(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】防水シート改修構造及び防水シート改修方法
(51)【国際特許分類】
E04D 5/00 20060101AFI20220308BHJP
E04D 5/14 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
E04D5/00 D
E04D5/14 J
(21)【出願番号】P 2018064387
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 勇人
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-103562(JP,A)
【文献】特開平03-267445(JP,A)
【文献】特開平04-272357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付ける防水シート改修構造であって、
前記既存の防止シートの縁部と、前記新規の防水シートと、の間に略水平に配置される水平部と、
前記水平部から前記パラペットの外側であって、斜め下方に向けて延在する傾斜部と、を備える防水シート取付補強部品が設けられ、
前記パラペットの天端部と、
前記防水シート取付補強部品と、の隙間を埋める防水材を設けた
ことを特徴とする、防水シート改修構造。
【請求項2】
前記既存の防水シートと、前記防水シート取付補強部品との間に、前記既存の防水シートの不陸を調整する不陸調整部材を設けた
ことを特徴とする、請求項
1に記載の防水シート改修構造。
【請求項3】
前記防水シート取付補強部品は、締結部品によって、前記既存の防水シートを押さえつけるように取り付けられる
ことを特徴とする、請求項
1または
2に記載の防水シート改修構造。
【請求項4】
縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付ける防水シート改修方法であって、
前記既存の防止シートの縁部と、前記新規の防水シートと、の間に略水平に配置される水平部と、
前記水平部から前記パラペットの外側であって、斜め下方に向けて延在する傾斜部と、を備える防水シート取付補強部品が用いられ、
前記既存の防水シートの縁部の上に、
前記防水シート取付補強部品を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、
前記防水シート取付補強部品の上に、前記新規の防水シートの縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含む
ことを特徴とする、防水シート改修方法。
【請求項5】
縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付ける防水シート改修方法であって、
前記既存の防止シートの縁部と、前記新規の防水シートと、の間に略水平に配置される水平部と、
前記水平部から前記パラペットの外側であって、斜め下方に向けて延在する傾斜部と、を備える防水シート取付補強部品が用いられ、
前記既存の防水シートの縁部の上に、前記既存の防水シートの不陸を調整する不陸調整部材を取り付ける不陸調整工程と、
前記不陸調整部材の上に、
前記防水シート取付補強部品を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、
前記防水シート取付補強部品の上に、前記新規の防水シートの縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含む
ことを特徴とする、防水シート改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付けるための防水シート改修構造及び防水シート改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の屋上の防水シートの改修を行う場合、既存の防水シートの上に、新規の防水シートを施工することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、上部をパラペットのあご部の下面に当接させ、下部を新規の防水シートと既存の防水層とを挟持してパラペットの内壁面に取り付ける長尺の押さえ金具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付けるための防水シート取付補強部品が開示されていない。
【0006】
そこで、本発明は、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付けるための防水シート取付補強部品、防水シート改修構造及び防水シート改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付けるために、前記既存の防止シートの縁部と、前記新規の防水シートと、の間に略水平に配置される水平部と、前記水平部から前記パラペットの外側であって、斜め下方に向けて延在する傾斜部と、を備えた防水シート取付補強部品を設けている。
【0009】
また、本発明の防水シート改修構造では、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付ける防水シート改修構造であって、前記パラペットの天端部と、前記防水シート取付補強部品と、の隙間を埋める防水材を設けてもよい。
【0010】
また、本発明の防水シート改修構造では、前記既存の防水シートと、前記防水シート取付補強部品との間に、前記既存の防水シートの不陸を調整する不陸調整部材を設けてもよい。
【0011】
また、本発明の防水シート改修構造では、前記防水シート取付補強部品は、締結部品によって、前記既存の防水シートを押さえつけるように取り付けられてもよい。
【0012】
また、本発明の防水シート改修方法では、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付ける防水シート改修方法であって、前記既存の防水シートの縁部の上に、前記防水シート取付補強部品を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、前記防水シート取付補強部品の上に、前記新規の防水シートの縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含んでもよい。
【0013】
さらに、本発明の防水シート改修方法では、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付ける防水シート改修方法であって、前記既存の防水シートの縁部の上に、前記既存の防水シートの不陸を調整する不陸調整部材を取り付ける不陸調整工程と、前記不陸調整部材の上に、前記防水シート取付補強部品を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、前記防水シート取付補強部品の上に、前記新規の防水シートの縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に使用する防水シート取付補強部品は、水平部を有することで、防水シート取付補強部品を既存の防止シートに取り付けし易くなると共に、新規の防水シートを防水シート取付補強部品に取り付けし易くなるので、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを、容易に重ねて取り付けることができる。また、傾斜部を有することで、パラペットの天端部の縁部を覆い隠すことができるので、見切縁が不要となり、そのうえ、防水シート取付補強部品を意匠部品として機能させることができる。また、傾斜部を有することで、建築基準法で定められている斜線制限への影響を最小限に抑えることができる。
【0017】
前記パラペットの天端部と、前記防水シート取付補強部品と、の隙間を埋める防水材を設けることで、パラペットと防水シート取付補強部品との間から水が浸入することを防ぐことができるので、優れた防水性の防水シート改修構造とすることができる。また、劣化した既存の防水層を保護することができる。
【0018】
前記既存の防水シートと、前記防水シート取付補強部品との間に、前記既存の防水シートの不陸を調整する不陸調整部材を設けることで、既存の防水シートの不陸部を平坦にすることができるので、防水シート取付補強部品と、既存の防水シートとの隙間を無くし、防水性を向上させることができる。
【0019】
前記防水シート取付補強部品は、締結部品によって、前記既存の防水シートを押さえつけるように取り付けられることで、既存の防水シートの端部がめくれないようにすることができるので、耐久性のある防水シート改修構造とすることができる。
【0020】
前記既存の防水シートの縁部の上に、前記防水シート取付補強部品を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、前記防水シート取付補強部品の上に、前記新規の防水シートの縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含むことで、簡易な方法で、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付けることができる。
【0021】
前記既存の防水シートの縁部の上に、前記既存の防水シートの不陸を調整する不陸調整部材を取り付ける不陸調整工程と、前記不陸調整部材の上に、前記防水シート取付補強部品を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、前記防水シート取付補強部品の上に、前記新規の防水シートの縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含むことで、簡易な方法で、縁部をパラペットの天端部に取り付けた既存の防水シートに、新規の防水シートを重ねて取り付けることができる。また、既存部材を撤去せずに再利用するため、現場での廃材発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1のユニット建物の構成を示す構成図である。
【
図2】実施例1のユニット建物の屋根の構成を示す断面図である。
【
図3】実施例1の既存の防水層の構成を示す断面図である。
【
図4】実施例1の新規の防水層の構成を示す断面図である。
【
図5】実施例1の防水シート取付補強部品の構成を示す斜視図である。
【
図6】実施例1の新規の防水層の施工方法を説明する説明図である。
【
図7】実施例2の既存の防水層の構成を示す断面図である。
【
図8】実施例2の新規の防水層の構成を示す断面図である。
【
図9】実施例2の新規の防水層の施工方法を説明する説明図である。
【
図10】実施例2の新規の防水層の施工方法を説明する説明図である。
【
図11】別の実施例の既存の防水層の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による防水シート取付補強部品、防水シート改修構造及び防水シート改修方法を実現する実施形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
実施例1の防水シート取付補強部品、防水シート改修構造及び防水シート改修方法は、複数の建物ユニットを隣接させて構築されるユニット建物に適用される。
【0025】
[ユニット建物の構成]
図1は、実施例1のユニット建物の構成を示す構成図である。
図2は、実施例1のユニット建物の屋根の構成を示す構成図である。以下、
図1及び
図2に基づいて、実施例1のユニット建物の構成を説明する。
【0026】
ユニット建物1は、基礎2の上に下階の建物ユニット3が複数設置され、下階の建物ユニット3の上に上階の建物ユニット4が複数設置され、上階の建物ユニット4の上に屋根10が設置される。屋根10の周縁部には、パラペット30が設けられる。
【0027】
建物ユニット3,4は、隅角部に配置される角形鋼管から成る柱と、柱の下端部間を連結した溝形鋼から成る床大梁と、柱の上端部間を連結した溝形鋼から成る天井大梁と、からなる骨組構造体である。
【0028】
図2に示すように、対向する天井大梁11間に平行に掛け渡された複数の屋根小梁12の上に、軽量気泡コンクリート板13が設置される。屋根小梁12の端部には、取付金具14が設けられており、取付金具14がスペーサ15を介して、天井大梁11にボルトで固定される。軽量気泡コンクリート板13の端部には、補強金物17が設けられており、補強金物17がスペーサ15にボルトで固定される。軽量気泡コンクリート板13と補強金物17の上面は、屋根10の平坦部Aを構成する。軽量気泡コンクリート板13と補強金物17の上面には、既存の防水層50が設けられる。
【0029】
天井大梁11には、天井根太18が設けられ、天井根太18の下側に、石膏ボード19が固定される。天井大梁11と床大梁との間には、複数の間柱20が設けられる。間柱20の外側には、外壁パネル21が取り付けられる。間柱20の内側には、石膏ボード22が取り付けられる。
【0030】
天井大梁11には、取付金具23がボルトで固定される。取付金具23の先端には、アーム部材24を介して、化粧板25が取り付けられてパラペット30を形成する。化粧板25の上面25aは、パラペット30の天端部Bとして構成される。化粧板25の上面25aには、既存の防水層50が設けられる。既存の防水層50は、パラペット30の天端部Bから、パラペット30の側溝部Cを経て、屋根10の平坦部Aに接続される。取付金具23の下方には、軒天井26が設けられる。
【0031】
[既存の防水層の構成]
図3は、実施例1の既存の防水層50の構成を示す構成図である。以下、
図3に基づいて、実施例1の既存の防水層50の構成を説明する。
【0032】
既存の防水層50の縁部は、パラペット30の天端部Bに設けられる。既存の防水層50の縁部は、化粧板25の上面25aのユニット建物1の外側の端部より内側に設置される。
【0033】
既存の防水層50は、塩化ビニル鋼板51の上面に、既存の防水シートとしての第1防水シート52と第2防水シート53とが積層され、塩化ビニル鋼板51の下面に、粘着テープ55が貼り付けられて形成される。
【0034】
第1防水シート52と第2防水シート53は、例えば塩化ビニルシートによって形成される。粘着テープ55は、例えばブチルテープを使用することができる。既存の防水層50は、化粧板25の上面25aに設置された状態でリベットやビスなどの締結部品によって、化粧板25を介して、アーム部材24に固定される。
【0035】
[新規の防水層の構成]
図4は、実施例1の新規の防水層60の構成を示す構成図である。以下、
図4に基づいて、実施例1の新規の防水層60の構成を説明する。
【0036】
新規の防水層60は、
図4に示すように、既存の防水層50の上に重ねて取り付けられる。新規の防水層60は、既存の防水層50の端部に設けられるコーキング剤61と、既存の防水層50の上面に貼り付けられる粘着テープ62と、粘着テープ62の上に設置される防水シート取付補強部品65と、粘着テープ62と防水シート取付補強部品65との隙間を埋める防水材63と、防水シート取付補強部品65をパラペット30に固定する締結部品66と、防水シート取付補強部品65の上面に取り付けられる新規の防水シート67と、で構成される。
【0037】
コーキング剤61は、既存の防水層50の端部に充填される。粘着テープ62は、例えばブチルテープを使用することができる。粘着テープ62は、化粧板25の上面25aと、コーキング剤61と、既存の防水層50の上面と、を覆うように貼り付けられる。
【0038】
防水材63は、例えばエプトシーラ(登録商標)とすることができる。防水材63は、
断面矩形状の長尺材であって、粘着テープ62と防水シート取付補強部品65との隙間を埋める。
【0039】
締結部品66は、例えばドリルビスを使用することができる。締結部品66は、所定の長さを有し、防水シート取付補強部品65を、既存の防水層50と化粧板25を介して、アーム部材24に取り付ける。これにより、防水シート取付補強部品65は、既存の防水シートとしての第1防水シート52と第2防水シート53を押さえつけるように取り付けられる。
【0040】
新規の防水シート67は、例えば塩化ビニルシートを使用することができる。新規の防水シート67は、溶着によって、防水シート取付補強部品65に取り付けられる。すなわち、新規の防水シート67は、既存の防水シートとしての第1防水シート52と第2防水シート53に重ねて取り付けられる。
【0041】
[防水シート取付補強部品の構成]
図5は、実施例1の防水シート取付補強部品65の構成を示す構成図である。以下、
図5に基づいて、実施例1の防水シート取付補強部品65の構成を説明する。
【0042】
防水シート取付補強部品65は、塩化ビニル鋼板で形成される。防水シート取付補強部品65は、パラペット30の天端部Bの全周に設置されるように、複数設けられる。防水シート取付補強部品65は、
図5に示すように、略水平に形成される水平部65aと、水平部65aの幅方向の一方の端部から傾斜して延在する傾斜部65bと、傾斜部65bの先端から、傾斜部65bの裏側(下側)に折り曲げて形成される折曲部65cと、折曲部65cの底に形成される貫通孔65dと、を備える。
【0043】
水平部65aは、化粧板25の上面25aと略同じ幅を有して帯状に形成される。水平部65aは、既存の第2防水シート53と、新規の防水シート67との間に配置される。傾斜部65bは、パラペット30の外側であって、斜め下方に向けて延在する。傾斜部65bは、化粧板25の側面25bと略平行に延在する。折曲部65cは、傾斜部65bの下側に折り曲げられて、U字状を形成する。貫通孔65dは、U字状に形成された折曲部65cの底に複数形成される。
【0044】
防水シート取付補強部品65には、防水材63が取り付けられる。防水材63は、例えばエプトシーラ(登録商標)などのゴム系発泡材とすることができる。防水材63は、矩形状に形成され、防水シート取付補強部品65の水平部65aと、傾斜部65bとで形成される角部に合わせて配置される。
【0045】
[新規の防水層の施工方法]
図6は、実施例1の新規の防水層60の施工方法を説明する説明図である。以下、
図6に基づいて、実施例1の新規の防水層60の施工方法を説明する。
【0046】
(既存の防水層の防水処理工程)
既存の防水層50の防水処理工程では、
図6に示すように、既存の防水層50の端部にコーキング剤61を充填する。次いで、粘着テープ62を、化粧板25の上面25aと、コーキング剤61と、既存の防水層50と、を覆うように、貼り付ける。
【0047】
(防水シート取付補強部品取付工程)
防水シート取付補強部品取付工程では、防水材63が取り付けられた防水シート取付補強部品65を、粘着テープ62の上に設置する。防水シート取付補強部品65の水平部65aと防水材63が、粘着テープ62に貼り付けられる。
【0048】
次いで、締結部品66を、防水シート取付補強部品65の水平部65aの上方から、ねじ込んで、防水シート取付補強部品65を、既存の防水層50と化粧板25を介して、アーム部材24に取り付ける。
【0049】
(新規防水シート取付工程)
新規防水シート取付工程では、新規の防水シート67を、防水シート取付補強部品65の水平部65aの上面に、溶着によって取り付ける。
【0050】
新規の防水層60は、既存の防水層の防水処理工程と、防水シート取付補強部品取付工程と、新規防水シート取付工程とを経て、施工される。
【0051】
次に、実施例1の防水シート取付補強部品の作用について説明する。実施例1の防水シート取付補強部品65は、縁部をパラペット30の天端部Bに取り付けた既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に、新規の防水シート67を重ねて取り付けるために使用される。防水シート取付補強部品65は、既存の防止シート(第1防水シート52,第2防水シート53)の縁部と、新規の防水シート67と、の間に略水平に配置される水平部65aと、水平部65aからパラペット30の外側であって、斜め下方に向けて延在する傾斜部65bと、を備える(
図4)。
【0052】
水平部65aを有することで、防水シート取付補強部品65を既存の防止シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に取り付けし易くなると共に、新規の防水シート67を防水シート取付補強部品65に取り付けし易くなる。そのため、縁部をパラペット30の天端部Bに取り付けた既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に、新規の防水シート67を、容易に重ねて取り付けることができる。
【0053】
また、傾斜部65bを有することで、パラペット30の天端部Bの縁部を覆い隠すことができるので、見切縁が不要となり、そのうえ、防水シート取付補強部品65を意匠部品として機能させることができる。
【0054】
実施例1では、傾斜部65bの先端に、傾斜部65bの裏面側に折り曲げられた折曲部65cを有する(
図5)。これにより、パラペット30の天端部Bの縁部を覆い隠すことができるので、見切縁が不要となり、そのうえ、防水シート取付補強部品65をよりよい意匠部品として機能させることができる。
【0055】
実施例1では、折曲部65cは、貫通孔65dを有する(
図5)。これにより、折曲部65cに溜まった水を、排出することができる。そのため、メンテナンスをしなくても錆の発生を抑えることができる。
【0056】
実施例1では、縁部をパラペット30の天端部Bに取り付けた既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に、新規の防水シート67を重ねて取り付ける防水シート改修構造であって、パラペット30の天端部Bと、防水シート取付補強部品65と、の隙間を埋める防水材63を設けた(
図4)。
【0057】
これにより、パラペット30と防水シート取付補強部品65との間から水が浸入することを防ぐことができる。そのため、優れた防水性の防水シート改修構造とすることができる。
【0058】
実施例1では、防水シート取付補強部品65は、締結部品66によって、既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)を押さえつけるように取り付けられる(
図4)。
【0059】
これにより、既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)の端部がめくれないようにすることができる。そのため、耐久性のある防水シート改修構造とすることができる。
【0060】
実施例1の防水シート改修方法は、縁部をパラペット30の天端部Bに取り付けた既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に、新規の防水シート67を重ねて取り付ける。この防水シート改修方法は、既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)の縁部の上に、防水シート取付補強部品65を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、防水シート取付補強部品65の上に、新規の防水シート67の縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含む(
図6)。
【0061】
これにより、簡易な方法で、縁部をパラペット30の天端部Bに取り付けた既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に、新規の防水シート67を重ねて取り付けることができる。
【実施例2】
【0062】
まず、実施例2における防水シート改修構造の構成を説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0063】
実施例2の防水シート改修構造は、既存の防水層と防水シート取付補強部品との間に、不陸調整部材を備える点で実施例1の防水シート改修構造と相違する。
【0064】
[既存の防水層の構成]
図7は、実施例2の既存の防水層150の構成を示す構成図である。以下、
図7に基づいて、実施例2の既存の防水層150の構成を説明する。
【0065】
既存の防水層150は、塩化ビニル鋼板51の上面に、第1防水シート52が積層され、塩化ビニル鋼板51の下面に、粘着テープ55が貼り付けられて形成される。
【0066】
[新規の防水層の構成]
図8は、実施例2の新規の防水層160の構成を示す構成図である。以下、
図8に基づいて、実施例2の新規の防水層160の構成を説明する。
【0067】
新規の防水層160は、既存の防水層150の不陸部であって、既存の防水層150と、粘着テープ62を介して防水シート取付補強部品65との間に、不陸調整部材168が設けられる。不陸調整部材は、例えば塩化ビニルシートを使用することができる。
【0068】
[新規の防水層の施工方法]
図9及び
図10は、実施例2の新規の防水層160の施工方法を説明する説明図である。以下、
図9に基づいて、実施例2の新規の防水層160の施工方法を説明する。
【0069】
(不陸調整工程)
不陸調整工程では、
図9に示すように、既存の防水層150の第1防水シート52の縁部に、不陸調整部材168を設置する。
【0070】
(既存の防水層の防水処理工程)
既存の防水層の防水処理工程では、
図10に示すように、既存の防水層150の端部にコーキング剤61を充填する。次いで、粘着テープ62を、化粧板25の上面25aと、コーキング剤61と、不陸調整部材168と、を覆うように、貼り付ける。
【0071】
(防水シート取付補強部品取付工程)
防水シート取付補強部品取付工程では、防水材63が取り付けられた防水シート取付補強部品65を、粘着テープ62の上に設置する。防水シート取付補強部品65の水平部65aと防水材63が、粘着テープ62に貼り付けられる。
【0072】
次いで、締結部品66を、防水シート取付補強部品65の水平部65aの上方から、ねじ込んで、防水シート取付補強部品65を、既存の防水層50と化粧板25を介して、アーム部材24に取り付ける。
【0073】
(新規防水シート取付工程)
新規防水シート取付工程では、新規の防水シート67を、防水シート取付補強部品65の水平部65aの上面に、溶着によって取り付ける。
【0074】
新規の防水層60は、不陸調整工程と、既存の防水層の防水処理工程と、防水シート取付補強部品取付工程と、新規防水シート取付工程とを経て、施工される。
【0075】
次に、実施例2の防水シート取付補強部品の作用について説明する。実施例2では、既存の防水シート(第1防水シート52)と、防水シート取付補強部品65との間に、既存の防水シート(第1防水シート52)の不陸を調整する不陸調整部材168を設けた(
図8)。
【0076】
これにより、既存の防水シート(第1防水シート52)の不陸部を平坦にすることができる。そのため、平坦部分に、防水シート取付補強部品65を取り付けることができる。その結果、防水シート取付補強部品65と、既存の防水シート(第1防水シート52)との隙間を無くし、防水性を向上させることができる。
【0077】
実施例2の防水シート改修方法は、縁部をパラペット30の天端部Bに取り付けた既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に、新規の防水シート67を重ねて取り付ける。この防水シート改修方法は、既存の防水シートの縁部の上に、既存の防水シートの不陸を調整する不陸調整部材168を取り付ける不陸調整工程と、不陸調整部材168の上に、防水シート取付補強部品65を取り付ける防水シート取付補強部品取付工程と、防水シート取付補強部品65の上に、新規の防水シート67の縁部を取り付ける新規防水シート取付工程と、を含む(
図10)。
【0078】
これにより、簡易な方法で、縁部をパラペット30の天端部Bに取り付けた既存の防水シート(第1防水シート52,第2防水シート53)に、新規の防水シート67を重ねて取り付けることができる。なお、実施例2のこの他の構成及び作用効果については、実施例1と略同様であるため、説明を省略する。
【0079】
以上、本発明の防水シート取付補強部品、防水シート改修構造及び防水シート改修方法を実施例1及び実施例2に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、各実施例の組み合わせ、設計の変更や追加等は許容される。
【0080】
実施例1及び実施例2では、防水材63は、防水シート取付補強部品65の水平部65aに取り付けられる例を示した。しかし、防水材は、防水シート取付補強部品65の傾斜部65bに取り付けられてもよい。
【0081】
実施例1及び実施例2では、防水シート取付補強部品65の折曲部65cは、傾斜部65bから180°折り曲げられる例を示した。しかし、防水シート取付補強部品の折曲部は、この態様に限定されず、例えば傾斜部から90°曲げられてもよい。
【0082】
実施例2では、塩化ビニル鋼板51の上面に、第1防水シート52が積層され、塩化ビニル鋼板51の下面に、粘着テープ55が貼り付けられて形成された既存の防水層150に、新規の防水層160を重ねて取り付ける構成を示した。しかし、
図11に示すように、既存の防水シートとして機能する塩化ビニル鋼板51の下面に、粘着テープ55が貼り付けられて形成されさた既存の防水層250に対して、新規の防水層を重ねて取り付けてもよい。このように構成された既存の防水層250に対して、実施例1の新規の防水層60又は実施例2の新規の防水層160を適用することができる。
【0083】
本発明の防水シート取付補強部品、防水シート改修構造及び防水シート改修方法を、ユニット建物に適用する例を示した。しかし、本発明は、一般的な鉄骨構造の建物や、在来工法の建物、ツーバイフォー式の建物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 ユニット建物
10 屋根
30 パラペット
52 第1防水シート(既存の防水シートの一例)
53 第2防水シート(既存の防水シートの一例)
63 防水材
65 防水シート取付補強部品
65a 水平部
65b 傾斜部
65c 折曲部
65d 貫通孔
67 新規の防水シート
168 不陸調整部材
B 天端部