(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】検査用具
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20220308BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220308BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20220308BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G01N1/00 101L
G01N37/00 101
B01J19/00 321
B81B1/00
(21)【出願番号】P 2018099614
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 一彦
(72)【発明者】
【氏名】乾 延彦
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/213080(WO,A1)
【文献】特表2018-507403(JP,A)
【文献】国際公開第2016/124907(WO,A1)
【文献】特開2005-031041(JP,A)
【文献】国際公開第2013/014905(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0174161(US,A1)
【文献】国際公開第2016/098722(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/112030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 -37/00
B81B 1/00 - 7/04
B01D 10/00 -12/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる流路構造が内部に設けられている検査用具であって、
流路構造が内部に設けられたチップ本体を備え、
前記流路構造が、第1の流路と、
前記第1の流路に設けられた第1の可逆弁と、
前記第1の流路において、前記第1の可逆弁よりも下流側に位置されており、前記第1の流路における流路抵抗よりも流路抵抗が相対的に高い抵抗部と、
前記第1の可逆弁と前記抵抗部との間において、前記第1の流路から分岐されており、前記第1の流路に液体を送液するための第2の流路と、
前記第2の流路に設けられた第2の可逆弁と、
前記第1の流路から前記第2の流路が分岐されている部分を分岐部とし、前記分岐部と、前記第2の可逆弁との間において、前記第2の流路に設けられており、前記第2の流路の延びる方向の寸法を長さとしたときに、同じ長さの前記第2の流路部分の容積よりも容積の大きい貯留部とを有する、検査用具。
【請求項2】
前記第2の流路の前記貯留部と、前記第2の可逆弁との間から分岐された第3の流路をさらに有し、前記第3の流路に第3の可逆弁が設けられている、請求項1に記載の検査用具。
【請求項3】
前記貯留部が、前記分岐部側から前記第2の可逆弁側に向かうにつれて、流路断面積が縮小する縮小部を有する、請求項1または2に記載の検査用具。
【請求項4】
前記第2の可逆弁に最も近い前記縮小部と、前記分岐部との間の第2の流路の容積が、前記分岐部から、前記第2の可逆弁の間の前記第2の流路の容積の10%以上、99%以下を占める、請求項3に記載の検査用具。
【請求項5】
前記貯留部が、複数設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の検査用具。
【請求項6】
前記第1の流路に、前記抵抗部に至るように第1の液体が送液され、前記第2の流路から前記分岐部に向かって第2の液体が送液される、請求項1~5のいずれか1項に記載の検査用具。
【請求項7】
前記第3の流路から前記第2の流路を介して前記第1の流路に第3の液体が送液される、請求項2に記載の検査用具。
【請求項8】
前記チップ本体が、プレートと、プレートに積層された可撓性シートとを有し、前記第1の流路が、前記可撓性シートと前記プレー
トで挟まれた上流側流路部と、前記上流側流路部に連なるように前記プレー
トの厚み方向に延びる部分を有する下流側流路部とを有し、前記第1の可逆弁が、前記下流側流路部が前記上流側流路部に連ねられている部分により構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の検査用具。
【請求項9】
前記抵抗部が、フィルタである、請求項1~8のいずれか1項に記載の検査用具。
【請求項10】
前記抵抗部が、液体試料からの固相抽出に用いられる固定相を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の検査用具。
【請求項11】
前記流路が、マイクロ流路である、請求項1~10のいずれか1項に記載の検査用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の試料が送液される流路構造を有する検査用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生化学検査などに、マイクロ流路が内部に形成された検査用具が種々提案されている。このような検査用具では、試料や試薬が流路に供給されるが、逆流を防止することが求められる。
【0003】
下記の特許文献1には、流路に断面積が小さい狭窄部を設けた構造が開示されている。狭窄部により流路抵抗を高め、逆流が防止されている。
【0004】
また、下記の特許文献2では、楔形の構造を流路に設けることにより、逆流が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2016/098722 A1
【文献】特開2017-67620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の流路構造では、狭窄部や楔形の構造を設けることにより、流路抵抗を高めて、逆流が防止されていた。
【0007】
しかしながら、このような構造では、逆流を確実に防止することが困難であった。逆流した液体が、流路の内壁を伝わり、上流側に設けられた可逆弁などに伝わるおそれがあった。その結果、逆流した液体による汚染が生じるおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、逆流による汚染が生じ難い、検査用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検査用具は、液体が流れる流路構造が内部に設けられている検査用具であって、流路構造が内部に設けられたチップ本体を備え、前記流路構造が、第1の流路と、前記第1の流路に設けられた第1の可逆弁と、前記第1の流路において、前記第1の可逆弁よりも下流側に位置されており、前記第1の流路における流路抵抗よりも流路抵抗が相対的に高い抵抗部と、前記第1の可逆弁と前記抵抗部との間において、前記第1の流路から分岐されており、前記第1の流路に液体を送液するための第2の流路と、前記第2の流路に設けられた第2の可逆弁と、前記第1の流路から前記第2の流路が分岐されている部分を分岐部とし、前記分岐部と、前記第2の可逆弁との間において、前記第2の流路に設けられており、前記第2の流路の延びる方向の寸法を長さとしたときに、同じ長さの前記第2の流路部分の容積よりも容積の大きい貯留部とを有する。
【0010】
本発明に係る検査用具では、前記第2の流路の前記貯留部と、前記第2の可逆弁との間から分岐された第3の流路がさらに設けられていてもよく、その場合、前記第3の流路に第3の可逆弁が設けられていてもよい。
【0011】
本発明に係る検査用具では、好ましくは、前記貯留部が、前記分岐部側から前記第2の可逆弁側に向かうにつれて、流路断面積が縮小する縮小部を有する。
【0012】
本発明に係る検査用具では、好ましくは、前記第2の可逆弁に最も近い前記縮小部と、前記分岐部との間の第2の流路の容積が、前記分岐部から、前記第2の可逆弁の間の前記第2の流路の容積の10%以上、99%以下を占める。
【0013】
本発明に係る検査用具では、前記貯留部が、複数設けられていてもよい。
【0014】
本発明に係る検査用具では、好ましくは、前記第1の流路に、前記抵抗部に至るように第1の液体が送液され、前記第2の流路から前記分岐部に向かって第2の液体が送液される。
【0015】
本発明に係る検査用具では、前記第3の流路から前記第2の流路を介して前記第1の流路に第3の液体が送液される。
【0016】
本発明に係る検査用具では、前記チップ本体が、プレートと、プレートに積層された可撓性シートとを有し、前記第1の流路が、前記可撓性シートと前記プレート本体で挟まれた上流側流路部と、前記上流側流路部に連なるように前記プレート本体の厚み方向に延びる部分を有する下流側流路部とを有し、前記第1の可逆弁が、前記下流側流路部が前記上流側流路部に連ねられている部分により構成されていてもよい。
【0017】
本発明に係る検査用具では、抵抗部はフィルタであってもよく、液体試料からの固相抽出に用いられる固定相を有するものであってもよい。
【0018】
本発明に係る検査用具では、前記流路は好ましくはマイクロ流路である。この場合には、微量の試料の検査に好適な小型の検査用具を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る検査用具によれば、逆流を確実に防止することができ、従って、試料や試薬の汚染が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る検査用具を説明するための模式的平面図である。
【
図2】
図1に示した検査用具の可逆弁の具体的な構造を説明するための模式的平面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、
図2に示した検査用具の可逆弁の動作を説明するための部分切欠き正面断面図である。
【
図4】第1の実施形態の検査用具において、第1の液体を第1の流路から供給した状態を示す模式的平面図である。
【
図5】第1の実施形態の検査用具において、第1の液体を送液した後の状態を示す模式的平面図である。
【
図6】第1の実施形態の検査用具において、貯留部から第2の流路側に逆流が生じている状態を示す模式的平面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る検査用具を示す模式的平面図である。
【
図8】第2の実施形態の検査用具において、第1の液体を送液する工程を説明するための模式的平面図である。
【
図9】第2の実施形態の検査用具において、第1の液体を送液した後の状態を示す模式的平面図である。
【
図10】第2の実施形態の検査用具において、貯留部から逆流が生じている状態を示す模式的平面図である。
【
図11】第3の実施形態に係る検査用具を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る検査用具を説明するための模式的平面図である。検査用具1はチップ本体2を有する。チップ本体2内には、マイクロ流路を有する流路構造が設けられている。
【0023】
検査用具1は、特に限定されるわけではないが、RNAの固相抽出を行い、RNAを定量するための検査用具である。
【0024】
上記チップ本体2は、合成樹脂積層体、合成樹脂と合成樹脂フィルムの積層体などの適宜の材料からなる。
図1では、チップ本体2の内部の流路構造が模式的に示されている。
【0025】
本実施形態では、流路構造は、第1の流路11、第2の流路12及び第3の流路13を有する。第1の流路11では、矢印Aで示す方向に第1の液体が送液される。第1の流路11の上流側には、図示しないポンプが接続されている。
【0026】
第1の流路11に、第1の可逆弁14が設けられている。第1の可逆弁14は、初期状態では開状態とされている。外部からの操作により、閉状態とされる。外部からの操作を解除すると、第1の可逆弁14は開状態に復帰する。第1の可逆弁14が開状態のとき、第1の液体を下流側に送液することができる。第1の可逆弁14が閉状態の場合には、第1の液体は、第1の可逆弁14よりも下流側に移動しない。第1の可逆弁14よりも下流側に、第1の流路11に抵抗部15が設けられている。抵抗部15は、第1の流路11よりも流路抵抗が相対的に高くされている部分である。本実施形態では、抵抗部15は、液体の試料から固相抽出するための固定相からなり、すなわちフィルタである。もっとも、抵抗部15は、上記流路抵抗が、第1の流路11よりも相対的に高い様々な材料及び部材により構成することができる。
【0027】
第2の流路12は、第1の可逆弁14と、抵抗部15との間において、第1の流路11から分岐されている。この第2の流路12が第1の流路11に接続されている部分を分岐部Xとする。
【0028】
なお、第2の流路12では、第2の液体が、矢印Bで示す方向に送液される。従って、第2の流路12においては、分岐部X側が下流側となる。
【0029】
第2の流路12に、第2の可逆弁16が設けられている。第2の可逆弁16は、初期状態では開状態とされている。外部からの操作により、第2の可逆弁16は閉状態とされる。外部からの操作を解除すると、第2の可逆弁16は、開状態に復帰する。従って、第2の可逆弁16により、液体が矢印B方向に送液されることを、オン状態またはオフ状態とすることができる。また、第2の可逆弁16により、第3の流路13から送液される後述の第3の液体の送液をオン状態またはオフ状態ともすることができる。
【0030】
第2の可逆弁16と分岐部Xとの間に貯留部17が設けられている。ここで、貯留部17は、同じ長さの第2の流路部分の容積よりも、容積が大きくされている。ここで、長さとは、第2の流路12が延びる方向の寸法をいうものとする。
【0031】
本実施形態では、貯留部17は、バルーン状の形状を有している。もっとも、貯留部17は、上記のように、同じ長さの第2の流路部分の容積よりも大きい容積を有する限り、形状は特に限定されない。本実施形態では、貯留部17はバルーン状の形状を有している。貯留部17の第2の流路12の横断面方向の断面積は、分岐部X側の端部から徐々に大きくなり、最大横断面積部分から、第2の可逆弁16側に至るにつれて、横断面積が徐々に小さくなっている。
【0032】
従って、貯留部17は、分岐部X側から第2の可逆弁16側に向かうにつれて、断面積が縮小する縮小部17aを有する。
【0033】
第3の流路13は、矢印Cで示す方向に第3の液体を送液するために設けられている。第3の流路13は分岐部Yにおいて、第2の流路12から分岐されている。
【0034】
図2及び
図3(a),(b)を参照して上記第2の可逆弁16の構造を説明する。
【0035】
図3(a)は、
図2のD-D’線に沿う部分の断面図である。
【0036】
チップ本体2は、ベースプレート2aと、合成樹脂積層体2bと、可撓性フィルム2cとを有する。ベースプレート2a上に合成樹脂積層体2bが積層されており、合成樹脂積層体2b上に、可撓性フィルム2cが積層されている。
図2のD-D’線に沿う部分では、第2の流路12は、上流側流路部12aと、下流側流路部12bとを有する。上流側流路部12aは、合成樹脂積層体2bの上面に設けられた溝と、該溝を閉じるように貼付された可撓性フィルム2cとにより構成されている。上流側流路部12aに、下流側流路部12bが連ねられている。下流側流路部12bは、上流側流路部12aに連ねられている部分からチップ本体2の厚み方向において下方に延ばされている。そして、合成樹脂積層体2bの下面側において、上流側流路部12aとは反対側にさらに延ばされている。
【0037】
下面側においては、合成樹脂積層体2bに設けられた溝がベースプレート2aで封止されて、下流側流路部12bが設けられている。
【0038】
可撓性フィルム2cは、押圧することにより撓む。第2の可逆弁16は、この可撓性フィルム2cと、押圧部材21とにより構成されている。
【0039】
図3(a)に示す状態では、第2の可逆弁16は開状態である。第2の液体が、上流側流路部12aから下流側流路部12bに向かって送液され得る状態である。すなわち、第2の流路12はオン状態とされている。
【0040】
押圧部材21を
図3(a)に示す状態から
図3(b)に示すように、下流側流路部12bが上流側流路部12aに連なっている部分において、合成樹脂積層体2b側に降下させる。その結果、可撓性フィルム2cにより、下流側流路部12bの上流側流路部12aに開口している部分が閉じられる。それによって、第2の可逆弁16が閉状態とされる。そのため、第2の流路12において、上流側流路部12aから下流側流路部12bに向かって第2の液体が流れない。すなわち、第2の流路12がオフ状態とされる。なお、押圧部材21による押圧を解除すると、可撓性フィルム2cは、
図3(a)に示す状態に戻る。従って、第2の可逆弁16は、開状態に復帰する。
【0041】
第2の可逆弁16について説明したが、第1の可逆弁14も同様に構成されている。
【0042】
なお、本発明において、第1,第2の可逆弁14,16の構造は、上記押圧部材21や可撓性フィルム2cを用いたものに限定されるものではない。すなわち、第1の流路11や第2の流路12において、液体の送液をオン状態またはオフ状態とし得る、適宜の可逆弁を用いることができる。
【0043】
また、本実施形態では、流路構造は、マイクロ流路である第1の流路11、第2の流路12及び第3の流路13を有するが、本発明において、チップ本体内に設けられる流路はマイクロ流路ではなく、マイクロ流路よりも断面積の大きな流路であってもよい。もっとも、マイクロ流路であることが好ましい。それによって、微量の試料により、様々な検査を行うことができる。
【0044】
ところで、マイクロ流路とは、流体の搬送に際し、マイクロ効果が生じるような微細な流路をいう。このようなマイクロ流路では、流体は、表面張力の影響を強く受け、通常の大寸法の流路を流れる流体とは異なる挙動を示す。
【0045】
マイクロ流路の横断面形状及び大きさは、上記のマイクロ効果が生じる流路であれば特に限定はされない。例えば、マイクロ流路に流体を流す際、ポンプや重力を用いる場合には、流路抵抗をより一層低下させる観点から、マイクロ流路の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、マイクロ流体デバイスをより一層小型化する観点より、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0046】
また、マイクロ流路の横断面形状がおおむね円形の場合には、直径(楕円の場合には、短径)が、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。マイクロ流体デバイスをより一層小型化する観点からは、直径(楕円の場合には、短径)が、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0047】
一方、例えば、マイクロ流路に流体を流す際、毛細管現象をより一層有効に活用するときに、マイクロ流路の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、小さい方の辺の寸法で、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0048】
次に、
図4~
図6を参照して、貯留部17を設けたことによる試薬や試料の汚染が生じ難いことを説明する。
【0049】
本実施形態の検査用具1を用いて、抵抗部15を構成している固定相において第1の液体中のRNAを固相抽出することができる。
【0050】
まず、第1の可逆弁14を開状態とし、第2の可逆弁16を閉状態とする。この状態で、
図4に示すように、第1の流路11に第1の液体31を送液する。第1の液体31は、第1の可逆弁14を通過し、固定相である抵抗部15に至る。また、第2の可逆弁16は閉状態とされているため、第2の流路12に入り込み難い。しかしながら、抵抗部15に第1の液体31を満たすように送液圧力を高めると、
図4に示すように、第2の流路12側にも第1の液体31が入り込む。ここで、貯留部17の容積が、同じ長さの第2の流路部分よりも大きいため、第2の流路12に逆流してきた第1の液体31は、貯留部17に留まることになる。
【0051】
次に、第2の液体を送液するために、第1の可逆弁14を閉状態とし、第2の可逆弁16を開状態とする。この場合、第1の流路11の分岐部X付近における残圧により、
図6に示すように、第1の液体31が貯留部17の分岐部Xとは反対側の端部から第2の可逆弁16側に向かって僅かに入り込むこととなる。しかしながら、貯留部17の容積が大きいため、第2の流路12における逆流液は僅かである。従って、
図6に示すように、第1の液体31は、第2の可逆弁16には至らない。よって、第2の可逆弁16における汚染が生じ難い。
【0052】
次に、第2の流路12から矢印Bで示すように、洗浄液としての第2の液体を送液する。この送液により、貯留部17に貯留されていた逆流液としての第1の液体31が第2の液体とともに第1の流路11の下流側に流され、抵抗部15を越えて、下流側に排出される。その状態で、抽出液としての第3の液体を、矢印Cで示すように第3の流路13に送液する。その結果、第3の液体が第2の流路12を介して第1の流路11に供給され、抵抗部15に至る。そのため、抵抗部15において第3の液体としての抽出液により、RNAが抽出され、第1の流路11の下流側に送液される。
【0053】
本実施形態の検査用具1では、上記のように容積の大きな貯留部17が第2の流路12に設けられているため、第1の液体31の逆流による汚染が生じ難い。
【0054】
好ましくは、第2の可逆弁16に近い縮小部17aと、分岐部Xとの間の第2の流路12の容積は、分岐部Xから第2の可逆弁16との間の第2の流路12の容積の10%以上、99%以下を占める。この場合には、第1の液体31の逆流による汚染をより効果的に防止することができる。
【0055】
図7は本発明の第2の実施形態に係る検査用具を説明するための模式的平面図である。第2の実施形態の検査用具41では、チップ本体2内に、第1の実施形態と同様に、第1の流路11、第2の流路12及び第3の流路13が設けられている。異なるところは、
図1に示した第2の可逆弁16に代えて、第2の可逆弁16A及び第3の可逆弁42が設けられていることにある。第2の可逆弁16Aは、第2の流路12と第3の流路13との分岐部Yよりも、第2の流路12において上流側に設けられている。また、第3の可逆弁42は、第3の流路13に設けられている。その他の構造は、検査用具41は、検査用具1と同様に構成されている。
【0056】
このように、第2の流路12及び第3の流路13に、独立に、第2の可逆弁16A及び第3の可逆弁42をそれぞれ設けてもよい。
【0057】
検査用具41の使用方法を
図7~
図10を参照して説明する。まず、第1の可逆弁14を開状態とし、第2の可逆弁16A及び第3の可逆弁42を閉状態とする。その状態で、第1の流路11に、第1の液体31を送液する。
図8に示すように、第1の液体31が、本実施形態においても第1の流路11に送液され、抵抗部15に至る。また、第1の液体31は第2の流路12側にも流れ込み、貯留部17に至る。もっとも、貯留部17の容積が大きいため、第2の流路12に逆流してきた第1の液体31は、貯留部17に留まる。
【0058】
次に、
図9に示すように、第1の可逆弁14を閉状態とする。
【0059】
次に、第2の液体を送液するために
図10に示すように、第2の可逆弁16Aを開状態とする。その結果、第1の可逆弁14よりも下流側の第1の流路11内の残圧により、貯留部17内の第1の液体31が、僅かに第2の流路12の上流側に至る。しかしながら、貯留部17の容積が大きいため、第2の流路12の上流側に至る逆流液の量は少ない。すなわち、第2の可逆弁16Aには、第1の液体31の逆流液は至ることはなく、かつ分岐部Yにも至らない。よって、汚染が生じ難い。この状態で第2の液体を第2の流路12から送液する。その結果、貯留部17内の残液である第1の液体31が第2の液体と共に流され、第1の流路11から抵抗部15を越え排液される。それによって、抵抗部15が洗浄される。
【0060】
次に、第2の可逆弁16Aを閉状態とし、第3の可逆弁42を開状態とする。この状態で第3の流路13から第3の液体を送液する。その結果、抽出液としての第3の液体により抵抗部15に固定されていた試料を抽出することができる。
【0061】
第2の実施形態の検査用具41においても、貯留部17が設けられているため、試薬や試料の汚染が生じ難い。
【0062】
なお、
図11に示す第3の実施形態のように、複数の貯留部17,17Aが設けられていてもよい。この場合には、逆流による汚染がより一層生じ難い。複数の貯留部17,17Aの形状及び寸法は等しくともよく、異なっていてもよい。
【0063】
また、複数の貯留部17,17Aが設けられている場合、第2の可逆弁16に最も近い縮小部17aと、分岐部Xとの間の第2の流路12の容積が、分岐部Xから第2の可逆弁16までの間の第2の流路12の容積の10%以上、99%以下を占めることが好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1…検査用具
2…チップ本体
2a…ベースプレート
2b…合成樹脂積層体
2c…可撓性フィルム
11…第1の流路
12…第2の流路
12a…上流側流路部
12b…下流側流路部
13…第3の流路
14…第1の可逆弁
15…抵抗部
16,16A…第2の可逆弁
17,17A…貯留部
17a…縮小部
21…押圧部材
31…第1の液体
41…検査用具
42…第3の可逆弁