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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】編成縫合糸コート
(51)【国際特許分類】
   A61L 17/04 20060101AFI20220308BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61L17/04
A61B17/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017543304
(86)(22)【出願日】2015-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-11-30
(86)【国際出願番号】 US2015059081
(87)【国際公開番号】W WO2016073635
(87)【国際公開日】2016-05-12
【審査請求日】2018-10-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】62/075,090
(32)【優先日】2014-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517156403
【氏名又は名称】サージカル スペシャルティーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハレット,ブライアン,エス.
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】鳥居 福代
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-255175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0277985(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0050667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0299408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00-33/18, A61B17/00-17/94, D02G1/00-3/48, D02J1/00-13/00, D06M10/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用縫合糸であって、
a)細長管状空洞を囲む細長管状スリーブを備え、前記縫合糸は芯を有しておらず、
b)前記スリーブは共に編成されている複数のマルチフィラメントストランドを含み、且つモノフィラメントストランドを全く含んでおらず、
c)前記複数のマルチフィラメントストランドのそれぞれは複数のフィラメントを含んでおり、前記複数のマルチフィラメントストランドのうちいくつかのマルチフィラメントストランドに含まれる前記複数のフィラメントは第1ポリマー鎖を含み、他のマルチフィラメントストランドに含まれる前記複数のフィラメントは第2ポリマー鎖を含み、前記第1ポリマー鎖と前記第2ポリマー鎖とは異なっており、前記第1ポリマー鎖は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含み、
d)前記マルチフィラメントストランドの前記複数のフィラメントは、150から250ターン/mの範囲で共に撚られており、いくつかの前記マルチフィラメントストランドは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の前記第1ポリマー鎖を有する複数のフィラメントを含み、他のマルチフィラメントストランドは前記第2ポリマー鎖を有する複数のフィラメントを含み、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の前記第1ポリマー鎖を有する前記複数のフィラメントは前記範囲内の第1撚り率で共に撚られており、前記第2ポリマー鎖を有する前記複数のフィラメントは前記範囲内の第2撚り率で共に撚られており、前記第1撚り率と前記第2撚り率とは互いに異なっており、
e)前記スリーブの前記複数のマルチフィラメントストランドは9から19プリーツ/cmで共に編成されている、
外科用縫合糸。
【請求項2】
少なくとも1のマーカストランドを含んでいる、請求項1記載の縫合糸。
【請求項3】
前記複数のマルチフィラメントストランドのそれぞれは20から100のフィラメントを含んでいる、請求項1記載の縫合糸。
【請求項4】
前記複数のマルチフィラメントストランドのそれぞれは30から60のフィラメントを含んでいる、請求項1記載の縫合糸。
【請求項5】
12から15のストランド、16から19のストランド、20から23のストランド、24から27のストランド、28から31のストランド、および32から35のストランドから選択された前記複数のマルチフィラメントストランドからの複数のマルチフィラメントストランドを含んでいる、請求項1記載の縫合糸。
【請求項6】
それぞれのマルチフィラメントストランドは、50から160、60から150、70から140、80から130、90から120、95から115、および100から110から選択されたデニール値を含む、請求項1記載の縫合糸。
【請求項7】
前記縫合糸の前記複数のマルチフィラメントストランドの90%以下が超高分子量ポリエチレンの前記第1ポリマー鎖を有するフィラメントを含むマルチフィラメントストランドである、請求項1記載の縫合糸。
【請求項8】
前記縫合糸の前記複数のマルチフィラメントストランドの70%以下が超高分子量ポリエチレンの前記第1ポリマー鎖を有するフィラメントを含むマルチフィラメントストランドである、請求項1記載の縫合糸。
【請求項9】
前記縫合糸の前記複数のマルチフィラメントストランドの50%以下が超高分子量ポリエチレンの前記第1ポリマー鎖を有するフィラメントを含むマルチフィラメントストランドである、請求項1記載の縫合糸。
【請求項10】
前記他のマルチフィラメントストランドが、ナイロンの前記第2ポリマー鎖を有するフィラメントを含む、請求項1記載の縫合糸。
【請求項11】
前記他のマルチフィラメントストランドが、ポリプロピレンの前記第2ポリマー鎖を有するフィラメントを含む、請求項1記載の縫合糸。
【請求項12】
前記他のマルチフィラメントストランドが、ポリエステルの前記第2ポリマー鎖を有するフィラメントを含む、請求項1記載の縫合糸。
【請求項13】
前記複数のマルチフィラメントストランドが、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の11のストランドとナイロンの5のストランドとを含んでおり、USPサイズ2である、請求項1記載の縫合糸。
【請求項14】
外科用縫合糸であって、
a)細長管状空洞を囲む細長管状スリーブを備え、前記縫合糸は芯を有しておらず、
b)前記スリーブは共に編成された複数のマルチフィラメントストランドを含み、且つモノフィラメントストランドは全く含んでおらず、
c)複数のフィラメントを含むいくつかの前記複数のマルチフィラメントストランドのそれぞれは複数の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントから成り、複数のフィラメントを含む他の前記複数のマルチフィラメントストランドのそれぞれはナイロンフィラメントから成り、前記複数の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントの各超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である複数のポリマー鎖を含んでおり、前記複数のナイロンフィラメントの各ナイロンフィラメントはナイロンである複数のポリマー鎖を含んでおり、
d)前記マルチフィラメントストランドの複数のフィラメントは150から250ターン/mの範囲で共に撚られており、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の前記ポリマー鎖を有する前記複数の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントは前記範囲内の第1撚り率で共に撚られており、ナイロンの前記ポリマー鎖を有する前記複数のナイロンフィラメントは前記範囲内の第2撚り率で共に撚られており、前記第1撚り率と前記第2撚り率とは互いに異なっており、
e)前記スリーブの前記複数のマルチフィラメントストランドは9から19プリーツ/cmで共に編成されており、
f)前記縫合糸はUSPサイズ2である、
外科用縫合糸。
【請求項15】
外科用縫合糸を形成するために切断することができる外科用縫合糸ストックの製造方法であって、前記外科用縫合糸ストックは細長管状空洞を囲む細長管状スリーブを含んでおり、前記外科用縫合糸ストックは芯を有しておらず、当該方法は、9から19プリーツ/cmで複数のマルチフィラメントストランドを共に編成してスリーブを形成することを含んでおり、前記スリーブはモノフィラメントストランドを全く含んでおらず、
前記複数のマルチフィラメントストランドは、複数の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントを有するいくつかのマルチフィラメントストランドと複数のナイロンフィラメントを有する他のマルチフィラメントストランドとから成り、
前記複数の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である複数のポリマー鎖を含んでおり、
前記複数のナイロンフィラメントはナイロンである複数のポリマー鎖を含んでおり、
前記複数のマルチフィラメントストランドのそれぞれは150から250ターン/mの範囲で撚られており、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である前記ポリマー鎖を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントを含むいくつかの前記マルチフィラメントストランドは前記範囲内の第1撚り率で撚られており、ナイロンの前記ポリマー鎖を有するフィラメントを含む前記他のマルチフィラメントストランドは前記範囲内の第2撚り率で撚られており、前記第1撚り率と前記第2撚り率とは互いに異なる、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2014年11月4日に出願された米国仮特許願第62/075,090の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、外科用縫合糸のような編成(編まれた;braided)細長材料およびその製造に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
編成合成ファイバ製の外科用縫合糸は多数の印刷媒体において解説されており、商業的に成功している製品である。そのような縫合糸は生体内吸収性ファイバ及び/又は非吸収性ファイバで製造できる。またそのような縫合糸は、縫合糸の長手方向に沿って走る中央空洞を有するもの、あるいは有しないものがあり、そのような空洞が存在するときには、その空洞は別体である芯材料によって充填されていることも、されていないこともある。中央空洞が空であるときは、その縫合糸は時にコアレス(芯なし)縫合糸と称される。
【0004】
ファイバ編成処理によって形成された外科用縫合糸およびその他の細長医療用製品は次の代表的な文献に記述されている:US特許6,716,234;6,203,564;6,045,571;5,984,933;5,662,682;5,628,756;5,540,703;5,456,722;5,318,575;5,274,074;5,226,912;5,019,093;4,946,467;4,792,336;4,790,850;4,546,769;4,510,934;4,047,533;4,043,344;3,949,755;3,565,077;3,130,278、US公開出願2005/0149118;2005/0125036;2005/0125034;2005/0119696;2003/0139775;2003/0050667;PCT公開WO92/10137;およびGB特許2081585。
【0005】
Teleflex Medical OEM(ガーニー,イリノイ,米国)はForce Fiber(登録商標)縫合糸を市販しているが、この製品は5-0、4-0、3-0、2-0、0、1、2、3/4および5のサイズで入手が可能なコアレス編成縫合糸として宣伝されている。Force Fiber縫合糸は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)製であり、ポリエステル、ポリプロピレンまたはナイロンを含むこともできる。US特許8,672,966および8,088,146、並びに欧州出願公開EP1623726及びEP2275148参照。
【0006】
CP Medical(ポートランド,オレゴン,米国)はPowerfiberTM(USPサイズ2および2/0(メートル法サイズ5および3))およびCP Fiber(USPサイズ7-0から5(メートル法サイズ0.5から7))縫合糸を市販する。UHMWPE製の編成スリーブに加えて、これら縫合糸はポリエステル製の芯を含んでいる。CP MedicalはまたPolybond(登録商標)縫合糸も市販するが、これは編成ポリエステル製で非吸収性の無菌外科用縫合糸であり、ポリエチレンテレフタレートを含んで製造されている。Polybond縫合糸はUSPサイズ8-0から5(メートル法サイズ0.4から7)で入手できる。US出願公開2006/0025818参照。
【0007】
Arthrex(ネイプルズ,フロリダ,米国)はFiberWire(登録商標)縫合糸を市販するが、これはポリエステルとUHMWPEの編成ジャケットを備えたマルチストランド長鎖超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)芯で構成されていると宣伝されている。PCT公開WO2008/091690およびUS特許出願公開2003/050666、2007/135840、US2008/009903および2008/021501参照。
【0008】
Conmed(ラーゴ,フロリダ,米国)はHiFiTM外科用縫合糸を市販するが、これは整形外科処理用の軟質組織補修のためと指示されている編成非吸収性超高分子量ポリエチレン縫合糸として市販されている。この製品はDyneema(登録商標)Purityを含んでおり、これはDSM Dyneema B. V.あるいはKoninklijke DSM N.V.の関連企業の商標である。HiFiは中央芯を含んでいないと報告されている。HiFi縫合糸はUSPサイズ2、5、0および2-0を含むUSPサイズで入手できる。
【0009】
Smith & Nephew(ロンドン,英国)はUltrabraidTM縫合糸を市販する。Ultrabraid縫合糸は骨に軟質組織を張り付けるための高強度ポリエチレン縫合糸として宣伝されている。Ultrabraid縫合糸は、組織内でスライドさせ、容易に定着させ、ほぐれに抵抗性を有し、従来の縫合糸よりも強力な結び目を提供するユニークな独占的編成形態である超高分子量ポリエチレンファイバで製造されていると報告されている。Ultrabraid縫合糸は芯を含んでいないと報告されている。
【発明の概要】
【0010】
本願開示は、編成医療用製品、例えば、傷の縫合のための編成縫合糸の製造にための改善された方法を提供しており、さらに、この方法で製造できる縫合糸ストックおよび縫合糸を提供する。
【0011】
簡潔に記せば、本願開示は編成ストック、例えば編成縫合糸ストックの製造方法を提供するが、そのストックは所望の長さに切断され、例えば、外科用縫合糸を形成することができる。1実施態様においては、この方法は、少なくとも150撚り/m、好適には少なくとも200撚り/mを有するマルチフィラメントファイバの使用を含んでいる。この多数回撚られたマルチフィラメントファイバは、縫合糸ストックを製造するために18から24のプリーツ/cmを有したコアレス編成物に編成できる。
【0012】
1実施態様においては、特定サイズの高均一性で非吸収性である編成縫合糸ストックが、60ピック/インチ未満の織密度と共に編成された撚られたマルチフィラメントストランドから製造される。この縫合糸ストックは切断されて縫合糸を提供することができ、傷口の縫合のための外科用縫合糸を提供するために針と組み合わせることができる。
【0013】
本願開示はまた、説明している方法で製造できる外科用縫合糸ストックおよび外科用縫合糸を提供する。例えば、本願開示はその第1特徴および第2特徴において以下を提供する:
1)外科用縫合糸ストック(第1特徴)またはそれから切断された外科用縫合糸(第2特徴)であって、
a)細長管状空洞を囲む細長管状スリーブを備え、縫合糸は芯を有しておらず;
b)そのスリーブは共に編成されている複数のマルチフィラメントストランドを含んでいるが、モノフィラメントストランドを全く含んでおらず;
c)そのマルチフィラメントストランドは複数のフィラメントを含んでおり、そのフィラメントは複数のポリマー鎖を含んでおり、それらフィラメントの少なくとも一部のフィラメントのポリマー鎖は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)であり;
d)マルチフィラメントストランドは150から250ターン/mの撚りを有しており;
e)スリーブ内のそれらストランドは8から24プリーツ/cmで共に編成されている。
2)少なくとも1つのマーカストランドを含んだ実施例1の縫合糸ストックまたは縫合糸。
3)スリーブ内のストランドが9から23プリーツ/cm、または10から22プリーツ/cm、または11から21プリーツ/cm、または12から20プリーツ/cm、または13から19プリーツ/cm、または14から18プリーツ/cmで共に編成されている実施例1の縫合糸ストックまたは縫合糸。
4)マルチフィラメントが20から100フィラメント、または30から60フィラメントを含んだ実施例1から3の縫合糸ストックまたは縫合糸。
5)12から15のストランド、または16から19のストランド、または20から23のストランド、または24から27のストランド、または28から31のストランド、または32から35のストランドを含んでいる、実施例1から4の縫合糸ストックまたは縫合糸。
6)それぞれのストランドがデニール値50から160、またはデニール値60から150、またはデニール値70から140、またはデニール値80から130、またはデニール値90から120、またはデニール値95から115、またはデニール値100から110であることを特徴とする実施例1から5の縫合糸ストックまたは縫合糸。
7)縫合糸内のストランドの90%以下が超高分子量ポリエチレン製であるか、または縫合糸内のストランドの80%以下が超高分子量ポリエチレン製であるか、または縫合糸内のストランドの70%以下が超高分子量ポリエチレン製であるか、または縫合糸内のストランドの60%以下が超高分子量ポリエチレン製であるか、または縫合糸内のストランドの50%以下が超高分子量ポリエチレン製である、実施例の1から6の縫合糸ストックまたは縫合糸。
8)ナイロン製マルチフィラメントストランドを含んでいる、実施例1から7の縫合糸ストックまたは縫合糸。
9)ポリプロピレン製マルチフィラメントストランドを含んでいる、実施例1から7の縫合糸ストランドまたは縫合糸。
10)ポリエステル製マルチフィラメントストランドを含んでいる、実施例1から7の縫合糸ストックまたは縫合糸。
11)UHMWPEの11ストランドとナイロンの5ストランドを含んでいる、実施例1から7の縫合糸ストックまたは縫合糸。
12)USPサイズ2である、実施例1から7の縫合糸ストックまたは縫合糸。
【0014】
別例として本願開示は以下を提供する:
13)外科用縫合糸であって、
a)細長管状空洞を囲む細長管状スリーブであり、縫合糸は芯を有しておらず;
b)スリーブは共に編成された複数のマルチフィラメントストランドを含んでいるが、モノフィラメントストランドは全く含んでおらず;
c)マルチフィラメントストランドは複数のUHMEWPEフィラメントと複数のナイロンフィラメントから成り(consisting of)、UHMWPEフィラメントは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である複数のポリマー鎖を含んでおり、ナイロンフィラメントはナイロンである複数のポリマー鎖を含んでおり;
d)マルチフィラメントストランドのフィラメントは8から24プリーツ/cmで共に撚られており;
e)スリーブ内のストランドは150から350ターン/mで共に編成されている;
f)縫合糸はUSPサイズ2である。
【0015】
上述したように、本願開示は外科用縫合糸ストックの製造方法を提供するが、そのストックを切断して外科用縫合糸を形成することができ、縫合糸ストックは細長管状空洞を囲む細長管状スリーブを含んでおり、縫合糸ストックは芯を有していない。1実施例においては、この方法は8から24プリーツ/cmで複数のマルチフィラメントストランドを共に編成することを含んでおり、そのマルチフィラメントストランドは複数のUHMWPEフィラメントと複数のナイロンフィラメントから成り(consisting of)、そのUHMWPEフィラメントは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である複数のポリマー鎖を含んでおり、そのナイロンフィラメントはナイロンである複数のポリマー鎖を含んでいる。オプションでは、そのマルチフィラメントストランドは編成された時点で150から350ターン/mの撚りを有している。オプションでは、この方法によって、UHMWPEの11ストランドとナイロンの5ストランドが編成されてUSPサイズ2の縫合糸ストックと縫合糸が形成される。別オプションでは、この方法で、UHMWPEの12ストランドとナイロンの4ストランドが編成されてUSPサイズ5の縫合糸ストックと縫合糸が形成される。
【0016】
これら、および他の実施例の詳細は以下の説明に記載されている。代表的な実施例との関連で説明または記述されているその特徴は他の実施例の特徴と組み合わせることが可能である。他の特徴、目的および利点はその説明および請求項から明らかになるであろう。加えて、ここで言及した全ての特許および特許願の開示内容は全体的に本願に含まれていることが想定されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
1特徴形態において、本願開示は外科用縫合糸を提供し、特に編成された外科用縫合糸を提供する。別特徴形態においては、本願開示は、縫合糸ストックを好適位置でカットすることによって外科用縫合糸を形成させることができる編成縫合糸ストックを製造する方法を提供する。本願発明は本願の詳細な説明と実施例を参考にすることでさらに容易に理解されるであろう。
【0018】
特にそれ以外に定義されていない限り、ここで使用される用語は当該技術におけるその伝統的な意味が与えられているものと理解されるべきである。この明細書中の全ての見出しは読者の理解を助けるためだけのものであり、如何なる様態においても本願発明を制限するものと受け取られるべきではない。特許請求の範囲を含むこの明細書の全体を通して、単数形“a”、“an”および“the”は、特に言及がない場合には複数も含む。もう一つの例として、“a” carrier braiderは一つまたは複数のキャリアブレーダ(carrier braider)を表す。
【0019】
“エンド(end)”とは編成できる取り扱い可能な長さの、例えば、ファイバ、フィラメント、スレッド(thread)、ヤーン(yarn)などのフレキシブル(柔軟)な細長材料のことである。一般的に、エンドはモノフィラメントあるいはマルチフィラメントであるが、本願発明の縫合糸ストックおよび縫合糸の製造に使用されるエンドはマルチフィラメントである。マルチフィラメントのエンドは、その構成フィラメント同士が結束状態(撚り合わせ状態)に維持されて一体的なスレッド状構造体を形成するよう、撚られ(ツイストされ)又は類似状態に構造化され又は処理できる。
【0020】
“フィラメント”とは、スピナレット(紡糸口金)のダイ・オリフィスまたはマルチオリフィススピナレットによって形成された合成的に製造されたモノフィラメントファイバのことである。“マルチフィラメント”ストランドまたはマルチフィラメントヤーンとは、“エンド”を提供するように結束されたフィラメントの束のことである。
【0021】
ヤーンとは、テキスタイルファイバ、フィラメント、または複数のテキスタイルプロセスのいずれか1つを介したテキスタイル構造物形成のための撚り合わせに適した形態の材料の連続ストランドを表す一般用語である。本願開示のマルチフィラメントストランドはヤーンの1例である。
【0022】
1特徴形態において本願開示は細長管状空洞を囲む細長管状スリーブを含んだ外科用縫合糸を提供する。1実施例においてはこの縫合糸は芯(コア)を有していない。前述したように、細長管状空洞を囲む細長管状スリーブを含み、芯を有した、あるいは芯を有しない幾種かの外科用縫合糸がこの特許用文献に解説されており、及び/又は現在の商業的材料となっている。そのような縫合糸の構成は多様な名称で知られている。例えば、スリーブに言及する様々な別名称、例えばカバー、ジャケットおよびシース(鞘)が当該技術分野において使用されている。同様に、当該技術分野では空洞に様々な別名称、例えばホール(孔;hole)および開口(opening)が使用されている。本願開示の縫合糸は中心の中央芯を欠いているためコアレス縫合糸と呼称できる。すなわち、内部が芯材料によって埋められてはいないが、芯のためのスペースを有した縫合糸である。
【0023】
1特徴形態においては、本願開示は複数のマルチフィラメントストランドを含んだ材料から形成されるスリーブを含んだ外科用縫合糸を提供しており、そのマルチフィラメントストランドは共に編成処理されている。1実施例では、スリーブはモノフィラメントストランドを含んではいない。一般的にマルチフィラメントストランドは複数のフィラメントを組み合わせることで製造され、そこではフィラメントはポリマーメルトまたはポリマーゲルから延伸加工または紡糸処理される。ストランドは任意の数のフィラメントから製造できるが、縫合糸製造業者にとって典型的には好適なストランドは20から100のフィラメントで製造され、30から60のフィラメントのマルチフィラメントストランドが一般的である。
【0024】
ストランドを形成するにあたって、選択された数のフィラメントが結束されてマルチフィラメントストランドを形成する。1つの通常実施態様では、これらフィラメントはポリマーメルトまたはポリマーゲルから材料を延伸加工することで形成され、その延伸加工された材料はポリマーメルトまたはポリマーゲルから排出されると冷却されてフィラメントを形成する。マルチフィラメントストランドが製造目的であるなら、複数のフィラメントがポリマーメルトまたはポリマーゲルから互いに非常に近接した状態で延伸加工され、フィラメントが冷却された後に、その複数のフィラメントは結束され、すなわち換言すると、複数のフィラメントで成る単ストランドに束ねられる。
【0025】
ストランドが一体的なスレッド状の外見と感触を有するよう、これらフィラメントを結束状態に保つために様々な技術が活用される。ヒートセット(heat-set)として知られる1技術において、束ねられたマルチフィラメントストランドは加熱されて、フィラメント間に焼結効果を提供する。すなわちフィラメントはその軟化点近辺にまで加熱され、冷却時に共に保持され、フィラメントの外面の一部が近辺のフィラメントの外面の一部に接着して共結合構造が提供される。複数のフィラメントから効果的に一体化したストランドの形成を達成できる化学処理も知られている。
【0026】
撚りが複数のフィラメントをマルチフィラメントストランドに変換するのに利用できる。撚り工程において、その複数の直近に形成されたフィラメントは、それがフィラメント形成装置から排出されるときに回転されて束状にされ、その状態で共に保持される。フィラメントは時計回り、あるいは反時計回りに撚ることができる。撚りの方向性の一般的な説明は、ヤーンを垂直姿勢に保持することから始まる。もしスパイラル(螺旋)が文字Sの中央部の傾斜方向と一致するなら、そのヤーンはS形撚りを有し、もし文字Zの傾斜と一致するならそのヤーンはZ形撚りを有する。いずれの場合も、マルチフィラメントストランドの外面と外面付近を形成するフィラメントはスパイラル形状となるであろうし、マルチフィラメントストランドの内部を構成するフィラメントを効果的に囲むことであろう。この撚り処理でフィラメントは密着して共に保持される。この撚り処理または他の工程/処理がなければ、個別のフィラメントは互いから分離するであろう。
【0027】
撚り処理の程度は公知の機器で測定できる。例えば、James H. Heal&Co., Ltd.(ハリファックス, イングランド)はストランドの撚りを測定する機械を製造販売する。あるいは電子撚りテスタが、撚り処理された(S形&Z形)ヤーンの撚り状態を決定するのに使用でき、このテスタは次の3つの方法のいずれかによって撚りの程度を評価することができる:従来法(単ヤーンの脱撚り処理、再撚り処理)、直接法(プライ(合撚)ヤーン、スレッドおよびマルチフィラメントの脱撚り処理)、および“Schutz”法(OEのための脱撚り処理、再撚り処理およびダブルカウンタチェック)。Dowell Science and Technology Co., Ltd.(香港, 中国)はAutomatic Yarn Twisting Tester Y331A-IIIなどの電子撚りテスタを製造販売する。Mesdan Lab(ブレシア, イタリア)もマルチフィラメントファイバの撚りを測定するのに使用できる好適な機器を提供する。撚り処理は注意深い目視検査によっても測定できる。
【0028】
フィラメントを結束状態に維持するため、マルチフィラメントストランドの製造業者は時に少量の撚りをマルチフィラメントストランドに付与する。この少量の撚りは輸送時および使用時にフィラメントを確実に結束状態に保つのには十分である。製造業者撚りとも呼ぶことができるこの少量撚りは典型的には80から140ターン/m(ターン/メートル)の範囲であり、しばしば約3ターン/インチに対応する約120ターン/メータの範囲である。この程度の製造業者撚りで複数のフィラメントをマルチフィラメント形態に結束させておくのには十分である。
【0029】
本願開示は、マルチフィラメントストランド製造業者によって典型的に提供される撚りのさらに大きな程度を有するマルチフィラメントストランドを採用/利用する縫合糸およびプロセスを提供し、よって、そのような強く撚られたマルチフィラメントストランドを含んだ外科用縫合糸を提供する。
【0030】
ここで利用され、ターン/m(tpm)の単位で報告されるマルチフィラメントストランドの撚りは様々な実施例において、150より大きく、または160より大きく、または170より大きく、または180より大きく、または190より大きく、または200より大きく、または210より大きく、または220より大きく、または230より大きく、または240より大きく、または250より大きく、または260より大きく、または270より大きく、または280より大きく、または290より大きく、または300より大きく、または310より大きく、または320より大きく、または330より大きく、または340より大きく、または350より大きく、または360より大きく、または370より大きく、または380より大きく、または390より大きい。上限値に関しては、本願発明の利点は、400を下回る(同様にターン/mで測定)、または390を下回る、または380を下回る、または370を下回る、または360を下回る、または350を下回る、または340を下回る、または330を下回る、または320を下回る、または310を下回るツイストで観察される。例えば、適した範囲は150から350、または160から340、または180から320、または200から300ターン/mである。
【0031】
本願開示の縫合糸ストックを製造するのに使用されるマルチフィラメントストランドの増強された撚りは、その増強された撚りを長時間、および取り扱いを経て永久的に維持するために必ずしも化学的手段や加熱手段が利用される必要がないという意味において、一時的なものとすることができる。従って、本願開示の強く撚られたストランドは、1実施例においては、増強された撚りが与えられた後に素早く使用されることができるが、この素早くとは撚り処理後の数時間を意味する。もし強く撚られたストランドが素早く使用されなければ、1実施例においては、それらは増強された撚り処理の利点が実現しない程度に、増強された撚りを喪失しないよう、または少なくとも増強された撚りの多くを喪失しないよう、編成処理前には最小限度に扱われる。1実施例においては、マルチフィラメントストランドの撚りは、ここで説明するように、少なくとも150tpm(ターン/m)または他の増強された撚り値にまで増強され(製造業者撚りと比べて)、続いて増強された撚りを有したこのファイバが縫合糸ストックを形成するために使用される。1実施例においては、本願開示は増強された撚りを有したマルチフィラメントファイバを含んだ縫合糸ストックを提供する。別実施例では、本願開示は増強された撚りを有したマルチフィラメントファイバを含んだ縫合糸を提供する。1実施例では、本願開示の編成加工プロセスは、増強された撚りを、少なくとも150tpmまたはここで説明している他の増強された値のファイバに付与するプロセスを経たマルチフィラメントファイバを利用する。
【0032】
前述したように、1実施例においては、スリーブも縫合糸もモノフィラメントストランドを含まない。一般的にモノフィラメントストランドが縫合糸の外見または縫合糸の物理特性に意味ある貢献をするためには、モノフィラメントストランドは相当な直径を有する必要があるであろう。本願発明者は、そのようなモノフィラメント(すなわち相当程度の直径を有したもの)は不都合な剛性を縫合糸に付与する傾向があり、よって本願開示の縫合糸はオプションでモノフィラメントストランドを一切含まないこともある。
【0033】
前述したように、本願開示は複数のマルチフィラメントストランドを含んだ材料から形成されたスリーブを含んだ外科用縫合糸を提供し、そのマルチフィラメントストランドは共に編成処理されてスリーブを形成する。縫合糸、縫合糸の芯、および縫合糸のスリーブのいずれかを形成するために編成処理を活用することは当該技術分野にて周知であり、キャリアブレーダと呼ばれる機械を使用して共通的に達成される。Cobraコブラ(コングルトン,チェシャー,イングランド)、OMA S.r.l.(ミラノ,イタリア)、August Herzog Maschinenfabrik GmbH & Co. KG(オルデンブルグ,ドイツ)、Suman Technologies(カルナータカ,インド)およびXuzhou Henghui Braiding Machine Co., Ltd.(江蘇省,中国)を含んだ世界中の多くの会社は本願開示の縫合糸の製造に適したキャリアブレーダを製造及び/又は販売する。J.B. Hyde & Co., Ltd(イングランド)が製造する好適なブレーダキャリアーズが再販市場で入手可能である。
【0034】
同様に、縫合糸を形成するためのブレーダキャリアの動作は当該技術分野においてよく知られている。一般的にブレーダキャリアはモノフィラメントストランドまたはマルチフィラメントストランドのストランドの最大数のボビン(パッケージと呼称)を備えるように設計されている。最大8、12、16、20、24、28および32のパッケージ(スプールとも呼称)を備えるブレーダキャリアが商業的に入手できる。必要ではないが通常は、編成物を製造するために機械をセットアップするときにパッケージをキャリアブレーダのそれぞれの利用可能な位置に配置する。芯を含んだ縫合糸を製造するとき、一定長の芯がブレーダキャリアの中央に保持され、それぞれのパッケージからのフィラメントは、メイポール(五月柱;maypole)が編成処理されるように、その芯の周囲で共に編成処理される。コアレス縫合糸を製造するとき、その芯は省略されるが、その他の点ではそのプロセスは本質的に同じである。もし芯が省略されれば、編成スリーブの中心内に形成される細長中空管状空洞は断面が典型的には円形または略円形である。もし、非円形断面を有した細長管状空洞が所望されるなら、任意の所望断面のマンドレルがキャリアの中央に配置でき、スリーブはそのマンドレルの周囲で編成処理することができ、空洞はマンドレルの断面形状とサイズとを本質的に有する。このように、本願開示の縫合糸は、特にオプションの実施態様においては、円形、三角形、正方形および長方形を含んで多種多様な断面形状を有することができる。
【0035】
本願開示は、複数のマルチフィラメントストランドを含んだ材料から形成されたスリーブを含んだ外科用縫合糸を提供する。マルチフィラメントストランドは複数のフィラメントを含んでおり、1本のフィラメントは複数のポリマー鎖を含んでいる。通常の場合には、マルチフィラメント製造業者は複数の同一フィラメントを製造し、それら同一フィラメントをマルチフィラメントストランド形状に結束する。よって、それぞれのフィラメントは本質的には同一であるポリマー鎖から形成され、それぞれのフィラメントファイバは本質的には同一であるフィラメントから形成される。
【0036】
本願開示の外科用縫合糸は任意の好適なポリマーあるいはポリマー類の混合物から製造できる。1実施例では縫合糸は複数のポリマーの混合物から製造され、例えば編成物はポリマー“A”から製造されるストランドとポリマー“B”から製造されるストランドで形成される。1実施例では、縫合糸は複数の非吸収性ストランド、例えばポリオレフィンから製造される。1実施例では縫合糸は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から製造されたフィラメントを含む。様々な実施例においては、全てのストランドがUHMWPE製であるとは限らない。例えば、スリーブを形成するのに使用されるストランドの全数に基づいて、UHMWPE製のストランドはストランドの数の95%未満であり、または90%未満であり、または90%未満であり、または85%未満であり、または80%未満であり、または75%未満であり、または70%未満であり、または65%未満であり、または60%未満であり、または55%未満であり、または50%未満である。最小数のUHMWPEストランドの場合、様々な実施例において、スリーブは、少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%のUHMWPEマルチフィラメントストランドを含んでいる。好適な代表的範囲には、UHMWPE製の縫合糸ストックを形成するのに使用されるストランドの50から75%、またはHHMWPE製のストランドの50から70%が含まれる。
【0037】
縫合糸が複数のポリマーの混合物、例えば、UHMWPEと第2のポリマーの混合物から形成されるとき、その第2のポリマーは縫合糸の製造に適していることが知られた任意のポリマーでよい。1実施例においては、この第2のポリマーはポリアミド6,6であり、これはナイロンとしても知られている。よって本願開示は1実施例において上述の通りUHMWPEを含み、残りはマルチフィラメントナイロンストランドによって提供される縫合糸を提供する。
【0038】
縫合糸が複数のポリマーの混合物、例えば、UHMWPEと第2のポリマーの混合物から形成されるとき、その第2のポリマーは縫合糸の製造に適していることが知られた任意のポリマーでよい。1実施例においては、この第2のポリマーはポリエステルである。よって本願開示は1実施例において上述の通りUHMWPEを含み、残りはマルチフィラメントポリエステルストランドによって提供される縫合糸を提供する。
【0039】
縫合糸が複数のポリマーの混合物、例えば、UHMWPEと第2のポリマーの混合物から形成されるとき、その第2のポリマーは縫合糸の製造に適していることが知られた任意のポリマーでよい。1実施例においては、この第2のポリマーはポリプロピレンである。よって本願開示は1実施例において上述の通りUHMWPEを含み、残りはマルチフィラメントポリプロピレンストランドによって提供される縫合糸を提供する。
【0040】
1実施例において、フィラメントを形成するのに使用されるポリマー、すなわちマルチフィラメントストランドを形成するのに使用されるポリマーは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPEともいう)あるいはポリアミド6,6(ナイロンともいう)から選択できる。通常ではマルチフィラメントストランドはUHMWPEまたはナイロンから形成されるであろうが、ナイロンフィラメントをUHMWPEフィラメントと組み合わせて、ハイブリッドマルチフィラメントストランド(時に異種ストランド(heterologous strand)ともいう)を形成することも可能である。これら超高分子量ポリエチレン分子は、メタロセン触媒を利用する合成プロセスによって高密度ポリエチレン(HDPE)のものよりも数段に長い。典型的には1分子あたり100,000から250,000のモノマーユニットを有するUHMWPEが、ポリマー鎖につき700から1800モノマーを有するHDPE分子と比較される。UHMWPEフィラメントとマルチフィラメントは、ゲルスピニング(ゲル紡糸)として知られるプロセスによって製造されるが、そのプロセスではUHMWPEの加熱されたゲルがスピナレットから押し出される。その押出成型物は空中で延伸加工されて水槽内で冷却される。結果物は高度の分子配向性を有したファイバであり、よって優れた引張強度を有している。
【0041】
UHMWPEで形成されたマルチフィラメントストランドは商業的に入手が可能である。例えば、適したUHMWPEマルチフィラメントストランドは、DyneemaTMUHMWPEファイバを販売しているDSM company(DSM Biomedical group,エクストン,ペンシルベニア州,米国)と、SpectraTMUHMWPEファイバを販売するHoneywell company(Advanced Fibers and Composites group,コロニアル ハイツ,バージニア州,米国)から商業的に入手できる。UHMWPEの製造は、例えば米国特許4,413,110に記載されている。同様に、ナイロンから形成されるマルチフィラメントストランドも商業的に入手できる。例えば、適したナイロンストランドはMonosuisse AG(エメンブルック,スイス)から商業的に入手できる。
【0042】
本願開示は、共に編成されている複数の高度に撚られた(例えば、200から300ターン/m)マルチフィラメントストランドを含んだ材料から形成されるスリーブを含んだ外科用縫合糸を提供する。編成処理プロセス中に、キャリアブレーダのオペレータは織密度(tightness of the weave)に影響を及ぼす編成条件を選択するであろう。編成物は非常に高い織密度を有することができ、構成要素のストランドは相互に固く保持されて移動できないようにされており、あるいは対極的な観点では編成物は非常に低い織密度を有することができ、構成要素のストランドは所定の位置にラフに保持されるだけであり、相互に容易にスライドできる。織密度は、インチ(またはcm)あたりのプリーツ数あるいはインチ(またはcm)あたりのピック数など幾つかの形態で表現が可能であり、普通はそれらで表わされており、それらの用語は当該技術分野で互換的に使用されている。
【0043】
よって、編成物を説明する際に、従来方式に従えば、ピック(またはピック)/インチ(またはcm)によって部分的に定義することができる。“ピック”とは1つのストランドの別ストランドとの交差として定義され、ピック数は長手軸を交差する数でカウントされる。ピック/インチの値が大きくなるほど、編成物の織密度は高くなる。またピック/インチの値が増加すると、さらに多くのストランドが編成物のインチあたりの製造に消費される。よって、典型的には、その他の条件が全て等しければ、相対的に大きいピック/インチの値を有した編成物の織加工には長時間を要する。また相対的に大きいピック/インチの値を有する編成物は一般的にさらに剛質になり、柔軟性が低くなる。
【0044】
カバー編成物には、通常では12、16、20、24または32のストランドが存在する。右に回転するストランドは“Z形”ストランドと称することができ、左に回転するストランドは“S形”ストランドと称することができる。ここで提供される編成スリーブにおいては、ピックカウントは、サイクル長で除算した1サイクル長で1方向に回転するストランドの数を考察することによって決定できる。換言すれば、ピックカウントはピック/インチ(PPI)で表現されるが、これは編成物長のインチあたりに特定のストランドが交差する回数を表している。
【0045】
マルチフィラメントストランドを含んだ本願開示のスリーブの編成物の程度は、編成物のプリーツ/cm(またはピック/cm)の観点で報告され(いずれの場合も“ppc”)、様々な実施態様ではこれは6を超え、または7を超え、または8を超え、または9を超え、または10を超え、または11を超え、または12を超え、または13を超え、または14を超え、または15を超え、または16を超え、または17を超え、または18を超え、または19を超え、または20を超え、または21を超え、または22を超え、または23を超え、または24を超え、または25を超え、または26を超え、または27を超え、または28を超え、または29を超える。上限値に関しては、本願発明の利点は、様々な実施態様において、30を下回る、または29を下回る、または28を下回る、または27を下回る、または26を下回る、または25を下回る、または24を下回る、または23を下回る、または22を下回る、または21を下回る、または20を下回る、または19を下回る、または18を下回る、または17を下回る、または16を下回る、または15を下回るピック/cmによって特徴付けられる編成物によって観察される。例えば、好適範囲は、ターン/cmで測定した10から24、または10から22、または10から20、または10から18、または10から17、または10から16、または11から24、または11から22、または11から20、または11から18、または11から17、または11から16、または12から24、または12から22、または12から20、または12から18、または12から17、または12から16、または13から24、または13から22、または13から20、または13から18、または13から17である。
【0046】
ストランドは一定のプリーツ/インチ(ppi)で共に編成される。プリーツ/インチは当該技術分野においてピック/インチと同様に言及され、時にはピックカウントと称される。様々な実施態様においてppiは20、または25、または30、または35、または40の下限値を有するであろうし、60、または55、または50、または45の上限値を有するであろう。例えば,ppiは20から60、または30から50、または35から45の範囲であることができる。
【0047】
インチであろうがcmであろうが、単位長あたりのプリーツは典型的には拡大鏡の助けを借りて視認によって計測される。拡大鏡は小型装置に組み込まれることができ、編成縫合糸はそれを通過し、その間にピックカウントが評価される。Carton(Carton Optical Industries, Ltd,東京、日本)はこの目的に適したScale Loupe 10xを製造する。
【0048】
1実施例においては、本願開示は特定サイズの非吸収性外科用縫合糸を提供する。ここで使用されている縫合糸サイズは合衆国薬局方(USP)で確立された規定に従っており、時にUSP-FNと称される。よって、非吸収性縫合糸サイズUSP0は平均径が0.35から0.399mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP1は平均径が0.40から0.499mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP2は平均径が0.50から0.599mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP3とUSP4は平均径が0.60から0.699mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP5は平均径が0.70から0.799mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP6は平均径が0.80から0.899mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP7は平均径が0.90から0.999mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP8は平均径が1.00から1.099mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP9は平均径が1.100から1.199mmの範囲を有し、縫合糸サイズUSP10は平均径が1.200から1.299mmの範囲を有している。
【0049】
外科用縫合糸のサイズは、縫合糸サイズを測定する目的で設計されている機器によって測定できる。そのような機器は直径測定器と呼ぶことができる。そのような機器の一例はMahr GmbH(Mahr Federal Inc.,ゲッティンゲン,ドイツ)によって製造されるMilimar 01である。直径の測定値は典型的には10から20の間に存在し、それらの値は平均化されて外科用縫合糸サイズが提供される。
【0050】
本願開示はまたUSPサイズ0未満を有した非吸収性縫合糸も提供する。例えば、縫合糸または縫合糸ストックはサイズ2-0であり、平均径0.30から0.339mmに対応し、またはサイズ3-0であり、平均径0.20から0.249mmに対応し、またはサイズ4-0であり、平均径0.15から0.199mmに対応し、またはサイズ5-0であり、平均径0.1から0.149mmに対応し、あるいはさらに小さなサイズでよい。
【0051】
縫合糸は典型的には縫合糸ストックと呼ばれる長形材料から所望長の材料をカットすることにより製造される。縫合糸ストックは典型的にはスプールに巻き付けられた何十メートルあるいは何百メートルの単位である。縫合糸ストックはキャリアブレーダによって製造される製品である。よって、キャリアがマルチフィラメントをスリーブ形状に編成するとき、このスリーブ形態が縫合糸ストックである。実際の縫合糸を形成するには、所望長、例えば1mすなわち100cmの縫合糸ストックの一部がストックからカットされる。前述の縫合糸特性および上述の縫合糸の製造方法も縫合糸ストックの特性と製造プロセスに適用される。
【0052】
一貫した均一径が商業的に成功する縫合糸の必要な特徴である。商業的に受け入れ可能な縫合糸の高生産性を提供するため、縫合糸ストックは、その長手方向に沿って一貫した均一径を有しなければならない。もし縫合糸ストックが、製造されている縫合糸のためのUSPによって特定された範囲内ではない直径の箇所を有するならば、それら箇所は無駄材料(廃棄材料)を発生させる。本願開示は、その長手方向に沿って高レベルの直径一貫性を備えた縫合糸ストックを提供する。
【0053】
特には、縫合糸ストックを形成するためのマルチフィラメントファイバの編成が、隣接縫合糸ストックに特徴的である所望径を大きく超えて縫合糸ストックの直径が膨出する結果を招く可能性があることが観察されている。この非均一性の原因は明確ではない。多少なりとも追加の応力をマルチフィラメントストランドおよび得られる編成物に印加することになる編成プロセス中に、恐らくは、マルチフィラメントストランドの構成ファイバの一部が破断し、巻き付き、自身および近隣のフィラメントと絡まり、時には伸びて近隣ストランドに巻き付き、及び/又は絡まることが考えられる。そのような不均整な現象は、縫合糸ストックに沿った、フィラメントが束状になって膨出部(隆起)または小塊を形成する箇所を発生させ、所望範囲を大きく超える直径を有する箇所を縫合糸ストックに発生させるかも知れない。マルチフィラメントストランドが本明細書で説明している程度に撚られ、続いて、本明細書で説明しているピック/インチを提供する割合と織密度で編成される本願開示のプロセスは、膨出部または小塊が縫合糸ストック内に存在する箇所が減少していることが測定された、直径の均一性の改善された程度を有する縫合糸ストックを提供する。このプロセスはまた、強度、柔軟性、および結節強度などの観点の所望特性を有した縫合糸を形成するようにカットできる縫合糸ストックも提供する。
【0054】
よって、本願発明者は、縫合糸のサイズ、例えば、合衆国薬局方により特徴付けられた縫合糸サイズ、通常はppi(プリーツ(またはピック)/インチ)で表わされる織密度と、通常はtpm(ターン/m)で表わされるマルチフィラメントストランドの撚りとの間に、関係が存在することを発見した。これらパラメータの適切な選択によって、さらに効率的な製造プロセス、すなわち、さらに高い所望製品の一貫性を提供する製造プロセスが得られる。本願開示の縫合糸はこの効率的な製造プロセスの結果である。本願開示により製造される縫合糸ストックから切断された縫合糸はスペックから外れている場合が少なく、よって無駄の発生が少ない。
【0055】
マルチフィラメントストランドのフィラメントの撚りの度合いが増加すると、増加した量の応力がフィラメントにかけられ、幾分かの不都合な弱体化をストランドに引き起こす。マルチフィラメントストランド内のフィラメントの撚り度合いが減少すると、マルチフィラメントが結束状態を保つための拘束力が減少し、スペックを外れた材料の製造の発生が増加する。織物内でのストランドのプリーツ密度が増加すると、高密度の織物を発生するためにストランドにかかる応力によって、スリーブはさらに剛質になり、すなわち柔軟性が減少し、実際に弱くなり、破断の可能性が高まる。プリーツの密度が減少すると、スリーブは嵩を減少させ、縫合糸はそのUSPサイズの特徴を維持できないであろう。本願開示は、マルチフィラメントストランドの特性をさほど犠牲にせず、縫合糸のサイズ要件を満たしつつ、スペックを外れた材料の製造を大きく減少させるように、好適範囲のマルチフィラメントの撚りと、縫合糸の特定サイズのための編成プリーツ密度を含んだプロセスを提供する。
【0056】
例えばUSPサイズ1-4を有した、例えばUSPサイズ2を有した縫合糸を製造するとき、本願開示は、構成フィラメントが150から350ターン/mで共に撚られたマルチフィラメントストランドを有した外科用縫合糸ストックを使用するプロセスを提供し、さらに対応する外科用縫合糸ストックを提供し、そのストランドは8から24プリーツ/cmを有したスリーブの形態に編成される。オプションで、USPサイズ1-4の縫合糸のために、構成フィラメントは170から330ターン/mで共に撚られ、それらストランドは9から23プリーツ/cmまたは11から19プリーツ/cmを有したスリーブの形態に編成される。別オプションとして、USPサイズ1-4の縫合糸では、構成フィラメントは190から310ターン/mで共に撚られ、それらストランドは、9から23プリーツ/cm、または11から19プリーツ/cm、または12から16プリーツ/cmを有したスリーブの形態に編成される。
【0057】
本願開示は、典型的にはマルチフィラメントストランド製造業者によって提供されるものより大きな程度の撚りを有したマルチフィラメントストランドを編成するプロセスを提供し、よって、そのような高度に撚られたマルチフィラメントストランドを取り込んだ外科用縫合糸ストックを提供する。
【0058】
改善された縛りと結びの特性を有した編成された縫合糸を提供するため(例えば、US特許4,105,034(ポリアルキレンオキサレートコーティング)、3,942,532(脂肪族ポリエステルコーティング)、3,390,681(ポリテトラフルオロエチレンコーティング)、3,187,752(シリコーンコーティング)、2,734,506(ポリアクリレートコーティング)参照)及び/又は組織を通る縫合糸のスムーズな通過(時にグライド(滑走)と称す)を向上させるため(例えば、US特許4,043,344(縫合糸潤滑剤としてポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーの使用を開示)、2,576,576(レシチンが潤滑膜として使用可能)、および1,254,031(粗い縫合糸にスムーズで均質なコーティングを提供するためのコラーゲンコーティングを開示)参照)、及び/又は縫合糸の細菌感染を減少させるためにコーティングをマルチフィラメントストランド上に塗膜できる。モノフィラメント縫合糸に比べて編成縫合糸は、フィラメントとストランドとの間の間隙がファイバに沿った病原菌を拡散させるため、毛細管現象による汚染の増進のリスクが大きい。トリクロサンは編成縫合糸にコーティングできる代表的な抗菌剤である。
【0059】
ストランドは様々な色調にすることができる。例えば、ストランドは自然色でよい。すなわち染料や顔料は一切加えられない。自然色とは典型的には白色である。ストランドは染色することも、顔料を含んで製造することもできる。黒、緑、青および赤を含んで様々な色彩のストランドが商業的に入手できる。本願開示の縫合糸と縫合糸ストックは複数の色を含むことができる。例えば、縫合糸は主として自然色のストランドから製造でき、そこに1色または2色のストランドが加えられている。これら有色ストランドは時にマーカと称される。
【0060】
ストランド製造業者はフィラメントを結束状態に保つためにストランドに十分な撚りを付与するであろう。製造業者撚りとでも称すべきそのような撚りは典型的には3ターン/インチの程度でよい。本願開示によれば、フィラメントを結束状態にさせておくのに必要な撚りを超えて追加の撚りがストランドに付与される。本願開示は、様々な実施態様において、3.5ターン/インチを超える、または4ターン/インチを超える、または4.5ターン/インチを超える、または5ターン/インチを超える、または5.5ターン/インチを超える撚り値を有したストランドを使用する。そのストランドは、様々な実施態様において、典型的には、7、または6.5、または6、または5.5である最大ターン/インチを有するであろう。例えば本願開示の縫合糸ストックの製造で利用されるストランドの撚りは4から6ターン/インチの範囲でよい。
【0061】
本願開示のマルチフィラメントストランドを特徴づけるのに使用できるヤーンの通常の特徴はヤーンの線密度である。ヤーンの線密度は時にヤーンカウントとも称される。ヤーンカウントはテックスまたはデニールの単位で一般的に報告される。近似値として当該分野ではストランドの太さを表すのにデニール(またはテックス)がしばしば使用される。例えば100デニールのストランドは、ストランドの全ての他の特徴が等しければ、50デニールのストランドの直径の略2倍の太さを有する。デニールと太さを同等に扱うことは、それ以外は等しい2つのファイバを比較するときにのみ適している。
【0062】
さらに正確に記せば、ヤーンのカウント(または線密度)は、任意に画定された(しかし当該分野では標準であり特定の)ストランド長の重量を提供することにより、あるいはヤーンの画定された重量が拡張され得る長さを提供することにより特徴づけられる。これまで線密度を説明するために多数の異なる取り決めが採用されてきた。議論の余地は残されているものの、今日、デニールとテックスは2つの最も一般的に利用されている取り決めであり、デニールはテックスの英語系の同義語であり、テックス(またはdテックス)がメートル法では普通に使用される。テックスは1000mのヤーンにみられるヤーンの質量(グラムで測定)のことである。dテックスとは10000mのヤーンにみられるヤーンの質量(グラムで測定)のことである。デニールは9000mの長さのグラムで報告されるヤーンの質量である。デニールは自然基準に基づいており、絹の単ストランドは約1デニールであり、絹の9000mのストランドは約1gの重量である。参考までに、典型的には人毛は20デニール程度である。
【0063】
10000mのヤーンをスプールに巻き取り、それを重量測定することは不便である。さらに便利に実行するには、10mのヤーンを引き出し、その長さのヤーンをボール状に丸め、続いてミリグラムの単位で重量を報告する秤でそのボールを重量測定することでdテックスが決定できる。ミリグラムでの重量はデシテックス(dテックス)単位のヤーンのカウントに等しくなるであろう。
【0064】
さらに多く撚られたヤーン(またはマルチフィラメント)はさらに高い密度/単位長を有する傾向にあり、よって、マルチフィラメントストランドのデニール値は、マルチフィラメントストランドの撚りの程度が増加するにつれて幾分かは増加するであろう。
【0065】
所望USPサイズを有した縫合糸を提供するためには、ストランドのデニールおよび編成物を形成するのに使用されたストランドの数はそれぞれ好適に選択されなければならない。幾分かの試行錯誤が必要である。本願開示に従ってUSPサイズ2の中空編成物が、それぞれ100デニールである16のストランドから製造できるが、そのデニール値は、約120ターン/mの製造業者撚りを有したストランドで測定される。すなわち、本願開示に従ってマルチフィラメントストランドに増強撚りを付与する前に測定される。そのような編成物は16キャリアブレーダで便利に処理できる。あるいは、それぞれがさらに高いデニール値のさらに少ないストランドを採用すること、あるいはそれぞれが低いデニール値のさらに多いストランドを採用することができる。例えば、本願開示に従ってUSPサイズ2の中空編成物を、それぞれが150デニールである12のストランドから準備できる。
【0066】
ある程度、特定デニール値を有した特定数のストランドがUSP2の縫合糸(または任意の別サイズの縫合糸)を提供するか否かは、ピック/インチで測定された(またはピック/cmで測定された)編成物を形成する織密度により決定されるであろう。1実施例においては、本願開示はマルチフィラメントの撚りを約200から300ターン/mに、編成織りを約12から18ピック/cmに設定し、そのストランドの編成数とデニールを調節し、必要とされるサイズの縫合糸を提供する。縫合糸を形成するのに使用されるキャリアブレーダの性能(すなわち、例えば8キャリアブレーダであるか、または12キャリアブレーダであるか、等々)は、縫合糸を形成するのに使用されることが想定されるストランド数に基づいて選択されるが、キャリアブレーダ上の全ての位置がマルチフィラメントストランドのスプールによって占められなければならないことはなく、所定のサイズのキャリアブレーダがキャリアの数には至らないスプールを保持することができることは想定内である。
【0067】
本願開示の1実施例においては、縫合糸ストックとそれから製造される縫合糸はナイロンストランドと超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ストランドとから製造される。このナイロンストランドは全体的にナイロンフィラメント製であり、そのナイロンフィラメントは全体的または実質的にポリアミド6,6として知られるナイロン製である。同様に、そのUHMWPEストランドは全体的にUHMWPEフィラメントであり、そのUHMPEフィラメントは全体的または実質的にUHMWPE製である。その縫合糸は、ナイロンフィラメントとUHMWPEフィラメントのブレンドから製造されたストランドから製造できるが、そのようなストランドはストランド供給者から商業的に入手することが困難であり、その理由によって本願開示における使用には向いていない。
【0068】
よって、1つの特徴形態において、本願開示は中空編成管体を含んだ芯なしのサイズUSP2の外科用縫合糸を提供しており、この編成管は複数のストランドを含んだ構成要素から形成されており、このストランドは30から50の間のプリーツ/インチで共に編成されており、ストランドの75%未満がUHMWPEストランドであり、ストランドの25%超がナイロンストランドであり、これらストランドは3.5から6の間の撚りを有している。ストランドの数とそれぞれのストランドのデニールは、所望サイズの縫合糸を提供するように選択される。例えば、縫合糸は全部で16のストランドから製造でき、その11のストランドはUHMWPEストランドであり、その5のストランドはナイロンストランドであり、それぞれのストランドは約100デニールである。あるいは、縫合糸は12のストランドから製造でき、その8のストランドはUHMWPEストランドであり、その4のストランドはナイロンストランドであり、それぞれのストランドは約150デニールである。本明細書の教示に基づき、専門の技術者であれば、編成管が所望縫合糸サイズの複数のストランドを含んだ構成要素から形成されている、芯なしの中空編成管を含んだ外科用縫合糸ストックと外科用縫合糸を製造することができるであろう。
【0069】
以下の例は代表的なものであり、本願開示を限定するものではない。
【0070】
実施例
実施例1
USP2縫合糸
HUMWPEファイバの11のエンドとナイロンファイバの5のエンドを使用して編成縫合糸を製造するのにハイド社(Hyde)の16ブレーディングマシンが使用された。16のキャリアの中で8のキャリアは左に移動し、8のキャリアは右に移動した。UHMWPEの8のスプール(パッケージとも呼称)は右に移動し、UHMWPEの3のスプールとナイロンの5のスプールは左に移動した。5のナイロンパッケージの中で、3は青であり、2は自然色であった。それら3のカラーストランドは編成物上で前後に並べられ、山形紋(シェブロン;chevron)効果を提供した。芯は使用されなかった。そのナイロンは第1品質であり、原色白色であり、高い強靭性(68.0cN/テックス)のdテックス110(100デニール)を備えていた。そのUHMWPEは同様に100デニールであった。編成に先立ってナイロンストランドが300ターン/mに撚られ、UHMWPEストランドは200ターン/mに撚られた。ハイドブレーダキャリアで65mmホールオフ(haul-off)の22/68ギヤ比を使用して43プリーツ/インチ(17プリーツ/cm)の編成物が得られた。この編成物は最上部ボビンに巻き上げられ、すなわちローディングされた。縫合糸ストックの総デニールは1816であった。複数の測定値の平均に基づき、ノットプル(結節引張;knot pull)は13.4kgであり、破断荷重は27.4kgであり、破断荷重%は15.3であった。平均径は0.533であった。これはUSPサイズ2に相当する。
【0071】
実施例2
USP5(ep7)縫合糸
HUMWPEファイバの12のエンドとナイロンファイバの4のエンドを使用して編成縫合糸を製造するのにハイド社の16ブレーディングマシンが使用された。16のキャリアの中で8のキャリアは左に移動し、8のキャリアは右に移動した。UHMWPEの8のスプール(パッケージとも呼称)は右に移動し、UHMWPEの4のスプールとナイロンの4のスプールは左に移動した。4のナイロンパッケージの中で、2は青であり、2は自然色であった。それら2のカラーストランドは編成物上で前後に並べられ、山形紋効果を提供した。芯は使用されなかった。そのナイロンは第1品質であり、原色白色(青に染色された場合を除く)であり、約100デニールの高い強靭性(68.0cN/dテックス110)を備えていた。そのUHMWPEは同様に100デニールであった。編成に先立ってナイロンストランドが300ターン/mに撚られ、UHMWPEストランドは200ターン/mに撚られた。ハイドブレーダキャリアで50mmホールオフの30/60ギヤ比を使用して37プリーツ/インチ(14.5プリーツ/cm)の編成物が得られた。この編成物は最上部ボビンに巻き上げられ、すなわちローディングされた。縫合糸ストックの総デニールは3040であった。ノットプルは23.5kgであった(複数試験の平均)。破断荷重は41.3kgであり(複数試験の平均)、破断荷重%は29.4であった(複数試験の平均)。平均径は0.761であった。これはUSPサイズ5に相当する。
【0072】
本明細書において言及されている全ての刊行物および特許は、例えば、本明細書で説明している発明に関連して利用が可能である刊行物において説明されている材料および方法を解説および開示する目的で、それらの内容全体をここに援用する。上述並びに本明細書を通じて説明している刊行物は本願の出願日前の開示のためのみに提供されている。本願明細書の記載内容は、先行発明の結果として引用された刊行物に先行する資格を有していないと発明者が認めていると解釈されるべきではない。
【0073】
以上説明した様々な実施例は組み合わされて別形態の実施例を提供できる。さらに別な実施例を提供するために様々な特許、特許出願物および刊行物の構想の採用に必要であれば、それら実施例の特徴は変更が可能である。それら変更およびその他の変更は上述を詳細な説明を参考にして実施例に取り入れることができる。一般に、以下の請求項において使用されている用語は、本明細書および請求項に開示されている特定実施態様に請求の範囲を制限するようには解釈されるべきではなく、請求項が権利として有する均等の全範囲と共に全ての可能な実施態様を含むように解釈されるべきである。従って、それら請求項は開示内容によっては制限を受けない。