(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 3/16 20060101AFI20220308BHJP
B23Q 1/56 20060101ALI20220308BHJP
B23B 21/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B23B3/16 A
B23Q1/56 B
B23B21/00 C
(21)【出願番号】P 2018093721
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋一
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1270145(EP,A2)
【文献】特開昭58-186501(JP,A)
【文献】特表2009-538742(JP,A)
【文献】特開2013-027973(JP,A)
【文献】特開2014-037043(JP,A)
【文献】特許第5722682(JP,B2)
【文献】特開2016-036868(JP,A)
【文献】特開2003-080403(JP,A)
【文献】特開2017-209737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020258(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0110307(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0162182(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011077571(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23Q 1/00-1/76
B23Q 9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する第1台部と、
第1の軸方向において
前記開口部を挟んで互いに対向
する位置に移動可能であり、ワークを回転可能に保持する第1ワーク保持部及び第2ワーク保持部と、
前記第1の軸方向と直交する第2の軸方向に延びる第1回転軸線を中心として前記第1台部に対して回転可能に設けられ、工具を保持する第1工具保持部と、
第2台部が設けられた工具台と、
前記第1回転軸線と平行な第2回転軸線を中心として
前記第2台部に対して回転可能に設けられ、工具を保持する第2工具保持部と、
前記第1台部、前記第1ワーク保持部、前記第2ワーク保持部、前記工具台、前記第1工具保持部
及び前記第2工具保持部
の動作を制御する制御部と、を備え、
前記第1の軸方向及び前記第2の軸方向と直交する方向を第3の軸方向とすると、
前記第1台部は、ベッドに対して、前記第3の軸方向及び前記第2の軸方向に移動し、
前記第1ワーク保持部は、前記ベッドに対して、前記第1の軸方向に移動し、
前記第2台部及び前記工具台は、前記ベッドに対して、前記第2の軸方向に移動し、
前記第2ワーク保持部は、前記ベッドに対して、前記第3の軸方向及び前記第1の軸方向に移動し、
前記第1台部には、前記開口部の中央にそれぞれの先端が向く複数の工具が固定され、
前記工具台には、前記第2ワーク保持部に保持されたワークを加工可能な工具が前記第2の軸方向及び前記第3の軸方向に沿って行列状に配置された工具群が設けられ、
前記工具群は、前記第2工具保持部の前記第3の軸方向における隣に位置し、
前記第1工具保持部は、
前記第1回転軸線を中心とした径方向に沿って前記第1工具保持部の両側から突出する回転工具を保持し、該回転工具によって少なくとも前記第1ワーク保持部に保持されたワークを加工可能であり、
前記第2工具保持部は、
前記第2回転軸線を中心とした径方向に沿って前記第2工具保持部の片側から突出するとともに前記第2の軸方向に沿って配列された複数の回転工具を保持し、該回転工具によって前記第2ワーク保持部に保持されたワークを加工可能である、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械として、特許文献1には、鉛直方向に沿って立つ基台に対して回転可能に設けられ、ワークを加工するための工具を有するB軸回転工具部を備えるものが開示されている。B軸回転工具部は、基台に対して回転駆動されることでワークに対する工具の向きが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
B軸回転工具部は、基台の正面側に位置する主軸部が保持するワークだけでなく、基台の背面側に位置する背面主軸部が保持するワークも加工可能に構成することができる。この構成では、B軸回転工具部による加工を行う場合、正面側と背面側との一方のワークを加工している際には他方のワークを加工することができない。そのため、B軸回転工具部による加工を行う場合、一方のワークの加工を待ってから他方のワークの加工を行うことになってしまう。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、ワークの加工工程におけるサイクルタイムを短縮することができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、
開口部を有する第1台部と、
第1の軸方向において前記開口部を挟んで互いに対向する位置に移動可能であり、ワークを回転可能に保持する第1ワーク保持部及び第2ワーク保持部と、
前記第1の軸方向と直交する第2の軸方向に延びる第1回転軸線を中心として前記第1台部に対して回転可能に設けられ、工具を保持する第1工具保持部と、
第2台部が設けられた工具台と、
前記第1回転軸線と平行な第2回転軸線を中心として前記第2台部に対して回転可能に設けられ、工具を保持する第2工具保持部と、
前記第1台部、前記第1ワーク保持部、前記第2ワーク保持部、前記工具台、前記第1工具保持部及び前記第2工具保持部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記第1の軸方向及び前記第2の軸方向と直交する方向を第3の軸方向とすると、
前記第1台部は、ベッドに対して、前記第3の軸方向及び前記第2の軸方向に移動し、
前記第1ワーク保持部は、前記ベッドに対して、前記第1の軸方向に移動し、
前記第2台部及び前記工具台は、前記ベッドに対して、前記第2の軸方向に移動し、
前記第2ワーク保持部は、前記ベッドに対して、前記第3の軸方向及び前記第1の軸方向に移動し、
前記第1台部には、前記開口部の中央にそれぞれの先端が向く複数の工具が固定され、
前記工具台には、前記第2ワーク保持部に保持されたワークを加工可能な工具が前記第2の軸方向及び前記第3の軸方向に沿って行列状に配置された工具群が設けられ、
前記工具群は、前記第2工具保持部の前記第3の軸方向における隣に位置し、
前記第1工具保持部は、前記第1回転軸線を中心とした径方向に沿って前記第1工具保持部の両側から突出する回転工具を保持し、該回転工具によって少なくとも前記第1ワーク保持部に保持されたワークを加工可能であり、
前記第2工具保持部は、前記第2回転軸線を中心とした径方向に沿って前記第2工具保持部の片側から突出するとともに前記第2の軸方向に沿って配列された複数の回転工具を保持し、該回転工具によって前記第2ワーク保持部に保持されたワークを加工可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワークの加工工程におけるサイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械をX軸方向から見た概略図である。
【
図2】第1工具機構と第2工具機構をZ軸方向から見た図である。
【
図3】主に第1B軸回転工具部と第2B軸回転工具部をY軸方向から見た概略図である。
【
図4】主に第2B軸回転工具部と第2B軸回転機構をX軸方向から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る工作機械について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示す本実施形態に係る工作機械1は、2つの主軸(後述の第1ワーク保持部11及び第2ワーク保持部21)で円柱状のワークW(被加工物)の前面、側面及び背面を加工可能な多機能旋盤として構成されている。
【0016】
以下では、工作機械1の構成の理解を容易にするため、鉛直方向を「Y軸方向」とし、ワークWの中心線に沿った水平方向を「Z軸方向」とし、Y軸及びZ軸方向に垂直な水平方向を「X軸方向」とする。また、図中にX、Y、Z軸の各々の方向を示す矢印を示した。これら矢印が示す各方向において、矢印の向く方向を「+」側、その反対側の方向を「-」側とする。
【0017】
工作機械1は、
図1、
図2に示すように、工作機械1全体の台であるベッドS、第1機構10と、第2機構20と、第1工具機構30と、第2工具機構40と、制御部90と、を備える。なお、第1工具機構30については、
図1では省略し、
図2で示している。
【0018】
(第1機構10)
第1機構10は、ワークWの前面(+Z側に向く面)及び側面を加工するための機構である。第1機構10は、第1ワーク保持部11と、第1ワーク保持部11が固定されるZ軸移動部12と、Z軸移動部12をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構13と、を備える。
【0019】
第1ワーク保持部11は、ワークWを保持するチャックとチャックで保持したワークWを回転させるワーク回転用モータとを内蔵する(図示せず)。以下では、第1ワーク保持部11に保持されているワークWを「ワークW1」と言うこともある。Z軸移動機構13は、ベッドSに対して回転可能に支持されてZ軸方向に延びるボールねじ13aと、ボールねじ13aを回転させるZ軸用モータMz1と、を備える。
【0020】
Z軸移動部12は、ボールねじ13aと嵌合するナット12aを備える。Z軸移動機構13は、Z軸用モータMz1によりボールねじ13aを回転させることで、ナット12aを介してZ軸移動部12をZ軸方向に移動させる。これにより、第1ワーク保持部11がベッドSに対してZ軸方向に移動する。
【0021】
以上のようにして、第1機構10は、第1ワーク保持部11で保持したワークWをZ軸方向に移動させることができる。
【0022】
(第2機構20)
第2機構20は、ワークWの背面(-Z側に向く面)及び側面を加工するための機構である。第2機構20は、第2ワーク保持部21と、第2ワーク保持部21が固定されるZ軸移動部22と、Z軸移動部22をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構23と、Z軸移動機構23をX軸方向に移動させるX軸移動機構24と、を備える。
【0023】
第2ワーク保持部21は、ワークWを保持するチャックとチャックで保持したワークWを回転させるワーク回転用モータとを内蔵する(図示せず)。以下では、第2ワーク保持部21に保持されているワークWを「ワークW2」と言うこともある。Z軸移動機構23は、X軸移動部25と、X軸移動部25に対して回転可能に支持されてZ軸方向に延びるボールねじ23aと、ボールねじ23aを回転させるZ軸用モータMz2と、を備える。X軸移動機構24は、ベッドSに対して回転可能に支持されてX軸方向に延びるボールねじ24aと、ボールねじ24aを回転させるX軸用モータ(図示せず)と、を備える。
【0024】
Z軸移動部22は、ボールねじ23aと嵌合するナット22aを備える。Z軸移動機構23は、Z軸用モータMz2によりボールねじ23aを回転させることで、ナット22aを介してZ軸移動部22をZ軸方向に移動させる。これにより、第2ワーク保持部21がX軸移動部25に対してZ軸方向に移動する。
【0025】
X軸移動部25は、ボールねじ24aと嵌合するナット25aを備える。X軸移動機構24は、X軸用モータによりボールねじ24aを回転させることで、ナット25aを介してX軸移動部25をX軸方向に移動させる。これにより、第2ワーク保持部21がベッドSに対してX軸方向に移動する。
【0026】
以上のようにして、第2機構20は、第2ワーク保持部21で保持したワークWをZ軸及びX軸方向の各方向に移動させることができる。
【0027】
(第1工具機構30)
第1工具機構30は、
図2に示すように、ベッドSに対してX及びY軸の各方向に移動可能な第1台部31と、非駆動工具部32と、回転工具部33と、支持部34と、第1B軸回転工具部50と、第1B軸用モータMb1と、工具回転用モータMtと、を備える。
【0028】
第1台部31は、公知のX軸移動機構及びY軸移動機構(図示せず)によって、ベッドSに対してX及びY軸の各方向に移動可能となっている。例えば、X軸移動機構は、前記のX軸移動機構24と同様に構成され、X軸方向に延びるボールねじ、当該ボールねじを回転させるX軸用モータ、当該ボールねじの回転に応じてX軸方向に移動するX軸移動部などを備える。同様して例えば、Y軸移動機構は、Y軸方向に延びるボールねじ、当該ボールねじを回転させるY軸用モータ、当該ボールねじの回転に応じてY軸方向に移動するY軸移動部などを備えて構成される。
【0029】
非駆動工具部32は、第1台部31の
図2における下方の左右箇所に位置し、複数のバイトやドリルなどの非駆動工具Ts1を保持する。複数のバイトは、先端が第1台部31の空洞部(中央)側に向くように長手方向がX軸方向に沿うとともに、Y軸方向に互いに間隔を空けて配列されている。複数のドリルは、先端が+Z軸方向及び-Z軸方向に向いて設けられている。
【0030】
回転工具部33は、非駆動工具部32の上方で、
図2における左側に設けられ、複数の回転工具Tr1と、複数の回転工具Tr1を駆動する工具回転用モータ(図示せず)とを備える。回転工具Tr1は、先端が第1台部31の中央側を向くように長手方向がX軸方向に沿って配置され、本実施形態では、3つの回転工具Tr1がY軸方向に櫛状に並べられて設けられている。回転工具Tr1は、自身が回転することでワークWを加工する工具として、例えば、ドリル、タップ、フライスなどを用いることができる。
【0031】
支持部34は、第1台部31の上方に取り付けられ、第1B軸回転工具部50をB1軸周りに回転可能に支持する。「B1軸」は、第1B軸回転工具部50の回転軸線であり、Y軸と平行に設定されている。
【0032】
第1B軸回転工具部50(第1工具保持部の一例)は、
図2に示すように非駆動工具部32の上方に位置し、B1軸を中心として回転可能に構成されている。第1B軸回転工具部50は、
図2に示すように、軸部50aと、軸部50aと連結された筐体51と、工具部52~54と、を備える。
【0033】
軸部50aは、第1B軸用モータMb1の回転に応じてB1軸周りに回転する。第1B軸用モータMb1は、支持部34に取り付けられ、水平方向に延びる図示しない回転軸を有する。第1B軸用モータMb1の回転動力は、図示しないギヤ機構を介して軸部50aに伝達される。ギヤ機構は、例えば、第1B軸用モータMb1の回転軸に取り付けられたウォーム(ねじ歯車)と、ウォームと噛み合うウォームホイール(はす歯歯車)とを有して構成されている。これにより、第1B軸用モータMb1が回転駆動されると、ギヤ機構を介して、軸部50aと連結された筐体51がB1軸周りに回転する。つまり、第1B軸回転工具部50がB1軸周りに回転する。なお、ギヤ機構は、ウォームギヤを用いたものに限られず任意であるが、バックラッシを無くす又は低減することのできるウォームギヤ又はウォームギヤに相当する機構によるものが好ましい。
【0034】
工具部52~54は、Y軸方向に間隔を空けて配列されており、それぞれが筐体51内に水平方向に沿う軸周りに回転可能に支持されている。工具部52~54のうちY軸方向において隣り合うもの同士は、互いに係合する平歯車を有している。このため、工具部52~54は、同時に回転する。工具部52~54は、それぞれ、水平方向に沿う一対の回転工具Tb1を有する。以下、当該一対の回転工具Tb1の一方を「第1工具t1」と言い、他方を「第2工具t2」と言う。一対の回転工具Tb1における第1工具t1の先端と第2工具t2との先端とは、互いに逆方向に向いている。したがって、第1工具t1がワークW1に向かう姿勢となる際には、第2工具t2がワークW1に向かわない姿勢となる。また、第2工具t2がワークW2に向かう姿勢となる際には、第1工具t1がワークW2に向かわない姿勢となる。回転工具Tb1は、例えば、ドリル、タップ、エンドミル等である。
【0035】
工具回転用モータMtは、支持部34に取り付けられ、-Y軸方向に延びる図示しない回転軸を有する。工具回転用モータMtは、図示しない連結機構を介して工具部52~54を回転させる。連結機構は、筐体51内に設けられ、工具回転用モータMtの回転軸に設けられたギヤを含む複数のギヤや複数のシャフトからなり、工具回転用モータMtの回転動力を工具部52~54に伝達する。これにより、工具回転用モータMtが回転駆動されると、連結機構を介して、工具部52~54が同時に回転する。
【0036】
(第2工具機構40)
第2工具機構40は、
図3に示すように第1工具機構30よりも+Z側に位置する。第2工具機構40は、ベッドSに固定された固定部41(
図1参照)と、
図2~
図4に示す、第2台部42と、工具台43と、第2B軸回転工具部60と、第2B軸回転機構70と、を備える。
【0037】
工具台43は、公知のY軸移動機構(図示せず)によって、ベッドSに固定された固定部41に対してY軸方向に移動可能となっている。例えば、Y軸移動機構は、Y軸方向に延びるボールねじ、当該ボールねじを回転させるY軸用モータ等を備えて構成される。工具台43は、ボールねじと嵌合するナットを備え、Y軸用モータによるボールねじの回転に応じてY軸方向に移動する。
【0038】
第2台部42は、工具台43に設けられ、前記のY軸移動機構によってY軸方向に移動可能となっている。工具台43は、+Z側に先端が向く回転工具Tr2及び非駆動工具Ts2を有している。この実施形態の工具台43には、
図2に示すように、Z軸方向から見て2行2列に配列された取り付け部のうち、1行目に2つの回転工具Tr2が取り付けられ、2行目に2つの非駆動工具Ts2が取り付けられている。回転工具Tr2は、工具台43に取り付けられた工具回転用モータ(図示せず)によって回転駆動される。例えば、回転工具Tr2はドリル、タップ、フライス等であり、非駆動工具Ts2はドリル等である。
【0039】
第2B軸回転工具部60(第2工具保持部の一例)は、
図2に示すようにB1軸と平行な「B2軸」を中心として、第2台部42に対して回転可能に構成されている。第2B軸回転工具部60は、
図4に示すように、工具部61と、連結部62と、を備える。
【0040】
連結部62は、第2台部42の上方においてB2軸周りに回転可能に支持されている。連結部62は、後述の出力軸71aに連結される。工具部61は、連結部62に固定される第1軸部61aと、第2台部42の下方に設けられた軸受けにB2軸周りに回転可能に支持される第2軸部61bとを有する。これにより、工具部61は、B2軸周りに回転可能に構成されている。つまり、第2B軸回転工具部60は、第2台部42に対してB2軸周りに回転可能に構成されている。
【0041】
工具部61は、先端がB2軸の外周方向に向く回転工具Tb2を有する。この実施形態では、工具部61は、Y軸方向において隣り合う2つの回転工具Tb2を有する。回転工具Tb2は、例えば、ドリル、タップ、エンドミル等である。回転工具Tb2は、工具部61の筐体内に内蔵されたインナーモータにより回転駆動される。インナーモータは、同期電動機や誘導電動機などの周知のモータで構成することができ、例えば、回転工具Tb2を把持する出力軸に直接ロータを設けるとともに、ステータを筐体の内周面に設けることで実現できる。なお、前述の第1B軸回転工具部50と同様に、第2台部42の筐体外部に回転工具Tb2を回転させる工具回転用モータを設ける構成としてもよい。
【0042】
第2B軸回転機構70は、第2B軸回転工具部60をB2軸を中心として回転駆動するものであり、
図4に示すように、第2B軸用モータMb2と、減速機71と、を備える。
【0043】
第2B軸用モータMb2は、第2台部42の上方に取り付けられ、Y軸方向に沿った回転軸RをB2軸周りに回転させる。減速機71は、第2B軸用モータMb2の回転軸Rの回転速度を減らすとともにトルクを増加させることで、第2B軸回転工具部60を回転駆動し易くするためのものであり、第2台部42の筐体内に設けられている。減速機71は、第2B軸用モータMb2の回転軸Rに取り付けられ、回転軸Rを減速した回転速度で出力軸71aを回転させる。出力軸71aには、前述の連結部62がボルト等により固定されている。これにより、第2B軸用モータMb2の駆動に応じて、第2B軸回転工具部60は、第2台部42に対してB2軸周りに回転する。
【0044】
制御部90は、工作機械1全体を制御するものであり、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、CPU(Central Processing Unit)と、を備える。なお、制御部90は、
図1にのみ模式的に示した。
【0045】
制御部90は、図示しない操作部から供給されたNC(Numerical Control)プログラムに従って工作機械1の全体動作を制御する。NCプログラムは、ワークWと各種工具との相対的位置関係を設定し、ワークWを加工するためのプログラムであり、オペレータによって作成される。例えば、制御部90は、第1B軸回転工具部50の回転位置を第1B軸用モータMb1の電気角などに基づいて検出する。また、制御部90は、第2B軸回転工具部60の回転位置を第2B軸用モータMb2の電気角などに基づいて検出する。
【0046】
ワークW1を第1工具機構30の工具で加工する場合、制御部90は、第1ワーク保持部11をZ軸方向に移動させるとともに第1台部31をX及びY軸方向に移動させ、ワークW1と第1工具機構30の各種工具との相対的な位置関係を適切に設定する。具体的には、第1機構10のワーク回転用モータ及びZ軸用モータMz1と、第1工具機構30のX及びY軸用モータとを駆動制御することによって、上記関係を実現する。
【0047】
ワークW2を第2工具機構40の工具で加工する場合、制御部90は、第2ワーク保持部21をZ軸及びX軸方向に移動させるとともに第2台部42をY軸方向に移動させ、ワークW2と第2工具機構40の各種工具との相対的な位置関係を適切に設定する。具体的には、第2機構20のワーク回転用モータ、Z軸用モータMz2、及びX軸用モータと、第2工具機構40のY軸用モータとを駆動制御することによって、上記関係を実現する。
【0048】
次に、上記構成の工作機械1によるワークWの加工の一例について説明する。本実施形態に係る工作機械1においては、まず第1機構10を利用してワークWの一次加工を行い、次に、第2機構20を利用して一次加工が施されたワークWをさらに加工する(二次加工を行う)。
【0049】
(一次加工)
制御部90は、第1工具機構30のY軸用モータを駆動し、所望の工具がワークW1と同じ高さに位置するように第1台部31を移動させる。次に、制御部90は、第1機構10のワーク回転用モータとZ軸用モータMz1を駆動することでワークWを回転させながらZ軸方向に移動させ、また、これと同時か時間差で第1工具機構30のX軸用モータを駆動することで第1台部31をワークW1に向けて移動させる。このようにして、バイト、ドリル等の工具をワークWの前面又は側面に当接させ、ワークW1を一次加工する。
【0050】
(二次加工)
一次加工を終えると、制御部90は、第2機構20のZ軸用モータMz2及びX軸用モータを駆動し、第2ワーク保持部21を移動させて、一次加工されたワークWを第2ワーク保持部21のチャックに把持させる。続いて、制御部90は、第2機構20のワーク回転用モータと、第1工具機構30のX軸用モータとを駆動することで、第2ワーク保持部21と第1台部31とをX軸方向に相対的に移動させて、ワークWに向けて移動させ、第1工具機構30に設けられた非駆動工具Ts1の切断用バイトにより、ワークWを所望の位置で切断する。これにより、第2ワーク保持部21がワークW2を保持した状態となる。
続いて、制御部90は、第2工具機構40の工具のうち所定の工具を割り出し(選択し)、第2ワーク保持部21のワークW2を回転させながら、第2ワーク保持部21と第2台部42とをX及びY軸方向に相対的に移動させて、ワークWの背面又は側面に選択した工具に当接させ、さらにワークW2を加工する。このようにして、ワークW2を二次加工する。
【0051】
特に、一次加工において、第1B軸回転工具部50における所望の回転工具Tb1でワークW1を加工するときには、制御部90は、第1工具機構30のY軸用モータを駆動することで、第1ワーク保持部11が保持したワークW1と第1B軸回転工具部50における所望の回転工具Tb1とのY軸方向における位置を調整するとともに、第1B軸用モータMb1を駆動して、第1B軸回転工具部50をB1軸周りに旋回させて所望の回転工具Tb1とワークW1とを所望の角度に合わせる。このようにして、第1B軸回転工具部50における所望の回転工具Tb1でワークW1を加工する。
【0052】
例えば、第1B軸回転工具部50における回転工具Tb1のうち第1工具t1でワークW1を加工していた状態から、第2工具t2でワークW1を加工する状態にする場合は、第1B軸回転工具部50をB1軸周りに180°旋回させてワークW1に向く工具を第1工具t1から第2工具t2に切り替えるとともに、第1ワーク保持部11に保持されているワークW1と第1B軸回転工具部50における所望の第2工具t2との相対位置を、第1台部31をX及びY軸方向に移動することによって調整する。第2工具t2から第1工具t1への切り替えも同様である。
【0053】
なお、二次加工において、第1B軸回転工具部50における所望の回転工具Tb1でワークW2を加工してもよい。この場合は、第2ワーク保持部21が保持したワークW2と第1B軸回転工具部50における所望の回転工具Tb1とのY軸方向における位置を調整するとともに、第1B軸用モータMb1を駆動して、第1B軸回転工具部50をB1軸周りに旋回させて所望の回転工具Tb1とワークW2とを所望の角度に合わせればよい。
【0054】
また、二次加工において、第2B軸回転工具部60における所望の回転工具Tb2でワークW2を加工するときには、制御部90は、第2工具機構40のY軸用モータを駆動することで、第2ワーク保持部21が保持したワークW2と第2B軸回転工具部60における所望の回転工具Tb2とのY軸方向における位置を調整するとともに、第2B軸用モータMb2を駆動して、第2B軸回転工具部60をB2軸周りに旋回させて所望の回転工具Tb2とワークW2とを所望の角度に合わせる。このようにして、第2B軸回転工具部60における所望の回転工具Tb2でワークWを加工する。なお、工具台43も二次加工用に設けられている。工具台43で加工を行う場合は、第2ワーク保持部21と工具台43とをX及びY軸方向に相対的に移動させて、ワークW2の背面又は側面に選択した工具に当接させ、ワークW2を加工する。
【0055】
以上のように、第1B軸回転工具部50のB1軸を中心とした回転と、第2B軸回転工具部60のB2軸を中心とした回転とは、制御部90によって各々を独立して制御可能である。このため、第1B軸回転工具部50で第1ワーク保持部11に保持されたワークW1を加工している際にも、第2B軸回転工具部60で第2ワーク保持部21に保持されたワークW2を加工することができる。したがって、B軸(B1軸又はB2軸)を利用した加工を、一次加工と二次加工とで行いたい場合に、一方の加工が終わるまで待機する必要がなく、ワークWの加工工程におけるサイクルタイムを短縮することができる。
【0056】
(1)以上に説明した工作機械1は、Z軸方向(第1の軸方向)において第1台部31を挟んで互いに対向し、ワークWを回転可能に保持する第1ワーク保持部11及び第2ワーク保持部21と、Y軸方向(第2の軸方向)に延びるB1軸(第1回転軸線)を中心として第1台部31に対して回転可能に設けられ、工具を保持する第1B軸回転工具部50(第1工具保持部)と、B2軸(第2回転軸線)を中心として第2台部42に対して回転可能に設けられ、工具を保持する第2B軸回転工具部60(第2工具保持部)と、第1B軸回転工具部50のB1軸を中心とした回転と、第2B軸回転工具部60のB2軸を中心とした回転との各々を制御する制御部90と、を備える。第1B軸回転工具部50は、保持している工具によって少なくとも第1ワーク保持部11に保持されたワークW1を加工可能であり、第2B軸回転工具部60は、保持している工具によって第2ワーク保持部21に保持されたワークW2を加工可能である。
この構成によれば、前述の通り、ワークWの加工工程におけるサイクルタイムを短縮することができる。
【0057】
(2)また、第1B軸回転工具部50が保持する工具は、複数あり、一対の第1工具t1及び第2工具t2を含み、第1工具t1が第1ワーク保持部11によって保持されたワークW1に向かう姿勢となる際には、第2工具t2がワークW1に向かわない姿勢となる。
この構成によれば、第1B軸回転工具部50をB1軸周りに回転させることにより、ワークW1を加工する工具の本数を増やすことができ、複雑形状の加工物や、多種類の加工物に対応することができる。なお、第1B軸回転工具部50を二次加工におけるワークW2の加工に用いることもできるため、ワークW2を加工する工具の本数も増やすことができる。また、以上の説明では、第1B軸回転工具部50において、第1工具t1と第2工具t2とが互いに180°離れた向きに設けられた例を示したが、これに限られない。第1B軸回転工具部50のB1軸周りの旋回に応じて、第1工具t1又は第2工具t2を選択することができれば、第1工具t1が延びる方向と第2工具t2が延びる方向とのなす角は任意である。
【0058】
(3)具体的には、第1B軸回転工具部50が保持する工具は、B1軸と直交する向きに突出する回転工具Tb1を含み、第2B軸回転工具部60が保持する工具は、B2軸と直交する向きに突出する回転工具Tb2を含む。
(4)また、第1ワーク保持部11、第2ワーク保持部21、第1台部31、及び第2台部42は、ベッドS上に位置し、第1台部31と第2台部42とは、ベッドSに対して、各々が独立してY軸方向に移動可能である。
【0059】
(5)また、第1台部31と第1ワーク保持部11とは、Z軸方向とY軸方向とを含む互いに直交する三軸方向(X、Y、Z軸方向)に相対的に移動可能であり、第2台部42と第2ワーク保持部21とは、前記三軸方向に相対的に移動可能である。
これにより、ワークW1と、第1B軸回転工具部50に保持された所望の工具との相対的位置関係を、X軸、Y軸、Z軸、B1軸、ワークW1の回転軸の5軸において制御可能であるため、あらゆる位置及び角度において、ワークW1を多様に加工することができる。ワークW2を第1B軸回転工具部50で加工する際も同様に、5軸において制御可能である。
また、ワークW2と、第2B軸回転工具部60に保持された所望の工具との相対的位置関係を、X軸、Y軸、Z軸、B2軸、ワークW2の回転軸の5軸において制御可能であるため、あらゆる位置及び角度において、ワークW2を多様に加工することができる。
【0060】
(6)また、工作機械1は、第2台部42が設けられる工具台43を備え、工具台43は、第2B軸回転工具部60が保持している工具の他に、第2ワーク保持部21に保持されたワークW2を加工可能な工具(回転工具Tr2や非駆動工具Ts2)を有する。
このように、二次加工において、第2B軸回転工具部60の工具だけでなく、工具台43の工具もワークW2の加工に用いることができるため、ワークW2を多様に加工することができる。
【0061】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0062】
第1機構10と第1工具機構30との構成及び関係は、上記例に限られず、第1ワーク保持部11と第1B軸回転工具部50とが相対的に三軸方向(X、Y、Z方向)に移動可能な構成であれば、任意である。第2機構20と第1工具機構30との構成及び関係についても同様である。また、第2機構20と第2工具機構40との構成及び関係も、上記例に限られず、第2ワーク保持部21と第2B軸回転工具部60とが相対的に三軸方向(X、Y、Z方向)に移動可能な構成であれば、任意である。また、これらの三軸方向の制御軸は、互いに直交するX、Y、Z軸に限られない。第1ワーク保持部11と第1B軸回転工具部50とが相対して三次元移動可能であり、第2ワーク保持部21と第2B軸回転工具部60とが相対して三次元移動可能であれば、制御軸の設定は任意である。
【0063】
以上では、工具回転用モータMtを第1B軸回転工具部50の筐体51外に設けた例を示したが、これに限られず、筐体51内にモータを設けたインナーモータの構成としてもよい。インナーモータは、同期電動機や誘導電動機などの周知のモータで構成することができ、例えば、ステータを筐体51の内周面に設けるとともに、当該ステータの内側に位置する出力軸に直接ロータを設けることで実現できる。
【0064】
ワークWの保持は、オペレータが手動により第1ワーク保持部11又は第2ワーク保持部21にワークWを配置して、保持させてもよいし、工作機械1がワークを自動で供給及び排出する装置をさらに備え、ワークの保持や解放を自動で行うようにしてもよい。
【0065】
また、以上では、第1B軸回転工具部50が有する回転工具Tb1がワークW1とワークW2のいずれを加工するかの制限を設けない例を説明したが、例えば、回転工具Tb1のうち第1工具t1をワークW1の加工専用とし、第2工具t2をワークW2の加工専用とするようにしてもよい。
【0066】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0067】
1…工作機械
S…ベッド
10…第1機構
11…第1ワーク保持部、12…Z軸移動部
20…第2機構
21…第2ワーク保持部、22…Z軸移動部、25…X軸移動部
30…第1工具機構
31…第1台部
50…第1B軸回転工具部(第1工具保持部の一例)
Tb1…回転工具(t1…第1工具、t2…第2工具)
Mb1…第1B軸用モータ、Mt…工具回転用モータ
40…第2工具機構
42…第2台部
43…工具台
60…第2B軸回転工具部(第2工具保持部の一例)
Tb2…回転工具
70…第2B軸回転機構
Mb2…第2B軸用モータ、71…減速機
90…制御部