(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】BRAF陽性癌を患っている患者を、BRAF阻害剤に対する非レスポンダーであると及びMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであると同定する手段及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6827 20180101AFI20220308BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220308BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220308BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220308BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20220308BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20220308BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220308BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C12Q1/6827 ZNA
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
C12N15/12
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6886 Z
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
(21)【出願番号】P 2017522732
(86)(22)【出願日】2015-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2015065986
(87)【国際公開番号】W WO2016008853
(87)【国際公開日】2016-01-21
【審査請求日】2018-05-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-07
(32)【優先日】2014-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517014217
【氏名又は名称】ウニベルジテート チューリッヒ プロレクトラット エムエンベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル パウル レベック
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト ドゥンマー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ビドマー
(72)【発明者】
【氏名】マリーケ イネケ ゲールトチェス ラアイマケルス
【合議体】
【審判長】田村 聖子
【審判官】森井 隆信
【審判官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/068562(WO,A2)
【文献】特表2013-543008(JP,A)
【文献】J.Mol.Diagn.,2013年,Vol.15,No.1,pp.94-100
【文献】Nature,2010年,Vol.468,No.7326,pp.973-977
【文献】MOLECULAR CANCER THERAPEUTICS,2012年4月1日,Vol.11,No.4,pp.909-920
【文献】Cancer Res.,2003年,Vol.63,No.15,pp.4561-4567
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
GenBank/DDBJ/EMBL/Geneseq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一細胞クローンに由来する細胞集団
から成るBRAF陽性癌に罹患している対象が、BRAF阻害剤に対する非レスポンダーであるか否か、及び/又はMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであるかを同定する方法であって、以下のステップ:
(a)
該対象から得た単一細胞クローンに由来する細胞集団のBRAF遺伝子内の突然変異及びNRAS遺伝子内
の突然変異の存在又は不存在を特定し;そして
(b)
BRAF遺伝子内の突然変異、及び、NRAS遺伝子内
の突然変異が特定された場合、該対象がBRAF阻害剤に対する非レスポンダー及びMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであると同定すること、
を含
み、
ここで、前記BRAF遺伝子の突然変異は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものであり、また、前記NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものであり、
前記単一細胞クローンに由来する細胞集団の細胞が、BRAF遺伝子内の前記突然変異及びNRAS遺伝子内の前記突然変異をそれらのゲノム内に含んでいる、方法(ただし、前記方法は、医師により行われる判断工程を除く)。
【請求項2】
前記BRAF陽性癌が黒色腫癌である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記BRAF阻害剤がBRAF活性の小分子阻害剤である、請求項1~
2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記BRAF阻害剤が、LGX818、PLX4032、及び/又はGSK2118436である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記MAPK/ERK阻害剤がMEK又はERK活性の小分子阻害剤である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記MAPK/ERK阻害剤が、GSK1120212、MEK162、及び/又はSCH772984である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置における前記アミノ酸置換が、グルタミンからリジンへの置換(Q61K)、グルタミンからアルギニンへの置換(Q61R)、又はグルタミンからロイシンへの置換(Q61L)である、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置における前記アミノ酸置換が、バリンからグルタマートへの置換(V600E)、バリンからリジンへの置換(V600K)、バリンからアルギニンへの置換(V600R)、又はバリンからアスパラギン酸への置換(V600D)である、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記NRAS核酸の触媒サブユニットのエクソン2内
の突然変異の存在を、以下のステップ:
a)対象からのサンプル中の核酸を、以下の:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
から成る群から選択される遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドの1以上と接触させ;
b)NRAS核酸内のその標的配列へのオリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でサンプルをインキュベートし;
c)前記ハイブリダイゼーションを検出し;そして
d)ステップc)で検出された前記ハイブリダイゼーションに基づいて少なくとも1つの突然変異を特定すること、
によって特定する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップb)が、次のオリゴヌクレオチドプライマー:配列番号11を有するフォワードオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号12を有するリバースオリゴヌクレオチドプライマー、のうちの一方又はその両方を用いてサンプル中のNRAS核酸を増幅することによって、NRAS核酸内の標的配列を含む増幅産物を作り出すステップを更に含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記BRAF核酸の触媒サブユニットのエクソン15内
の突然変異の存在を、以下のステップ:
a)対象からのサンプルの核酸を、以下の:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4);
から成る群から選択される遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドの1以上と接触させ;
b)BRAF核酸内のその標的配列へのオリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でサンプルをインキュベートし;
c)前記ハイブリダイゼーションを検出し;そして
d)ステップc)で検出された前記ハイブリダイゼーションに基づいて少なくとも1つの突然変異を特定すること、
によって特定する、請求項
1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップb)が、次のオリゴヌクレオチドプライマー:配列番号5を有するフォワードオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号6を有するリバースオリゴヌクレオチドプライマー、の一方又はその両方を用いてサンプル中の
BRAF核酸を増幅することによって、BRAF核酸内の標的配列を含む増幅産物を作り出すステップを更に含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
BRAF陽性癌に罹患している対象の処置において使用するための、MAPK/ERK阻害剤を含む医薬組成物であって、前記BRAF陽性癌が単一細胞クローンに由来する細胞集団
から成り、それによって、前記癌が
、NRAS遺伝子内
の突然変異及びBRAF遺伝子内
の突然変異を少なくとも有することがわかって
おり、
ここで、前記BRAF遺伝子の突然変異は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものであり、また、前記NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものである、医薬組成物。
【請求項14】
単一細胞クローンに由来する癌に罹患していることが疑われた対象のサンプルにおいて癌の診断を補助する方法であって、以下のステップ:
a)2つの以下のプライマーオリゴヌクレオチド:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び/又は
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4)、
並びに2つの以下のプライマーオリゴヌクレオチド:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び/又は
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
を用いてサンプル中の核酸を増幅することによって、BRAF核酸及びNRAS核酸内の標的配列を含む1若しくは複数の増幅産物を作り出し:
b)以下の突然変異特異的BRAFオリゴヌクレオチド:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び/又は
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4);
の1以上、並びに以下の位置特異的NRASオリゴヌクレオチド:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び/又は
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
の1以上と、核酸サンプルを接触させ;
c)BRAF核酸及びNRAS核酸内のそれらのそれぞれの標的配列へのオリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でサンプルをインキュベートし;
d)前記ハイブリダイゼーションを検出すること、を含
み、
前記癌が、NRAS遺伝子内の突然変異及びBRAF遺伝子内の突然変異を少なくとも有することがわかっており、
ここで、前記BRAF遺伝子の突然変異は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものであり、また、前記NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものである、方法。
【請求項15】
単一細胞クローンに由来する癌を診断するためのキットであって、前記キットが、
次のオリゴヌクレオチド:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4);
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
を含
み、
前記癌が、NRAS遺伝子内の突然変異及びBRAF遺伝子内の突然変異を少なくとも有することがわかっており、
ここで、前記BRAF遺伝子の突然変異は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものであり、また、前記NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものである、キット。
【請求項16】
対象において標的療法に対して応答性を評価する方法であって、以下ステップ:
a)対象から単一細胞クローンに由来するサンプルを調製し;
b)BRAF及びNRAS遺伝子内の突然変異の存在について
前記サンプルを試験し、ここで、該試験は、選択的増幅、プローブハイブリダイゼーション又は核酸シークエンシングから成る群から選択される方法のうちの1つによって実施され;
c)NRAS及びBRAF遺伝子内に突然変異が検出された場合、MAPK/ERK阻害剤に対して応答性及びBRAF阻害剤に対して非応答性を特定すること、
を含
み、
ここで、前記BRAF遺伝子の突然変異は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものであり、また、前記NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものである、方法(ただし、前記方法は、医師により行われる判断工程を除く)。
【請求項17】
対象において癌を評価する方法であって、以下のステップ:
a)核酸を含んでいる対象からの単一細胞クローンに由来するサンプルを調製し;
b)
前記サンプル中の核酸を、BRAF及びNRAS遺伝子内の突然変異に特異的な核酸プローブと接触させ;
c)NRAS及びBRAF遺伝子内に突然変異が検出された場合、MAPK/ERK阻害剤に対して応答性であり、且つ、BRAF阻害剤に対して非応答性であるとして癌を評価すること、
を含
み、
ここで、前記BRAF遺伝子の突然変異は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものであり、また、前記NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらすものである、方法(ただし、前記方法は、医師により行われる判断工程を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は診断、特に癌診断の分野に関する。より詳しく述べると、それは、BRAF陽性癌に罹患している対象がBRAF阻害剤に対する非レスポンダーであるか否か、及び/又はMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであるかを同定する方法、癌を診断する方法、対象の標的療法に対して応答性を評価する方法、及び対象の癌を評価する方法に関する。そのうえ、癌を診断するキット及びデバイスも本発明によって企図される。更に、本発明は、BRAF陽性癌に罹患している対象を処置するのに使用するMAPK/ERK阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
進行性疾患のための黒色腫治療法はここ数年で大きく進歩したが1-3、一部の患者の標的療法に対する一次固有抵抗性、並びにその他の患者の大部分における遅延型獲得抵抗性の発症は、転移性黒色腫の臨床管理にとっての大きな課題を提起し続けている4。
しかしながら、次世代シークエンシング(NGS)技術の到来は、従来の療法が患者の遺伝的変異の不均一状況にどのように影響を及ぼすか、及び治療抵抗性の起源の同定に対処することを可能にする。癌進行の新機構を解明することは別として、NGS適用はまた、経時的なクローンの多様性変化の定量化とモデリングに関する膨大なデータセットを提供する。一部の癌において、大域的な遺伝的多様性測定法が腫瘍進行の予示となることが示された5。
【0003】
転移性黒色腫は特に、あらゆる癌の中で最高の突然変異率の高さである6。いくつかの試験では、原発性腫瘍と転移の間で異なる異型性の消失などのゲノム特徴が同定され、更に、他の試験では、この遺伝的異質性が個々の腫瘍の間にも存在することが示された8。
治療抵抗性に関連して、最近、標的療法に対する応答に関する多くの遺伝的機構及び転写機構が大規模な患者コホートに渡って実証されたが、全身療法に対する個々の癌ゲノムの考察は十分に理解されないままである9、10。
小規模なサブクローンでは治療法に対して応答性の低下を呈することが示され7、そしてより最近の試験では、標的化BRAF阻害剤を投与した患者がこの基本的な腫瘍内分子異質性から生じる抵抗性のさまざまの機構を有することが明らかになった11。
【0004】
一般的に、2つの異なった処置抵抗性機構:固有(一次)及び獲得性(二次)、に分類できる。固有の抵抗性腫瘍は、最初から反応しないか、又は抵抗性サブクローンを含んでおり、そしてそれが、処置の間に急速に選択され、全身腫瘍組織量低減の不全と急速な再発をもたらす。獲得性抵抗性機構は、処置中に生じ、MAPK経路の遺伝子内の追加的な活性化変異10、24、25又はMAPK阻害剤の不活性化突然変異26の選択又は出現を含み得る。また、BRAF転写産物の選択的スプライシング及び他の非遺伝機構が治療抵抗性に関与することが報告された27。この問題を取り扱う多くの試験にもかかわらず、知られている抵抗性機構のリストは完成にはほど遠く、多くの個々の症例では、抵抗性の機構は未知のままである。
【0005】
ヒト黒色腫では、活性化BRAF又はNRAS突然変異が見つかることが多い。NRAS及びBRAFの活性化突然変異は同じ黒色腫内に共存し得るが、それらは単独細胞レベルでは互いに排他的であると考えられる45。加えて、NRAS突然変異又はBRAF突然変異の存在は、異なったインビトロ及びインビボ生育特性に関連していて、突然変異黒色腫の臨床管理に直接影響し得る45。
前述の腫瘍抵抗性機構の観点から、好適な治療的介入、特にBRAF阻害剤療法に対して応答するそれらの能力に関して癌を特徴づけすることが非常に望ましい。
本発明の根底にある技術的問題は、前述の必要性に応じるための手段及び方法と考えることができる。該技術的問題は、請求項及び本明細書中で以下に特徴づけられる実施形態によって解決される。
【発明の概要】
【0006】
よって、本発明は、BRAF陽性癌に罹患している対象が、BRAF阻害剤に対する非レスポンダーであるか否か、及び/又はMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであるかを同定する方法であって、以下のステップ:
(a)該対象のサンプル中の少なくともNRAS遺伝子内の少なくとも1つの突然変異の存在又は不存在を特定し;そして
(b)NRAS遺伝子内の少なくとも1つの突然変異が特定された場合、該対象がBRAF阻害剤に対する非レスポンダー及びMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであると同定すること、
を含む方法に関する。
【0007】
本発明の方法はエクスビボ法であることが好ましい。更に、上記に明確に記述されたステップの他にステップを含み得る。例えば、更なるステップはサンプルの前処理又は本方法によって得られた結果の評価に関し得る。本方法は手作業で実施されてよく、又は自動化によって補助されてよい。好ましくは、ステップ(a)及び/又は(b)は、全体的又は部分的な自動化によって、例えば、ステップ(a)の特定、及び/又はステップ(b)の同定のためのデータ処置デバイス上のコンピューターによって実行される計算アルゴリズムに適したロボット及び感覚装置によって補助され得る。
【0008】
本明細書中で使用される場合、「同定する」という用語は、対象がBRAF阻害剤に対して非レスポンダーであるか否か又はレスポンダーであるかを評価することを意味する。従って、同定することとは、対象を非レスポンダーの群に組み入れるか、又は対象を前記群から除外することを目的とし得る。同様に、同定することとは、対象をレスポンダーの群に組み入れるか、それを前記群から除外することを目的とし得る。そのうえ、同定することはまた、対象がMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであることを評価することも包含する。当業者によって理解されるように、そのような評価は通常、調べる100%の被験体にとって正確であることを意図しない。しかし、その用語は、その評価が被験体の特定の部分にとって正確であることを要する(例えばコホート調査におけるコホート)。一部が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価手段、例えば信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン-ホイットニー検定等を用いて、当業者によって造作なく決定され得る。詳細はDowdyandWearden,StatisticsforResearch,JohnWiley&Sons,NewYork1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001であることが好ましい。集団の被験体の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%が、本発明の方法によって適切に評価され得ることがより好ましい。
【0009】
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は動物、一般的に哺乳動物、そしてより一般的にヒトに関する。本発明による対象はBRAF陽性癌に罹患しているものとする。
本明細書中で使用される場合、「BRAF陽性癌」は、BRAF活性の障害を有する、一般的に単一細胞クローン由来の、癌細胞を含む癌を指す。一般的に、前記細胞においてBRAF活性が増強され、そして、とりわけMAPK経路の活性化をもたらす。より一般的に、BRAF活性化は、BRAF遺伝子の少なくとも1つの突然変異によって引き起こされ、そして例えば、構成的な活性BRAFタンパク質又は細胞内ではもう制御できないBRAFタンパク質をもたらす。活性化されたBRAFタンパク質をもたらす特定のBRAF突然変異が本明細書中の他のか所で指定される。一態様において、対象はBRAF阻害剤処置を受けても又は受けなくてもよい。本発明による典型的なBRAF陽性癌は、黒色腫癌、非ホジキンリンパ腫癌、結腸直腸癌、甲状腺乳頭癌、非小細胞肺癌、ヘアリー細胞白血病又は肺の腺癌である。より一般的に、それは黒色腫癌である。
【0010】
「BRAF阻害剤」という用語は、BRAF活性を妨げることができる分子を指す。BRAF阻害剤は、BRAFタンパク質に特異的に結合し、その活性を阻害する抗BRAF抗体であってもよい。更に、BRAF阻害剤は阻害性核酸であってもよい。阻害性核酸は、BRAFタンパク質に特異的に結合し、活性を阻害するアプタマーであってもよい。他の阻害性核酸は、BRAF転写産物に結合し、その翻訳を阻害するか又はそれらを分解し得る。一般的に、斯かる阻害性核酸は、アンチセンス核酸、モルホリノオリゴヌクレオチド、例えばsiRNAs若しくはマイクロRNAなどの阻害性RNA分子、又はリボザイムであり得る。
【0011】
アンチセンス核酸分子は、一般的にRNAであり、標的転写産物に対して実質的に又は完全に相補的な核酸配列を含む。一態様において、アンチセンス核酸分子は、実質的に標的転写産物の少なくとも100個の隣接ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個又は少なくとも500個の隣接ヌクレオチドに相補的な核酸配列から成る。アンチセンス核酸分子をどのように作り出し、そして使用するかは当該技術分野で周知である(例えば、Weiss, B. (ed.): Antisense Oligodeoxynucleotides and Antisense RNA: Novel Pharmacological and Therapeutic Agents, CRC Press, Boca Raton, FL, 1997を参照のこと)。モルホリノオリゴヌクレオチドは、20~30ヌクレオチド、一般的に25ヌクレオチドの長さを有する合成核酸分子である。
【0012】
モルホリノは、標準的な核酸塩基対合によって標的転写産物の相補的配列に結合する。それらはデソキシリボース環ではなくモルホリン環に結合され、ホスファートではなくホスホロジアミデート基を介して連結される、標準的な核酸塩基を有する(例えば、Summerton 1997, Antisense & Nucleic Acid Drug Development 7* (3): 187-95を参照のこと)。アニオン性のホスファートを、非荷電性ホスホロジアミデート基で置き換えることにより、普通の生理的pH範囲内でのイオン化がなくなるので、生物体又は細胞におけるモルホリノは、非荷電性分子である。モルホリノの骨格全体は、これらの改変サブユニットから作られる。阻害性小RNA分子と異なり、モルホリノは、それらの標的RNA分子を分解しない。むしろ、モルホリノは、RNA内の標的配列への結合を立体的に妨げ、さもなければRNAと相互作用し得る分子を単に妨害する(例えば、Summerton 1999, Biochimica et Biophysica Acta 1489 (1): 141-58を参照のこと)。
【0013】
低分子干渉RNA(siRNA)は、目的の遺伝子をコードする標的RNAに相補的であり、RNA干渉(RNAi)により遺伝子発現を減少させる又はなくす。同様に、マイクロRNAは相補的RNA標的化配列を含み、そして同様にRNAi機構を介して作用する。理論に縛られるものではないが、RNAiは、一般に、mRNAを標的にすることによって目的の遺伝子の発現を抑制するために使用される。手短に言えば、細胞におけるRNAiの過程は、二本鎖RNA(dsRNA)により開始され、それは、リボヌクレアーゼにより切断され、そのため、siRNA二重鎖が生じる。siRNAは、別の細胞内酵素複合体に結合し、その酵素複合体は、それにより活性化され、mRNA分子がsiRNA配列に相同(又は相補的)であるものを全て標的にする。その複合体の機能は、siRNA鎖の一方と標的mRNAとの間の塩基対形成相互作用を通して、相同的mRNA分子を標的にすることである。次いで、mRNAは、siRNAの3’末端から約12ヌクレオチドで切断され、分解される。このようにして、特定のmRNAを標的にし、分解することができ、それにより、標的mRNAからタンパク質が発現しなくなる。相補的なヌクレオチド配列は、本明細書で使用するとき、標的遺伝子の一部のRNA転写産物に相補的であるRNA鎖における領域を意味する。dsRNAは、二本の相補的で逆平行な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するRNAを意味する。dsRNAの全てのヌクレオチドが、必ずしも、完全なワトソン-クリック塩基対を示すわけではなく;二本のRNA鎖は、実質的に相補的でありうる。dsRNAを形成するRNA鎖は、同じ又は異なる数のヌクレオチドを有してよく、塩基対の最大数は、dsRNAの最も短い鎖におけるヌクレオチドの数である。好ましくは、dsRNAは、長さが49ヌクレオチド以下、より好ましくは25ヌクレオチド未満、最も好ましくは19~23ヌクレオチドの間である。この長さのdsRNAは、RNAi技術を使用して標的遺伝子の発現を阻害するのに特に効率的である。dsRNAは、リボヌクレアーゼ酵素によって、結果的に、短い干渉RNA(siRNA)に分解される。siRNAの相補的領域は、siRNAと標的RNAとの十分なハイブリダイゼーションを可能にし、したがって、RNAiを媒介する。哺乳類の細胞において、siRNAは、長さが約21~25ヌクレオチドである。siRNA配列は、相補的塩基対形成相互作用を通して、siRNAと標的RNAを一緒にするのに十分な長さである必要がある。本発明のTet発現系と共に使用されるsiRNAは、異なった長さのものであってもよい。siRNAの長さは、好ましくは、10ヌクレオチド以上であり、標的RNAと安定的に相互作用するのに十分な長さ;詳細には、15~30ヌクレオチド;より詳細には、15~30の間の任意の整数のヌクレオチド、最も好ましくは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30である。「十分な長さ」とは、予想される条件下で、意図された機能を果たすのに十分な長さである、15ヌクレオチド以上のオリゴヌクレオチドを意味する。「安定的に相互作用する」とは、(例えば、生理的条件下で、標的において相補的ヌクレオチドとの水素結合を形成することによる)低分子干渉RNAと標的核酸との相互作用を意味する。一般に、そのような相補性は、siRNAとRNA標的との間で100%であるが、所望により、より低い可能性があり、好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である可能性がある。例えば、21塩基中19塩基が、塩基対形成されうる。様々な対立遺伝子多型間の選択が望まれる、いくつかの場合において、標的配列を他の対立遺伝子配列と効果的に見分けるために、標的遺伝子に対する100%の相補性が必要とされる。
【0014】
標的対立遺伝子間で選択する場合、長さの選択も、重要な要素である。なぜなら、長さの選択は、相補性の割合、及び対立遺伝子の差異を区別する能力に関わる他の要素であるからである。C.エレガンス(C.elegans)、ショウジョウバエ、植物、哺乳類を含めた生物体において遺伝子を抑制するためのRNAiの使用に関する方法は、当技術分野において公知である(例えば、Fire 1998, Nature 391:806-811; Fire 1999, Trends Genet. 15, 358-363; Sharp 2001, Genes Dev. 15,485-490; Hammond 2001, Nature Rev. Genet. 2, 1110-1119; Tuschl 2001, Chem. Biochem. 2, 239-245; Hamilton 1999, Science 286, 950-952; Hammond 2000, Nature 404, 293-296; Zamore 2000, Cell 101, 25-33; Bernstein 2001, Nature 409, 363-366; Elbashir 2001, Genes Dev. 15, 188-200; WO 0129058; WO 09932619; and Elbashir 2001, Nature 411: 494-498を参照のこと)。
【0015】
リボザイムは、それら自身のリン酸ジエステル結合の一つの加水分解の触媒(自己切断リボザイム)、又は他のRNAにおける結合の加水分解の触媒を可能にする明確に定義された三次構造を有する触媒RNA分子を意味するが、それらが、リボソームのアミノトランスフェラーゼ活性を触媒することも発見されている。本発明に従って想定されるリボザイムは、好ましくは、標的転写産物を特異的に加水分解するものである。本発明によれば、特に、ハンマーヘッド型リボザイムが好ましい。そのようなリボザイムをどのように生成し、使用するかは、当技術分野において良く知られている(例えば、Hean J, Weinberg MS (2008). "The Hammerhead Ribozyme Revisited: New Biological Insights for the Development of Therapeutic Agents and for Reverse Genomics Applications". In Morris KL. RNA and the Regulation of Gene Expression: A Hidden Layer of Complexity. Norfolk, England: Caister Academic Pressを参照のこと)。
【0016】
更に、BRAF阻害剤は、BRAFに結合し、その活性を阻害する小分子であり得る。BRAFの斯かる小分子阻害剤は、BRAFキナーゼドメインの活性部位に結合する化合物を同定することを目指す周知のスクリーニング方法又は分子モデリング方法によって得ることができる。Sorafenib又はNexavarとしても知られているBAY43-9006は、キナーゼドメインの不活性形態に結合し、その活性化をブロックすることを介してBRAF活性を阻害する小分子化合物である。Vemurafenibとしても知られているPLX4032は、キナーゼドメインのATP結合ポケットにそれ自体を固定し、それによって活性酵素の活性を妨げるBRAF阻害剤である。一態様において、本明細書中で言及したBRAF阻害剤は次の:LGX818(Encorafenib)、PLX4032(Vemurafenib)、GSK2118436(Dabrafenib)、一般設計基準-0879、及びBAY43-9006(Sorafenib)から成る群から選択される。より一般的には、BRAF阻害剤は、LGX818(Encorafenib)、PLX4032(Vemurafenib)又はGSK2118436(Dabrafenib)である。
【0017】
「BRAF阻害剤に対する非レスポンダー」という用語は、BRAF阻害剤の投与によって進行を示すか、又は癌の改善又は治癒を示さないか若しくはわずかしか示さない、或いは治療に対する反応期間後に治療法に対する獲得抵抗性を発症するBRAF陽性癌を呈する対象を指す。
「MAPK/ERK阻害剤」という用語は、MAPK活性、特にERK活性を妨げることができる分子を指す。MAPK/ERK阻害剤は、MAPK/ERKタンパク質に特異的に結合し、それらの活性を阻害する抗MAPK/ERK抗体であってもよい。更に、MAPK/ERK阻害剤は阻害性核酸であってもよい。阻害性核酸は、MAPK/ERKタンパク質に特異的に結合し、活性を阻害するアプタマーであってもよい。他の阻害性核酸は、MAPK/ERK転写産物に結合し、その翻訳を阻害しても又はそれらを分解してもよい。一般的に、斯かる阻害性核酸は、アンチセンス核酸、モルホリノオリゴヌクレオチド、例えばsiRNAs若しくはマイクロRNAなどの阻害性RNA分子、又はリボザイムであり得る。更に、MAPK/ERK阻害剤は、MAPK/ERKに結合し、その活性を阻害する小分子であってもよい。斯かるMAPK/ERKの小分子阻害剤は、MAPK/ERKキナーゼドメインの活性部位に結合する化合物を同定することを目指す周知のスクリーニング方法又は分子モデリング方法によって得られる。一態様において、本明細書中で言及したMAPK/ERK阻害剤は、次の:U0126、GSK1120212(Trametinib)、MEK162、及びSCH772984から成る群から選択されるMEK阻害剤である。より一般的に、MAPK/ERK阻害剤は、GSK1120212(Trametinib)、MEK162、又はSCH772984である。最も一般的に、MAPK/ERK阻害剤は、ERK阻害剤、そして特にSCH772984である。
【0018】
「MAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダー」という用語は、MAPK/ERK阻害剤の投与によって癌の進行減少、有意な改善又は治癒を示すBRAF陽性癌を呈する対象を指す。
「サンプル」という用語は、癌細胞、或いは癌細胞タンパク質及び/又は核酸を含むサンプルを指す。一般的に、前記癌細胞は単一細胞クローンから得られる。前記サンプルは、腫瘍組織又は体液からの生検材料、並びに剖検から得られた組織から得てもよい。体液は、周知の技術で得られ、一般的に血液、リンパ液、肺胞、気管支、又は咽頭の洗浄法、リカー(liquor)又は尿のサンプルを含む。組織は、当業者にとって同様に周知である生検検体手順によって得られる。組織は腫瘍が入っている組織から一般的に得られ、そして癌細胞又はそのタンパク質及び/又は核酸を含む。
【0019】
「単一細胞クローン」という用語は、そのゲノム内にBRAF及びNRAS突然変異を包含している癌細胞の亜集団、そして好ましくはクローン亜集団を指す。単一細胞クローンは、当業者にとって周知の技術によって得ることができる。斯かる技術は、体組織又は体液からの細胞の分離、細胞のソーティング、及びこれらの個別細胞それぞれからの新規培養物の培養を一般的に含む。
【0020】
「v-rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子相同体B」とも呼ばれる「BRAF」という用語は、本明細書中で使用される場合、BRAFタンパク質をコードする遺伝子を指す。BRAFタンパク質は、Rafキナーゼファミリーのメンバーであり、細胞増殖及び分化に影響するMAPK/ERKシグナル伝達経路にかかわる。B-Rafとも呼ばれるBRAFタンパク質は、ヒトでは長さで766個のアミノ酸から成るセリン/トレオニンキナーゼである。それは、典型的なRafキナーゼファミリードメイン保存領域1(CR1)、Ras-GTP結合自己調節ドメイン、保存領域2(CR2)、セリンに富むヒンジ領域、及び保存領域3(CR3)、タンパク基質上のコンセンサス配列をリン酸化する触媒タンパク質キナーゼドメインを含んでいる。その活性立体配座では、B-Rafは、そのキナーゼドメインの水素結合及び静電的相互作用を介して二量体を形成する。本発明との関連で言及されるBRAFは、典型的にヒトBRAFである。ヒトBRAFタンパク質のタンパク質配列は受入番号NP_004324.2でNCBIデータベースに寄託され、mRNA/cDNA配列はNM_004333.4で示される(配列番号13も参照のこと)。マウスBRAFタンパク質オルソログもまた知られており、受入番号NP_647455.3でNCBIデータベースに寄託され、mRNA/cDNA配列はNM_139294.5で示される。前記用語はまた、前述の特定のBRAFタンパク質のバリアントも包含する。斯かるバリアントは、該特定のBRAFタンパク質と少なくとも同じ基本的な生物学的及び免疫学的特性を有する。特に、本明細書で言及される同じ特異的なアッセイによって、例えば前記BRAFタンパク質を特異的に認識するポリクローナル又はモノクローナル抗体を用いたELISAアッセイによって検出される場合は、それらは同じ基本的な生物学的及び免疫学的特性を共有する。好ましいアッセイを下記の実施例に記述する。更に、本発明に従って言及されるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠損及び/又は付加のために異なるアミノ酸配列であって、そのバリアントのアミノ酸配列が依然として該特定のBRAFタンパク質のアミノ配列に好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を有するはずであることは理解されるべきである。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は当技術分野で周知なアルゴリズムによって決定することができる。好ましくは、同一性の程度は、比較ウインドウ中のアミノ酸配列のフラグメントが最適なアラインメントにおいて参照配列(付加又は欠損を含まない)と比較すると付加又は欠損(例えばギャップ又はオーバーハング)を含み得る、2つの最適にアラインされた配列を比較ウインドウに渡って比較することによって決定されるべきである。比較ウインドウは、好ましくはクエリー配列の全長又はその長さの少なくとも50%である。パーセンテージは以下によって計算される:両配列に同一アミノ酸残基が出現する位置数を決定し、一致した位置数を得て、一致した位置数を比較ウインドウ中の総位置数で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得る。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith 1981, Add. APL. Math. 2:482の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman 1970, J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson 1988, Proc. Natl. Acad Sci. (USA) 85: 2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実施(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、及びTFASTA)によって、又は目視検査によって実行され得る。2つの配列が比較のために同定されたら、それらの最適なアラインメント、及びそこから同一性の程度を決定するためにGAP及びBESTFITを用いることが好ましい。ギャップウェイト(gapweight)に5.00及びギャップウェイトレングス(gapweightlength)に0.30のデフォルト値を用いることが好ましい。上記に言及されるバリアントは対立遺伝子多型又は他の種に特異的なホモログ、パラログ、若しくはオルソログであってよい。更に、フラグメントが上記に言及される基本的な免疫学的及び生物学的特性を有する限り、本明細書で言及されるバリアントは該特定のBRAFタンパク質又は前述した種類のバリアントのフラグメントを含む。斯かるフラグメントは、例えばBRAFタンパク質の分解産物又はスプライスバリアントであってよい。リン酸化などの翻訳後修飾のために異なるバリアントが更に含まれる。更に、前述のBRAFタンパク質は、モノマーとして及び/又は二量体化形態で存在してもよい。
【0021】
BRAF陽性癌細胞のBRAF遺伝子内の典型的な突然変異は、BRAFタンパク質における1若しくは複数のアミノ酸置換を引き起こすものである。一態様において、前記のBRAFタンパク質における少なくとも1つの突然変異は、活性化されたBRAFタンパク質をもたらす突然変異である。更なる一態様において、本発明によるBRAF陽性癌細胞は、ヒトBRAFタンパク質におけるアミノ酸600に相当する位置にアミノ酸置換を有するBRAFタンパク質をコードする変異BRAF遺伝子を有する。当然のことながら、所定のアミノ酸の位置は、突然変異誘発する事象の結果として、他の種のパラログ又はオルソログにおいて起こるタンパク質内の他のか所でのアミノ酸欠失又はアミノ酸付加により変化し得る。これにより、本明細書中で言及される場合、例えば、ヒトBRAFタンパク質の600位、すなわち、V600に相当する位置はまた、斯かる事象による600位ではないバリンにおける突然変異も包含するが、但し、前述のバリンがヒトBRAFタンパク質におけるV600と同じアミノ酸によって隣接されることを条件とする。本発明により言及された他の位置番号すべてに対して、必要に応じて変更を加えて、特定のタンパク質の特定の位置に相当する位置と同じように適用される。アミノ酸600は、エクソン15内に位置し、ヒトBRAF遺伝子内の塩基対1799によってコードされる。次のアミノ酸置換:バリンからグルタマートへの置換(V600E)、バリンからリジンへの置換(V600K)、バリンからアルギニンへの置換(V600R)、又はバリンからアスパラギン酸への置換(V600D)は、ヒト癌において前記位置で既に同定されている。そのため、一態様において、BRAF陽性細胞におけるBRAF遺伝子は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に位置におけるアミノ酸置換をもたらすBRAF遺伝子の突然変異を含む。一般的に、前記アミノ酸置換は、前述の置換のうちの1つである。本発明によるBRAF遺伝子は、少なくとも1つの突然変異を有し得る、すなわち、前述の置換のうちの1つを含めて、1以上、例えば、2、3、4、5などの突然変異を有し得る。
【0022】
「NRAS」という用語は、本明細書中で使用される場合、「神経芽細胞腫RASウイルス癌遺伝子相同体」とも呼ばれ、本明細書中で使用される場合、NRASタンパク質をコードする遺伝子を指す。NRASタンパク質は、Rasタンパク質ファミリーのメンバーであり、同様に、細胞増殖及び分化に影響するMAPK/ERKシグナル伝達経路にかかわる。NRASタンパク質は、固有のGTPアーゼ活性を有するGTP/GDP結合タンパク質である。GTP結合段階において、それは、例えばBRAFタンパク質などのRafキナーゼと相互作用し、活性化することができる。NRASタンパク質は、ヒトでは189アミノ酸の長さから成る。本発明との関連で言及されるNRASは、典型的にヒトNRASである。ヒトNRASタンパク質のタンパク質配列は受入番号NP_002515.1でNCBIデータベースに寄託され、mRNA/cDNA配列はNM_002524.4で示される(配列番号13も参照のこと)。マウスNRASタンパク質オルソログもまた知られており、受入番号NP_035067.2でNCBIデータベースに寄託され、mRNA/cDNA配列はNM_010937.2で示される。前記用語はまた、前述の特定のNRASタンパク質のバリアントも包含する。斯かるバリアントは、NRASと少なくとも同じ基本的な生物学的及び免疫学的特性を有する。特に、本明細書で言及される同じ特異的なアッセイによって、例えば前記NRASタンパク質を特異的に認識するポリクローナル又はモノクローナル抗体を用いたELISAアッセイによって検出される場合は、それらは同じ基本的な生物学的及び免疫学的特性を共有する。更に、本発明に従って言及されるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠損及び/又は付加のために異なるアミノ酸配列であって、そのバリアントのアミノ酸配列が依然として該特定のNRASタンパク質のアミノ配列に好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を有するはずであることは理解されるべきである。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は当技術分野で周知な、及び、本明細書中の他のか所に記載したアルゴリズムによって決定することができる。上記に言及されるバリアントは対立遺伝子多型又は他の種に特異的なホモログ、パラログ、若しくはオルソログであってよい。更に、フラグメントが上記に言及される基本的な免疫学的及び生物学的特性を有する限り、本明細書で言及されるバリアントは該特定のNRASタンパク質又は前述した種類のバリアントのフラグメントを含む。斯かるフラグメントは、例えばNRASタンパク質の分解産物又はスプライスバリアントであってよい。翻訳後修飾のために異なるバリアントが更に含まれる。
【0023】
本発明によると、NRAS遺伝子は少なくとも1つの突然変異、すなわち、1以上、例えば、2、3、4、5つなどの突然変異を含んでもよい。一態様において、前記の少なくとも1つの突然変異は、NRASタンパク質の活性化をもたらす突然変異である。一態様において、NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらす。典型的には、前記アミノ酸置換は、グルタミンからリジンへの置換(Q61K)、グルタミンからアルギニンへの置換(Q61R)、又はグルタミンからロイシンへの置換(Q61L)である。アミノ酸61は、エクソン2内に位置し、ヒトNRAS遺伝子において塩基対181によってコードされる。
【0024】
対象のサンプル中の少なくともNRAS遺伝子内の少なくとも1つの突然変異の存在又は不存在を特定することは、タンパク質又は核酸のレベルのいずれかに対して様々な技術によって実施され得る。
タンパク質レベルに対して、突然変異はそれによって引き起こされたアミノ酸交換に基づいて特定され得る。このために、特にタンパク質の野生型(すなわち、非変異)又は突然変異型のいずれかに特異的に結合する、例えば抗体又はアプタマーなどの特異的検出剤が適用され得る。突然変異特異的検出剤が適用される場合、斯かる剤の特異的結合は、突然変異の存在を示唆し、それに対して、特異的結合の不存在はその不存在を示唆するものとする。
一態様において、特定は、(i)サンプルを特異的な検出剤と、突然変異NRASタンパク質への該剤の特異的な結合を可能にするのに十分な時間及び条件下で接触させ、そして、(ii)特異的に結合した検出剤を検出すること、を含む。
【0025】
特異的抗体とは、本明細書で使用される場合、好ましくは、NRASに特異的に結合する、全ての種類の抗体を包含する。好ましくは、抗体とは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、或いは、NRASに依然として結合できる、斯かる抗体の任意のフラグメント若しくは誘導体である。抗体という用語に含まれる斯かるフラグメント及び誘導体は、本明細書で使用されるとき、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、F(ab)2、Fv若しくはscFvフラグメント、又はこれらの抗体のいずれかの化学修飾誘導体を包含する。特異的結合とは、本発明の抗体の文脈で使用されるとき、抗体が、他のタンパク質又はペプチドと交差反応しないことを意味する。特異的結合は、様々な周知の技術によって試験することができる。抗体又はそのフラグメントは、一般に、例えば、Harlow and Lane "Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988に記載されている方法を使用することによって得ることができる。モノクローナル抗体は、免疫化哺乳類、好ましくは免疫化マウス由来の脾臓細胞へのマウス骨髄腫細胞の融合を含む技術によって作製することができる(Kohler 1975, Nature 256, 495, and Galfre 1981, Meth. Enzymol. 73,3)。好ましくは、NRASの突然変異部分を有する抗原性ペプチドは、哺乳動物に適用される。前記ペプチドは好ましくは、例えばウシ血清アルブミン、チログロブリン、及びキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの担体タンパク質にコンジュゲートされる。宿主種によって、免疫応答を増強するのに様々なアジュバントが使用できる。斯かるアジュバントは、好ましくはフロイントアジュバント、ミネラルゲル、例えば水酸化アルミニウム、並びに界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、及びジニトロフェノールを包含する。B型プレキシンの細胞外ドメインに特異的に結合するモノクローナル抗体は、周知のハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBVハイブリドーマ技術を使用してそれに続いて調製され得る。
【0026】
特異的なアプタマーは、本明細書で使用される場合、特定の標的分子に結合するオリゴ核酸又はペプチド分子を意味する(Ellington 1990, Nature 346 (6287): 818?22). Bock 1992, Nature 355 (6360): 564-6)。オリゴ核酸アプタマーは、選択の繰り返し、又はいわゆる試験管内進展法(SELEX技術)を通して改変される。ペプチドアプタマーは、細胞の内側でタンパク質相互作用を妨げるように設計されている。それらは通常、両端でタンパク質足場に付着する可変ペプチドループからなる。この二重構造的制約は、ペプチドアプタマーの結合親和性を、ナノモル範囲に高めるはずである。前記可変ペプチドループの長さは、好ましくは、10~20のアミノ酸からなり、足場は、可溶特性及び収容特性が向上した任意のタンパク質、例えば、チオレドキシン-Aであってもよい。ペプチドアプタマーの選択は、様々な系、例えば、酵母2ハイブリッド系を含めた様々な系を使用して行うことができる(例えば、Hoppe-Seyler 2000,. J Mol Med. 78 (8): 426-30を参照のこと)。更に、アプタマーは、好ましくは、グリオキシレートの生物学的若しくは化学的活性の少なくとも一つ、例えば、終末糖化産物の形成の間のその活性、又はグリオキシレート代謝の酵素若しくは調節因子を阻害するべきである。
【0027】
特異的な抗体及びアプタマーは検出可能標識に連結されてもよい。好適な標識には、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素的に活性な標識、放射性標識、磁気標識(「例えば磁気ビーズ」、常磁性及び超常磁性標識を含む)、並びに蛍光標識が含まれる。酵素的に活性な標識は、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、及びそれらの誘導体を含む。検出に適した基質は、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-リン酸、RocheDiagnosticsから既成のストック溶液として入手できる)、CDP-StarTM(Amersham Biosciences)、ECFTM(Amersham Biosciences)を含む。適切な酵素-基質の組み合わせは、当技術分野で周知な方法によって(例えば感光膜又は適切なカメラシステムを用いて)特定することができる、色のついた反応生成物、蛍光又は化学発光を生じ得る。典型的な蛍光標識には、蛍光タンパク質(GFP及びRFPなど、並びにその誘導体等)、例えばHisタグ、FLAGタグ、Mycタグ及び他のもの、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、並びにAlexa染料(例えばAlexa568)が含まれる。更なる蛍光標識は、例えばMolecularProbes(Oregon)から入手できる。また、量子ドットの蛍光標識としての使用も意図される。典型的な放射性標識には35S、125I、32P、33Pなどが含まれる。
【0028】
前述の標識の存在又は不存在は、バイオセンサー、免疫アッセイと連関した光学装置、質量分析装置、NMR解析装置、又はクロマトグラフィー装置などの分析装置を含めた当該技術分野で周知の方法及びデバイスによって試験され得る。更に、方法は、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)を基にした方法、例えばElecsysTM分析計で利用できる完全自動化又はロボットによる免疫アッセイ、酵素的CobaltBindingAssay、例えばRoche-HitachiTM分析計で利用できるCBA、及び、例えばRoche-HitachiTM分析計で利用できるラテックス凝集アッセイ、を含む。本発明に係る適切な特定方法は、沈降、特に免疫沈降、電気化学発光、RIA(放射免疫特定法)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチ免疫特定法(ECLIA)、解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、比濁法(turbidimetry)、比濁分析法(nephelometry)、ラテックス増強比濁法若しくは比濁分析法、又は固相免疫試験も含む。当技術分野で周知な更なる方法、例えばゲル電気泳動、2Dゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、及びウエスタンブロッティングが、単独で又は標識化若しくは上記に記述される他の検出法と組み合わせて使用され得る。
【0029】
更なる一態様において、突然変異NRASタンパク質は直接検出されてもよい。このために、物理的又は化学的特性の相違点が質量分光法又はNMRを基にした技術によって評価され得る。或いは、生物学的活性における相違点、例えば無細胞又は細胞を基にした試験システム(活性試験)における増強された生物学的活性などが計測され得る。
核酸レベルにおいて、突然変異は、タンパク質をコードする遺伝子又はその転写産物の核酸配列を特定することによって特定される。このために、遺伝子又はその転写産物の野生型(すなわち、非突然変異)又は突然変異型のいずれかに特異的に結合する核酸又はオリゴヌクレオチドが適用され得る。突然変異に特異的な核酸又はオリゴヌクレオチドが適用された場合、遺伝子又はその転写産物若しくはその増幅産物への斯かる剤の特異的な結合は、突然変異の存在を示唆するのに対して、特異的な結合の不存在は、その不存在を示唆するものとする。
【0030】
一態様において、特定は、(i)サンプルを特異的な核酸又はオリゴヌクレオチドと、前記剤の突然変異NRAS遺伝子又はその転写産物との特異的な結合を可能にするのに十分な時間又は条件下で接触させ、そして(ii)特異的に結合した核酸又はオリゴヌクレオチドを検出すること、を含む。典型的には、ハイブリダイゼーション技術が本発明のこの態様に従って適用される。前記ハイブリダイゼーション技術としては、サザンブロットハイブリダイゼーション又はノザンブロットハイブリダイゼーションが挙げられる。
更なる一態様において、特定は、(i)サンプルを突然変異NRAS遺伝子だけを特異的に増幅できる特異的プライマーオリゴヌクレオチドと、前述の突然変異NRAS遺伝子の一部の特異的増幅を可能にするのに十分な時間及び条件下で接触させ、そして、(ii)増幅産物を検出すること、を含む。斯かる態様において、増幅産物の存在は、突然変異NRAS遺伝子の存在を示唆する一方で、増幅産物の不存在はその不存在を示唆する。典型的には、本発明のこの態様に従ってPCRを基にした技術が適用される。前記PCRを基にした技術としては、PCR、RT-PCR、ネスト化PCR、qPCR、ライトサイクルPCR、リアルタイムPCR、irt-PCR、タッチダウンPCR、多重PCR、デジタルPCR、及び他のものが挙げられる。
【0031】
更なる態様において、特定は、突然変異NRAS遺伝子又はその転写産物、特に(単数若しくは複数の)突然変異塩基対のシークエンシングの実施を含む。典型的には、サンガー又はマクサム-ギルバートによる従来のシークエンシングが適用され得る。或いは、例えばショットガンシーケンシング、架橋PCR、大規模並列シグネチャーシークエンシング(MPSS)、ポロニーシークエンシング、454パイロシークエンシング、Illumina(Solexa)シークエンシング、SOLiDシークエンシング、Ion Torrent半導体シークエンシング、DNAナノボールシークエンシング、heliscope単一分子シークエンシング、単一分子リアルタイム(SMRT)シークエンシング、ナノポアDNAシークエンシング、トンネル電流DNAシークエンシング、ハイブリダイゼーションによるシークエンシング、質量分析法によるシークエンシング、微小流路サンガーシークエンシング、顕微鏡法ベースの技術、及びRNAPシークエンシングなどの高度なシークエンシング技術が適用されてもよい。
【0032】
より典型的には、NRAS核酸の触媒サブユニットのエクソン2内の少なくとも1つの突然変異の存在は、ハイブリダイゼーションベースの技術、特に:
a)対象からのサンプル中の核酸を、以下の:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
から成る群から選択される遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドの1以上と接触させ;
b)サンプルを、オリゴヌクレオチドのNRAS核酸内のその標的配列への特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でインキュベートし;
c)前記のハイブリダイゼーションを検出し;そして
d)ステップc)で検出された前記ハイブリダイゼーションに基づいて少なくとも1つの突然変異を特定すること、
によって特定される。
【0033】
接触は、1若しくは複数の遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドが、検出されるべき核酸、すなわち、少なくとも1つの突然変異を有するNRASタンパク質をコードする核酸(NRAS核酸)に物理的に近接した状態になり得るように実施される。
突然変異が存在する場合にだけ、NRAS核酸内のNRAS標的配列への1若しくは複数の遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にする特異的なハイブリダイゼーション条件は、余分な手間をかけることなく当業者によって決定され得る。該条件は、適用される1若しくは複数の遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドによって変化し得る。特定の想定される条件は、以下の添付した実施例において言及されるものである。
【0034】
特異的なハイブリダイゼーションの検出は、遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドと標的核酸との核酸ハイブリッドの検出を可能にする任意の技術によって実施され得る。一般的に、遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドは検出可能標識に連結されてもよい。ハイブリダイゼーション技術との関連において核酸用の好適な検出可能標識は、当該技術分野で周知であり、例えば、放射性標識、蛍光標識、発色性標識、色素、酵素標識、抗体又はアプタマーによって検出可能な標識などを包含する。特定の想定される標識は、以下の添付した実施例で言及されるものである。
少なくとも1つの突然変異の特定は、特異的なハイブリダイゼーションを検出することによって実施される。更に、オリゴヌクレオチドの遺伝子座特異性に関する情報は、ハイブリダイゼーションによって検出される突然変異の種類を示唆している、すなわち、該オリゴヌクレオチドは、例えば特定の突然変異を含む特定の標的配列にハイブリダイズするように設計されているので、検出されたハイブリダイゼーションはまた、標的核酸内の前述の特定の突然変異の存在も示唆する。
【0035】
典型的には、ステップb)は、次のオリゴヌクレオチドプライマー:配列番号11を有するフォワードオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号12を有するリバースオリゴヌクレオチドプライマーの一方又はその両方を用いた該サンプル中のNRAS核酸を増幅することによってNRAS核酸内の標的配列を含む増幅産物を作り出すステップを更に含む。
増幅は、本明細書中の他のか所で詳細に明記されるPCRによって実施され得る、すなわち、リバース及びフォワードプライマーは、DNA合成が起こり得るように標的配列にアニーリングすることを可能にする。それに続いて、新たに合成されたDNA鎖は分離され、そしてサイクルが再び開始される。一般的に、増幅PCRは15~45サイクル、より一般的に16~40サイクル、そしてより一層一般的に16~30サイクルに渡り実施される。好適なPCR条件は、適用されたフォワード及びリバースプライマーに依存し、そして余分な手間をかけることなく当業者によって決定される。本発明に従って想定される特定のPCR条件は、以下の添付した実施例で言及されるものである。
【0036】
本発明の方法によってなされる評価を更に強化するために、NRASに加えて、他の癌バイオマーカーもまた同様に想定される。一態様において、該方法は、BRAF遺伝子内の少なくとも1つの突然変異の存在又は不存在を特定し、それによって、前述の少なくとも1つの突然変異の存在が、対象がBRAF阻害剤に対する非レスポンダーであり、且つ、MAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであると更に同定することを更に包含する。特定されるべき少なくとも1つのBRAF突然変異は、典型的には、先に言及したBRAFアミノ酸置換のうちの1つである。前述のBRAF突然変異はまた、本明細書中の他のか所に明記した少なくとも1つのNRAS突然変異の特定と類似した様式で同様にタンパク質又は核酸レベルで特定され得る。
【0037】
より典型的には、BRAF核酸の触媒サブユニットのエクソン15内の少なくとも1つの突然変異の存在は、ハイブリダイゼーションベースの技術、特に:
a)対象からのサンプル中の核酸を、以下の:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4);
から成る群から選択される遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドの1以上と接触させ;
b)サンプルを、オリゴヌクレオチドのBRAF核酸内のその標的配列への特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でインキュベートし;
c)前記のハイブリダイゼーションを検出し;そして
d)ステップc)で検出された前記ハイブリダイゼーションに基づいて少なくとも1つの突然変異を特定すること、
によって特定される。
【0038】
接触は、1若しくは複数の遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドが、検出されるべき核酸、すなわち、少なくとも1つの突然変異を有するBRAFタンパク質をコードする核酸(BRAF核酸)に物理的に近接した状態になり得るように実施される。
突然変異が存在する場合にだけ、BRAF核酸内のBRAF標的配列への1若しくは複数の遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを可能にする特異的なハイブリダイゼーション条件は、余分な手間をかけることなく当業者によって決定され得る。該条件は、適用される1若しくは複数の遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドによって変化し得る。特定の想定される条件は、以下の添付した実施例において言及されるものである。
【0039】
特異的なハイブリダイゼーションの検出は、遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドと標的核酸との核酸ハイブリッドの検出を可能にする任意の技術によって実施され得る。一般的に、遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドは検出可能標識に連結されてもよい。特定の想定される標識は、以下の添付した実施例で言及されるものである。
少なくとも1つの突然変異の特定は、特異的なハイブリダイゼーションを検出することによって実施される。更に、オリゴヌクレオチドの遺伝子座特異性に関する情報は、ハイブリダイゼーションによって検出される突然変異の種類を示唆している、すなわち、該オリゴヌクレオチドは、例えば特定の突然変異を含む特定の標的配列にハイブリダイズするように設計されているので、検出されたハイブリダイゼーションはまた、標的核酸内の前述の特定の突然変異の存在も示唆する。
【0040】
典型的には、ステップb)は、次のオリゴヌクレオチドプライマー:配列番号5を有するフォワードオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号6を有するリバースオリゴヌクレオチドプライマーの一方又はその両方を用いた該サンプル中のBRAF核酸を増幅することによってBRAF核酸内の標的配列を含む増幅産物を作り出すステップを更に含む。
増幅は、本明細書中の他のか所で明記されるPCRによって実施され得る。本発明に従って想定される特定のPCR条件は、以下の添付した実施例で言及されるものである。
【0041】
NRAS遺伝子内の少なくとも1つの突然変異が先に記載のとおり特定された場合、対象はBRAF阻害剤に対する非レスポンダーであり、且つ、MAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであるとして同定されることになる。通常、前述の同定は、前記対象に適用されるべき治療的処置の推奨につながる。本明細書中の他のか所で考察したように、本発明によりNRASタンパク質中に少なくとも1つの突然変異を有する対象は、BRAF阻害剤に対する非レスポンダーであるが、同時にMAPK/ERK阻害剤に対して応答するであろうことがわかった。従って、好適な治療法の推奨が適切な同定によって斯かる対象に与えられ得ることが、本発明により想定される。そのため、一態様において、本発明の方法は、対象がBRAF阻害剤に対する非レスポンダーであるとして、且つ、MAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであるとして同定された場合に、MAPK/ERK阻害剤、特に本明細書中に指定したMAPK/ERK阻害剤の投与を対象に推奨することを更に含む。更なる一態様において、該方法は、前記MAPK/ERK阻害剤、特に本明細書中に指定したMAPK/ERK阻害剤を対象に投与することを更に含み得る、その上の一態様において、BRAF阻害剤、特に本明細書中に指定したBRAF阻害剤の投薬量を調整するか、又は投与を控えてもよい。
【0042】
本発明の基礎となる試験における、異なった治療計画下での患者内の不均質性の進展をより良好に特徴づけるために、それぞれ異なった治療法を受けたが、処置下で急激に進行した三人のステージIVの黒色腫患者由来の複数のサンプルに対してエクソームシークエンシングが実施された。血液、形成異常母斑、一次腫瘍、及び処置前の転移、並びに剖検中に得られた死亡後の転移を含めた(利用可能性に依存した)異なったステージからの余剰生検材料が使用された。腫瘍内の不均質性のより良好な特徴づけのために、可能な場合には、同じ原発性腫瘍について複数の組織学的に異なった領域が配列決定され、そして標的化再シークエンシングのために、初期継代培養から単一細胞クローンが作られた。より特異的な標的化経路阻害剤パイプラインの更なる合流及び強力な次世代シークエンシング技術の適用は、有利なことには、転移性黒色腫進行の最も問題となっている重要な駆動経路の改良された特徴づけ及びそれに特化した処置アプローチを可能にした2、22、23。
【0043】
具体的に言うと、個々の癌患者が標準的治療に対してどのように応答するかより良好に特徴づけるために、3人の患者に同様の処置タイムコースを与えたが、異なった発癌性変異及び治療計画が同定された。第一の患者は、BRAFV600E突然変異を有し、標的化BRAF阻害剤療法に対して初期応答があった。患者2は、BRAF及びNRASの両方に関してホモ接合野生型であり、多元受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるパゾパニブが与えられた。最後に、患者3は、NRASQ61R突然変異を有し、MEK阻害剤が投与された。全エクソームシークエンシングデータは、複数の生検検体から得られたFFPE材料のパンチ生検から作り出し、そして、各患者の血液から単離された生殖細胞DNAと関係づけた。このアプローチは、より大規模な患者コホートを調査したより初期の研究より患者内のゲノム不均質性のより包括的な見解を提供したが、各患者からのより少ないサンプルに関してである。
【0044】
患者の腫瘍に存在する単一ヌクレオチドバリエーション(SNV)を高品質に分析することによって、それらの転移のすべてと比較して、患者の原発性腫瘍それぞれが最も大きい遺伝的多様性を有することを示すことができた。これは、癌起源の部位が後で生じた子孫に比べてより多くの遺伝子バリアントを含んでいて、おそらく、新型変異の収集のためにより短い時間しかかからないという予想と一致している。興味深いことに、患者1からの形成異常母斑は共に、3人の患者から配列決定された腫瘍サンプルのどれよりも低いタンパク質コード変異的負担を有した。この理由は不明であるが、母斑の低い遺伝的多様性は、可能性のある原因の中でも、より低い遺伝的不安定性又は突然変異を蓄積するためのより短い時間の可能性の結果であり得る。
【0045】
これらのデータの全エクソームの系統発生分析は、各患者内の腫瘍間の進展的関係を推論するのに、及び各治療計画が遺伝子の不均質性の進展にどう影響したかを判断するのに更に使用された。標的療法のその後のクローンの分枝進展を示した以前の研究と異なって、BRAF及びMEK阻害剤処置の両方に続いて起こる転移の強力に、よく支持された単一系統進展が生じて、再発するのが見られた。対照的に、多元キナーゼ阻害剤(すなわち、パゾパニブ)が与えられた患者2は、後期腫瘍転移の単一系統の樹形を有することはなく、そしてそれは、後期転移の間の遺伝的浮動を示唆するものである。
興味深いことに、BRAF阻害剤が与えられた患者の後期転移の単一系統の隔離にもかかわらず、既知の抵抗性機構はすべての配列決定した生検検体の間で共有されなかった。実際には、活性化変異NRASQ61Kは、患者1の1つの転移癌に存在することがサンガーシークエンシング及びデジタルPCRの両方によって同定されたが、しかし、その患者からの他のすべての抵抗性腫瘍サンプルにおいて不存在であった。これは、個々の患者の抵抗性機構における不均質性を示す以前の公表データと一致していて11、原因の目録を作成し、治療抵抗性を発症した患者を治療するための取り組みに悪影響を及ぼす。よって、我々は、処置に続くサブクローンの単一系統の選択を観察したが、異なった転移は抵抗性の分岐機構を含んでいる可能性がある。
【0046】
この抵抗性腫瘍の26個の単一細胞クローンから得られたコロニーを単離し、配列決定することによって、活性化MAPK突然変異が共に単一の腫瘍細胞に存在することが、初めて示された。普通の培養条件で成長したこれらの二重突然変異細胞は、それを用いて患者が治療されていたBRAF阻害剤に対して抵抗性であったが、他の2個のBRAF阻害剤に対しては部分的にしか抵抗性でなかった。pERKレベルの低減は、LGX818及びPLX4032の存在下でもまだ観察される場合があったが、細胞はBRAF阻害に対して抵抗性を維持した。重要なことには、二重突然変異細胞は、MEK及びBRAF阻害の組み合わせ、並びに単剤MEK及びERK阻害に対して感受性を維持した。この観察は、他のMAPK経路阻害剤、特にMAPK/ERK阻害剤を用いた同時又は第二選択処置が、薬剤抵抗性変異の存在にもかかわらず、進行の管理に有効である可能性がまだあることを示唆している。
【0047】
しかしながら、二重突然変異遺伝子型が患者1の他の5つの転移以外の後期転移癌#6にのみ存在し、及び他の腫瘍に治療抵抗性を与える根本的な機構が不明なままなので、総合的な全身腫瘍組織量を管理するこれらの第二選択又は複合療法の有効性は疑わしい。これは、患者1の他の腫瘍が、例えばPI3K、PTEN、及びAKTなどの異なる経路を活性化し、それによって、それらをMAPK阻害に対して感受性でなくするのであれば、まさに事実に合致するであろう。デジタルPCRによって、二重突然変異細胞の頻度が単一抵抗性腫瘍の間でさえ変動することが実証され、これらの細胞もまたパラクリン様式での抵抗性に貢献し得ること、又は抵抗性機構における腫瘍内不均質性を有し得ることが示唆された。
【0048】
本発明の基礎となる研究において標的化阻害を受けた患者の癌細胞の単一系統進展の実証は、治療的環境をうまく乗り切ることができる不均一なサブクローンの選択を示唆する。しかしながら、これらの腫瘍間の一般的な抵抗性機構の明らかな欠如は、抵抗性のその後の出現が、我々のアプローチによって同定できない共有された遺伝機構によって、非遺伝手段によって、又は個々の転移癌それぞれにおける分岐様式で起こり得ることを示す。それらの可能性のすべてが重大な治療的問題を引き起こす。二重突然変異黒色腫細胞のMAPK阻害に対して応答性の維持は、それらが転移性黒色腫患者における空間的及び遺伝的異質性の存在を考慮する場合、精密医療との関連で、例えばBRAF阻害剤の代わりに又はそれに加えて、MAPK経路阻害剤を使用した組み合わせ及び第二次治療が有効なままであり得ることを示唆する。
【0049】
本発明の結果、癌、特にBRAF阻害剤に対する抵抗性に関してBRAF陽性癌細胞を有する癌を特徴づけすること、及び抵抗性である患者の癌のためのより効果的な治療法を選択することが、現在可能である。更に、本発明はまた、BRAF阻害剤に対する抵抗性を示すBRAF陽性癌に罹患している患者におけるMEK/ERK阻害剤の使用に基づくより効果的な治療法も提供する。典型的には、本発明の基礎となる研究はまた、癌、特に
少なくとも1つのNRAS突然変異及び少なくとも1つのBRAF突然変異を担持する二重突然変異癌細胞に関して診断するか又は評価する診断法も提供する。
【0050】
本明細書中で先におこなった用語に関する定義説明は、必要な変更を加えて、以下の実施形態に適用する。
以下に、本発明の典型的な実施形態が記載されている:
本発明の方法の一実施形態において、前記方法は、BRAF遺伝子内の少なくとも1つの突然変異の存在又は不存在を特定し、それによって、前述の少なくとも1つの突然変異の存在が、対象をBRAF阻害剤に対する非レスポンダーであり、及びMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであると更に同定することを更に含む。
本発明の方法の別の実施形態において、BRAF陽性癌は黒色腫癌である。
本発明の方法の更なる実施形態において、BRAF陽性癌は単一細胞クローンに由来する細胞集団から成る。
【0051】
本発明の方法の更なる一実施形態において、細胞集団の細胞は、BRAF遺伝子内の少なくとも1つの突然変異及びNRAS遺伝子内の少なくとも1つの突然変異をそれらのゲノム内に含んでいる。
本発明の方法の更なる一実施形態において、BRAF阻害剤はBRAF活性の小分子阻害剤である。一般的に、前記のBRAF活性の小分子阻害剤は、LGX818、PLX4032、及び/又はGSK2118436である。
本発明の方法の一実施形態において、前記のMAPK/ERK阻害剤はMEK又はERK活性の小分子阻害剤である。一般的に、前記のMEK活性の阻害剤は、GSK1120212又はMEK162であり、そして前記のERK活性の阻害剤はSCH772984である。
【0052】
本発明の方法の更なる一実施形態において、NRAS遺伝子の突然変異は、ヒトNRASタンパク質のエクソン2のアミノ酸61に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらす。典型的には、前記アミノ酸置換は、グルタミンからリジンへの置換(Q61K)、グルタミンからアルギニンへの置換(Q61R)、又はグルタミンからロイシンへの置換(Q61L)である。
本発明の方法の更なる実施形態において、BRAF遺伝子の突然変異は、ヒトBRAFタンパク質のエクソン15のアミノ酸600に相当する位置におけるアミノ酸置換をもたらす。典型的には、前記アミノ酸置換は、バリンからグルタマートへの置換(V600E)、バリンからリジンへの置換(V600K)、バリンからアルギニンへの置換(V600R)、又はバリンからアスパラギン酸への置換(V600D)である。
【0053】
本発明の方法の更なる一実施形態において、前記サンプルはBRAF陽性癌細胞を含む。
本発明の方法の更なる実施形態において、前記サンプルは、組織切除サンプル、組織生検サンプル、原発性腫瘍サンプル、転移性病巣サンプル、又は血液を含めた循環腫瘍細胞を含むサンプルから成る群から選択される。
【0054】
本発明の方法の一実施形態において、NRAS核酸の触媒サブユニットのエクソン2内の少なくとも1つの突然変異の存在を、以下のステップ:
a)対象からのサンプル中の核酸を、以下の:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
から成る群から選択される遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドの1以上と接触させ;
b)NRAS核酸内のその標的配列へのオリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でサンプルをインキュベートし;
c)前記ハイブリダイゼーションを検出し;そして
d)ステップc)で検出された前記ハイブリダイゼーションに基づいて少なくとも1つの突然変異を特定すること、
によって特定する。
【0055】
典型的には、ステップb)は、次のオリゴヌクレオチドプライマー:配列番号11を有するフォワードオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号12を有するリバースオリゴヌクレオチドプライマー、のうちの一方又はその両方を用いてサンプル中のNRAS核酸を増幅することによって、NRAS核酸内の標的配列を含む増幅産物を作り出すステップを更に含む。
【0056】
本発明の方法の一実施形態において、BRAF核酸の触媒サブユニットのエクソン15内の少なくとも1つの突然変異の存在を、以下のステップ:
a)対象からのサンプルの核酸を、以下の:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4);
から成る群から選択される遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドの1以上と接触させ;
b)BRAF核酸内のその標的配列へのオリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でサンプルをインキュベートし;
c)前記ハイブリダイゼーションを検出し;そして
d)ステップc)で検出された前記ハイブリダイゼーションに基づいて少なくとも1つの突然変異を特定すること、
によって特定する。
【0057】
典型的には、ステップb)は、次のオリゴヌクレオチドプライマー:配列番号5を有するフォワードオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号6を有するリバースオリゴヌクレオチドプライマー、の一方又はその両方を用いてサンプル中のNRAS核酸を増幅することによって、BRAF核酸内の標的配列を含む増幅産物を作り出すステップを更に含む。
本発明の方法の更なる一実施形態において、前記方法は、対象がBRAF阻害剤に対する非レスポンダーであるして、且つ、MAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであるとして同定された場合に、MAPK/ERK阻害剤の投与を対象に推奨することを更に含む。
【0058】
本発明はまた、BRAF陽性癌に罹患している対象を処置するのに使用するMAPK/ERK阻害剤に関し、そしてそれによって、前述の癌が、(i)NRAS遺伝子内に少なくとも1つの突然変異を少なくとも有するか、又は(ii)NRAS遺伝子内の少なくとも1つの突然変異及びBRAF遺伝子内の少なくとも1つの突然変異を少なくとも有することがわかった。加えて、BRAF陽性癌患者の治療薬の調製のためのMAPK/ERK阻害剤の使用が本発明によって企図され、それによって、前述の癌が、(i)NRAS遺伝子内に少なくとも1つの突然変異を少なくとも有するか、又は(ii)NRAS遺伝子内に少なくとも1つの突然変異及びBRAF遺伝子内に少なくとも1つの突然変異を少なくとも有することがわかった。
【0059】
よって、MAPK/ERK阻害剤は、医薬として処置するために使用されるものとし、そういうものとしてそれ相応に処方され得る。用語「医薬」は、本明細書で使用されるとき、一態様において、医薬活性化合物として、先に言及される阻害剤を含有する医薬組成物であって、本明細書中に指定された疾患のヒト又は非ヒトの治療に治療有効用量で使用されうる、医薬組成物を意味する。阻害剤は、一般的に、液体又は凍結乾燥形態で存在しうる。医薬は、一態様において、局所又は全身投与のためのものである。従来的には、医薬は、筋肉内又は皮下投与される。しかし、化合物の性質及び作用機序に応じて、医薬は、他の経路によって投与してもよい。阻害剤は、組成物の活性成分であるものとし、好ましくは、従来の手順に従って、薬剤を、標準的な医薬担体と組み合わせることによって調製される従来の剤形で投与される。これらの手順は、所望の調製に適合して、成分の混合、造粒、及び圧縮、又は溶解を含みうる。製薬上許容される担体又は希釈剤の形態及び性質は、組み合わされるべき活性成分の量、投与経路、及び他の周知の変数によって決まることが理解される。担体は、製剤の他の成分と適合し、その服用者に有害ではないという意味で許容されなければならない。用いられる医薬担体は、固体、ゲル、又は液体を含みうる。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、リン酸緩衝溶液、シロップ、油、水、エマルション、様々な種類の湿潤剤などである。同様に、担体又は希釈剤は、当技術分野で周知の時間遅延材料、例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルを単独で又は蜜蝋とともに含みうる。前記の適切な担体は、上述されたもの、及び当技術分野で良く知られている他のものを含む(例えば、Remington´s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照のこと)。希釈剤は、組み合わせ物の生物学的活性に影響を与えないように選択される。斯かる希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及びハンクス液である。加えて、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は非毒性の、非治療的な、非免疫原性の安定剤なども含みうる。治療有効用量は、本明細書で言及された疾患に伴う症状を予防、改善又は治療する、本発明の医薬に使用されるべき同定された薬剤の量を意味する。化合物の治療効力及び毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準の薬学的方法、例えば、ED50(母集団の50%において治療的に有効な用量)、及びLD50(母集団の50%に対して致死用量)によって決定することができる。治療効果及び有毒作用の間の用量比が、治療指数であり、比率、LD50/ED50と表すことができる。投与計画は、担当医師や他の臨床学的因子によって決定される。医療技術分野で良く知られているように、任意の一人の患者についての投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、全身の健康状態、及び同時投与される他の薬剤を含めた多くの因子に左右される。進行は、定期的な評価によってモニタリングすることができる。本明細書に言及される医薬は、本明細書に挙げた疾患又は状態を治療又は改善又は予防するために少なくとも1回投与される。しかし、前記医薬は、2回以上投与してもよい。特定の医薬は、製薬技術分野で良く知られている方法で調製され、先に言及された少なくとも1種の活性化合物を製薬上許容される担体若しくは希釈剤との混合状態で、又はさもなければこれらと結合して含む。これらの特定の医薬組成物を製造するために、活性成分(複数可)は、通常、担体又は希釈剤と混合される。得られた製剤は、投与様式に適合させるべきである。考えられる服用者に応じた用量調整を見込んで、推奨投薬量が、処方者又は使用者説明書に示される。本発明による医薬は、本発明の更なる態様において、MAPK/ERK阻害剤に加えて、薬剤を含んでもよく、それらは、製剤化の間に医薬に添加される。斯かる薬剤に関する詳細は、本明細書中の他のか所で見られる。最後に、医薬の製剤化は、医薬の品質、医薬的安全性、及び有効性を保証するためにGMP規格条件下などで実施されることが理解される。
【0060】
上記からすると、MAPK/ERK阻害剤はまた、BRAF陽性癌に罹患している対象のBRAF陽性癌を処置する方法において使用されてもよいことになり、前記方法は治療上有効な量のMAPK/ERK阻害剤を該対象に投与することを含む。
【0061】
本発明はまた、癌に罹患していることが疑われた対象のサンプルにおいて癌を診断する方法であって、以下のステップ:
a)2つの以下のプライマーオリゴヌクレオチド:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び/又は
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4)、
並びに2つの以下のプライマーオリゴヌクレオチド:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び/又は
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
を用いてサンプル中の核酸を増幅することによって、BRAF核酸及びNRAS核酸内の標的配列を含む1若しくは複数の増幅産物を作り出し:
【0062】
b)以下の突然変異特異的BRAFオリゴヌクレオチド:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び/又は
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4);
の1以上、並びに以下の位置特異的NRASオリゴヌクレオチド:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び/又は
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
の1以上と、核酸サンプルを接触させ;
c)BRAF核酸及びNRAS核酸内のそれらのそれぞれの標的配列へのオリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件下でサンプルをインキュベートし;
d)前記ハイブリダイゼーションを検出し、それによって、癌が診断されること、
を含む方法に関する。
【0063】
「診断する」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で言及した対象が、癌に罹患しているか(すなわち、癌患者のグループに組み入れられる)又はしていないか(すなわち、除外される)評価することを意味する。当業者には当然のことながら、通常、斯かる評価は、診断される対象の100%が正確であることを意図するものではない。しかしながら、該用語は、対象(例えば、コホート研究におけるコホート)の統計的に有意な部分において癌の存在又は不存在の評価が正確であることを必要とする。ある部分が統計的に有意であるか否かは、本明細書中の他のか所に記載したように決定される。
【0064】
「癌」という用語は、本明細書中で使用される場合、異常な細胞増殖及び侵襲性を特徴とするすべての悪性新生物を指す。特に、本明細書中で言及した癌は、本明細書中の他のか所で指定されるとおりBRAF陽性癌である。
「1若しくは複数の増幅産物を作り出す」という語句は、本明細書中で言及したように、任意のプライマーベースの核酸増幅法によって達成される。一態様において、該作出は、本明細書中の他のか所又は添付した実施例で詳細に言及したPCRベースの技術によって達成される。
前述の方法の一実施形態において、前記癌は単一細胞クローンから得られる。
【0065】
本発明はまた、次のオリゴヌクレオチド:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4);
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10);
を含む、対象のサンプルにおいて、典型的には、単一細胞クローン由来の癌を診断するキットも包含する。
【0066】
「キット」という用語、本明細書中で使用される場合、典型的には、別個に又は1つのコンテナの中に提供された前述の構成要素を集めたものを指す。コンテナはまた、本発明の方法を実施するための取扱説明書も備えている。これらの取扱説明書はマニュアルの形態であってもよく、又はコンピューター又はデータ処理デバイスに実装されたときに、本発明の方法で言及される同定をおこない、それに応じて診断を証明することができるコンピュータープログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータープログラムコードは、例えば光学的記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)などのデータ記憶媒体若しくはデバイスによって提供されても、又はコンピューター若しくはデータ処置デバイスに直接提供されてもよい。更に、キットは、陽性及び陰性対照標的核酸を含んでもよい。一態様において、キットはまた、例えば検出剤、例えば抗体、バッファー、検出に必要な他の試薬、例えばコンジュゲート及び/又は基質などの本発明の方法をおこなうのに必要である他の構成要素を含んでもよい。
【0067】
癌に罹患していることが疑われる対象のサンプルにおいて、典型的には、単一細胞クローン由来の癌を診断するデバイス、及び/又はBRAF陽性癌に罹患している対象が、BRAF阻害剤に対する非レスポンダーであるか否か、及び/又はMAPK/ERK阻害剤に対するレスポンダーであるかどうか同定するためのデバイスであって、以下の:
(i)以下の突然変異特異的BRAFオリゴヌクレオチド:
CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG(配列番号1);
CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG(配列番号2);
CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA(配列番号3);及び/又は
ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT(配列番号4)、
のうちの1以上、並びに以下の位置特異的NRASオリゴヌクレオチド:
GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT(配列番号7);
TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT(配列番号8);
GATAGGCAGAAATGGGCTTGA(配列番号9);及び/又は
ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC(配列番号10)、
のうちの1以上を含む分析ユニット;及び
(ii)BRAF及びNRAS核酸の前記オリゴヌクレオチドへの特異的なハイブリダイゼーションを検出することができる検出装置、
を含むデバイスが本発明によって更に包含される。
【0068】
「デバイス」という用語は、本明細書中で使用される場合、本発明の方法による診断又は同定を可能にするように互いに作動的に連結された前述の構成要素を備えたシステムに関する。一態様において、分析ユニットは、特定されるべき標的核酸を含むサンプルに接触させるための固体支持体上の固定された形態の前記オリゴヌクレオチドを含む。分析ユニットは、ハイブリダイゼーション反応をおこなうための洗浄溶液及びハイブリダイゼーション溶液の入ったバイアルを更に含んでいても、又は該バイアルと作動的に連結されてもよい。
検出装置は、オリゴヌクレオチドと標的核酸との特異的なハイブリダイゼーションを検出するように適合させる。オリゴヌクレオチドに使用される標識に依存して、様々な検出装置が使用され得る、例えば、蛍光標識又は色素の場合には、光学検出装置が適用され得る。
【0069】
デバイスはデータ評価のために更に計算デバイスを含んでもよい。計算デバイスは、例えば、汎用コンピューター又はポータブル計算デバイスであることも可能である。本明細書開示の方法の1又はそれより多い工程を実行するため、ネットワークを通じて又はデータをトランスファーする他の方法を通じて、多数の計算デバイスを一緒に用いてもよいこともまた理解されるべきである。例示的な計算デバイスには、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ及びスマートフォン、セルラーデバイス、タブレットコンピュータ、サーバーなどが含まれる。一般的に、計算デバイスは、複数の命令(例えばソフトウェアのプログラム)を実行可能なプロセッサを含む。計算デバイスは、メモリへのアクセスを有する。メモリは、コンピューター読み取り可能媒体であり、そして例えば計算デバイスとともにローカルに位置するか、又はネットワークを通じて計算デバイスにアクセス可能である、単一の記憶デバイス又は多数の記憶デバイスを含むことも可能である。コンピューター読み取り可能媒体は、計算デバイスによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体であることも可能であり、そしてこれには、取り外し可能な媒体及び取り外し不能な媒体の両方が含まれる。さらに、コンピューター読み取り可能媒体は、取り外し可能な媒体及び取り外し不能な媒体の一方又は両方であることも可能である。例えば、そして限定なしに、コンピューター読み取り可能媒体は、コンピューター記憶媒体を含むことも可能である。例示的なコンピューター記憶媒体には、限定されるわけではないが、計算デバイスによってアクセス可能な、そして計算デバイスのプロセッサによって実行可能な複数の命令を保存するために使用可能な、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又は任意の他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又は他の光学ディスク記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶又は他の磁気記憶デバイス、あるいは任意の他の媒体が含まれる。
【0070】
計算デバイスはまた、出力デバイスにアクセスを有することも可能である。例示的な出力デバイスには、例えば、ファックス装置、ディスプレイ、プリンタ、及びファイルが含まれる。本開示のいくつかの態様にしたがって、計算デバイスは、本明細書に開示する方法の1又はそれより多い工程を実行することも可能であり、そしてその後、出力デバイスを通じて、方法の結果に関連する出力を提供することも可能である。
【0071】
本発明は、患者において、典型的には、単一細胞クローンから得られた、癌に対する標的療法に対して応答性を評価する方法であって、以下ステップ:
a)患者からサンプルを調製し;
b)BRAF及びNRAS遺伝子内の突然変異の存在についてサンプルを試験し、ここで、該試験は、選択的増幅、プローブハイブリダイゼーション又は核酸シークエンシングから成る群から選択される方法のうちの1つによって実施され;
c)NRAS及びBRAF遺伝子内に突然変異が検出された場合、MAPK/ERK阻害剤に対して応答性及びBRAF阻害剤に対して非応答性を特定すること、
を含む方法を想定する。
【0072】
前述の方法の一態様において、BRAF及びNRAS遺伝子内の突然変異の存在は、本明細書中の他のか所で詳細に記載した選択的増幅、プローブハイブリダイゼーション又は核酸シークエンシングによって特定される。特に、本明細書中の他のか所に明記した遺伝子座特異的又は突然変異特異的オリゴヌクレオチド又はプライマーオリゴヌクレオチドが使用され得る。
【0073】
更に、本発明は、患者において、典型的には、単一細胞クローンから得られた、癌を評価する方法であって、以下のステップ:
a)核酸を含んでいる患者からのサンプルを調製するか又は入手し;
b)サンプル中の核酸を、BRAF及びNRAS遺伝子内の突然変異に特異的な核酸プローブと接触させ;
c)NRAS及びBRAF遺伝子内に突然変異が検出された場合、MAPK/ERK阻害剤に対して応答性であり、且つ、BRAF阻害剤に対して非応答性であるとして癌を評価すること、
を含む方法に関する。
【0074】
より一層更に、本発明は、患者において、典型的には、単一細胞クローンから得られた、癌を評価する方法であって、以下のステップ:
a)核酸を含んでいる患者からのサンプルを調製するか又は入手し;
b)サンプル中の核酸を、BRAF及びNRAS遺伝子内の突然変異に特異的な核酸プローブと接触させ;
c)NRAS及びBRAF遺伝子内に突然変異が検出された場合、癌が、MAPK/ERK阻害剤に対して応答性であり、且つ、BRAF阻害剤に対して非応答性であると報告すること、
を含む方法に関する。
【0075】
前述の方法の一態様において、BRAF及びNRAS遺伝子内の突然変異に特異的な核酸プローブは、本明細書中の他のか所で明記した遺伝子座特異的又は突然変異特異的オリゴヌクレオチドである。
この明細書中に言及したすべての参照文献が、特に言及したそれらの開示内容及びその全体に関して参照によって本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1A-1C】患者コホートとコピー数のバリエーション。(A)患者1からのサンプルは、原発性腫瘍、2か所の形成異常母斑、2か所の初期転移及び4か所の腫瘍再発後の後期転移を含んでいた。(B)患者1は、BRAFV600E突然変異黒色腫を患っており、最初にIFNa処置を受け、それに続いて特異的BRAF阻害剤処置を受けた、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(C)患者2は、BRAF及びNRASの両方が野生型である黒色腫と診断された。原発性腫瘍がパンチ生検で採取され、3回配列決定された。更に、5か所の後期転移が配列決定された。(D)患者には、多元受容体チロシンキナーゼ阻害剤(パゾパニブ)が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(E)患者3はNRASQ61R突然変異を有していた。原発性腫瘍をパンチ生検で2回採取し、そして生検検体を1か所の初期転移と3か所の後期転移から採取した。(F)患者には、MEK阻害剤GSK1120212が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になり、続いて、短期間の抗CTLA4処置が与えられた。(G)コピー数のバリエーション(CNV)は、Circosを使用してプロットされる。それぞれのリングが、最も外側の2つのリングにおける2つの母斑から始まって、その後、原発性腫瘍、2つの初期転移、及び最後の後期転移1~4と続く、1つの生検検体のExcavatorによって検出されたCNVを示す。(H)患者2のCNVを、外側から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1~3及び後期転移1~5で示す。(I)患者3について同じように、外部から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1及び2、1つの初期転移及び後期転移1~3を示す。拡大した領域は、腫瘍阻害性因子CDKN2Aをコードしている第9染色体内の通常欠失している領域を示す。(K)患者1の第22染色体のコピー数のバリエーションは高度な不均質性を示す。原発性腫瘍では、22pの一領域での過剰と22p及び22qの広い面積での欠失がある。該過剰は、初期転移1に見られたが他の転移には見られない欠失ではない。該欠失は、初期転移2及び後期転移1に見られたが他の転移には見られなかった過剰ではない。
【
図1D-1F】患者コホートとコピー数のバリエーション。(A)患者1からのサンプルは、原発性腫瘍、2か所の形成異常母斑、2か所の初期転移及び4か所の腫瘍再発後の後期転移を含んでいた。(B)患者1は、BRAFV600E突然変異黒色腫を患っており、最初にIFNa処置を受け、それに続いて特異的BRAF阻害剤処置を受けた、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(C)患者2は、BRAF及びNRASの両方が野生型である黒色腫と診断された。原発性腫瘍がパンチ生検で採取され、3回配列決定された。更に、5か所の後期転移が配列決定された。(D)患者には、多元受容体チロシンキナーゼ阻害剤(パゾパニブ)が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(E)患者3はNRASQ61R突然変異を有していた。原発性腫瘍をパンチ生検で2回採取し、そして生検検体を1か所の初期転移と3か所の後期転移から採取した。(F)患者には、MEK阻害剤GSK1120212が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になり、続いて、短期間の抗CTLA4処置が与えられた。(G)コピー数のバリエーション(CNV)は、Circosを使用してプロットされる。それぞれのリングが、最も外側の2つのリングにおける2つの母斑から始まって、その後、原発性腫瘍、2つの初期転移、及び最後の後期転移1~4と続く、1つの生検検体のExcavatorによって検出されたCNVを示す。(H)患者2のCNVを、外側から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1~3及び後期転移1~5で示す。(I)患者3について同じように、外部から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1及び2、1つの初期転移及び後期転移1~3を示す。拡大した領域は、腫瘍阻害性因子CDKN2Aをコードしている第9染色体内の通常欠失している領域を示す。(K)患者1の第22染色体のコピー数のバリエーションは高度な不均質性を示す。原発性腫瘍では、22pの一領域での過剰と22p及び22qの広い面積での欠失がある。該過剰は、初期転移1に見られたが他の転移には見られない欠失ではない。該欠失は、初期転移2及び後期転移1に見られたが他の転移には見られなかった過剰ではない。
【
図1G-1I】患者コホートとコピー数のバリエーション。(A)患者1からのサンプルは、原発性腫瘍、2か所の形成異常母斑、2か所の初期転移及び4か所の腫瘍再発後の後期転移を含んでいた。(B)患者1は、BRAFV600E突然変異黒色腫を患っており、最初にIFNa処置を受け、それに続いて特異的BRAF阻害剤処置を受けた、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(C)患者2は、BRAF及びNRASの両方が野生型である黒色腫と診断された。原発性腫瘍がパンチ生検で採取され、3回配列決定された。更に、5か所の後期転移が配列決定された。(D)患者には、多元受容体チロシンキナーゼ阻害剤(パゾパニブ)が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(E)患者3はNRASQ61R突然変異を有していた。原発性腫瘍をパンチ生検で2回採取し、そして生検検体を1か所の初期転移と3か所の後期転移から採取した。(F)患者には、MEK阻害剤GSK1120212が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になり、続いて、短期間の抗CTLA4処置が与えられた。(G)コピー数のバリエーション(CNV)は、Circosを使用してプロットされる。それぞれのリングが、最も外側の2つのリングにおける2つの母斑から始まって、その後、原発性腫瘍、2つの初期転移、及び最後の後期転移1~4と続く、1つの生検検体のExcavatorによって検出されたCNVを示す。(H)患者2のCNVを、外側から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1~3及び後期転移1~5で示す。(I)患者3について同じように、外部から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1及び2、1つの初期転移及び後期転移1~3を示す。拡大した領域は、腫瘍阻害性因子CDKN2Aをコードしている第9染色体内の通常欠失している領域を示す。(K)患者1の第22染色体のコピー数のバリエーションは高度な不均質性を示す。原発性腫瘍では、22pの一領域での過剰と22p及び22qの広い面積での欠失がある。該過剰は、初期転移1に見られたが他の転移には見られない欠失ではない。該欠失は、初期転移2及び後期転移1に見られたが他の転移には見られなかった過剰ではない。
【
図1J】患者コホートとコピー数のバリエーション。(A)患者1からのサンプルは、原発性腫瘍、2か所の形成異常母斑、2か所の初期転移及び4か所の腫瘍再発後の後期転移を含んでいた。(B)患者1は、BRAFV600E突然変異黒色腫を患っており、最初にIFNa処置を受け、それに続いて特異的BRAF阻害剤処置を受けた、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(C)患者2は、BRAF及びNRASの両方が野生型である黒色腫と診断された。原発性腫瘍がパンチ生検で採取され、3回配列決定された。更に、5か所の後期転移が配列決定された。(D)患者には、多元受容体チロシンキナーゼ阻害剤(パゾパニブ)が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になった。(E)患者3はNRASQ61R突然変異を有していた。原発性腫瘍をパンチ生検で2回採取し、そして生検検体を1か所の初期転移と3か所の後期転移から採取した。(F)患者には、MEK阻害剤GSK1120212が与えられ、彼はそれに対して応答性であったが、その後、抵抗性になり、続いて、短期間の抗CTLA4処置が与えられた。(G)コピー数のバリエーション(CNV)は、Circosを使用してプロットされる。それぞれのリングが、最も外側の2つのリングにおける2つの母斑から始まって、その後、原発性腫瘍、2つの初期転移、及び最後の後期転移1~4と続く、1つの生検検体のExcavatorによって検出されたCNVを示す。(H)患者2のCNVを、外側から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1~3及び後期転移1~5で示す。(I)患者3について同じように、外部から中心に向かって:原発性腫瘍サンプル1及び2、1つの初期転移及び後期転移1~3を示す。拡大した領域は、腫瘍阻害性因子CDKN2Aをコードしている第9染色体内の通常欠失している領域を示す。(K)患者1の第22染色体のコピー数のバリエーションは高度な不均質性を示す。原発性腫瘍では、22pの一領域での過剰と22p及び22qの広い面積での欠失がある。該過剰は、初期転移1に見られたが他の転移には見られない欠失ではない。該欠失は、初期転移2及び後期転移1に見られたが他の転移には見られなかった過剰ではない。
【
図2】患者の生検検体の全エクソーム進展系統樹。枝の長さはSNV及びインデルに基づく相対距離を表し、枝は生検検体に従って色づけされている。最尤進展系統樹は、患者1(A)、患者2(B)、及び患者3(C)の血液サンプルを起源としている。ノードサポート率はブートストラップ値として与えられ、50%超で強力なサポートであると見なされる。
【
図3】患者1サンプルのデジタルPCR及びサンガーシークエンシング。(A)BRAFV600E及びNRASQ61Kに対するプローブを使用したdPCRでは、BRAFV600E突然変異DNAがすべての腫瘍サンプルにおいて示された。NRASQ61Kについて陽性のdPCR反応は、この患者の後期転移癌6のみで検出できた。15%未満の精度値が、非常に再現性のよい陽性反応と見なされた。(B)代表的なスペクトル写真、及び(C)後期転移癌6から単離された単一黒色腫細胞から培養した26個の細胞培養物のサンガーシークエンシングによる配列。26個のクローン培養物すべてがBRAFV600E及びNRASQ61K突然変異の両方を有していた。
【
図4A-4B】二重突然変異黒色腫細胞における生存率アッセイ及びpERKシグナリング。患者1の後期転移癌6から樹立された抵抗性細胞培養では、様々なBRAF阻害剤に対して異なった応答が示された。DMSO処置細胞に対して正規化した、(A)様々なBRAF阻害剤による処置後のNAD(P)H酵素活性度を評価する三連のMTTアッセイ。LGX818処置の間もずっと進行していた患者から得られた抵抗性細胞株M121224は、LGX818に関して完全に抵抗性であるが、PLX4032及びGSK2118436に関しては部分的に抵抗性である。(B)BRAF阻害剤処置後のM121224細胞におけるpERKレベルのウエスタンブロット及びその定量化。バンドの光学濃度がImageJで計測されて、棒グラフを得た。医薬濃度は、感受性細胞株M000921、並びに他のBRAFV600E突然変異初期継代培養のIC50に基づいて選ばれた。(C)0.35μMのPLX4032での処置後のpERK標的遺伝子の相対発現を示すqPCR。(D)MEK阻害剤(MEK162)、MEKとBRAF阻害剤の組み合わせ(LGX818)、及びERK阻害剤(SCH772984)単独での処置後の特定NAD(P)H酵素活性を計測するMTTアッセイ。
【
図4C】二重突然変異黒色腫細胞における生存率アッセイ及びpERKシグナリング。患者1の後期転移癌6から樹立された抵抗性細胞培養では、様々なBRAF阻害剤に対して異なった応答が示された。DMSO処置細胞に対して正規化した、(A)様々なBRAF阻害剤による処置後のNAD(P)H酵素活性度を評価する三連のMTTアッセイ。LGX818処置の間もずっと進行していた患者から得られた抵抗性細胞株M121224は、LGX818に関して完全に抵抗性であるが、PLX4032及びGSK2118436に関しては部分的に抵抗性である。(B)BRAF阻害剤処置後のM121224細胞におけるpERKレベルのウエスタンブロット及びその定量化。バンドの光学濃度がImageJで計測されて、棒グラフを得た。医薬濃度は、感受性細胞株M000921、並びに他のBRAFV600E突然変異初期継代培養のIC50に基づいて選ばれた。(C)0.35μMのPLX4032での処置後のpERK標的遺伝子の相対発現を示すqPCR。(D)MEK阻害剤(MEK162)、MEKとBRAF阻害剤の組み合わせ(LGX818)、及びERK阻害剤(SCH772984)単独での処置後の特定NAD(P)H酵素活性を計測するMTTアッセイ。
【
図4D】二重突然変異黒色腫細胞における生存率アッセイ及びpERKシグナリング。患者1の後期転移癌6から樹立された抵抗性細胞培養では、様々なBRAF阻害剤に対して異なった応答が示された。DMSO処置細胞に対して正規化した、(A)様々なBRAF阻害剤による処置後のNAD(P)H酵素活性度を評価する三連のMTTアッセイ。LGX818処置の間もずっと進行していた患者から得られた抵抗性細胞株M121224は、LGX818に関して完全に抵抗性であるが、PLX4032及びGSK2118436に関しては部分的に抵抗性である。(B)BRAF阻害剤処置後のM121224細胞におけるpERKレベルのウエスタンブロット及びその定量化。バンドの光学濃度がImageJで計測されて、棒グラフを得た。医薬濃度は、感受性細胞株M000921、並びに他のBRAFV600E突然変異初期継代培養のIC50に基づいて選ばれた。(C)0.35μMのPLX4032での処置後のpERK標的遺伝子の相対発現を示すqPCR。(D)MEK阻害剤(MEK162)、MEKとBRAF阻害剤の組み合わせ(LGX818)、及びERK阻害剤(SCH772984)単独での処置後の特定NAD(P)H酵素活性を計測するMTTアッセイ。
【
図5A-5B】変異対立遺伝子比(MAR)によって評価されたサブクローンの多様性。(A)患者1の原発性腫瘍の変異対立遺伝子比の頻度は、ホモ接合、ヘテロ接合、及びもしかするとサブクローナルSNVを示す。患者1の母斑と転移との比較は、原発性腫瘍の増加したサブクローナル頻度を示す。(B)患者2(黒色の線)の原発性腫瘍の総SNVを患者2(灰色の線)の原発性腫瘍の最初のパンチ生検中に排他的に存在するSNVを比較した。一般的に、単一パンチ生検に固有のSNVは低いMARを有する。グラフの下の値は平均MARを表す。
【
図5C】変異対立遺伝子比(MAR)によって評価されたサブクローンの多様性。(A)患者1の原発性腫瘍の変異対立遺伝子比の頻度は、ホモ接合、ヘテロ接合、及びもしかするとサブクローナルSNVを示す。患者1の母斑と転移との比較は、原発性腫瘍の増加したサブクローナル頻度を示す。(B)患者2(黒色の線)の原発性腫瘍の総SNVを患者2(灰色の線)の原発性腫瘍の最初のパンチ生検中に排他的に存在するSNVを比較した。一般的に、単一パンチ生検に固有のSNVは低いMARを有する。グラフの下の値は平均MARを表す。
【
図6A-6C】転移性黒色腫からの単一細胞クローンから得られた二重突然変異黒色腫細胞における生存率アッセイ。DMSO処置細胞に対して正規化した、MEK阻害剤MEK162(A)、ERK阻害剤SCH772984(C)又はBRAF阻害剤GSK21184362(B)、LGX818(D)若しくはPLX4032(E)での処置後のNAD(P)H酵素活性度を計測する三連のMTTアッセイ。BRAFV600E及びNRASQ61R二重突然変異クローン細胞株M140307及びM150423は、BRAF阻害剤処置に対して抵抗性であるが、ERK阻害剤処置に対して感受性である。
【
図6D-6E】転移性黒色腫からの単一細胞クローンから得られた二重突然変異黒色腫細胞における生存率アッセイ。DMSO処置細胞に対して正規化した、MEK阻害剤MEK162(A)、ERK阻害剤SCH772984(C)又はBRAF阻害剤GSK21184362(B)、LGX818(D)若しくはPLX4032(E)での処置後のNAD(P)H酵素活性度を計測する三連のMTTアッセイ。BRAFV600E及びNRASQ61R二重突然変異クローン細胞株M140307及びM150423は、BRAF阻害剤処置に対して抵抗性であるが、ERK阻害剤処置に対して感受性である。
【実施例】
【0077】
実施例は、本発明又はその態様を単に例示している。それらは決して、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるものではない。
さまざまの解剖部位、治療法、及び疾病進行ステージ(
図1A~F)を含む、3人の転移性黒色腫患者からの複数のサンプルの全エクソームを配列決定した。初期診断において、患者1はBRAFV600E突然変異を有し(
図1A)、患者2は未知の発癌性ドライバーを有し(
図1B)、そして患者3は活性化NRASQ61R突然変異を有した(
図1C)。患者1は、標的化BRAF阻害剤(すなわち、LGX818)を受け、そして、コンピュータートモグラフィー(CT)によると部分応答があった(
図1D)。患者2は、PET/CTによると、多元キナーゼ阻害剤処置(すなわち、パゾパニブ)下でも進行した(
図1E)。患者3は、標的化MEK阻害剤(すなわち、MEK162)を受け、CTによると、同様に進行した(
図1F)。シークエンシング結果の分析は、先の研究
6、12で公開されたとおり、腫瘍サンプル中に予想された数の総単一ヌクレオチドバリエーション(SNV)を示した。患者1からの形成異常母斑は共に、非同義的SNVを有する遺伝子の総数によって計測されるように、3人の患者からのあらゆる腫瘍生検検体よりも低いタンパク質コード突然変異負担を有した。母斑1が133個、そして母斑2が101個の突然変異遺伝子を有する一方で、患者1の腫瘍生検は平均186個の突然変異遺伝子を有した。患者2及び患者3は、それらの腫瘍内にそれぞれ平均して196個及び234個の突然変異遺伝子があった。興味深いことに、平均的に少数の突然変異遺伝子を有することに加えて、母斑は、他のすべての配列決定された初代(1.20)及び転移性黒色腫(1.22)病巣と比較して、低い非同義対同義突然変異の比(すなわち、0.79)を有し、一般的に、母斑対黒色腫腫瘍において低い割合のタンパク質コード変化を示す。原発性腫瘍のそれぞれが各患者の転移よりも多数の個別SNVを有し、転移より原発性腫瘍における増強された排他的な遺伝的多様性を示すことも興味深い
13。例えば、患者1は原発性腫瘍に限れば96個の個別SNVを有し、すべての転移では平均35個の個別SNVを有した。患者2は、原発性腫瘍の3つのパンチ生検それぞれに限れば平均48個の個別SNVを有し、転移では平均24個の個別SNVを有した。同様に、患者3の1つの明らかな異常値転移癌(すなわち、後期1)を除いて、2つの原発性腫瘍パンチ生検のそれぞれは、転移(すなわち、38)より大きい数の個別SNV(すなわち、89)を有した。これにより、全体的に見て、原発性腫瘍は、並はずれた数の個別突然変異を示している1つの異常値転移を伴い、我々のコホート内の同じ患者の転移より2~2.7倍多い数(t-検定、p<.00048)の個別SNVを有した。
【0078】
エクソームシークエンシングでは、各患者の診断時点でのサンガーシークエンシングによって初めて同定された既知のBRAF及びNRAS突然変異状態を確認できた(
図1)。更に、我々のコホートにおいて黒色腫進行に役割を果たす場合がある他の既知の癌遺伝子及び腫瘍サプレッサーのデータをスクリーニングした。患者2は診断時点で既知の発癌性ドライバーを全く有していなかったが、メラノコルチン受容体MC1RV92M内の非同義的生殖細胞突然変異を同定し、そしてそれが、転移性黒色腫を得る高いリスクと顕著に関連していることが示された
14。加えて、患者3は、黒色腫発症の高いリスクと最近関連づけられた生殖細胞突然変異MITFE318Kを有した
15。
【0079】
これらの3人の患者における潜在的腫瘍サプレッサー遺伝子座におけるゲノム欠失を同定するために、エクソームデータを、EXCAVATOR及びCONTRAアルゴリズムを用いて分析し
16、17、そしてそれがコピー数バリエーション(CNV)を推論することを可能にした。多数のCNVが多くの染色体で検出される場合があり、ゲノムを通して大きい欠失を呈する一部のサンプルと一致する(
図1G~I)。
【0080】
黒色腫において頻出することが知られている染色体の不均衡が調査コホートで同定される場合がある(
図1G~I)。患者1は後期転移3及び4において6p、7、8q及び17q(
図1G)でコピーが過剰となっていた(
図1G)。患者2は後期転移において第1q、7及び22染色体で過剰となった(
図1H)。患者3では、我々は第1q、6p及び20q染色体における過剰を見出した(
図1I)。すべての患者が第6q、9p及び10染色体において、並びにいくつかのサンプルでは第11、2及び17染色体において、少なくとも部分的な欠失を示した(
図1G~I)。
【0081】
加えて、CONTRAは、CNVに関する遺伝子独特の情報を提供する。第9染色体上のCDKN2A遺伝子座の一貫した欠失は、患者1からの母斑以外の腫瘍サンプルのすべてに見られた(
図1G~I)。これらの欠失は、EXCAVATOR及びCONTRAアルゴリズムの両方によって予測されるように、患者1及び3においてホモ接合であり、そして患者2においてヘテロ接合であること(データ未掲載)をqPCRによって確認した(添付の
図1G~I、表3)。更に、PTEN(第10染色体)は、患者2のすべてのサンプル(
図1H)及び初期転移1及び原発性腫瘍以外の患者1からのサンプルの大部分で欠失した。
【0082】
腫瘍サンプルを分類し、生検検体間の相関を構築する1つの方法は、一旦失われ、回復することができないCNVを仮定することである
18。よって、腫瘍の系統発生は、原発性腫瘍の特有のゲノム欠失を同定することによって推論され得るが、該ゲノム欠失はこの原発性腫瘍から得られ転移腫瘍では回復できない。しかしながら、同定した患者内染色体不均衡における高い変動性は、サンプル採取した生検検体内の多くの異なった可能性のある相関につながるであろう(
図1G~I)。例えば、患者3では、第10染色体のCNVは、後期転移が一次パンチ生検#2から得られたことを示唆するが;しかしながら、第14染色体のCNVは、後期系統が一次パンチ生検#1から得られたことをより示唆する(
図1I)。同様に、患者2では、一次パンチ生検#2が他の2つの一次パンチ生検より第11染色体における欠失が少なく、そしてそれが後期転移に対するより低い類似性を示唆する一方で、第3染色体における欠失パターンが一次パンチ生検#2と後期転移とのより親密な相関を示唆している(
図1H)。典型的には、我々が同じ原発性腫瘍の複数の領域を配列決定した患者で観察できるように、患者内のCNV不均質性はかなり高かった(
図1H、I)。例えば、患者2の第11染色体と患者3の第7、10、12、及び14染色体では、我々は2つの原発性腫瘍パンチ生検のうちの一方だけで欠失を見つけた。CNVの不均質性はまた患者1の第22染色体でも明確に見られるが、例えば、原発性腫瘍におけるテロメア領域の予測されるコピー数過剰があり、後期転移のいずれにも現れない(
図1J)。
【0083】
実施例2:全エクソームの系統発生分析は、腫瘍内相関及び進行関連SNVを同定する。
異なった治療環境にある個々の患者の腫瘍間の進展的関係を調査するために、系統発生学的なアルゴリズムを各患者からのSNV及びインデルコールに適用した。
【0084】
全エクソームの系統発生分析は、それらの総SNV、挿入及び欠失に基づく腫瘍サンプルの分類を可能にしただけではなく、サンプル間の進展的関係の特定、並びに特有の系統発生学的なノードをサポートする診断特徴の発見さえも可能にした(
図2)。患者1及び3(すなわち、それぞれBRAF及びMEK標的化阻害剤で処置された)からの生検検体は、単一系統の分岐群を形成する抵抗性後腫瘍のツリーを呈し、すべての抵抗性後サンプルがたった1つのノードを起源とすることを意味している。信頼性は、ブートストラップツリーのパーセンテージを反映するブートストラップサポート(矢印)によって示され、同様に分岐の終点で分岐群を分析する。非標的療法(すなわち、多元受容体チロシンキナーゼ阻害剤のパゾパニブ)が与えられた患者2は、後期腫瘍転移のこの強く、単一系統のサポートを示さなかったが(
図2)、抵抗性後サンプルは複数のノード(矢印)を起源とした。
【0085】
標的療法による患者1及び3からの系統発生樹のロバスト単一系統位相は、治療抵抗性の機構が処置前後の分岐群間を差別するノードをサポートし得ることを示唆している(
図2A、C)。しかしながら、BRAF阻害剤又はMEK阻害剤処置に対する抵抗性の機構が、患者1及び3で観察された治療抵抗性を説明できるこれらのノードサポート又は全エクソームデータにおいて同定できることは知られておらず、共有もされていない。各患者のすべての再発後腫瘍エクソーム間の非同義的SNVの論理積が、新規な潜在的遺伝的抵抗性機構を見つけるために調査された。患者1では、TACC1L452Vにおける非同義的突然変異が、阻害剤抵抗性腫瘍サンプルに偏在し、且つ、排他的であることがわかった。TACC1は黒色腫腫瘍で頻繁に変異することがわかったが、処置抵抗性におけるTACC1の役割はまだ同定されなかった12 6。抵抗性機構の患者内、腫瘍間の不均質性が存在し得るので、任意の処置後サンプルにおける説明的なタンパク質コード変化を同定することが求められた。患者1では、GNAQT96Sの非同義的変異が、原発性癌及び後期転移癌1において、及びTACC1C133Aが同じ生検検体において検出された。これらの突然変異は、黒色腫において影響を受けることが以前に示された遺伝子内に存在するが、処置抵抗性におけるそれらの役割は不明なままである。同様に、未知の抵抗性機構が他の2人の患者のエクソームデータにおいても同定された。
【0086】
実施例3:LGX818抵抗性の患者内遺伝子不均質性
2人の標的療法患者において抵抗性の機構が知られおらず、共有されていない以上、BRAF阻害剤処置患者のサンプル(すなわち、患者1)を文献9のBRAF阻害剤抵抗性機構に関するよりすばらしい知識のため更に調査した。サンドイッチシークエンシングを同じ生検サンプル及び(増幅なしのエクソームシークエンシングのためにそのDNAが過度に制限されている)追加の生検検体に対して実施した。BRAFV600E突然変異は、すべての腫瘍サンプルからのPCR単位複製配列の標準的なサンガーシークエンシングによって確認できる(データ未掲載)。活性化NRAS突然変異が、BRAF阻害剤抵抗性腫瘍の17.8%に存在している9これまでに同定された最も一般的な抵抗性機構であることを考えると、すべての患者1サンプルのNRAS遺伝子座のエクソン2及び3のサンガーシークエンシングを最初におこなうことが選択された。そうする際に、再発後に生じた、患者1の後期転移癌番号6における活性化変異NRASQ61Kを同定した。同じ突然変異は、他のすべての転移サンプルで不存在であった。更に、この転移癌がBRAFV600E突然変異、並びに患者1の他の処置後転移のすべてで排他性及び遍在性が見られた2つ付加的変異:TACC1L452V及びC11orf30K22N、をまだ有していたことが確認できた(データ未掲載)。他のどの特異的突然変異もサンガーシークエンシングによって試験しなかったが、後期転移癌6(すなわち、培養番号M121224)から得られた初代培養細胞のその後のエクソームシークエンシングでこれらの突然変異の存在も同様に確認できた。
【0087】
全エクソームシークエンシングは高いゲノム被覆率を提供するが、特定の遺伝子座において深度が限定されるので(我々の場合には、すべてのサンプルを通した平均被覆率101×)、代替の遺伝子型を有する癌細胞の低頻度サブクローンを検出することは困難である19、20。こうした理由から、患者1の処置後腫瘍における突然変異細胞及び抵抗性細胞の小さな亜集団の可能性を更に調査するために、デジタルPCRを適用した。我々のデジタルPCRプラットフォームは1回の実行あたり20’000回の同時PCR反応に基づいており、そしてそれは、腫瘍細胞集団の5%ほどの小ささで存在するゲノム変異体の検出を可能にする。
【0088】
この技術の使用により、我々は、各サンプルについてDNAの1マイクロリットルあたりのBRAFV600E又はNRASQ61K突然変異コピー数を計測した。計測したコピー数を中心にした+/-15%の信頼区間を示し、15%未満の精度を有する値が受け入れ可能であると考えた。デジタルPCRでは、腫瘍全部でBRAFV600E突然変異の存在を確認したが、患者1の血液又は母斑から得たDNAでは確認できなかった(
図3A)。後期転移4は、1マイクロリットルあたりの低いコピー数(すなわち、35コピー)を示したが、精度は許容される範囲内にあった(すなわち、8.59%)。しかしながら、エクソーム配列決定しなかったもの(すなわち、後期転移5及び6)も含めて、患者1からの他のすべての腫瘍生検が、良好な精度でより高いBRAFV600Eコピー数を有していた(
図3A)。同様に、後期転移癌6におけるNRASQ61K突然変異の存在もデジタルPCRによって正当性を確認し、その転移癌において高いコピー数を有することを示した(
図3A、緑色の枠)。デジタルPCRの結果はまた、転移癌番号6は別として、他の抵抗性転移のいずれにおいても検出可能なNRASQ61Kサブクローンの不存在も示した(
図3A)。
【0089】
実施例4:2つの活性化MAPK突然変異は、単一のBRAF阻害剤抵抗性であるが、MEK及びERK阻害剤感受性である黒色腫細胞に存在する。
患者1からの単一の抵抗性後腫瘍におけるMAPK活性化突然変異BRAFV600E及びNRASQ61Kの両方の存在が示され得るが、これらの結果は、それぞれが1つの活性化MAPK突然変異を有する2つの別個の細胞亜集団、又は単一細胞における両突然変異の存在のいずれかによって説明され得る。これらの可能性を見分けるために、単一の黒色腫細胞をFACSソーティングによってM121224から単離し、これらの個別細胞から新しい培養物を培養した。26の別々の単一細胞クローンから得られた26個の培養物のサンドイッチシークエンシングでは、23個の独立に誘導したコロニーのすべてでBRAFV600E及びNRASQ61K突然変異の両方の連続した存在を確認できた(
図3B、C)。M121224が後期転移癌6のBRAF阻害剤抵抗性を保有したことを確認するために、M121224をLGX818及び他の2種類の市販のBRAF阻害剤(すなわち、PLX4032及びGSK2128436)で処置し、そして細胞生存率をMTTアッセイによって計測した(
図4A)。BRAFV600E突然変異黒色腫細胞培養(M980513)を陽性対照として含み、NRASQ61R突然変異細胞培養(M010817)をBRAF阻害剤処置に対する陰性対照として含んだ。M121224細胞株は、BRAFwt細胞培養M010817と同程度までLGX818に対してまだ抵抗性であった(
図4A)。同様に、M121224はまた、PLX4032及びGSK2118436に対しても抵抗性であったが、患者がLGX818阻害剤に対して誘発した抵抗性より程度が弱かった(
図4A)。M121224のホスホリル化ERK(pERK)レベルは、LGX818及びPLX4032のIC50濃度にて有意に減少した(
図4B)。M980513及びM121224における3つのpERK標的遺伝子の有意な下方調節は、PLX4032及びLGX818のIC50濃度にて観察されたが、対照NRASQ61R細胞株では観察されなかった(
図4C)。
【0090】
二重突然変異M121224細胞は高濃度のLGX818薬剤の存在下で生存し続けたが(
図4A)、2つの活性化MAPK突然変異の共存が、他のMAPK経路インヒビターに対するこれらの細胞の感受性にどのように影響するか興味があった。標準的なIC50濃度のLGX818及び高濃度のMEK阻害剤(MEK162)の両方を用いたM121224細胞の処置は、単独のNRASQ61R突然変異を有する細胞と同様の生存率プロファイルを示し得る(
図4D)。同様に、MEK阻害剤単独では、NRASQ61R突然変異細胞を用いたのと同程度にM121224細胞の生存率を低減するのに有効であった(
図4D)。最後に、特異的なERK阻害剤単独でもまた、BRAFV600E細胞と同程度にM121224の生存率を妨げた(
図4D)。
ERK阻害剤処置に対する高い感受性を、BRAF抵抗性転移性黒色腫から単離した追加の二重突然変異クローン細胞株を用いた実験によって更に確認した(
図6)。
【0091】
実施例5:原発性腫瘍は最も高いサブクローン性を呈する。
癌における体細胞突然変異の大部分が対立遺伝子の一方に影響しもう一方には影響しないので、これにより、ヘテロ接合であると仮定することは適正である。クローン癌集団及び純粋な癌集団では、斯かる突然変異が、0.5の変異対立遺伝子比(MAR)、すなわち、変異対立遺伝子を示すすべての配列決定された塩基のうちの半分であることを実証する。この数からの偏差は、癌サブクローンの存在の指標となり得、そしてそれは、0.5より小さいMARをもたらす。我々の原発性腫瘍におけるサブクローンの存在を試験するために、複数のパンチ生検にわたってMARを特定した。更に、突然変異対立遺伝子比(MAR)を、変異体数を総リード数で割ることによって計算して、サンプル中に潜在的存在するサブクローンの計測値を得た
21。低いMARを有するSNVのより高い割合は、患者1における原発性腫瘍対母斑及び転移で観察され、原発性腫瘍が44%の平均MARを有する一方で、母斑及び転移が50%の平均MARを有していた(
図5A)。更に、同じ原発性腫瘍が複数回パンチ生検を受けているので、MARは、患者2及び3の原発性腫瘍のすべてのサンプルについてであり得る。おそらく、これらのパンチ生検は腫瘍の異なった部分を特徴づけしており、一部の突然変異は、あるパンチ生検に関して排他性に見られるが、別のものには見られない(個別突然変異)。当業者は、これらの個別突然変異がサブクローンによるものであり、そのため、より小さい細胞セット内に存在すると仮定するはずである。
図5Bの結果は、それぞれの原発性腫瘍パンチ生検の個別SNVの平均MARがすべてのSNVの総MARよりかなり少ないことを明確に示している。患者2からのそれぞれのパンチ生検の個別SNV対総SNVのMARは、それぞれのケースで6%~16%少なく(
図5B)、そして平均MARは患者3の個別SNVにおいて、総SNVより9%~15%少なかった(
図5C)。これらの結果は、原発性腫瘍が、低い変異対立遺伝子頻度を有する多数の個別SNVを特徴とし得る最も高いサブクローン多様性を含むことを示唆している。しかしながら、それぞれの原発性腫瘍パンチ生検が異なる頻度のサブクローン性を有しているので、腫瘍内のクローン多様性の不均質性が示唆された。
患者1では、原発性腫瘍におけるMAFについて、0.35におけるピークと0.15における第二のピークを有する二峰性分布が観察された。第一のピークは、クローンヘテロ接合突然変異に相当すると思われ、70%の腫瘍純度を示す。
【0092】
実施例6:実験手順
サンプル調製
患者材料は、倫理承認番号647及び800に従って大学のバイオバンクプログラムを通じて提供された患者の承諾書の記入後にのみ使用された。DNAを、Dermatology of the University Hospital of Zurichの研究所のバイオバンクに保存されたパラフィン包埋組織、新鮮な凍結組織、又はPBMCsから単離した。パラフィンブロックからのDNAを、Qiagen製のFFPE DNA単離キット(QIAamp DNA FFPE Tissue Kit #56404)及びサンガー研究所のUltan McDermottによって開発された最適化プロトコールを使用して単離した。非パラフィン包埋サンプルからのDNA単離について、我々は、先に発行された標準的なDNA単離プロトコールに従った。所定の患者同意サンプルを、死亡直後の剖検中に採取した。サンプルを採取直後に加工し、可能な限り良好なDNA及びRNA品質を確保した。可能であれば、先の研究のように初代細胞培養を樹立した28。
間質組織の夾雑を減らすために、パラフィンブロックをパンチで打ち抜き、そしてDNAを全ブロックの切片からよりもパンチ片から単離した。DNA単離前に、各腫瘍サンプルを、訓練を受けた皮膚-組織病理学者が評価した。組織の品質並びに腫瘍含有量をチェックし、DNA単離に好適な領域を選び出した。入手可能な場合には、治療前に採取した形成異常母斑、原発性黒色腫腫瘍及び転移から、並びに検死中に得られた転移からDNAを配列決定した。入手可能であれば基準として、PBMCsからの生殖細胞DNAをすべての患者について配列決定した29。
【0093】
ライブラリー作成とシークエンシング
DNAの品質をAgilent2100Bioanalyzer又はAgilent2200Tapestationによって評価した。1~3μgの高品質DNAを、Agilent SureSelect V4又はV5キットを使用した全エクソームライブラリの調製に使用した。シークエンシングを、University of ZurichのFunctional Genomics Center内のIllumina Hiseq2000機器により実施した。全エクソームシークエンシングのために、我々は、100bpのリードを用いた、ペアドエンドにより、1サンプルあたり0.25レーンを配列決定した。
【0094】
全エクソーム配列解析
生命情報工学分析を、改変GATKパイプライン30-32を用いて実施した:品質管理を「FASTQC」33でおこなった。参照ゲノム「hg19」34に対するFASTQファイルのアラインメントを「BWA」35でおこなった。SAMからBAMファイル形式への変換を「BWA」でおこなった。PCR複製を「Picard」36のMarkDuplicatesで記録し、インデル周りの局所的な再アラインメントをRealignerTargetCreator(GATK)でおこない、再アラインメントをIndelRealigner(GATK)でおこない、メイト情報の修正をFixMateInformation(Picard)でおこない、塩基品質のスコア再校正をBaserecalibrator(GATK)及びPrintReads(GATK)でおこなった。バリアントコーリングをUnifiedGenotyper(GATK)でおこなった。VCFファイルのアノテーションには、我々はAnnovar37を使用した。更に、我々はSamtools38及びBedtools39を使用した。データ解釈のために、Microsoft Access、Microsoft Excel、Venny40、ConSet41、及びIGV42、43を使用した。
【0095】
変異対立遺伝子頻度をすべてのサンプルについて計算して、非腫瘍組織の夾雑度の印象を得た。サンプルの大部分が、ほぼ100%の腫瘍材料に相当する0.4~0.5の変異対立遺伝子頻度を示した(データ未掲載)。
コピー数分析のために、我々はExcavator17及びCONTRA16を使用し、Excavatorを用いた分析の結果をCircos44で可視化した。
SNVを以下のリード数評価基準に従って選別した:塩基は少なくとも4個の変異リードを有し、且つ、少なくとも10個の総リードを有していなければならず、10個未満の総リードの場合には、それらの少なくとも半分が変異でなければならない。同様に、<50のフレッドスケール品質スコアを有するすべてのSNVが更なる分析から除外された。同じ患者からの無選別血液サンプルがこの位置においてまったく変異リードを示さなかった場合、SNVは体細胞のものであると言われた。
【0096】
変異対立遺伝子比(MAR)を、それぞれコールされたSNVについて変異リード数を総リード数で割ることによって計算した。これらの比に関する頻度を計算し、傾向線をMoving Average法(期間:3)を用いてExcelにプロットした。偽陽性SNVの数を削減するために、より厳しいフィルタリングを個別SNVに適用した。品質閾値を100のフレッドスコアまで引き上げたので、SNVは少なくとも10個の総リードを有する必要があった。8個超のSNVを有する遺伝子を除外した。
【0097】
dPCR
デジタルPCRを、AB Gene Amp PCR System9700(Applied Biosystems Carlsbad, CA, USA)を使用して、且つ、15μlの提供されたマスターミックス(AB Quant Studio 3D)及び等量(0.6μM)のMicrosynth(Balgach, Switzerland)製のプライマーを用いて実施した。
BRAFフォワード:
5’CTACTGTTTTCCTTTACTTACTACACCTCAGA
リバース:
5’ATCCAGACAACTGTTCAAACTGAT
NRASフォワード:
5’GGTGAAACCTGTTTGTTGGACAT
リバース:
5’TGTATTGGTCTCTCATGGCACTGT
【0098】
更に、我々はLife Technologies(Carlsbad, CA, USA)製のプローブを使用した:
BRAF V600E:
6-VIC-TAGCTACAGAGAAATC-MGB
NRAS Q61K:
6-FAM-CAGCTGGAAAAGAA-MGB
【0099】
DNAを4μMの終濃度に希釈し;DNA濃度は、標的配列の予想頻度に依存して0.3ng/μl~6.6ng/μlで変動した。チップの添加及びサーモサイクル条件は、Life Technologiesの取扱説明書に従った。蛍光計測を、Quant Studio3Dを使用して実施し、そして、出力をQuantStudioの3D AnalysisSuite Softwareによって加工した。蛍光値をポアソン補正し、1μlあたりのコピーを計算した。15%より高い精度を示すあらゆるサンプルを特異的突然変異について陰性と分類した。
【0100】
サンガーシークエンシング
DNA増幅後に、12ngの各PCR産物、5×Terminator Sequencing Buffer(Applied Biosystems)、1.5μMのプライマー(Microsynth):
BRAFフォワード:
5’CTAAGAGGAAAGATGAAGTACTATG
リバース:
5’CTAGTAACTCAGCAGCATCTCAG
NRASフォワード:
5’GATAGGCAGAAATGGGCTTGA
リバース:
5’ATCATCCTTTCAGAGAAAATAATGC
及び2μlのBigDye Ready反応ミックス(Applied Biosystems)を10μlの反応ミックスまでフィルアップした。Lab Cycler(Sensoquest, Gottingen, Germany)により、サイクル条件を次のように実施した:96℃にて60秒、続いて96℃にて10秒、50℃にて5秒、及び60℃にて240秒を16サイクル。サンプルを、製造業者のマニュアルに従ってBig Dye XTerminator精製キット(Applied Biosystems)を使用して精製した。続いて、サンガーシークエンシングを、3500Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を使用して実施した。25%の閾値を超える配列内のあらゆる突然変異を陽性と分類するVariant Reporter Software(Life Technologies)を用いて分析を実施した。
【0101】
セルソーティング
黒色腫細胞の単一細胞ソーティングをおこなうために、コンフルエント状態のT75細胞培養フラスコからの細胞をペレットにし、100μlのFACSバッファー(1%のFBS、5mMのEDTA pH8、PBS中に0.01%のNaN3/ddH2O)中に再懸濁した。細胞を、以下のフォトセンシティブ抗体:FACSバッファー中に1:20に希釈した抗ヒトMCSP-FITC(Miltenyi Biotec 130-098-794, Bergisch Gladbach Germany)、FACSバッファー中に1:200に希釈した抗-ヒト線維芽細胞/上皮-PE(ABIN319868, Aachen Germany)と一緒に4℃にて20分間インキュベートした。洗浄後に、細胞を200μlのFACSバッファー中に再懸濁し、Aria IIb(BD Biosciences, Franklin Lakes, New Jersey, USA)を使用してソートした。
【0102】
PBMCsからの黒色腫細胞の単離
1×107PBMCsを、製造業者の取扱説明書に従ってMiltenyi Biotec(Bergisch Gladbach, Germany)製のCD56+CD16+NK細胞分離キットを用いて黒色腫細胞を単離するのに使用した。マニュアルとの1つの逸脱は最終ステップにあり、そしてそれは、NK細胞の正の選択なので、通過物は黒色腫細胞を含んでおり;他の免疫非NK細胞が第1ステップで枯渇した。すべての非免疫性細胞を含んでいる通過物を回収した後に、
1500rpmにて5分間で細胞をペレットにし、DNA単離をここで報告した非パラフィンサンプルを用いた場合のように続けた。
【0103】
系統発生分析:
最大節約、ベイズ及び最大尤度(mL)系統発生をRAxML v8.0.19(7)のPOSIX-スレッドバージョンを用いて構築した。Γ分布及び4つのレートカテゴリ(ASC_GTRGAMMAモデル)を使用した部位間レート不均質性を説明する確信バイアス矯正及び一般的な時間可逆的な(GTR)置換モデルを最適ツリーの計算に使用した。ノードサポートを、ブートストラップツリーを通して最適MLツリーを選別する100のノンパラメトリックブートストラップ偽レプリケートを用いて評価した。ノードサポート値は、そのため所定節間分岐を含んだブートストラップツリーのパーセント割合を示す。
所定の分岐群を診断するバリアントは、その分岐群が単独で存在し、及びその位置の他に場所がないと規定される。問題のノードから発するすべての葉が、バリアントを共有しなければならず、そして、他のすべての葉が診断されるべきバリアントの別の特徴を含まなければならない。そのため、診断バリアントは子孫形とも呼ばれる。
【0104】
細胞培養
倫理承認番号647及び800に従って大学のバイオバンクプログラムによるインフォームドコンセント後に、皮膚黒色腫及び黒色腫転移の患者生検検体から細胞培養物を得た。腫瘍材料を小片に刻み、RPMI1640(Invitrogen(Carlsbad, CA, USA))中で2.4U/mlのDispase(Roche, Basel, Switzerland)を用いて37℃にて3時間消化した。それに続いて、材料を遠心分離し(1500rpm/5分)、そして上清を取り除いた。その後、ペレットを、0.005Mの塩化カルシウム二水和物及びTris緩衝化生理的食塩水(pH7.4)中の62.5U/mlのCollagenase(Sigma, St. Louis, MO, USA)中に溶解し、そして、37℃にて2時間インキュベートした。それに続いて、材料を遠心分離し(1500rpm/5分)、上清を取り除いた。停止溶液(0.05MのTris塩基、0.15MのNaCl及びH2O中の0.01M EDTA、最終的にpH7.4)を10分間にわたって加えた。その後、ペレットを、RPMI1640で2回洗浄し、そして、最終的に細胞を、5mMのL-グルタミン(Biochrom, Berlin, Germany)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco, Carlsbad, CA, USA)、及び10%のFCS(Gibco(Carlsbad, CA, USA))を補ったRPMI1640中で37℃にて5%のCO2雰囲気中で培養した。数回の継代後に、黒色腫培養物を免疫組織化学によって確認し、そして、細胞の突然変異状態を評価した。
【0105】
細胞生存率アッセイ
様々な小分子阻害剤に関する細胞感受性を、細胞培養物M980513(BRAFV600E、NRASWT)、M000921(BRAFV600E、NRASWT)、M010817(BRAFWT、NRASQ61R)及びM121224(BRAFV600E、NRASQ61K)について評価した。1×10^4個の細胞を、播種し、様々な濃度のBRAF阻害剤(PLX4032、LGX818又はGSK2118436)、MEK阻害剤(MEK162)、ERK阻害剤(SCH772984)、又はBRAFとMEK阻害剤の組み合わせ(LGX818+MEK162)を用いて72時間処置した。DMSO処置を対照として使用した。72時間後に、培地を取り除き、10%のFCS及び8%のMTT試薬(Sigma、PBS中に5mg/ml)を補った新鮮なRPMI1640を加え、37℃にて細胞をインキュベートした。1時間後に、MTT試薬を含むRPMI1640を取り除き、10%のSDS(Sigma)及び95%のイソプロパノール/5%のギ酸(Sigma)(比 1:1)を加えた。37℃にて5分間のインキュベーション後に、マイクロプレートリーダーを使用して595nm(基準620nm)にて吸収度を計測した。
【0106】
ウエスタンブロット
細胞を氷冷PBSで2度洗浄し、その後RIPAバッファー(20mMのTris-HCl(pH7.5)、1%のTriton X-100(Sigma)、137mMのNaCl、10%のグリセロール、及びプロテアーゼインヒビター(Roche))中で溶解することによって、総タンパク質を回収した。タンパク質の濃度を、製造業者のプロトコールに従って、Bio-Rad Dc Protein Assay(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)を用いて計測した。SDS-PAGEを、タンパク質を分離するのに使用し、その後、それらをニトロセルロース膜に移した。膜を、ウサギ抗-pERK抗体(Cell Signaling、製品番号#4376S)及びウサギ抗-GAPDH抗体(Abcam, Cambridge, UK、製品番号ab9385)、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗-ウサギIgG(Santa Cruz、製品番号sc-2030)を用いてプローブした。結合抗体を、化学発光(ECL, GE Healthcare, Chalfont St. Giles, UK)を使用して検出した。その後、バンド強度を、ImageJソフトウェア(imagej.nih.gov/ij/)を使用して計測し、そしてpERKバンド強度を対応するGAPDHバンド強度に対して補正した。
【0107】
qPCR分析
全RNAを、細胞培養物からTRIzol(Life Technologies)を使用して抽出し、その後、1μgのRNAを、Reverse Transcription System(A3500, Promega, Madison, WI, USA)を用いてcDNAに転写した。q-PCRのために、ViiA7(Life Technologies)を使用し、反応ミックスは、5μlのSYBR Green(Roche)、3.5μlのH2O、0.5μlのフォワード+リバースプライマー(10μM)(Microsynth)及び1μlのcDNA(50ng)から成った。サイクル条件は以下のとおりであった:95℃にて10分間、続いて95℃にて10秒間及び58℃にて30秒間を40サイクル、最後に95℃にて15秒間、60℃にて1分間、及び95℃にて15秒間で終わった。pERK標的遺伝子DUSP6、SPRY2、及びEGR1(PMID19251651)の遺伝子発現の相違点をΔΔCT法を使用して計算した。GAPDHをハウスキーピング遺伝子として使用した。
【0108】
プライマー配列
GAPDH フォワード:GAA GGT GAA GTT CGG AGT C
リバース:GAA GAT GGT GAT GGG ATT TC
DUSP6 フォワード:GAA ATG GCG ATC AGC AAG ACG
リバース:CGA CGA CTC GTA TAG CTC CTG
SPRY2 フォワード:ATC AGA TCA GAG CCA TCC GAA
リバース:TGG AGT CTC TCG TGT TTG TGC
EGR1 フォワード:GGTCAGTGGCCTAGTGAGC
リバース:TGCTGTCGTTGGATGGCAC
【0109】
当該出願を通じて引用した参照文献
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【配列表】