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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】金型装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20220308BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220308BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/26
B29C45/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018528478
(86)(22)【出願日】2017-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2017024716
(87)【国際公開番号】W WO2018016323
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2016141686
(32)【優先日】2016-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏弥
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛俊
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-271289(JP,A)
【文献】特開2009-160752(JP,A)
【文献】特開2011-230345(JP,A)
【文献】特開平08-197578(JP,A)
【文献】特開2010-105211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形によって二色成形品を製造する複数の金型のうち、二色成形品になる前の未完成成形品を保持するキャビティ金型と、
前記キャビティ金型と組み合わされる1次コア金型と、
前記1次コア金型に設けられ、前記未完成成形品をキャビティ金型に向けて付勢する付勢機構と、を備え、
前記付勢機構は、前記キャビティ金型と前記1次コア金型とを組み合わせた状態で、前記キャビティ金型に当接する当接部と、前記未完成成形品を前記キャビティ金型に向けて付勢する可動部と、前記可動部を前記キャビティ金型に向けて移動させるバネと、前記可動部の前記キャビティ金型に向かう移動を規制する規制部と、を有
前記規制部は、前記バネの内部を通過するように設けられている、金型装置。
【請求項2】
前記付勢機構は、
前記キャビティ金型と前記1次コア金型とを組み合わせた状態で、前記未完成成形品に応じた1次キャビティの一部の内面を構成する内面部を有し、
前記キャビティ金型と前記1次コア金型とを型開きした際に、前記内面部で前記未完成成形品を前記キャビティ金型に向けて付勢するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記未完成成形品を保持したキャビティ金型と組み合わせる2次コア金型を更に備え、
前記2次コア金型は、前記キャビティ金型と組み合わされた状態で、二色成形品に応じた2次キャビティが形成されるように構成されており、
前記2次キャビティは、前記内面部と接していた前記未完成成形品の部分が露出する形状であることを特徴とする請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記未完成成形品を保持したキャビティ金型と組み合わせる2次コア金型と、
前記2次コア金型に設けられた押し出し部と、を更に備え、
前記2次コア金型は、前記キャビティ金型と組み合わされた状態で、二色成形品に応じた2次キャビティが形成されるように構成されており、
前記押し出し部は、前記キャビティ金型と前記2次コア金型とを組み合わされた状態で前記2次キャビティの一面を形成する押し出し面を有し、前記キャビティ金型と前記2次コア金型とを型開きした際に前記押し出し面で前記二色成形品を押し出すことを特徴とする請求項1または2に記載の金型装置。
【請求項5】
前記付勢機構は、前記1次コア金型に設けられた凹部に入れ子として配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形の一方法として、1次成形品を形成した後に、その周囲に2次成形品を形成することで二色成形品を作製する技術が知られている。二色成形の技術は、例えば、車両のヘッドランプ等の灯具の透光カバーを作製する際に用いられている(特許文献1参照)。また、1次コア側金型および2次コア側金型の間を通る軸回りに回転可能に配置された回転部材に、一対のキャビティ金型が固定された回転金型を用いて、二色成形品を射出成形する技術が考案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-176974号公報
【文献】特開2014-168936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な金型においては、成形品は型開きした際にコア金型に保持されることが多い。そのため、1次成形品を形成する際と2次成形品を形成する際に用いられる共通の金型がキャビティ金型である場合、少なくとも1次成形品をキャビティ金型に保持させる機構が必要となる。例えば、特許文献2においては、キャビティ金型に1次成形品を係止しておく係止部を設けることで、型開きした際に1次成形品がコア金型に残らないようにしている。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二色成形品に用いられる例えば1次成形品をキャビティ金型に保持させる新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の金型装置は、射出成形によって二色成形品を製造する複数の金型のうち、二色成形品になる前の未完成成形品を保持するキャビティ金型と、キャビティ金型と組み合わされる1次コア金型と、1次コア金型に設けられ、未完成成形品をキャビティ金型に向けて付勢する付勢機構と、を備える。
【0007】
この態様によると、キャビティ金型と1次コア金型とを型開きする際に、未完成成形品をキャビティ金型に向けて付勢することで、未完成成形品をキャビティ金型に保持させることができる。
【0008】
付勢機構は、キャビティ金型と1次コア金型とを組み合わせた状態で、キャビティ金型に当接する当接部と、キャビティ金型と1次コア金型とを組み合わせた状態で、未完成成形品に応じた1次キャビティの一部の内面を構成する内面部と、を有してもよい。キャビティ金型と1次コア金型とを型開きした際に、内面部で未完成成形品をキャビティ金型に向けて付勢するように構成されていてもよい。これにより、キャビティ金型と1次コア金型とを型開きする際に、当接部がキャビティ金型に当接しながら、内面部が未完成成形品を付勢するので、未完成成形品をキャビティ金型に保持させることができる。
【0009】
未完成成形品を保持したキャビティ金型と組み合わせる2次コア金型を更に備えてもよい。2次コア金型は、キャビティ金型と組み合わされた状態で、二色成形品に応じた2次キャビティが形成されるように構成されており、2次キャビティは、内面部と接していた未完成成形品の部分が露出する形状であってもよい。これにより、付勢機構と金型との境界がラインとして転写された未完成成形品の一部が2次成形品で覆われるため、ラインが外部から視認されにくくなる。
【0010】
付勢機構は、1次コア金型に設けられた凹部に入れ子として配置されていてもよい。これにより、金型構成を大きく変えずに簡易に付勢機構を配置できる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二色成形品に用いられる例えば1次成形品をキャビティ金型に保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、二色成形品の製造工程における一色目の充填工程を示す模式図、図1(b)は、型開きした際に本実施の形態に係る付勢機構によって1次成形品を保持型に保持させている状態を示す模式図である。
図2図2(a)は、二色成形品の製造工程における1次成形品を保持した保持型の回転工程を示す模式図、図2(b)は、型開きされた図2(a)に示す金型を型締めした状態を示す模式図である。
図3図3(a)は、二色成形品の製造工程における二色目の充填工程を示す模式図、図3(b)は、二色成形品の製造工程における2次成形品を金型から取り出す工程を示す模式図である。
図4図4(a)は、型締めした状態における付勢機構近傍の断面を模式的に示した図、図4(b)は、型開きした状態における付勢機構近傍の断面を模式的に示した図である。
図5図5(a)は、付勢機構の可動部および1次成形品をキャビティ側金型から見た模式図、図5(b)は、1次成形品の端面側から見た模式図、図5(c)は、1次成形品の端面を2次成形品で覆った状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面等を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0015】
(二色成形品の製造方法)
はじめに、本実施の形態に係る金型装置を用いた二色成形品の製造方法の概略について説明する。図1(a)は、二色成形品の製造工程における一色目の充填工程を示す模式図、図1(b)は、型開きした際に本実施の形態に係る付勢機構によって1次成形品を保持型に保持させている状態を示す模式図である。図2(a)は、二色成形品の製造工程における1次成形品を保持した保持型の回転工程を示す模式図、図2(b)は、型開きされた図2(a)に示す金型を型締めした状態を示す模式図である。図3(a)は、二色成形品の製造工程における二色目の充填工程を示す模式図、図3(b)は、二色成形品の製造工程における2次成形品を金型から取り出す工程を示す模式図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る金型装置100は、いわゆる対向方式の二色成形用金型として構成されている。
【0017】
金型装置100は、水平方向に延びるX軸上において互いに向き合った状態で配置された1次コア側金型10および2次コア側金型12と、これら1次コア側金型10および2次コア側金型12の間に配置され、X軸と直交して鉛直方向に延びるY軸回りに回転可能に構成された回転部材14と、Y軸を挟んで互いに背中合わせの状態で回転部材14に固定された、同一形状の1対のキャビティ側金型16a,16bと、1次コア側金型10を支持する可動盤18および2次コア側金型12を支持する可動盤20と、を備えている。1次コア側金型10および2次コア側金型12は、いわゆる可動型であり、キャビティ側金型16a,16bは、いわゆる固定型である。
【0018】
可動盤18は、回転部材14に対してX軸方向に移動し得るようになっており、また、可動盤20は、回転部材14に対してX軸方向に移動し得るようになっている。
【0019】
図1(a)に示すように、金型装置100は、型締めにより当接した1次コア側金型10とキャビティ側金型16aとの間に形成される1次キャビティとしての1次空間部C1に、可動盤18に支持された加熱シリンダ22から供給される透明の樹脂材料24を射出し、1次成形品26を形成する。
【0020】
次に、1次コア側金型10および2次コア側金型12と、一対のキャビティ側金型16a,16bとを型開きする。この際、図1(b)に示すように、1次成形品26は、後述する付勢機構38によってキャビティ側金型16aに向かって付勢され、キャビティ側金型16aに保持されたまま1次コア側金型10から離脱する。
【0021】
そして、この状態で、図2(a)に示すように、回転部材14をY軸回りに180°回転させる。このように、本実施の形態に係るキャビティ側金型16a(16b)は、型開きされた際に1次成形品26を保持する保持型として機能する。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、1次コア側金型10および2次コア側金型12と1対のキャビティ側金型16b,16aとを型締めする。これにより、1次コア側金型10とキャビティ側金型16bとの間に1次空間部C1が形成され、2次コア側金型12とキャビティ側金型16aとの間に2次キャビティとしての2次空間部C2が形成される。
【0023】
そして、この状態で、図3(a)に示すように、加熱シリンダ28から供給される有色(黒色)の樹脂材料30を、2次空間部C2における1次成形品26以外の部分に射出して2次成形品32を成形する。なお、2次空間部C2は、2次コア側金型12とキャビティ側金型16aとが組み合わされたことで形成されている。これにより、1次成形品26と2次成形品32とが一体化されてなる二色成形品34が製造される。
【0024】
また、二色成形品34が製造されるとともに、1次コア側金型10とキャビティ側金型16bとが組み合わされて形成された1次空間部C1に透明の樹脂材料24が射出され、1次成形品26が形成される。
【0025】
次に、図3(b)に示すように、1次コア側金型10および2次コア側金型12と1対のキャビティ側金型16b,16aとを型開きする。この際、二色成形品34は、成形時の樹脂の収縮により、2次コア側金型12に貼り付いた状態となる。そして、この状態で、図3(b)に示すように、二色成形品34を取り出す。この取り出しは、押し出しピン36によって2次コア側金型12に貼り付いた二色成形品34を押し出して、図示しない取り出し機で掴むことによって行う。
【0026】
次に、回転部材14をY軸回りに180°回転させ、1次コア側金型10および2次コア側金型12と1対のキャビティ側金型16a,16bとを型締めする。その後は、図1(a)~図3(b)に示す各工程を繰り返し、連続的に二色成形品34を製造する。
【0027】
(付勢機構)
図4(a)は、型締めした状態における付勢機構近傍の断面を模式的に示した図、図4(b)は、型開きした状態における付勢機構近傍の断面を模式的に示した図である。なお、図4(a)に示す付勢機構38は、図1(a)のA領域の拡大図であり、図4(b)に示す付勢機構38は、図1(b)のB領域の拡大図である。
【0028】
図4(a)に示す付勢機構38は、1次成形品26をキャビティ側金型16aに向けて付勢するものである。また、付勢機構38は、1次コア側金型10に設けられた凹部40に入れ子として配置されている。これにより、金型構成を大きく変えずに簡易に付勢機構38を配置できる。
【0029】
付勢機構38は、筒状の可動部42と、可動部42の移動を規制する筒状の規制部44と、規制部44を1次コア側金型10に固定するボルト46と、可動部42をキャビティ側金型16aに向けて移動させるバネ48と、を備える。可動部42は、キャビティ側金型16a(16b)と対向する端面50を有する。
【0030】
端面50は、図4に示すように、キャビティ側金型16aと1次コア側金型10とを組み合わせた状態で、キャビティ側金型16aに当接する当接部50aと、キャビティ側金型16aと1次コア側金型10とを組み合わせた状態で、1次成形品26に応じた1次空間部C1の内面を構成する内面部50bと、を有している。
【0031】
本実施の形態に係る付勢機構38は、図4(b)に示すように、キャビティ側金型16aと1次コア側金型10とを型開きした際に、内面部50bで1次成形品26をキャビティ側金型16aに向けて付勢するように構成されている。これにより、キャビティ側金型16aと1次コア側金型10とを型開きする際に、当接部50aがキャビティ側金型16aに当接しながら、内面部50bが1次成形品26を付勢するので、1次成形品26をキャビティ側金型16aに保持させることができる。
【0032】
次に、付勢機構38によって1次成形品26の表面に生じうるライン状の痕跡について説明する。付勢機構38は、凹部40に対して入れ子として配置されている。また、可動部42の端面50は、1次コア側金型10とキャビティ側金型16aとを型締めした状態において、理想的には1次コア側金型10の表面と連続した面で構成されている。しかしながら、端面50と1次コア側金型10の表面との間の段差を完全になくすことは困難である。また、可動部42と凹部40の内壁40aとの隙間をゼロにすることも不可能である。
【0033】
図5(a)は、付勢機構の可動部42および1次成形品26をキャビティ側金型から見た模式図、図5(b)は、1次成形品26の端面26a側から見た模式図、図5(c)は、1次成形品26の端面26aを2次成形品32で覆った状態を示す模式図である。
【0034】
図5(a)、図5(b)に示すように、1次成形品26の表面のうち、付勢機構38の可動部42と対向する端面26aには、可動部42と1次コア側金型10との境界Rに対応する入れ子ラインLが形成される。このような入れ子ラインLは、製品の意匠を考慮すれば、より目立たない方が好ましい。
【0035】
そこで、図2(b)に示すように、本実施の形態に係る金型装置100における2次コア側金型12は、キャビティ側金型16aと組み合わされた状態で、二色成形品34に応じた2次空間部C2が形成されるように構成されている。2次空間部C2は、内面部50bと接していた1次成形品26の端面26aの部分が露出する形状である。これにより、付勢機構38と1次コア側金型10との境界が入れ子ラインLとして転写された1次成形品26の端面26aが、図5(c)に示すように、2次成形品32で覆われるため、入れ子ラインLが外部から視認されにくくなる。
【0036】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0037】
C1 1次空間部、 C2 2次空間部、 10 1次コア側金型、 12 2次コア側金型、 14 回転部材、 16a,16b キャビティ側金型、 24 樹脂材料、 26 1次成形品、 26a 端面、 30 樹脂材料、 32 2次成形品、 34 二色成形品、 38 付勢機構、 40 凹部、 40a 内壁、 42 可動部、 44 規制部、 46 ボルト、 48 バネ、 50 端面、 50a 当接部、 50b 内面部、 100 金型装置。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、金型装置に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5