IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リブドゥコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図1
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図2
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図3
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図4
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図5
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図6
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図7
  • 特許-吸収性物品および吸収性物品の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】吸収性物品および吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20220308BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220308BHJP
   A61F 13/494 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
A61F13/511 400
A61F13/15 340
A61F13/15 352
A61F13/494 111
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016077018
(22)【出願日】2016-04-07
(65)【公開番号】P2017185069
(43)【公開日】2017-10-12
【審査請求日】2018-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 勝
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】塩治 雅也
【審判官】久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-67563(JP,A)
【文献】特開昭64-20844(JP,A)
【文献】特開2009-240487(JP,A)
【文献】特開2011-130992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者からの排泄物を受ける吸収性物品であって、
トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置された略シート状の本体部と、
前記本体部の両側部上において前記本体部の長手方向に延びる一対のサイドシートと、
を備え、
前記一対のサイドシートのそれぞれが、
前記トップシート上に固定される側壁固定部と、
前記側壁固定部の内側縁に連続し、前記長手方向に収縮することにより起立する側壁起立部と、
を備え、
前記トップシートが、複数の層が一体的に固定された積層構造を有する不織布であり、
前記トップシートが、
最も着用者側に配置される第1層と、
前記第1層の着用者とは反対側に配置される第2層と、
を備え、
前記トップシートの前記第1層が、
前記長手方向に延びる帯状の領域であり、前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁と重なる一対の第1領域と、
前記一対の第1領域の間に位置し、前記一対の第1領域よりも空隙率が高い第2領域と、
を含み、
前記一対の第1領域が、前記第1層のうち前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁よりも幅方向内側の位置から前記トップシートの両側縁までの領域全体を含み、
前記一対のサイドシートの前記側壁固定部は全面に亘って、前記トップシートの前記一対の第1領域に固定され、
前記第2層のうち前記第2領域と重なる領域の密度が前記第2領域の密度よりも高く、
前記一対の第1領域の繊維が、熱溶融後に硬化した状態であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項に記載の吸収性物品であって、
前記一対の第1領域の空隙率が、前記第2層のうち前記第2領域と重なる領域の空隙率以下であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置された略シート状の本体部と、前記本体部の両側部上において前記本体部の長手方向に延びる一対のサイドシートと、を備え、前記一対のサイドシートのそれぞれが、前記トップシート上に固定される側壁固定部と、前記側壁固定部の内側縁に連続し、前記長手方向に収縮することにより起立する側壁起立部と、を備え、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品の製造方法であって、
前記トップシートが、複数の層が一体的に固定された積層構造を有する不織布であり、
前記トップシートが、
最も着用者側に配置される第1層と、
前記第1層の着用者とは反対側に配置される第2層と、
を備え、
前記トップシートの前記第1層が、
前記長手方向に延びる帯状の領域であり、前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁と重なる一対の第1領域と、
前記一対の第1領域の間に位置し、前記一対の第1領域よりも空隙率が高い第2領域と、
を含み、
前記一対の第1領域が、前記第1層のうち前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁よりも幅方向内側の位置から前記トップシートの両側縁までの領域全体を含み、
前記一対のサイドシートの前記側壁固定部は全面に亘って、前記トップシートの前記一対の第1領域に固定され、
前記第2層のうち前記第2領域と重なる領域の密度が前記第2領域の密度よりも高く、
前記吸収性物品の製造方法が、
a)前記第1層の空隙率が均一な状態の前記トップシートを準備する工程と、
b)前記一対の第1領域となる予定の領域に熱エンボス加工を施すことにより前記一対の第1領域を形成する工程と、
を備え
前記一対の第1領域の繊維が、熱溶融後に硬化した状態であることを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品、および、当該吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品では、透液性のトップシートと、撥液性または不透液性のバックシートとの間に、パルプ繊維の集合体等の吸収体が配置される。特許文献1では、効率的に体液を拡散させることで体液の肌面への逆戻りを抑制することを目的とした表面シート(すなわち、トップシート)が提案されている。当該表面シートは、細繊度層と太繊度層とが積層されて熱接合により一体化されたシートである。着用者の肌に接する細繊度層は、繊維長3~10mm、繊度0.1~2.5dtex/fの熱可塑性複合繊維を含有し、目付が8~30g/mである。太繊度層は、繊維長3~10mm、繊度3.0~11dtex/fの繊維の繊維を含有し、目付が15~50g/mである。
【0003】
特許文献2でも同様に、表面シートを表層および裏層を有する積層構造とすることが提案されている。当該表面シートでは、表層の目付が8~22g/mとされ、裏層の目付が7~20g/mとされ、かつ、表層の密度が裏層の密度よりも低くされている。当該表面シートでは、着用者の肌に接する表層に体液が停滞することなく、かつ、裏層において体液が拡散することを目的としている。
【0004】
特許文献3では、2層以上の層により構成された不織布からなる表面材(すなわち、トップシート)が提案されている。当該表面材では、着用者の肌に接する第1層の2.5g/cmの荷重下における平均繊維非占有空隙が、100×10-6~3000×10-6であり、第1層以外の層の2.5g/cmの荷重下における平均繊維非占有空隙が、第1層の平均繊維非占有空隙よりも小さい。当該表面材では、表面に体液が残らず、またウェットバックが生じず、更には、感触、風合いが良く、使用中のやぶれ等が起こらないことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-239127号公報
【文献】特開昭64-20844号公報
【文献】特開平7-178133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使い捨ておむつ等の吸収性物品では、尿等の排泄物が吸収性物品の側方から漏れることを防止するために、着用者に向かって起立する一対の側壁部(いわゆる、立体ギャザー)が、トップシートの両側部に設けられるものがある。このような吸収性物品を着用者に装着する場合、例えば、側壁部を把持して引っ張ることにより所望の起立形状とする。また、使い捨ておむつ等の内側に軽失禁パッド等の補助吸収具が装着される場合、使い捨ておむつの側壁部を把持して側方に引っ張った状態で、一対の側壁部の間に補助吸収具が取り付けられる。特に、幅が比較的大きい補助吸収具が利用される場合、使い捨ておむつの側壁部を把持して側方に引っ張ることにより、一対の側壁部の間の距離を大きくする必要がある。しかしながら、特許文献1~3のような表面シートでは、側壁部が固定されている表面シートの上層の密度が低いため、表面シートと側壁部との接合強度が小さくなり、側壁部が引っ張られた際に側壁部が表面シートから剥がれるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、トップシートと側壁固定部との接合強度を増大させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品であって、トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置された略シート状の本体部と、前記本体部の両側部上において前記本体部の長手方向に延びる一対のサイドシートとを備え、前記一対のサイドシートのそれぞれが、前記トップシート上に固定される側壁固定部と、前記側壁固定部の内側縁に連続し、前記長手方向に収縮することにより起立する側壁起立部とを備え、前記トップシートが、複数の層が一体的に固定された積層構造を有する不織布であり、前記トップシートが、最も着用者側に配置される第1層と、前記第1層の着用者とは反対側に配置される第2層とを備え、前記トップシートの前記第1層が、前記長手方向に延びる帯状の領域であり、前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁と重なる一対の第1領域と、前記一対の第1領域の間に位置し、前記一対の第1領域よりも空隙率が高い第2領域とを含み、前記一対の第1領域が、前記第1層のうち前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁よりも幅方向内側の位置から前記トップシートの両側縁までの領域全体を含み、前記一対のサイドシートの前記側壁固定部は全面に亘って、前記トップシートの前記一対の第1領域に固定され、前記第2層のうち前記第2領域と重なる領域の密度が前記第2領域の密度よりも高く、前記一対の第1領域の繊維が、熱溶融後に硬化した状態である
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の吸収性物品であって、前記一対の第1領域の空隙率が、前記第2層のうち前記第2領域と重なる領域の空隙率以下である。
【0012】
請求項に記載の発明は、トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置された略シート状の本体部と、前記本体部の両側部上において前記本体部の長手方向に延びる一対のサイドシートとを備え、前記一対のサイドシートのそれぞれが、前記トップシート上に固定される側壁固定部と、前記側壁固定部の内側縁に連続し、前記長手方向に収縮することにより起立する側壁起立部とを備え、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品の製造方法であって、前記トップシートが、複数の層が一体的に固定された積層構造を有する不織布であり、前記トップシートが、最も着用者側に配置される第1層と、前記第1層の着用者とは反対側に配置される第2層とを備え、前記トップシートの前記第1層が、前記長手方向に延びる帯状の領域であり、前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁と重なる一対の第1領域と、前記一対の第1領域の間に位置し、前記一対の第1領域よりも空隙率が高い第2領域とを含み、前記一対の第1領域が、前記第1層のうち前記一対のサイドシートの前記側壁固定部の前記内側縁よりも幅方向内側の位置から前記トップシートの両側縁までの領域全体を含み、前記一対のサイドシートの前記側壁固定部は全面に亘って、前記トップシートの前記一対の第1領域に固定され、前記第2層のうち前記第2領域と重なる領域の密度が前記第2領域の密度よりも高く、前記吸収性物品の製造方法が、a)前記第1層の空隙率が均一な状態の前記トップシートを準備する工程と、b)前記一対の第1領域となる予定の領域に熱エンボス加工を施すことにより前記一対の第1領域を形成する工程とを備え、前記一対の第1領域の繊維が、熱溶融後に硬化した状態である
【発明の効果】
【0014】
本発明では、トップシートと側壁固定部との接合強度を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一の実施の形態に係る吸収性物品の平面図である。
図2】吸収性物品の断面図である。
図3】吸収性物品の斜視図である。
図4】トップシートの断面図である。
図5】吸収性物品の製造の流れの一部を示す図である。
図6】吸収性物品および補助吸収具の断面図である。
図7】試験片の斜視図である。
図8】トップシートとサイドシートとの剥離試験の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る吸収性物品1を広げた状態にて示す平面図である。吸収性物品1は、着用者の腹側に当接する部位と背側に当接する部位とを、左右両側の接続部4により腰周りで止着して着用するテープタイプの使い捨ておむつである。吸収性物品1は、着用者からの排泄物を受ける。図1では、着用時に着用者に接する側(すなわち、着用者側)の面を手前にして吸収性物品1を描いている。
【0017】
図2は、吸収性物品1を図1中に示すII-IIの位置で長手方向(すなわち、図1中における上下方向)に垂直な面で切断した断面図である。図1および図2に示すように、吸収性物品1は、略シート状の本体部2と、一対のサイドシート3とを備える。一対のサイドシート3は、本体部2の両側部(すなわち、長手方向に垂直な幅方向の両側の側部)上において本体部2の長手方向に延びる。図1に示す例では、一対のサイドシート3は、本体部2の長手方向のおよそ全長に亘って配置される。
【0018】
本体部2の図1中における上側の部位201および下側の部位203はそれぞれ、着用者の腹側および背側の肌に接する部位であり、以下の説明では、「前方部201」および「後方部203」と呼ぶ。また、前方部201と後方部203との間において前方部201および後方部203から連続するとともに着用者の股間部に対向する部位202を「股下部202」と呼ぶ。吸収性物品1では、本体部2が前方部201、股下部202および後方部203を長手方向に順に有する。図1に示す例では、前方部201および後方部203の幅方向の幅(以下、単に「幅」ともいう。)は、股下部202の幅よりも大きい。換言すれば、吸収性物品1は、平面視においていわゆる砂時計型である。
【0019】
吸収性物品1は、本体部2の後方部203の両側部に取り付けられた一対の接続部4をさらに備える。吸収性物品1が着用者に装着される際には、本体部2の前方部201および後方部203をそれぞれ着用者の腹側および背側に当接させた状態で、一対の接続部4が、図3に示すように、前方部201の外面(すなわち、着用者に接する面とは反対側の面)の被止着部26に止着されることにより、後方部203の両側部が前方部201の両側部に接続される。
【0020】
被止着部26は、バックシート23の外面(すなわち、吸収体22と対向する面とは反対側の面)上に、平面視において吸収体22(図1および図2参照)と重なるように接合される。被止着部26は、例えば、バックシート23上にホットメルト接着剤等により接合される面ファスナのループ部材である。被止着部26は、例えば、樹脂等により形成されたベースシートと、当該ベースシートのバックシート23に接合される面とは反対側の面に設けられる微細ループ構造とを有する。微細ループ構造とは、多数の微細なループ要素の集合を意味する。
【0021】
一対の接続部4の内面には、例えば、被止着部26に対して止着可能な面ファスナのフック部材が設けられる。接続部4の内面とは、吸収性物品1を着用者に装着する際に本体部2の前方部201に対向する面である。当該フック部材は、例えば、樹脂等により形成されたベースシートと、当該ベースシートの内面に設けられる微細フック構造とを有する。微細フック構造とは、多数の微細なフック要素の集合を意味する。
【0022】
図1および図2に示すように、本体部2は、透液性のトップシート21と、撥液性または不透液性のバックシート23と、吸収体22とを備える。吸収体22は、トップシート21とバックシート23との間に配置される。図2では、図示の都合上、吸収性物品1の構成を厚さ方向に離して描いている。また、図1では、図の理解を容易にするために、吸収体22の輪郭を太破線にて描いている。図1に示す例では、前方部201および後方部203における吸収体22の幅は、股下部202における吸収体22の幅よりも大きい。換言すれば、吸収体22は、平面視においていわゆる砂時計型である。
【0023】
トップシート21は、吸収体22の周りにおいてバックシート23に固定される。トップシート21とバックシート23との固定は、例えば、ホットメルト接着剤を介して行われる。トップシート21とバックシート23との固定は、例えば、熱融着接合や超音波接合等により行われてもよい。図2に示す例では、トップシート21の幅は、バックシート23の幅よりも小さく、バックシート23の両側部は、トップシート21の両側縁から幅方向外側に延出している。
【0024】
本体部2の長手方向の両端部では、幅方向に延びる複数の弾性部材25が、トップシート21とバックシート23との間にホットメルト接着剤等により伸張状態にて接合される。弾性部材25が収縮することによりウエストギャザーが形成され、吸収性物品1の着用時に本体部2が着用者の腰周りに密着する。
【0025】
一対のサイドシート3はそれぞれ、撥液性または不透液性のサイドシート本体31と、弾性部材32a,32bとを備える。サイドシート本体31は、側壁固定部33と、側壁起立部34とを備える。側壁固定部33は、トップシート21の側部上、および、バックシート23のトップシート21から幅方向外側に延出する側部上に固定される。側壁固定部33とトップシート21およびバックシート23との固定は、例えば、ホットメルト接着剤を介して行われる。側壁固定部33とトップシート21およびバックシート23との固定は、例えば、熱融着接合や超音波接合等により行われてもよい。
【0026】
側壁起立部34は、側壁固定部33の内側縁35に連続する。側壁起立部34は、長手方向の両端部を除き、側壁固定部33および本体部2に直接的に固定されていない。側壁起立部34は、長手方向の両端部においてトップシート21上に重ねられ、トップシート21に固定される。側壁起立部34とトップシート21との固定は、例えば、ホットメルト接着剤を介して行われる。側壁起立部34とトップシート21との固定は、例えば、熱融着接合や超音波接合等により行われてもよい。
【0027】
側壁起立部34の自由端部には、長手方向に延びる弾性部材32aが、ホットメルト接着剤等により伸張状態にて接合される。弾性部材32aが収縮することにより、側壁起立部34の長手方向両端部を除く部位が長手方向に収縮し、図2に示すように、着用者に向かって起立する。側壁起立部34は、着用者の鼠径部および臀部に接する、いわゆる、立体ギャザーである。
【0028】
また、本体部2の股下部202の側部では、長手方向に延びる2本の弾性部材32bが、側壁固定部33とバックシート23との間にホットメルト接着剤等により伸張状態にて接合される。弾性部材32bが収縮することにより、側壁固定部33およびバックシート23が着用者側かつ幅方向内側に向かって立ち上がり、着用者の脚の付け根近傍に密着するレッグギャザーとなる。
【0029】
トップシート21は、透液性のシート部材であり、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉して吸収体22へと移動させる。トップシート21としては、例えば、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)にて形成された透液性の不織布(ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等)が利用される。なお、トップシート21として、セルロースやレーヨン、コットン等の親水性繊維により形成された不織布(例えば、スパンレース不織布)が利用されてもよい。本実施の形態では、エアスルー不織布製のトップシート21が利用される。
【0030】
吸収体22は、トップシート21を透過した水分を吸収して迅速に固定する。吸収体22は、例えば、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維の集合体に粒状の高吸収性ポリマー(SAP(Super Absorbent Polymer))や高吸収性ファイバー(SAF(Super Absorbent Fiber))等の高吸収性材料を混合したものを、ティッシュペーパーや透液性不織布等により包み込んで形成される。親水性繊維を包むティッシュペーパーや透液性不織布等は、親水性繊維および吸水性材料とホットメルト接着剤により接合されて、親水性繊維の型崩れ、および、吸水性材料の脱落(特に、吸水後における脱落)を防止する。吸収体22は、例えば、比較的嵩高なパルプ繊維等の集合体を含まず、積層された複数の不織布間にSAP等の高吸収性材料が固定されたものであってもよい。
【0031】
バックシート23は、撥液性または不透液性のシート部材であり、バックシート23に到達した排泄物の水分等が、吸収性物品1の外部にしみ出すことを防止する。バックシート23としては、例えば、撥液性または不透液性の不織布やプラスチックフィルム、あるいは、これらの不織布とプラスチックフィルムとが積層された積層シートが利用される。バックシート23に利用される不織布は、例えば、疎水性繊維にて形成されたスパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布であり、必要に応じて撥液処理が施される。バックシート23にプラスチックフィルムが利用される場合、吸収性物品1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0032】
サイドシート本体31は、例えば、撥液性または不透液性のシート部材である。サイドシート本体31としては、例えば、撥液性または不透液性の不織布が利用される。サイドシート本体31に利用される不織布は、例えば、疎水性繊維にて形成されたスパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS不織布であり、必要に応じて撥液処理が施される。弾性部材25,32a,32bとしては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が利用される。本実施の形態では、ポリウレタン糸が、弾性部材25,32a,32bとして利用される。
【0033】
図4は、トップシート21の断面を拡大して示す図である。図4では、トップシート21を実際よりも厚く描いている。また、図4では、一対のサイドシート3も併せて描く。トップシート21は、複数の層が一体的に固定された積層構造を有する不織布である。図4に示す例では、トップシート21は、2つの層が積層された構造を有する。トップシート21は、第1層211と、第2層212とを備える。第1層211は、最も着用者側(すなわち、図中の最も上側)に配置される。第2層212は、第1層211の着用者とは反対側に配置される。第2層212の上面は、第1層211の下面に固定される。
【0034】
トップシート21の第1層211は、一対の第1領域213と、第2領域214とを備える。第2領域214は、一対の第1領域213の間に位置する。第2領域214は、幅方向において一対の第1領域213に連続する。一対の第1領域213の繊維は、熱溶融後に硬化した状態である。
【0035】
第1領域213は、トップシート21の長手方向に延びる帯状の領域である。第2領域214は、トップシート21の長手方向に長い略矩形の領域である。第1領域213および第2領域214はそれぞれ、例えば、トップシート21の長手方向の略全長に亘って連続的に設けられる。
【0036】
一対の第1領域213は、一対のサイドシート3の側壁固定部33の内側縁35と上下方向に重なる。例えば、側壁固定部33の内側縁35は、略全長に亘って第1領域213と上下方向に重なる。図4に示す例では、一対の第1領域213は、一対の側壁固定部33の内側縁35よりも幅方向内側の位置から、トップシート21の両側の側縁215までの全幅に亘って設けられる。換言すれば、一対の第1領域213は、トップシート21の第1層211のうち、一対の側壁固定部33の内側縁35とトップシート21の両側縁215との間の領域全体を含む。側壁固定部33の内側縁35および内側縁35近傍の部位は、トップシート21の第1層211の第1領域213上に接合される。側壁固定部33の内側縁35と、第1領域213の内側縁との間の幅方向の距離は、好ましくは0.1mm以上50mm以下であり、より好ましくは10mm以上30mm以下である。当該距離は、例えば、約20mmである。
【0037】
好ましくは、第1層211において第2領域214が配置される領域におけるトップシート21の密度は、0.01g/cm以上0.2g/cm以下であり、より好ましくは0.02g/cm以上0.15g/cm以下である。トップシート21の当該領域の目付は、好ましくは10g/m以上60g/m以下であり、より好ましくは30g/m以上50g/m以下である。また、トップシート21の当該領域の空隙率の中央値は、例えば、約65%である。トップシート21の当該領域の空隙率は、好ましくは45%以上85%以下であり、より好ましくは55%以上75%以下である。トップシート21の当該領域の空隙率は、当該領域の体積に対する当該領域を構成する繊維総体積の割合を1から減算したものである。以下の空隙率も同様に求められる。0.5kPaの荷重下におけるトップシート21の当該領域の厚さは、好ましくは0.01mm以上5mm以下であり、より好ましくは0.1mm以上1.5mm以下である。幅方向におけるトップシート21の当該領域の破断強度は、好ましくは5N/5cm以上150N/5cm以下であり、より好ましくは15N/5cm以上60N/5cm以下である。10Nにて幅方向に引張した場合のトップシート21の当該領域の伸度は、好ましくは0%以上50%以下であり、より好ましくは1%以上20%以下であり、さらに好ましくは1%以上10%以下である。
【0038】
第1層211の第1領域213の空隙率の中央値は、例えば、約30%である。第1領域213の空隙率は、好ましくは10%以上50%以下であり、より好ましくは20%以上40%以下である。
【0039】
好ましくは、第1層211の第2領域214の密度は、0.001g/cm以上0.15g/cm以下であり、より好ましくは0.005g/cm以上0.1g/cm以下である。第2領域214の目付は、好ましくは5g/m以上40g/m以下であり、より好ましくは10g/m以上30g/m以下である。また、第2領域214の空隙率の中央値は、例えば、約80%である。第2領域214の空隙率は、好ましくは60%以上99%以下であり、より好ましくは70%以上99%以下である。第2領域214の空隙率は、一対の第1領域213の空隙率よりも高い。0.5kPaの荷重下における第2領域214の厚さは、好ましくは0.01mm以上5mm以下であり、より好ましくは0.01mm以上3mm以下である。幅方向における第2領域214の破断強度は、好ましくは3N/5cm以上80N/5cm以下であり、より好ましくは5N/5cm以上50N/5cm以下である。10Nにて幅方向に引張した場合の第2領域214の伸度は、好ましくは0.1%以上50%以下であり、より好ましくは1%以上40%以下である。
【0040】
第2層212のうち第1層211の第2領域214と上下方向に重なる領域の密度は、第1層211の第2領域214の密度よりも高い。好ましくは、第2層212のうち第2領域214と重なる領域の密度は、0.01g/cm以上0.2g/cm以下であり、より好ましくは0.02g/cm以上0.15g/cm以下である。第2層212の当該領域の目付は、好ましくは5g/m以上40g/m以下であり、より好ましくは10g/m以上30g/m以下である。また、第2層212の当該領域の空隙率の中央値は、例えば、約30%である。第2層212の当該領域の空隙率は、好ましくは10%以上50%以下であり、より好ましくは20%以上40%以下である。上述の一対の第1領域213の空隙率は、第2層212の当該領域の空隙率以下であることが好ましい。0.5kPaの荷重下における第2層212の当該領域の厚さは、好ましくは0.01mm以上5mm以下であり、より好ましくは0.01mm以上3mm以下である。幅方向における第2層212の当該領域の破断強度は、好ましくは5N/5cm以上150N/5cm以下であり、より好ましくは15N/5cm以上60N/5cm以下である。10Nにて幅方向に引張した場合の第2層212の当該領域の伸度は、好ましくは0%以上50%以下であり、より好ましくは1%以上20%以下であり、さらに好ましくは1%以上10%以下である。
【0041】
トップシート21の第2層212では、空隙率が全面に亘って略均一であってもよい。あるいは、第1層211の第1領域213に熱エンボス加工が施される際に、第2層212にも熱エンボス加工が施されることにより、第2層212のうち第1層211の第1領域213と上下方向に重なる領域の空隙率が、第2領域214と上下方向に重なる領域の空隙率よりも低くなってもよい。この場合、第1層211の第1領域213と第2層212との接合強度が、第1層211の第2領域214と第2層212との接合強度よりも増大する。これにより、第1層211と第2層212との全体としての接合強度が増大する。いずれの場合であっても、一対の第1領域213の空隙率は、第2層212のうち第1層211の第2領域214と上下方向に重なる領域の空隙率以下であることが好ましい。
【0042】
図5は、吸収性物品1の製造の流れの一部を示す図である。トップシート21が製造される際には、まず、第1層211の空隙率が全面に亘って略均一な状態のトップシート21が準備される(ステップS11)。換言すれば、一対の第1領域213が形成される前の状態のトップシート21が準備される。当該トップシート21は、例えば、第1層211および第2層212がそれぞれエアスルー法により形成された後、第2層212上に第1層211が重ねられ、加熱および加圧されることにより第1層211と第2層212とが接合されることにより形成される。
【0043】
続いて、当該トップシート21の一対の第1領域213となる予定の領域に熱エンボス加工が施される(すなわち、加熱および加圧を伴う加工が施される)。これにより、第1層211の当該領域において繊維が熱溶融した後に硬化し、一対の第1領域213が形成される(ステップS12)。第1領域213では、当該熱エンボス加工により空隙率が減少し、第2領域214の空隙率よりも低くなる。ステップS12では、上述の熱エンボス加工により、第2層212のうち第1層211の一対の第1領域213と重なる領域においても、繊維が熱溶融後に硬化し、空隙率が減少してもよい。
【0044】
ステップS12が終了すると、一対のサイドシート3の側壁固定部33が、トップシート21の一対の第1領域213上に固定される(ステップS13)。側壁固定部33のトップシート21への固定は、例えば、ホットメルト接着剤により行われる。その後、トップシート21および一対のサイドシート3が、間に吸収体22等を挟みつつバックシート23上に重ねられてバックシート23上に固定される(ステップS14)。これにより、吸収性物品1が形成される。
【0045】
図6は、吸収性物品1に軽失禁パッド等の補助吸収具9が取り付けられた状態を示す断面図である。補助吸収具9は、略シート状であり、トップシート91と、吸収体92と、バックシート93とを備える。吸収体92は、トップシート91とバックシート93との間に配置される。補助吸収具9は、吸収性物品1の一対の側壁起立部34の間に配置される。補助吸収具9のバックシート93は、吸収性物品1のトップシート21上に配置される。補助吸収具9が吸収性物品1に取り付けられる際には、例えば、吸収性物品1の一対の側壁起立部34の長手方向中央部が把持されて幅方向外方へと引っ張られ、大きく開いた一対の側壁起立部34の間に補助吸収具9が上側から(すなわち、着用者側から)挿入される。
【0046】
以上に説明したように、吸収性物品1は略シート上の本体部2と、一対のサイドシート3とを備える。本体部2では、トップシート21とバックシート23との間に吸収体22が配置される。一対のサイドシート3は、本体部2の両側部上において本体部2の長手方向に延びる。一対のサイドシート3のそれぞれは、側壁固定部33と、側壁起立部34とを備える。側壁固定部33は、トップシート21上に固定される。側壁起立部34は、側壁固定部33の内側縁35に連続し、長手方向に収縮することにより起立する。
【0047】
トップシート21は、複数の層が一体的に固定された積層構造を有する不織布である。トップシート21は、第1層211と、第2層212とを備える。第1層211は、最も着用者側に配置される。第2層212は、第1層211の着用者とは反対側に配置される。トップシート21の第1層211は、一対の第1領域213と、第2領域214とを備える。第1領域213は、長手方向に延びる帯状の領域である。一対の第1領域213は、一対のサイドシート3の側壁固定部33の内側縁35と重なる。第2領域214は、一対の第1領域213の間に位置し、一対の第1領域213よりも空隙率が高い。第2層212のうち第1層211の第2領域214と重なる領域の密度は、第2領域214の密度よりも高い。
【0048】
このように、トップシート21において着用者の肌に接触する第1層211の第2領域214の密度を、第2層212のうち第2領域214と重なる領域の密度よりも低くすることにより、トップシート21の肌触りを良くすることができるとともに、第2層212へと移動した尿等の液体が第1層211および着用者側へと戻る現象(いわゆる、ウェットバック)が発生することを抑制することができる。
【0049】
また、トップシート21の第1層211において、一対の側壁固定部33の内側縁35と重なる一対の第1領域213の空隙率を、第2領域214の空隙率よりも低くすることにより、側壁固定部33の内側縁35近傍において、トップシート21と側壁固定部33との接合強度を増大させることができる。これにより、側壁起立部34を引っ張った際等に、側壁固定部33がトップシート21から剥離することを抑制することができる。その結果、吸収性物品1の破損を抑制しつつ、一対の側壁起立部34間に補助吸収具9を容易に挿入することができる。
【0050】
図7は、トップシート21サイドシート3との剥離試験に利用される試験片71を示す斜視図である。試験片71は、平面視において略矩形である。試験片71は、吸収性物品1の長手方向中央部において、トップシート21およびサイドシート3のうち側壁固定部33の内側縁35近傍の部位を切り出したものである。試験片71では、トップシート21と側壁固定部33とが固定されており、側壁起立部34は、トップシート21に固定されることなく、側壁固定部33の内側縁35から上方に起立している。吸収性物品1の幅方向に対応する方向(以下、単に「幅方向」ともいう。)における試験片71の長さは、約150mmである。吸収性物品1の長手方向に対応する方向(以下、単に「長手方向」ともいう。)における試験片71の長さは、約50mmである。
【0051】
図8は、試験片71を用いたトップシート21とサイドシート3との剥離試験の様子を示す図である。当該剥離試験は、JIS-L-1913に準拠して行われる。剥離試験には、例えば、株式会社エー・アンド・デイ製のTENSILON(製品番号:RTG-1210)、または、株式会社オリエンテック製のLOADCELL(製品番号:UR-100N-D)が利用される。
【0052】
当該剥離試験では、試験装置の2つの把持部81により、試験片71の側壁起立部34の端部およびトップシート21が把持される。図8に示す例では、2つの把持部81が図中の左右方向(すなわち、吸収性物品1の幅方向に対応する方向)に配列される。2つの把持部81は、上下方向に配列されてもよい。試験開始前の状態では、2つの把持部81間の左右方向の距離は、約50mmである。試験が開始されると、2つの把持部81間の左右方向の距離が大きくなる方向に、一方の把持部81(または、双方の把持部81)が移動する。当該把持部81の移動速度は、例えば、分速300mmである。これにより、トップシート21と側壁起立部34とが左右方向に沿って反対向きに引っ張られる。そして、試験片71に加わる左右方向の荷重が測定される。また、2つの把持部81間の左右方向における距離も取得される。
【0053】
試験片71について測定された荷重のピーク値である最大点荷重は、約15Nである。最大点荷重は、例えば、側壁起立部34もしくはトップシート21が破断する直前、または、側壁固定部33がトップシート21から剥離する直前に測定される。実際の剥離試験では、側壁固定部33がトップシート21から剥離するよりも前に、側壁起立部34が破断し、最大点荷重は、側壁起立部34が破断する直前に測定された。また、最大点荷重伸度は、約70%である。最大点荷重伸度とは、測定された荷重が上述のピーク値から減少し、ピーク値の半分になったときの2つの把持部81間の左右方向における距離の増加率(すなわち、試験開始前における当該距離に対する当該距離の増分の割合)である。
【0054】
上述の剥離試験は、第1層211の第1領域213に対応する領域に熱エンボス加工が行われていない比較例の吸収性物品(すなわち、第1領域213に対応する領域の空隙率が第2領域214の空隙率と同じである吸収性物品)に対しても行われた。比較例の吸収性物品では、試験片について測定された荷重のピーク値である最大点荷重は、約5Nである。また、比較例の吸収性物品では、試験片について測定された最大点荷重伸度は、約20%である。
【0055】
このように、本実施の形態に係る吸収性物品1では、トップシート21と側壁固定部33との接合強度が、比較例の吸収性物品に比べて約3倍に増大している。また、吸収性物品1の最大点荷重伸度は、比較例の吸収性物品に比べて約3.5倍に増大している。
【0056】
上述のように、吸収性物品1の一対の第1領域213は、第1層211のうち一対のサイドシート3の側壁固定部33の内側縁35とトップシート21の両側縁215との間の領域全体を含む。これにより、側壁固定部33と第1領域213との接合面積を大きくすることができるため、トップシート21と側壁固定部33との接合強度をさらに増大させることができる。また、一対の第1領域213の繊維が熱溶融後に硬化した状態とすることにより、第2領域214よりも空隙率が低い一対の第1領域213を容易に形成することができる。
【0057】
吸収性物品1では、一対の第1領域213の空隙率が、第2層212のうち第2領域214と重なる領域の空隙率以下である。これにより、トップシート21と側壁固定部33との接合強度をさらに増大させることができる。その結果、吸収性物品1の破損をより一層抑制しつつ、一対の側壁起立部34間に補助吸収具9を容易に挿入することができる。
【0058】
吸収性物品1の製造方法では、ステップS11において、第1層211の空隙率が均一な状態のトップシート21が準備され、ステップS12において、一対の第1領域213となる予定の領域に熱エンボス加工が施されることにより一対の第1領域213が形成される。これにより、一対の第1領域213および第2領域214を含む第1層211と、第1層211の着用者とは反対側に配置される第2層212とを備えるトップシート21を容易に製造することができる。
【0059】
また、吸収性物品1の製造方法では、ステップS12よりも後に、一対のサイドシート3の側壁固定部33が、トップシート21の一対の第1領域213上に固定される(ステップS13)。これにより、熱エンボス加工が施された第1領域213が、着用者の肌に直接的に接触することを防止または抑制することができる。その結果、吸収性物品1の着用感の低下を防止または抑制することができる。
【0060】
吸収性物品1の製造の際には、例えば、一対のサイドシート3の側壁固定部33が、トップシート21の一対の第1領域213となる予定の領域上に固定された後、サイドシート3上から(すなわち、サイドシート3を介して)当該領域に熱エンボス加工が施されることにより一対の第1領域213が形成されてもよい。これにより、第1領域213の形成と、側壁固定部33のトップシート21への固定とを同時に行うことができる。
【0061】
上述の吸収性物品1では、様々な変更が可能である。
【0062】
本発明の関連技術に係る吸収性物品において、トップシート21の第1層211では、第1領域213は、側壁固定部33の内側縁35と重なるのであれば、必ずしも側壁固定部33の内側縁35とトップシート21の側縁215との間の領域全体を含む必要はない。例えば、第1領域213の外側縁は、トップシート21の側縁215よりも幅方向内側に位置していてもよい。この場合、第1層211の第1領域213よりも幅方向外側の領域の空隙率は、例えば、第2領域214の空隙率と同じである。
【0063】
本発明の関連技術に係る吸収性物品において、第1領域213は、必ずしもトップシート21の長手方向の略全長に亘って連続的に設けられる必要はなく、長手方向において部分的に設けられてもよい。例えば、第1領域213は、トップシート21の長手方向の略全長に亘って断続的に設けられてもよく、トップシート21の長手方向の一部に設けられてもよい。この場合、側壁固定部33の内側縁35は、第1領域213と部分的に重なる。
【0064】
トップシート21、第1層211および第2層212の密度、目付、空隙率および厚さ等は、必ずしも上述の範囲には限定されず、適宜変更されてよい。また、側壁固定部33の内側縁35と、第1領域213の内側縁との間の幅方向の距離も、必ずしも上述の範囲には限定されず、適宜変更されてよい。側壁固定部33の内側縁35と第1領域213の内側縁とは、上下方向において重なっていてもよい。
【0065】
トップシート21は、3つ以上の層が積層された構造を有していてもよい。この場合、第2層212は第1層211の下面(すなわち、着用者側とは反対側の面)に接合され、他の層は、第2層212の第1層211とは反対側に配置される。
【0066】
吸収性物品1および吸収体22の平面視における形状は、必ずしも砂時計型には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、吸収性物品1および吸収体22の平面視における形状は、略矩形または略長円形であってもよい。サイドシート3の形状も、図2に示すものには限定されず、様々に変更されてよい。例えば、側壁起立部34は、長手方向の両端部において、側壁固定部33上に重ねられ、側壁固定部33に固定されてもよい。
【0067】
上述の吸収性物品1の構造は、テープタイプの使い捨ておむつ以外の吸収性物品に適用されてもよい。例えば、吸収性物品1の上記構造は、パンツタイプの使い捨ておむつ、 尿パッド等の補助吸収具、または、生理用品に適用されてもよい。
【0068】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0069】
1 吸収性物品
2 本体部
3 サイドシート
21 トップシート
22 吸収体
23 バックシート
33 側壁固定部
34 側壁起立部
35 (側壁固定部の)内側縁
211 第1層
212 第2層
213 第1領域
214 第2領域
215 (トップシートの)側縁
S11~S14 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8