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特許7036722磁性ガラス粒子による核酸の連続的な補足
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  • 特許-磁性ガラス粒子による核酸の連続的な補足 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】磁性ガラス粒子による核酸の連続的な補足
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220308BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20220308BHJP
【FI】
C12N15/10 114Z
C12Q1/6806 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018529137
(86)(22)【出願日】2017-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2017050166
(87)【国際公開番号】W WO2017118673
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】62/275,010
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】シェリー ホルコム
(72)【発明者】
【氏名】アラン カシーラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー グリスウォールド
(72)【発明者】
【氏名】トレバー フリース
(72)【発明者】
【氏名】カラン カンパニ
(72)【発明者】
【氏名】シャロン レガスピ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0239091(US,A1)
【文献】特表2002-531084(JP,A)
【文献】特表2001-518284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0132758(US,A1)
【文献】特開2001-116752(JP,A)
【文献】特表2004-535591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0012699(US,A1)
【文献】Appl. Microbiol. Biotechnol. (2006) Vol.73, pp.495-504
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12Q 1/68
C12M 1/00-3/10
G01N 1/00
G01N 33/48-33/98
G01N 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の核酸を捕捉する自動化方法であって、以下:
(a)前記液体試料からの核酸を磁性ガラス粒子(MGP)と非共有結合させる条件下において、容器中の前記液体試料の第1アリコートを前記MGPと接触させ、ここで前記MGPは非多孔性であり、ガラス中に少なくとも1つの強磁性磁気コアを含み;
(b)前記MGPへ磁場を印加して、MGPの凝集塊を形成させ;
(c)前記MGPの凝集塊から未結合の液体試料を取り除き;
(d)前記液体試料の第2アリコートを前記MGP凝集塊と接触させ;
(e)前記液体試料の前記第2アリコートの底半分において、前記容器の底においてピペッティングを行って、MGPの凝集塊を壊すことにより、前記MGPを再懸濁し;
(f)前記第2アリコートの底半分から前記容器内で、前記第2アリコートの上部へ前記MGPをピペッティングし、それにより第2アリコート内で前記MGPを分布させ;
(g)磁場を前記MGPへ印加してMGPの凝集塊を形成し;そして、
(h)前記MGPの凝集塊から未結合の液体試料を取り除き
を含む、前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの液体試料のさらなるアリコートに対してステップ(d)~ステップ(h)を繰り返す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MGPが0.5~15μmの平均直径を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスが少なくとも1つの金属酸化物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの金属酸化物が、SiO2、B23、Al23、K2O、CaO、及びZnOから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体試料が、血液、血漿、血清、尿、又はそのライセートである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体試料が少なくとも2mlの量である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体試料が2ml~100mlの量である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記容器が0.5ml~2mlの量を保持する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記MGPから前記核酸を溶出させること及び分離させることを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(e)が、前記液体試料中の前記MGPをピペット操作することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸がRNAである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸がDNAである請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記容器がマルチウェルプレート中のウェル又は管である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)が、前記MGPから未結合の液体試料を取り除くこと、前記MGPを洗浄すること、及び前記MGPから未結合の材料を取り除くことを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(h)が、前記MGPから未結合の液体試料を取り除くこと、前記MGPを洗浄すること、及び前記MGPから未結合の材料を取り除くことを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「液体生検(liquid biopsy)」の概念が近年注目を集めている。固体組織から試料を採取する代わりに、液体生検が、細胞、細胞外小胞(エキソソームなど)、及び/又は無細胞分子(DNA、RNA、又はたんぱく質)を補足する。これらの成分は、血液(又は、血漿若しくは血清)、尿、及び痰といった生物流体において収集することができる。これらの成分の存在は、例えば、がん、腫瘍、自己免疫疾患、心血管イベント、ウイルス、細菌性若しくは病原性感染、又は薬物反応に関するものと関連し得る。目的の分子は、エキソソームといった細胞外体としばしば関連するか、又は流体中における「無細胞」と関連し得る。
【背景技術】
【0002】
液体生検はいくつかの生物流体のいずれかを用いて実施することができ、そして最小限に侵襲性(例えば、静脈切開による血液採取)又は非侵襲性(尿採取)であり得る。したがって、液体生検は、採取の容易さ、患者監視のための反復採取の容易さ、患者黙認の高い可能性、患者に対する資料収集の精密さ、及び収集部位の特定化され難さに関して魅力的である。
【0003】
液体生検の1つの欠点は、核酸の濃度が比較的低いため、下流の分析のために充分な材料を得るには大量の核酸が必要とされ得るということである。核酸補足キット及び装置は、典型的には0.2~1mlの範囲の少量の試料向けに、典型的に設計されている。
【0004】
磁性粒子は核酸補足に非常に有用であるが、強磁性分子は磁場に曝された後、個々に磁化されるようになる。最初の磁気分離ステップ後の磁性分子の連続的な再利用は、粒子がさらなる核酸と効率的に結合することができないと考えられるため、現在は推奨されていない。例えば、一度粒子が個別に磁化されると、それらの粒子はあらゆる非占有的な核酸結合部位を阻害する凝集塊を形成する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、複数回の連続した磁気補足及び精製に同一の磁性ガラス粒子(MGP)を用いる核酸補足のための、方法及び組成物を提供する。これらの方法は、自動化システムにて使用される比較的小さな容器内の大量の液体試料を処理するために有用である。
【0006】
液体試料中の核酸を補足する方法であって、以下:(a)液体試料からの核酸をMGPと非共有結合させる条件下において、容器中の液体試料の第1アリコートをMGPと接触させること(MGPはガラス中に少なくとも1つの磁気コアを含み、強磁性かつ非多孔性である)、(b)MGPへ磁場を印加すること;(c)MGPから未結合の液体試料を取り除くこと;(d)液体試料の第2アリコートをMGPと接触させること;(e)液体試料の第2アリコート中にMGPを再懸濁すること;(f)MGPをピペット操作して、液体試料の第2アリコートを通じてMGPを混合すること;(g)磁場を前記MGPへ印加すること;(h)MGPから未結合の液体試料を取り除くこと;及び、(i)随意に、少なくとも1つの液体試料のさらなるアリコート(例えば、第3、第4、第5、又は第6アリコート)に対してステップ(d)~ステップ(h)を繰り返すこと、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、ステップ(f)は、MGPを液体試料の第2(又はそれ以降の)アリコートの上部へとピペット操作すること、及びMGPを分注することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、液体試料の第3、第4、第5、又は第6アリコートに対して実施される。
【0007】
いくつかの実施形態において、MGPは0.5~15μmの平均直径(例えば1~10μm、0.8~2μm)を有する。いくつかの実施形態において、ガラスは少なくとも1つの金属酸化物を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物は、SiO2、B23、Al23、K2O、CaO、及びZnOから選択される。いくつかの実施形態において、ガラスは、モル%の順に、SiO2、B23、Al23、K2O、CaO、及びZnOを含む。いくつかの実施形態において、ガラスは、モル%の順に、SiO2、B23、Al23、K2O、及びCaOを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)~ステップ(i)は、カオトロープ(例えば、グアニジンチオシアネート、塩酸グアニジン、又は尿素)の存在下において実施される。いくつかの実施形態において、本方法は、MGPからの核酸を、例えば、ステップ(a)~ステップ(i)に存在するよりも低濃度のカオトロープを備える液体若しくは緩衝液中へと溶出すること、又は実質的にカオトロープを欠くこと(例えば、水又は緩衝液)を更に含む。いくつかの実施形態において、ステップ(c)は、MGPから未結合の液体試料を取り除くこと、MGPを洗浄すること、及びMGPから未結合の材料を取り除くことを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(h)は、MGPから未結合の液体試料を取り除くこと、MGPを洗浄すること、及びMGPから未結合の材料を取り除くことを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(c)及びステップ(h)は、MGPから未結合の液体試料を取り除くこと、MGPを洗浄すること、及びMGPから未結合の材料を取り除くことを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、液体試料は、血液、血漿、血清、尿、唾液、精液、脳脊髄液、又はそのライセートである。いくつかの実施形態において、液体試料は、血漿又は血清である。いくつかの実施形態において、液体試料は、尿である。いくつかの実施形態において、液体試料は、少なくとも2ml、例えば、4、5、10、50、2~10、4~50、又は2~100mlの量である。いくつかの実施形態において、液体試料は、2~100mlの量である。
【0010】
いくつかの実施形態において、容器は、5ml以下(例えば、3、2、又は1ml以下)を保持する(例えば、5ml以下の最大作業容量を有する)。いくつかの実施形態において、容器は、0.2~1.5又は0.5~2mlを保持する。いくつかの実施形態において、容器は、マルチウェルプレート中のウェル又はカートリッジである。いくつかの実施形態において、容器は管である。
【0011】
いくつかの実施形態において、本方法は、自動化された装置にて実行される。いくつかの実施形態において、ステップ(b)~ステップ(i)は、自動化された装置にて実行される。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば自動化された装置内において、MGPから核酸を溶出させることを更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、核酸はRNAである。いくつかの実施形態において、核酸はDNAである。いくつかの実施形態において、本方法は、逆転写(例えば、液体試料がRNAを含む場合)、及び/又はPCR(例えば液体試料又は逆転写cDNA産物中のDNAを増幅するため)を更に含む。いくつかの実施形態において、逆転写及び/又はPCRは、MGPの存在下において実行される。いくつかの実施形態において、逆転写及び/又はPCRは、MGPの非存在下、例えば溶出後に実行される。いずれの場合においても、逆転写及び/又はPCRは、分離に使用される同一の自動化装置、又は別々の自動化装置のいずれかにおいて自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、最初の補足を行った後に同一の試料から核酸の補足を3回行う、核酸の連続した補足のための開示された方法の実施形態を示す。最初に、試料及び磁性ガラス粒子(MGP)を容器内にて混合し(接触させ)、磁石を容器に取り付けて核酸結合MGPを回収し、未結合の液体を吸引し、そして磁石を取り外す。図1は、さらなる試料を、ビーズ破壊(Bead Break)、混合、及び吸引/分注のステップのために加えることを示す。ビーズ補足及び未結合の液体(廃棄ライセート)の除去は、前述と同様に実行する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.序論
流体を含有する大量の液体試料(例えば、液体生検)、非侵襲性胎胎児検査、及び潜在的な病原体(ウイルス性、細菌性、真菌性)は、診断試験に使用されることが増えている。これらの液体試料は自動化に適合する容器(例えば、ウェル又は管)と比べて大きくてもよく、しばしば核酸が低い濃度で希釈される。本発明の方法は、1組の磁性粒子を用いて、大量の液体から、合理化し自動化された核酸又はたんぱく質を補足することを可能にする。液体のアリコートは連続して磁性粒子に曝される。各々の連続する操作では、ビーズ面のより多くが液体試料由来の核酸又はたんぱく質に占有されるようになる。連続して曝露させることにより、充分な核酸をPCR又は配列決定といった下流アッセイのために集めることができる。
【0015】
本方法は、磁性ガラス粒子(MGP)を液体試料の第1アリコートへ曝露し、随意に混合し、磁場をMGPへ印加して塊(ペレット)を形成し、そしてMGP塊から未結合の液体を分離する、初回の操作に関する。その後、MGP塊を液体試料の第2アリコートへ曝し、物理的に破壊する(例えば、ピペットチップによるか、又は液体ピペット操作の力による)。次いで、破壊したMGPを第2アリコート全体へ分散し(例えば、均一に分散する)、MGPを混合させ、そして試料中にて核酸と結合させる。再び磁場をMGPに印加して塊を形成し、未結合の液体を取り除く。第3、第4、第5、又はさらなる連続した操作は、充分な核酸又はたんぱく質が集まるまで、又は液体試料全体がMGPに曝されるまで、実行することができる。
【0016】
II.定義
用語「磁性ガラス粒子」又は「MGP」とは、核酸を非共有結合するガラスを含む粒子、及び磁場に応答する少なくとも1つの磁気コア(例えば、磁気コアの分散体)を指す。ガラスは必ずしも純粋なシリカである必要は無いが、シリカが成分であってもよい。MGPは、標準的なピペットチップでピペット操作して懸濁液(典型的に、0.5~15μm)を形成するために充分小さい。MGPは平均してほぼ球状であり、そして多孔質又は非多孔質であってもよい。磁気コアは、強磁性又は常磁性(磁場の存在下においてのみ磁化される)であってもよい。好適なMGPは、例えば米国特許出願第6255477号明細書及び同第6545143号明細書にてより詳細に説明されている。用語「ペレット」、「塊」、及び同種の用語は、磁場の存在下において形成されるMGPの分類を指す。
【0017】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)のポリマーを指し、天然素材である核酸(アデノシン、グアニジン、シトシン、ウラシル、及びチミジン)、非天然素材である核酸、及び修飾された核酸を含む。この用語はポリマーの長さ(例えば、モノマーの数)によって制限されない。核酸は一本鎖又は二本鎖であってもよく、一般的に5’-3’ホスホジエステル結合を含有するが、場合によりヌクレオチド類似体はその他の結合を有していてもよい。モノマーは、典型的にはヌクレオチドと称される。用語「非天然ヌクレオチド」又は「修飾ヌクレオチド」とは、修飾された窒素塩基、糖、若しくはリン酸基を含有するか、又はその構造中に非天然部分を組み込むヌクレオチドを指す。非天然ヌクレオチドの例として、ジデオキシヌクレオチド、ビオチン化、アミノ化、脱アミノ化、アルキル化、ベンジン化、及びフルオロフォア標識ヌクレオチドが挙げられる。
【0018】
用語「たんぱく質」、「ペプチド」、及び「ポリペプチド」とは、アミノ酸ポリマー、又は2つ以上の相互作用若しくは結合アミノ酸ポリマーの組を指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人口化学模倣物及び天然アミノ酸ポリマーである、アミノ酸ポリマー(これらのポリマーは修飾された残基及び非天然アミノ酸ポリマーを含有する)を指す。
【0019】
用語「アミノ酸」とは、天然及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコード化されるアミノ酸、及び後に修飾されるそれらのアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリン)である。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同一の基本的化学構造を有する化合物、例えば、水素と結合する炭素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。そのような類似体は修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有し得るが、天然アミノ酸と同一の基本的化学構造を保持し得る。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学物質を指す。
【0020】
用語「抗体」とは、抗原又はあらゆる所望の標的を特異的に結合して認識する、免役グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域又はその断片を含む、ポリペプチドを指す。典型的に、「可変領域」は抗体(又はその機能的等価物)の抗原結合領域を含有し、結合の特異性及び親和性において最も重要である。Paul,Fundamental Immunology(2003)を参照されたい。
【0021】
インタクトな抗体は、重鎖定常領域によって定義されるアイソタイプにしたがって記載することができる。抗体の軽鎖はカッパ又はラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、それぞれ順に、アイソタイプクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを定義する。
【0022】
抗体は、インタクトな免役グロブリンとして、又は特異的な抗原結合活性を含む多数の特徴がはっきりした断片のいずれかとして存在し得る。そのような断片は種々のペプチターゼでの消化によって生産され得る。ペプシンは、ヒンジ領域にてジスルフィド結合下において抗体を昇華して、Fabのダイマー(それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1へ結合した軽鎖である)であるF(ab)’2を生産する。F(ab)’2は、ヒンジ領域にて受スルフィド結合を破壊し、それによりF(ab)’2ダイマーをFab’モノマーへ変換するために、緩和な条件下において還元してもよい。Fab’モノマーは本質的に、ヒンジ領域の一部を有するFabである(Fundamental Immunology(Paul ed.,3d ed.1993)を参照されたい)。種々の抗体断片はインタクトな抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、そのような断片が、化学的に、又は組換えDNA方法論を用いてのいずれかによって、新規に合成され得ることは理解されよう。したがって、抗体という用語はまた、本明細書にて使用される場合、全抗体の修飾によって生産される抗体断片、又は組換えDNA方法論を用いて新規に合成される抗体断片(例えば、単鎖Fv)、若しくはファージディスプレイライブラリ(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)を参照されたい)を用いて同定される抗体断片のいずれかも含む。
【0023】
用語「補足」、「補足すること」、「結合」又は「結合すること」とは、MGP結合核酸の文脈において、例えばカオトロピック又はイオン性相互作用による非共有結合を指す。MGP核酸相互作用は、溶出(例えば、非共有相互作用を棒愛する溶出緩衝液を用いる)によって破壊することができる。この用語はまた、MGPとたんぱく質との結合(例えば、抗体-抗原、受容体-リガンド、又はストレプトアビジン-ビオチン相互作用を介する)も指すことができる。そのような実施形態において、標的結合部分(例えば、抗体)はMGPと結合して、液体試料中の標的の特異的親和性精製を可能にする。
【0024】
用語「プライマー」とは、好適な条件下において、核酸ポリメラーゼによってポリヌクレオチド鎖合成の開始点として作用する短い核酸(典型的には、約8~40、6~20、12~50、又は15~25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド)を指す。特に指示されない限り、「伸展産物(extension product)」は、合成の際にプライマーの3’末端から伸びるポリヌクレオチド鎖である。ポリヌクレオチド合成及び増幅反応は、典型的には適切な緩衝液、dNTP及び/又はrNTP、並びに1つ以上の随意の補助因子を含み、好適な温度で実施される。プライマーは、典型的には、標的配列をハイブリッド形成することができ、そして標的配列に対して少なくとも実質的に相補的である、少なくとも1ヶ所の領域を含む。この領域は、典型的には約15~約40ヌクレオチド長であり、0、1、2、又は3つのミスマッチを含む。
【0025】
用語「増幅産物(amplification product)」という用語は、増幅反応の生産物を指す。増幅産物は、ポリヌクレオチド合成の各操作を開始するために使用されるプライマーを含む。「単位複製配列」は増幅の標的とされる配列であり、本用語はまた、増幅産物を指すためにも使用することもできる。単位複製配列の5’及び3’境界は、順方向及び逆方向プライマーによって定義される。
【0026】
用語「試料」又は「生物学的試料」とは、核酸を含有するか、又は含有すると推定されるあらゆる組成物を指す。本用語は、細胞、組織、又は血液の精製又は分離された成分(例えば、DNA、RNA、たんぱく質、無細胞部分、又は細胞ライセート)を含む。本開示の装置に関して、資料は、液体(例えば、血液又は血液成分(血漿又は血清)、尿、精液、唾液、痰、粘膜、精液、涙、リンパ液、脳脊髄液、口/喉洗浄液(mouth/throat rinse)、気管支肺胞洗浄液、スワブから洗浄した材料など)である。試料はまた、株化細胞を含む個体から得た細胞のインビトロ培養物の成分及び構成要素を含んでいてもよい。液体試料はまた、個体から直接得た試料(例えば、細胞ライセート又は赤血球が枯渇した血液)から部分的に処理することもできる。
【0027】
本開示の文脈において、用語「未結合の液体」又は「未結合の試料」とは、MGP(例えば、核酸又はその他の標的が枯渇した液体)と結合していない、その他の成分(例えば、たんぱく質性材料又は細胞片)を指す。未結合の液体は、残存する核酸又は標的の量を含んだままでもよい。
【0028】
エキソソーム、微細胞、及びアポトーシス小体を含む細胞外小胞は、生体液中に存在する細胞由来の小胞(膜封入体)であり、例えば、血液及び尿である。細胞外小胞は、細胞から放出(例えば、細胞膜から直接)され得るか、又は多胞体が細胞膜と融合する際に形成され得る。細胞外小胞は、典型的には、それらの起源の細胞に由来するそのような核酸及びたんぱく質などの成分を含む。エキソソームは、典型的には直径40~120nmであり、微小胞は、典型的には直径50~1000nmであり、アポトーシス体は、典型的には直径500~2000nmである。
【0029】
「対照」試料又は値とは、試験試料又は試験条件との比較のために、参照(通常、既知の参照)として働く試料を指す。例えば、試験試料は、試験条件から(例えば、本発明に記載の方法を用いて処理される試料から)取得することができ、既知の条件(例えば、本発明に記載の方法を用いて処理されない試料から、又は既知の量の核酸を有する試料から)からの試料と比較することができる。対照はまた、多数の試験又は結果から集められた平均値又は範囲を表すこともできる。対照はまた、反応条件に対して調製することもできる。例えば、核酸の存在に対する正の対照は、試料中に存在するとして知られている配列を検出するプライマー又はプローブを含むことができる一方で、負の対象は核酸を有しないであろう。当業者は、対照をあらゆる数のパラメータを評価するために設計してもよいことは理解されよう。対照をインビトロ用途のために設計してもよい。当業者は、どの対照が所与の状況において有益であり、対照値との比較に基づくデータを分析することができるかを理解されよう。対照はまた、データの重要性を判断するためにも有益である。例えば、所与のパラメータの値が対照において広く変化している場合、試験試料における変動は有意でないと考えられる。
【0030】
特に指示されない限り、本明細書にて使用される技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。例えば、Lackie,DICTIONARY OF CELL AND MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier(4th ed.2007);Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,N.Y.1989);Ausubel et al.:Current Protocols in Molecular Biology 1987,J.Wiley and Sons,NY;Pfaffl,Methods:The ongoing evolution of qPCR,vol.50 (2010);van Pelt-Verkuil et al.Principles and Technical Aspects of PCR Amplification,Springer(2010)を参照されたい。
【0031】
III.連続する核酸補足のための方法及び構成要素
A.生体試料
本開示の方法で使用される生体試料は核酸又はたんぱく質を含む液体である。試料の種類として、血液(血漿又は血清を含む)、尿、唾液、精液、口若しくは鼻洗浄液、脳脊髄液、痰、細胞懸濁液(血液など)、細胞又は組織由来のライセートなどが挙げられる。試料は、単一の個体(例えば、患者)、又は個体の集団から得ることができる。
【0032】
本発明の方法はまた、例えば、食品若しくは植物試料から、又は面をぬぐうこと(例えば、病院内にて)によって調製された液体に適用することもできる。
【0033】
細胞を含む試料では、細胞を分離し(例えば、大きさに基づく濾過又は遠心分離を用いる)、それによりエキソソーム、微小胞、ウイルス粒子、又は自由に循環するものに核酸を含む、無細胞核酸(cfNA)を残した。或いは、細胞を溶解し、MGPの存在下において、又は細胞ライセートをMGPへ加える前のいずれかにおいて、細胞核酸を得ることができる。
【0034】
B.磁性ガラス粒子
磁性ガラス粒子(MGP)は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願第6255477号明細書及び同第6545143号明細書に記載されている。本開示の方法に使用する粒子は強磁性である。粒子は直径0.5~15μm(例えば、1~10、0.8~2、又は1~1.5μm)で、平均してほぼ球状である。いくつかの実施形態において、粒子は非多孔性である。
【0035】
MGPはガラスで被覆された単一の磁気コアを有していてもよく、又はいくつかの磁性物体が注入されたガラスを含んでいてもよい。磁性体はマグネタイト(Fe34)又はFe23(例えば、ガンマ-Fe23)のような鉄又は酸化鉄であってもよい。バリウムフェライト、ニッケル、コバルト、Al-Ni-Fe-Co合金、又はその他の強磁性体を用いることができる。金属酸化物はまた、磁気コア(例えば、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化銅、酸化マンガン、酸化鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、又は酸化ジルコニウム)に含まれていてもよい。
【0036】
ガラス成分は、典型的には、シリカ系(例えば、酸化ケイ素及びガラス粉末、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム、又はNH2活性化シリカ)である。いくつかの実施形態において、ガラスは少なくとも1つの金属酸化物(例えば、SiO2、B23、Al23、K2O、CaO、及び/又はZnO)を含む。いくつかの実施形態において、ガラスは、SiO2、B23、Al23、K2O、及びCaOをモル%の順に含む。いくつかの実施形態において、ガラスは、SiO2、B23、Al23、K2O、CaO、及びZnOをモル%の順に含む。いくつかの実施形態において、SiO2に加えて、ガラスは、B23(0~30%)、Al23(0~20%)、CaO(0~20%)、BaO(0~10%)、K2O(0~20%)、Na2O(0~20%)、MgO(0~18%)、Pb23(0~15%)、ZnO(0~6%)を含むことができる。いくつかの実施形態において、ガラスは、約70~75%のSiO2、約14~16%のB23、約4~6%のAl23、約4~5%のK2O、約2~3%のCaO、及び約0~5%のZnOを含む。適切なMGPは、RocheよりMagNAPureキットとして購入することができる。
【0037】
核酸はカオトロピック溶液中のMGPと結合する。カオトロピック溶液は、グアニジンチオシアネート(GuSCN)、塩酸グアニンジン(guanindine hydrochloride)、尿素、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸イオン、ヨードイオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、臭素イオン、アセテートイオン、塩素イオン、フッ素イオン、若しくは硫黄イオン、又はこれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態において、カオトロープは約1~10M(例えば、2~8M又は4~6M)で溶液中に存在し、核酸を結合させる。
【0038】
C.自動化
本発明の方法は、手動、半自動化、又は自動化された形式で実施することができる。当然、自動化は、複数の試料及び多段階処理、異なる処理のステップでの試料間及び試料内汚染、反復した損傷、並びに血液試料といった潜在的有害物質への曝露を処理するために費やす時間を削減するために有用である。
【0039】
MGPを用いて磁気分離を行えるあらゆる機器を使用することができる。装置に応じて、試料は多槽(multivessel)カートリッジ若しくはプレート中、又は個々の容器中にて処理することができる。自動化機器で使用するための容器(例えば、管又はウェルの処理)は、典型的には50μl~4ml、より典型的には1~2mlの液体容量を保持する。
【0040】
本開示の方法を自動化するために使用することのできる機器の例として、これらに限定されないが、MagNA Pure機器(Roche)、Dynamag(登録商標)機器(Thermo Fisher)、QIAsymphony(登録商標)システム(Qiagen)、及びMaxwell(登録商標)機器(Promega)が挙げられる。
【0041】
本明細書において、機器は、処理全体(例えば、連続するアリコート中の大量の試料を処理容器へピペット操作、MGPに対しする核酸補足の連続的な実行、MGP磁性収集、未結合の液体の除去、次の試料アリコートにおけるMGPの再懸濁、及びMGPからの核酸の溶出)を実行することができる。いくつかの配置において、機器は、MGPに対する核酸補足の連続的な実行、MGP沈降、未結合の液体の除去、及び次の試料アリコートにおけるMGPの再懸濁を実行する。いくつかの配置において、同一の大量の液体試料が連続して複数回アクセスされる。いくつかの配置において、使用者又は機器は、補足などのために連続してアクセスされる大量の液体試料を、複数のアリコート中へ「プレアリコート(prealiquot)」する。
【0042】
D.さらなる処理及び検出
浄化試料からの核酸のさらなるは、標準的な方法(例えば、上のSambrookに記載の通り)に従って達成することができる。液体生検中に存在する核はしばしば短く、例えば、50~5000ヌクレオチド長である。選択した精製方法はこのことを考慮すべきである。従来法として、有機抽出、エタノール沈殿、及び再懸濁;並びにガラス又は電磁ビーズ上における分離とそれに続く溶出が挙げられる。DNA及びRNAのためのキット(例えば、Roche社のHigh Pureキット及びPromega社のWizardキット)もまた市販されている。
【0043】
核酸は、典型的には分析前にビーズから溶出されるが、MGPはいくつかのアッセイ(例えば、MGP、PCR、又は溶出がサザンブロット法といったアッセイの一部として発生する場合における、核酸とハイブリット形成した標識プローブの検出)に適合する。溶出条件は、核酸とMGP(例えば、水、核酸をMGPと結合するために使用されるよりも低いカオトロープ濃度を有する緩衝液、及び/又は高温)との非共有結合的な(例えば、カオトロピック又はイオン性)相互作用を妨害し、これは当業者によって理解されるであろう。
【0044】
精製した核酸試料は、例えば、次世代配列決定、マイクロアレイ(RNA又はDNA)、サザン若しくはノーザンブロット法、又は核酸増幅(例えば、あらゆるプライマー依存方法を用いる)を用いた検出に使用することができる。DNAに基づく方法は、増幅及び検出(例えば、PCR)に使用することができる。いくつかの例において、リアルタイム又は定量PCRが使用される(RTPCR又はqPCR)。qPCRは、PCR処理の各サイクル中に生成された産物の信頼できる検出及び測定を可能にする。そのような技術は当該技術分野にて周知であり、キット及び試薬は、例えば、Roche Molecular Systems、Life Technologies、Bio-Radなどから購入することができる。例えば、Pfaffl(2010)Methods:The ongoing evolution of qPCR vol.50を参照されたい。いくつかの例において、分子プライマー-プローブのプローブ部分は二重標識されている(例えば、失活材及びフルオロフォア(例えば、Gasparic et al.(2010)Anal.Bioanal.Chem.396:2023を参照のこと)を有するTaqMan、CPT、LNA、又はMGBプローブ)。
【0045】
いくつかの例において、予備逆転写ステップ(リアルタイムPCRと混同されないようRT-PCRとも呼ばれる)が実行される。例えば、Hierro et al.(2006) 72:7148を参照されたい。用語「qRT-PCR」とは、本明細書にて使用される場合、定量PCRに続く逆転写を指す。どちらの反応も中断すること(例えば、試薬の追加)なく単一の管にて実行することができる。例えば、ポリTプライマーはポリA尾部を有する試料において全てのmRNAを逆転写するために使用してもよいか、又はプライマーはcDNA中へ逆転写される特定の標的転写物に特異的であるように設計されていてもよい。cDNAは、本発明の分枝プライマー-プローブ、又はそのプライマー対若しくはプライマー組のその他のメンバーと共に使用される、初期鋳型鎖を形成することができる。例えば核酸配列ベース増幅(NASBA)又は転写媒介増幅(TMA)といった、さらなるRNAに基づく増幅方法もまた使用することができる。
【0046】
検出装置は当該技術分野において周知であり、選択した標識に対して適切に選択され得る。定量PCRに適した検出装置として、cobas(登録商標)、及びLight Cycler(登録商標)システム(Roche)、PRISM7000及び7300リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)などが挙げられる。
【0047】
たんぱく質は、ビーズに結合した標的結合部分との相互作用を妨害することによって溶出することができる。高温を用いてもよく、又はpH若しくは塩濃度を変えることによって、温度を上昇させてもよい。ストレプトアビジン-ビオチン相互作用について、ホルムアミド溶液を用いてもよい。
【0048】
たんぱく質は、典型的には免役アッセイ又は活性アッセイを用いて検出する。免役アッセイとして、様々な種類のELISA、ウェスタンブロット法、FACS、又は標識抗体を用いるその他の検出(例えば、Rich、The Immunoassay Handbook(Elsevier 4th ed.2013)を参照されたい)が挙げられる。当業者は、標的たんぱく質(例えば、キナーゼ標的のリン酸活性)に依存する適切な活性アッセイを検出する方法を理解するであろう。
【実施例
【0049】
IV.実施例
大量の液体(例えば、4ml以上)から核酸を精製する方法は、0.5~2mlの範囲の試料量を収容することができる、典型的な自動化プラットフォームに提供される。このアプローチは図1に示す通り、MGP上の核酸の補足の連続する操作のためである。
【0050】
実施例1
精製された株化細胞DNA及び線状化プラスミドの既知の量をPBSにスパイクし、回収率(収量)をqPCRによって測定した。4mlの試料を、適切な大きさの管中において4.5mlのMagNAPure 96溶解緩衝液(Roche)及びプロテイナーゼKで溶解した。ライセートをボルテックスして混合し、その後機器1又は機器2のいずれかの機器デッキへ乗せた。溶解した試料のアリコートをMGPへの自動化核酸補足のためにプロセスウェルへ加えた。MGPを初期ステップに加え、ピペット操作によって試料と混合した。MGPを、プロセスウェルの側面へ取り付けた磁石を使用して補足し、液状可溶化物を吸引し、核酸結合MGPのみをプロセスウェル内に残した。同一の試料の次のアリコートを同一のプロセスウェルへ加え、MGPと混合した。混合は、ウェルの底にてピペット操作することによって磁化されたMGPの塊を破壊することを含む。この時点で、ビーズを液体体積の底半分に懸濁した。ビーズ懸濁液をプロセスウェルの底からピペット操作して上部へ分注し、MGPを液体中へ流した。この処理を繰り返して、MGPを第2アリコート中の核酸へ確実に曝露させた。MGP補足及び吸引ステップを第1の操作と同様に繰り返し、試料の次のアリコートを同一のプロセスウェルに加え、MGPなどと混合した。全試料量8.5mlを、同一のMGPを用いて同一のプロセスウェル中で処理した。
【0051】
ベースラインプロトコル1(ビーズ破壊を欠くが、同一の吸引及び分配を含む)を用いる結合/ビーズ補足の使用は、ゲノムDNA及び線状化プラスミドは機器2(各々81.7%及び85.2%)における結合/ビーズ補足と比較して、機器1(各々78.6%及び79.8%)において合理的な効率で補足されたということを示した。
【0052】
結果は、図1に示す通り、上述の修正された方法(プロトコル2)を用いて比較した。プロトコル2(機械的再懸濁及び磁化MGPの混合を含む)は、ベータグロビンの回収率において10.7%増加させ、pEF056の回収率において22.2%増加させた。全ての連続する操作をこの修正プロトコル2に使用した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例2
ビーズ破壊方法を図1の通りに繰り返した。この実施例において、既知の量の標的DNA断片を血液中にスパイクし、回収率(収量)をqPCRによって測定した。8mlの血漿を使用した。ビーズに適用される4つのアリコート(4回の核酸結合全てに渡って再使用された)が必要とされた。加えて、連続した結合の後にビーズから核酸を取り除くために使用した溶出温度は、大幅に低下した。これは、標的として使用される小さな断片長と潜在的に合わせて、表1に示した収率よりも低い収率をもたらした。
【0055】
ビーズが連続した操作において標的核酸を結合するのに有効でなかった場合、予想される最大収率は25%であり、すなわち、4回の操作のうち初回のみが標的核酸を産出し得る。しかしながら、表2に示すように、優位な標的核酸は連続した操作にて結合し、qPCRで回収された。
【0056】
【表2】
【0057】
前述の発明は明瞭化及び理解の目的のためある程度詳細に記載されているが、形態及び詳細において種々の変更がなされ得ることは、本開示を読むことで当業者にも明白となるであろう。例えば、上述の全ての組成物及び技術は、様々な組合せで使用することができる。
図1