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特許7036539少なくとも1つの光源を投射するためのレンズ系
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  • 特許-少なくとも1つの光源を投射するためのレンズ系 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】少なくとも1つの光源を投射するためのレンズ系
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20220308BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20220308BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20220308BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20220308BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220308BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220308BHJP
【FI】
G02B13/00
F21S41/25
F21V5/04 550
F21W102:00
F21Y115:30
F21Y115:10
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017026236
(22)【出願日】2017-02-15
(65)【公開番号】P2017146600
(43)【公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-10
(31)【優先権主張番号】1651225
(32)【優先日】2016-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】マリーヌ、クルシエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム、ルコール
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-027420(JP,A)
【文献】特開2010-204531(JP,A)
【文献】特表2007-524975(JP,A)
【文献】特開2011-237758(JP,A)
【文献】特開2012-203281(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158886(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/017262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 19/00
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
F21K 9/00 - 9/90
F21S 2/00 - 45/70
F21V 1/00 - 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両の照明および/または合図装置で使用するための少なくとも1つの光源(1)を投射するためのレンズ系であって、前記光源(1)から光の伝播方向に順次配列された
前記光源(1)に接した1つの第1の集束レンズであって、40より大きいコンストリンジェンスを呈する材料から得られると共に、光軸に沿った自らの厚さと自らの幅との間での0.5より大きい比率を呈した、一次レンズと称される第1の集束レンズ(3)で構成されるか、或いは前記第1の集束レンズ(3)および1つの第2のレンズ(4)で構成された、第1光学素子群(2)と、
40より小さいコンストリンジェンスを呈する材料から得られた1つの発散レンズ(7)構成された第2光学素子群(6)と、
瞳孔(8)と、
1つないし複数の集束反射器で構成されるか、或いは40より大きいコンストリンジェンスを呈する材料から得られた1つの集束レンズ(10)で構成された第3光学素子群(9)と、
を備えたレンズ系。
【請求項2】
前記第1の一次集束レンズ(3)は、半球形状の出光屈折面を有し、当該出光屈折面は、前記第1の一次集束レンズ(3)の厚さの10%未満の球面からの偏差を呈している、請求項1記載のレンズ系。
【請求項3】
前記第1光学素子群(2)は、少なくとも1つの非球面状屈折面(5)を備えた第2のレンズ(4)を具備している、請求項1または2に記載のレンズ系。
【請求項4】
前記第1光学素子群(2)における前記第2のレンズ(4)の前記非球面状屈折面(5)は、前記一次レンズ(3)の側にある、請求項3記載のレンズ系。
【請求項5】
前記第2光学素子群(6)の前記発散レンズ(7)は両凹レンズから成る、請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズ系。
【請求項6】
前記第2光学素子群の前記発散レンズは平凹レンズから成る、請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズ系。
【請求項7】
前記第3光学素子群(9)の前記集束レンズ(10)は、少なくとも1つの非球面状屈折面(11)を備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載のレンズ系。
【請求項8】
前記第3光学素子群(9)の前記集束レンズ(10)における前記非球面状屈折面(11)は、前記第2光学素子群(6)と前記第3光学素子群(9)との間に定置された前記瞳孔(8)とは反対の側にある、請求項7記載のレンズ系。
【請求項9】
前記光源(1)は、少なくとも1つのLED光源またはレーザーから成る、請求項1から8のいずれか一項に記載のレンズ系。
【請求項10】
前記光源は、複数のLED光源で構成された一次光源(1)からの放射を受ける、前記一次集束レンズ(3)と接した波長変換素子(12)から成る、請求項1から8のいずれか一項に記載のレンズ系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの光源、例えば一次レンズと称される第1のレンズ内に埋められると言われる、走査レーザーや、LEDと称される発光ダイオードなどを投射するためのレンズ系に関する。本発明は、照明の分野、より特定的には自動車両用の照明および/または合図システムの分野において、多くの用途を有することとなる。
【背景技術】
【0002】
照明の分野、特に自動車両の分野においては、様々な型式の電球が光源として用いられてきているが、最近では、発光ダイオード(LED)がますます広く用いられている。これは、発光ダイオード(LED)が、電力を光へと変換するのに優れた効率を有し、低い熱量しか放出せず、減少した寸法および重量、並びに長寿命を有しているからである。
【0003】
これらの利点を考慮して、多くの照明システムが、レンズと直接的に整列して定置された複数のLEDのアレイを用いることによって設計されてきている。そのレンズは一般的に、収差を補正することを可能とする非球面レンズである。さらに、一方では光の通過する照明システムの各屈折面によって引き起こされる収差を限定するために、他方では出光部において所望の光ビームを得るために当該屈折面の表面形状を計算することも標準的なやり方である。照明システムの光軸上に位置したLEDについては良好な結像を得ることができるが、照明システムは多数のLED、従って光軸から離れたLEDを含み、それらが軸外収差を引き起こしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯かる状況を改善することを企てるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的のために、本発明は、少なくとも1つの光源を投射するためのレンズ系であって、当該光源から光の伝播方向に、当該光源に接した少なくとも1つの第1の集束レンズであって、高いコンストリンジェンス(constringence)を呈する材料から得られると共に、光軸に沿った自らの厚さと自らの幅との間での0.5より大きい比率を呈した、一次レンズと称される第1の集束レンズで構成された、少なくとも1つの第1光学素子群と、低いコンストリンジェンスを呈する材料から得られる少なくとも1つの発散レンズで構成された第2光学素子群と、瞳孔と、少なくとも1つの集束反射器で構成されるか、或いは高いコンストリンジェンスを呈する材料から得られる少なくとも1つの集束レンズで構成された第3光学素子群と、を備えたレンズ系に関するものである。
【0006】
半球形状の一次レンズによって、光源から最大限の光を捕らえることが可能となり、集束、発散、および集束の順の、3つの光学系の各レンズによって、収差を補正して、光ビームを形成することが可能となる。
【0007】
一次レンズによって捕らえられる光をできるだけ多くするために、第1の半球状の一次集束レンズが、当該レンズの厚さの10%未満の球面からの偏差、好ましくは厚さの3%未満の球面からの偏差を呈している。
【0008】
第1光学素子群は、少なくとも1つの非球面状の表面を備えた第2のレンズを具備し、第1光学素子群における第2のレンズの非球面状の表面は、一次レンズとは反対の側に広がっていることが好ましい。
【0009】
さらに、第2光学素子群の発散レンズは両凹レンズから成ることが好ましい。
【0010】
或いは、第2光学素子群の発散レンズは平凹レンズから成る。
【0011】
第3光学素子群の集束レンズは、少なくとも1つの非球面状の表面を備え、第3光学素子群の集束レンズにおける非球面状の表面は、第2光学素子群と第3光学素子群との間に定置された瞳孔とは反対の側にあることが好ましい。
【0012】
光源は、少なくとも1つのLED光源またはレーザーから成ることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様によれば、光源は、複数のLED光源で構成された一次光源からの放射を受ける、一次集束レンズと接した波長変換素子から成る。
【0014】
波長変換素子は、少なくとも2つの材料を備えた基板で構成され、それらの材料が、それぞれ干渉フィルタを形成し、少なくとも2つの異なる区域内に配分されているのが好ましい。
【0015】
本発明は、純粋に表示として与えられて本発明を限定するものではないところの、添付図面を伴った以下の説明に照らして、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】少なくとも1つの光源を投射するための本発明によるレンズ系の模式的な描写。
図2】本発明による投射レンズ系の変形実施形態であって、波長変換素子を備えた変形実施形態の描写。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各図において、同一ないし類似の各要素には同じ参照符号が付いている。
【0018】
図1に示すように、本発明は、少なくとも1つの光源1を投射するためのレンズ系に関するものである。当該レンズ系は、前記光源1から光の伝播方向に、高いコンストリンジェンスを呈する材料から得られると共に、光軸に沿った自らの厚さと自らの高さとの間の0.5より大きい比率を呈する、前記光源1に接した半球形状の一次レンズと称される第1の集束レンズ3と、非球面状の表面5を備える第2のレンズ4とで構成された第1光学素子群2であって、その第2のレンズ4における非球面状屈折面5がレンズの入光屈折面に相当している(即ち、一次レンズ4の側にある)、第1光学素子群2と、低いコンストリンジェンスを呈する材料から得られる発散レンズ7で構成された第2光学素子群6と、瞳孔8と、高いコンストリンジェンスを呈する材料から得られる集束レンズ10で構成された第3光学素子群9と、を備えている。以降、本明細書において、「高いコンストリンジェンス」は40より大きいコンストリンジェンスを意味するものと理解されたく、また「低いコンストリンジェンス」は40より小さいコンストリンジェンスを意味するものと理解されたい。
【0019】
光源1は、いずれにしても本発明の範囲から逸脱することなく、出光部、若しくはデカップリング、光ガイド、出光部、若しくはデカップリングの区域、集束屈折面のマトリックスの区域、または、集束屈折面のマトリックスによって生成される(材料内の)虚像などの、如何なる一次光源や二次光源から成ることもできる、ということに気付かれたい。
【0020】
例えば、第1光学素子群2の一次レンズ3および第3光学素子群9の集束レンズ10は、スコット(SCHOTT)社によって参照記号N-LAK33Aの下で市販されてコンストリンジェンスが52である光学ガラスからや、一般的に頭字語PMMAで呼ばれてコンストリンジェンスが58であるポリメチルメタクリレートで、或いは同様のコンストリンジェンスを有した如何なる他の透明熱可塑性ポリマーからも得ることができるであろう。第2光学素子群6の発散レンズ7は、例えばコンストリンジェンスが30であるポリカーボネイト(PC)やコンストリンジェンスが339であるガラスN-SF2などの、40未満のコンストリンジェンスを呈する任意の材料から得ることができるであろう。
【0021】
半球形状の一次レンズ3によって、光源1から最大限の光を取り出すことが可能となる。また、集束、発散、および集束の順の、3つの光学系2,6,および9のレンズ3,4,7,および10によって、収差を補正して、光ビームを形成することが可能となる。「コンストリンジェンス(constringence)」は、各レンズの色分散を表示する指標を意味するものと理解すべきである、ということに留意されたい。つまり、コンストリンジェンスは、アッベ数および分散率と等価であり、光の波長の関数としての材料の屈折率変化に対応するものである。コンストリンジェンスが高いほど、レンズの色分散が小さくなる。
【0022】
光の最良な取り出しと、光学収差の最適な補正との両者を得るために、半球状の一次集束レンズ3は、レンズの厚さの10%未満の球面からの偏差、好ましくは厚さの3%未満の球面からの偏差を呈している。
【0023】
さらに、第2光学素子群の発散レンズ7は両凹レンズから成っている。そのレンズの入光屈折面は、出光屈折面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有している。その上、第3光学素子群の集束レンズ10は、非球面状屈折面11を備えている。第3光学素子群9の集束レンズ10における当該非球面状屈折面11は、第2光学素子群6と第3光学素子群9との間に定置された瞳孔8とは反対の側にあり、即ち当該集束レンズ10の出光屈折面に相当している。各レンズ3,4,6,および10の光軸同士が同軸となっている、ということにも留意されたい。
【0024】
この例示的実施形態において、光源1は、一次レンズ3内に蛍光体が埋められると言われる、複数の発光ダイオード(LEDと称される)から成っている。「埋められ」は、LEDの蛍光体が一次レンズ3と接している、という事実を意味するものと理解されたい。このようにして、蛍光体によって放出された光が、一次レンズ内に「埋められ」た状態で直接的に出て行くのである。但し光源は、いずれにしても本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によく知られた任意の光源から成っていることができるであろうことは明らかである。
【0025】
図示しない第1の変形実施形態によれば、第1光学素子群2は、単一の半球状一次集束レンズ3だけを備えることができるであろう。
【0026】
図示しない別の変形実施形態によれば、第3光学素子群9の集束レンズ10は、1つないし複数の集束反射器によって置き換えることができるであろう。
【0027】
さらに、レンズ3,5,7,および10のそれぞれは、いずれにしても本発明の範囲から逸脱することなく、少なくとも2つのレンズによって置き換えることができるであろう、ということは論をまたない。
【0028】
図2を参照する別の変形実施形態によれば、当該レンズ系は、前述したのと同様、前記光源1から光の伝播方向に、高いコンストリンジェンスを呈する材料から得られると共に、光軸に沿った自らの厚さと自らの高さとの間の0.5より大きい比率を呈する、前記光源1に接した半球形状の一次レンズと称される第1の集束レンズ3と、非球面状の表面5を備える第2のレンズ4とで構成された第1光学素子群2であって、その第2のレンズ4における非球面状屈折面5がレンズの入光屈折面に相当して(即ち、一次レンズ4の側に広がって)いる、第1光学素子群2と、低いコンストリンジェンスを呈する材料から得られる発散レンズ7で構成された第2光学素子群6と、瞳孔8と、高いコンストリンジェンスを呈する材料から得られる集束レンズ10で構成された第3光学素子群9と、を備えている。
【0029】
当該レンズ系は、次の事実によって、前述したものと異なっている。即ち、そのレンズ系が、複数のLEDと称される発光ダイオードで構成された一次光源1からの放射を受ける、一次集束レンズ3と接した波長変換素子12を備えている、という事実である。かくして、波長変換素子は、埋められた二次光源、即ち一次集束レンズ3と接した二次光源のように機能するのである。
【0030】
当該複数の発光ダイオードは、いずれにしても本発明の範囲から逸脱することなく、個別にアドレス指定可能な複数区域で構成される単一のLEDによって、或いは、レーザービーム走査によって像を形成するための、拡散および/または反射面を備えた区域によって置き換えることができるであろう、ということを認められたい。
【0031】
かくして、本発明による照明システムは、光学系の焦点の所に置かれた、即ち半球状一次レンズ3と接した光源の像を、光ビームの形態で投射することが可能である。より特定的には、当該光源1は、複数のLEDのマトリックス、即ち、複数の区域(例えば正方形)に再分された発光面とすることができる。それらの区域は、一般的には例えば「ピクセル」と称され、いわゆるアダプティブ・ライティング(配光可変照明)システムを作り出すために、互いに独立して点灯したり消灯したりできるようになっている。車両における、そのようなアダプティブ・ライティングシステムは、ビームの照明の分布を交通状況に適合させることを可能とする。例えば、全てのピクセルが点灯されるときには、当該システムは路上へ(一般的にハイビームと称され、他の運転者を眩惑する)強力なビームを投射する。また、当該照明システムの前方に車両が検出されたときには、その光が他の運転者を眩惑する1つないし複数のピクセルがビーム内で消灯されて、(一般的にロービームと称される)より強力でないビームを形成する。
【0032】
本発明は、決して上述した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの改変を成すことができる、ということ明確に理解されたい。
図1
図2