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特許7036653ロータリソレノイドの切換点検出方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ロータリソレノイドの切換点検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20220308BHJP
   H01F 7/08 20060101ALI20220308BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H02K33/16 B
H01F7/08 B
G01D5/245 110L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018074244
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019187051
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌幸
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-022703(JP,A)
【文献】特開平11-046473(JP,A)
【文献】特開2008-086180(JP,A)
【文献】国際公開第2009/150772(WO,A1)
【文献】特開2008-228380(JP,A)
【文献】特開2000-082369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0070132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
H01F 7/08
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位方向にN極とS極を配したマグネット部をシャフトに固定したマグネットロータ部と、前記シャフトを所定の回動範囲で変位可能に支持するケーシング部と、このケーシング部の内部に取付け、コイルの通電制御により発生する磁極により前記マグネットロータ部を前記回動範囲の順方向又は逆方向に変位させるステータ部とを備えるロータリソレノイドにおける前記マグネットロータ部の切換点を前記マグネット部の変位に対応して出力が変化するホール素子により検出するロータリソレノイドの切換点検出方法であって、前記マグネットロータ部の前記順方向及び前記逆方向の変位時に検出される前記ホール素子の二値化した出力における一方の出力値から他方の出力値に切換わるタイミングを用いた二つの前記切換点を、前記回動範囲の中央位置の両側にあり、かつ前記マグネット部の変位方向に対する相対位置及び前記マグネット部に対する対向間隔により、各切換点間の間隔が相対的に小さくなる特定位置を選定するとともに、前記ホール素子を当該特定位置に対応する前記ケーシング部の内面に取付けることにより前記切換点を検出することを特徴とするロータリソレノイドの切換点検出方法。
【請求項2】
変位方向にN極とS極を配したマグネット部をシャフトに固定したマグネットロータ部と、前記シャフトを所定の回動範囲で変位可能に支持するケーシング部と、このケーシング部の内部に取付け、コイルの通電制御により発生する磁極により前記マグネットロータ部を前記回動範囲の順方向又は逆方向に変位させるステータ部とを備えるロータリソレノイドMにおける前記マグネットロータ部の切換点を前記マグネット部の変位に対応して出力が変化するホール素子により検出するロータリソレノイドの切換点検出装置であって、前記ホール素子を、前記マグネットロータ部の前記順方向及び前記逆方向の変位時に検出される前記ホール素子の二値化した出力における一方の出力値から他方の出力値に切換わるタイミングを用いた二つの前記切換点を、前記回動範囲の中央位置の両側にあり、かつ前記マグネット部の変位方向に対する相対位置及び前記マグネット部に対する対向間隔により、各切換点間の間隔が相対的に小さくなる特定位置に対応する前記ケーシング部の内面に取付けてなることを特徴とするロータリソレノイドの切換点検出装置。
【請求項3】
前記ホール素子は、配線基板に表面実装し、この配線基板を前記ケーシング部の内面に取付けることを特徴とする請求項2記載のロータリソレノイドの切換点検出装置。
【請求項4】
前記配線基板と前記ケーシング部の内面間には、前記ケーシング部の内面における基準位置に対して前記配線基板を位置決めして取付ける基準位置決め部を備えることを特徴とする請求項3記載のロータリソレノイドの切換点検出装置。
【請求項5】
前記配線基板と前記ケーシング部の内面間に介在させる間隔調整用セパレータを備えることを特徴とする請求項2記載のロータリソレノイドの切換点検出装置。
【請求項6】
前記マグネットロータ部は、三角形における一つの角部に対応する位置を前記シャフトに固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置に前記マグネット部を固定するモールド部を備えて構成するとともに、前記ステータ部は、前記ケーシング部に固定して一方の端面を前記マグネット部に対面させた単一のコイルと、このコイルにより発生する磁界の磁路を形成するヨークを備えて構成することを特徴とする請求項2記載のロータリソレノイドの切換点検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネット部の変位に対応して出力が変化するホール素子によりマグネットロータ部の切換点を検出するロータリソレノイドの切換点検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネット部をシャフトに固定したマグネットロータ部と、シャフトを所定の回動範囲で変位可能に支持するケーシングと、このケーシングの内部に取付け、コイルの通電制御により発生する磁極により、マグネットロータ部を回動範囲の順方向又は逆方向に変位させるステータ部とを備えたロータリソレノイドは知られている。さらに、マグネットロータ部の回動位置(回動角度)を、ロータリソレノイドに付設した所定の位置検出装置により検出し、当該マグネットロータ部の回動変位等を制御するようにしたロータリソレノイドも知られており、この種の位置検出装置は、特許文献1に開示されている。
【0003】
同文献1に開示されるロータリソレノイドの位置検出装置は、コスト、配置スペース及び組立工数の削減を目的としたものであり、具体的には、磁路部材にコイルが巻かれ、その両端の各磁極がロータを挟むように対向するとともに、ロータは、磁性部材に、磁石が固着されて形成され、回転自在に支持されており、被駆動軸に連結される。また、各磁極間のエアギャップに、磁界の強さを検出するようにホール素子が配置されており、このホール素子の起電力とコイルに流れる電流からロータの回動角が算出されるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-275460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来におけるロータリソレノイドの位置検出装置は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、コイルに流れる電流とホール素子の起電力から回動角を算出する、いわば間接的な検出方法に基づくため、正確な回動角を得ることが困難である。しかも、ホール素子は、磁路部材の磁極間に形成されるエアギャップの中に収容することにより組付けを行うため、組付位置にバラツキを生じやすい。したがって、特定の回動位置(回動角度)をバラツキなく正確に検出する目的の用途(ロータリソレノイド)には、利用しにくい又は用できない難点があった。
【0007】
第二に、ホール素子をエアギャップの中に配設する取付構造が前提となるため、エアギャップが存在する磁路部材を使用する構造が必須の条件となる。したがって、これ以外の構造を有するロータリソレノイドには適用することが困難になる。結局、位置検出装置を付設できる特定のロータリソレノイドのタイプに限られるなど、用途が限定され、汎用性及び発展性に難がある。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したロータリソレノイドの切換点検出方法及び装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るロータリソレノイドMの切換点検出方法は、上述した課題を解決するため、変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3をシャフト4に固定したマグネットロータ部2と、シャフト4を所定の回動範囲Zrで変位可能に支持するケーシング部5と、このケーシング部5の内部に取付け、コイル7の通電制御により発生する磁極によりマグネットロータ部2を回動範囲Zrの順方向Fp又は逆方向Fnに変位させるステータ部6とを備えるロータリソレノイドMにおけるマグネットロータ部2の切換点Xcp…をマグネット部3の変位に対応して出力Voが変化するホール素子8により検出するに際し、マグネットロータ部2の順方向Fp及び逆方向Fnの変位時に検出されるホール素子8の二値化した出力Voにおける一方の出力値H(L)から他方の出力値L(H)に切換わるタイミングを用いた二つの切換点Xcp,Xcnを、回動範囲Zrの中央位置0゜の両側にあり、かつマグネット部3の変位方向Fmに対する相対位置P及びマグネット部3に対する対向間隔Gにより、各切換点Xcp,Xcn間の間隔Lgが相対的に小さくなる特定位置Xsを選定するとともに、ホール素子8を当該特定位置Xsに対応するケーシング部5の内面5iに取付けることにより切換点Xcp,Xcnを検出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るロータリソレノイドMの切換点検出装置1は、上述した課題を解決するため、変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3をシャフト4に固定したマグネットロータ部2と、シャフト4を所定の回動範囲Zrで変位可能に支持するケーシング部5と、このケーシング部5の内部に取付け、コイル7の通電制御により発生する磁極によりマグネットロータ部2を回動範囲Zrの順方向Fp又は逆方向Fnに変位させるステータ部6とを備えるロータリソレノイドMにおけるマグネットロータ部2の切換点Xcp…をマグネット部3の変位に対応して出力Voが変化するホール素子8により検出する切換点検出装置を構成する際し、ホール素子8を、マグネットロータ部2の順方向Fp及び逆方向Fnの変位時に検出されるホール素子8の二値化した出力Voにおける一方の出力値H(L)から他方の出力値L(H)に切換わるタイミングを用いた二つの切換点Xcp,Xcnを、回動範囲Zrの中央位置0゜の両側にあり、かつマグネット部3の変位方向Fmに対する相対位置P及びマグネット部3に対する対向間隔Gにより、各切換点Xcp,Xcn間の間隔Lgが相対的に小さくなる特定位置Xsに対応するケーシング部5の内面5iに取付けてなることを特徴とする。
【0011】
一方、本発明は好適な態様により、ホール素子8は、配線基板11に表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付けることができるとともに、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には、ケーシング部5の内面5iにおける基準位置Xmに対して配線基板11を位置決めして取付ける基準位置決め部12を設けることができる。また、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には、間隔調整用セパレータ13を介在させることができる。他方、マグネットロータ部2には、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を設けることができるとともに、ステータ部6には、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するヨーク15を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係るロータリソレノイドの切換点検出方法及び装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 切換点検出装置1を構成するホール素子8は、最適な取付位置となる特定位置Xsを予め選定(設定)してケーシング部5の内面5iに取付けるため、マグネットロータ部2の切換点Xcp,Xcnを正確に検出できるとともに、取付位置のバラツキを容易かつ確実に低減できることからホール素子8の取付品質も高めることができる。この結果、ロータリソレノイドMを使用する各種機器における応答性の向上や処理の高速化など、各種機器の処理能力向上に貢献できる。
【0014】
(2) 基本的に、ホール素子8は、ケーシング部5の内面5iにおける任意の位置に、その内面5iを利用して取付可能になるため、切換点検出装置1を付設するに際しては、磁気回路の構成やレイアウト等、特定の構造に左右されることなく、様々な磁気回路に設けることができる。したがって、各種ロータリソレノイドに適用可能になるなど、用途を拡大することが可能となり、汎用性及び発展性に優れる。
【0015】
(3) 切換点Xcp,Xcnに、ホール素子8の二値化した出力Voにおける一方の出力値H(L)から他方の出力値L(H)に切換わるタイミングを用いたため、二値化出力(ラッチタイプ)のホール素子8のみの利用、即ち、別途の処理回路等が不要になる。これにより、切換点検出装置1をケーシング部5の内部に容易に収容できるなど、実施の容易化、更には全体の小型化及び低コスト化に寄与できる。
【0016】
(4) 特定位置Xsに、マグネット部3の変位方向Fmに対する相対位置P及びマグネット部3に対する対向間隔Gを含めたため、ホール素子8に対する、いわば立体的な位置選定(位置設定)が可能になる。これにより、特定位置Xsに対する、より望ましい位置選定を行うことができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、ホール素子8を、配線基板11に表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付ければ、配線基板11の一定の範囲内においてホール素子8の半田付け位置を調整できるため、特定位置Xsに対するホール素子8の位置決めを容易に行うことができるとともに、併せて組付の容易化も確保できる。
【0018】
(6) 好適な態様により、配線基板11とケーシング部5の内面5i間に、ケーシング部5の内面5iにおける基準位置Xmに対して配線基板11を位置決めして取付ける基準位置決め部12を設ければ、配線基板11とケーシング部5間の位置決めを確実に行うことができるため、ケーシング部5に対するホール素子8の確実な位置決め可能になり、特定位置Xsに係わる正確性の向上及びバラツキの低減に寄与できる。
【0019】
(7) 好適な態様により、配線基板11とケーシング部5の内面5i間に間隔調整用セパレータ13を介在させれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付高さを容易に調整(設定)できるため、ホール素子8における対向間隔G(特定位置Xs)の調整(設定)も容易に行うことができる。しかも、両面接着性の間隔調整用セパレータ13を用いれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付手段にも兼用させることができる。
【0020】
(8) 好適な態様により、マグネットロータ部2を構成するに際し、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を設けて構成するとともに、ステータ部6を構成するに際し、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するヨーク15を設けて構成すれば、独立した界磁部の数量を半減できるため、部品点数の削減及び組立工数の低減によるコストダウンを図ることができる。しかも、シャフト4の軸直角方向における寸法もサイズダウンできるとともに、マグネットロータ部2の変位空間の両側にはステータ部6が存在しないため、ケーシング5を直方体状に形成する場合であっても、合理的な部品配置を容易に行うことができる。この結果、無用なデッドスペースの発生を低減し、ロータリソレノイドM全体の小型コンパクト化も容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適実施形態に係る切換点検出装置を備えるロータリソレノイドの一部を破断した内部構造を含む断面側面図、
図2】同切換点検出装置を備えるロータリソレノイドの一部を破断した内部構造を含む断面正面図、
図3】同切換点検出装置のホール素子を表面実装した配線基板の一部を省略した正面拡大図、
図4】同切換点検出装置のホール素子を表面実装した配線基板の一部を省略した側面拡大図、
図5】同切換点検出装置の特定位置を選定するためのホール素子の対向間隔を1.5〔mm〕に設定し、かつ相対位置を異なるパラメータとした際の切換点の検出結果を示すタイムチャートによるデータ図、
図6】同切換点検出装置の特定位置を選定するためのホール素子の対向間隔を0.8〔mm〕に設定し、かつ相対位置を異なるパラメータとした際の切換点の検出結果を示すタイムチャートによるデータ図、
図7】同切換点検出装置における特定位置に調整された検出結果を実際の角度を用いて示すデータ図、
図8】同切換点検出装置における偏って調整された検出結果を実際の角度を用いて示すデータ図、
図9】同切換点検出装置による検出結果のバラツキを確認するための順方向における切換点の発生頻度を示す棒グラフ、
図10】同切換点検出装置による検出結果のバラツキを確認するための逆方向における切換点の発生頻度を示す棒グラフ、
図11】同切換点検出装置による図5及び図6の全検出結果をまとめて示す折線グラフ、
図12】同切換点検出装置を適用できるロータリソレノイドの外観斜視図、
図13】同切換点検出装置を適用できるロータリソレノイドの電気系及び磁気系を示す回路図、
図14】同切換点検出装置を適用できるロータリソレノイドの作用説明図、
図15】同切換点検出装置を適用したロータリソレノイドの使用説明図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る切換点検出装置1の理解を容易にするため、ロータリソレノイドMの基本構成について、図1図2図12及び図13を参照して説明する。
【0024】
基本構成に係るロータリソレノイドMは、外郭を構成するケーシング部5を備え、図1に示すように、ケーシング本体部5mとこのケーシング本体部5mの開口部を閉塞するケーシング蓋部5cからなる。このケーシング本体部5mとケーシング蓋部5cは、それぞれ成形性及び軽量性に優れた合成樹脂素材Rにより一体成形する。この場合、合成樹脂素材Rの種類としては、特定の種類に限定するものではないが、寸法安定性及び熱安定性(耐熱性)に優れた素材、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂素材等を用いることができる。なお、図中、符号21,22(図12)は、ケーシング本体部5mの底面に設けた脚部を示す。
【0025】
また、ケーシング本体部5mには前軸受部23を一体成形するとともに、ケーシング蓋部5cには後軸受部24を一体成形する。即ち、二つの各軸受部23,24は、ケーシング部5(ケーシング本体部5m及びケーシング蓋部5c)に対して同一の合成樹脂素材Rにより一体成形する。この場合、前軸受部23は、図1及び図12に示すように、軸方向Fsに対して所定の厚さを有し、かつ径方向Fdに対して所定のリング厚を有するリング状となるように形成し、ケーシング本体部5mの外面から軸方向Fsに突出形成する。
【0026】
さらに、前軸受部23の外端面には、図1及び図12に示すように、周方向Fcに沿って所定の間隔置きに配し、かつ底部を所定の厚さに選定した複数の公差吸収凹部25f…を形成する。例示は、同一形状に選定した八つのほぼ矩形状の公差吸収凹部25f…を全周にわたって形成した例を示す。この場合、基本的には、公差吸収凹部25f…により、この内側には実質的な軸受筒部23wが形成されるため、軸受筒部23wの支持機能が損なわれないように留意する。このような公差吸収凹部25f…を設ければ、合成樹脂素材Rを使用し、比較的大きな公差が生じやすい場合であっても、機械的強度を確保しつつ、無用な公差を有効に吸収できる。
【0027】
一方、ケーシング蓋部5cに設ける後軸受部24も、図1に示すように、基本的には、上述した前軸受部23と同様に構成することができる。即ち、ケーシング蓋部5cの後軸受部24は、ケーシング本体部5mの前軸受部23に対して前後対称となる点を除いて、ケーシング本体部5m側と同一に構成できる。なお、24wは後軸受部24における軸受筒部、25r…は後軸受部24に形成した複数の公差吸収凹部をそれぞれ示す。
【0028】
したがって、このような前軸受部23及び後軸受部24を設ければ、別途製作する二つの軸受部品が不要になり、実質的な部品点数はケーシング部5のみで足りるため、部品コストの削減を図れるとともに、ケーシング部5に軸受部品を取付ける工程が不要になり、組立工数の低減による製造コストの削減を図ることができる。
【0029】
他方、2は、変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3をシャフト4に固定したマグネットロータ部を示す。シャフト4は、図1及び図2に示すように、磁性材により丸棒状に形成した回転出力軸となり、前後の位置がケーシング部5に設けた前軸受部23と後軸受部24により回動変位可能に支持される。また、シャフト4の回動変位の範囲は、図2及び図13に示すように、ケーシング部5の上内面5iuが規制部位になり、所定の回動範囲Zrに規制される。この場合、上内面5iuには、マグネットロータ部2が当接して変位が規制される左右一対の規制壁面部5p,5qを一体成形により設けている。これにより、マグネットロータ部2は、シャフト4を支点に回動し、図2中、時計方向となる順方向Fpに回動変位させれば、左側の規制壁面部5qに当接して回動変位が規制されるとともに、反時計方向となる逆方向Fnに回動変位させれば、右側の規制壁面部5pに当接して回動変位が規制される。このような規制壁面部5p,5qを設ければ、ケーシング部5の内壁及びマグネットロータ部2の一部に、位置規制手段を兼用できるため、全体構造の簡略化,コストダウン及びサイズダウンに寄与できる。
【0030】
そして、このシャフト4におけるケーシング部5の内部側の位置には可動体部26を固定する。可動体部26は、合成樹脂素材等の非磁性材により形成し、図2に示すように、全体を三角形状のモールド部14を備える。そして、このモールド部14の一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定するとともに、自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にはマグネット部3を固定する。この場合、マグネット部3は、下側のマグネット本体3mと上側のバックヨーク3yを重ねて構成するとともに、モールド部14は、下面側の一部を開口し、マグネット本体3mを露出させる。
【0031】
マグネット本体3mは、さらに、図2及び図13に示すように、二枚重ねのマグネットプレート3mu,3mdにより構成する。例示の場合、上側のマグネットプレート3muは、左側をN極にし、右側をS極にするとともに、下側のマグネットプレート3mdは、左側をS極にし、右側をN極にする。したがって、全体では四極のマグネット本体3mが構成される。なお、例示のマグネット本体3mは、二枚重ねのマグネットプレート3mu,3mdを用いたが、一枚のマグネットプレートの左右上下の四部位を四極に着磁してもよい。
【0032】
マグネットロータ部2は、可動体部26の一端側がシャフト4に固定され、他端側が自由端となるため、マグネット部3はシャフト4を支点に旋回可能となる。この結果、少なくとも変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3が構成される。なお、バックヨーク3yは、設けることが望ましいが必ずしも設けることを要しない。
【0033】
一方、ケーシング部5の内部にはステータ部6を取付ける。ステータ部6は、コイル7の通電制御により発生する磁極によりマグネットロータ部2を回動範囲Zrの順方向Fp又は逆方向Fnに変位させる機能を備える。この場合、図1及び図2に示すように、ステータ部6は、単一のコイル7を備えるとともに、ステータ部6は、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するE形のヨーク15を備える。これにより、ステータ部6は、全体をユニットに構成し、このユニットをケーシング部5の内部に収容して固定する。この結果、コイル7における一方の端面7sは、マグネット部3に対面するとともに、ヨーク15により磁気回路が形成されるため、ロータリソレノイドMの高効率化及び高性能化に寄与できる。なお、27は、プラスチック等の絶縁材により形成し、コイル7を巻回したコイルボビンを示す。
【0034】
したがって、このような構成、即ち、マグネットロータ部2を、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を設けて構成するとともに、ステータ部6を、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するヨーク15を設けて構成すれば、独立した界磁部の数量を半減できるため、部品点数の削減及び組立工数の低減によるコストダウンを図ることができる。しかも、シャフト4の軸直角方向における寸法もサイズダウンできるとともに、マグネットロータ部2の変位空間の両側にはステータ部6が存在しないため、ケーシング5を直方体状に形成する場合であっても、合理的な部品配置を容易に行うことができる。この結果、無用なデッドスペースの発生を低減し、ロータリソレノイドM全体の小型コンパクト化も容易に実現できる。以上が、本実施形態に係る切換点検出装置1を適用して好適なロータリソレノイドMの基本構成となる。
【0035】
次に、本実施形態に係る切換点検出装置1の構成について、図1図11及び図15を参照して具体的に説明する。
【0036】
この切換点検出装置1は、マグネット部3の変位に対応して出力Voが変化するホール素子8を備え、このホール素子8によりマグネットロータ部2の切換点Xcp,Xcnを検出する基本的な機能を備える。
【0037】
この場合、切換点Xcp,Xcnとは、マグネットロータ部2の変位時にホール素子8の二値化した出力Voにおける一方の出力値H(L)から他方の出力値L(H)に切換わる時点(タイミング)を意味し、マグネットロータ部2が順方向Fp(時計方向)に変位する際に発生する切換点Xcpとマグネットロータ部2が逆方向Fq(反時計方向)に変位する際に発生する切換点Xcnの二つが存在する。
【0038】
ラッチタイプのホール素子8を用いた場合、ホール素子8に対して、N極が近付けばホール素子8の出力Voの出力値はH(ハイ)になり、S極が近付けばホール素子8の出力Voの出力値はL(ロー)になる二値化信号を出力する。したがって、本実施形態におけるマグネット本体3mは、変位方向にN極とS極を有するため、ホール素子8をマグネット本体3mが変位する回動範囲Zrの中央位置に設置したとすれば、マグネットロータ部2が順方向Fpへ変位した際には、出力値Hから途中で出力値Lに切換わるとともに、逆方向Fnへ変位した際には、出力値Lから途中で出力値Hに切換わる。したがって、この出力値H(L)の切換わり(出力Voの電位変化)のタイミングを切換点Xcp,Xcnとして検出することができる。
【0039】
このように、切換点Xcp,Xcnに、ホール素子8の二値化した出力Voにおける一方の出力値H(L)から他方の出力値L(H)に切換わるタイミングを用いれば、二値化出力(ラッチタイプ)のホール素子8のみの利用、即ち、別途の処理回路等が不要になるため、切換点検出装置1をケーシング部5の内部に容易に収容できるなど、実施の容易化、更には全体の小型化及び低コスト化に寄与できる。なお、実施形態では、二値化した出力Voが直接得られるラッチタイプのホール素子8を示したが、アナログタイプのホール素子から出力するアナログ信号を外部回路で処理することにより二値化した出力Voを得る場合であってもよく、本発明におけるホール素子8には、ラッチタイプのホール素子とアナログタイプのホール素子の双方が含まれる。
【0040】
ホール素子8は、図1及び図2に示すように、ケーシング部5の内面5iに取付けるとともに、取付けるに際しては、配線基板11に対して表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付ける取付構造を採用する。配線基板11を拡大した一部を図3及び図4に示す。
【0041】
例示の場合、配線基板11は、ケーシング部5におけるケーシング蓋部5cの内面5ci(5i)であって、マグネット部3の左端部(又は右端部)を検出できる位置に取付ける。また、ケーシング蓋部5cの内面5ci(5i)と配線基板11間には、内面5ciにおける基準位置Xmに対して配線基板11を位置決めして取付ける基準位置決め部12を設ける。具体的には、配線基板11の上部(一端側)に円形の係合孔部31を形成するとともに、この係合孔部31に嵌合する円柱形の係合凸部32を内面5ciに一体形成する。この係合孔部31と係合凸部32により基準位置決め部12が構成される。そして、例示の配線基板11は、図3に示すように、三個所に、ランド35a,35b,35cを有するため、このランド35a,35b,35c上に、ホール素子8の端子8a,8b,8cを載置し、半田付けにより表面実装することができる。
【0042】
ところで、ホール素子8をケーシング部5に取付けるに際し、マグネットロータ部2の回動範囲Zrの中央位置0°に切換点Xcp,Xcnが存在すれば理想的となるが、ホール素子8は、N極が近付くことにより出力値Hを出力するが、N極が離れてもそのままの極性を維持し、他方、S極が近付くことにより出力値Lを出力するが、S極が離れてもそのままの極性を維持する。即ち、ホール素子8の出力Voは、図5に示すようなヒステリシス出力となる。
【0043】
したがって、ホール素子8の取付位置の選定は、中央位置0°を基準に単純に設定できるものではなく、ホール素子8を取付ける取付位置の選定(設定)は重要な技術的要素となる。本実施形態に係る切換点検出装置1では、ホール素子8の取付位置として、予め最適な取付位置となる特定位置Xsを選定するようにした。この場合、特定位置Xsには、マグネット部3の変位方向Fmに対する相対位置Pのみならず、マグネット部3に対するホール素子8の対向間隔Gも含まれる。
【0044】
まず、相対位置Pの設定は、上述したように、ホール素子8を配線基板11に対して表面実装するため、容易に実現することができる。即ち、図3に示すように、例示する配線基板11は、三個所に、ランド35a,35b,35cを有し、このランド35a,35b,35c上に、ホール素子8の三つの端子8a,8b,8cを半田付けにより実装するため、ホール素子8をランド35a,35b,35cに載置する際に、選定した特定位置Xsに載置すればよい。表面実装では、配線基板11の一定の範囲内においてホール素子8の半田付け位置を調整できるため、特定位置Xsに対するホール素子8の位置決めを容易に行うことができるとともに、併せて組付の容易化も確保できる。この場合、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には、前述したように、ケーシング部5内面5iの基準位置Xmに対して、配線基板11が位置決めされる基準位置決め部12が設けられるため、配線基板11とケーシング部5間の位置決めが確実に行なわれる。この結果、ケーシング部5に対するホール素子8の確実な位置決めも可能になり、特定位置Xsに係わる正確性の向上及びバラツキの低減に寄与できる。
【0045】
また、図4に示すように、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には、間隔調整用セパレータ13を介在させるため、対向間隔Gの設定も容易に実現できる。なお、間隔調整用セパレータ13の素材は特に限定されるものではなく、プラスチックフィルムや紙フィルム等のシート部材を利用できる。配線基板11とケーシング部5の内面5i間に間隔調整用セパレータ13を介在させれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付高さを容易に調整(設定)できるため、ホール素子8における対向間隔G(特定位置Xs)の調整(設定)も容易に行うことができる。しかも、両面接着性の間隔調整用セパレータ13を用いれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付手段にも兼用できる利点がある。
【0046】
このように、特定位置Xsとして、マグネット部3の変位方向Fmに対する相対位置P及びマグネット部3に対する対向間隔Gを含めれば、ホール素子8に対する、いわば立体的な位置選定(位置設定)が可能になるため、特定位置Xsに対する、より望ましい位置選定を行うことができる。なお、図4中、38,39は、ホール素子8から導出されるリードを示すとともに、40,41はリード38,39と外部配線を接続する接続ランドを示す。
【0047】
次に、特定位置Xsの選定方法及びこの選定の有効性の検証結果について、図1図11を参照して説明する。
【0048】
上述したように、使用するホール素子8を取付ける際における相対位置Pは、図3に示すように、表面実装を行うことにより実現できるとともに、対向間隔Gは、図4に示すように、間隔調整用セパレータ13を使用することにより実現できる。このため、特定位置Xsに含まれる相対位置P及び対向間隔Gを予め選定する。
【0049】
相対位置Pを選定するに際しては、図3に示すように、初期位置Xoとして、回動範囲Zrの中央位置0°を設定する。今、この初期位置Xoにおける基準位置決め部12の中心位置とホール素子8の中心位置(中央位置)間の距離Lpは、4.5〔mm〕である。そして、この4.5〔mm〕の位置を起点として、ホール素子8を、マグネット部3の変位方向の前後へ0.5〔mm〕単位で変位させた際の切換点Xcp,Xcnを検出した。実施形態の場合、基準位置決め部12に対して離れる方向において、5.0〔mm〕を設定し、基準位置決め部12に対して近付く方向において、4.0〔mm〕,3.5〔mm〕を設定した。
【0050】
また、対向間隔Gを選定するに際しては、図4に示すように、間隔調整用セパレータ13の厚さを選定することにより、1.5〔mm〕,0.8〔mm〕,0.6〔mm〕を設定し、相対位置Pと組合わせることにより、切換点Xcp,Xcnの検出を行った。
【0051】
この検出結果を図5及び図6に示す。図5は、対向間隔Gを1.5〔mm〕に設定し、かつ相対位置Pを異ならせた際におけるマグネットロータ部2の順方向Fp及び逆方向Fnにおいて検出された切換点Xcp及びXcnを示すとともに、図6は、対向間隔Gを0.8〔mm〕に設定し、かつ相対位置Pを異ならせた際におけるマグネットロータ部2の順方向Fp及び逆方向Fnにおいて検出された切換点Xcp及びXcnを示す。そして、この検出結果から、マグネットロータ部2の順方向Fp及び逆方向Fnの変位時に検出される二つの切換点Xcp,Xcnが回動範囲Zrの中央位置0°の両側にあり、かつ各切換点Xcp,Xcn間の間隔Lgが相対的に小さくなる特定位置Xsを選定した。
【0052】
例示の場合、図5(b)に示す一点鎖円で囲んだ、対向間隔Gが1.5〔mm〕(>0.8〔mm〕)であって、相対位置Pが4.0〔mm〕(中央位置0°は、4.5〔mm〕)の条件が最も良い結果を示している。
【0053】
この結果から、対向間隔Gとして、ホール素子8とマグネット部3間の間隔が短いことが必ずしも良い結果をもたらす訳ではなく、適切(最適)な間隔が存在すること、また、回動範囲Zrの中央位置0°が必ずしも良い結果をもたらす訳ではなく、適切(最適)な間隔が存在することを確認できる。
【0054】
したがって、得られた検出結果から、相対位置Pが4.0〔mm〕であって対向間隔Gが1.5〔mm〕の位置を特定位置Xsとして選定できる。なお、図7は、特定位置Xsに調整された検出結果である相対位置Pが4.0〔mm〕であって対向間隔Gが1.5〔mm〕の位置を実際の角度を用いて示すとともに、図8は、逆方向Fnに偏って調整された検出結果である相対位置Pが5.0〔mm〕であって対向間隔Gが1.5〔mm〕の位置を実際の角度を用いて示す。
【0055】
さらに、図9及び図10は、特定位置Xsに調整された検出結果、即ち、相対位置Pが4.0〔mm〕であって対向間隔Gが1.5〔mm〕となる特定位置Xsに対して、多数のロット間のバラツキを検証したデータを示す。図9は、順方向Fpにおいて検出された切換点Xcp…を示すとともに、図10は、逆方向Fnにおいて検出された切換点Xcn…を示す。図9に示すように、切換点Xcp…は、-0.5~-1.0°前後に集中するとともに、図10に示すように、切換点Xcn…は、0~-0.5°前後に集中しており、バラツキは狭い範囲に集約されていることを確認できる。
【0056】
図11は、図5及び図6に示した本実施形態に係る切換点検出装置1により検出した相対位置Pと対向間隔Gをパラメータとした切換点Xcp,Xcnの検出結果データをまとめた折線グラフを示す。図11に示すように、切換点Xcp,Xcnの分布は、一定の傾向が現れているとともに、例示の場合、4.0〔mm〕の相対位置P及び1.5〔mm〕の対向間隔Gが最も良い条件にあることを確認できる。
【0057】
そして、特定位置Xsを選定(設定)したなら、この特定位置Xsに対応する配線基板11上に、ホール素子8を表面実装により半田付けすればよく、これにより、本実施形態に係る切換点検出装置1を構成することができる。これにより、ホール素子8の取付位置に対する最適化を図ることができるとともに、これに基づき、本実施形態に係る切換点検出方法による切換点Xcp,Xcnの最適な検出を行うことができる。
【0058】
次に、本実施形態に係る切換点検出装置1を備えるロータリソレノイドMの基本動作について、図13及び図14を参照して説明する。
【0059】
図13は、ロータリソレノイドMに接続した駆動回路50を示す。この駆動回路50は、コイル7から導出する一対の接続リード53a,53bに給電するための直流源51と、この直流源51からコイル7の接続リード53a,53bに供給する直流電圧の給電又は給電停止を行うとともに、直流電圧の極性を反転させる極性切換を行う操作スイッチ52を備える。
【0060】
図13は、操作スイッチ52を一方の給電ポジションに切換えた状態を示す。これにより、コイル7に給電が行われるため、E形のヨーク15に、図13に示すS極とN極が発
生する。なお、マグネット本体3mの極性(S極,N極)は、図13に示すとおりであり、マグネットプレート3mdのN極側はヨーク15のS極側に吸引されるとともに、マグネットプレート3mdのS極側はヨーク15のS極側に対して反発する。この結果、シャフト4は、図13に示す矢印Fp方向(時計方向)に回動変位する。そして、可動体部26が図13に示す位置、即ち、可動体部26がケーシング部5の規制壁面部5qに当接(係止)した位置で停止する。
【0061】
一方、この状態から操作スイッチ52を中央に位置する給電停止ポジションに切換えた場合を想定する。この場合、ステータ部6には給電に基づく自らの磁極は発生しない。しかし、マグネット部3による磁界は維持されるため、マグネット部3及びヨーク15により形成される磁気回路により可動体部26の位置が保持される。この磁気回路による磁力線は、図14に示す点線Jmとなり、可動体部26は自己保持力により停止状態が維持される。
【0062】
他方、この停止状態から操作スイッチ52を極性反転する他方の反転給電ポジションに切換えた場合を想定する。この場合、ヨーク15には、図14に示すように、図13に示した極性に対して反転したS極とN極が発生する。これにより、マグネットプレート3mdのS極側はヨーク15のN極側に吸引され、マグネットプレート3mdのN極側はヨーク15のN極側に対して反発する。この結果、シャフト4は図14に示す矢印Fn方向(反時計方向)に回動変位する。そして、可動体部26が図14に示す位置、即ち、可動体部26がケーシング部5の規制壁面部5pに当接(係止)した位置で停止する。図14に示す点線Jp,Jqは、給電時における磁気回路を通る磁力線を示している。この際、シャフト4が回動変位する角度範囲は、図2に示した所定の回動範囲Zrとなる。
【0063】
次に、本実施形態に係る切換点検出装置1を用いた切換点検出方法を含むロータリソレノイドMの使用方法について、図13図15を参照して説明する。
【0064】
この種のロータリソレノイドMは、その用途として各種切換機構に使用される場合も少なくない。図15に、その一例として、多数のカードC…を、AタイプとBタイプに振分けるカード振分けシステム60に付設した切換機構61を示す。
【0065】
例示するカード振分けシステム60は、カード送出部62から一枚ずつカードCを送り出すとともに、送り出されたカードCは、共通供給路63を通った後、切換機構61により振分けられる。これにより、振分けられたカードCは、Aタイプ取込路63a又はBタイプ取込路63bの一方に進入する。なお、図中、Ldは共通供給路63の長さであり、通常、短い長さに設定されるものとする。
【0066】
今、カード送出部62において、次に送り出すカードCのタイプがセンサ64により識別され、AタイプのカードCaが識別された場合を想定する。この識別結果に係わる識別データはコントローラ65に送られ、コントローラ65からは切換機構61のロータリソレノイドMに、切換制御信号Dsが付与される。ロータリソレノイドMのシャフト4に取付けられている切換ブレード66が仮想線で示す切換ブレード66sの位置、即ち、Bタイプ取込路63b側に切換わっている状態にあるとすれば、この切換制御信号Dsに基づいてロータリソレノイドMが作動し、Aタイプ取込路63a側へ切換えるための回動変位を開始する。
【0067】
即ち、ロータリソレノイドMは停止状態にあり、かつ切換機構61はBタイプ取込路63b側に切換わっているため、ロータリソレノイドMに切換制御信号Dsが供給されれば、可動体部26は時計方向(矢印Fp方向)へ回動変位し、前述したように、図13の位置に達して停止する。この際、シャフト4には一体の切換ブレード66を備えるため、図15に仮想線で示す切換ブレード66sも対応して回動変位し、図15に実線で示す切換ブレード66の位置、即ち、Aタイプ取込路63a側に切換わる。
【0068】
一方、本実施形態に係る切換点検出装置1は、前述したように、マグネット部3の変位に対応して出力Voが変化するホール素子8によりマグネットロータ部2の切換点Xcp,Xcnを検出する機能を備える。したがって、マグネットロータ部2が図14に示す回動開始位置にある場合、切換点検出装置1におけるホール素子8の出力Voは、図5(b)に示すように出力値Hが出力する。そして、回動開始位置からシャフト4が時計方向(矢印Fp方向)へ回動変位し、回動範囲Zrの中央位置付近である切換点Xcpに達すれば、ホール素子8による切換点Xcpの検出が行われる。即ち、切換点Xcpにおいて、ホール素子8の出力Voは、出力値Hから出力値Lに切換わる。
【0069】
さらに、この出力Voは、切換点検出部67に付与されるため、切換点検出部67からコントローラ65に切換点検出信号Ddが付与されるとともに、コントローラ65からカード送出機構68にカード送出開始信号Dfが供給される。この結果、カード送出機構68が作動する。例示の場合、送出ローラが回転し、一枚のカードCaが送り出されるとともに、送り出されたカードCaは、共通供給路63を落下した後、Aタイプ取込路63aに取り込まれる。
【0070】
この後、カード送出部62において、次に送り出すカードCのタイプとして、BタイプのカードCbが識別されれば、基本的に、上述した各部の制御に対して反対方向の制御が行われるとともに、上述した各部の動作に対して反対方向の動作が行われる。即ち、カード送出部62において、次に送り出すカードCのタイプがセンサ64によりBタイプのカードCbが識別され、この識別結果に係わる識別データがコントローラ65に送られる。そして、コントローラ65からは、切換機構61のロータリソレノイドMに対応する切換制御信号Dsが送られる。この際、ロータリソレノイドMのシャフト4に取付けられている切換ブレード66は、実線で示す切換ブレード66の位置に切換わっているため、この切換制御信号Dsに基づいてロータリソレノイドMが作動し、Bタイプ取込路63b側へ切換えるための回動変位を開始する。
【0071】
即ち、ロータリソレノイドMは停止状態にあり、Aタイプ取込路63a側に切換わっているため、ロータリソレノイドMに切換制御信号Dsが供給されれば、可動体部26は反時計方向(矢印Fn方向)へ回動変位し、図14の位置に達して停止するとともに、この際、図15に実線で示す切換ブレード66も回動変位し、図15に仮想線で示す切換ブレード66sの位置であるBタイプ取込路63b側に切換わる。
【0072】
一方、マグネットロータ部2が図13に示す回動開始位置にある場合、切換点検出装置1におけるホール素子8の出力Voは、図5(b)に示すように出力値Lが出力する。そして、シャフト4が反時計方向(矢印Fn方向)に回動変位し、回動範囲Zrの中央位置付近である切換点Xcnに達すれば、ホール素子8により切換点Xcnが検出される。即ち、ホール素子8の出力Voは、出力値Lから出力値Hに切換わる。
【0073】
さらに、この出力Voは、切換点検出部67に付与されるため、切換点検出部67からコントローラ65に切換点検出信号Ddが付与される。これにより、コントローラ65からカード送出機構68にカード送出開始信号Dfが供給され、カード送出機構68が作動する。例示の場合、送出ローラが回転し、一枚のカードCbが送り出されるとともに、送り出されたカードCbは、共通供給路63を落下した後、Bタイプ取込路63bに取り込まれる。このように一連の動作が順次行われ、多数のカードC(Ca,Cb)…に対する振分け処理が行われる。
【0074】
ところで、この際、誤動作を防止する観点から切換点Xcp,Xcnに対する正確な検出は重要な技術的要素となる。即ち、切換点Xcp,Xcnの検出タイミングは、カードCの送出開始タイミングとなるため、切換点Xcp,Xcnが不正確或いはバラツキのある状態で検出されれば、例えば、本来、Aタイプ取込路63aに取り込まれるカードCaが、誤ってBタイプ取込路63bに取り込まれるなどの誤動作の原因となる。この場合、切換点Xcp,Xcnの検出タイミングから、カードCの送出開始タイミングを時間的に遅らせれば、このような誤動作を回避できるも、反面、処理速度(振分け速度)が遅くなり、処理の高速化や効率化を実現できない問題を生じる。
【0075】
したがって、切換点Xcp,Xcnの検出タイミングをバラツキなく正確に行うことは、この種のカード振分けシステム60にとって重要な課題となる。
【0076】
本実施形態に係る切換点検出装置1(及び切換点検出方法)では、基本的に、変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3をシャフト4に固定したマグネットロータ部2と、シャフト4を所定の回動範囲Zrで変位可能に支持するケーシング部5と、このケーシング部5の内部に取付け、コイル7の通電制御により発生する磁極によりマグネットロータ部2を回動範囲Zrの順方向Fp又は逆方向Fnに変位させるステータ部6とを備えるロータリソレノイドMにおけるマグネットロータ部2の切換点Xcp…をマグネット部3の変位に対応して出力Voが変化するホール素子8により検出するに際し、マグネットロータ部2の順方向Fp及び逆方向Fnの変位時に検出される二つの切換点Xcp,Xcnが回動範囲Zrの中央位置0°の両側にあり、かつ各切換点Xcp,Xcn間の間隔Lgが相対的に小さくなる特定位置Xsを選定し、ホール素子8を当該特定位置Xsに対応するケーシング部5の内面5iに取付けることにより切換点Xcp,Xcnを検出するようにしたため、マグネットロータ部2の切換点Xcp,Xcnを正確に検出できるとともに、取付位置のバラツキを容易かつ確実に低減できることからホール素子8の取付品質も高めることができる。この結果、ロータリソレノイドMを使用する各種機器における応答性の向上や処理の高速化など、各種機器の処理能力向上に貢献できる。
【0077】
しかも、基本的に、ホール素子8は、ケーシング部5の内面5iにおける任意の位置に、その内面5iを利用して取付可能になるため、切換点検出装置1を付設するに際しては、磁気回路の構成やレイアウト等、特定の構造に左右されることなく、様々な磁気回路に設けることができる。したがって、各種ロータリソレノイドに適用可能になるなど、用途を拡大することが可能となり、汎用性及び発展性に優れる。
【0078】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0079】
例えば、ホール素子8は、配線基板11に表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付ける場合を示したが、ホール素子8をスルーホール方式により配線基板11に実装し、この配線基板11を位置調整可能な介在部材を介してケーシング部5の内面5iに取付ける場合であっても同様に実施可能であり、表面実装は必須の構成要素になるものではない。また、配線基板11とケーシング部5の内面5i間に設ける基準位置決め部12は、位置決め可能な手段であれば、例示の構成に限定されるものではなく、各種位置決め構造により構成できる。一方、間隔調整用セパレータ13は、事前に用意した異なる厚さを有する複数の間隔調整用セパレータ13…から選択した一つであってもよいし、複数の間隔調整用セパレータ13…を重ねて(組合わせて)使用してもよく、使用する数量は任意である。他方、ロータリソレノイドMとして、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を設けたマグネットロータ部2を備えるとともに、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を構成するヨーク15を設けたステータ部6を備えるタイプを例示したが、他の形態に基づくロータリソレノイドMであってもよい。したがって、切換点検出装置1を適用できるロータリソレノイドMは、例示の構成に限定されるものではなく、各種原理を採用した様々なロータリソレノイドに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る切換点検出方法及び装置は、マグネット部の変位に対応して出力が変化するホール素子によりマグネットロータ部の切換点を検出する機能を必要とする各種ロータリソレノイドに利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1:切換点検出装置,2:マグネットロータ部,3:マグネット部,4:シャフト,5:ケーシング部,5i:ケーシング部の内面,6:ステータ部,7:コイル,7s:コイルの一方の端面,8:ホール素子,11:配線基板,12:基準位置決め部,13:間隔調整用セパレータ,14:モールド部,15:ヨーク,M:ロータリソレノイド,Fm:変位方向,Fp:順方向,Fn:逆方向,Zr:回動範囲,Vo:出力,Xcp:切換点,Xcn:切換点,Xs:特定位置,Xm:基準位置,Lg:間隔,H:一方の出力値,L:他方の出力値,G:対向間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15