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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ロータリソレノイドの切換速度検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/12 20060101AFI20220308BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20220308BHJP
【FI】
H02K33/12
H02K11/215
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018074245
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019187052
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌幸
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/031964(WO,A1)
【文献】特開2003-024871(JP,A)
【文献】特開2006-087208(JP,A)
【文献】国際公開第2009/150772(WO,A1)
【文献】特開2008-228380(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199313(WO,A1)
【文献】特開昭63-054546(JP,A)
【文献】特開2004-029064(JP,A)
【文献】中国実用新案第205647225(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/12
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位方向にN極とS極を配したマグネット部をシャフトに固定したマグネットロータ部と、前記シャフトを所定の回動範囲で変位可能に支持するケーシング部と、このケーシング部の内部に取付け、コイルの通電制御により発生する磁極により前記マグネットロータ部を前記回動範囲の順方向又は逆方向に変位させるステータ部とを有するロータリソレノイドの切換速度を検出するロータリソレノイドの切換速度検出装置であって、前記ケーシング部の内面における前記マグネットロータ部の前記回動範囲の中間位置に配設し、かつ前記マグネット部の位置に対応して出力が変化するアナログタイプのホール素子と、前記マグネットロータ部の前記順方向又は前記逆方向への変位時における前記回動範囲の変位時間を検出して前記ロータリソレノイドの切換速度を算出し、算出した当該切換速度を、前記ロータリソレノイドの切換対象となる切換機構と協動する協動系システムの動作タイミングの制御に用いる速度検出処理部とを備えてなることを特徴とするロータリソレノイドの切換速度検出装置。
【請求項2】
前記ホール素子は、配線基板に表面実装し、この配線基板を前記ケーシング部の内面に取付けることを特徴とする請求項1記載のロータリソレノイドの切換速度検出装置。
【請求項3】
前記配線基板と前記ケーシング部の内面間には、前記ケーシング部の内面における基準位置に対して前記配線基板を位置決めして取付ける基準位置決め部を備えることを特徴とする請求項2記載のロータリソレノイドの切換速度検出装置。
【請求項4】
前記配線基板と前記ケーシング部の内面間に介在させる間隔調整用セパレータを備えることを特徴とする請求項2又は3記載のロータリソレノイドの切換速度検出装置。
【請求項5】
前記マグネットロータ部は、三角形における一つの角部に対応する位置を前記シャフトに固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置に前記マグネット部を固定するモールド部を備えて構成するとともに、前記ステータ部は、前記ケーシング部に固定して一方の端面を前記マグネット部に対面させた単一のコイルと、このコイルにより発生する磁界の磁路を形成するヨークを備えて構成することを特徴とする請求項1記載のロータリソレノイドの切換速度検出装置。
【請求項6】
前記速度検出処理部は、前記回動範囲の両端位置における前記ホール素子の出力電圧の最小電圧と最大電圧を設定し、前記マグネットロータ部の変位時における前記最小電圧を検出した時点又は前記最大電圧を検出した時点に基づいて前記変位時間を検出することを特徴とする請求項1記載のロータリソレノイドの切換速度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネット部の変位に対応して出力が変化するホール素子によりロータリソレノイドの切換速度を検出するロータリソレノイドの切換速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネットをシャフトに固定したマグネットロータ部と、シャフトを所定の回動範囲で変位可能に支持するケーシングと、このケーシングの内部に取付け、コイルの通電制御により発生する磁極により、マグネットロータ部を回動範囲の順方向又は逆方向に変位させるステータ部とを備えたロータリソレノイドは知られている。さらに、マグネットロータ部の回動位置(回動角度)を、ロータリソレノイドに付設した所定の位置検出装置により検出し、当該マグネットロータ部の回動変位等を制御するようにしたロータリソレノイドも知られており、この種の位置検出装置は、特許文献1に開示されている。
【0003】
同文献1に開示されるロータリソレノイドの位置検出装置は、コスト、配置スペース及び組立工数の削減を目的としたものであり、具体的には、磁路部材にコイルが巻かれ、その両端の各磁極がロータを挟むように対向するとともに、ロータは、磁性部材に、磁石が固着されて形成され、回転自在に支持されており、被駆動軸に連結される。また、各磁極間のエアギャップに、磁界の強さを検出するようにホール素子が配置されており、このホール素子の起電力とコイルに流れる電流からロータの回動角が算出されるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-275460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来におけるロータリソレノイドの位置検出装置は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、上述した位置検出装置は、ホール素子を利用し、このホール素子をロータリソレノイドに内蔵させて構成するため、ロータリソレノイドの外部には別途の位置検出装置を設ける必要がない利点を有するも、ホール素子の機能としては、ロータの変位時における回動位置(回動角)を検出する機能に留まり、これ以上の機能を有するものではない。一方、ロータリソレノイドの用途によっては切換速度が重要になる場合もあり、この場合、切換速度は重要な技術的要素になるが、従来の位置検出装置の場合、切換速度の検出までは想定しておらず、ロータリソレノイドの多機能性及び多様性を高める観点からは、必ずしも十分であるとはいえない。
【0007】
第二に、ホール素子をエアギャップの中に配設する取付構造が前提となるため、エアギャップが存在する磁路部材を使用する構造が必須の条件となる。したがって、これ以外の構造を有するロータリソレノイドには適用することが困難になる。結局、位置検出装置を付設できる特定のロータリソレノイドのタイプに限られるなど、用途が限定され、汎用性及び発展性に難がある。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したロータリソレノイドの切換速度検出装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るロータリソレノイドMの切換速度検出装置1は、上述した課題を解決するため、変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3をシャフト4に固定したマグネットロータ部2と、シャフト4を所定の回動範囲Zrで変位可能に支持するケーシング部5と、このケーシング部5の内部に取付け、コイル7の通電制御により発生する磁極によりマグネットロータ部2を回動範囲Zrの順方向Fp又は逆方向Fnに変位させるステータ部6とを有するロータリソレノイドMの切換速度Rvを検出する切換速度検出装置を構成するに際して、ケーシング部5の内面5iにおけるマグネットロータ部2の回動範囲Zrの中間位置Xsに配設し、かつマグネット部3の位置に対応して出力電圧Veが変化するアナログタイプのホール素子8と、マグネットロータ部2の順方向Fp又は逆方向Fnへの変位時における回動範囲Zrの変位時間Tmを検出してロータリソレノイドMの切換速度Rvを算出し、算出した当該切換速度Rvを、ロータリソレノイドMの切換対象となる切換機構16と協動する協動系システム17の動作タイミングの制御に用いる速度検出処理部9とを備えてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は好適な態様により、ホール素子8は、配線基板11に表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付けることができるとともに、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には、ケーシング部5の内面5iにおける基準位置Xmに対して配線基板11を位置決めして取付ける基準位置決め部12を設けることができる。さらに、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には間隔調整用セパレータ13を介在させることができる。一方、マグネットロータ部2は、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を備えて構成できるとともに、ステータ部6は、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するヨーク15を備えて構成できる。他方、速度検出処理部9は、回動範囲Zrの両端位置におけるホール素子8の出力電圧Veの最小電圧Vesと最大電圧Vemを設定し、マグネットロータ部2の変位時における最小電圧Vesを検出した時点又は最大電圧Vemを検出した時点に基づいて変位時間Tmを検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るロータリソレノイドの切換速度検出装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) ホール素子8を利用し、このホール素子8をロータリソレノイドMに内蔵させるという基本的構成を確保しつつ、ロータリソレノイドMの外部に別途の検出手段を設けることなく、目的の切換速度検出装置1を構築することができる。したがって、切換速度Rvが重要になるロータリソレノイドMの用途においても十分に対応できるなど、ロータリソレノイドMの多機能性及び多様性を高めることができるとともに、容易かつ低コストに実施できる。この結果、ロータリソレノイドMを使用する各種機器における応答性の向上や処理の高速化など、各種機器の処理能力向上に貢献できる。
【0013】
(2) 基本的に、ホール素子8は、ケーシング部5の内面5iにおける任意の位置に、その内面5iを利用して取付可能になるため、切換点検出装置1を付設するに際しては、磁気回路の構成やレイアウト等、特定の構造に左右されることなく、様々な磁気回路に設けることができる。したがって、各種ロータリソレノイドに適用可能になるなど、用途の拡大が可能となり、汎用性及び発展性に優れる。
【0014】
(3) 速度検出処理部9から得る切換速度Rvを、ロータリソレノイドMの切換対象となる切換機構16と協動する協動系システム17の動作タイミングの制御に用いたため、協動系システム17における応答性の向上や処理の高速化など、協動系システム17の処理能力向上に貢献できる。
【0015】
(4) 好適な態様により、ホール素子8を、配線基板11に表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付ければ、配線基板11の一定の範囲内においてホール素子8の半田付け位置を調整できるため、取付位置となる中間位置Xsに対するホール素子8の位置決めを容易に行うことができるとともに、併せて組付の容易化も確保できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、配線基板11とケーシング部5の内面5i間に、ケーシング部5の内面5iにおける基準位置Xmに対して配線基板11を位置決めして取付ける基準位置決め部12を設ければ、配線基板11とケーシング部5間の位置決めを確実に行うことができるため、ケーシング部5に対するホール素子8の位置決め、即ち、中間位置Xsに対するホール素子8の確実な位置決め、更にはマグネット部3に対する検出の正確性向上及びバラツキの低減に寄与できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、配線基板11とケーシング部5の内面5i間に間隔調整用セパレータ13を介在させれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付高さを容易に調整(設定)できるため、ホール素子8とマグネット部3間の間隔Gの調整(設定)も容易に行うことができる。しかも、両面接着性の間隔調整用セパレータ13を用いれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付手段にも兼用させることができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、マグネットロータ部2を構成するに際し、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を設けて構成するとともに、ステータ部6を構成するに際し、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するヨーク15を設けて構成すれば、独立した界磁部の数量を半減できるため、部品点数の削減及び組立工数の低減によるコストダウンを図ることができる。しかも、シャフト4の軸直角方向における寸法もサイズダウンできるとともに、マグネットロータ部2の変位空間の両側にはステータ部6が存在しないため、ケーシング5を直方体状に形成する場合であっても、合理的な部品配置を容易に行うことができる。この結果、無用なデッドスペースの発生を低減し、ロータリソレノイドM全体の小型コンパクト化も容易に実現できる。
【0019】
(8) 好適な態様により、速度検出処理部9を構成するに際し、回動範囲Zrの両端位置におけるホール素子8の出力電圧Veの最小電圧Vesと最大電圧Vemを設定し、マグネットロータ部2の変位時における最小電圧Vesを検出した時点又は最大電圧Vemを検出した時点に基づいて変位時間Tmを検出するようにすれば、ホール素子8における特に出力電圧Veの大きさを利用することにより必要とする変位時間Tmの検出を容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適実施形態に係る切換速度検出装置を備えるロータリソレノイドの一部を破断した内部構造を含む全体構成図、
図2】同切換速度検出装置を備えるロータリソレノイドの一部を破断した内部構造を含む断面正面図、
図3】同切換速度検出装置のブロック系統図、
図4】同切換速度検出装置のホール素子を表面実装した配線基板の一部を省略した正面拡大図、
図5】同切換速度検出装置のホール素子を表面実装した配線基板の一部を省略した側面拡大図、
図6】同切換速度検出装置に備えるホール素子の最大電圧に対する出力比とマグネットロータ部の回動角度の順方向回動変位時の特性図、
図7】同切換速度検出装置に備えるホール素子の最大電圧に対する出力比とマグネットロータ部の回動角度の逆方向回動変位時の特性図、
図8】同切換速度検出装置に備えるホール素子の出力電圧を最大電圧に対する出力比に変換する原理説明図、
図9】同切換速度検出装置を適用できるロータリソレノイドの外観斜視図、
図10】同切換速度検出装置を適用できるロータリソレノイドの電気系及び磁気系を示す回路図、
図11】同切換速度検出装置を適用できるロータリソレノイドの作用説明図、
図12】同切換速度検出装置を適用したロータリソレノイドの使用例を示す協動系システムの全体概要図、
図13図12に示す協動系システムの使用方法を説明するための振分け処理に係わるフローチャート、
図14図12に示す協動系システムの使用方法を説明するための振分け処理に係わるフローチャート、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る切換速度検出装置1の理解を容易にするため、ロータリソレノイドMの基本構成について、図1図2図9及び図10を参照して説明する。
【0023】
基本構成に係るロータリソレノイドMは、外郭を構成するケーシング部5を備え、図2に示すように、ケーシング本体部5mとこのケーシング本体部5mの開口部を閉塞するケーシング蓋部5cからなる。このケーシング本体部5mとケーシング蓋部5cは、それぞれ成形性及び軽量性に優れた合成樹脂素材により一体成形する。この場合、合成樹脂素材の種類としては、特定の種類に限定するものではないが、寸法安定性及び熱安定性(耐熱性)に優れた素材、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂素材等を用いることができる。なお、図中、符号21,22(図9)は、ケーシング本体部5mの底面に設けた脚部を示す。
【0024】
また、ケーシング本体部5mには前軸受部23を一体成形するとともに、ケーシング蓋部5cには後軸受部24を一体成形する。即ち、二つの各軸受部23,24は、ケーシング部5(ケーシング本体部5m及びケーシング蓋部5c)に対して同一の合成樹脂素材Rにより一体成形する。この場合、前軸受部23は、図2及び図9に示すように、軸方向Fsに対して所定の厚さを有し、かつ径方向Fdに対して所定のリング厚を有するリング状となるように形成し、ケーシング本体部5mの外面から軸方向Fsに突出形成する。
【0025】
さらに、前軸受部23の外端面には、図2及び図9に示すように、周方向Fcに沿って所定の間隔置きに配し、かつ底部を所定の厚さに選定した複数の公差吸収凹部25f…を形成する。例示は、同一形状に選定した八つのほぼ矩形状の公差吸収凹部25f…を全周にわたって形成した例を示す。この場合、基本的には、公差吸収凹部25f…により、この内側には実質的な軸受筒部23wが形成されるため、軸受筒部23wの支持機能が損なわれないように留意する。このような公差吸収凹部25f…を設ければ、合成樹脂素材Rを使用し、比較的大きな公差が生じやすい場合であっても、機械的強度を確保しつつ、無用な公差を有効に吸収できる。
【0026】
一方、ケーシング蓋部5cに設ける後軸受部24も、図2に示すように、基本的には、上述した前軸受部23と同様に構成することができる。即ち、ケーシング蓋部5cの後軸受部24は、ケーシング本体部5mの前軸受部23に対して前後対称となる点を除いて、ケーシング本体部5m側と同一に構成できる。なお、24wは後軸受部24における軸受筒部、25r…は後軸受部24に形成した複数の公差吸収凹部をそれぞれ示す。
【0027】
したがって、このような前軸受部23及び後軸受部24を設ければ、別途製作する二つの軸受部品が不要になり、実質的な部品点数はケーシング部5のみで足りるため、部品コストの削減を図れるとともに、ケーシング部5に軸受部品を取付ける工程が不要になり、組立工数の低減による製造コストの削減を図ることができる。
【0028】
他方、2は、変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3をシャフト4に固定したマグネットロータ部を示す。シャフト4は、図1及び図2に示すように、磁性材により丸棒状に形成した回転出力軸となり、前後の位置がケーシング部5に設けた前軸受部23と後軸受部24により回動変位可能に支持される。また、シャフト4の回動変位の範囲は、図1及び図10に示すように、ケーシング部5の上内面5iuが規制部位になり、所定の回動範囲Zrに規制される。この場合、上内面5iuには、マグネットロータ部2が当接して変位が規制される左右一対の規制壁面部5p,5qを一体成形により設けている。これにより、マグネットロータ部2は、シャフト4を支点に回動し、図1中、時計方向となる順方向Fpに回動変位させれば、左側の規制壁面部5qに当接して回動変位が規制されるとともに、反時計方向となる逆方向Fnに回動変位させれば、右側の規制壁面部5pに当接して回動変位が規制される。このような規制壁面部5p,5qを設ければ、ケーシング部5の内壁及びマグネットロータ部2の一部に、位置規制手段を兼用できるため、全体構造の簡略化,コストダウン及びサイズダウンに寄与できる。
【0029】
そして、このシャフト4におけるケーシング部5の内部側の位置には可動体部26を固定する。可動体部26は、合成樹脂素材等の非磁性材により形成し、図1に示すように、全体を三角形状のモールド部14を備える。そして、このモールド部14の一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定するとともに、自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にはマグネット部3を固定する。この場合、マグネット部3は、下側のマグネット本体3mと上側のバックヨーク3yを重ねて構成するとともに、モールド部14は、下面側の一部を開口し、マグネット本体3mを露出させる。
【0030】
マグネット本体3mは、さらに、図1及び図10に示すように、二枚重ねのマグネットプレート3mu,3mdにより構成する。例示の場合、上側のマグネットプレート3muは、左側をN極にし、右側をS極にするとともに、下側のマグネットプレート3mdは、左側をS極にし、右側をN極にする。したがって、全体では四極のマグネット本体3mが構成される。なお、例示のマグネット本体3mは、二枚重ねのマグネットプレート3mu,3mdを用いたが、一枚のマグネットプレートの左右上下の四部位を四極に着磁してもよい。
【0031】
マグネットロータ部2は、可動体部26の一端側がシャフト4に固定され、他端側が自由端となるため、マグネット部3はシャフト4を支点に旋回可能となる。この結果、少なくとも変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3が構成される。なお、バックヨーク3yは、設けることが望ましいが必ずしも設けることを要しない。
【0032】
一方、ケーシング部5の内部にはステータ部6を取付ける。ステータ部6は、コイル7の通電制御により発生する磁極によりマグネットロータ部2を回動範囲Zrの順方向Fp又は逆方向Fnに変位させる機能を備える。この場合、図1及び図2に示すように、ステータ部6は、単一のコイル7を備えるとともに、ステータ部6は、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するE形のヨーク15を備える。これにより、ステータ部6は、全体をユニットに構成し、このユニットをケーシング部5の内部に収容して固定する。この結果、コイル7における一方の端面7sは、マグネット部3に対面するとともに、ヨーク15により磁気回路が形成されるため、ロータリソレノイドMの高効率化及び高性能化に寄与できる。なお、27は、プラスチック等の絶縁材により形成し、コイル7を巻回したコイルボビンを示す。
【0033】
したがって、このような構成、即ち、マグネットロータ部2を、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を設けて構成するとともに、ステータ部6を、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を形成するヨーク15を設けて構成すれば、独立した界磁部の数量を半減できるため、部品点数の削減及び組立工数の低減によるコストダウンを図ることができる。しかも、シャフト4の軸直角方向における寸法もサイズダウンできるとともに、マグネットロータ部2の変位空間の両側にはステータ部6が存在しないため、ケーシング5を直方体状に形成する場合であっても、合理的な部品配置を容易に行うことができる。この結果、無用なデッドスペースの発生を低減し、ロータリソレノイドM全体の小型コンパクト化も容易に実現できる。以上が、本実施形態に係る切換速度検出装置1を適用して好適なロータリソレノイドMの基本構成となる。
【0034】
次に、本実施形態に係る切換速度検出装置1の構成について、図1図8及び図12を参照して具体的に説明する。
【0035】
切換速度検出装置1は、マグネットロータ部2(マグネット部3)の変位に対応して出力電圧Veが変化するアナログタイプのホール素子8を備える。
【0036】
このホール素子8は、図1及び図2に示すように、ケーシング部5の内面5iに取付けるとともに、取付けるに際しては、配線基板11に対して表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付ける取付構造を採用する。配線基板11を拡大した一部を図4及び図5に示す。
【0037】
例示の場合、配線基板11は、ケーシング部5におけるケーシング蓋部5cの内面5ci(5i)であって、マグネット部3の左端部(又は右端部)を検出できる位置に取付ける。また、ケーシング蓋部5cの内面5ci(5i)と配線基板11間には、内面5ciにおける基準位置Xmに対して配線基板11を位置決めして取付ける基準位置決め部12を設ける。具体的には、配線基板11の上部(一端側)に円形の係合孔部31を形成するとともに、この係合孔部31に嵌合する円柱形の係合凸部32を内面5ciに一体形成する。この係合孔部31と係合凸部32により基準位置決め部12が構成される。そして、例示の配線基板11は、図4に示すように、三個所に、ランド35a,35b,35cを有するため、このランド35a,35b,35c上に、ホール素子8の端子8a,8b,8cを載置し、半田付けにより表面実装することができる。
【0038】
この際、ホール素子8の取付位置は、図4に示す中間位置Xsを選定する。この中間位置Xsは、マグネットロータ部2の回動範囲Zrの中央位置0°に対応する。したがって、例示の場合、マグネットロータ部2は、中央位置0°に対して順方向Fpへ+10°回動変位できるとともに、中央位置0°に対して逆方向Fnへ-10°回動変位できる。この中間位置Xsへの位置決めは、上述したように、ホール素子8を配線基板11に対して表面実装するため、容易に設定できる。このように、表面実装では、配線基板11の一定の範囲内においてホール素子8の半田付け位置を調整することができるため、取付位置となる中間位置Xsに対するホール素子8の位置決めを容易に行うことができるとともに、併せて組付の容易化も確保できる。
【0039】
図8(a)は、マグネットロータ部2を、中央位置0°に対して、逆方向Fnとなる-10°の位置から順方向Fpとなる+10°の位置まで回動変位させた際におけるホール素子8の出力電圧Ve特性を示す。したがって、例示の場合、-10°の位置における出力電圧Veは最小電圧Vesとなり、+10°の位置における出力電圧Veは最大電圧Vemとなる。
【0040】
この場合、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には、前述したように、ケーシング部5内面5iの基準位置Xmに対して、配線基板11が位置決めされる基準位置決め部12が設けられるため、配線基板11とケーシング部5間の位置決めが確実に行なわれる。この結果、ケーシング部5に対するホール素子8の位置決め、即ち、中間位置Xsに対するホール素子8の確実な位置決め、更にはマグネット部3に対する検出の正確性向上及びバラツキの低減に寄与できる。
【0041】
また、図5に示すように、配線基板11とケーシング部5の内面5i間には、間隔調整用セパレータ13を介在させる。なお、間隔調整用セパレータ13の素材は特に限定されるものではなく、プラスチックフィルムや紙フィルム等のシート部材を利用できる。このように、配線基板11とケーシング部5の内面5i間に間隔調整用セパレータ13を介在させれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付高さを容易に調整(設定)できるため、ホール素子8とマグネット部3間の間隔Gの調整(設定)も容易に行うことができる。しかも、両面接着性の間隔調整用セパレータ13を用いれば、ケーシング部5の内面5iに対する配線基板11の取付手段にも兼用できる利点がある。なお、図4中、38a,38bは、ホール素子8から導出されるリードを示すとともに、39a,39bはリード38a,38bと外部配線40a,40bを接続する接続ランドを示す。
【0042】
さらに、切換速度検出装置1は、マグネットロータ部2の順方向Fp又は逆方向Fnへの変位時の回動範囲Zrにおける変位時間Tmを検出してロータリソレノイドMの切換速度Rvを算出する速度検出処理部9を備える。
【0043】
速度検出処理部9は、図1に示すように、前述したホール素子8を接続するコントローラ10の一部を利用する。即ち、コントローラ10はコンピュータ処理機能を備えるため、このコンピュータ処理機能の一部を利用して速度検出処理部9を構成する。したがって、コントローラ10は、速度検出処理部9と、この速度検出処理部9を除くコントローラ本体10mにより構成し、ホール素子8の出力電圧Veは外部配線40a,40bを介して速度検出処理部9に付与される。
【0044】
一方、実施形態として示すロータリソレノイドMは、一例として後述する切換機構16(図12)に利用可能であり、この切換機構16は例示する協動系システム17に組込まれる。したがって、コントローラ10、特に、コントローラ本体10mは、協動系システム17を含む全体の制御を司る機能を備え、速度検出処理部9から得られる切換速度Rvに係わるデータは、コントローラ本体10mに付与される。
【0045】
図3に、切換速度検出装置1の構成、特に、速度検出処理部9の処理系統をブロック系統により示す。9aは電圧処理部である。ホール素子8からは、図8(a)に示すように、回動角度-10°の位置における最小電圧Vesと、回動角度+10°の位置における最大電圧Vemが付与されるため、電圧処理部9aは、図8(b)に示すように、最大電圧Vemと最小電圧Vesの電圧差を、百分率に変換して出力する機能を備える。したがって、最小電圧Vesは「0」に、最大電圧Vemは「100」となるように変換される。
【0046】
図6及び図7は、百分率に変換した後のホール素子8の出力特性を示す。図6及び図7は、試料数として43点の結果を分布させて描いたものであり、いずれの特性もハッチングエリアに収まっていることを示している。図6は、回動角度-10°から図1中の時計方向(矢印Fp方向)へ回動角度+10°回動変位させたときの特性を示し、図7は、回動角度+10°から図1中の反時計方向(矢印Fn方向)へ回動角度-10°回動変位させたときの特性を示す。この結果から明らかなように、バラツキは一定の範囲に収まっていることを確認できる。
【0047】
また、9bは変位時間検出部、9cは計時部(タイマ部)である。この変位時間検出部9bは、回動角度-10°から+10°まで回動変位する際における-10°から+10°に達するまでの変位時間(切換時間)Tmを検出する機能を備える。この場合、変位時間Tmの検出は様々な方法が考えられるが、本実施形態では、ホール素子8の出力電圧Ve、即ち、変換後の「0」から「100」までを監視して検出する。これにより、実際の動作に対応した時間を得ることができる。これにより、変位時間検出部9bからは検出した変位時間Tmに係わるデータが出力する。
【0048】
9dは、速度算出部である。この速度算出部9dは、百分率に変換された出力電圧(Ve)と変位時間Tmから切換速度Rvを演算により求め、得られた切換速度Rvに換わるデータはコントローラ本体10mに付与される。このように、速度検出処理部9では、基本的機能として、回動範囲Zrの両端位置におけるホール素子8の出力電圧Veの最小電圧Vesと最大電圧Vemを設定し、マグネットロータ部2の変位時における最小電圧Vesを検出した時点又は最大電圧Vemを検出した時点に基づいて変位時間Tmを検出する機能を備える。したがって、ホール素子8における特に出力電圧Veの大きさを利用することにより必要とする変位時間Tmの検出を容易かつ確実に行うことができる。
【0049】
次に、本実施形態に係る切換速度検出装置1を備えるロータリソレノイドMの動作及び使用方法について、図10図14を参照して説明する。
【0050】
まず、ロータリソレノイドMの基本動作について、図10及び図11を参照して説明する。
【0051】
図10は、ロータリソレノイドMに接続した駆動回路50を示す。この駆動回路50は、コイル7から導出する一対の接続リード53a,53bに給電するための直流源51と、この直流源51からコイル7の接続リード53a,53bに供給する直流電圧の給電又は給電停止を行うとともに、直流電圧の極性を反転させる極性切換を行う操作スイッチ52を備える。
【0052】
図10は、操作スイッチ52を一方の給電ポジションに切換えた状態を示す。これにより、コイル7に給電が行われるため、E形のヨーク15に、図10に示すS極とN極が発生する。なお、マグネット本体3mの極性(S極,N極)は、図10に示すとおりであり、マグネットプレート3mdのN極側はヨーク15のS極側に吸引されるとともに、マグネットプレート3mdのS極側はヨーク15のS極側に対して反発する。この結果、シャフト4は、図10に示す矢印Fp方向(時計方向)に回動変位する。そして、可動体部26が図10に示す位置、即ち、可動体部26がケーシング部5の規制壁面部5qに当接(係止)した位置で停止する。
【0053】
一方、この状態から操作スイッチ52を中央に位置する給電停止ポジションに切換えた場合を想定する。この場合、ステータ部6には給電に基づく自らの磁極は発生しない。しかし、マグネット部3による磁界は維持されるため、マグネット部3及びヨーク15により形成される磁気回路により可動体部26の位置が保持される。この磁気回路による磁力線は、図11に示す点線Jmとなり、可動体部26は自己保持力により停止状態が維持される。
【0054】
他方、この停止状態から操作スイッチ52を極性反転する他方の反転給電ポジションに切換えた場合を想定する。この場合、ヨーク15には、図11に示すように、図10に示した極性に対して反転したS極とN極が発生する。これにより、マグネットプレート3mdのS極側はヨーク15のN極側に吸引され、マグネットプレート3mdのN極側はヨーク15のN極側に対して反発する。この結果、シャフト4は図11に示す矢印Fn方向(反時計方向)に回動変位する。そして、可動体部26が図11に示す位置、即ち、可動体部26がケーシング部5の規制壁面部5pに当接(係止)した位置で停止する。図11に示す点線Jp,Jqは、給電時における磁気回路を通る磁力線を示している。この際、シャフト4が回動変位する角度範囲は、図1に示した所定の回動範囲Zrとなる。
【0055】
次に、ロータリソレノイドMの制御方法を含む使用方法の一例について、図12図14を参照して説明する。
【0056】
この種のロータリソレノイドMは、その用途として各種切換機構に使用される場合も少なくない。図12に、その一例として、多数のカードC…を、AタイプとBタイプに振分けるカード振分けシステム17sを示すとともに、このカード振分けシステム17sに付設したロータリソレノイドMを用いた切換機構16を示す。したがって、このカード振分けシステム17sは、当該切換機構16と協動する協動系システム17となり、例示の場合、速度検出処理部9から得られる切換速度Rvに係わるデータは、この協動系システム17の動作タイミングの制御に用いられる。
【0057】
例示するカード振分けシステム17sは、多数のカード(振分け対象物)C…であって、二種類のカードCa…,Cb…、即ち、Aタイプのカード(第一振分け対象物)Ca…とBタイプのカード(第二振分け対象物)Cb…を収容したカード送出部62から一枚ずつカードCを送り出すとともに、送り出されたカードCを、共通供給路63に通した後、切換機構16により振分ける機能を備える。これにより、振分けられたカードCaは、Aタイプ取込路63aに供給され、振分けられたカードCbは、Bタイプ取込路63bに供給される。なお、図中、Ldは共通供給路63の長さであり、通常、短い長さに設定されるものとする。
【0058】
以下、カード振分けシステム17sの具体的な動作について、図13及び図14に示すフローチャートに従って説明する。
【0059】
図13に示すように、動作中は、まず、カード送出部62において、次に送り出すカードCのタイプがセンサ64により識別される(ステップS1)。今、AタイプのカードCaが識別されたものとする(ステップS2)。この識別結果に係わる識別データはコントローラ10に送られるため、コントローラ10から切換機構16におけるロータリソレノイドMに対して切換制御信号Dsが付与される。この際、ロータリソレノイドMのシャフト4に取付けられている切換ブレード66が仮想線で示す切換ブレード66sの位置、即ち、Bタイプ取込路63b側に切換わっている状態にあるものとする(ステップS3)。この場合、切換制御信号Dsに基づいてロータリソレノイドMが作動し、Aタイプ取込路63a側へ切換えるための回動変位を開始する(ステップS4)。
【0060】
即ち、ロータリソレノイドMは停止状態にあり、かつ切換機構16はBタイプ取込路63b側に切換わっているため、ロータリソレノイドMに切換制御信号Dsが供給されれば、可動体部26は時計方向(矢印Fp方向)へ回動変位し、前述したように、図10の位置に達して停止する。この際、シャフト4には一体の切換ブレード66を備えるため、図12に仮想線で示す切換ブレード66sも対応して回動変位し、実線で示す切換ブレード66の位置、即ち、Aタイプ取込路63a側に切換わる。
【0061】
一方、切換速度検出装置1は、前述したように、マグネット部3の変位をホール素子8により検出するため、コントローラ本体10mは、マグネット部3の変位状態に対応するホール素子8の出力状態(図8(b))を監視する(ステップS5)。そして、切換変位が終了したなら、速度検出処理部9により切換速度Rvを検出(算出)する(ステップS6,S7)。また、この検出結果となる切換速度Rvに係わるデータは、上述したように速度検出処理部9から出力し、コントローラ本体10mに付与され、カード振分けシステム17sの動作タイミングの制御に用いられる。
【0062】
具体的には、切換速度Rvに係わるデータがコントローラ本体10mに付与されれば、コントローラ本体10mによりカード送出部62の送出タイミングが算出される(ステップS8)。即ち、切換速度Rvに基づき、ロータリソレノイドMの切換動作の開始から何秒後に切換が終了したかを、出力電圧Veを変換した「0」~「100」間の時間差により求めることができるとともに、他方、カードCは、送出開始から何秒後に切換機構16に到達するかが分かるため、例えば、切換速度Rvが速い場合には、送出タイミングを早くする制御を行うことができるとともに、切換速度Rvが遅い場合には、送出タイミングを遅くする制御を行うことができる。したがって、この送出タイミング(動作タイミング)は、例えば、ロータリソレノイドMの切換動作の開始後、何秒後に行うかの時間により設定することができる。
【0063】
例示の場合、送出タイミングに係わる時間は、振分け動作毎に求め、次の振分け動作の制御に用いている。この場合、次の振分け動作とは、振分けるタイプが同じであることが前提の振分け動作となる。なお、送出タイミングに係わる時間は、振分け動作毎に求めることが望ましいが、必要により、5回おきなど、N回単位で求めてもよい。したがって、この送出タイミングに係わる時間に係わるデータは、少なくともメモリに一時登録(設定)される(ステップS9)。
【0064】
他方、カード送出部62は、カードCaが識別されるまでは待機状態になっている(ステップS10)。コントローラ本体10mは、マグネットロータ部2の切換状態、即ち、ホール素子8の出力状態である図8(b)を監視しているため、設定されている前回の送出タイミング(時間)に到達すれば、コントローラ本体10mは、カード送出部62を制御し、カードCaの送出動作を開始する(ステップS11,S12,13)。この結果、送出されたカードCaは、共通供給路63を落下し、切換機構16に達するが、このタイミングは、送出タイミングにより制御されているため、カードCaは、切換機構16の切換が終了したタイミングとほぼ同時に到達する。即ち、カードCaは、最も短い時間により振分けられるとともに、確実に、Aタイプ取込路63aに取り込まれる(ステップS14)。
【0065】
なお、ステップS3において、切換ブレード66が実線で示す切換ブレード66、即ち、Aタイプ取込路63a側に切換わっている状態であれば、切換機構16の切換動作は行わないため、カードCaに対する識別が行われたなら、直ちにカード送出部62の送出動作を開始する(ステップS3,S13)。
【0066】
一方、前述したステップS1,S2におけるカードCの識別において、BタイプのカードCbが識別された場合には、BタイプのカードCbに対する振分け処理が行われる(ステップSE)。図14は、BタイプのカードCbが識別された際における振分け処理を示している。
【0067】
この場合、BタイプのカードCbが識別されることにより、この識別結果に係わる識別データはコントローラ10に送られるため、コントローラ10から切換機構16におけるロータリソレノイドMに対して切換制御信号Dsが付与される。この際、切換ブレード66は実線で示す切換ブレード66、即ち、Aタイプ取込路63a側に切換わっている状態にあるものとする(ステップS21)。この場合、切換制御信号Dsに基づいてロータリソレノイドMが作動し、Bタイプ取込路63b側へ切換えるための回動変位を開始する(ステップS22)。
【0068】
即ち、ロータリソレノイドMは停止状態にあり、かつ切換機構16はAタイプ取込路63a側に切換わっているため、ロータリソレノイドMに切換制御信号Dsが供給されれば、可動体部26は反時計方向(矢印Fn方向)へ回動変位し、前述したように、図11の位置に達して停止する。この際、シャフト4には一体の切換ブレード66を備えるため、図12に実線で示す切換ブレード66も対応して回動変位し、図12に仮想線で示す切換ブレード66sの位置、即ち、Bタイプ取込路63b側に切換わる。
【0069】
また、切換速度検出装置1は、マグネット部3の変位をホール素子8により検出するため、コントローラ本体10mは、マグネット部3の変位状態に対応するホール素子8の出力状態を監視する(ステップS23)。そして、切換変位が終了したなら、速度検出処理部9により切換速度Rvを検出(算出)する(ステップS24,S25)。さらに、この検出結果となる切換速度Rvに係わるデータは、上述したように速度検出処理部9から出力し、コントローラ本体10mに付与され、カード振分けシステム17sの動作タイミングの制御に用いられる。即ち、切換速度Rvに係わるデータがコントローラ本体10mに付与されれば、コントローラ本体10mによりカード送出部62の送出タイミングが算出される(ステップS26)。また、この送出タイミングに係わる時間に係わるデータは、少なくともメモリに一時登録(設定)される(ステップS27)。
【0070】
他方、カード送出部62は、カードCbが識別されるまでは待機状態になっている(ステップS28)。コントローラ本体10mは、マグネットロータ部2の切換状態、即ち、ホール素子8の出力状態を監視しているため、設定されている前回の送出タイミング(時間)に到達すれば、コントローラ本体10mは、カード送出部62を制御し、カードCbの送出動作を開始する(ステップS29,S30,S31)。この結果、送出されたカードCbは、共通供給路63を落下し、切換機構16に達するが、このタイミングは、送出タイミングにより制御されているため、カードCbは、切換機構16の切換が終了したタイミングとほぼ同時に到達する。即ち、カードCbは、最も短い時間により振分けられるとともに、確実に、Bタイプ取込路63bに取り込まれる(ステップS32)。
【0071】
なお、ステップS21において、切換ブレード66が仮想線で示す切換ブレード66s、即ち、Bタイプ取込路63b側に切換わっている状態にあれば、切換機構16の切換動作は行われないため、識別が行われたなら直ちにカード送出部62の送出動作を開始する(ステップS21,S31)。
【0072】
そして、次の振分け処理が継続する場合には、次のカードCの識別処理が行われるとともに、識別するカードCが終了すれば、振分け処理は終了する(ステップS15)。
【0073】
このように、本実施形態に係る切換速度検出装置1は、基本的に、変位方向FmにN極とS極を配したマグネット部3をシャフト4に固定したマグネットロータ部2と、シャフト4を所定の回動範囲Zrで変位可能に支持するケーシング部5と、このケーシング部5の内部に取付け、コイル7の通電制御により発生する磁極によりマグネットロータ部2を回動範囲Zrの順方向Fp又は逆方向Fnに変位させるステータ部6とを有するロータリソレノイドMの切換速度Rvを検出する切換速度検出装置を構成するに際して、ケーシング部5の内面5iにおけるマグネットロータ部2の回動範囲Zrの中間位置Xsに配設し、かつマグネット部3の位置に対応して出力電圧Veが変化するアナログタイプのホール素子8と、マグネットロータ部2の順方向Fp又は逆方向Fnへの変位時の回動範囲Zrにおける変位時間Tmを検出してロータリソレノイドMの切換速度Rvを算出する速度検出処理部9とを備えてなるため、ホール素子8を利用し、このホール素子8をロータリソレノイドMに内蔵させるという基本的構成を確保しつつ、ロータリソレノイドMの外部に別途の検出手段を設けることなく、目的の切換速度検出装置1を構築することができる。したがって、切換速度Rvが重要になるロータリソレノイドMの用途においても十分に対応できるなど、ロータリソレノイドMの多機能性及び多様性を高めることができるとともに、容易かつ低コストに実施できる。この結果、ロータリソレノイドMを使用する各種機器における応答性の向上や処理の高速化など、各種機器の処理能力向上に貢献できる。
【0074】
また、基本的に、ホール素子8は、ケーシング部5の内面5iにおける任意の位置に、その内面5iを利用して取付可能になるため、切換点検出装置1を付設するに際しては、磁気回路の構成やレイアウト等、特定の構造に左右されることなく、様々な磁気回路に設けることができる。したがって、各種ロータリソレノイドに適用可能になるなど、用途の拡大が可能となり、汎用性及び発展性に優れる。
【0075】
しかも、速度検出処理部9から得る切換速度Rvを、ロータリソレノイドMの切換対象となる切換機構16と協動する協動系システム17の動作タイミングの制御に用いることができるため、協動系システム17における応答性の向上や処理の高速化など、協動系システム17の処理能力向上に貢献できる。
【0076】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0077】
例えば、特定位置Xsは、マグネット部3の変位方向Fmに対する相対位置Pとマグネット部3に対する対向間隔Gの双方を含ませた場合を示したが、相対位置Pのみにより特定位置Xsを設定する場合を排除するものではない。また、ホール素子8は、配線基板11に表面実装し、この配線基板11をケーシング部5の内面5iに取付ける場合を示したが、ホール素子8をスルーホール方式により配線基板11に実装し、この配線基板11を位置調整可能な介在部材を介してケーシング部5の内面5iに取付ける場合であっても同様に実施可能であり、表面実装は必須の構成要素になるものではない。さらに、配線基板11とケーシング部5の内面5i間に設ける基準位置決め部12は、位置決め可能な手段であれば、例示の構成に限定されるものではなく、各種位置切め構造により構成できる。一方、間隔調整用セパレータ13は、事前に用意した異なる厚さを有する複数の間隔調整用セパレータ13…から選択した一つであってもよいし、複数の間隔調整用セパレータ13…を重ねて(組合わせて)使用してもよく、使用する数量は任意である。他方、ロータリソレノイドMとして、三角形における一つの角部に対応する位置をシャフト4に固定し、かつ自由端となる残りの二つの角部に対応する位置にマグネット部3を固定するモールド部14を設けたマグネットロータ部2を備えるとともに、ケーシング部5に固定して一方の端面7sをマグネット部3に対面させた単一のコイル7と、このコイル7により発生する磁界の磁路を構成するヨーク15を設けたステータ部6を備えるタイプを例示したが、他の形態に基づくロータリソレノイドMであってもよい。したがって、切換速度検出装置1を適用できるロータリソレノイドMは、例示の構成に限定されるものではなく、各種原理を採用した様々なロータリソレノイドに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る切換速度検出装置は、マグネット部の変位に対応して出力が変化するホール素子によりマグネットロータ部の切換速度を検出する機能を必要とする各種ロータリソレノイド、更には、ロータリソレノイドを使用する各種機器、特に、協動系システムに利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1:切換速度検出装置,2:マグネットロータ部,3:マグネット部,4:シャフト,5:ケーシング部,5i;ケーシング部の内面,6:ステータ部,7:コイル,7s:コイルの端面,8:ホール素子,9:速度検出処理部,11:配線基板,12:基準位置決め部,13:間隔調整用セパレータ,14:モールド部,15:ヨーク,16:切換機構,17:協動系システム,M:ロータリソレノイド,Fm:変位方向,Fp:順方向,Fn:逆方向,Zr:回動範囲,Rv:切換速度,Xs:中間位置,Xm:基準位置,Vs:出力電圧,Ves:最小電圧,Vem:最大電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14