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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】積込機械の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20220308BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/20 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018015820
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019132064
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西郷 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126182(WO,A1)
【文献】特開2002-115271(JP,A)
【文献】特開2002-167794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0016767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械を制御する制御装置であって、
積込対象より高くかつ下方に前記積込対象が存在しないバケット位置である干渉回避位置を特定する回避位置特定部と、
前記旋回中心から前記作業機へ伸びる直線と前記旋回中心から前記干渉回避位置へ伸びる直線とが上方からの平面視においてなす残り旋回角度と、前記干渉回避位置の高さとに基づいて、旋回開始タイミングを決定するタイミング決定部と、
前記旋回開始タイミングに至っていない場合に、前記作業機の操作信号を出力し、前記旋回開始タイミングに至った場合に、前記旋回開始タイミングに至っていないときより速い旋回速度で前記旋回体を旋回させる操作信号および前記作業機の操作信号を出力する操作信号出力部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記残り旋回角度の旋回に要する必要旋回時間を特定する旋回時間特定部と、
前記バケット位置の高さが前記干渉回避位置の高さに到達するまでの到達時間を特定する到達時間特定部と、
を備え、
前記タイミング決定部は、前記到達時間と前記必要旋回時間とに基づいて、前記旋回開始タイミングを決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記バケット位置の高さが前記干渉回避位置の高さに到達するまでの到達時間を特定する到達時間特定部と、
前記到達時間で旋回可能な推定旋回角度を特定する角度推定部と
を備え、
前記タイミング決定部は、前記推定旋回角度と前記残り旋回角度とに基づいて、前記旋回開始タイミングを決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記残り旋回角度の旋回に要する必要旋回時間を特定する旋回時間特定部と、
前記必要旋回時間で前記バケット位置の高さが上昇可能な推定バケット高さを特定する高さ推定部と、
を備え、
前記タイミング決定部は、前記推定バケット高さと前記干渉回避位置の高さとに基づいて、前期旋回開始タイミングを決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
積込対象より高くかつ下方に前記積込対象が存在しないバケット位置である干渉回避位置を特定するステップと、
前記旋回中心から前記作業機へ伸びる直線と前記旋回中心から前記干渉回避位置へ伸びる直線とが上方からの平面視においてなす残り旋回角度と、前記干渉回避位置の高さとに基づいて、旋回開始タイミングを決定するステップと、
前記旋回開始タイミングに至っていない場合に、前記作業機の操作信号を出力するステップと、
前記旋回開始タイミングに至った場合に、前記旋回開始タイミングに至っていないときより速い旋回速度で前記旋回体を旋回させる操作信号および前記作業機の操作信号を出力するステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積込機械の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積込機械の自動積込制御に関する技術が開示されている。特許文献1に記載の積込機械は、掘削開始位置、放土位置、および待機位置が予め教示され、積込機械の位置が当該教示位置データに合致するように、旋回体および作業機を作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-115271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積込対象(例えば、運搬車両のベッセルや、ホッパなど)に土砂を積み込む場合、積込対象の上方において積込処理を行う必要がある。そのため、積込機械に自動積込をさせる場合、自動積込の過程においてバケットを積込対象の上方に自動移動させる必要がある。このとき、積込機械は、自動積込制御において作業機が積込対象の外殻に接触しないように、作業機及び旋回体を作動する必要がある。
本発明の目的は、積込対象の外殻に鑑みて自動積込を制御する積込機械の制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、制御装置は、旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械を制御する制御装置であって、積込対象より高くかつ下方に前記積込対象が存在しないバケット位置である干渉回避位置を特定する回避位置特定部と、前記旋回中心から前記作業機へ伸びる直線と前記旋回中心から前記干渉回避位置へ伸びる直線とが上方からの平面視においてなす残り旋回角度と、前記干渉回避位置の高さとに基づいて、旋回開始タイミングを決定するタイミング決定部と、前記旋回開始タイミングに至っていない場合に、前記作業機の操作信号を出力し、前記旋回開始タイミングに至った場合に、前記旋回開始タイミングに至っていないときより速い旋回速度で前記旋回体を旋回させる操作信号および前記作業機の操作信号を出力する操作信号出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、制御装置は、積込対象の外殻に鑑みて自動積込を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る自動積込制御方法を示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る自動積込制御方法を示すフローチャートである。
図6】到達時間と必要旋回時間との関係を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図8】第2の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図9】第3の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図10】第3の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図11】第4の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図12】第4の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図13】第4の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
〈第1の実施形態〉
《積込機械の構成》
図1は、第1の実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
積込機械100は、土砂を運搬車両などの積込対象200へ積込むため作業機械である。第1の実施形態に係る積込機械100は、油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る積込機械100は、油圧ショベル以外の積込機械であってもよい。また図1に示す積込機械100はフェイスショベルであるが、バックホウショベルやロープショベルであってもよい。積込対象200の例としては、運搬車両やホッパなどが挙げられる。
積込機械100は、走行体110と、走行体110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。旋回体120は、旋回中心を中心として走行体110に旋回自在に支持される。
【0009】
作業機130は、ブーム131と、アーム132と、バケット133と、ブームシリンダ134と、アームシリンダ135と、バケットシリンダ136と、ブーム角度センサ137と、アーム角度センサ138と、バケット角度センサ139とを備える。
【0010】
ブーム131の基端部は、旋回体120にピンを介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を収容するための容器とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にピンを介して取り付けられる。
【0011】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ135は、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ135の先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、ブーム131に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133に取り付けられる。
【0012】
ブーム角度センサ137は、ブーム131に取り付けられ、ブーム131の傾斜角を検出する。
アーム角度センサ138は、アーム132に取り付けられ、アーム132の傾斜角を検出する。
バケット角度センサ139は、バケット133に取り付けられ、バケット133の傾斜角を検出する。
第1の実施形態に係るブーム角度センサ137、アーム角度センサ138、およびバケット角度センサ139は、地平面に対する傾斜角を検出する。なお、他の実施形態に係る角度センサはこれに限られず、他の基準面に対する傾斜角を検出してもよい。例えば、他の実施形態においては、角度センサは、ブーム131、アーム132およびバケット133の基端部に設けられたポテンショメータによって相対回転角を検出してもよいし、ブームシリンダ134、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136のシリンダ長さを計測し、シリンダ長さを角度に変換することで傾斜角を検出するものであってもよい。
【0013】
旋回体120には、運転室121が設けられる。運転室121の内部には、オペレータが着座するための運転席122、積込機械100を操作するための操作装置123、検出方向に存在する対象物の三次元位置を検出するための検出装置124が設けられる。操作装置123は、オペレータの操作に応じて、ブームシリンダ134の操作信号、アームシリンダ135の操作信号、バケットシリンダ136の操作信号、旋回体120の左右への旋回操作信号、走行体110の前後進のための走行操作信号を生成し、制御装置128に出力する。また操作装置123は、オペレータの操作に応じて作業機130に自動積込制御を開始させるための積込指示信号を生成し、制御装置128に出力する。積込指示信号は、バケット133の自動移動の開始指示の一例である。操作装置123は、例えばレバー、スイッチおよびペダルにより構成される。積込指示信号はスイッチの操作により生成される。例えば、スイッチが押下されたときに、積込指示信号が出力される。操作装置123は、運転席122の近傍に配置される。操作装置123は、オペレータが運転席122に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。
検出装置124の例としては、ステレオカメラ、レーザスキャナ、UWB(Ultra Wide Band)測距装置などが挙げられる。検出装置124は、例えば検出方向が積込機械100の運転室121の前方を向くように設けられる。検出装置124は、対象物の三次元位置を、検出装置124の位置を基準とした座標系で特定する。
なお、第1の実施形態に係る積込機械100は、運転席122に着座するオペレータの操作に従って動作するが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、積込機械100の外部で操作するオペレータの遠隔操作によって操作信号や積込指示信号が送信され動作するものであってもよい。
【0014】
積込機械100は、位置方位演算器125、傾斜計測器126、油圧装置127、制御装置128、旋回モータ129を備える。
【0015】
位置方位演算器125は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器125は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器125は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器125は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。
【0016】
傾斜計測器126は、旋回体120の加速度および角速度(旋回速度)を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)を検出する。傾斜計測器126は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器126は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0017】
油圧装置127は、作動油タンク、油圧ポンプ、および流量制御弁を備える。油圧ポンプは、図示しないエンジンの動力で駆動し、流量制御弁を介して旋回モータ129、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に作動油を供給する。流量制御弁はロッド状のスプールを有し、スプールの位置によって旋回モータ129、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給する作動油の流量を調整する。スプールは、制御装置128から受信する制御指令に基づいて駆動される。つまり、旋回モータ129、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給される作動油の量は、制御装置128によって制御される。上記のとおり、旋回体120と作業機130とは共通の油圧装置127から供給される作動油によって駆動する。そのため、旋回体120と作業機130とが作動しているときにブームシリンダ134、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136に供給される作動油の流量は、作業機130のみが作動しているときにブームシリンダ134、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136に供給される作動油の流量より少なくなる。
【0018】
制御装置128は、操作装置123から操作信号を受信する。制御装置128は、受信した操作信号に基づいて、作業機130、旋回体120、または走行体110を駆動させる。
【0019】
旋回モータ129は、旋回体120を旋回させるための油圧モータである。旋回モータ129は、油圧装置127から供給される作動油によって作動する。
【0020】
《制御装置の構成》
図2は、第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置128は、プロセッサ1100、メインメモリ1200、ストレージ1300、インタフェース1400を備えるコンピュータである。ストレージ1300は、プログラムを記憶する。プロセッサ1100は、プログラムをストレージ1300から読み出してメインメモリ1200に展開し、プログラムに従った処理を実行する。
【0021】
ストレージ1300の例としては、HDD、SSD、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM等が挙げられる。ストレージ1300は、制御装置128の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1400を介して制御装置128に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ1300は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0022】
プロセッサ1100は、プログラムの実行により、車両情報取得部1101、検出情報取得部1102、操作信号入力部1103、バケット位置特定部1104、積込位置特定部1105、回避位置特定部1106、残り旋回角度特定部1107、旋回時間特定部1108、到達時間特定部1109、タイミング決定部1110、操作信号生成部1111、操作信号出力部1112を備える。
【0023】
車両情報取得部1101は、旋回体120の旋回速度、位置および方位、ブーム131、アーム132およびバケット133の傾斜角、走行体110の走行速度、ならびに旋回体120の姿勢を取得する。以下、車両情報取得部1101が取得する積込機械100に係る情報を車両情報とよぶ。
【0024】
検出情報取得部1102は、検出装置124から三次元位置情報を取得し、積込対象200の位置および形状を特定する。
【0025】
操作信号入力部1103は、操作装置123から操作信号の入力を受け付ける。ブーム131の操作信号、アーム132の操作信号、バケット133の操作信号、旋回体120の旋回操作信号、走行体110の走行操作信号、および積込機械100の積込指示信号が含まれる。
【0026】
バケット位置特定部1104は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、ショベル座標系におけるアーム132の先端の位置Pおよびアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbを特定する。バケット133の最下点とは、バケット133の外形のうち地表面からの距離が最も短い点をいう。特に、バケット位置特定部1104は、積込指示信号の入力を受け付けたときのアーム132の先端の位置Pを掘削完了位置P10として特定する。図3は、第1の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。具体的には、バケット位置特定部1104は、ブーム131の傾斜角と既知のブーム131の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム131の長さの垂直方向成分および水平方向成分を求める。同様に、バケット位置特定部1104は、アーム132の長さの垂直方向成分および水平方向成分を求める。バケット位置特定部1104は、積込機械100の位置から、積込機械100の方位および姿勢から特定される方向に、ブーム131およびアーム132の長さの垂直方向成分の和および水平方向成分の和だけ離れた位置を、アーム132の先端の位置P(図1に示すアーム132の先端部のピンの位置P)として特定する。また、バケット位置特定部1104は、バケット133の傾斜角と既知のバケット133の形状とに基づいて、バケット133の鉛直方向の最下点を特定し、アーム132の先端から最下点までの高さHbを特定する。
【0027】
積込位置特定部1105は、操作信号入力部1103に積込指示信号が入力された場合に、検出情報取得部1102が特定した積込対象200の位置および形状に基づいて、積込位置P13を特定する。積込位置特定部1105は、車両情報取得部1101が取得した旋回体120の位置、方位および姿勢に基づいて積込対象200の位置情報が示す積込点P21を現場座標系からショベル座標系に変換する。積込位置特定部1105は、特定した積込点P21から、積込機械100の旋回体120の向く方向にバケット133の中心からアーム132の先端までの距離D1だけ離れた位置を、積込位置P13の平面位置として特定する。つまり、アーム132の先端が積込位置P13に位置するとき、バケット133の中心は積込点P21に位置することとなる。したがって、制御装置128は、アーム132の先端が積込位置P13へ移動するように制御することで、バケット133の中心を積込点P21に移動させることができる。積込位置特定部1105は、積込対象200の高さHtに、バケット位置特定部1104が特定したアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbと、バケット133の制御余裕分の高さとを加算することで、積込位置P13の高さを特定する。なお、他の実施形態においては、積込位置特定部1105は、制御余裕分の高さを加算せずに積込位置P13を特定してもよい。すなわち、積込位置特定部1105は、高さHtに高さHbを加算することで、積込位置P13の高さを特定してもよい。
【0028】
回避位置特定部1106は、積込位置特定部1105が特定した積込位置P13と、車両情報取得部1101が取得した積込機械100の位置と、検出情報取得部1102が特定した積込対象200の位置および形状に基づいて、作業機130が積込対象200と干渉しない点である干渉回避位置P12を特定する。干渉回避位置P12は、積込位置P13と同じ高さを有し、かつ旋回体120の旋回中心からの距離が、当該旋回中心から積込位置P13までの距離と等しく、かつ下方に積込対象200が存在しない位置である。つまり、干渉回避位置P12は、積込対象200より高くかつ下方に積込対象200が存在しない位置である。
回避位置特定部1106は、例えば、旋回体120の旋回中心を中心とし、当該旋回中心と積込位置P13との距離を半径とする円を特定し、当該円上の位置のうち、バケット133の外形が平面視で積込対象200と干渉せず、かつ積込位置P13に最も近い位置を、干渉回避位置P12と特定する。回避位置特定部1106は、積込対象200の位置および形状、ならびにバケット133の既知の形状に基づいて、積込対象200とバケット133とが干渉するか否かを判定することができる。ここで、「同じ高さ」、「距離が等しい」とは、必ずしも高さまたは距離が完全に一致するものに限られず、多少の誤差やマージンが許容されるものとする。
【0029】
残り旋回角度特定部1107は、旋回中心からアーム132の先端へ伸びる直線と旋回中心から干渉回避位置P12へ伸びる直線とが上方からの平面視においてなす残り旋回角度を特定する。なお、旋回中心からアーム132の先端へ伸びる直線と旋回中心から干渉回避位置P12へ伸びる直線とが上方からの平面視においてなす角度は、旋回中心からアーム132の先端へ伸びる直線の水平成分と旋回中心から干渉回避位置P12へ伸びる直線の水平成分とがなす角度、および旋回中心とアーム132の先端とを含む垂直面と旋回中心と干渉回避位置P12とを含む垂直面とがなす角度と等しい。
【0030】
旋回時間特定部1108は、残り旋回角度特定部1107が特定した残り旋回角度の旋回に要する必要旋回時間を特定する。旋回時間特定部1108は、予め旋回体120の旋回をモデル化しておき、残り旋回角度と、旋回体120を最大の動作量で作動させる操作信号を出力したときの旋回体120の加速度と、旋回体120の最高角速度とに基づいて、必要旋回時間を特定する。
【0031】
到達時間特定部1109は、旋回体120と作業機130とが作動している場合にアーム132の先端の高さが干渉回避位置P12の高さに到達するまでの到達時間を特定する。例えば、到達時間特定部1109は、以下の方法で到達時間を特定する。
到達時間特定部1109は、アーム132の先端が干渉回避位置P12の高さに到達するときのブームシリンダ134、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136の長さを特定する。到達時間特定部1109は、ブームシリンダ134、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136の現在の長さと、アーム132の先端が干渉回避位置P12の高さに到達するときのブームシリンダ134、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136の長さとの差から、アーム132の先端が干渉回避位置P12の高さに到達するまでに必要な作動油の体積を特定する。そして、到達時間特定部1109は、特定された作動油の体積を作業機130に供給される作動油の流量で除算することで、アーム132の先端の高さが干渉回避位置P12の高さに到達するまでの到達時間を特定する。
なお、上記計算に用いられる作業機130に供給される作動油の流量は、作業機130のみが作動しているときに作業機130に供給される流量ではなく、旋回体120と作業機130とが作動しているときに作業機130に供給される流量である。すなわち、到達時間特定部1109は、旋回体120と作業機130とが作動しているときに油圧ポンプは旋回体120と作業機130との両方に作動油を供給しており、このとき油圧ポンプから作業機130側へ流れる作動油の流量を用いて、到達時間を特定する。当該流量は、例えば、平均的な作業時の実測値から求められた値であってもよいし、積込機械100のエンジン馬力とポンプ圧とに基づいて算出された値であってもよいし、積込機械100のエンジン回転数とポンプ容量とに基づいて算出された値であってもよいし、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136の速度から算出された値であってもよい。
【0032】
タイミング決定部1110は、旋回時間特定部1108が特定した必要旋回時間と、到達時間特定部1109が特定した到達時間とに基づいて、旋回開始タイミングを決定する。具体的には、タイミング決定部1110は、到達時間が必要旋回時間未満になったときに、その時点を旋回開始タイミングに決定する。なお、旋回開始タイミングにおいては、アーム132の先端は、旋回開始位置P11に位置することとなる。
【0033】
操作信号生成部1111は、操作信号入力部1103が積込指示信号の入力を受け付けた場合に、積込位置特定部1105が特定した積込位置P13、回避位置特定部1106が特定した干渉回避位置P12、およびタイミング決定部1110が決定する旋回開始タイミングに基づいて、バケット133を積込位置P13まで移動させるための操作信号を生成する。すなわち、操作信号生成部1111は、掘削完了位置P10から、旋回開始位置P11および干渉回避位置P12を経由して、積込位置P13に到達するように、操作信号を生成する。操作信号生成部1111が生成する操作信号は旋回体120の操作信号と作業機130の操作信号を含む。旋回体120の操作信号は旋回モータ129を駆動するための旋回操作信号であり、作業機130の操作信号は、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136の少なくとも1つを伸縮して作業機130を作動させるための(作業機)操作信号である。また、操作信号生成部1111は、ブーム131およびアーム132が駆動してもバケット133の対地角度が変化しないように、バケット133の操作信号を生成する。また、操作信号生成部1111は積込位置P13到達後に積込動作をさせる操作信号を生成する。
【0034】
操作信号出力部1112は、操作信号入力部1103に入力された操作信号、または操作信号生成部1111が生成した操作信号を、油圧装置127に出力する。なお、操作信号生成部1111は、旋回開始タイミングに至っていない場合に旋回体120の操作信号を生成せずに作業機130の操作信号を生成し、旋回開始タイミングに至った場合に、旋回体120の操作信号および作業機130の操作信号を生成する。したがって、操作信号出力部1112は、旋回開始タイミングに至っていない場合に、旋回体120の操作信号を出力せずに作業機130の操作信号を出力し、旋回開始タイミングに至った場合に、旋回体120の操作信号および作業機130の操作信号を出力する。
【0035】
《動作》
積込機械100のオペレータは、積込機械100と積込対象200とが積込処理可能な位置関係にあると判断すると、操作装置123のスイッチをONにする。これにより、操作装置123は、積込指示信号を生成し出力する。
【0036】
図4図5は、第1の実施形態に係る自動積込制御方法を示すフローチャートである。制御装置128は、オペレータから積込指示信号の入力を受け付けると、図4図5に示す自動積込制御を実行する。
【0037】
車両情報取得部1101は、旋回体120の位置および方位、ブーム131、アーム132およびバケット133の傾斜角、ならびに旋回体120の姿勢および旋回速度を取得する(ステップS1)。車両情報取得部1101は、取得した旋回体120の位置および方位に基づいて、旋回体120の旋回中心の位置を特定する(ステップS2)。また検出情報取得部1102は、検出装置124から、積込対象200の三次元位置情報を取得し、三次元位置情報から積込対象200の位置および形状を特定する(ステップS3)。
【0038】
バケット位置特定部1104は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、積込指示信号の入力時のアーム132の先端の位置P、およびアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbを特定する(ステップS4)。バケット位置特定部1104は、当該位置Pを掘削完了位置P10と特定する。
【0039】
積込位置特定部1105は、ステップS1で取得した旋回体120の位置、方位および姿勢に基づいて検出情報取得部1102が取得した積込対象200の位置情報を現場座標系からショベル座標系に変換する。積込位置特定部1105は、検出情報取得部1102が特定した積込対象200の位置および形状に基づいて、積込位置P13の平面位置を特定する(ステップS5)。このとき、積込位置特定部1105は、積込対象200の高さHtに、ステップS4で特定したアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbと、バケット133の制御余裕分の高さとを加算することで、積込位置P13の高さを特定する(ステップS6)。
【0040】
回避位置特定部1106は、旋回中心から積込位置P13までの平面距離を特定する(ステップS7)。回避位置特定部1106は、旋回中心から特定した平面距離だけ離れた位置であって、バケット133の外形が平面視で積込対象200と干渉せず、かつ積込位置P13から最も近い位置を、干渉回避位置P12として特定する(ステップS8)。
【0041】
操作信号生成部1111は、アーム132の先端の位置Pが積込位置P13に至ったか否かを判定する(ステップS9)。アーム132の先端の位置が積込位置P13に至っていない場合(ステップS9:NO)、操作信号生成部1111は、アーム132の先端の位置が干渉回避位置P12の近傍にあるか否かを判定する(ステップS10)。例えば、操作信号生成部1111は、アーム132の先端の高さと干渉回避位置P12の高さとの差が所定の閾値未満であり、または旋回体120の旋回中心からアーム132の先端までの平面距離と旋回中心から干渉回避位置P12までの平面距離との差が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS10)。
【0042】
アーム132の先端の位置が干渉回避位置P12の近傍にない場合(ステップS10:NO)、操作信号生成部1111は、アーム132の先端を干渉回避位置P12まで移動させるブーム131およびアーム132の操作信号を生成する(ステップS11)。このとき、操作信号生成部1111は、ブーム131およびアーム132の位置および速度に基づいて、操作信号を生成する。また、操作信号生成部1111は、アーム132の先端の位置Pが干渉回避位置P12の近傍に位置する場合に、制動時に作業機130に掛かる衝撃を軽減するために、操作量を所定の変化率に従って減少させてもよい。操作量の変化率は、変化率aに応じた値となる。
【0043】
また操作信号生成部1111は、生成したブーム131およびアーム132の操作信号に基づいてブーム131およびアーム132の角速度の和を算出し、当該角速度の和と同じ速度でバケット133を回動させる操作信号を生成する(ステップS12)。これにより、操作信号生成部1111は、バケット133の対地角を保持する操作信号を生成することができる。なお、他の実施形態においては、操作信号生成部1111は、ブーム角度センサ137、アーム角度センサ138およびバケット角度センサ139の検出値より算出されるバケット133の対地角度が、自動制御開始時の対地角度と等しくなるようにバケット133を回動させる操作信号を生成してもよい。
【0044】
アーム132の先端の位置が干渉回避位置P12の近傍にある場合(ステップS10:YES)、操作信号生成部1111は、作業機130を駆動する操作信号を生成しない。つまり、ブーム131、アーム132およびバケット133の操作信号を生成しない。
【0045】
操作信号生成部1111は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、旋回体120の旋回速度が所定速度未満であるか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、操作信号生成部1111は、旋回体120が旋回中であるか否かを判定する。
旋回体120の旋回速度が所定速度未満である場合(ステップS13:YES)、到達時間特定部1109は、アーム132の先端の高さが干渉回避位置P12の高さに到達するまでの到達時間を特定する(ステップS14)。次に、残り旋回角度特定部1107は、ステップS2で特定された旋回中心に基づいて、旋回中心からアーム132の先端へ伸びる直線と、旋回中心から干渉回避位置P12へ伸びる直線とがなす残り旋回角度を特定する(ステップS15)。旋回時間特定部1108は、残り旋回角度特定部1107が特定した残り旋回角度の旋回に要する必要旋回時間を特定する(ステップS16)。次に、タイミング決定部1110は、到達時間特定部1109が特定した到達時間が、旋回時間特定部1108が特定した必要旋回時間未満であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0046】
到達時間が必要旋回時間以上である場合(ステップS17:NO)、タイミング決定部1110は、現在時刻が旋回開始タイミングに至っていないと判定する(ステップS18)。現在時刻が旋回開始タイミングに至っていない場合、操作信号生成部1111は、旋回操作信号を生成しない。
他方、到達時間が必要旋回時間未満である場合(ステップS17:YES)、タイミング決定部1110は、現在時刻が旋回開始タイミングに至ったと判定する(ステップS19)。現在時刻が旋回開始タイミングに至った場合、操作信号生成部1111は、旋回操作信号を生成する(ステップS20)。
【0047】
旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合(ステップS13:NO)、操作信号生成部1111は、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13に到達することになるか否かを判定する(ステップS21)。なお、旋回体120は、旋回操作信号の出力の停止後、減速しながらも慣性により旋回し続け、その後停止する。現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13に到達することになる場合(ステップS21:YES)、操作信号生成部1111は、旋回操作信号を生成しない。これにより、旋回体120は減速を始める。
他方、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13より手前で停止することになる場合(ステップS21:NO)、操作信号生成部1111は、旋回操作信号を生成する(ステップS22)。
【0048】
ステップS9からステップS22の処理でブーム131、アーム132およびバケット133の操作信号、並びに旋回体120の旋回操作信号の少なくともいずれか1つを生成すると、操作信号出力部1112は、生成した操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS23)。そして、車両情報取得部1101は、車両情報を取得する(ステップS24)。これにより、車両情報取得部1101は、出力した操作信号によって駆動した後の車両情報を取得することができる。制御装置128は、処理をステップS9に戻し、操作信号の生成を繰り返し実行する。
【0049】
他方、ステップS9にて、アーム132の先端の位置が積込位置P13に至っている場合(ステップS9:YES)、操作信号生成部1111は操作信号を生成しない。したがって、アーム132の先端の位置が積込位置P13に至ると、作業機130および旋回体120は停止する。アーム132の先端の位置が積込位置P13に至っている場合(ステップS9:YES)、すなわちステップS9からステップS22の処理で操作信号生成部1111が操作信号を生成しておらず、かつ作業機130および旋回体120が静止している場合、操作信号生成部1111は、バケット133に積込動作をさせる操作信号を生成する(ステップS25)。バケット133に積込動作をさせる操作信号の例としては、バケット133を排土方向に回動させる操作信号や、バケット133がクラムバケットである場合におけるクラムシェルを開く操作信号が挙げられる。操作信号出力部1112は、生成した操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS26)。そして、制御装置128は、自動積込制御を終了する。
【0050】
ここで、図3および図6を用いて、自動積込制御時の積込機械100の動作について説明する。図6は、到達時間と必要旋回時間との関係を示す図である。
自動積込制御が開始されると、ブーム131およびアーム132は、掘削完了位置P10から旋回開始位置P11へ向けて上昇する。このとき、バケット133は、掘削終了時の対地角度を維持するように駆動する。
【0051】
図6に示すように、到達時間特定部1109は干渉回避位置P12の高さまでの到達時間tを特定し、旋回時間特定部1108は必要旋回時間ts_avoidを特定し、タイミング決定部1110は到達時間tが必要旋回時間ts_avoid未満になったか否かを判定する。必要旋回時間ts_avoidは、図6に示すように、旋回体120が残り旋回角度θs_avoidだけ旋回するのに要する時間である。
【0052】
図6に示すように、到達時間tは、アーム132の先端が干渉回避位置P12の高さに到達するために作業機130に供給する必要がある作動油の体積Vrestと、作業機130および旋回体120の作動時に作業機130に供給される作動油の最大流量Q(体積の一階微分値)と、停止時の衝撃を抑えるために設定される流量の変化率a(体積の二階微分値)とに基づいて求めることができる。具体的には、到達時間t、作動油の体積Vrest、作動油の最大流量Q、および流量の変化率aは、以下に示す式(1)を満たす。
【0053】
rest+(Q /2a)=Q・・・(1)
【0054】
到達時間tが必要旋回時間ts_avoid未満になると、アーム132の先端が旋回開始位置P11に到達したと特定されて、旋回体120は積込位置P13へ向けて旋回を開始する。このとき、アーム132の先端は干渉回避位置P12の高さに至っていないため、ブーム131およびアーム132の上昇は継続される。またこのとき、図3に示すように、旋回中心からアーム132の先端(位置P10a、位置P10b)までの距離が、旋回中心から干渉回避位置P12までの距離と異なる場合、制御装置128は、旋回中心からアーム132の先端までの距離が旋回中心から干渉回避位置P12までの距離と等しくなるように、作業機130を旋回半径方向にも移動させる。アーム132の先端が旋回開始位置P11から干渉回避位置P12へ移動する途中で、アーム132の先端の高さが干渉回避位置P12と等しくなるように、ブーム131、アーム132およびバケット133は減速する。
【0055】
アーム132の先端が干渉回避位置P12にくると、作業機130の駆動は停止する。一方、旋回体120は旋回を継続する。すなわち、干渉回避位置P12から積込位置P13までの間、アーム132の先端は、作業機130の駆動によらず、旋回体120の旋回のみにより移動する。アーム132の先端が旋回開始位置P11から積込位置P13へ移動する途中で、アーム132の先端の位置が積込位置P13と等しくなるように、旋回体120は減速する。
【0056】
アーム132の先端が積込位置P13にくると、作業機130および旋回体120の駆動は停止する。その後、バケット133が積込動作を実行する。
【0057】
上述の自動積込制御により、積込機械100は、バケット133がすくった土砂を自動的に積込対象200に積込することができる。オペレータは、作業機130による掘削と、積込指示信号の入力による自動積込制御とを、積込対象200の積載量が最大積載量を超えない程度に繰り返し実行する。
【0058】
《作用・効果》
第1の実施形態に係る積込機械100の制御装置128は、干渉回避位置P12までの残り旋回角度と干渉回避位置P12の高さとに基づいて、旋回開始タイミングを決定する。制御装置128は、現在時刻が旋回開始タイミングに至っていない場合に、旋回体120の操作信号を出力せずに作業機130の操作信号を出力する。他方、制御装置128は、現在時刻が旋回開始タイミングに至った場合に、旋回体120の操作信号および作業機130の操作信号を出力する。
作業機130が干渉回避位置P12の高さまで上昇する前に、上方からの平面視における作業機130の位置が干渉回避位置P12に至ると、作業機130が積込対象200の側面に当たる可能性がある。そのため、制御装置128は、上記の制御により、作業機130が干渉回避位置P12の高さまで上昇する前に、上方からの平面視における作業機130の位置が干渉回避位置P12に至らないよう、旋回開始タイミングを制御することで、作業機130が積込対象200に当たることを防ぐことができる。
【0059】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る制御装置128は、残り旋回角度の旋回に要する必要旋回時間と、作業機130の高さが干渉回避位置P12の高さに到達するまでの到達時間とに基づいて、旋回開始タイミングを決定する。これに対し、第2の実施形態は、他の方法で旋回開始タイミングを決定する。
【0060】
《制御装置の構成》
図7は、第2の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
第2の実施形態に係る制御装置128は、第1の実施形態の構成のうち、旋回時間特定部1108に代えて、角度推定部1113を備える。また、第2の実施形態に係るタイミング決定部1110は、第1の実施形態と異なる方法で旋回開始タイミングを決定する。
【0061】
角度推定部1113は、到達時間特定部1109が特定した到達時間で旋回可能な推定旋回角度を特定する。角度推定部1113は、例えば、予め旋回体120の旋回をモデル化しておき、旋回体120を最大の動作量で作動させる操作信号を出力したときの旋回体120の加速度と、旋回体120の最高角速度とに基づいて、推定旋回角度を特定する。なお、角度推定部1113は、到達時間と推定旋回角度とを予め関連付けたテーブルを参照して、推定旋回角度を特定してもよい。
【0062】
タイミング決定部1110は、残り旋回角度特定部1107が特定した残り旋回角度と、角度推定部1113が特定した推定旋回角度とに基づいて、旋回開始タイミングを決定する。具体的には、タイミング決定部1110は、推定旋回角度が残り旋回角度未満になったときに、その時点を旋回開始タイミングに決定する。
【0063】
《動作》
図8は、第2の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
第2の実施形態に係る制御装置128は、第1の実施形態におけるステップS16およびステップS17に代えて、以下のステップS101およびステップS102を実行する。
【0064】
ステップS15で、残り旋回角度特定部1107が残り旋回角度を特定すると、角度推定部1113は、ステップS14で到達時間特定部1109が特定した到達時間で旋回可能な推定旋回角度を特定する(ステップS101)。次に、タイミング決定部1110は、推定旋回角度が残り旋回角度未満であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0065】
推定旋回角度が残り旋回角度以上である場合(ステップS102:NO)、タイミング決定部1110は、現在時刻が旋回開始タイミングに至っていないと判定する(ステップS18)。他方、推定旋回角度が残り旋回角度未満である場合(ステップS102:YES)、タイミング決定部1110は、現在時刻が旋回開始タイミングに至ったと判定する(ステップS19)。
以降、制御装置128は、第1の実施形態と同様の処理を実行する。
【0066】
《作用・効果》
このように、第2の実施形態に係る積込機械100の制御装置128は、第1の実施形態と同様に、作業機130が干渉回避位置P12の高さまで上昇する前に、上方からの平面視における作業機130の位置が干渉回避位置P12に至らないよう、旋回開始タイミングを制御することで、作業機130が積込対象200に当たることを防ぐことができる。
【0067】
〈第3の実施形態〉
第3の実施形態は、第1の実施形態および第2の実施形態と異なる方法で旋回開始タイミングを決定する。
【0068】
《制御装置の構成》
図9は、第3の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
第3の実施形態に係る制御装置128は、第1の実施形態の構成のうち、到達時間特定部1109に代えて、高さ推定部1114を備える。また、第3の実施形態に係るタイミング決定部1110は、第1の実施形態と異なる方法で旋回開始タイミングを決定する。
【0069】
高さ推定部1114は、旋回時間特定部1108が特定した必要旋回時間でバケット133が上昇可能な推定バケット高さを特定する。高さ推定部1114は、例えば、予め作業機130の動作をモデル化しておき、作業機130を最大の動作量で作動させる操作信号を出力したときの作業機130の上昇速度に基づいて、推定バケット高さを特定する。なお、高さ推定部1114は、旋回時間と推定バケット高さとを予め関連付けたテーブルを参照して、推定バケット高さを特定してもよい。
【0070】
タイミング決定部1110は、回避位置特定部1106が特定した干渉回避位置P12の高さと、高さ推定部1114が特定した推定バケット高さとに基づいて、旋回開始タイミングを決定する。具体的には、タイミング決定部1110は、推定バケット高さが干渉回避位置P12の高さ以上になったときに、その時点を旋回開始タイミングに決定する。
【0071】
《動作》
図10は、第3の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
第3の実施形態に係る制御装置128は、第1の実施形態におけるステップS14からステップS17に代えて、以下のステップS151からステップS154を実行する。
【0072】
ステップS13で、旋回体120の旋回速度が所定速度未満であると判定された場合(ステップS13:YES)、残り旋回角度特定部1107は、ステップS2で特定された旋回中心に基づいて、旋回中心からアーム132の先端へ伸びる直線と、旋回中心から干渉回避位置P12へ伸びる直線とがなす残り旋回角度を特定する(ステップS151)。旋回時間特定部1108は、残り旋回角度特定部1107が特定した残り旋回角度の旋回に要する必要旋回時間を特定する(ステップS152)。高さ推定部1114は、旋回時間特定部1108が特定した必要旋回時間でバケット133が上昇可能な推定バケット高さを特定する(ステップS153)。
【0073】
次に、タイミング決定部1110は、高さ推定部1114が特定した推定バケット高さが、干渉回避位置P12の高さ以上であるか否かを判定する(ステップS154)。推定バケット高さが、干渉回避位置P12の高さ未満である場合(ステップS154:NO)、タイミング決定部1110は、現在時刻が旋回開始タイミングに至っていないと判定する(ステップS18)。他方、推定バケット高さが、干渉回避位置P12の高さ以上である場合(ステップS154:YES)、タイミング決定部1110は、現在時刻が旋回開始タイミングに至ったと判定する(ステップS19)。
以降、制御装置128は、第1の実施形態と同様の処理を実行する。
【0074】
《作用・効果》
このように、第3の実施形態に係る積込機械100の制御装置128は、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、作業機130が干渉回避位置P12の高さまで上昇する前に、上方からの平面視における作業機130の位置が干渉回避位置P12に至らないよう、旋回開始タイミングを制御することで、作業機130が積込対象200に当たることを防ぐことができる。
【0075】
〈第4の実施形態〉
第1から第3の実施形態に係る制御装置128は、積込指示信号の入力を受け付けたタイミングから旋回開始タイミングまでの間、残り旋回角度を継続的に算出し、これに基づいて旋回開始タイミングの判定を行う。これに対し、第4の実施形態に係る制御装置128は、オペレータから積込指示信号の入力を受け付けたときに、予め旋回開始タイミングを決定する。
【0076】
《制御装置の構成》
図11は、第4の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
第4の実施形態に係る制御装置128は、第1の実施形態の構成に加え、タイマ部1115をさらに備える。また、第4の実施形態に係るタイミング決定部1110は、第1の実施形態と異なる方法で旋回開始タイミングを決定する。
【0077】
タイマ部1115は、時刻を計測する。すなわち、制御装置128は、タイマ部1115を参照することで現在時刻を特定することができる。
【0078】
タイミング決定部1110は、積込指示信号の入力を受け付けたときに、到達時間特定部1109が特定した到達時間と旋回時間特定部1108が特定した必要旋回時間とに基づいて、旋回開始タイミングを決定する。具体的には、タイミング決定部1110は、積込指示信号の入力を受け付けた時刻より、到達時間と必要旋回時間の差の時間だけ後の時刻を、旋回開始タイミングに決定する。
タイミング決定部1110は、タイマ部1115が計測する時刻と旋回開始タイミングとを比較し、現在時刻が旋回開始タイミングに至ったか否かを判定する。
【0079】
《動作》
図12-13は、第4の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
第4の実施形態に係る制御装置128は、第1の実施形態におけるステップS8とステップS9の間に、さらに、以下のステップS201からステップS206の処理を実行する。
【0080】
ステップS8で、回避位置特定部1106が干渉回避位置P12を特定すると、到達時間特定部1109は、アーム132の先端の高さが干渉回避位置P12の高さに到達するまでの到達時間を特定する(ステップS201)。次に、残り旋回角度特定部1107は、ステップS2で特定された旋回中心に基づいて、旋回中心からアーム132の先端へ伸びる直線と、旋回中心から干渉回避位置P12へ伸びる直線とがなす残り旋回角度を特定する(ステップS202)。旋回時間特定部1108は、残り旋回角度特定部1107が特定した残り旋回角度の旋回に要する必要旋回時間を特定する(ステップS203)。次に、タイミング決定部1110は、到達時間特定部1109が特定した到達時間が、旋回時間特定部1108が特定した必要旋回時間未満であるか否かを判定する(ステップS204)。
【0081】
到達時間が必要旋回時間未満である場合(ステップS204:YES)、タイミング決定部1110は、現在時刻を旋回開始タイミングに決定する(ステップS205)。これは、積込指示信号の入力を受け付けた直後に旋回体120を旋回させても、上方からの平面視における作業機130の位置が干渉回避位置P12に至る前に、作業機130が干渉回避位置P12の高さまで上昇できるためである。
他方、到達時間が必要旋回時間以上である場合(ステップS204:NO)、タイミング決定部1110は、現在時刻より到達時間と必要旋回時間の差の時間だけ後の時刻を、旋回開始タイミングに決定する(ステップS206)。
以降、制御装置128は、ステップS9からステップS13まで、第1の実施形態と同様の処理を実行する。
【0082】
ステップS13において、旋回体120の旋回速度が所定速度未満である場合(ステップS13:YES)、タイミング決定部1110は、タイマ部1115が計測する時刻を参照し、現在時刻が旋回開始タイミングに至っているか否かを判定する(ステップS211)。
現在時刻が旋回開始タイミングに至っていない場合(ステップS211:NO)、操作信号生成部1111は、旋回操作信号を生成しない。
他方、現在時刻が旋回開始タイミングに至っている場合(ステップS211:YES)、操作信号生成部1111は、旋回操作信号を生成する(ステップS212)。
【0083】
ステップS13において旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合(ステップS13:NO)の処理、およびステップS23以降の処理については、第1の実施形態と同様である。
【0084】
《作用・効果》
このように、第4の実施形態に係る積込機械100の制御装置128は、第1から第3の実施形態と同様に、作業機130が干渉回避位置P12の高さまで上昇する前に、上方からの平面視における作業機130の位置が干渉回避位置P12に至らないよう、旋回開始タイミングを制御することで、作業機130が積込対象200に当たることを防ぐことができる。
なお、第4の実施形態に係る制御装置128は、第1の実施形態と同様に、到達時間と必要旋回時間とに基づいて、旋回開始タイミングを決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置128は、積込指示信号の入力を受け付けたときに、第3の実施形態と同様に推定バケット高さと干渉回避位置とに基づいて旋回開始タイミングを決定してもよい。
【0085】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述の実施形態に係る積込機械100は、検出装置124が検出した積込対象200の三次元位置に基づいて積込位置P13および干渉回避位置P12を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、オペレータによって入力された積込対象200の座標に基づいて積込位置P13および干渉回避位置P12を特定してもよい。積込機械100が運転席122にタッチパネルなどの入力装置を備える場合、オペレータが当該入力装置に積込対象200の座標を入力することで、制御装置128が積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。また例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、オペレータの手動操作による1杯目の積込対象200への積込操作を記憶し、当該積込操作に基づいて積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。
また他の実施形態において、積込対象200が固定されている場合、積込機械100は、既知の積込対象200の位置に基づいて積込位置P13および干渉回避位置P12を特定してもよい。例えば、積込対象200がGNSSなどの自車位置特定機能を有する運搬車両である場合、積込機械100は、積込場所に停車した積込対象200から位置および方位を示す情報を取得し、当該情報に基づいて積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。
【0086】
また、他の実施形態に係る制御装置128は、積込対象200の高さまたは型番と、積込指示信号の入力を受け付けたときの残り旋回角度とに関連付けて旋回開始タイミングを予め記憶しておき、積込対象200の高さまたは型番と積込指示信号の入力を受け付けたときの残り旋回角度とに基づいて旋回開始タイミングを決定してもよい。
【0087】
また、他の実施形態に係る制御装置128は、旋回開始タイミングを、旋回を開始するときの作業機130の高さとして特定してもよい。例えば、制御装置128は、積込指示信号の入力を受け付けたときの残り旋回角度に関連付けて、旋回を開始するときの作業機130の高さを予め記憶しておき、作業機130の高さが、残り旋回角度に関連付けられた高さになったときに、旋回体120の旋回を開始させてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態に係る制御装置128は、旋回開始タイミングより前に旋回体120を旋回させないが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置128は、旋回開始タイミングより前に低速で旋回体120を旋回させていてもよい。つまり、制御装置128は、旋回開始タイミング以降、旋回開始タイミングより前より速い旋回速度で旋回体120を旋回させればよい。
【符号の説明】
【0089】
100…積込機械 110…走行体 120…旋回体 121…運転室 122…運転席 123…操作装置 124…検出装置 125…位置方位演算器 126…傾斜計測器 127…油圧装置 128…制御装置 130…作業機 1101…車両情報取得部 1102…検出情報取得部 1103…操作信号入力部 1104…バケット位置特定部 1105…積込位置特定部 1106…回避位置特定部 1107…残り旋回角度特定部 1108…旋回時間特定部 1109…到達時間特定部 1110…タイミング決定部 1111…操作信号生成部 1112…操作信号出力部 1113…角度推定部 1114…高さ推定部 1115…タイマ部
図1
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