(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】建築用部材及び建築用部材の設置構造
(51)【国際特許分類】
E21F 1/10 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
E21F1/10
(21)【出願番号】P 2018241435
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-02-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 平成30年11月 8日 集会名、開催場所 第26回 衛生工学シンポジウム 口頭発表 北海道大学工学部 フロンティア応用科学研究棟(北海道札幌市北区北13条西8丁目) 開催日 平成30年11月 8日 集会名、開催場所 第26回 衛生工学シンポジウム ポスター発表 北海道大学工学部 フロンティア応用科学研究棟(北海道札幌市北区北13条西8丁目)
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】宮瀬 文裕
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊
(72)【発明者】
【氏名】岩井 一将
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-308956(JP,A)
【文献】登録実用新案第3189095(JP,U)
【文献】特開平09-228800(JP,A)
【文献】特開2018-162586(JP,A)
【文献】特開2006-161310(JP,A)
【文献】特開2015-197011(JP,A)
【文献】特開昭54-081627(JP,A)
【文献】登録実用新案第3028464(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール製部材が複数配置されて構成された建築用部材であって、
前記段ボール製部材は、
平板状に形成された平板部と、
該平板部の外縁から折曲されたリブ部と、を有し、
複数の前記段ボール製部材において、前記平板部が隣接して並ぶように配置され
、
前記リブ部には、設置面に設置された設置部材を係止可能な係止凹部が形成されていることを特徴とする建築用部材。
【請求項2】
前記平板部は、正面視矩形状に形成され、
前記リブ部は、前記平板部の四辺に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建築用部材。
【請求項3】
隣接する前記段ボール製部材において、隣接する前記リブ部どうしは、螺子で接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の建築用部材。
【請求項4】
前記リブ部が折り曲げられる前の段階で、前記平板部の外縁には、折り目が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の建築用部材。
【請求項5】
前記建築用部材は、トンネル内に設置される風門であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の建築用部材。
【請求項6】
設置面に設置された設置部材と、
該設置部材に支持された請求項1から5のいずれか一項に記載の建築用部材と、を備
えることを特徴とする建築用部材の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用部材及び建築用部材の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記の特許文献1に記載のトンネルに設置される風門のような強度が必要となる建築用部材は、剛性のある鋼製パネル等で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建築用部材を鋼製パネルで構成すると、現場の設置箇所のサイズに合わせて、鋼製パネルを現場で切断することは難しいため、サイズ調整部分はベニヤ板等の木材を適切なサイズに切断して使用していた。このように、建築用部材に鋼製パネルを採用すると、現場でのサイズ調整が難しいという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、強度を確保しつつ、設置箇所のサイズ等に現場対応しやすい建築用部材及び建築用部材の設置構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る建築用部材は、段ボール製部材が複数配置されて構成された建築用部材であって、前記段ボール製部材は、平板状に形成された平板部と、該平板部の外縁から折曲されたリブ部と、を有し、複数の前記段ボール製部材において、前記平板部が隣接して並ぶように配置され、前記リブ部には、設置面に設置された設置部材を係止可能な係止凹部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された建築用部材では、段ボール製部材は平板部の外縁から折曲されたリブ部が設けられた構成であるため、段ボール製部材はたわみが抑制され、強度を確保することができる。
また、建築用部材のリブ部の係止凹部に設置部材を係止させれば建築用部材は設置部材に固定される。よって、建築用部材を設置部材に容易且つ安定して固定することができる。
【0008】
また、本発明に係る建築用部材は、前記平板部は、正面視矩形状に形成され、前記リブ部は、前記平板部の四辺に設けられていることが好ましい。
【0009】
このように構成された建築用部材では、正面視矩形状に形成された平板部の四辺に、リブ部が設けられている。よって、平板部の外縁全周がリブ部で補強されるため、段ボール製部材のたわみがより一層抑制される。
【0010】
また、本発明に係る建築用部材は、隣接する前記段ボール製部材において、隣接するリブ部どうしは、螺子で接合されていてもよい。
【0011】
このように構成された建築用部材では、隣接する段ボール製部材において、隣接するリブ部どうしは螺子で接合されているため、隣接する段ボール製部材どうしを容易に接合することができる。
【0012】
また、本発明に係る建築用部材は、前記リブ部が折り曲げられる前の段階で、前記平板部の外縁には、折り目が設けられていてもよい。
【0013】
このように構成された建築用部材では、予め平板部の外縁に折り目が設けられ、現場で折り目に沿って折り曲げればリブ部ができるため、施工性が良い。
【0014】
また、本発明に係る建築用部材は、前記建築用部材は、トンネル内に設置される風門であってもよい。
【0015】
このように構成された建築用部材では、トンネル内に設置される風門のサイズや形状に合わせて、配置する段ボール製部材の個数や配列方向を調整したりすればよいため、風門の施工の際に現場対応しやすい。
【0016】
また、本発明に係る建築用部材の設置構造は、設置面に設置された設置部材と、該設置部材に支持された上記のいずれか一に記載の建築用部材と、を備えることを特徴とする。
【0017】
このように構成された建築用部材の設置構造では、建築用部材のリブ部の係止凹部に設置部材を係止させれば建築用部材は設置部材に固定される。よって、建築用部材を設置部材に容易且つ安定して固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る建築用部材及び建築用部材の設置構造によれば、強度を確保しつつ、設置箇所のサイズ等に現場対応しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る風門の設置構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る段ボール製部材を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る段ボール製部材を展開した状態の平面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る風門の設置構造を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る風門において、隣接する段ボール製部材どうしの接合構造及び風門の設置構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る建築用部材の一例の風門の設置構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る建築用部材の一例の風門の設置構造を示す斜視図である。
本実施形態に係る風門(建築用部材)1は、トンネルT内に風を遮断するために設置されるものである。例えば、トンネルTの施工時に、トンネル坑内の風を遮断することで、覆工コンクリートのひび割れを防止するものである。
【0021】
図1に示すように、トンネルT内に支持体10が設置され、風門1は支持体10に対してトンネルTの延在方向Xに一方側に設置されている。
なお、下記の説明において、トンネルTの延在方向Xの一方側(風門1側)を前側と称し、他方側(支持体10側)を後側と称し、前側と後側とを結ぶ方向を前後方向と称する。また、水平方向のうち前後方向の直交する方向を幅方向と称する。
【0022】
本実施形態では、支持体10は、単管パイプ等の鋼材11を、上下方向及び幅方向に間隔を有して配置して構成されている。風門1は、支持体10に支持されている。
【0023】
風門1は、複数の段ボール製部材2が隣接配置されて構成されている。
図2は、段ボール製部材2を示す斜視図である。
図3は、段ボール製部材2を展開した状態(パネル部材3)の平面図である。
図2に示す段ボール製部材2は、
図3に示す平板状のパネル部材3が現場で折り曲げられたものである。
【0024】
図3に示すように、パネル部材3は、中央矩形部31と、複数の縁矩形部32と、を有している。中央矩形部31は、平面視矩形状に形成されている。本実施形態では、矩形部は、平面視正方形をなしている。
【0025】
縁矩形部32は、中央矩形部31の4辺に沿って設けられている。縁矩形部32は、平面視矩形状をなしている。中央矩形部31と縁矩形部32との境界線(4辺)には、工場で折り目33が設けられている。折り目33を破線で示している。
【0026】
本実施形態のパネル部材3の内部構成は、例えば、平板状の紙材がパネル部材3の厚さ方向に4枚間隔を有して配置され、各紙材の間にコルゲート形状に形成された中芯が設けられたものである。換言すると、本実施形態のパネル部材3は、コルゲート構造が3層配置された高強度の複々両面段ボールを使用している。このような複々両面段ボールは軽量で運搬が容易であり、加工性も高く、また遮音性にも優れている。本実施形態のパネル部材3は、縦横それぞれ約1mである。なお、パネル部材3は、段ボール製であれば内部構成や大きさ等は適宜設定可能である。
【0027】
現場には、板状の状態のパネル部材3として搬入され、現場において折り目33に沿って縁矩形部32を折り曲げることにより、
図2に示す段ボール製部材2が作られる。
【0028】
図2に示すように、段ボール製部材2は、平板部21と、複数のリブ部22と、を有している。平板部21はパネル部材3の中央矩形部31に対応し、リブ部22はパネル部材3の縁矩形部32に対応する。
【0029】
リブ部22は、平板部21の外縁から略直角に折り曲げられている。隣接するリブ部22の端部21aどうしは、接合されていてもよい。
【0030】
図1に示すように、風門1では、段ボール製部材2が上下方向及び幅方向に複数隣接配置されている。本実施形態では、段ボール製部材2が、幅方向に3個且つ上下方向の3個の合計9個隣接配置されている。なお、段ボール製部材2の設置個数や段ボール製部材2のサイズ等は、設置される箇所(空間)の大きさに応じて決定すればよい。
【0031】
風門1は、複数の段ボール製部材2において、平板部21が隣接して並ぶように配置されている。隣接する段ボール製部材2のリブ部22どうしが、隣接している。隣接するリブ部22どうしが、接着剤やボルト等で接合されていてもよい。
【0032】
このように構成された風門1では、段ボール製部材2は平板部21の外縁から折曲されたリブ部22が設けられた構成であるため、段ボール製部材2はたわみが抑制され、強度を確保することができる。さらに、隣接する段ボール製部材2のリブ部22どうしが接着剤で接合されているため、風門1全体の曲げ強度も確保することができる。
【0033】
また、設置箇所のサイズや形状に合わせて、配置する段ボール製部材2の個数や配列方向を調整したりすればよいため、現場対応しやすい。
【0034】
また、正面視矩形状に形成された平板部21の四辺に、リブ部22が設けられている。よって、平板部21の外縁全周がリブ部22で補強されるため、段ボール製部材2のたわみがより一層抑制される。
【0035】
また、予め平板部21の外縁に折り目33が設けられ、現場で折り目33に沿って折り曲げればリブ部22ができるため、施工性が良い。
【0036】
また、従来のように鋼製パネルを使用していた場合の約1/3の材料費で、風門1を製作することができる。
【0037】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る風門の設置構造について、主に
図4及び
図5を用いて説明する。
以下の実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4は、本発明の第二実施形態に係る風門の設置構造を示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態では、風門1Aは、トンネルTの内周面t1に沿った形状をなしている。段ボール製部材2は、上下方向及び幅方向に複数隣接配置されている。風門1Aの中央には、通行可能な開口1bが形成されている。
【0038】
トンネルTの内周面t1に沿って配置される段ボール製部材2Aは、内周面t1に対応した形状をなしている。現場で、正面視矩形状をなす段ボール製部材2をトンネルTの内周面t1に沿うように切断して、段ボール製部材2Aが製作されている。
【0039】
図5は、風門1Aにおいて、隣接する段ボール製部材2どうしの接合構造及び風門1Aの設置構造を示す図である。
図5は、風門1Aを後方から見た図である。
図5に示すように、隣接する段ボール製部材2において、リブ部22のうちトンネルTの幅方向に沿って配置される横リブ部22Aどうしは、螺子41で接合されている。換言すると、上下の段ボール製部材2において、上下の横リブ部22Aどうしが螺子41で接合されている。なお、リブ部22のうち上下方向に沿って配置される縦リブ部22Bどうしを螺子41で接合してもよい。
【0040】
段ボール製部材2では、横リブ部22Aの奥行寸法(平板部21の板面に直交する方向の寸法)a1は、縦リブ部22Bの奥行寸法a2よりも短い。
【0041】
支持体10を構成する鋼材11のうちトンネルTの幅方向を向く横鋼材11Aは、設置面G(
図4参照)に設置され上下方向を向く縦鋼材(設置部材)11Bよりも前方(段ボール製部材2側)に配置されている。鋼材11A,11Bは、連結手段13により連結されている。縦鋼材11Bは、段ボール製部材2の横リブ部22Aの後方に配置されている。
【0042】
縦リブ部22Bには、端部23から凹む係止凹部24が形成されている。係止凹部24は、縦リブ部22Bの端部23から平板部21側に凹む挿入部24aと、挿入部24aから上方に凹む係止部24bと、を有している。
【0043】
横鋼材11Aは、縦リブ部22Bの係止凹部24の係止部24bに係止されている。支持体10を設置した後に、段ボール製部材2を支持体10の前方に配置し、縦リブ部22Bの係止凹部24の挿入部24aに横鋼材11Aを挿入する。段ボール製部材2を後方に移動させた後下方に移動させると、横鋼材11Aが係止凹部24の係止部24bに係止される。この状態で、風門1Aに前後方向への力が作用しても、係止凹部24に横鋼材11Aが係止されているため風門1Aが前後方向に移動したり傾倒したりすることがない。
【0044】
このように構成された風門1Aでは、段ボール製部材2は平板部21の外縁から折曲されたリブ部22が設けられた構成であるため、段ボール製部材2はたわみが抑制され、強度を確保することができる。さらに、隣接する段ボール製部材2のリブ部22どうしが接着剤で接合されているため、風門1A全体の曲げ強度も確保することができる。なお、横リブ22Aに係止凹部24が形成され、係止凹部24に縦鋼材11Bが係止される構成であってもよい。
【0045】
また、隣接する段ボール製部材2において、隣接する横リブ部22Aどうしは、螺子41で接合されているため、隣接する段ボール製部材2どうしを容易に接合することができる。
【0046】
また、段ボール製部材2の縦リブ部22Bの係止凹部24に横鋼材11Aを係止させれば風門1Aは横鋼材11Aに固定されるため、風門1Aを横鋼材11Aに容易且つ安定して固定することができる。本実施形態では、横鋼材11Aとして単管パイプが採用されているため、組み立てが簡単である。
【0047】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、段ボール製部材2が矩形状であれば割り付けしやすいが、本発明はこれに限られず、段ボール製部材2の形状は適宜設定可能である。
【0049】
また、上記に示す実施形態では、平板部21の外縁全周に沿ってリブ部22が設けられているが、本発明はこれに限られず、平板部21の外縁の一部にリブ部22が設けられていてもよい。
【0050】
また、上記に示す実施形態では、予め工場でパネル部材3に折り目33を設けているが、本発明はこれに限られず、現場でカッター等により折り目33を設けたり、折り目33を設けずに折り曲げたりしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…風門(建築用部材)
2…段ボール製部材
3…パネル部材
10…支持体
11…鋼材
21…平板部
22…リブ部
31…中央矩形部
32…縁矩形部
33…折り目
T…トンネル
X…延在方向