poly(2-oxazoline) gradient copolymers:a time-resolved SANS study、Colloid Polym Sci (2014) 292:2413~2425)は、イソ-プロピル-2-オキサゾリンとn-ノニル-2-オキサゾリンのグラジエントコポリマーの合成を記載している。
【0017】
オキサゾリンとオキサジンのブロックコポリマーも公知である。
【0018】
Kobayashiら(Block copolymer from cyclic imino ethers:a new class of nonionic polymer surfactant. Macromolecules. 1986、v. 19、n. 15、535~541)は、連続的なモノマー付加プロトコールを使用する無置換又は2-置換5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジンと組合せた2-置換2-オキサゾリンのカチオン性開環重合を利用することによって調製された環状イミノエーテルから形成されるブロックコポリマーを記載している。
【0019】
Bloksmaら(Poly(cyclic imino ether)s Beyond 2-Substituted-2-oxazolines、Macromol. Rapid Commun. 2011、32、1419~1441)は、2-オキサジン(2-OZI)並びにキラル4-及び5-置換2-オキサゾリン(2-OZO)の重合について、並びに生じるポリマーの選択された特性の概要を提供する。筆者らは、2-メチル-2-OZOと2-フェニル-2-OZIのブロックコポリマー、2-フェニル-2-OZOと2-メチル-2-OZIのブロックコポリマー、及び2-フェニル-2-OZOと2-無置換-2-OZIのブロックコポリマーの調製について記載している。
【0020】
米国特許第5854331号は、顔料分散剤としてのオキサゾリンとオキサジンのブロックコポリマー及びインクジェットインクでのそれらの使用を記載している。ブロックポリマー分散剤はAB、ABA,及びBABブロックコポリマーからなる群から選択され、Aブロックが疎水性であり、Bブロックが親水性であり、前記ブロックポリマー分散剤は2-置換オキサゾリンモノマー、2-置換オキサジンモノマー、及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーから構成される。
【0021】
[発明の概要]
本発明者らは、所望の特性を有するポリ(環状イミノエーテル)が2-オキサゾリンモノマー並びに2-オキサジンモノマーを含有するモノマー反応混合物の統計重合によって大きな困難なく産生され得ることを発見した。
【0022】
したがって、本発明の一態様は、以下の式(I):
Ini-[Ox]-[Oz]-Nuc (I)
{式中:
Iniはカチオン性重合の開始剤の残基を表し、
Nucは求核剤の残基を表し、
OxはN(R)CHRCHRを表し;各Rは独立してH又はC(O)R11を表し;R11は独立して任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル又は任意選択で置換されたアリールを表し;
OzはN(R)CHRCHRCHRを表し;各Rは独立してC(O)R21又はHを表し;R21は独立して任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル又は任意選択で置換されたアリールを表し;
各Rは独立してH、直鎖状又は分枝状C1~3アルキルを表し;
m≧5;
n≧5;
m+n≧20;
3:97≦m:n≦97:3}
によって表される統計コポリマーに関する。
【0023】
本発明の統計コポリマーは医学分野、特に薬物送達のポリマーミセル及びDNA送達のポリプレックスで利用され得る有用な特性を示す。
【0024】
本発明はまた、統計コポリマーを調製する方法も提供し、前記方法は任意選択でモル比3:97~97:3の範囲の2-置換2-オキサゾリン及び任意選択で2-置換2-オキサジンを含むモノマー反応混合物のカチオン性開環重合を含み、各2-置換-2-オキサゾリン及び2-置換-2-オキサジンの2位の任意選択の置換基は独立してC1~12アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル又は任意選択で置換されたアリールから選択される。
【0025】
本発明者らは、統計コポリマーのモノマー組成物及び結果的なコポリマーの特性は、任意選択で2-置換2-オキサゾリン及び任意選択で2-置換2-オキサジンの異なる組合せを選択することによって容易に操作され得ることを見出した。2-オキサゾリンの2位の置換基と2-オキサジンの2位の置換基の両方は、共重合反応におけるこれらのモノマーの参加に有意な効果を持つ。したがって、ランダムコポリマーは、例えば、共重合化中に等しく反応性の2-置換-2-オキサゾリン及び2-置換-2-オキサジンを選択することによって産生され得る。ランダムコポリマーは、特にコポリマーがポリカチオン性ポリマーである場合にポリプレックス形成に特に好適である。
【0026】
一方、グラジエントポリマーは、共重合化反応中にはっきりと異なる反応性を示す2-オキサゾリン及び2-オキサジンを選択することによって産生され得る。反応性の違いが比較的少ない2-オキサゾリン/2-オキサジン組合せを選択することにより、鎖に渡ってモノマー組成物のゆっくりとした徐変を示すグラジエントコポリマーが産生され得る。反応性が実質的に異なる2-オキサゾリン/2-オキサジン組合せを選択することにより、鎖に渡ってモノマー組成物のより急な変化を示すグラジエントコポリマーが産生され得る。
【0027】
グラジエントコポリマーの組成物の徐変は、ブロックコポリマーと比較して鎖間反発作用の低下をもたらす。理論研究は、グラジエントコポリマーの組成物変動の程度はモノマー分布によって変更され、ブロックコポリマーに見られる段状のプロファイルよりもシヌソイド組成物プロファイルへと組織化するであろうと予測した。これは、ランダム及びブロックコポリマーに見られる1つ又は2つよりも広範囲の可能な局所環境をもたらす。
【0028】
本発明はまた、ミセル薬物送達システム又はポリプレックスにおける本発明の統計コポリマーの適用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】カイネティックプロット
図2】グラジエント分析
図3】カイネティックプロット
図4】グラジエント分析
図5】カイネティックプロット
図6】グラジエント分析
図7】カイネティックプロット
図8】グラジエント分析
図9】カイネティックプロット
図10】グラジエント分析
図11】カイネティックプロット
図12】グラジエント分析
図13】カイネティックプロット
図14】グラジエント分析
【0030】
[発明の詳細な説明]
したがって、本発明の第1の態様は、以下の式(I):
Ini-「Ox]-「Oz]-Nuc (I)
{式中、
Iniはカチオン性重合の開始剤の残基を表し、
Nucは求核剤の残基を表し、
OxはN(R)CHRCHRを表し;各Rは独立してH又はC(O)R11を表し;R11は独立して任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル又は任意選択で置換されたアリールを表し;
OzはN(R)CHRCHRCHRを表し;各Rは独立してC(O)R21又はHを表し;R21は独立して任意選択で置換されたC1~12アルキル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアラルキル又は任意選択で置換されたアリールを表し;
各Rは独立してH、直鎖状又は分枝状C1~3アルキルを表し;
m≧5;
n≧5;
m+n≧20;
3:97≦m:n≦97:3}
によって表される統計コポリマーに関する。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「統計コポリマー」は、モノマー残基の配列が統計的法則に従うコポリマーを指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「ランダムコポリマー」は、鎖の特定の点で所与の型のモノマー残基を見出す可能性が鎖のモノマー残基のモル分率に類似している統計コポリマーを指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「グラジエントコポリマー」は、鎖に沿ってモノマー組成物の徐変を示す統計ポリマーを指す。この配置は、鎖に沿って一定の平均組成物を維持するランダムコポリマー及び鎖に沿って急変するブロックコポリマーとは異なる。
【0034】
本発明の統計コポリマーは、コポリマーの異なる断片のモノマー組成物と比較して好適に特徴付けられ得る。この目的のため、コポリマーは3つの等しい断片、すなわちIni隣接断片(Ini断片)、Nuc隣接断片(Nuc断片)、及びIni断片とNuc断片を分ける中心断片に分割される。モノマー単位の総数が3の倍数ではない場合、中心断片のサイズはIni断片とNuc断片が等しいサイズになるように選ばれる。以下の表は、いくつかの計算値の例を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
ランダムコポリマーの場合、Ini断片とNuc断片のモノマー組成物は非常に類似しているが、グラジエントコポリマーの場合、これらの断片のモノマー組成物は類似していない。
【0037】
前述の式(I)では、各Rが独立してH又はメチルを表すことが好ましく、Hを表すことが最も好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態では、R残基の少なくとも50%がC(O)R11であり、R残基の少なくとも70%がC(O)R11であることが好ましく、R残基の少なくとも90%がC(O)R11であることがより好ましい。
【0039】
本発明の代替えの実施形態では、R残基の50%より多くがHである。R残基の70%より多くがHであることが好ましく、R残基の90%より多くがHであることがより好ましい。以下に説明されるように、R残基の大部分がHである本発明のコポリマーは、オキサゾリンモノマーを含有するモノマー反応混合物を重合し、続いてコポリマーのオキサゾリン単位からペンダントアシル基を加水分解除去することによって合成され得る。
【0040】
さらなる実施形態では、R残基の少なくとも50%がC(O)R21であり、R残基の少なくとも70%がC(O)R21であることが好ましく、R残基の少なくとも90%がC(O)R21であることがより好ましい。
【0041】
代替えの実施形態では、R残基の50%より多くがHであり、R残基の70%より多くがHであることが好ましく、R残基の90%より多くがHであることが最も好ましい。R残基の大部分がHである本発明のコポリマーは、オキサジンモノマーを含有するモノマー反応混合物を重合し、続いてコポリマーのオキサジン単位からペンダントアシル基を加水分解除去することによって合成され得る。
【0042】
本発明のコポリマーは、典型的には少なくとも5つのオキサゾリン単位([Ox])を含有する。したがって、好ましい実施形態では、式(I)の整数mは少なくとも5であり、少なくとも10であることがより好ましく、少なくとも20であることが最も好ましい。典型的には、整数mは250を超えない。
【0043】
本コポリマーのオキサジン単位([Oz])の数は、典型的には少なくとも5である。言い換えると、式(I)の整数nは少なくとも5であることが好ましい。整数nは少なくとも10であることがより好ましく、nは少なくとも20であることが最も好ましい。典型的には、整数nは250を超えない。
【0044】
本発明のコポリマーのオキサゾリン単位とオキサジン単位の組合せは、典型的には少なくとも20である(m+n≧20)。m+n≧30がより好ましく、m+n≧50が最も好ましい。本発明のコポリマーのオキサゾリン単位とオキサジン単位の組合せは、典型的には500を超えない(m+n≦500)。
【0045】
本明細書に定義したオキサゾリン単位及びオキサジン単位は、典型的には、本発明の統計コポリマーに5:95~95:5の比で存在し、10:90~90:10の比がより好ましく、20:80~80:20の比が最も好ましい。
【0046】
本発明のコポリマーは、本明細書に定義したオキサゾリン単位及びオキサジン単位以外に他のモノマー単位を含有し得る。オキサゾリン単位及びオキサジン単位はともに、コポリマーに存在する全てのモノマー単位のバルクを表すことが好ましい。言い換えると、コポリマーのモノマー単位の総数が整数tで表される場合、コポリマーは以下の条件を満たす:(m+n)/t>0.5。(m+n)/t>0.7がより好ましく、(m+n)/t>0.9が最も好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態は、ランダムコポリマーの形態の統計コポリマーに関する。本発明者らは、ランダムコポリマーが実質的に異なる個々の重合比を有するオキサゾリンとオキサジンモノマーの組合せから産生され得ることを、驚くべきことにこれらの組合せのいくつかは共重合中に等しく反応性であるため、予期せず見出した。
【0048】
典型的には、ランダムコポリマーの場合には、Ini断片とNuc断片のモノマー比[Oz]/[Ox]は、2倍以下異なる。ランダムコポリマーの場合、これらの比は1.75倍以下異なることがより好ましく、1.5倍以下異なることが最も好ましい。
【0049】
本発明のランダムコポリマーでは、各R11は独立して、メチル、エチル、シクロプロピル、n-プロピル又はn-ブチルを表すことが好ましい。各R11は独立して、メチル、エチル又はシクロプロピルを表すことがより好ましい。各R11は独立して、メチル又はエチルを表すことが最も好ましい。
【0050】
本発明のランダム共重合体の各R21は独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル若しくはシクロプロピル、n-ブチル又はn-ノニルを表すことが好ましい。各R21は独立して、エチル、n-プロピル又はイソプロピルを表すことがより好ましい。各R21は独立して、エチル又はイソプロピルを表すことが最も好ましい。
【0051】
本発明の特に好ましい実施形態により、統計コポリマーはランダムコポリマーであり、
11残基の少なくとも80%がメチルであり、R21残基の少なくとも80%がイソ-プロピルである;又は
11残基の少なくとも80%がエチルであり、R21残基の少なくとも80%がイソ-プロピルである;又は
11残基の少なくとも80%がシクロプロピルであり、R21残基の少なくとも80%がメチルである;又は
11残基の少なくとも80%がシクロプロピルであり、R21残基の少なくとも80%がエチルである。
【0052】
本発明の別の有利な実施形態により、統計コポリマーはグラジエントコポリマーであり、Ini断片のモノマー比[Oz]/[Ox]が、コポリマーのNuc断片の同じ比よりも少なくとも2倍高い又は低い。グラジエントポリマーの場合、これらの2つの比は、少なくとも3倍異なることがより好ましく、少なくとも5倍異なることが最も好ましい。典型的には、これらの2つの比は、本発明のグラジエントポリマーでは20倍より多く異ならない。
【0053】
本発明者らは、オキサジンモノマーの重合反応性は、典型的には、オキサゾリンモノマーの重合反応性よりも著しく低い事実にもかかわらず、コポリマーのNuc断片に対してコポリマーのIni断片ではオキサジンモノマー単位が大きな比率を占めるグラジエントポリマーを調製できることを予期せず発見した。したがって、特に好ましい実施形態では、本発明の統計コポリマーはグラジエントコポリマーであり、コポリマーのIni断片のモノマー比[Oz]/[Ox]は、コポリマーのNuc断片の同じ比よりも少なくとも2倍高く、少なくとも3倍高いことがより好ましく、5~10倍高いことが最も好ましい。
【0054】
本発明のグラジエントコポリマーの各R11は独立して任意選択で置換されたC1~9アルキルを表すことが好ましい。グラジエントの各R11は独立して…を表すことがより好ましく、各R11は独立して…を表すことが最も好ましい。
【0055】
本発明のグラジエントコポリマーでは、典型的には、各R21は独立して、任意選択で置換されたC1~9アルキルを表すことが好ましく、各R21は独立してエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はn-ノニルを表すことがより好ましく、各R21は独立してn-プロピル、n-ブチル又はn-ノニルを表すことが最も好ましい。
【0056】
本発明の特定の好ましい実施形態により、統計コポリマーはグラジエントコポリマーであり、
11残基の少なくとも80%がメチルであり、R21残基の少なくとも80%がメチルである;又は
11残基の少なくとも80%がエチルであり、R21残基の少なくとも80%がエチルである;又は
11残基の少なくとも80%がn-プロピルであり、R21残基の少なくとも80%がn-プロピルである;又は
11残基の少なくとも80%がn-プロピルであり、R21残基の少なくとも80%がエチルである;又は
11残基の少なくとも80%がn-プロピルであり、R21残基の少なくとも80%がメチルである;又は
11残基の少なくとも80%がエチルであり、R21残基の少なくとも80%がメチルである;又は
11残基の少なくとも80%がn-ブチルであり、R21残基の少なくとも80%がメチルである;又は
11残基の少なくとも80%がn-ブチルであり、R21残基の少なくとも80%がエチルである。
【0057】
本発明の別の態様は、統計コポリマーを調製する方法であって、前記方法が、任意選択で2-置換2-オキサゾリン及び任意選択で2-置換2-オキサジンを3:97~97:3の範囲のモル比で含むモノマー反応混合物のカチオン性開環重合を含み、2-置換-2-オキサゾリンの2位の任意選択の置換基が、本明細書に先に規定されたR11残基であり、2-置換-2-オキサジンの2位の任意選択の置換基が、本明細書に先に規定されたR21残基である、方法に関する。
【0058】
好ましい実施形態により、モノマー反応混合物は、任意選択で2-置換 2-オキサゾリン及び任意選択で2-置換2-オキサジンを5:95~95:5の範囲のモル比で含み、20:80~80:20の範囲のモル比がより好ましい。
【0059】
モノマー反応混合物は、2-置換2-オキサゾリン及び/又は2-置換2-オキサジンを含有することが好ましい。反応混合物は、2-置換2-オキサゾリン及び2-置換2-オキサジンを含有することがより好ましい。
【0060】
カチオン性開環重合は、カチオン性重合開始剤、特に当技術分野で公知のように求電子剤の存在下で行われることが好ましい。好適なカチオン性重合開始剤の例としては、ハロゲン化アルキル、スルホン酸アルキル、ハロゲン化アシル、スルホン酸及びオキサゾリニウム塩が挙げられる。
【0061】
本方法では、共重合反応は、当技術分野で一般的に使用されるように、コポリマーを求核剤と反応させるステップによって終結されることが好ましい。例としては、水、アミン(アンモニア、一級、二級、三級)、カルボン酸、チオール酸、アルコキシド、アジドフタルイミド及び水酸化物が挙げられる。反応混合物が依然としてモノマー反応物質を含有する場合に、求核剤が添加され得る。
【0062】
モノマー反応混合物は少なくとも20重量%の一般に適用される溶媒、例えばアセトニトリル、ブチロニトリル、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、スルホラン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アニソール及びそれらの混合物を含有することが好ましい。反応混合物は、アセトニトリル、クロロベンゼン及びそれらの混合物から選択される少なくとも40重量%の溶媒を含有することがより好ましい。
【0063】
本方法におけるオキサゾリンとオキサジンモノマーの共重合は、40℃~200℃の範囲の温度で行われることが好ましく、80℃~160℃の範囲の温度がより好ましい。
【0064】
本方法の特定の好ましい実施形態により、反応混合物中で形成される統計コポリマーは、ペンダントアシル残基の少なくとも50%を除去することにより加水分解され、ペンダントアシル残基の少なくとも70%がより好ましく、ペンダントアシル残基の少なくとも90%が最も好ましい。アシル残基の加水分解は、ポリプレックスでの使用に理想的に適したポリカチオン性ポリマーを産生する。
【0065】
本発明のさらなる態様は、本明細書に先に規定されたランダムコポリマー及び前記コポリマーに非共有結合される治療剤を含む送達システムであって、治療剤が、遺伝子、DNA、RNA、siRNA、miRNA、isRNA、agRNA、smRNA、核酸、ペプチド、タンパク質、化学療法剤、疎水性薬剤、及び小分子薬剤からなる群から選択される、送達システムに関する。ランダムコポリマーへの治療剤の結合により、細胞毒性が低い細胞への治療剤の効果的な輸送が可能になる。
【0066】
治療剤は6.5~8の範囲の既定のpHで電荷を有し、ランダムコポリマーポリマーは既定のpHで治療剤と反対の電荷を有し、既定のpHで治療剤とランダムコポリマーの間に静電結合が形成されることが好ましい。治療剤は前述の既定のpHで陰性電荷を有し、一方コポリマーは同じ既定のpHで陽性電荷を有することが好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、ランダムコポリマーに結合される治療剤は、遺伝子、DNA、RNA、siRNA、miRNA、isRNA、agRNA及びsmRNAから選択される。
【0068】
ランダムコポリマーと治療剤を含有する送達システムは、治療処置に好適に使用することができ、前記処置は送達システムの非経口投与を含むことが好ましい。
【0069】
さらに別の態様では、ミセル薬物送達システムは、本明細書に先に規定されたグラジエントコポリマー及び前記コポリマーに非共有結合される薬物を含む。
【0070】
水中で形成される場合、ポリマーミセルはナノ粒子であり、典型的には殻として親水性ポリマー鎖及びコアとして疎水性ポリマー鎖を有する。したがって、本発明のグラジエントコポリマーは疎水性部分並びに親水性部分を含むことが好ましい。ミセル薬物送達システムの薬物は、ミセルのコアにおいて疎水性ポリマー鎖に非共有結合される薬物であることが好ましい。
【0071】
グラジエントコポリマー及び薬物を含有する送達システムは、治療処置に好適に使用され、前記処置は薬物送達システムの経口投与を含むことが好ましい。
【0072】
本発明のミセル薬物送達システムに組み込まれ得る薬物の例としては、エキセメスタン(Exemestance)(アロマシン)、カンプトサル(Camptosar)(イリノテカン)、エレンス(Ellence)(エピルビシン)、フェマーラ(Femara)(レトロゾール)、グリーバック(Gleevac)(メシル酸イマチニブ)、レンタロン(Lentaron)(ホルメスタン)、シタドレン(Cytadren)/オリメテン(Orimeten)(アミノグルテチミド)、テモダール(Temodar)、プロスカー(Proscar)(フィナステリド)、ビアズル(Viadur)(リュープロリド)、ネクサバール(Nexavar)(ソラフェニブ)、カイトリル(Kytril)(グラニセトロン)、タキソテール(Taxotere)(ドセタキセル)、タキソール(Taxol)(パクリタキセル)、カイトリル(Kytril)(グラニセトロン)、ベサノイド(Vesanoid)(トレチノイン)(レチンA)、ゼローダ(XELODA)(カペシタビン)、アリミデックス(Arimidex)(アナストロゾール)、カソデックス(Casodex)/コスデックス(Cosudex)(ビカルタミド)、ファソロデックス(Faslodex)(フルベストラント)、イレッサ(Iressa)(ゲフィチニブ)、ノルバデックス(Nolvadex)、イスツバル(Istubal)、バロデクス(Valodex)(タモキシフェンクエン酸塩)、トムデックス(Tomudex)(ラルチトレキセド)、ゾラデックス(Zoladex)(ゴセレリン酢酸塩)、ロイスタチン(Leustatin)(クラドリビン)、ベルケイド(Velcade)(ボルテゾミブ)、マイロターグ(Mylotarg)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、アリムタ(Alimta)(ペメトレキセド)、ジェムザール(Gemzar)(ゲムシタビン塩酸塩)、リツキサン(Rituxan)(リツキシマブ)、レブリミド(Revlimid)(レナリドミド)、サロミド(Thalomid)(サリドマイド)、アルケラン(Alkeran)(メルファラン)、アドリアマイシン(Adriamycin)(ドキソルビシン)、セルビジン(Cerubidine)(ダウノルビシン)、パクリタキセル、クルクミン及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0073】
本発明は以下の非限定的な実施例によってさらに示される。
【実施例
【0074】
(材料)
マイクロ波バイアルのキャッピングまでの重合混合物の調製に関する全ての操作は、水分濃度≦0.1ppmでVIGOR Sci-Lab SG 1200/750 Glovebox Systemにおいて行われた。
【0075】
重合のため、Robot Sixtyを備えたBiotage Initiator EXP Microwave Systemが使用された。重合の間、マイクロ波合成装置は一定の設定温度(140℃)で操作され、IRセンサーによってモニターされた。
【0076】
GCは、VWR Carrier-160水素生成器並びに長さ30m及び直径0.320mmのAgilent HP-5カラムを備えたAgilent 7890Aシステムにおいて実施された。FID検出器が使用され、注入口は240℃に設定され、スプリット注入比は25:1であった。水素がキャリアガスとして使用され、流速は2mL/分であった。オーブン温度は20℃/分で50℃から120℃に昇温され、続いて50℃/分の勾配で240℃まで昇温された。
【0077】
(共重合動態を決定する一般手順)
ストック溶液は、両方のモノマー(総モノマー濃度4M、個々のモノマー当たり2M)、開始剤(トシル酸メチル、DP100で全面変換又は各モノマーの50個の繰返し単位を狙う)及び溶媒(乾燥アセトニトリル)を含有して作成された。
【0078】
この混合物は、三角形の撹拌子を含む0.5~2mlのバイオタージバイアルに等しく(700μL)分けられ、フタをしてマイクロ波中で140℃まで加熱された。異なる時間間隔の後にバイアルを冷却して重合は停止された。
【0079】
試料はクロロホルムによって希釈され、GC分析のための試料を採取する前に少なくとも1時間撹拌された。変換は、内部標準としてアセトニトリル溶媒でのGCによって、及び比較のため時間ゼロとしてストック溶液の試料の溶媒に対するモノマーの比を使用して決定された。
【0080】
カイネティックプロットの傾きから、2つの個々のモノマーの重合速度定数が算出され、次いでこれらの重合速度定数が使用され、モノマー変換に基づいてOz繰返し単位のOxを割り当てるステップによって100個の繰返し単位の鎖の組成物が算出された。次いで100個の繰返し球によって表されるポリマーのこれらの図式的なプロットが使用され、Int断片とNuc断片の[Oz]/[Ox]比が算出された。この計算方法は、Lobertら(Amphiphilic gradient copolymers containing fluorinated 2-phenyl-2-oxazolines;Microwave-assisted one-pot synthesis and self-assembly in water、J Polym Sci、Part A、Polym Chem 2008、46、5859~5868)に記載されている。
【0081】
〔実施例1〕
2-メチル-2-オキサゾリン(MeOx)及び2-メチル-2-オキサジン(MeOZi)は、一般方法に記載されるように重合された。この重合の分析は、図1に示したカイネティックプロットをもたらし、予期しない逆の共重合挙動を示している。
【0082】
図2に図示したグラジエント分析は、ポリマーのini断片が19単位のMeOZi(黒)及び14単位のMeOx(白)を含有するが、Nuc断片は12単位のMeOZI及び21単位のMeOxを含有することを明らかにした。したがって、Nuc断片に対するIni断片の[Oz]/[Ox]比は、グラジエントモノマー分布を示す2.375に等しい。
【0083】
〔実施例2〕
2-エチル-2-オキサゾリン(EtOx)及び2-メチル-2-オキサジン(MeOZi)は、一般方法に記載されるように重合された。この重合の分析は、図3に示したカイネティックプロットをもたらし、予期しない逆の共重合挙動を示している。
【0084】
図4に図示したグラジエント分析は、ポリマーのIni断片が22単位のMeOZi(黒)及び11単位のEtOx(白)を含有するが、Nuc断片は9単位のMeOZI及び24単位のEtOxを有することを明らかにした。これは、グラジエントモノマー分布を示す5.33のNuc断片に対するIni断片の[Oz]/[Ox]比を与える。
【0085】
〔実施例3〕
2-メチル-2-オキサゾリン(MeOx)及び2-イソ-プロピル-2-オキサジン(ipropOZi)は、一般方法に記載されるように重合された。この共重合の分析は、図5に示したカイネティックプロットをもたらした。
【0086】
図6に図示したグラジエント分析は、コポリマーのIni断片が14単位のipropOZi(白)及び19単位のMeOx(黒)を含有するが、Nuc断片は19単位のipropOZi及び14単位のMeOxを有することを明らかにした。これは、ランダムモノマー分布を示す0.54のNuc断片に対するIni断片の[Oz]/[Ox]比を与える。
【0087】
〔実施例4〕
2-エチル-2-オキサゾリン(EtOx)及び2-イソ-プロピル-2-オキサジン(ipropOZi))は、一般方法に記載されるように重合された。この共重合の分析は、図7に示したカイネティックプロットをもたらし、予期しない逆の共重合挙動を示している。
【0088】
図8に図示したグラジエント分析は、コポリマーのIni断片が18単位のipropOZi(黒)及び15単位のEtOx(白)を含有するが、Nuc断片は15単位のipropOZI及び18単位のEtOxを有することを明らかにした。これは、ランダム様モノマー分布を示す1.44のNuc断片に対するIni断片の[Oz]/[Ox]比を与える。
【0089】
〔実施例5〕
2-ブチル-2-オキサゾリン(ButOx)及び2-メチル-2-オキサジン(MeOZi)は、一般方法と比較してわずかに改変された手順で重合された。モノマーの1:1比の代わりに、2:8(ButOx:MeOZi)が使用された。この共重合の分析は、図9に示したカイネティックプロットをもたらし、予期しない逆の共重合挙動を示している。
【0090】
図10に図示したグラジエント分析は、コポリマーのIni断片は31単位のMeOZi(黒)及び2単位のButOx(白)を含有するが、Nuc断片は19単位のMeOZI及び14単位のButOxを有することを明らかにした。これは、グラジエントモノマー分布を示す11.42のNuc断片に対するIni断片の[Oz]/[Ox]比を与える。
【0091】
〔実施例6〕
2-ブチル-2-オキサゾリン(ButOx)及び2-メチル-2-オキサジン(MeOZi)は、一般方法に記載されるように重合された。この共重合の分析は、図11に示したカイネティックプロットをもたらし、予期しない逆の共重合挙動を示している。
【0092】
図12に図示したグラジエント分析は、コポリマーのIni断片は22単位のMeOZi(黒)及び11単位のButOx(白)を含有するが、Nuc断片は8単位のMeOZI及び25単位のButOxを有することを明らかにした。これは、グラジエントモノマー分布を示す6.25のNuc断片に対するIni断片の[Oz]/[Ox]比を与える。
【0093】
〔実施例7〕
2-ブチル-2-オキサゾリン(ButOx)及び2-メチル-2-オキサジン(MeOZi)は、一般方法と比較してわずかに改変された手順で重合された。モノマーの1:1比の代わりに、8:2(ButOx:MeOZi)が使用された。この共重合の分析は、図13に示したカイネティックプロットをもたらし、予期しない逆の共重合挙動を示している。
【0094】
図14に図示したグラジエント分析は、コポリマーのIni断片は15単位のMeOZi(黒)及び18単位のButOx(白)を含有するが、Nuc断片は1単位のMeOZI及び32単位のButOxを有することを明らかにした。これは、グラジエントモノマー分布を示す26.67のNuc断片に対するIni断片の[Oz]/[Ox]比を与える。
【0095】
〔実施例8〕
実施例5及び6のグラジエントコポリマーを使用して、ローダミンオクタデシルエステル(色素)がロードされた。したがって、ポリマーミセルは、水中への直接溶解によって(実施例5のポリマー)又はまずエタノールへのポリマーの溶解、続いて水の添加及び透析による溶媒の置換によって(実施例6のポリマー)、水中(10mg/mL)で調製された。色素は、エタノール(10mg/mL)に溶解され、100μLの色素溶液は1mLのポリマー溶液に添加され、続いて透析によりエタノールを除去された。
【0096】
コポリマー粒子への色素の取り込みは、ロードした粒子を脱塩水中に分散して総色素濃度2.50μg/mlを用意し、561nmでの吸収を測定することによって決定された。この吸収は、同じ色素含量であるが、コポリマーを含有しない参照溶液の吸収と比較された。このデータから、色素ローディングの%が算出された。
【0097】
これらの測定の結果は表1に示される。
【0098】
【表2】
【0099】
〔実施例9〕
実施例4の(加水分解)ランダムコポリマーを使用してpDNAのポリプレックスが調製され、このポリプレックスを使用してヒト卵巣がん細胞は形質転換された。
【0100】
コポリマーは、7.5mLの脱イオン水及び7.5mLの塩酸(HCl;濃縮HCl溶液)に1グラムのポリマーを溶解し、続いてBiotage(登録商標)マイクロ波で9時間140℃で、密封したバイアル中で加熱することにより加水分解された。この後、ポリマーは脱イオン水で希釈され、HCl及び脱イオン水は減圧により蒸発された。試料は2M水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で中和され、凍結乾燥された。NMR分析により、ほぼ定量的加水分解を確認した。
【0101】
1mg/mLのポリマー溶液は、脱イオン水中で調製された。ポリマー溶液は、0.22μmフィルターによる濾過によって滅菌され、DPBS中に0.1mg/mLに希釈された。
【0102】
ポリプレックスは、pDNAにポリマー溶液を添加することによって調製された。異なるN/P比のポリプレックスが調製された:2.5、5、10、25、及び50。対照のポリプレックス溶液は、N/P比10でB-PEIによって調製された。ポリプレックスは、10分間置き安定化された。
【0103】
10% FBSを含有する培地中、8.0×10個の細胞/mLの細胞懸濁液が調製された。24ウェルプレート(Greiner)に、400μlの細胞懸濁液が播種された。プレートは、5%COを含有する空気中で24時間、37℃でインキュベートされた。
【0104】
次に、150μLのポリプレックス溶液は、FBSを含む又は含まない150μLの新鮮な培地と共にウェルに添加された。ウェルの2列は、対照として、ポリプレックスの代わりに150μLのDPBSで満たされた。1時間後、培地は10% FBSを含有する新鮮な培地で交換された。細胞は5%COを含有する空気中で、37℃でインキュベートされた。48時間後、形質転換効率がFACSによって分析され、蛍光顕微鏡を使用して画像化された。
【0105】
FACS分析のため、ウェル当たり300μLの0.25%トリプシンで細胞はトリプシン処理された。トリプシンは、ウェル当たり10% FBSを含有する2mLの培地で不活性化された。細胞はFACSチューブに移され、600rcfで5分間遠心分離された。上澄み液はデカントされた。細胞ペレットは金属グリッドで擦り取ることによってほぐされ、200μLのDPBSがFACSチューブに添加された。蛍光強度が、FACS Calibur(Becton Dickinson)を使用して測定された。得られたデータはFlowing Softwareを使用して分析された。
【0106】
結果は、2-エチル-2-オキサゾリンと2-イソ-プロピル-オキサジン(PEI-PPI)の加水分解コポリマーの形質転換効率が、分枝状ポリエチレンイミン(B-PEI)の形質転換効率と等しい又は超えることを示した。さらに、B-PEIとは対照的にFBSの存在下で、高い形質転換効率がこれらのコポリマーについて観察された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14