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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】車両用電池の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6566 20140101AFI20220308BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220308BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220308BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220308BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220308BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220308BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6556
H01M50/20
B60K11/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018113145
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019216045
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】飯田 実
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-277647(JP,A)
【文献】特開2008-192381(JP,A)
【文献】特開2001-291532(JP,A)
【文献】特開2010-092833(JP,A)
【文献】特開2008-300103(JP,A)
【文献】特開2016-134243(JP,A)
【文献】特開2006-100123(JP,A)
【文献】実開平06-050249(JP,U)
【文献】特開2015-037044(JP,A)
【文献】特開2013-241049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6566
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 50/20
H01M 10/6556
H01M 50/30
B60K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが一方向に配列される電池モジュールと、
前記電池モジュールの一側面に沿って前記一方向に延在し、前記電池モジュールを冷却する冷却風を流す冷却ダクトと、
前記電池モジュールに沿って前記一方向に延在するように配設され、前記電池セルの異常発熱により変形する温調プレートと、
前記冷却ダクトから分岐し、前記電池モジュールの他の側面に沿って前記一方向に延在し、前記電池セルの異常発熱時に発生するガスを流す排煙ダクトと、を備え、
前記冷却ダクトと前記排煙ダクトとの分岐領域には、
前記冷却ダクトと前記排煙ダクトとを連通させる開口部と、
前記開口部を開状態に維持すると共に、前記電池セルの異常発熱の際に前記温調プレートと連動して可動し、前記開口部を塞ぐシャッター機構と、を有し、
前記電池セルが正常に稼働している間は、前記冷却ダクト内を流れる前記冷却風を前記排煙ダクトへも流すことを特徴とする車両用電池の冷却構造。
【請求項2】
前記排煙ダクトは、前記電池モジュールよりも上流側にて前記冷却ダクトから分岐し、
前記排煙ダクトの一端側は前記開口部を介して前記冷却ダクトと連通すると共に、前記排煙ダクトの他端側は車両外部へと導かれることを特徴とする請求項1に記載の車両用電池の冷却構造。
【請求項3】
前記シャッター機構は、
前記開口部近傍に配設される蓋部と、
前記開口部近傍の前記冷却ダクト内に前記一方向に向けて配設されるレール部と、
前記レール部に可動自在に配設されると共に、前記温調プレートの一端側に連結され、その一部に貫通孔が形成された可動プレート部と、
その一端側が前記蓋部に固定されると共に、その他端側が前記可動プレート部に対して可動自在に配設される支持棒部と、を有し、
前記電池セルの異常発熱の際に、前記温調プレートに連動して前記可動プレート部が可動し、前記支持棒部が、前記貫通孔から落下することで、前記蓋部が前記開口部を塞ぐことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電池の冷却構造。
【請求項4】
前記可動プレート部には、前記一方向に延在する一対のガイド壁部が形成され、
前記貫通孔は、前記一対のガイド壁部の間に形成されると共に、前記貫通孔の断面形状は、前記一方向に長手方向を有する楕円形状であることを特徴とする請求項3に記載の車両用電池の冷却構造。
【請求項5】
前記蓋部は、前記排煙ダクト内に配設されると共に、前記排煙ダクト側から前記開口部を全て覆う面積を有していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用電池の冷却構造。
【請求項6】
前記蓋部は、前記支持棒部を前記可動プレート部側へと押圧する板バネから形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用電池の冷却構造。
【請求項7】
前記冷却ダクト内には、前記電池モジュール側の側面に前記一方向に延在する絶縁性ケースが配設され、
合金プレートから成る前記温調プレートが、前記絶縁性ケース内に配設されていることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の車両用電池の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池の冷却構造に関し、特に、電池セルの異常時に発生する有毒ガスを車外に排出する排煙ダクトに、電池セルの正常稼働時には冷却風を流すことで、冷却効率を向上させる車両用電池の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池モジュール100として、図6に示す構造が知られている。図6は、従来の電池モジュール100を説明する斜視図である。
【0003】
図6に示す如く、電池モジュール100は、ケース本体101と、ケース本体101の内部に収納される複数の電池セル102と、を有している。例えば、19個の電池セル102が、ケース本体101の長手方向に一定の隙間を有するように配列され、直列接続されている。そして、ケース本体101には、その上面開口を塞ぐように排煙管103が取り付けられている。排煙管103は、ケース本体101の上面開口を塞ぐベース板部103Aと、ベース板部103Aの上面に配設される筒状部103Bと、を有している。
【0004】
電池セル102には、異常時に内部にて発生した有毒なガスを外部へと排出するための弁(図示せず)が設けられ、電池セル102は、上記弁を介して筒状部103Bと連通可能な構造となっている。尚、ケース本体101の長手方向の横側面には、ジョイントダクト104が配設され、ジョイントダクト104の内部には、電池モジュール100を冷却するための冷却風が流れている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、従来の組電池110の冷却構造として、図7(A)及び図7(B)に示す冷却構造が知られている。図7(A)は、従来の組電池110における冷却風113の流れを模式的に示す図である。図7(B)は、従来の組電池110に用いるガス排出ダクト120を説明する斜視図である。
【0006】
図7(A)に示す如く、組電池110は、自動車や電車等の車両に搭載される車載電池であり、組電池用ケース111内には、複数個の電池モジュール112を収容している。組電池用ケース111の上面には、冷却風113を供給する吸気口114が形成され、組電池用ケース111の下面には、排気口115が形成されている。そして、送風装置116から供給される冷却風113は、吸気ダクト117を介して組電池用ケース111内に流入した後、電池モジュール112間の冷却風通路118を通り抜け、排気ダクト119へと流れ込み、排気口115から組電池用ケース111の外部へと排出される。
【0007】
図7(A)及び図7(B)に示す如く、ガス排出ダクト120は、内部通路121が形成された矩形のパイプ形状である。ガス排出ダクト120は、電池モジュール112の配列方向に沿って、電池モジュール112の上下面に配設されると共に、組電池用ケース111を貫通して外部へと引き出されている。
【0008】
ガス排出ダクト120には、電池モジュール112のガス排出孔122に連通する複数のガス導入口123と、冷却風113の一部を取り入れる複数の空気取入口124と、が形成されている。この構造により、電池モジュール112から排出された有毒なガスは、ガス導入口123を介して、ガス排出ダクト120の内部通路121内に流れ込み、冷却風113の流れを利用しながら、車外へと排出される(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-134243号公報
【文献】特開2009-277647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6に示す如く、電池モジュール100のケース本体101に対し、その上面には排煙管103が配設され、その横側面には冷却用のジョイントダクト104が配設されている。この構造により、電池モジュール100は、その横側面のジョイントダクト104を介してのみ冷却され、電池モジュール100の冷却効率を向上させることが難しいという問題がある。特に、ケース本体101の上面には排煙管103が配設され、排煙管103は上述したように有毒なガスを車外へ排出するための必須構造であり、ケース本体101の上面には、冷却用のジョイントダクトを追加して配設することが難しい構造となっている。
【0011】
また、図7(A)に示す如く、組電池110では、電池モジュール112の配列方向に沿って、電池モジュール112の上下面にガス排出ダクト120を配設し、ガス排出ダクト120は、電池モジュール112から発生する有毒なガスの専用流路として用いられる。そして、図7(B)に示す如く、ガス排出ダクト120には、複数のガス導入口123と、複数の空気取入口124と、が形成され、有毒なガスの発生量が微量の場合でも、冷却風113の流れを利用しながら、発生した有毒なガスを車外へと排出することができる。
【0012】
しかしながら、ガス排出ダクト120では、冷却風113の流れを利用し、微量の有毒なガスを車外へ排出することを目的とし、積極的に冷却風113を流すことを目的としていないため、空気取入口124は小孔として形成されている。この構造により、ガス排出ダクト120には電池モジュール112を冷却するだけの冷却風113が流れることが出来ず、ガス排出ダクト120は冷却性能の点では改善の余地がある。
【0013】
一方、ガス排出ダクト120と冷却風通路118とは、上述したように、複数の空気取入口124を介して常時連通した状態である。そのため、有毒なガスの発生量が微量の場合には特に問題にはならないが、有毒なガスの発生量が多い場合には、そのガスの圧力も増大し、有毒なガスが複数の空気取入口124を介して冷却風通路118へと逆流する恐れがある。そして、冷却風通路118と連通する吸気ダクト117や送風装置116が、車室内へと繋がっている場合には、電池モジュール112から発生した有毒なガスが、車室内へと流れ込む恐れがあるという問題がある。
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電池セルの異常時に発生する有毒ガスを車外に排出する排煙ダクトに、電池セルの正常稼働時には冷却風を流すことで、冷却効率を向上させる車両用電池の冷却構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の車両用電池の冷却構造では、複数の電池セルが一方向に配列される電池モジュールと、前記電池モジュールの一側面に沿って前記一方向に延在し、前記電池モジュールを冷却する冷却風を流す冷却ダクトと、前記電池モジュールに沿って前記一方向に延在するように配設され、前記電池セルの異常発熱により変形する温調プレートと、前記冷却ダクトから分岐し、前記電池モジュールの他の側面に沿って前記一方向に延在し、前記電池セルの異常発熱時に発生するガスを流す排煙ダクトと、を備え、前記冷却ダクトと前記排煙ダクトとの分岐領域には、前記冷却ダクトと前記排煙ダクトとを連通させる開口部と、前記開口部を開状態に維持すると共に、前記電池セルの異常発熱の際に前記温調プレートと連動して可動し、前記開口部を塞ぐシャッター機構と、を有し、前記電池セルが正常に稼働している間は、前記冷却ダクト内を流れる前記冷却風を前記排煙ダクトへも流すことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、前記排煙ダクトは、前記電池モジュールよりも上流側にて前記冷却ダクトから分岐し、前記排煙ダクトの一端側は前記開口部を介して前記冷却ダクトと連通すると共に、前記排煙ダクトの他端側は車両外部へと導かれることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、前記シャッター機構は、前記開口部近傍に配設される蓋部と、前記開口部近傍の前記冷却ダクト内に前記一方向に向けて配設されるレール部と、前記レール部に可動自在に配設されると共に、前記温調プレートの一端側に連結され、その一部に貫通孔が形成された可動プレート部と、その一端側が前記蓋部に固定されると共に、その他端側が前記可動プレート部に対して可動自在に配設される支持棒部と、を有し、前記電池セルの異常発熱の際に、前記温調プレートに連動して前記可動プレート部が可動し、前記支持棒部が、前記貫通孔から落下することで、前記蓋部が前記開口部を塞ぐことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、前記可動プレート部には、前記一方向に延在する一対のガイド壁部が形成され、前記貫通孔は、前記一対のガイド壁部の間に形成されると共に、前記貫通孔の断面形状は、前記一方向に長手方向を有する楕円形状であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、前記蓋部は、前記排煙ダクト内に配設されると共に、前記排煙ダクト側から前記開口部を全て覆う面積を有していることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、前記蓋部は、前記支持棒部を前記可動プレート部側へと押圧する板バネから形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、前記冷却ダクト内には、前記電池モジュール側の側面に前記一方向に延在する絶縁性ケースが配設され、合金プレートから成る前記温調プレートが、前記絶縁性ケース内に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両用電池の冷却構造では、複数の電池セルが一方向に配列された電池モジュールと、電池モジュールの一側面に沿って配設される冷却ダクトと、電池セルの異常発熱により変形する温調プレートと、冷却ダクトから分岐し、電池モジュールの他の側面に沿って配設される排煙ダクトと、冷却ダクトと排煙ダクトとの分岐領域の開口部に、電池セルの異常発熱の際に温調プレートと連動して可動し、開口部を塞ぐシャッター機構と、が、備えられている。この構造により、電池セルが正常に稼働している間は、冷却ダクト内を流れる冷却風を排煙ダクトへも流すことで、電池モジュールの冷却効率を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、排煙ダクトは、電池モジュールよりも上流側にて冷却ダクトから分岐し、排煙ダクトの一端側は開口部を介して冷却ダクトと連通すると共に、排煙ダクトの他端側は車両外部へと導かれる。この構造により、電池セルの異常発熱の際に有毒ガスが発生した場合でも、シャッター機構により上記分岐領域の開口部を塞ぐことで、有毒ガスが車両の室内への流れ込むことを防止すると共に、確実に車外へと有毒ガスを排出することができる。
【0024】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、シャッター機構は、電池セルの異常発熱の際に開口部を塞ぐ蓋部と、冷却ダクト内に配設されるレール部と、レール部に可動自在に配設される可動プレート部と、開口部上方に蓋部を支持する支持棒部と、を有している。この構造により、電池セルの異常発熱の際に、温調プレートに連動して可動プレート部がスライド移動し、支持棒部が、可動プレート部に形成された貫通孔から落下し、蓋部が開口部を塞ぐことで、有毒ガスが車両の室内への流れ込むことを防止することができる。
【0025】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、可動プレート部には、一対のガイド壁部が形成され、貫通孔は、ガイド壁部の間であり、その長手方向が可動プレート部のスライド方向に位置するように形成されている。この構造により、電池セルの異常発熱の際に、可動プレート部がスライド移動する際に、支持棒部は、ガイド壁部によりガイドされ、確実に貫通孔から落下することで、蓋部が開口部を塞ぐことができる。
【0026】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、蓋部は、排煙ダクト内に配設されると共に、排煙ダクト側から開口部を全て覆う面積を有している。この構造により、蓋部は、電池セルの異常発熱により発生する有毒ガスのガス圧によっても押圧され、確実に上記分岐領域の開口部を塞ぐことができる。
【0027】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、蓋部は、支持棒部を可動プレート部側へと押圧する板バネから形成されている。この構造により、支持棒部は、蓋部と可動プレート部との間に挟み込まれた状態にて直立し、電池セルの正常稼働時には、開口部を開状態に維持すると共に、電池セルの異常発熱時には、確実に上記分岐領域の開口部を塞ぐことができる。
【0028】
また、本発明の車両用電池の冷却構造では、冷却ダクト内には、電池モジュール側の側面に絶縁性ケースが配設され、合金プレートから成る温調プレートが、絶縁性ケース内に配設されている。この構造により、温調プレートが、電池モジュールに対して絶縁処理された状態となり、電池モジュールにて予期せぬショートの発生等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態である車両用電池の冷却構造を備えた車両を説明する斜視図である。
図2】本発明の一実施形態である車両用電池の冷却構造を説明する斜視図である。
図3】本発明の一実施形態である車両用電池の冷却構造を説明する(A)斜視図、(B)斜視図である。
図4】本発明の一実施形態である車両用電池の冷却構造を説明する(A)側面図、(B)側面図である。
図5】本発明の一実施形態である車両用電池の冷却構造を説明する(A)断面図、(B)断面図である。
図6】従来の従来の電池モジュールを説明する斜視図である。
図7】従来の組電池における冷却構造を説明する(A)模式図、(B)斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用電池10の冷却構造12を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0031】
図1は、本実施形態の車両用電池10の冷却構造12を備えた車両11を説明する斜視図である。図2は、本実施形態の車両用電池10の冷却構造12を説明する斜視図である。図3(A)及び図3(B)は、本実施形態の車両用電池10の冷却構造12のシャッター機構31を説明する斜視図である。図4(A)及び図4(B)は、本実施形態の車両用電池10の冷却構造12を説明する側面図である。図5(A)及び図5(B)は、本実施形態の車両用電池10の冷却構造12のシャッター機構31の動作状況を説明する断面図である。
【0032】
自動車や電車等の車両11には、モータや様々の電装部品に電力を供給するための車両用電池10が搭載されている。車両11として自動車の場合には、近年、EV(Electrical Vehicle)、HEV(Hybrid Electrical Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)等が普及しており、これらの車両11にも、高い蓄電機能を有した車両用電池10が搭載されている。
【0033】
図1では、車両用電池10を備えた車両11を後方の上方から見た状態を図示し、説明の都合上、車両11の車体の後端を覆うリアゲートを省略して図示している。車体の車室内後方には後方シート13が配設され、後方シート13の更に後方には、リアフロア14が配設されている。そして、リアフロア14下方の収納スペース15には、車両用電池10が配設され、車両用電池10は、例えば、その長手方向が、車両11の車幅方向(紙面左右方向)と一致するように配設されている。尚、車両用電池10は、リアフロア14下方に配設される場合に限定されるものではなく運転席や助手席が配設されるフロントフロア(図示せず)等の下方に配設される場合でも良い。
【0034】
図2では、車両用電池10の冷却構造12を模式的に図示し、説明の都合上、冷却ダクト26と排煙ダクト27の一部を透過して図示している。車両用電池10の冷却構造12は、主に、車両用電池10と、車両用電池10の周囲に配設される冷却ダクト26及び排煙ダクト27と、冷却ダクト26と排煙ダクト27の分岐領域に設けられたシャッター機構31と、シャッター機構31を動作させる温調プレート41(図4(A)参照)と、を備えている。尚、温調プレート41は、冷却ダクト26内に配設される絶縁性ケース42内に配設されている。
【0035】
車両用電池10は、主に、収納枠体21と、収納枠体21内に収納される複数の電池セル22から構成される電池モジュール23と、を有している。収納枠体21は、主に、複数の電池セル22をその下面から支持する一対の底板プレート21A、21Bと、車両用電池10の長手方向の両側面に配設される側板プレート21C、21Dと、電池セル22の上面にて側板プレート21C、21D同士を連結する一対の押えプレート21E、21Fと、を有している。
【0036】
車両11での急速充電時、車両11の高負荷走行時や夏場等の高温環境下での車両11の走行時等、電池セル22の温度が上昇し、所定温度を超えた状態にて使用されることで、電池セル22の特性や寿命が悪化する。詳細は後述するが、収納枠体21では、収納枠体21から個々の電池セル22の上面や側面が露出し、その露出領域に対向するように冷却ダクト26及び排煙ダクト27を配設し、冷却風により冷却する領域を増大させることで、冷却性能を高める車両用電池10の冷却構造12を実現している。
【0037】
その一方、収納枠体21は、上記冷却性能を考慮した枠体構造であるが、側板プレート21C、21Dが、その上下面にて押えプレート21E、21F及び底板プレート21A、21Bと連結し、押えプレート21E、21Fにて、各電池セル22をその上面からしっかりと固定する。この構造により、収納枠体21としての強度も維持しつつ、個々の電池セル22の位置固定も実現している。
【0038】
電池セル22は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池である。個々の電池セル22は、例えば、角型平板形状であり、車両11の車幅方向(紙面左右方向)に沿って、前後に小さな隙間を有した状態にて等間隔に配列されている。そして、電池セル22の上面には、それぞれ上方に突出した正極側端子24と負極側端子25とがその両側に離隔して配設されている。個々の電池セル22は、導電性の接続板(図示せず)を介して直列接続されることで、高出力の電池モジュール23が構成されている。
【0039】
図示したように、電池モジュール23を冷却する冷却風を流す冷却ダクト26が、電池モジュール23の長手方向の側面に沿って配設されている。冷却ダクト26は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁性樹脂により形成されたダクトであり、その断面形状は長方形形状である。車両11の高さ方向(紙面上下方向)において、冷却ダクト26の長さは、収納枠体21の側面から露出する個々の電池セル22の長さと同等であり、冷却ダクト26と露出する電池モジュール23との対向領域を増大させ、冷却効率を向上させている。
【0040】
ここで、冷却ダクト26は、車両11の室内の空調をコントロールする車両用空調装置(図示せず)で空調された室内の空気を、車両用電池10の周囲まで導くように配設され、図示したように、電池モジュール23の露出領域に沿って配設された後、再び、室内へと導くように配設する。つまり、冷却ダクト26内を流れる冷却風は、車両11内を循環し、電池モジュール23との熱交換により温められた後、車両用空調装置にて冷却されることで、冷却効率を向上させることができる。
【0041】
次に、電池セル22の上面には、正極側端子24と負極側端子25との間であり、その中央領域にガス排出弁(図示せず)が形成されている。ガス排出弁は、例えば、電池セル22の上面に薄肉部等を用いて形成され、電池セル22の異常時に有毒ガスの発生により内圧が高まった際に優先的に破断する構造である。
【0042】
一方、排煙ダクト27は、各電池セル22のガス排出弁上方をカバーするように、電池モジュール23の長手方向の上面に沿って配設されている。排煙ダクト27は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁性樹脂により形成されたダクトである。車両11の前後方向(紙面前後方向)において、排煙ダクト27の幅は、正極側端子24と負極側端子25との間より若干短い程度の幅であり、収納枠体21の上方から露出する電池モジュール23の露出領域の大部分をカバーしている。
【0043】
丸印28にて示すように、本実施の形態では、排煙ダクト27の上流側の端部が、冷却ダクト26と連通している。一方、図示していないが、排煙ダクト27の下流側の端部は、車外へと導出されている。詳細は後述するが、電池セル22が正常に稼働している間は、排煙ダクト27には冷却ダクト26を流れる冷却風の一部が流れ込むことで、排煙ダクト27も利用して電池モジュール23を冷却することで、冷却効率を向上させている。
【0044】
次に、図3(A)及び図3(B)では、図2の丸印28にて示す領域を拡大して示し、説明の都合上、冷却ダクト26と排煙ダクト27を透過して図示している。シャッター機構31は、冷却ダクト26と排煙ダクト27との分岐領域に配設され、電池セル22の異常発熱時に、冷却ダクト26と排煙ダクト27とを連通させる開口部32を塞ぎ、電池セル22から発生した有毒ガスが、車両11の車室内へと流れ込むことを防止する機構である。
【0045】
図3(A)に示す如く、シャッター機構31は、主に、開口部32を開閉自在に塞ぐ蓋部33と、蓋部33を下方から支持する支持棒部34と、支持棒部34を下方から支持する可動プレート部35と、可動プレート部35を可動自在に支持する一対のレール部36、37と、その一端側が可動プレート部35と連結する温調プレート41と、を有している。尚、温調プレート41は、図4(A)及び図4(B)を用いて後述する。
【0046】
開口部32は、冷却ダクト26の上面26Aに形成され、排煙ダクト27は、その内部空間内に開口部32を含むように冷却ダクト26の上面に連結している。
【0047】
蓋部33は、排煙ダクト27の内部空間内に配設され、例えば、板バネにより形成され、蓋部33は、固定部33Aと、固定部33Aと一体に形成れた本体部33Bと、を有している。そして、固定部33Aは、開口部32近傍の冷却ダクト26の上面26Aに固定され、本体部33Bが、常時、開口部32側へと向かうように本体部33Bを支持している。一方、本体部33Bは、開口部32を塞ぐ際には、開口部32を全て覆う面積を有し、本体部33Bの先端側には、支持棒部34の一端側が固定されている。
【0048】
支持棒部34は、例えば、円柱状の細長い棒状体であり、その一端側が蓋部33に固定され、その他端側は可動プレート部35の上面35A(図3(B)参照)に当接している。支持棒部34の他端側は、可動プレート部35に対して固定されず、可動プレート部35は、支持棒部34に規制されることなく、スライド移動することができる。上述したように、支持棒部34は、蓋部33により可動プレート部35の上面35A側へと付勢され、蓋部33と可動プレート部35により挟まれた状態にて、可動プレート部35の上面35Aに直立している。
【0049】
可動プレート部35は、例えば、直方体形状の板状体であり、図3(B)に示すように、横幅方向(紙面前後方向)の両端側が、それぞれ一対のレール部36、37に嵌り込むことで、レール部36、37に沿って可動自在となる。そして、可動プレート部35の上面35Aには、一対のガイド壁部35B、35Cが形成され、ガイド壁部35B、35Cは可動プレート部35のスライド方向(紙面左右方向)に沿って略平行に形成されている。また、ガイド壁部35B、35Cの間には、その中央領域に上下方向に貫通した貫通孔35Dが形成されている。貫通孔35Dの断面形状は、可動プレート部35のスライド方向に長手方向を有する楕円形状となる。
【0050】
一対のレール部36、37は、冷却ダクト26の内側面26B、26Cにそれぞれ配設されると共に、冷却ダクト26の延在方向に沿って配設されている。レール部36、37の断面形状は、略コの字形状であり、それらの開口領域が対向して配設されている。この構造により、可動プレート部35が、一対のレール部36、37の間に配設され、冷却ダクト26の延在方向へとスライド移動することができる。詳細は後述するが、可動プレート部35がスライド移動し、支持棒部34が貫通孔35Dの形成領域へと位置することで、支持棒部34が貫通孔35Dへと落下する。そして、蓋部33の支持棒部34による支えられた状態が解消することで、蓋部33が開口部32を塞ぎ、排煙ダクト27は、冷却ダクト26から遮断される。
【0051】
次に、図4(A)及び図4(B)では、冷却ダクト26(図3(A)参照)内に配設された温調プレート41と可動プレート部35との位置関係を模式的に図示している。図2に示す如く、冷却ダクト26の内側面26B(図3(A)参照)には、電池モジュール23の露出領域との対向領域に絶縁性ケース42(図2参照)が配設され、絶縁性ケース42の内側には、温調プレート41が配設されている。この構造により、温調プレート41は、電池モジュール23に対して絶縁処理された状態となり、電池モジュール23にて予期せぬショートの発生等が防止される。
【0052】
図4(A)に示す如く、温調プレート41は、形状記憶合金により形成され、例えば、電池モジュール23の温度が高温状態になった際に、直線形状から略コの字形状に変形する。そして、温調プレート41は、車両11の車幅方向(紙面左右方向)に配列された全ての電池セル22に対して対向して配設されている。温調プレート41の紙面右側の端部は、冷却ダクト26(図3(A)参照)の内側面26B(図3(A)参照)に対して固定され、温調プレート41の紙面左側の端部は、可動プレート部35に固定されている。この構造により、温調プレート41が変形した場合には、可動プレート部35は、レール部36、37(図3(A)参照)に沿って紙面右側へとスライド移動する。
【0053】
図4(B)に示す如く、電池モジュール23の紙面左側から4番目の電池セル22にて金属片によるショートが発生し、異常発熱が発生した場合、丸印43(図4(A)参照)の領域の温調プレート41が加熱され、略コの字形状へと変形する。そして、温調プレート41は、上記コの字形状に変形することで、温調プレート41の車両11の車幅方向(紙面左右方向)の長さは短くなる。上述したように、温調プレート41は、紙面左側の端部が移動可能であり、温調プレート41の動きに連動して、その先端に固定された可動プレート部35も紙面右側へとスライド移動する。
【0054】
最後に、図5(A)及び図5(B)では、可動プレート部35のスライド移動に連動したシャッター機構31の動作を説明する。
【0055】
図5(A)では、個々の電池セル22(図4(A)参照)が正常に稼働し、電池セル22にて異常発熱が発生していない場合を示している。上述したように、支持棒部34の一端側は蓋部33に固定され、支持棒部34の他端側は、可動プレート部35の上面35Aに当接している。そして、支持棒部34は、蓋部33にて可動プレート部35の上面35A側へと付勢された状態のため、蓋部33は、開口部32の上方にて固定された状態となっている。
【0056】
この構造により、矢印51、52にて示すように、冷却ダクト26内を流れる冷却風の一部は、開口部32を介して排煙ダクト27内へと流れ込み、排煙ダクト27も冷却ダクト26と同様に電池モジュール23(図4(A)参照)を冷却する役割を果たす。図2に示すように、排煙ダクト27は、収納枠体21の上方から露出する電池モジュール23の露出領域の大部分をカバーしているので、電池モジュール23の冷却効率を向上させることができる。尚、排煙ダクト27内を流れる冷却風は、車両用空調装置を介して車両11内を循環することなく、車外へと排出される。
【0057】
図5(B)では、個々の電池セル22(図4(B)参照)のいずれかに問題が発生し、電池セル22にて異常発熱が発生している場合を示している。上述したように、異常発熱が発生した領域の温調プレート41が加熱され、略コの字形状へと変形することで、温調プレート41の車両11の車幅方向(紙面左右方向)の長さは短くなる。そして、可動プレート部35が、上記温調プレート41の変形に連動して紙面右側へとスライド移動することで、支持棒部34の下方に可動プレート部35の貫通孔35Dが配設され、支持棒部34が貫通孔35Dへと落下し、蓋部33が開口部32を塞いた状態となる。
【0058】
このとき、図3(B)を用いて説明したように、可動プレート部35の上面35Aには、一対のガイド壁部35B、35Cが、可動プレート部35のスライド方向(紙面左右方向)に略平行に形成されると共に、ガイド壁部35B、35Cの間には、上記スライド方向に長手方向を有する貫通孔35Dが形成されている。この構造により、可動プレート部35がスライド移動する際に、支持棒部34は、ガイド壁部35B、35Cにより確実に貫通孔35Dから落下する方向へとガイドされる。また、上記貫通孔35Dの形状により、温調プレート41の変形量が僅かな場合でも、電池セル22の異常発熱を検知し、排煙ダクト27は、冷却ダクト26から遮断される。
【0059】
図5(B)に示す如く、蓋部33は、開口部32を全て覆う面積を有すると共に、排煙ダクト27側から開口部32を塞ぐことで、矢印53にて示す、発生した有毒ガスの高圧により蓋部33は冷却ダクト26の上面26A側へと押し付けられた状態となる。また、板バネにより形成された蓋部33自身の付勢力によっても蓋部33は冷却ダクト26の上面26A側へと押し付けられた状態となる。
【0060】
この構造により、電池セル22が異常発熱した直後に、開口部32が蓋部33により塞がれ、その後、電池セル22のガス排出弁が破断し、有毒ガスが排煙ダクト27内へと流れ込む。そして、有毒ガスが流れ込む時には、開口部32は、蓋部33により塞がれた状態であり、電池セル22から発生した有毒ガスが、冷却ダクト26内へと逆流し、車両11の車室内へと流れ込むことが防止される。更には、発生した有毒ガスは非常に高圧であり、そのガス圧により蓋部33により塞がれた状態を維持することで、電池セル22から発生した有毒ガスが、冷却ダクト26内へと逆流することを確実に防止することができる。
【0061】
尚、本実施形態では、温調プレート41が、電池セル22の異常発熱を検知し、直線形状から略コの字形状に変形する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、その逆に、略コの字形状に繰り返し変形した温調プレート41を準備し、温調プレート41が、電池セル22の異常発熱を検知した場合に、略コの字形状から直線形状へと変形する場合でも良い。この場合には、温調プレート41は、車両11の車幅方向(紙面左右方向)の直線長さは長くなる方向に変形し、可動プレート部35が逆方向(紙面左方向)に移動する。そして、支持棒部34と貫通孔35Dとの位置関係も可動プレート部35の移動方向に合わせて設定することで、上述した効果と同様な効果を得ることができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用電池
11 車両
12 冷却構造
21 収納枠体
22 電池セル
23 電池モジュール
26 冷却ダクト
27 排煙ダクト
31 シャッター機構
32 開口部
33 蓋部
34 支持棒部
35 可動プレート部
35B、35C ガイド壁部
35D 貫通孔
36、37 レール部
41 温調プレート
42 絶縁性ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7