(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】電解液及び電解液用添加剤
(51)【国際特許分類】
H01G 9/035 20060101AFI20220308BHJP
C08F 126/06 20060101ALI20220308BHJP
C08F 218/08 20060101ALI20220308BHJP
C08F 226/06 20060101ALI20220308BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01G9/035
C08F126/06
C08F218/08
C08F226/06
C08F8/12
(21)【出願番号】P 2018038094
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】594146788
【氏名又は名称】日本酢ビ・ポバール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】金里 脩平
(72)【発明者】
【氏名】小原田 明信
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-063900(JP,A)
【文献】特開2013-153150(JP,A)
【文献】特開平09-063901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
C08F 126/06
C08F 218/08
C08F 226/06
C08F 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクタム単位を有する樹脂(A)であって、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位から選択された少なくとも1種の単位を含み、ビニルアルコール単位の割合が65モル%以下の樹脂(A)
と、ラクトン系溶媒とを含有する電解液。
【請求項2】
樹脂(A)が、酢酸ビニルを重合成分とする樹脂の鹸化物又は未鹸化物である、請求項
1記載の電解液。
【請求項3】
ラクタム単位が、2-ピロリドン、2-ピペリドン及びε-カプロラクタムから選択された少なくとも1種のモノマー由来の単位を含む、請求項1
又は2記載の電解液。
【請求項4】
樹脂(A)において、ラクタム単位の割合が1~90モル%である請求項1~
3のいずれかに記載の電解液。
【請求項5】
樹脂(A)の割合が、電解液全体に対して0.1~10質量%である請求項1~
4のいずれかに記載の電解液。
【請求項6】
電解液を構成する溶媒が、γ-ブチロラクトン及びアルキル-γ-ブチロラクトンから選択された少なくとも1種を含有する請求項1~
5のいずれかに記載の電解液。
【請求項7】
電解コンデンサの駆動用電解液である、請求項1~
6のいずれかに記載の電解液。
【請求項8】
ラクタム単位
と、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位から選択された少なくとも1種の単位を含み、ビニルアルコール単位の割合が、樹脂を構成する単位全体の65モル%以下の樹脂(A)で構成された、
ラクトン系溶媒を含む電解液用添加剤。
【請求項9】
電解液が、ラクトン系溶媒を含む電解コンデンサの駆動用電解液である請求項
8記載の添加剤。
【請求項10】
請求項1~
7のいずれかに記載の電解液を備えた電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な電解液(例えば、電解コンデンサの駆動用電解液)等に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサ等の電解液は、例えば、陽極側電極に形成された誘導体酸化皮膜層と、集電体である陰極側電極との間にセパレータ紙などに保持されて介在し、誘導体酸化皮膜の欠損部を通電による陽極酸化反応により修復する機能を有するなど、電解コンデンサの特性を左右する重要な要素である。
【0003】
電解液は、一般に電解コンデンサ等として電気エネルギー損失の少ないものを得るために、電導性の高いもの、すなわち比抵抗の低いものが求められる。
【0004】
一方、電解液は使用される電解コンデンサ等の定格電圧に対応した耐電圧特性を持たないと、電圧が印加された場合、電解液が放電を起こし使用できなくなる。近年、特に自動車分野等において、定格電圧の高い電解コンデンサが求められており、したがって、電解コンデンサの構成要素である電解液に関しても、耐電圧特性の向上が求められている。
【0005】
このような中、特許文献1では、γ-ブチロラクトンを主溶媒とした電解コンデンサ用電解液に、鹸化度が30~80モル%以下であるとともに、重合度が1000以下の範囲であるポリビニルアルコール(PVA)を添加した電解コンデンサ用電解液が開示されており、当該電解液によれば、耐電圧を向上させるとともに、比抵抗の上昇を引き起こすことがない旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規な電解液を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、耐電圧特性に優れた電解液を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、低温環境下でも劣化が少ない電解液を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、上記のような電解液を得るための剤(添加剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らによれば、上記特許文献1のように、γ-ブチロラクトンを溶媒とする電解液や鹸化度30~80モル%程度のPVAを含む電解液では、低温においてPVAの析出と考えられる濁りが生じ、電解液として所望の特性を得られない場合があることや、用途等によっては耐電圧が十分でない場合があることがわかった。
【0012】
このような中、本発明者らは、電解液にラクタム単位を有する樹脂を添加したり、当該樹脂と、γ-ブチロラクトンのようなラクトン系溶媒とを組み合わせて電解液を構成することにより、耐電圧特性に優れる電解液や低温においても安定して使用可能な電解液が得られること、特に、優れた耐電圧特性と低温安定性とを両立しうる電解液が得られること等を見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、次の発明等に関する。
[1]
ラクタム単位を有する樹脂(A)であって、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位から選択された少なくとも1種の単位を含み、ビニルアルコール単位の割合が65モル%以下の樹脂(A)を含有する電解液。
[2]
ラクタム単位を有する樹脂(A)とラクトン系溶媒とを含有する電解液。
[3]
樹脂(A)がビニルエステル単位及びビニルアルコール単位から選択された少なくとも1種の単位を含む、[2]記載の電解液。
[4]
樹脂(A)が、酢酸ビニルを重合成分とする樹脂の鹸化物又は未鹸化物である、[1]~[3]のいずれかに記載の電解液。
[5]
ラクタム単位が、2-ピロリドン、2-ピペリドン及びε-カプロラクタムから選択された少なくとも1種のモノマー由来の単位を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の電解液。
[6]
樹脂(A)において、ラクタム単位の割合が1~90モル%である[1]~[5]のいずれかに記載の電解液。
[7]
樹脂(A)の割合が、電解液全体に対して0.1~10質量%である[1]~[6]のいずれかに記載の電解液。
[8]
電解液を構成する溶媒が、γ-ブチロラクトン及びアルキル-γ-ブチロラクトンから選択された少なくとも1種を含有する[1]~[7]のいずれかに記載の電解液。
[9]
電解コンデンサの駆動用電解液である、[1]~[8]のいずれかに記載の電解液。
[10]
ラクタム単位を有する樹脂(A)で構成された電解液用添加剤。
[11]
樹脂(A)が、ラクタム単位と、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位から選択された少なくとも1種の単位を含み、ビニルアルコール単位の割合が、樹脂を構成する単位全体の65モル%以下の樹脂である、[10]記載の添加剤。
[12]
電解液が、ラクトン系溶媒を含む電解コンデンサの駆動用電解液である[10]又は[11]記載の添加剤。
[13]
[1]~[9]のいずれかに記載の電解液を備えた電解コンデンサ。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、新規な電解液を提供できる。
このような電解液は、優れた耐電圧特性や低温安定性を実現しうる。
特に、本発明の電解液を構成するラクタム含有樹脂は、ラクトン系溶媒(特にγ-ブチロラクトン及び/又はアルキル-γ-ブチロラクトン)に対して容易に溶解させることができ、得られた電解液は、比抵抗の上昇を抑制しながら、耐電圧の向上を図ることができ、かつ低温安定性にも優れるため、低温環境下での信頼性を高めうる。
また、本発明では、このような電解液を得る(効率良く得る)ための剤(添加剤)を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電解液を詳細に説明する。
【0016】
本発明の電解液は、ラクタム単位を有する樹脂(A)(以下、ラクタム含有樹脂などということがある)を含む。
【0017】
ラクタム含有樹脂において、ラクタム単位(ラクタム構造、ラクタム骨格、ラクタム構造単位、ラクタム構成単位)としては、ラクタム(環状アミド)単位(ラクタム由来の単位)を有する限り、特に限定されないが、例えば、下記式(I)で表される(又は下記式(I)で表される基を有する)。
【0018】
【0019】
上記式(I)において、Rで表される炭化水素基に含まれる炭素数は、例えば、1以上7以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、3以上5以下が特に好ましい。ここで言う炭素数とは、ラクタム環を構成する炭素数とこれらの炭素に結合した側鎖の炭素数の総和を意味している。このような炭素数であると、特にラクトン系溶媒(γ-ブチロラクトン及び/又はアルキル-γ-ブチロラクトン)のような溶媒(又はラクトン系溶媒を主成分とする溶媒)に対しても、効率よく溶解させやすい。なお、炭化水素基は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1-4アルキル基など)などの置換基を有していてもよい。
【0020】
代表的なラクタム単位としては、例えば、2-ピロリドン単位、アルキル-2-ピロドン単位(例えば、5-メチル-2-ピロリドン単位、5-エチル-2-ピロリドン単位、3-プロピル-2-ピロリドン単位、5,5-ジメチル-2-ピロリドン単位、3,5-ジメチル-2-ピロリドン単位などのC1-4アルキル-2-ピロリドン単位)、2-ピペリドン単位、アルキル-2-ピペリドン単位(例えば、6-メチル-2-ピペリドン単位などのC1-4アルキル-2-ピペリドン単位)、カプロラクタム(ε-カプロラクタム、2-カプロラクタム)単位、アルキル-カプロラクタム単位(例えば、7-メチル-2-カプロラクタム単位などのC1-4アルキル-カプロラクタム単位)などが挙げられる。
【0021】
ラクタム含有樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてラクタム単位を有していてもよい。
【0022】
ラクタム含有樹脂において、ラクタム単位含有量(ラクタム単位の割合)は、特に限定されないが、例えば、0.1~100モル%(例えば、0.5~95モル%)程度の範囲から選択でき、1~90モル%程度であってもよく、3~80モル%が好ましく、5~70モル%がより好ましい。
このようなラクタム単位含有量とすることで、ラクトン系溶媒に対する溶解性、低温安定性、耐電圧特性などの点で有利である。
【0023】
なお、ラクタム単位含有量は、ラクタム含有樹脂を構成する全構造単位(構成単位)に占めるラクタム構造を有する構造単位(例えば、ラクタム含有樹脂を構成するモノマー由来の単位全体に占めるラクタム構造を有するモノマー由来の構造単位)の含有率である。
【0024】
ラクタム含有樹脂は、特に限定されないが、例えば、ラクタム構造を有するモノマー(不飽和単量体)を少なくとも重合成分とする樹脂であってもよい。このようなラクタム含有樹脂は、例えば、下記式(II)で表される単位(前記式(I)で表される構造を有するビニルモノマーに対応する単位)を有していてもよい。
【0025】
【0026】
上記式(II)で表される単位は、例えば、後述のモノマー(例えば、N-ビニル-2-ピロリドン類、N-ビニルピペリドン類、N-ビニルカプロラクタム類など)由来の単位であってもよい。
【0027】
ラクタム含有樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて上記式(II)で表される単位を有していてもよい。
【0028】
ラクタム含有樹脂のラクタム単位含有量は、例えば、DMSO-d6を溶媒としてラクタム含有樹脂の1H-NMRを測定し、帰属したピークの積分値から算出することができる。
【0029】
ラクタム含有樹脂は、ラクタム単位以外の単位(他の単位)を有していてもよい。他の単位(構造単位、構成単位、他のモノマー由来の単位)としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル単位(ビニルエステル由来の単位)、ビニルアルコール単位(ビニルアルコール又はビニルエステルの鹸化物由来の単位)などが挙げられる。
【0030】
特に、ラクタム含有樹脂は、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位から選択された少なくとも1種の単位を含んでいてもよい。
【0031】
ビニルエステル単位は、ビニルエステル由来の単位である。ビニルエステルとしては、例えば、脂肪酸ビニルエステル[例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニルなどのC1-24脂肪酸ビニルエステル(例えば、C1-22アルカン酸-ビニルエステル)など]、芳香族カルボン酸ビニルエステル[例えば、安息香酸ビニルなどのアレーンカルボン酸ビニル(例えば、C7-12アレーンカルボン酸-ビニルエステル)など]などが挙げられる。
【0032】
ラクタム含有樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてビニルエステル単位を有していてもよい。
【0033】
これらのうち、工業的には、酢酸ビニルエステル単位が好ましい。そのため、ビニルエステル単位は、少なくとも酢酸ビニル単位を含んでいてもよい。
【0034】
ビニルアルコール単位は、ビニルエステル単位の鹸化によりラクタム含有樹脂に導入できる。
【0035】
ラクタム含有樹脂は、代表的には、ラクタム単位を有し、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニルを含むビニルエステル)を重合成分とする樹脂の鹸化物又は未鹸化物であってもよい。
【0036】
ラクタム含有樹脂において、ビニルアルコール単位の割合(含有量)は、例えば、80モル%以下(例えば、70モル%以下)程度の範囲から選択してもよく、65モル%以下[例えば、60モル%以下(例えば、0~60モル%)]、好ましくは5~50モル%、より好ましくは10~45モル%、さらに好ましくは20~40モル%程度であってもよい。
このようなビニルアルコール単位含有量とすることで、ラクトン系溶媒に対する溶解性などの点で有利である。
【0037】
ラクタム含有樹脂におけるビニルアルコール単位含有量は、例えば、DMSO-d6を溶媒としてラクタム含有樹脂の1H-NMRを測定し、帰属したピークの積分値から算出することができる。
【0038】
ラクタム含有樹脂が、ビニルアルコール単位を有する場合、ラクタム単位とビニルアルコール単位の割合は、例えば、ラクタム単位/ビニルアルコール単位(モル比)=1/30~30/1、好ましくは1/20~20/1、さらに好ましくは1/15~10/1程度であってもよい。
このような割合とすることで、ラクトン系溶媒に対する溶解性、低温安定性、耐電圧特性などの点で有利である。
【0039】
ラクタム含有樹脂が、ビニルエステル単位を有する場合、ビニルエステル単位の割合(含有量)は、例えば、1~99モル%程度の範囲から選択してもよく、2~90モル%、好ましくは3~80モル%、さらに好ましくは5~70モル%であってもよい。
このような割合とすることで、ラクトン系溶媒に対する溶解性などの点で有利である。
【0040】
ラクタム含有樹脂が、ビニルエステル単位を有する場合、ラクタム単位とビニルエステル単位の割合は、例えば、ラクタム単位/ビニルエステル単位(モル比)=1/99~90/1、好ましくは1/50~50/1、さらに好ましくは1/10~25/1程度であってもよい。
このような割合とすることで、低温安定性、耐電圧特性などの点で有利である。
【0041】
ラクタム含有樹脂が、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位を有する場合、ビニエステル単位とビニルアルコール単位の割合は、例えば、ビニルエステル単位/ビニルアルコール単位(モル比)=1/60~98/1、好ましくは1/50~50/1、さらに好ましくは1/10~10/1程度であってもよい。
このような割合とすることで、ラクトン系溶媒に対する溶解性、耐電圧特性などの点で有利である。
【0042】
ラクタム含有樹脂が、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位を有する場合、ラクタム単位と、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位の総量との割合は、例えば、ラクタム単位/ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位の総量(モル比)=1/99~9/1、好ましくは1/40~4/1、さらに好ましくは1/20~3/1程度であってもよい。
このような割合とすることで、ラクトン系溶媒に対する溶解性、低温安定性、耐電圧特性などの点で有利である。
【0043】
ラクタム含有樹脂の平均重合度は、特に限定されないが、例えば、50~2000が好ましく、80~1500がより好ましく、100~1300がさらに好ましく、200~1000が特に好ましい。
このような重合度であると、耐電圧向上効果やラクトン系溶媒に対する溶解性などの点で有利である。
平均重合度は、例えば、JIS K 6726(1994)に従って測定した値であってもよい。
【0044】
電解液において、ラクタム含有樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1~10質量%程度であるのが好ましい。
なお、ラクタム含有樹脂を電解液の添加剤として使用する場合、電解液における割合が当該割合(0.1~10質量%)となるように、使用してもよい。
このような含有量であると、耐電圧向上効果や比抵抗などの点で有利である。
【0045】
以下、ラクタム含有樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0046】
ラクタム含有樹脂は、特に限定はされないが、例えば、ラクタム単位(例えば、前記式(I)で表される構造)を含有する不飽和単量体(例えば、前記式(II)で表される構造に対応するビニルモノマー)を少なくとも重合成分として重合する工程を経て製造できる。
また、ラクタム単位に加えて、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位から選択された少なくとも1種の単位を有する樹脂(ラクタム含有樹脂)は、例えば、ラクタム単位を含有する不飽和単量体とビニルエステルとの共重合を行い、必要に応じて得られたラクタム含有ビニルエステル系重合体を鹸化する方法、ラクタムを含有する連鎖移動剤を用いてビニルエステルの重合を行い、必要に応じて得られたラクタム含有ビニルエステル系重合体を鹸化する方法、ビニルエステル系重合体またはPVA系重合体にラクタムを含有する不飽和単量体をグラフト重合する方法、ラクタムを含有する化合物をアセタール化、ウレタン化、エーテル化、リン酸エステル化などの手法を用いてビニルエステル系重合体やPVA系重合体に導入する(後変性させる)方法などを挙げることができる。工業的にはラクタム構造を含有する不飽和単量体とビニルエステルを共重合し、必要に応じてさらに鹸化する方法が好適に用いられる。
【0047】
ラクタムを含有する不飽和単量体としては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン類[例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-アルキルピロリドン(例えば、N-ビニル-3-プロピル-2-ピロリドン、N-ビニル-5-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-5-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-5,5-ジメチル-2-ピロリドン、N-ビニル-3,5-ジメチル-2-ピロリドンなどのN-ビニル-モノ又はジC1-4アルキルピロリドン)など]、N-アリルピロリドン類(例えば、N-アリル-2-ピロリドンなど)、N-ビニルピペリドン類[例えば、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-アルキルピペリドン(例えば、N-ビニル-6-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-6-エチル-2-ピペリドンなどのN-ビニル-モノ又はジC1-4アルキルピぺリンドン)など]、N-ビニルカプロラクタム類[例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニル-アルキルカプロラクタム(例えば、N-ビニル-7-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-7-エチル-2-カプロラクタムなどのN-ビニル-モノ又はジC1-4アルキルカプロラクタムなど)など]があげられる。
これらの中でも、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタムが好適に用いられる。
【0048】
ラクタム構造を含有する不飽和単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0049】
また、上記のラクタムを含有する不飽和単量体と共重合するビニルエステルとしては、脂肪酸ビニルエステル[例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニルなどのC1-24脂肪酸ビニルエステル(例えば、C1-22アルカン酸-ビニルエステル)など]、芳香族カルボン酸ビニルエステル[例えば、安息香酸ビニルなどのアレーンカルボン酸ビニル(例えば、C7-12アレーンカルボン酸-ビニルエステル)など]などが単独又は2種以上で用いられるが、工業的には酢酸ビニルが好適である。
【0050】
上記の単量体を共重合するにあたって、特に重合触媒(重合開始剤)は限定されないが、通常アゾ系化合物、過酸化物系開始剤等が用いられる。
【0051】
また、重合の際、ビニルエステルの加水分解を防止する目的で酒石酸、クエン酸、酢酸等の有機酸を添加してもよい。
【0052】
ラクタムを含有する不飽和単量体とビニルエステルを共重合する際のモル比は、特に限定されず、目的とするラクタム含有樹脂のラクタム構造単位含有量やビニルエステルの転化率を考慮して決定すればよい。
【0053】
ラクタム含有樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合可能な他の不飽和単量体、例えば、(メタ)アクリル酸;マレイン酸;無水マレイン酸;フマル酸;クロトン酸;イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体、マレイン酸モノメチル;イタコン酸モノメチル等の不飽和二塩基酸モノアルキルエステル類、アクリルアミド;ジメチルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド;ジエチルアクリルアミド;ジメチルアミノプロピルアクリルアミド;イソプロピルアクリルアミド;N-メチロールアクリルアミド;N-ビニルアセトアミド;ダイアセトンアクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体、塩化ビニル;フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類、アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基を有する不飽和単量体、メチルビニルエーテル;n-プロピルビニルエーテル;i-プロピルビニルエーテル;n-ブチルビニルエーテル;i-ブチルビニルエーテル;t-ブチルビニルエーテル;ラウリルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル;ステアリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、アクリロニトリル;メタアクリロニトリル等のニトリル類、アリルアルコール;ジメチルアリルアルコール;イソプロペニルアリルアルコール;ヒドロキシエチルビニルエーテル;ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有不飽和単量体、アリルアセテート;ジメチルアリルアセテート;イソプロペニルアリルアセテート等のアセチル基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸メチル;(メタ)アクリル酸エチル;アクリル酸-2-エチルヘキシル;アクリル酸-n-ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、トリメトキシビニルシラン;トリブチルビニルシラン;ジフェニルメチルビニルシランなどのビニルシラン類、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート;ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート類、ポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸アミド;ポリオキシプロピレン(メタ)アクリル酸アミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリル酸アミド類、ポリオキシエチレンビニルエーテル;ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル類、ポリオキシエチレンアリルエーテル;ポリオキシプロピレンアリルエーテル;ポリオキシエチレンビチルビニルエーテル;ポリオキシプロピレンブチルビニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルビニルエーテル類、エチレン;プロピレン;n-ブテン;1-ヘキセン等のα-オレフィン類、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン;3,4-ジアシロキシ-1-ブテン;3-アシロキシ-4-ヒドロキシ-1-ブテン;4-アシロキシ-3-ヒドロキシ-1-ブテン;3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン等のブテン類、4,5-ジヒドロキシ-1-ペンテン;4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン;4,5-ジヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン;4,5-ジアシロキシ-3-メチル-1-ペンテン等のペンテン類、5,6-ジヒドロキシ-1-ヘキセン;5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン等のヘキセン類、N,N-ジメチルアリルアミン;N-アリルプペラジン;3-ピペリジンアクリル酸エチルエステル;2-ビニルピリジン;4-ビニルピリジン;2-メチル-6-ビニルピリジン;5-エチル-2-ビニルピリジン;5-ブテニルピリジン;4-ペンテニルピリジン;2-(4-ピリジル)アリルアルコール等のアミン系不飽和単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩;N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩;N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルベンゼンスルホン酸4級塩などの第四アンモニウム化合物を有する不飽和単量体、スチレン等の芳香族系不飽和単量体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩或いは有機アミン塩;2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩或いは有機アミン塩;2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩或いは有機アミン塩;ビニルスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩或いは有機アミン塩;アリルスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩或いは有機アミン塩;メタアリルスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩或いは有機アミン塩等のスルホン酸基を含有する不飽和単量体、グリセリンモノアリルエーテル;2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン;2-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン;3-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン;3-アセトキシ-1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン;グリセリンモノビニルエーテル;グリセリンモノイソプロペニルエーテル;アクリロイルモルホリン;ビニルエチレンカーボネート等から選ばれる1種以上と共重合したものであってもよい。
【0054】
なお、共重合可能な他の不飽和単量体を使用する場合、他の不飽和単量体の割合は、ラクタム含有樹脂の重合成分(モノマー)全体に対して、例えば、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下であってもよい。
【0055】
この他、本発明の効果を阻害しない範囲でアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、アセトアセチル化、カチオン化等の反応によって後変性したものでもよい。
【0056】
ラクタム含有ビニルエステル系共重合体を重合する際は、重合容器の形状、重合攪拌機の種類、さらには重合温度や、重合容器内の圧力等いずれも公知の方法を使用してもかまわない。
【0057】
かくして得られたラクタム含有ビニルエステル系共重合体は、必要に応じて鹸化される。
【0058】
鹸化にあたっては、上記共重合体をアルコール、場合によってはベンゼン、酢酸メチル等に溶解して鹸化触媒の存在下に鹸化が行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0059】
鹸化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることが好ましい。また、必要に応じて水を鹸化反応系に加えることもできる。さらに硫酸、塩酸等の酸触媒を用いて鹸化反応を行うことも可能である。
【0060】
本発明の電解液は、通常、溶媒を含む。溶媒(電解液を構成する溶媒)としては、特に限定されないが、例えば、ラクトン系溶媒[例えば、ラクトン又は置換ラクトン、例えば、γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、アルキル-γ-ブチロラクトン(例えば、γ-バレロラクトンなどのメチル-γ-ブチロラクトンなど)、δ-バレロラクトンなどのアルキル基を有していてもよいC3-6ラクトンなど]、エチレングリコールなどが好適に用いられる。これらの溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種類以上を混合して使用することができる。
【0061】
そのため、溶媒は、ラクトン系溶媒、エチレングリコールなどを主成分として含む溶媒であってもよく、特に、ラクトン系溶媒[例えば、γ-ブチロラクトン系溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン及びアルキル-γ-ブチロラクトンから選択された少なくとも1種)など]を主成分として含む溶媒であってもよい。
【0062】
アルキルラクトン(アルキル置換ラクトン)において、アルキル基としては、特に限定されず、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などのC1-30アルキル基(例えば、C1-20アルキル基、C1-18アルキル基など)が挙げられる。
【0063】
アルキル基は、単独で又は2種以上組み合わせてラクトンに置換していてもよい。また、アルキルラクトンは、1又は2以上のアルキル基を有していてもよい。
【0064】
具体的なアルキルラクトンとしては、ラクトン環にアルキル基を有するものであれば制限はなく、例えば、アルキル-γ-ブチロラクトン[例えば、メチル-γ-ブチロラクトン、エチル-γ-ブチロラクトン、プロピル-γ-ブチロラクトン、n-ヘキシル-γ-ブチロラクトン、オクチル-γ-ブチロラクトン、ノニル-γ-ブチロラクトン、n-ドデシル-γ-ブチロラクトン、オクタデシル-γ-ブチロラクトンなどのC1-30アルキル-γ-ブチロラクトン(C1-20アルキル-γ-ブチロラクトン、C1-18アルキル-γ-ブチロラクトンなど)など]などが挙げられる。
【0065】
また、ラクトン系溶媒及びエチレングリコール以外の他の溶媒としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等の多価アルコール類、アルコールエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノ―ル、ヘキサノ―ル、シクロブタノール、シクロペンタノ―ル、シクロヘキサノ―ル、ベンジルアルコール等の1価アルコール類;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド等のアミド類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド;エーテル類;ケトン類;エステル類;スルホラン及びその誘導体;水等を例示することができる。
【0066】
これらの他の溶媒は、ラクトン系溶媒やエチレングリコールと、組み合わせてもよい。
【0067】
溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種類以上を混合して使用することができる。
【0068】
特に、溶媒は、ラクトン系溶媒[例えば、γ-ブチロラクトン系溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン及び/又はアルキル-γ-ブチロラクトン)など]を含むのが好ましく、特に、ラクトン系溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン系溶媒)を主成分(主溶媒)とするのが好ましい。
【0069】
このような溶媒において、溶媒全体に対するラクトン系溶媒[例えば、γ-ブチロラクトン系溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン及び/又はアルキル-γ-ブチロラクトン)など]の割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に90質量%以上であってもよい。
【0070】
電解液は、電解質を含んでいてもよい。電解質としては、特に限定されないが、例えば、有機酸又は無機酸若しくはそれらの塩、アミン類などが挙げられる。
【0071】
有機酸としては、特に限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、メチルマロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、トルイル酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0072】
無機酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、リン酸、ケイ酸、HBF4、HPF6等が挙げられる。
【0073】
有機酸又は無機酸の塩としては、特に限定されないが、例えば、アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩としては、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、エナント酸アンモニウム等の脂肪族モノカルボン酸アンモニウム、マロン酸二アンモニウム、コハク酸二アンモニウム、グルタル酸二アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム、メチルマロン酸二アンモニウム、ピメリン酸二アンモニウム、スベリン酸二アンモニウム、アゼライン酸二アンモニウム、セバシン酸二アンモニウム、デカンジカルボン酸二アンモニウム、マレイン酸二アンモニウム、シトラコン酸二アンモニウム、イタコン酸二アンモニウム等の脂肪族カルボン酸二アンモニウム、安息香酸アンモニウム、フタル酸二アンモニウム等の芳香族カルボン酸アンモニウム塩が挙げられ、第四級アンモニウム塩としては、アジピン酸モノテトラエチルアンモニウム、グルタル酸モノテトラブチルアンモニウム、フタル酸モノテトラメチルアンモニウム、フタル酸モノトリエチルアンモニウム等が挙げられ、イミダゾリウム塩としては、エチルジメチルイミダゾリウム、テトラメチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0074】
アミン類としては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、t-ブチルアミン等の一級アミン、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン等が挙げられる。
【0075】
その他、電解質として、ホスホニウム塩、アルソニウム塩等を使用することができ、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じてニトロ化合物等を添加することもできる。
【0076】
電解質は、一種単独で又は二種以上を組合せて用いることができる。
【0077】
電解質の含有量としては、発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、電解液全体に対して、通常0.05~30.0質量%、好ましくは0.1~25.0質量%程度であってもよい。
【0078】
電解液は、漏れ電流の低減、耐電圧向上、ガス吸収等の目的で種々の添加剤を加えることができる。添加剤の具体例としては、例えば、リン酸化合物、ホウ酸化合物、多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールのランダム共重合体およびブロック共重合体に代表される高分子化合物、ニトロ化合物等が挙げられる。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0079】
本発明の電解液の用途は、特に限定されないが、特に、電解コンデンサ用(電解コンデンサの駆動用)電解液として好適に使用してもよい。
【0080】
そのため、本発明には、前記電解液を含む(備えた)電解コンデンサ(素子)[前記電解液を電解液として含む(備えた)電解コンデンサ(素子)]を包含する。
【0081】
電解コンデンサ(素子)において、正極(陽極)を構成する金属としては、特に限定されず、アルミニウム、タンタルなどが挙げられる。特に、電解コンデンサは、アルミ(アルミニウム)電解コンデンサであってもよい。
【実施例】
【0082】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。なお、例中の「部」および「%」は、特に指定しない限り「質量部」および「質量%」を示す。
【0083】
[ラクタム含有樹脂の重合度]
JIS K 6726(1994)に従って求めた。
【0084】
[ラクタム含有樹脂のビニルアルコール単位含有量]
DMSO-d6を溶媒として1H-NMRを測定し、帰属したピークの積分値から算出した。
【0085】
[ラクタム含有樹脂のラクタム構造単位含有量]
DMSO-d6を溶媒として1H-NMRを測定し、帰属したピークの積分値から算出した。
【0086】
[1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンの合成]
WO2013/161222号に記載の方法に準じて、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンの合成を行った。
【0087】
[フタル酸トリエチルアミンの調製]
市販のフタル酸(和光特級、和光純薬工業(株))およびトリエチルアミン(和光特級、和光純薬工業(株))を用いて調製を行った。
【0088】
[フタル酸エチルジメチルアミンの調製]
市販のフタル酸(和光特級、和光純薬工業(株))およびN,N-ジメチルエチルアミン(和光特級、和光純薬工業(株))を用いて調製を行った。
【0089】
[電解液の低温安定性]
実施例または比較例で得られた電解液を-40℃で1ヶ月静置し、目視により以下の基準で評価した。
A:溶液が無色透明であった。
B:溶液が僅かに白濁していた。
【0090】
[電解液の比抵抗値]
実施例または比較例で得られた電解液の30℃における電気伝導率を測定し、得られた電気伝導率から比抵抗を算出した。電気伝導率の測定には、東亜ディーケーケー株式会社製「WM-50EG」を使用した。
【0091】
[電解液の火花発生電圧]
実施例または比較例で電解液に、30℃で5mA/cm2の定電流を印加し、電圧-時間カーブを調べ、電圧の上昇カーブのはじめにスパーク又はシンチレーションが観測された電圧を火花発生電圧とした。
【0092】
[アルミニウム電解コンデンサの静電容量]
JIS C 5101-1(2010)に従って求めた。
【0093】
[アルミニウム電解コンデンサのtanδ]
JIS C 5101-1(2010)に従って求めた。
【0094】
[アルミニウム電解コンデンサの漏れ電流]
JIS C 5101-1(2010)に従って求めた。
【0095】
[重合例1]
攪拌機を備えた加温可能な重合缶に、酢酸ビニル1700部、N-ビニルピロリドン93部、およびメタノール2856部を仕込み、系内の窒素置換を行った後、還流状態になるまで昇温した。昇温後5分間還流させてから、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.5部をメタノール100部に溶解させて添加し、重合を開始した。重合缶内に窒素流通を続けながら、3時間かけてN-ビニルピロリドン21部を一定速度で滴下するとともに、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.3部をメタノール89部に溶解させた溶液を4回に分けて分割添加した。6時間後に重合禁止剤とメタノールを添加し、重合を停止した。重合収率は87%であった。ここでいう重合収率とは、酢酸ビニルおよびN-ビニルピロリドンの共重合体への転化率を意味する。得られた反応混合物にメタノールを加えて溶媒を留去する操作を繰り返すことで、未反応の単量体を除き、N-ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体の53%メタノール溶液を得た。
【0096】
[重合例2~7]
メタノールおよび開始剤の仕込量、酢酸ビニルやN-ビニルピロリドンの添加量等の重合条件を変更した以外は重合例1と同様の方法で表1に示す共重合体を得た。なお、表中、「NVP」はN-ビニルピロリドン、「NVC」はN-ビニル-ε-カプロラクタムを意味する。
【0097】
[重合例8]
攪拌機を備えた加温可能な重合缶に、酢酸ビニル1700部、N-ビニル-ε-カプロラクタム102部、およびメタノール2845部を仕込み、系内の窒素置換を行った後、還流状態になるまで昇温した。昇温後5分間還流させてから、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.5部をメタノール101部に溶解させて添加し、重合を開始した。重合缶内に窒素流通を続けながら、3時間かけてN-ビニル-ε-カプロラクタム22部を一定速度で滴下するとともに、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.4部をメタノール90部に溶解させた溶液を4回に分けて分割添加した。6時間後に重合禁止剤とメタノールを添加し、重合を停止した。重合収率は83%であった。得られた反応混合物にメタノールを加えて溶媒を留去する操作を繰り返すことで、未反応の単量体を除き、N-ビニル-ε-カプロラクタム-酢酸ビニル共重合体の52%メタノール溶液を得た。
【0098】
【0099】
[合成例1]
重合例1で得られた共重合体のメタノール溶液232部に、メタノール20部、イオン交換水1.5部及び水酸化ナトリウムの5%メタノール溶液1.6部を加えてよく混合し、40℃で30分間鹸化反応を行った。反応終了後、50%酢酸水溶液を加えて反応を停止させた。得られた液状物を乾燥後、3~10mm程度に粉砕し、ラクタム含有樹脂を得た。得られたラクタム含有樹脂の重合度は770、ビニルアルコール単位含有量は24.5モル%、ラクタム構造単位含有量は5.7モル%であった。
【0100】
[合成例2~14]
使用する共重合体と鹸化条件を変えた以外は合成例1と同様の方法で表2に示すラクタム含有樹脂を得た。なお、表中、「NVP」はN-ビニルピロリドン、「NVC」はN-ビニル-ε-カプロラクタムを意味する。
【0101】
【0102】
[実施例1~16及び比較例1~4]
表3の組成で、実施例及び比較例の各電解液を作製した。30℃における各電解液の比抵抗値と火花発生電圧および-40℃における低温安定性を測定し、表3の結果を得た。
【0103】
【0104】
なお、表中の略称、記号等は以下の通りである。
GBL;γ-ブチロラクトン
フタル酸TeMI;1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオン
フタル酸TEA;フタル酸トリエチルアミン
フタル酸EDMA;フタル酸エチルジメチルアミン
PVA1;ポリビニルアルコール(鹸化度:35モル%、粘度平均重合度:250)
PVA2;ポリビニルアルコール(鹸化度:65モル%、粘度平均重合度:250)
PVA3;ポリビニルアルコール(鹸化度:88モル%、粘度平均重合度:500)
【0105】
ラクタム含有樹脂(実施例1~16)とPVA(比較例1)とを比較すると、ラクタム含有樹脂は耐電圧特性や低温安定性に優れていることが分かる。技術的な理由は十分明らかになっていないが、ラクタム構造とγ-ブチロラクトンのようなラクトン系溶媒(さらには、イミダゾリニウム塩等の電解質)との相溶性が良いため、耐電圧特性や低温安定性が向上したと推測される。
【0106】
また、ビニルアルコール単位含有量が大きいPVA(比較例2~3)は、γ-ブチロラクトンを主成分とする電解液に溶解しなかった。
【0107】
次に、エッチング処理して表面積を拡大したアルミニウム箔の表面に陽極酸化により誘電体酸化アルミニウム皮膜を形成した陽極箔と、アルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔とを、セパレータを介して巻き込むことにより、コンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子に実施例1~16及び比較例1の各電解液を含浸させ、含浸後のコンデンサ素子を金属ケース内に封止して、定格電圧80V、定格静電容量が220μFのアルミニウム電解コンデンサを作製した。
【0108】
得られた各コンデンサについて、静電容量、誘電損失(tanδ)、漏れ電流を測定した。結果を表4に示す。
【0109】
【0110】
表4に示す通り、ラクタム含有樹脂(実施例1~16)とPVA(比較例1)とで、静電容量、tanδ、漏れ電流に差は見られず、コンデンサの初期評価ではほぼ同程度の性能を有していることが分かる。しかし、表3に示す通り、実施例のラクタム含有樹脂は、比較例1のPVAよりも耐電圧特性や低温安定性に優れているため、定格電圧が高く、低温環境下での信頼性が高いコンデンサを作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、新規な電解液、例えば、耐電圧特性や低温安定性が良好な電解液(例えば、アルミニウム電解コンデンサ駆動用電解液)を提供しうる。