(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】血液処理器
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20220308BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61M1/02 105
A61M1/36 119
(21)【出願番号】P 2018532911
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2017026482
(87)【国際公開番号】W WO2018030119
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2016157115
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016158488
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016252219
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017003042
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正年
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠一
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-500053(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090834(WO,A1)
【文献】特許第3014916(JP,B2)
【文献】特開平06-007432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの一端側から流入された血液を前記ハウジングの他端側から流出する血液処理器であって、
前記ハウジング内に、前記一端側から前記他端側へ向かう方向と交わる方向に各々独立して配置された2つの血液処理部材を備え、
前記2つの血液処理部材がそれぞれの内面どうしを対向させて配置されることで当該内面どうしの間に内側血液室が形成され、
前記2つの血液処理部材がそれぞれの外面を前記ハウジングの内面と対向させて配置されることで当該ハウジングの内面との間に外側血液室が形成され
、
前記2つの血液処理部材に挟持され、前記内側血液室内と前記血液処理器の外部とを連通する管状部材をさらに備え、
前記管状部材は、周側壁に前記内側血液室内で開口する側孔を有していることを特徴とする血液処理器。
【請求項2】
前記内側血液室は、血液流入室または血液流出室として機能し、
前記外側血液室は、血液流出室または血液流入室として機能する請求項1に記載の血液処理器。
【請求項3】
ハウジングの一端側から流入された血液を前記ハウジングの他端側から流出する血液処理器であって、
前記ハウジング内に、前記一端側から前記他端側へ向かう方向と交わる方向に各々独立して配置された2つの血液処理部材を備え、
前記2つの血液処理部材がそれぞれの外面を前記ハウジングの内面と対向させて配置されることで当該ハウジングの内面との間に外側血液室が形成され、
前記一端側と前記他端側との間において、前記2つの血液処理部材が通液不可に
互いに接合されることで、前記一端側及び前記他端側にそれぞれ一対の血液処理部が設けられ、
前記一端側の一対の血液処理部がそれぞれの内面どうしを対向させて配置されることで当該内面どうしの間に第1内側血液室が形成され、
前記他端側の一対の血液処理部がそれぞれの内面どうしを対向させて配置されることで当該内面どうしの間に第2内側血液室が形成され、
前記第1内側血液室に流入された血液は、前記一端側の一対の血液処理部を通過して前記外側血液室へと流出され、当該外側血液室から前記他端側の一対の血液処理部を通過して前記第2内側血液室へと流出される
ことを特徴とする血液処理器。
【請求項4】
前記他端側の一対の血液処理部に挟持され、前記第2内側血液室内と前記血液処理器の外部とを連通する管状部材をさらに備えている請求項3に記載の血液処理器。
【請求項5】
前記管状部材は、周側壁に前記第2内側血液室内で開口する側孔を有している、請求項4に記載の血液処理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は採血器具、血液透析、血液浄化等に使用される血液回路等の医療用具に使用される血液処理器に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、特許文献1及び2において、可撓性ハウジング内に血液処理部材(血液フィルタ)として不織布を装填した血液処理器(白血球除去用濾過器)の発明を開示した。
【0003】
また特許文献3は、血液処理部材(白血球除去用フィルター部材)の流出側血液室の面と向かい合う可撓性ハウジング(軟質樹脂製袋状ハウジング)の内面に、高低差0.2~2mmの凹凸(具体的には一端側より他端側(言い換えれば、血液の流れ方向) にほぼ平行に延びる複数のリブ23を形成することにより、血液濾過速度の低下が少ない、かつ、ハウジングの接着不良を起こすこともない血液処理器(白血球除去器)の発明を開示している(段落[0028]から[0033]参照。)。
また当該特許文献3は、血液処理部材としてスポンジ状のポリウレタン多孔質体を使用し、当該多孔質体の重ね枚数を6枚(最大でも10枚)として、血液処理部材の最外縁部を、外枠体フレーム(シート)を介して、可撓性ハウジングに固定している。これにより当該外枠シートと可撓性ハウジングの内面との間の血液流路を可撓性ハウジング内の周縁部に形成し、可撓性ハウジング内部の周縁部での血液の流通を良好ならしめ周縁部における残血を防止している。
特許文献4は、前記のような外枠体フレーム(シート)を使用しないで、不織布を可撓性ハウジングに内側シール部(第1シール部)と外側シール部(第2シール部)とで固定し、内側シール部よりも内側に血液入口(上側)と血液出口(下側)を装着した発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3014916号(特許請求の範囲、
図1から
図10)
【文献】特許第3049182号(特許請求の範囲、
図1から
図6)
【文献】特許第3758853号(特許請求の範囲、段落[0028]から[0033]、
図1から
図10)
【文献】特許第4038547号(特許請求の範囲、
図2、
図3、
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から特許文献4に記載の血液処理器は、可撓性ハウジングを使用しているため、血液の濾過が進むにつれて、血液流出室側の可撓性ハウジングの内部空間は陰圧となり、そのため当該ハウジングが潰れて、血液流出口近傍の血液の流路を塞いでしまう傾向がある。これにより血液の濾過速度の低下が懸念される。
これに対して特許文献3に記載の発明のように、可撓性ハウジング(軟質樹脂製袋状ハウジング)の内面に、高低差が最大2mmの凹凸を形成しているが、この程度の凹凸形成では、陰圧による血液流出口近傍の血液流路の閉塞阻止には効果が十分ではない。
【0006】
また特許文献4に記載の発明は、可撓性ハウジングの血液入口側シートと血液出口側シートのそれぞれに孔をあけて、血液入口と血液出口を装着しなければならないので、特許文献3と比較して加工が困難となるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の発明に到達した。
本発明は、ハウジングの一端側から流入された血液を前記ハウジングの他端側から流出する血液処理器であって、前記ハウジング内に、前記一端側から前記他端側へ向かう方向と交わる方向に各々独立して配置された2つの血液処理部材を備え、前記2つの血液処理部材がそれぞれの内面どうしを対向させて配置されることで当該内面どうしの間に内側血液室が形成され、前記2つの血液処理部材がそれぞれの外面を前記ハウジングの内面と対向させて配置されることで当該ハウジングの内面との間に外側血液室が形成され、前記2つの血液処理部材に挟持され、前記内側血液室内と前記血液処理器の外部とを連通する管状部材をさらに備え、前記管状部材は、周側壁に前記内側血液室内で開口する側孔を有していることを特徴とする。
また、本発明は、ハウジングの一端側から流入された血液を前記ハウジングの他端側から流出する血液処理器であって、前記ハウジング内に、前記一端側から前記他端側へ向かう方向と交わる方向に各々独立して配置された2つの血液処理部材を備え、前記2つの血液処理部材がそれぞれの外面を前記ハウジングの内面と対向させて配置されることで当該ハウジングの内面との間に外側血液室が形成され、前記一端側と前記他端側との間において、前記2つの血液処理部材が通液不可に互いに接合されることで、前記一端側及び前記他端側にそれぞれ一対の血液処理部が設けられ、前記一端側の一対の血液処理部がそれぞれの内面どうしを対向させて配置されることで当該内面どうしの間に第1内側血液室が形成され、前記他端側の一対の血液処理部がそれぞれの内面どうしを対向させて配置されることで当該内面どうしの間に第2内側血液室が形成され、前記第1内側血液室に流入された血液は、前記一端側の一対の血液処理部を通過して前記外側血液室へと流出され、当該外側血液室から前記他端側の一対の血液処理部を通過して前記第2内側血液室へと流出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、血液処理部材の有効濾過面積を実質的に二倍確保でき、これにより濾過時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は本発明の血液処理器1(Type I)の一実施例(第1の実施形態)を示す全体図(平面図/概略図)である。
【
図3】
図3は血液処理器1の上部側血液処理部材5/Uを外枠体シート3に固定したところの概略図である。
【
図4】
図4は上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dとを固定するところの概略図である。
【
図5】
図5は血液処理部材5を可撓性ハウジング2に固定するところの概略図で、第1側部S1と第2側部S2のそれぞれのコーナーCR/S1、CR/S2をコーナーシール部SCR/S1、SCR/S2として固定するところの概略図である。
【
図6】
図6は
図5に続いて血液入口部7Iと血液出口部7Oを可撓性ハウジング2に固定するところの概略図である。
【
図7】
図7は
図6に続いて血液処理部材5を外枠体シート3を介して可撓性ハウジング2に固定するところの概略図である。
【
図8】
図8は
図7から不要な可撓性シートSHを除去して、完成した血液処理器1の概略図である。
【0037】
【
図11】
図11は、本発明の血液処理器1´(Type II)の一実施例(第2の実施形態)を示す断面図である。(
図1の血液処理器1のA-A´断面図に相当する図である。)
【
図12】
図12は血液処理器1、1´の使用状態図(断面図)である。(A)は血液処理器1´(Type II)の使用状態図(断面図)、(B)は血液処理器1(Type I)の使用状態図(断面図)である。
【
図13】
図13は本発明の血液処理器101(Type III)の一実施例(第3の実施形態)を示す全体図(平面図/概略図)である。
【
図16】
図16は上部側血液処理部材5/Uを外枠体シート3に固定したところの概略図である。
【
図17】
図17は上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dとを固定するところの概略図である。
【
図18】
図18は血液処理部材5を可撓性シートSHに固定するところの概略図で、第1側部S1と第2側部S2のコーナーCR/S1、CR/S2を固定するところの概略図である。
【
図19】
図19は
図18に続いて血液入口部7Iと血液出口部7Oを可撓性シートSHに固定するところの概略図である。
【0038】
【
図20】
図20は
図19に続いて血液処理部材5を外枠体シート3を介して可撓性シートSHに固定するところの概略図である。
【
図21】
図21は
図20から不要な可撓性シートSHを除去して、完成した血液処理器101の概略図である。
【
図23】
図23は使用状態における本発明の血液処理器201(Type IV)の一実施例(第4の実施形態)を示す全体図(平面図/概略図)である。
【
図24】
図24は本発明の血液処理器201の一実施例を示す全体図(底面図/概略図)である。
【
図25】
図25は本発明の血液処理器201の一実施例を示す全体図(底面図/概略図)である。
【
図26】
図26は本発明の血液処理器201の一実施例を示す全体図(斜視図/概略図)である。
【
図28】
図28は本発明の血液処理器201の一実施例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(定義)
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。説明の便宜上、本発明の第1、第2、第3、第4の実施形態の血液処理器1(Type I)、1´(Type II)、101(Type III)、201(Type IV)を明確に説明するため、図の配置を基準にして次の定義をおく。
基端PE側(または方向ともいう、以下同じ)とは、例えば
図1に示すように、血液入口部7I側を意味する。
末端DE側とは、例えば
図1に示すように、血液出口部7O側を意味する。
第1側部S1側とは、例えば
図1に示すように、血液入口部7Iと血液出口部7Oを直列に結んだラインの右側の方向を意味する。
第2側部S2側とは、例えば
図1に示すように、第1側部S1側と反対の方向、すなわち血液入口部7Iと血液出口部7Oを直列に結んだラインの左側の方向を意味する。
【0040】
上部U側とは、紙面の上側の方向を意味する。
図1では紙面の表側(front side)の方向を意味する。
下部D側とは、紙面の下側の方向を意味する。
図1では紙面の裏側(rear side)の方向を意味する。
基端PE側と末端DE側;第1側部S1と第2側部S2;上部Uと下部Uの組み合わせにおいて、それぞれを、「側部の一方向」という場合がある。
例えば基端側PE側を「側部の一方向」とすると、これに対して反対側の末端DE側は、「他の側部の一方向」という場合がある。第1側部S1と第2側部S2、上部Uと下部Uの場合も同じ。
血液入口部7Iと血液出口部7Oを直列に結んだラインを長手方向の略中心という場合がある。
長手方向の略中心に対して、第1側部S1、上部U、第2側部S2及び下部D方向を長手方向の外周方向という場合がある。
【0041】
図1から
図10に示すように、血液処理器1において例えば血液処理部材5(後記するように、通常、たとえば不織布を複数枚積層して構成される。)のように上部Uと下部Dに一対の部材が存在する場合、つぎのように表記する。例えば、上部U側については、血液処理部材5/Uのように、符号「5」の次に「/U」と記載して、「5/U」と表記することにより、上部U側の血液処理部材5/Uを意味するものとする。(同様にして「5/D」と表記することにより、下側U側の血液処理部材5/Dを表示する。)
【0042】
このような表記方法につき、さらに例示すると、例えば外枠体シート3のように、上部Uの血液処理部材5を挟持するため上部Uに一対、下部Dの血液処理部材5の挟持のため、下部Dに一対、それぞれの部材(外枠体シート3)が存在する場合、例えば上部U側の一対の部材(外枠体シート3)は「3/UU」、「3/UD」、下部D側の一対の部材(外枠体シート3)は、「3/DU」、「3/DD」と記載する(特に
図2を参照)。
上部U側の血液処理部材5/Uは上部側第1血液処理部材5/U、下部D側の血液処理部材5/Dは下部側第2血液処理部材5/Dと記載する場合がある。他の上部U側の部材も「上部側第1・・・/U」、同様に下部D側の部材も「下部側第2・・・/D」と記載する場合がある。
【0043】
例えば血液処理部材5のように一対の部材が存在し、図面中に現れる場合は、「5/U、5/D」のように二種類の符号を記載する。
図3や
図5のように図面中に現れない場合は、図面中の符号の煩雑化を回避するために単に「5」のように一つのみの符号を記載する。ただし、発明の説明等には、「5/U、5/D」のように二種類の符号を記載する場合がある。
【0044】
例えば一対(二個)の上部U側の血液処理部材5/Uと下部D側の血液処理部材5/Dのように、一対(二個)を意味する場合は、血液処理部材(5/U、5/D)または(5/U、D)のように符号をまとめて記載する場合がある。
また血液処理器1(Type I)と血液処理器1´(Type II)の各部材の形態(形状、構造)、構成材料は大部分が共通し、使用方法とこれに伴う各部材の名称等が異なるので、これらの説明は、異なる部分のみを中心として記載する。
例えば説明の便宜上、血液処理器1の血液流入室2IRは第1血液室2.1、血液流出室(2OR/U、2OR/D)は第2血液室2.2と総称して記載する場合がある。
また血液処理器1´の血液流入室(2IR´/U、2IR´/D)は第2血液室2.2、血液流出室2OR´は第1血液室2.1と総称して記載する場合がある。
【0045】
(各部材の符号と、当該符号の上位概念と下位概念の関係)
各部材の符号は、あくまでも本発明の実施態様の一例(Exemplary Embodiment)における各部材の形状、位置(配置)等を理解しやすいように記載したものであり、本発明の権利範囲は、符号で示した形状、位置(配置)に限定するものではない。
【0046】
(ハウジング2)
「ハウジング2」はハウジングの最上位概念を意味する。(以下、冗長になるので可能な限り符号のみを使用して説明する)
例えば符号「2/U」等のハウジングのように、符号「2」の次に「/U」等のsuffixを付けて記載する場合、符号「2/U」等のハウジングは「ハウジング2」に対して下位概念を意味する。したがつて発明の説明、請求項で単に「ハウジング2」と記載する場合は、下位概念の符号「2/U」と符号「2/D」のハウジングの双方を含むないし含む場合があることを意味する。
【0047】
(血液処理部材5)
「血液処理部材5」は血液処理部材の最上位概念を意味する。例えば符号「5/U」等の血液処理部材のように、符号「5」の次に(当該血液処理部材5の配設される領域、位置等を規定するsuffixである)「/U」等を付けて記載する場合、符号「5/U」等の血液処理部材は「血液処理部材5」に対して(より具体的に展開した)下位概念を意味する。
符号「5」、「5/PE」、「5/PEU」の各血液処理部材の関係も前記と同様である。
したがつて発明の説明、請求項で単に血液処理部材5と記載する場合は、例えば下位概念の符号「5/U」、「5/D」または「5/PE」、「5/DE」、さらに下位概念の「5/PEU」、「5/PED」、「5/DEU」、「5/DED」の各血液処理部材を含むないし含む場合があることを意味する。また「血液処理部材5/PE」と記載する場合は、符号「5/PEU」、「5/PED」の各血液処理部材を含むか、ないし含む場合があることを意味する。
【0048】
(外枠体シート3)
「外枠体シート3」は外枠体シートの最上位概念を意味する。例えば符号「3/U」等の外枠体シートのように、符号「3」の次に「/U」等のsuffixを付けて記載する場合、符号「3/U」等の外枠体シートは「外枠体シート3」に対して下位概念を意味する。
さらに符号「3/UU」の外枠体シートのように、符号「3/U」等の次に「U」等を付けて記載する場合は、符号「3/UU」の外枠体シートは、符号「3」と符号「3/U」の外枠体シートに対して下位概念を意味する。
したがつて発明の説明、請求項で単に外枠体シート3と記載する場合は、符号「3/U」と符号「3/D」の外枠体シート、さらに下位概念の符号「3/UU」、「3/UD」、「3/DU」、「3/DD」の外枠体シートを含むか、ないし含む場合があることを意味する。
符号「3」、「3/PE」、「3/PEU」、「3/PEUU」の各外枠体シートの関係も前記と同様である。
【0049】
(その他の各部材)
以上の上位概念と下位概念の関係の説明は、その他の各部材、血液流入室2IR、血液流出室2OR、ハウジングシール部2S、3S、外枠体シール部3S、延長部3L、濾過部5F、内側濾過部FI、外側濾過部FO等も同様であるから詳細な説明は省略する。
【0050】
(第1実施形態の血液処理器1(Type I))(
図1-10参照)
本発明の第1実施形態の血液処理器1(Type I)は、
図1から
図10に示すように可撓性シートからなる可撓性ハウジング2(以下、単にハウジング2と記載する)と当該ハウジング2内に装填される血液処理部材5とを有する。
前記ハウジング2は、上部U側のハウジング2/Uと下部D側のハウジング2/Dからなり、両者の周辺を接着しバッグ(袋状の容器ともいう)を形成している。
ハウジング2の基端PE側で、かつ略中央の一端部に、管状(tubular or pipe-like)の血液入口部7Iを装着し、一方ハウジング2の末端DE側で、かつ略中央の一端部に、管状の血液出口部7Oを装着している(例えば
図1参照。)。
【0051】
管状の血液入口部7Iと血液出口部7Oは、可撓性シートからなる可撓性ハウジング2よりもより硬質の樹脂からなることが好ましい。チューブ状の血液回路に好適に接続可能とするためである。
血液入口部7Iは、
図1に示すように、末端DE側に主たる入口開口7IOを形成するとともに補助的な側孔8を形成している。
血液処理部材5は、一対、すなわち、上部U側の血液処理部材5/Uと下部D側の血液処理部材5/Dとからなる上下一対の部材であることを特徴の一つとする。
上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dは、具体的にはそれぞれ複数枚の不織布を積層して形成した血液処理フィルター部材(blood treating filter)である。
【0052】
(血液処理器1の製造工程)
以下、血液処理器1の一実施例の形態について、製造工程(assembly process)の一実施例とともに説明する。
図3に例示するように、血液処理器1は、大略的に、血液処理部材5を外枠体シート3で固定してなる。
さらに詳述すれば、血液処理部材5は最も基本的な配置として上下一対の血液処理部材からなるが、上部側血液処理部材5/Uは、その外縁(outer edge)を上下一対の上部U側の上(第1.1)外枠体シート3/UUと下(第1.2)外枠体シート3/UDの内縁の間に挟持(hold)、固定している(
図2参照)。
一方、下部側血液処理部材5/Dは、その外縁を上下一対の下部U側の上(第2.1)外枠体シート3/DUと下(第2.2)外枠体シート3/DDの内縁の間に固定している(
図2参照)。
【0053】
これらの固定は、ヒートシール等の外部加熱による溶着、高周波、超音波による内部加熱等による溶着により行うことができる。また接着剤により固定してもよい。
前記した血液処理部材5と外枠体シート3の固定部は、以下「シール部5S」と称する場合がある。この固定部以外の箇所は「非固定部」となる。具体的には、血液処理部材5と外枠体シート3の内側の非固定部は、濾過部5Fと称する部位を形成する。当該濾過部5Fについて、血液流入室2IR側の面を内側濾過部5FI、血液流出室2OR側の面を外側濾過部5FOと称する場合がある。
【0054】
また上部U側の上下一対の上(第1.1)外枠体シート3/UUと下(第1.2)外枠体シート3/UDの外縁同士も固定され、下部D側の上下一対の上(第2.1)外枠体シート3/DUと下(第2.2)外枠体シート3/DDの外縁同士も固定されている。
これらの固定部は、以下「外枠シール部3S(3S/U、3S/D)」と称する場合がある。
また上部U側の上(第1.1)外枠体シート3/UUの基端PE側に、上部側延長部3L/Uを形成し、下部D側の下(第2.2)外枠体シート3/DDの基端PE側に、下部側延長部3L/Dを形成している(
図2参照。)。これらの上部側延長部3L/Uと下部側延長部3L/Dとの間に、管状の血液入口部7Iを挿入・固定する(
図9-10)。
【0055】
図3に例示するように、血液処理部材5と外枠体シート3との固定部(シール部5S)は、当該シール部5Sの内側の非固定部(濾過部5F)と比較して、血液処理部材5が圧縮された状態となる。
続いて
図4に例示するように、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dを、双方の内側濾過部5FI/U、5FI/Dを対向させて重ねた状態とし、これらの間に基端PE側は、上部側延長部3L/U、管状の血液入口部7I及び下部側延長部3L/Dを配置し、末端DE側は管状の血液出口部7Oを配置する。
【0056】
続いて
図5に例示するように、前記一対の上部U側の血液処理部材5/Uと下部D側の血液処理部材5/Dを、一対のシート、すなわち(上部U側のハウジング2/Uと下部D側のハウジング2/Dとなる)一対の上下のシートSH/U及び、SH/Dで覆う。引き続いてその第1側部S1側と第2側部S2側のコーナーCR/S1及びCR/S2をヒートシールにより固定する。(当該固定部は以下「コーナーシール部SCR」と称する場合がある。)
【0057】
続いて
図6に例示するように、上部側延長部3L/U、血液入口部7I、下部側延長部3L/Dと血液出口部7O及びこれらの周囲(縁部、近傍)を、一対の上下のシートSH/U、SH/Dにヒートシール等により固定する。
当該固定部は、以下「基端側シール部2SPE、末端側シール部2SDE」と称する場合がある。
この固定の順序は任意であり例えば血液出口部7OをシートSH/U、SH/Dにヒートシール等により先に固定した後、続いて血液入口部7I、延長部3L/U、3L/Dを固定してもよいし、または血液入口部7I、延長部3L/U、3L/Dを先に固定した後、続いて血液出口部7Oを固定してもよい。
または血液入口部7I、延長部3L/U、3L/D及び血液出口部7Oを同時に固定してもよい。
【0058】
続いて
図7に例示するように、血液処理部材5の4つの辺(斜辺)のこの外縁の外枠体シール部3S/U、3S/DをシートSH/U、シートSH/Dにヒートシール等によりに固定する。当該固定部は以下「シール部2S」と称する場合がある。これにより血液処理部材5はその4つの周辺を4つのシール部2Sにより密封される。すなわち基端側の血液入口部7Iと末端側の血液出口部7Oを含んだ密封ユニットを形成する。
最後に不要な外縁のシートSH/U、SH/Dは、前記各シール部2S、SCR、から除去(切断)して、
図8の血液処理器1を完成する。
前記各シール部2S、SCRから除去(切断)しやすいように、ヒートシール電極等の先端を略三角形状にして、ヒートシール後に先端溶着部が薄肉になるようにしても良いし、またヒートシール電極等にカッターを隣接して、各シール部2S、SCRに薄肉部(切断線)を形成することができる。
【0059】
(血液処理器1の形態)
さらに血液処理器1の形態について説明する。
例えば
図9に示すように、基端PE側においては、血液入口部7Iを装着した箇所は、上部U側から下部D側に向けて、上部側ハウジング2/U⇒上部側延長部3L/U⇒血液入口部7I⇒下部側延長部3L/D⇒下部側ハウジング2/Dの順で固定している。
上部側血液処理部材5/Uの基端PE側は、上部U側の上下一対の外枠体シート3/UU、3UDの外枠体シール部3S/Uを介して上部側延長部3L/Uで固定している。
下部側血液処理部材5/Dの基端PE側は、下部D側の上下一対の外枠体シート3/DU、3DDの外枠体シール部3S/Dを介して下部側延長部3L/Dで固定している。
【0060】
一方、末端DE側においては、血液出口部7Oを装着した箇所は、上部U側から下部D側に向けて、上部側ハウジング2/U⇒血液出口部7O⇒下部側ハウジング2/Dの順で固定している。
上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dの末端DE側は、上下一対の上部U側の外枠体シート3/UU、3UDの外枠体シール部3S/Uと下部D側の上下一対の外枠体シート3/DU、3DDの外枠体シール部3S/Dを介して固定している。
【0061】
ハウジング2内においては、上部側内側濾過部5FI/Uと下部側内側濾過部5FI/Dが対向配置されて血液流入室2IRが形成されているが、血液入口部7Iの末端DE側は、ハウジング2の血液流入室2IRの内部まで差し込んでいる(
図9)。血液入口部7Iの最末端DE側の入口開口7IOよりも基端PE側に側孔8を形成している。
側孔8は、血液流入室2IR内で血液処理部材5/U、5/Dの内側濾過部5FI/U、5FI/Dの基端PE側の近傍に形成している。側孔8は二箇所でもよいが三箇所ないし四箇所形成しても良い。
管状の血液入口部7Iの下方の入口開口7IOのみから血液をハウジング2内に流入させる場合、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dの圧迫によって血液入口部7Iの末端DE側が潰れ、血液流路が確保できなくなることが懸念される。しかしながら、血液入口部7Iの末端DE側が閉鎖状に潰れても、側孔8をさらに側部に形成しておけば、当該側孔8から安定して過剰の血液を流入させることができる。
【0062】
(ハウジング2の内部構造)
さらにハウジング2の内部構造について詳述する。
図9に示すように、上部側血液処理部材5/Uの下部D側と下部側血液処理部材5/Dの上部U側との間で、ハウジング2の長手方向の略中心、すなわち血液入口部7Iの末端DE側から血液出口部7Oの基端PE側を直列にかつ直接に結ぶライン(領域)には空間が形成され、当該空間は血液流入室2IRとして機能する。
一方、
図9に示すように、上部側ハウジング2/Uと下部D側ハウジング2/Dの内周と、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dの外周(外側濾過部5FO/U、5FO/D)との間は、空間が形成され、当該空間は血液流出室2OR/U、2OR/Dとして機能する。すなわち実質的に、側孔8よりも末端DE側の空間が血液流出室2OR/U、2OR/Dとして機能する。
血液入口部7Iは血液流入室2IRと連通し、血液出口部7Oは血液流出室2OR/U、2OR/Dと連通している。
【0063】
(血液処理器1内の血液の流れ)
次に血液処理器1の血液の流れについて説明する。
図10に例示するように、血液は血液入口部7Iの基端PE側から末端DE側の入口開口7IO、及び側孔8を経て血液流入室2IR内に流入する。
血液流入室2IR内の血液は、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dの内側濾過部5FI/U、5FI/Dから外側濾過部5FO/U、5FO/Dを通過して、血液流出室2OR/U、2OR/D内に移動する。血液流出室2OR/U、2OR/D内は陽圧となり、血液は血液出口部7Oを経て、速やかに外に排出される。
【0064】
血液は、血液処理器1の長手方向の略中心に形成した血液流入室2IRから、当該血液流入室2IRの上部U側と下部D側をへてさらに外周に配置した上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dで濾過することができるので、有効濾過面積は引用文献1から4に開示された血液処理器と比較して実質的に二倍確保できているため、濾過時間を大幅に短縮することができる。これに伴い白血球除去効率の大幅な改善も期待することができる。
【0065】
(側孔8の機能)
側孔8を設ける意義について念のため再度説明すると次のとおりである。すなわち、血液入口部7Iの入口開口7IOのみから血液が流入させる場合、上部側の血液処理部材5/Uと下部側の血液処理部材5/Dの圧迫によって血液入口部7Iの末端DE側が潰れ、血液流路が確保できなくなることが懸念されるが、もし血液入口部7Iの末端DE側が閉鎖状に潰れても、側孔8を設けておくことにより、当該側孔8から安定して血液を血液処理部材中に安定的に流入させることができる。
【0066】
以下に詳述するように、本発明の血液処理器1は、
図1(
図9、
図10)(以下、Type I)の基端PEと末端DEを180度反転させて、
図11の血液処理器1´(以下、Type II)のように使用することができる。この場合は、血液の流れはType IとType IIでは全く逆になる。
すなわちType IIではType Iの血液出口部7Oは血液入口部7I´として機能し、Type Iの血液入口部7Iは血液出口部7O´として機能する。
またType IIではType Iの血液流出室2OR/U、2OR/D(第2血液室2.2)は血液流入室2IR´/U、2IR´/Dとして機能し、Type Iの血液流入室2IR(第1血液室2.1)は血液流出室2OR´として機能する。
【0067】
(第2実施形態の血液処理器1´(Type II))(
図11-12参照)
さらに第2実施形態の血液処理器1´(Type II)の形態について説明する。
例えば
図11に示すように、基端PE側においては、血液入口部7I´を装着した箇所は、上部U側から下部D側に向けて、上部側ハウジング2/U⇒血液入口部7I´⇒下部側ハウジング2/Dの順で固定している。
上部側血液処理部材5/Uの基端PE側は、上下一対の上部U側の外枠体シート3/UU、3UDの外枠体シール部3S/Uを介して固定している。
下部側血液処理部材5/Dの基端PE側は、上下一対の下部D側の外枠体シート3/DU、3DDの外枠体シール部3S/Dを介して固定している。
【0068】
末端DE側においては、血液出口部7O´を装着した箇所は、上部U側から下部D側に向けて、上部側ハウジング2/U⇒上部側延長部3L/U⇒血液出口部7O´⇒下部側延長部3L/D⇒下部側ハウジング2/Dの順で固定している。
上部側血液処理部材5/Uの末端DE側は、上下一対の上部U側の外枠体シート3/UU、3UDの外枠体シール部3S/Uを介して上部側延長部3L/Uで固定している。
下部側血液処理部材5/Dの末端DE側は、上下一対の下部U側の外枠体シート3/DU、3DDの外枠体シール部3S/Dを介して下部側延長部3L/Dで固定している。
【0069】
(側孔8の機能)
Type Iの場合と同様、基端PE側は、ハウジング2の上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dとの間に形成される血液流出室2OR´の内部まで差し込んでいる。血液出口部7O´の最基端PE側の出口開口7OOよりも末端DE側に同様にして側孔8を形成している。
側孔8は血液流出室2OR´内で血液処理部材5/U、5/Dの内側濾過部5FI´/U、5FI´/Dの末端DE側の近傍に形成している。側孔8は二箇所でもよいが三箇所ないし四箇所形成しても良い。
血液出口部7O´の出口開口7OOのみから血液を流出させる場合、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dの圧迫によって血液出口部7O´の基端PE側が潰れ、血液流路が確保できなくなることが懸念される。しかしながら側孔8を形成することにより、もし血液出口部7O´の基端PE側が閉鎖状に潰れても、当該側口8から安定して血液を流出させることができる。
【0070】
(ハウジング2の内部構造)
さらにハウジング2の内部構造について図を参照しながら詳述する。
上部側ハウジング2/Uと下部D側ハウジング2/Dの内周と、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dの外周(外側濾過部5FO´/U、5FO´/D)との間は、空間となり、当該空間は上下の血液流入室2IR´/U、2IR´/Dとなっている。
上部U側血液処理部材5/Uの下部D側と下部側血液処理部材5/Dの上部U側との間で、ハウジング2の長手方向の略中心、すなわち血液入口7I´の末端DE側から血液出口部7O´の基端PE側を直列に結ぶライン(領域)には空間が形成され、当該空間は血液流出室2OR´として機能する。(実質的に側孔8よりも基端PE側が血液流出室2OR´として機能する。)
血液入口部7I´は上下の血液流入室2IR´/U、2IR´/Dと連通し、血液出口部7O´は血液流出室2OR´と連通している。
【0071】
(血液の流れ)
次に(血液処理器1´)(Type II)の血液の流れについて説明する。
図12(A)(
図11の符号も参照)に例示するように、流入する血液は血液入口部7I´の基端PE側から末端DE側の開口7IO´を経て、末端側の外枠シール部3S/U、3S/Dに衝突して、血液処理部材5/U、5/Dの基端PE側を上部U、下部D及び側部S方向に迂回して、上部U側血液流入室2IR´/U及び下部D側血液流入室2IR´/D内に流入する(血液流入室2IR´は、Type IIでは上部側Uと下部側Dの二カ所に2IR´/Uと2IR´/Dとして存在する(Type Iの場合血液流入室2IRは中央部に一カ所である。))
【0072】
血液流入室2IR´内の血液は、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dの外側濾過部5FO´/U、5FO´/Dから内側濾過部5FI´/U、5FI´/Dを通過して、血液流出室2OR´内に移動する。さらに血液は血液出口部7O´を経て、速やかに外に排出される。血液が排出された後の血液流出室2OR´内は陰圧となる。
【0073】
一方、
図12(B)(
図9の符号も参照)に例示するように、血液処理器1(Type I)は基端PE側の血液入口部7Iから流入した血液の落差圧は、上部U側の血液処理部材5/Uと下部U側の血液処理部材5/Dとの間に囲まれた内部の血液流入室2IRの略中央に集中する。血液流出室2ORは血液の濾過開始時から陽圧となるが、血液の濾過終了時に近づくと血液が血液流出室2ORから血液出口7Oから外に排出された後は、血液流出室2OR(2OR/U、2OR/D)は陰圧になる。このため上部U側ハウジング2/Uは、上部U側の血液処理部材5/Uの上部U側の外側濾過部5FO/Uと張り付き、下部D側ハウジング2/Dは、下部D側の血液処理部材5/Uの下部D側の外側濾過部5FO/Dに張り付いて、濾過終了時に近づくと濾過速度が低下する傾向があることが確認されている。
【0074】
図12(A)(
図11の符号も参照)に例示するように、血液処理器1´(Type II)においては、基端PE側の血液入口部7I´から流入した血液の流入圧(落差圧)により外側の二カ所の血液流入室2IR´/U、2IR´/Dは陽圧となり、ハウジング2/U、2/Dは流入圧(落差圧)により外向き/側部方向(上部U方向と下部D方向)に膨らむことになる。
血液の濾過後は、血液処理器1´内に陰圧は発生するが、上部U側の血液処理部材5/Uと下部U側の血液処理部材5/Dとの間に囲まれた中央の一つの血液流出室2OR´のみにしか陰圧は発生しない。さらに血液流出室2OR´内まで、深く差し込まれた血液出口部7O´(いわゆる血液排液用のロングポートともいう)が血液処理部材5/U、5/Dの内部空間(血液流出室2OR´)の潰れを防止する役割を果たす。
このため血液の濾過中に、血液処理部材5/U、5/Dの内側濾過部5FI´/U、5FI´/Dに終始陰圧が付与された状態になることで、濾過速度が終始減速することなく血液の濾過を実施できる。
【0075】
(血液処理部材5の構成材料)
血液処理部材5の構成材料は、基本的には前記のように不織布を使用することが好ましい。
不織布の材質としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンフタレート、ポリブチレンフタレート等のポリエステル;ナイロン、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66等のポリアミド;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリウレタン;ポリ塩化ビニル;アクリロニトリル;スチレン系エラストマー等が使用される。
【0076】
(不織布のサイズ及び構成例)
血液処理部材5は、同一の繊維径の不織布を複数枚重ねて所定の厚みにしても良いし、より効率的に血液を処理するため、繊維径の異なる不織布を複数枚重ねて所定の厚みにしても良い。
後者の異なる繊維径の異なる不織布を食い合わせる構成の場合、例えば特許第3710384号(特許請求の範囲、段落[0015])に記載のように、(A)平均繊維直径Dが5.0μm以上から10.0μm以下のプレフィルター と、(B)平均繊維直径Dが1.0μmを越えかつ5.0μm以下の第一の本フィルター 及び(C)平均繊維直径Dが1 .5μm以下の第二の本フィルターの三種類のフィルターからなる構成を含む。
【0077】
前記各フィルター(A)(プレフィルター) 、(B)(第一本フィルター) 、(C)(第二本フィルター)は、血液入口部7I(7I´)から血液出口部7O(7O´)に向けて、上部U側から下部D側に向けて(A) 、(B)及び(C)の順に積層して血液処理部材5を構成し、これを
図9のように、血液入口部7I(7I´)と血液出口部7O(7O´)を有するハウジング2内に配置することができる。
例えば、好ましい一例を示すと、前記(A)プレフィルターは、重ね枚数が15枚から25枚でかつ厚さが2.1から4 .2mm 、前記(B)第一の本フィルターは、重ね枚数が20枚から35枚でかつ厚さが2.0から5 .1mm 及び前記(C)第二の本フィルターは、重ね枚数が5枚から15枚でかつ厚さが0 .5から1.5 mm等である。フィルター(A)、フィルター(B)、フィルター(C)の順に平均繊維径を細くするように配設することにより、大小異なった粒径の血液成分を含む血液を処理する場合のフィルターの繊維径を当該成分に対応させることにより、総括的な濾過効力を高く保持することができる。
【0078】
(ハウジング2及び外枠体シート3の材質)
ハウジング2と外枠体シート3の材質としては、熱可塑性樹脂製の軟質部材からなるシートで構成することが好ましい。好ましい樹脂としては、例えば軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体及びこれらを主成分とする熱可塑剤エラストマー、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体の水添物、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体またはその水添物等の熱可塑性エラストマー、熱可塑性エラストマーとポリオレフィン、エチレン-エチルアクリレート等の軟化剤との混合物、エチレン-酢酸ビニル共重合体が掲げられる。これらは互いにヒートシールにより固定可能な部材である。
【0079】
[血液入口部7I(7I´)、血液出口部7O(7O´)の材質)]
血液入口部7I(7I´)と血液出口部7O(7O´)等は略パイプ形状の部位であって、血液入口部7I(7I´)、血液出口部7O(7O´)の材質としては、前記ハウジング2、外枠体シート3とヒートシール等により固定可能な材質が好ましい。例えば前記ハウジング2、外枠体シート3の材質が軟質ポリ塩化ビニルの場合、血液入口部7I(7I´)、血液出口部7O(7O´)の材質は半硬質ないし硬質ポリ塩化ビニルが好ましい。このように血液入口部7I(7I´)と血液出口部7O(7O´)はハウジング2等に比較してより硬質の樹脂材料で形成されているので、この血液入口部7I(7I´)と血液出口部7O(7O´)は、血液回路を構成するチューブに容易に接続され血液回路を形成することができる。
以下、実施例により血液処理器1(Type I)の具体的な実施態様を示す。
【0080】
[実施例A]
(実施例1)
実施例1の血液処理器として、
図3から
図8に記載した方法により以下のようにして製造した血液処理器1(Type I)を使用した。
具体的には、上部側血液処理部材5/Uと下部側血液処理部材5/Dは、ポリエチレンテレフタレート製の不織布(厚さd=130μm 、繊維径l=1.8μm 、一辺の長さL=72mm×72mm)をそれぞれ40枚(n=40)重ねたものを使用した(それぞれの部材の厚み合計Td=5.2mm)。
各部材を外枠体シートを適用して高周波溶着機を使用してヒートシールにより、固定した。
【0081】
血液処理部器1(Type I)は、以下のように作製した。上部U側と下部D側の一対の血液処理部材5をそれぞれ軟質ポリ塩化ビニル製外枠体シート3に固定し、当該外枠体シート3を軟質ポリ塩化ビニル製の可撓性ハウジング2に固定した。対向して配設された一対の血液処理部材5は、その内部に(バージンの血液が供給される)血液流入室2IRを形成し、また当該一対の血液処理部材(5/U、5/D)の外部(外方)と可撓性ハウジング2の間には(濾過された血液が血液処理部材5から流出してくる)血液流出室2ORを形成した。
【0082】
図9に示すように、血液処理部材5を挟んで、可撓性ハウジング2内を(バージンの血液が供給される)血液流入室2IRと(濾過された血液が血液処理部材5から流出してくる)血液流出室2ORとに区画し、血液入口部7Iは血液流入室2IRの基端側に装着し、血液出口部7Oは血液流出室2ORの末端側に装着した。以上の固定、装着はすべて高周波溶着機を使用したヒートシールにより行った。
濾過試験の血液としては牛血液を使用した。すなわち、牛血液入りバッグ[牛血液(400ml)に抗凝固剤としてACD液(60ml)を添加したもの]と濾過血液を収容する空のバッグを用意した。
【0083】
上記のようにして構成した血液処理器1のハウジングの血液入口部7Iと血液出口部7Oにそれぞれチューブを接続し、血液入口部7I側のチューブの上端に上記した牛血液入りバッグ、血液出口部7O側のチューブの下端に濾過血液を受容するための空のバッグを接続し、牛血液入りバッグの上部から空のバッグの上部(血液入口)までの落差を140cmに設定した。
当該牛血液入りバッグから牛血液を自然落下させて、前記血液処理部材5で濾過し試験を行ったところ、400mLの血液の濾過終了に要した時間θは19分であった。
【0084】
(比較例1)
比較例1の血液処理器(あえて符号は記載しない)としては、単一の血液処理部材5としてポリエチレンテレフタレート製の不織布(厚さd=130μm 、繊維径l=1.8μm 、一辺の長さL=72mm×72mm)を60枚(n=60)重ねたものを使用した(厚み合計Td=7.8mm)。
【0085】
比較例1の血液処理器は、以下のように作製した。血液処理部材5を軟質ポリ塩化ビニル製外枠体シート3に固定し、当該外枠体シート3を軟質ポリ塩化ビニル製の可撓性ハウジング(2/U、2/D)に固定した。血液処理部材5を挟んで、可撓性ハウジング(2/U、2/D)内を血液流入室2IRと血液流出室2ORとに区画し、血液入口部7Iは血液流入室2IRの基端側に装着し、血液出口部7Oは血液流出室2ORの末端側に装着した。以上の固定、装着はすべて高周波溶着機を使用したヒートシールにより行った。なお、比較例1の血液処理器は、ハウジング2に前記可撓性ハウジング(2/U、2/D)(厚さ0.4mm前後のシート)を使用する点を除いて、後述する血液処理器201[ハウジング(2/U、2/D)は肉厚のシートを立体加工して形成]と実質的に同じ形態である。
濾過試験の血液としては実施例1同様に調整した牛血液を使用し同様の試験を行った。すなわち、実施例1と同様にして牛血液入りバッグから牛血液を自然落下させて、前記単一の液処理部材で濾過し試験を行ったところ、400mLの血液の濾過終了に要した時間θは37分であった。
【0086】
(結果の考察)
実施例1と比較例1の結果を比較考察するに、比較例1においては、400mlの血液濾過終了までθ=37分かかったが、実施例1はわずかθ=19分で血液濾過が終了した。これにより、血液処理部器1(Type I)の具体的実施の態様である実施例1は従来の血液処理器を使用した場合の濾過時間を大幅に短縮できることが確認された。
【0087】
(第3実施形態の血液処理器101(Type III))(
図13-22参照)
本発明の第3の実施形態の血液処理器101の特徴的な要旨は以下のとおりである。すなわち、上記したType I-IIの血液処理装置1、1´は、血液入口部7I、7I´から血液出口部7O、7O´までを結ぶ流路に沿って上部(U-side)と下部(D-side)のそれぞれに血液処理部材5を配設している。(上下一対の血液処理部材5/U、5/Dを配置する。)
【0088】
これに対して、Type IIIの血液処理装置101では、血液入口部7Iから血液出口部7Oまでの中央流路の上部側Uと下部側Dの領域を、さらに基端側領域(PE-Side Area)と末端側領域(DE-side Area)に区画し、
上部U側に一対(二個)の基端PE側-上部U側の血液処理部材5/PEUと末端DE側-上部U側の血液処理部材5/DEUを配置し、
下部D側に一対(二個)の基端PE側-下部D側の血液処理部材5/PEDと末端DE側-下部D側の血液処理部材5/DEDを配置している。
上部U側の一対(二個)の血液処理部材は、符号をまとめて(5/PEU、5/DEU)と記載し、さらに上部U側第1血液処理部材(5/PEU、5/DEU)と記載する場合がある。
また下部D側の一対(二個)の血液処理部材は、符号をまとめて(5/PED、5/DED)と記載し、さらに下部D側第2血液処理部材(5/PED、5/DED)と記載する場合がある。
【0089】
さらにいえば、基端側領域(PE-Side Area)の上下に一対(上部U-sideと下部D-side)の血液処理部材5[第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と称する。]を設け、末端側領域(DE-side Area)に他の一対の血液処理部材5[第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)と称する。]を配設したものである(
図14-15参照)。(以下、「基端側領域」を単に「基端側」、「末端側領域」を単に「末端側」と称することがある。)
【0090】
以上の基端PE側の上下一対の血液処理部材(5/PEU、5/PED)を上下一対の基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と称し、末端DE側の上下一対の血液処理部材(5/DEU、5/DED)を上下一対の末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)と記載する場合がある。
以下説明の便宜上、血液処理部材は、上下一対の基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と上下一対の末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)により説明する。
【0091】
血液入口部7Iから流入した血液は、基端側(PE-Side Area)では、血液処理部材5の内部から外方の流出し、末端側(DE-side Area)では、当該血液処理部材5の外方から内部に流れて、血液出口部7Oより流出する。
以上を踏まえて、血液処理器101(Type III)についてより具体的に説明する。
まず、本発明の第3実施形態の血液処理器101において、
図13から
図22に示すように、例えば血液処理部材5のように基端PE側の上部U側と下部D側に一対(二個)(5/PEU、5/PED)、並びに末端DE側の上部U側と下部D側に一対(二個)(5/DEU、5/DED)計二対(四個)が存在する。その場合の符号の記載方法について念のため以下のように規定する。
【0092】
符号「5」の次に「/U」とsuffixを付記して、「5/U」と記載する場合は、上部U側の血液処理部材5/Uを意味する。
また符号「5」の次に「/PEU」とsuffixを付記して、「5/PEU」と記載する場合は、基端PE側でかつ上部U側(以下、「基端PE側-上部U側」と記載する場合がある)の血液処理部材5/PEUを意味する。
また「5/DEU」は同様にして末端DE側でかつ上部U側の血液処理部材5/DEUを意味する。
各部材の名称と符号の記載を簡略するために、一対(二個)の基端PE側-上部U側の血液処理部材5/PEUと基端PE側-下部D側の血液処理部材5/PEDは、符号をまとめて(5/PEU、5/PED)と記載し、さらに符号をまとめて基端PE側の血液処理部材5/PEと記載する場合がある。
当該基端PE側の血液処理部材5/PEを基端側第1血液処理部材、他方末端DE側の血液処理部材5/DEを末端側第2血液処理部材と記載する場合がある。
【0093】
また二対(四個)の基端PE側で上部U側の血液処理部材5/PEU、基端PE側で下部D側の血液処理部材5/PED、末端DE側で上部U側の血液処理部材5/DEU及び末端DE側で下部D側の血液処理部材5/DEDは、符号をまとめて(5/PEU、5/PED、5/DEU、5/DED)と記載する場合がある。またはさらに符号をまとめて(5/PEU、PED、DEU、DED)と記載することがある。
また説明の便宜上、複数の全ての部材を意味するときは、冒頭の符号のみを記載して単に「血液処理部材5」と記載する場合がある。(末尾の符号、/、PE、U等は省略。)
【0094】
また外枠体シート3は、前記二対(四個)の血液処理部材(5/PEU、5/PED、5/DEU、5/DED)のそれぞれ上下に四対(八個)存在するので、以下のように記載する。
例えば「基端PE側-上部U側」の血液処理部材5/PEUの上部U側の上外枠体シート3の符号は「3/PEUU」、下部D側の下外枠体シート3の符号は「3/PEUD」のように記載する。以下、同様にして
図15に表されたように記載する。すなわち、
【0095】
基端側(PE-Side Area)
上下一対の基端側-上部側の上外枠体シート3/PEUUと下外枠体シート3/PEUDは、第1.1外枠体シート(3/PEUU、3/PEUD)と記載し、
上下一対の基端側-下部側の上外枠体シート3/PEDUと下外枠体シート3/PEDDは、第1.2外枠体シート(3/PEDU、3/PEDD)と記載する場合がある。
【0096】
末端側(DE-side Area)
上下一対の末端側-上部側の上外枠体シート3/DEUUと下外枠体シート3/DEUDは、第2.1外枠体シート(3/DEUU、DEUD)と記載し、
上下一対の末端側-下部側の上外枠体シート3/DEDUと下外枠体シート3/DEDDは、第2.2外枠体シート(3/DEDU、3/DEDD)と記載する場合がある。
その他の各部材の名称と符号の記載を簡略するための記載方法は、前記血液処理部材5と同様に行う。
その他の各部材等(ハウジング2、シートSHを除く)の符号の記載、名称と符号の記載を簡略するための記載方法も前記血液処理部材5と同様に行う。
なおハウジング2(シートSH)は、上部U側を第1ハウジング(シート)、下部D側を第2ハウジング(シート)と記載する場合がある。
【0097】
図面の符号の記載方法について、例えば血液処理部材5のように二対(四個)の部材が存在し[すなわち、基端側領域(PE-Side Area)に上下一対(5/PEU、5/PED)、末端側領域(DE-Side Area) に上下一対(5/DEU、5/DED)]、図面中に複数(の部材)が現れる場合は、「5/PEU、5/DEU」のように複数の符号を記載する。図面中に現れない符号は記載しない。
【0098】
第3の実施形態の血液処理器101(Type III)は、
図13から
図22に示すように、可撓性シートSHからなる可撓性ハウジング2(以下、単にハウジング2と記載する)と当該ハウジング2内に装填される血液処理部材5とを有する。
前記ハウジング2は、上部U側の第1ハウジング2/Uと下部D側の第2ハウジング2/Dからなる。
ハウジング2の基端PE側で、かつ長手方向の略中心の一端部に、管状の血液入口部7Iを装着している。
また、ハウジング2の末端DE側で、かつ長手方向の略中心の一端部に、管状の血液出口部7Oを装着している。
血液処理器1、1´の場合と同様にして、管状の血液入口部7Iと血液出口部7Oは、可撓性シートSHからなる可撓性ハウジング2よりも硬質の樹脂からなることが好ましい。また血液処理器1、1´の場合と同様にして、血液入口部7Iと血液出口部7Oは、入口側孔8I、出口側孔8Oを形成している。
血液処理器1、1´の場合と同様にして、血液処理部材5は、基端PE側領域に所定の厚みを有する不織布を複数枚重ねて形成した上下一対の基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と、末端DE側領域に所定の厚みを有する不織布を複数枚重ねて形成した上下一対の末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)とからなる。
【0099】
第3の実施形態の血液処理器101は、
図13から
図22に例示するように(血液処理器1、1´と比較して)以下の特徴を有する。(なお
図13から
図22に例示した各部材の寸法(特に血液処理部材の厚み)等は当該血液処理器101の特徴が理解しやすいようにやや誇張して記載している。)
【0100】
(a)まず、可撓性ハウジング2(2/U、2/D)の内部に、基端PE側領域に一対(二個)の基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)を配置し、末端DE側領域に一対(二個)の末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)を配置し、計二対(四個)の血液処理部材(5/PEU、PED、DEU、DED)を配置している点を特徴とする。すなわち、血液処理器1(Type I)は、血液入口部7Iと血液出口部7Oを結ぶラインに沿って、その上下に一対(二個)の血液処理部材(謂わば濾過ユニット)を配設しているのに対し、血液処理器101(Type III)では、さらに血液処理部材を、基端側領域(PE-side Area)の上下に一対、末端側領域(DE-side Area)の上下に一対の合計二対(四個)に細分化して配設している。
【0101】
(b)つぎに血液処理器101において各血液処理部材5は、上部U方向または下部D方向から見て、基端側領域(PE-side Areat)及び末端側領域(DE-side Area)はそれぞれ略三角形状の形状に形成している(
図13参照。図において、5/PEUは、基端PE側で上部側Uの血液処理部材であり、5/DEUは、末端D側で上部側Uの血液処理部材である。)。
【0102】
(c)さらに、例えば血液処理器101においては、基端側領域(PE-side Area)における上下一対(二個)の第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)の間(内側)に、基端側第1血液流入室2IR/PEを形成し、末端側領域(DE-side Area)における上下一対(二個)の第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の間(内側)に、末端側第2血液流入室2IR/DEを形成して、基端PE側の血液流入室2IR/PEと末端DE側の血液流入室2IR/DEを形成している。ただし、基端PE側の第1血液流入室2IR/PEと末端DE側の第2血液流入室2IR/DEは外枠体シール部3Sで隔離されており、直接に連通されていない。
【0103】
(d)血液処理器101においては、ハウジング2の基端PE側領域(PE-side Area)の内側と同領域における第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)の外側との間に、基端側第1血液流出室(2OR/PEU、2OR/PED、2OR/PES)を形成し(
図13-14参照。)、また
ハウジング2の末端DE側領域(DE-side Area)の内側と同領域における第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の外側との間に、末端側第2血液流出室(2OR/DEU、2OR/DED、2OR/DES)を形成している(
図13-14参照。)。
【0104】
(e)上記の構成の血液処理器101に、血液を供給、濾過する実際の操作においては、まず第1ステップとして、基端PE側の血液入口部7Iから基端側第1血液流入室2IR/PEに血液を導入して、基端PE側領域(PE-side Area)の一対(二個)の血液処理部材(5/PEU、5/PED)の内側から外側に向けて血液を濾過させる(
図14参照。)。
【0105】
(f)引き続いて第2ステップとして、基端PE側領域(PE-side Area)の基端側第1血液流出室(2OR/PEU、2OR/PED、2OR/PES)から末端DE側(DE-side Area)の末端側第2血液流出室(2OR/DEU、2OR/DED、2OR/DES)を経て、末端DE側の第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の外側から内側に向けて血液を濾過して、末端DE側領域(DE-side Area)の末端側第2血液流入室2IR/DEから血液出口部7Oを経て、血液を排出するようにしている(
図14参照。)
【0106】
(血液処理器101の製造工程(組立て))
以下、血液処理器101の一実施例の形態について、製造工程(assembly process)の一実施例とともに説明する。
所定の厚みを有する不織布を複数枚(具体的には10数枚~数10枚程度)重ねて二対(四個)[基端PE側領域(PE-side Area)に一対、末端DE側領域(DE-side Area)に一対の計4個)]の各血液処理部材5(5/PEU、5/PED、5/DEU、5/DED)を準備する。
【0107】
当該各血液処理部材5は、
図15(
図16)に例示するように、四対(八個)の各外枠体シート(3/PEUU、3/PEUD、3/PEDU、3/PEDD;3/DEUU、3/DEUD、3/DEDU、3/DEDD)に固定する。
すなわち、基端PE側領域(PE-side Area)において
図15に示したように、
上部側の第1血液処理部材(5/PEU)は、上下一対(二個)の第1.1外枠体シート(3/PEUU、3/PEUD)の内縁(内縁とは、血液処理部材5をはさんで対向する面いう。以下同じ。)の間、
下部側の第1血液処理部材(5/PED)は、上下一対(二個)の第1.2外枠体シート(3/PEDU、3/PEDD)の内縁の間にそれぞれ固定する。
【0108】
また、末端DE側領域(DE-side Area)において同じく
図15に示したように、
上部側の第2血液処理部材(5/DEU)は、上下一対(二個)の第2.1外枠体シート(3/DEUU、3/DEUD)の内縁の間、
下部側の第2血液処理部材(5/DED)は、上下一対(二個)の第2.2外枠体シート(3/DEDU、3/DEDD)の内縁の間にそれぞれ固定する。
これらの固定は、ヒートシール等による外部加熱、高周波、超音波による内部加熱等による溶着により行うことができることはType I、IIの場合と同様である。
【0109】
前記した血液処理部材5と外枠体シート3の固定部は、以下「シール部5S」と称する場合がある。血液処理部材5と外枠体シート3の内側の非固定部は、実質的な血液フィルターの機能を奏するエレメントであり、これを「濾過部5F」と称する場合がある。
濾過部5Fのうち、血液流入室2IR側の面を「内側濾過部5FI」、血液流出口2OR側の面を「外側濾過部5FO」と称する場合がある。内側濾過部5FIと外側濾過部5FOも血液処理部材5と同様に一対(二箇所)形成している。
また外枠体シート3の四対(八個)の外枠体シート(3/PEUU、3/PEUD、3/PEDU、3/PEDD、3/DEUU、3/DEUD、3/DEDU、3/DEDD)の外縁も固定している。これらの固定部は、以下「外枠体シール部3S」と称する場合がある。
上下一対(二個)の基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)の末端DE側と上下一対(二個)の末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の基端PE側は、外枠体シール部3Sにより長手L方向に繋がっている。(
図16、
図17参照)
【0110】
さらに基端側第1.1外枠体シート3/PEUU及び基端側第1.2外枠体シート3/PEDD並びに末端側第2.1外枠体シート3/DEUU及び末端側第2.2外枠体シート3/DEDDに、上下一対(二個)の基端側第1延長部(3L/PEU、3L/PED)と上下一対(二個)の末端側第2延長部(3L/DEU、3L/DED)を固定する。なお、この外枠体シート延長部の固定は、当初から一体成形で行ってもよいし、または前記内部加熱等による溶着でもよい。
すなわち、基端PE側領域(PE-side Area)において、基端-上部側の上(第1.1)外枠体シート3/PEUUの基端PE側に、基端-上部側の延長部3L/PEUを固定し、
基端側-下部側の下(第1.2)外枠体シート3/PEDDの基端PE側に、基端-下部側延長部3L/PEDを固定する。
【0111】
また、末端DE側領域(DE-side Area)において、末端-上部側の上(第2.1)外枠体シート3/DEUUの末端DE側に、末端-上部側の延長部3L/DEUを固定し、
末端側-下部側の下(第2.2)外枠体シート3/DEDDの末端DE側に、末端-下部側延長部3L/DEDを固定する。
これらの一対(二個)の第1延長部(3L/PEU、3L/PED)の間に血液入口部7Iを固定し、一対(二個)の第2延長部(3L/DEU、3L/DED)の間に血液出口部7Oを固定する。
【0112】
図14に例示するように、血液処理部材5と外枠体シート3との固定部(シール部5S)は、当該シール部5Sの内側の非固定部(濾過部5F)と比較して、血液処理部材5が圧縮された状態となる。
続いて
図17(
図14も参照)に例示するように、上下一対の基端側領域(PE-side Area)の血液処理部材(5/PEU、5/PED)と上下一対の末端側領域(DE-side Aree)の血液処理部材(5/DEU、5/DED)を、双方の内側濾過部と内側濾過部を対向させる。すなわち、基端PE側領域(PE-side Area)におけるU-sideの内側濾過部(5FI/PEU)と基端PE側領域(PE-side Area)におけるD-sideの内側濾過部(5FI/PED)、末端DE側領域(DE-side Area)におけるU-sideの内側濾過部(5FI/DEU)と末端DE側領域(DE-side Area)におけるD-side内側濾過部(5FI/DED)を対向させて重ねた状態とする。
基端PE側領域(PE-side Area)は、上部側延長部3L/PEU、血液入口部7I及び下部側延長部3L/PEDを配置し、
末端DE側領域(DE-side Area)は、上部側延長部3L/DEU、血液出口部7O及び下部側延長部3L/DEDを配置する。
【0113】
続いて
図18に例示するように、基端PE側領域(PE-side Area)における前記上下一対の基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と、末端DE側領域(DE-side Area)における前記上下一対の末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)を、一対の上下のシートSH/U、SH/Dで覆う。(この上下のシートSH/UとSH/Dが上部U側のハウジング2/Uと下部D側のハウジング2/Dとなる。)引き続いて第1側部S1側と第2側部S2側のコーナーCR/S1、CR/S2をヒートシール等により固定する。当該固定部は以下「コーナーシール部(SCR/S1、S2)」と称する場合がある。
【0114】
続いて
図19に例示するように、基端PE側領域(PE-side Area)における上下一対の第1延長部(3L/PEU、3L/PED)、血液入口部7I、末端DE側領域(DE-side Area)における上下一対の第2延長部(3L/DEU、3L/DED)と血液出口部7O及びこれらの周囲(縁部、近傍)を、一対の上下のシートSH/U、SH/Dにヒートシール等により固定する。
当該固定部は、以下「基端側シール部2SPE」及び「末端側シール部2SDE」と称する場合がある。
【0115】
例えば基端PE側領域(PE-side Area)における上下一対の第1延長部(3L/PEU、3L/PED)と血液入口部7Iを2枚のシートSH/U、SH/Dで挟持し、固定した後、続いて末端DE側領域(DE-side Area)における上下一対の第2延長部(3L/DEU、3L/DED)と血液出口部7Oを2枚のシートSH/U、SH/Dで挟持し固定してもよい。または、基端PE側領域(PE-side Area)における上下一対の第1延長部(3L/PEU、3L/PED)、血液入口部7I、末端DE側領域(DE-side Area)における上下一対の第2延長部(3L/DEU、3L/DED)及び血液出口部7Oを同時に2枚のシートSH/U、SH/Dに固定してもよい。
【0116】
続いて
図20に例示するように、血液処理部材5の4つの辺(斜辺)の外縁の外枠シール部3SをシートSH/U、シートSH/Dにヒートシールによりに固定する。当該固定部は以下「シール部2S」と称する場合がある。
最後に不要な外縁のシートSH/U、SH/Dは、前記各シール部2S、SCR、から除去(切断)して、
図21に記載の血液処理器101を完成する。
前記各シール部2S、SCRから除去(切断)しやすいように、ヒートシール電極等の先端を略三角形状にして、ヒートシール後に先端溶着部が薄肉になるようにしても良いし、またヒートシール電極等にカッターを隣接して、各シール部2S、SCRに薄肉部(切断線)を形成することができる。
【0117】
(血液処理器101(Type III)の形態)
さらに血液処理器101の形態について説明する。以下に詳述するように、血液入口部7I、血液出口部7Oを装着した箇所は外枠体シート3の延長部3Lにより固定される。すなわち、例えば
図14に示すように、基端PE側領域(PE-side Area)においては、血液入口部7Iを装着した箇所は、上部U側(U-side)から下部D側(D-side)に向けて、上部側(U-side)ハウジング2/U⇒上部側(U-side)の第1延長部3L/PEU⇒血液入口7I⇒下部側(D-side)の第1延長部3L/PED⇒下部側(D-side)ハウジング2/Dの順で固定している。
【0118】
基端PE側領域(PE-side Area)において上部側(U-side)の第1血液処理部材5/PEUは、上下一対の第1.1外枠体シート(3/PEUU、3/PEUD)の外枠体シール部3Sを介して上部側の第1延長部3L/PEUで固定している。
基端PE側領域(PE-side Area)において下部側(D-side)の第1血液処理部材5/PEDは、上下一対の第1.2外枠体シート(3/PEDU、3/PEDD)の外枠体シール部3Sを介して下部側(D-side)の第1延長部3L/PEDで固定している。
【0119】
一方、末端DE側領域(DE-side Area)においては、
図14に示すように、血液出口部7Oを装着した箇所は、上部U側(U-side)から下部D側(D-side)に向けて、上部側ハウジング2/U⇒上部側の第2延長部3L/DEU⇒血液入口部7I⇒下部側の第2延長部3L/DED⇒下部側ハウジング2/Dの順で固定している。
末端D側領域(DE-side Area)においては、上部側(U-side)の第2血液処理部材5/DEUは、上下一対の第2.1外枠体シート(3/DEUU、3/DEUD)の外枠体シール部3Sを介して上部側の第2延長部3L/DEUで固定している。
末端DE側領域(DE-side Area)においては、下部側(D-side)の第2血液処理部材5/DEDは、上下一対の第2.2外枠体シート(3/DEDU、3/DEDD)の外枠体シール部3Sを介して下部側の第2延長部3L/DEDで固定している。
【0120】
基端PE側領域の第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)の末端DE側と末端DE側領域の第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の基端PE側の固定は
図15に示すように、以下のごとくして行われている。すなわち
下側の第1.1外枠体シート3/PEUDと上側の第1.2の外枠体シート3/PEDUの末端DE側の外枠体シール部3Sと、
下側の第2.1外枠体シート3/DEUDと上側の第2.2の外枠体シート3/DEDUの基端PE側の外枠シール部3Sを介して固定している(
図16、
図21も参照。)。
【0121】
基端PE側領域(PE-side Area)における血液入口部7Iの末端DE側は、
図14に示すように、基端側第1血液流入室2IR/PEの内部まで差し込んでいる。
血液入口部7Iは最末端DE側の入口開口7IOよりも基端PE側寄りに入口側孔8Iを形成している。この点は、Type I、IIと同様である。
入口側孔8Iは基端側第1血液流入室2IR/PE内で基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)の内側濾過部(5FI/PEU、5FI/PED)の基端PE側の近傍に形成している。入口側孔8Iは二箇所でもよいが三箇所ないし四箇所形成しても良い。この点も、Type I、IIと同様である。
【0122】
(側孔8の機能)
Type I、IIについて述べたのと同様に、血液入口部7Iの入口開口7IOのみから血液が流入させる場合、上部側の血液処理部材5/PEUと下部側の血液処理部材5/PEDの圧迫によって血液入口部7Iの末端DE側が潰れ、血液流路が確保できなくなることが懸念されるが、もし血液入口部7Iの末端DE側が閉鎖状に潰れても、入口側孔8Iを設けておくことにより、当該入口側孔8Iから安定して血液を流入させることができる。
一方、末端DE側の血液出口部7Oの基端PE側は、末端側第2血液流入室2IR/DEの内部まで差し込んでいる。
血液出口部7Oは最基端PE側の開口7OOよりも末端DE側寄りに出口側孔8Oを形成している。
出口側孔8Oは末端側第2血液流入室2IR/DE内で末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の内側濾過部(5FI/DEU、5FI/DED)の末端DE側の近傍に形成している。出口側孔8Oは二箇所でもよいが三箇所ないし四箇所形成しても良い。この点はType I、IIと同様である。
【0123】
血液出口部7Oの出口開口7OOのみから血液を流出させる場合、上部側の血液処理部材5/DEUと下部側の血液処理部材5/DEDの圧迫によって血液出口部7Oの基端PE側が潰れ、血液流路が確保できなくなることが懸念されるが、もし血液出口部7Oの基端PE側が閉鎖状に潰れても、出口側孔8Oを設けることにより、当該出口側孔8Oから安定して血液を流出させることができる。
【0124】
(血液処理器101(Type III)のハウジング2の内部構造)
さらにハウジング2の内部構造について詳述する。
基端PE側領域(PE-side Area)における一対の第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)は各々の外縁を、一対の第1外枠体シート(3/PEU、3/PED)の内縁に固定し、当該一対の第1外枠体シート(3/PEU、3/PED)の外縁はハウジング2に固定している。
一方、末端DE側領域(DE-side Area)における一対の第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)は各々の外縁を、一対の第2外枠体シート(3/DEU、3/DED)の内縁に固定し、当該第2外枠体シート(3/DEU、3/DED)の外縁は、ハウジング2に固定している。
【0125】
基端PE側領域(PE-side Area)において、上部側(U-side)の血液処理部材5/PEUの下部D側と、下部側(D-side)の血液処理部材5/PEDの上部U側との間で、ハウジング2の長手方向の略中心、すなわち血液入口部7Iの末端DE側から血液出口部7Oの基端PE側を直列に結ぶライン(領域)(「流路形成領域」)は空間となり、当該空間は基端PE側領域(PE-side Area)における血液流入室2IR/PEとなっている。
【0126】
末端DE側領域(DE-side Area)において、上部側(U-side)の血液処理部材5/DEUの下部D側と下部側(D-side)の血液処理部材5/DEDの上部U側との間で、ハウジング2の長手方向の略中心、すなわち血液入口部7Iの末端DE側から血液出口部7Oの基端PE側を直列に結ぶライン(領域)(「流路形成領域」)は空間となり、当該空間は末端DE側領域(D-side Area)における血液流入室2IR/DEとなっている。
【0127】
上部側ハウジング2/Uと下部D側ハウジング2/Dの内周と、
上部側の血液処理部材(5/PEU、5/DEU)と下部側の血液処理部材(5/PED、5/DED)の外周(外側濾過部5FO/PEU、5FO/PED、5FO/DEU、5FO/DED)との間は、空間となり、当該空間は血液流出室(2OR/PEU、2OR/PED、2OR/PES、2OR/DEU、2OR/DED、2OR/DES)となっている(
図14参照)。
血液入口部7Iは、基端PE側領域(PE-side Area)の第1血液流入室2IR/PEと連通し、血液出口部7Oは末端DE側領域(D-side Area)の第2血液流入室2IR/DEと連通している(
図14参照)。
【0128】
(血液処理器101(Type III)の血液の流れ))
次に実際の使用状況における血液処理器101の血液の流れについて説明する。
図22(
図14の符号も参照)に例示するように、基本的には血液処理器1、1´と同様に、血液処理器101においても、その基端PE側を上、末端DE側を下にして、自然落下(重力落差)により血液を流す。
血液は血液入口部7Iの基端PE側からその末端DE側の入口開口部7IO、入口側孔8Iを経て基端PE側領域の血液流入室2IR/PE内に流入する。当該血液流入室2IR/PE内は、基端PE側領域における血液の流入圧により陽圧となる。
当該基端PE側領域における血液流入室2IR/PE内の血液はさらに陽圧と重力により押されて、基端PE側領域の血液処理部材5/PEU、5/PEDの内側濾過部5FI/PEU、5FI/PEDから外側濾過部5FO/PEU、5FO/PEDを経て、基端PE側領域の血液流出室2OR/PEU、2OR/PED、2OR/PES内に移動する(2OR/PESについては
図13、
図21参照。)。
【0129】
当該血液流出室2OR/PEU、2OR/PED、2OR/PES内の血液は、陽圧と重力により、末端DE側領域の血液流出室2OR/PED、2OR/PESに移動する。
当該血液流出室2OR/PED、2OR/PES内の血液は、陽圧と重力により、末端DE側領域の血液処理部材5/DEU、5/DEDの外側濾過部5FO/DEU、5FO/DEDから内側濾過部5FI/DEU、5FI/DEDを経て、末端側DE側領域における血液流入室2IR/DE内に流入する。
当該末端DE側領域における血液流入室2IR/DE内の血液は、出口開口7OO、出口側孔8Oを経て血液出口部7Oより外に排出される。
【0130】
以上のようにTypeIIIの血液処理部材(5/PEU、PED、DEU、DED)はその有効濾過面積を、Type I-IIよりもさらに大きく確保している。すなわちTypeIIIの血液処理部材(5/PEU、PED、DEU、DED)はType I-IIの一対の血液処理部材(5/U、D)よりもさらに細分化して二対(四個)配置しているので、特許文献1から4及び第1、2の実施形態の血液処理器1、1´よりもさらに濾過時間を大幅に短縮することが期待でき、これに伴い白血球除去効率の改善も期待することができる。
【0131】
第3実施形態の血液処理器101(Type III)の血液処理部材5[基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)]の構成材料、材質、繊維径、重ね枚数、厚み、重ねる形態、積層方向、積層順序等並びにハウジング2、外枠体シート3の材質、血液入口部7I、血液出口部7Oの材質は、前記第1実施形態(Type I)、第2実施形態(Type II)の血液処理器1、1´の血液処理部材5と同様である。
なお第3実施形態で好ましい例は以下のとおりである。
【0132】
(Type IIIの好ましい実施態様)
Type IIIの血液処理部材5は基本的にはType I-IIと同じ不織布を複数枚重ねて所定の厚みとすること好ましい。この場合特に好ましくは、一対(二個)の基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)は、不織布の重ね枚数は基本的には3-20枚、好ましくは5枚から10枚程度とし、一対(二個)の末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)は、不織布の重ね枚数は10-40枚、好ましくは20枚から30枚程度にすることである。ここで基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)の平均繊維直径Dは比較的大きく例えば5.0μm以上10.0μm以下程度とし、末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の平均繊維直径Dは比較的小さく例えば1.0μm以上5.0μm未満程度とするものである。
このように構成することにより基端側第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)は、比較的大きな血液成分を除去するいわゆるプレフィルターとしての機能し、末端側第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)は本フィルターとして機能するようにすることができる。
【0133】
(第4実施形態の血液処理器201(Type IV))(
図23-31参照)
本発明の血液処理器201(Type IV)は、
図23から
図31に示すように、肉厚の可撓性シートを立体形状に加工した可撓性ハウジング2(以下、単にハウジング2と記載する)と当該ハウジング2内に装填される血液処理部材5とを有するものである。
前記ハウジング2は、立体形状に加工した上部U側のハウジング2/Uと立体形状に加工した下部D側のハウジング2/Dからなる。
上部側ハウジング2/Uと下部側ハウジング2/Dは、例えば通常の可撓性ハウジング(後述する比較例参照)に使用する可撓性シート(厚さ0.4mm前後)と比較して、より肉厚の可撓性ポリ塩化ビニルシートを立体加工することが好ましい。
図28に示すように、上部側ハウジング2/Uと下部側ハウジング2/Dにおいてその、外縁部2Fから内部領域2Iが隆起するように立体的に形成し、さらに下部側ハウジング2/Dは内部2Iに複数の突起Tを突設することを特徴とする。
立体加工する(立体形状に加工する)とは、例えば上部側ハウジング2/Uと下部側ハウジング2/Dの形状の型(溝、突起T等)を形成した金型等を使用して前記肉厚シートを、上部側ハウジング2/Uと下部側ハウジング2/Dの形状に加工することを意味する、
【0134】
上部側ハウジング2/Uと下部側ハウジング2/Dに使用する可撓性シートの厚さは例えば0.8mm以上から1.5mm程度以下のものが好適に使用できる。
このように下部側ハウジング2/Dは肉厚のものを使用することを特徴とするが、その厚さは、大きくするほど、血液流出室2ORが陰圧になるときに変形しにくくなるので好ましい。すなわちこの厚みの下部側ハウジング2/Dであれば、その内壁が、外部側濾過部5FO方向に変形して移動しにくくなるので好ましい。
ただし、下部側ハウジング2/Dの厚みをあまり厚くしすぎて、例えば1.5mmを超えるよう厚みになると、前記のように立体加工が困難となるので好ましくない。
また、一方、厚みが薄すぎて例えば0.8mm未満では可撓性の材質のため前記陰圧による変形に耐えられないので好ましくない。
【0135】
血液処理器201に血液を流す実際の操作の過程で
図29-30示す血液流出室2OR側が陰圧になるので、下部側ハウジング2/Dの厚さは、
立体加工が許容できる最大厚さ:1.5mm、血液流入口2IR側は陰圧にならないので前記下限の厚さ:0.8mmとすると、上部側ハウジング2/Uの厚さ[=d(U)]と下部側ハウジング2/Dの厚さ[=d(D)]の関係は、上部側ハウジング2/Uの厚さ:100に対して、下部側ハウジング2/Dの厚さは100以上(実質的に同じ厚み)から188(約二倍)以下に形成する。すなわち、以下のとおりである。
d(D)/d(U):[(100/100)~(188/100)]
【0136】
ハウジング2の基端PE側で、かつ上部U側の一端部に、管状の血液入口部7Iを装着し、ハウジング2の末端DE側で、かつ下部D側の一端部に、管状の血液出口部7Oを装着している。
管状の血液入口部7Iと血液出口部7Oは、前記可撓性ハウジング2よりもより硬質の樹脂からなる点はType I-IIIと同じである。
血液処理部材5は、複数枚の不織布を積層して形成している点もType I-IIIと同じである。
【0137】
さらに下部側ハウジング2/Dの血液処理部材5の外側濾過部5FOに対抗する面には、下部D側から上部U側にむけて立ち上がる突起T(「リブ」という場合がある)を形成している。突起Tの内部は
図29等に示すように空洞となっており、下部D側から上部U側にむけて、いわゆる「凹部」(または「溝」という場合がある。)となっている。
突起Tは高さtが3mm以上から10mm以下に形成する程度に形成することが好ましい。
突起Tの高さtがあまり低く例えば3mm未満では血液流出室2ORが陰圧になった時に下部側ハウジング2/Dの外側濾過部5FOに密着するのを阻止する効果が十分ではない。
一方高さtがあまり大きく例えば10mmを超えると大き過ぎて下部側ハウジング2/Dの内部2I側に形成することが困難となる。
なお、突起Tは、立体加工と同時に形成することができる。
【0138】
突起Tの形状は上部U(または下部D)方向から見て、図に例示するように略円形の他に、略楕円、略角形(三角、四角、五角、六角)、星型等に形成しても良い。
各突起Tの配列は、
図24に示すように、基端PE-末端DE方向に略直列に一定の配置間隔で規則的に配置し、第1側部S1-第2側部S2方向にも略直列に一定の配置間隔で規則的に配置するのが好ましい。このように突起を配列することにより
図31のように血液流出室2RO内に流入した血液は、一定の配置間隔で規則的に配置した各突起Tの隙間を経て、血液出口部7Oから速やかに排出することができる。
上記のように突起Tは、基本的に碁盤目のように規則的に配置するが、具体的には各突起Tの配置間隔L(第1側部S1-第2側部S2方向、基端PE-末端DE方向の外縁部の間隔)は20mm以上から30mm程度以下にすることが好ましい。
突起T間の間隔Lが狭すぎて、例えば20mm未満では、下部側ハウジング2/Dの内部2I側に形成することが困難となる。血液の血液出口部7O方向への流れを妨げるので好ましくない。
一方、突起T間の間隔Lが例えば30mmを超えるように大きい場合は、下部側ハウジング2/Dの内部2I側へ形成する際に間隔があきすぎて、血液流出室2ORが陰圧になった時に下部側ハウジング2/Dの内壁が外側濾過部5Oに密着するのを阻止する効果が十分ではない。
【0139】
また前記各突起Tと同様の突起Tは、前記と同様にして上部側ハウジング2/Uの内部2I側にも形成することができる。これにより血液流入室2IR内の血液流路は基端PE側から末端DE側にわたって広く確保することができるので、血液入口7Iから血液流入室2IR内に流入した血液は速やかに血液処理部材5で濾過することができる。このためより一層濾過時間を短縮することができる。
【0140】
突起Tの配置数は、
図25、
図31では基端PE-末端DE方向と第1側部S1-第2側部S2方向にそれぞれ3個、全体で9個配置しているが、これらに限定しない。
その他に基端PE-末端DE方向に2から4個、第1側部S1-第2側部S2方向に2から4個、全体で4個から16個配置してもよい。
【0141】
(血液処理器201(Type IV)の製造工程の一例)
以下、血液処理器201の一実施例の形態について、製造工程の一実施例とともに説明する。
まず、血液処理部材5と外枠シート3を、
図28に図示したように配置して固定する。
さらに詳述すれば、血液処理部材5は、外縁を上部外枠シート3/Uと下部側外枠シート3/Dの内縁の間に固定する。
これらの固定は、Type I-IIIの場合と同様ヒートシール等による外部加熱、高周波、超音波による内部加熱等による溶着により行うことができる。
以下、前記した血液処理部材5と外枠体シート3の固定部は、以下「シール部5S」と称する場合がある。また、血液処理部材5と外枠体シート3の内側の非固定部は、濾過部5Fと称する場合がある。さらに血液流入室2IR側の面を内側濾過部5FI、血液流出口2OR側の面を外側濾過部5FOと称する場合がある。
また上部側外枠体シート3/Uと下部D側の外枠体シート3/Dの外縁も固定している。これらの固定部は、以下「外枠体シール部3S(3S/U、3S/D)」と称する場合がある。
【0142】
また上部側外枠体シート3/Uの基端PE側に上部側延長部3L/Uを形成し、下部側外枠体シート3/Uの末端DE側に下部側延長部3L/Dを形成している。
これらの上部側延長部3L/Uと上部側ハウジング2/Uとの間に血液入口部7Iを固定する。また下部側延長部3L/Dと下部側ハウジング2/Dとの間に血液出口部7Oを固定する(
図28参照)。
【0143】
血液処理部材5と外枠シート3との固定部(シール部5S)は、当該シール部5Sの内側の非固定部(濾過部5F)と比較して、血液処理部材5が圧縮された状態となる。
続いて上部U側から下部D側に向けて、以下のように配置する。
基端PE側領域では、上部側ハウジング2/U、血液入口部7I、上部側延長部3L/U及び下部側ハウジング2/Dの順に配置する。また、末端DE側領域では、上部側ハウジング2/U、下部側延長部3L/D、血液出口部7O及び下部側ハウジング2/Uの順に配置する。
【0144】
続いて第1側部S1側と第2側部S2側のコーナーCR/S1、CR/S2をヒートシールにより固定する。(当該固定部は、以下「コーナーシール部SCR」と称する場合がある。)
【0145】
続いて基端PE側領域では、上部側ハウジング2/U、血液入口部7I、上部側延長部3L/U及び下部側ハウジング2/D、末端DE側領域では、上部側ハウジング2/U、下部側延長部3L/D、血液出口部7O及び下部側ハウジング2/U、さらにこれらの周囲(縁部、近傍)を、ヒートシールにより固定する。
当該固定部は以下「基端側シール部2SPE、末端側シール部2SDE」と称する場合がある(
図23-25参照)。
前記基端PE側と前記末端DE側は同時に固定しても良いし、前記基端PE側を先に固定した後、前記末端DE側を固定しても良いし、前記末端DE側を先に固定した後、前記基端PE側を固定しても良い
【0146】
続いて、血液処理部材5の4つの辺(斜辺)の外縁の外枠シール部3S/U、3S/Dを上部側ハウジング2/Uと下部側ハウジング2/Dに、ヒートシール等により固定する。当該固定部は以下「シール部2S」と称する場合がある。以上のようにして、
図29の血液処理器201を完成する。
【0147】
(血液処理器201の形態)
さらに血液処理器201の形態について説明する。
例えば
図29に示すように、基端PE側においては、血液入口部7Iを装着した箇所は、上部U側から下部D側に向けて、上部側ハウジング2/U⇒血液入口部7I⇒上部側延長部3L/U⇒下部側ハウジング2/Dの順で固定している。
血液処理部材5の基端PE側領域は、上部側の外枠体シート3/Uの外枠体シール部3S/Uを介して上部側延長部3L/Uで固定している。
【0148】
末端DE側領域においては、血液出口部7Oを装着した箇所は、上部U側から下部D側に向けて、上部側ハウジング2/U⇒下部側延長部3L/D⇒血液出口部7O⇒下部側ハウジング2/Dの順で固定している。
血液処理部材5の末端DE側領域は、下部側外枠体シート3/Dの外枠体シール部3S/Dを介して下部側延長部3L/Dと固定している。
【0149】
血液入口部7Iの末端DE側領域は、ハウジング2の血液流入室2IRの内部まで差し込まれている。血液出口部7Oは、固定部(末端側シール部2S/DE側)の近傍に出口側孔8Oを形成している。出口側孔8Oは二箇所でもよいが三箇所ないし四箇所形成しても良い。出口側孔8Oを形成することにより、血液流出室2ORの末端DE側から速やかに血液を流出させることができる。
【0150】
(ハウジング2の内部構造)
さらにハウジング2の内部構造について詳述する。
上部側ハウジング2/Uの内周と血液処理部材5の内側濾過部5FIとの間の空間は
図29-30に示すように、血液流入室2IRとなっている。
下部側ハウジング2/Dの内周と血液処理部材5の外側濾過部5FOとの間の空間は、同じく
図29-30に示すように、血液流出室2ORとなっている。
血液入口部7Iは血液流入室2IRと連通し、血液出口部7Oは血液流出室2ORと連通している。
下部側ハウジング2/Dの内側に前記した複数の突起Tを形成している。
【0151】
(血液処理器201(Type IV)の血液の流れ)
次に血液処理器201(Type IV)の血液の流れについて説明する。
図30、
図31に例示するように、血液は血液入口部7Iの基端PE側から末端DE側の入口開口7IOを経て血液流入室2IR内に流入する。
血液流入室2IR内の血液は、内側濾過部5FIから外側濾過部5FOを通過して、血液流出室2OR内に移動する。
【0152】
血液流出室2OR内が陰圧になっても下部側ハウジング2/Dの内壁は、血液処理部材5の外側濾過部5OF側に接触する方向に変形する度合いが少ない。また外側濾過部5OF側に接触する方向に変形しようとしても、下部側ハウジング2/Dの内壁の外側濾過部5OF側に突設した突部Tにより、外側濾過部5OF側への接触を妨げられる。
これにより血液流出室2OR内の血液流路を十分に確保することができる。また血液出口部7Oの基端PE側の出口開口7OO近傍の血液流路も狭くなったり、塞がることがないので、これにより濾過時間を大幅に短縮することができる。
【0153】
さらに血液出口部7Oの出口側孔8(末端側シール部2SDE近傍に形成)により血液の流出をさらに促進することができ、より一層濾過時間を短縮することができる。
第4実施形態(Type IV)の血液処理器201の血液処理部材5の構成材料、材質、繊維径、重ね枚数、厚み、重ねる形態、積層方向、積層順序等並びにハウジング2、外枠体シート3の材質、血液入口部7I、血液出口部7Oの材質は、前記第1実施形態(Type I)、第2実施形態(Type II)の血液処理器1、1´の血液処理部材5と同様である。
以下、実施例により、血液処理器1(Type I)、血液処理器1´(Type II)、血液処理器101(Type III)の具体的な実施態様を示す。
【0154】
[実施例B]
第1実施形態の血液処理器1(Type I)、血液処理器1´(Type II)、血液処理器101(Type III)の濾過性能を比較するために、濾過性能試験を行った。
【0155】
(実施例2) (Type I)
第1実施形態の血液処理器1(Type I)として実施例1と同様にして製造したものを使用した。
【0156】
濾過試験の血液としては実施例1と同様にして牛血液を使用し、実施例1と同様に濾過試験を行ったところ、400mLの血液の濾過終了に要した時間θ=16.0分であった。
【0157】
(実施例3) (Type II)
実施例3は、第2実施形態の血液処理器1´(Type II)を使用した試験であり、第1実施形態の血液処理器1(実施例1)[
図3から
図8の記載に従って製造したもの]を180度反転させて、血液入口部7I(7I´)と血液出口部7O(7O´)を入れ替えて使用する以外は実施例1と同様にして牛血液を使用した濾過試験を行った。
400mLの血液の濾過終了に要した時間θ=18.0分であった。
【0158】
(実施例4) (Type III)
実施例4は、第3実施形態の血液処理器101(Type III)についての試験であり、
図15から
図20の記載に従って以下のようにして製造したものを使用した。
血液処理器101における基端側領域(PE-side Area)の一対(二個)の第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)は、ポリエチレンテレフタレート製の不織布(厚さd=120~130μm 、繊維径l=5~10.0μm 、一辺の長さL=72mm×72mm)をそれぞれ5枚(n=5)重ねたものを使用した。(厚み合計Td=600~650μm)。
【0159】
また、末端側領域(DE-side Area)の一対(二個)の第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)は、ポリエチレンテレフタレート製の不織布(厚さd=120~130μm) 、繊維径l=1~4μm 、一辺の長さL=72mm×72mm)をそれぞれ30枚(n=30)重ねたものを使用した。(厚み合計Td=3.6~3.9mm)。
各部材を外枠体シート3を適用して高周波溶着機を使用してヒートシールにより、固定した。
【0160】
血液処理部器101(Type III)は、以下のように作製した。基端側領域(PE-side Area)の一対(二個)の第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と末端側領域(DE-side Area)の一対(二個)の第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)をそれぞれ軟質ポリ塩化ビニル製外枠体シート3に固定し、当該外枠体シート3をポリ塩化ビニル製の可撓性ハウジング2に固定した。対向して配設された一対の基端側第1血液処理部材5/PEと一対の末端側第2血液処理部材5/DEは、その内部に血液流入室(2IR/PE、2IR/DE)を形成し、また当該一対の血液処理部材(5/PE、5/DE)の外部(外方)と可撓性ハウジング(2/U、2/D)の間には血液流出室(2OR/PE、2OR/DE)を形成した。
【0161】
図14に示すように、血液処理部材(5/PE、5/DE)を挟んで、可撓性ハウジング(2/U、2/D)内を血液流入室2/IRと血液流出室2/ORとに区画し、血液入口部7Iは第1血液流入室2IR/PEの基端側に装着し、血液出口部7Oは第2血液流入室2IR/DEの末端側に装着した。以上の固定、装着はすべて高周波溶着機を使用したヒートシールにより行った。
【0162】
濾過試験の血液としては実施例1と同様にして牛血液を使用し、実施例1と同様に濾過試験を行ったところ、400mLの血液の濾過終了に要した時間θ=15.7分であった。
【0163】
(結果及び考察)
実施例2((Type I))から実施例4(Type III)において、当初濾過時間θの予想は早い(短い)順に、実施例4、実施例3及び実施例2と想定した。
しかしながら、結果は、濾過時間θは早い(短い)順に、実施例4:θ=15.7分、実施例2:θ=16.0分、実施例3:θ=18分であった。
実施例4(血液処理器101)(Type III)においては、基端側領域(PE-side Area)の第1血液処理部材(5/PEU、5/PED)と末端側領域(DE-side Area)の第2血液処理部材(5/DEU、5/DED)の構成(枚数等)についてさらに検討をすすめれば、さらに濾過時間θを早く(短く)することが可能であると想定される。
【0164】
理論上は実施例3(Type II)のほうが実施例2(Type I)よりも血液濾過に対して有利と想定されるため、実施例3(Type II)において、(可撓性)ハウジング2の膨らみを抑える工夫(例えばハウジングの硬度の向上等)により、実施例2(Type I)よりもさらにろ過時間θを短縮することが可能であると期待できる。
ここで、ハウジングの硬度の向上等とは、例えば前記第4実施形態の血液処理器201(Type IV)のように、血液処理器1、1´、101においても、その上部(U側)第1ハウジング(2/U)と下部(D側)第2ハウジング(2/D)について、
(a)厚みを大きく形成すること、
(b)外縁部(2F)から内部(2I)が隆起するように立体的に形成すること、
(c)下部(D側)第2ハウジング(2/D)の内部(2I)または、第2ハウジング(2/D)及び前記上部(U側)第1ハウジング(2/U)の内部(2I)に複数の突起(T)を突設すること、等の手段を適用することである。
以下、実施例により血液処理装置201(Type IV)の具体的な実施態様を示す。
【0165】
[実施例C]
(実施例5) (Type IV)
実施例5の血液処理器として、以下のようにして、製造した血液処理器201(Type IV)を使用した。
具体的には、血液処理部材5は、ポリエチレンテレフタレート製の不織布(厚さd=130μm 、繊維径l=1.8μm 、一辺の長さLs=66mm×66mm)を60枚(n=60)重ねたものを使用した。(処理部材の厚み合計Td=7.8mm)
【0166】
上部側ハウジング2/Uは厚さが0.8mmの可撓性シート、下部側ハウジング2/Dは厚さが1.0mmの可撓性シートをそれぞれ立体加工することにより作製した。下部側ハウジング2/Dの突起Tは、立体加工と同時に形成した。すなわち、
図25に示したように、高さ(t)が5mm、形状は円形、配置個数(N)は9箇、配置間隔(L)は25mmとして形成した。同様に上部側ハウジング2/Uにも同様の高さ、形状、
、配置個数の突起Tを形成した。
【0167】
血液処理部器201(Type IV)は、以下のように作製した(
図28参照)。上記血液処理部材5を軟質ポリ塩化ビニル製外枠体シート3に固定し、当該外枠体シート3を上下一対のポリ塩化ビニル製の可撓性ハウジング(2/U、2/D)に固定した。
血液処理部材5を挟んで、当該可撓性ハウジング(2/U、2/D)内を血液流入室2IRと血液流出室2ORとに区画し、血液入口部7Iは血液流入室2IRの基端側に装着し、血液出口部7Oは血液流出室2ORの末端側に装着した。
各部材の固定は、高周波溶着機を使用したヒートシールにより行った。
【0168】
濾過試験の血液としては実施例1と同様に牛血液を使用し、実施例1と同様に濾過試験を行ったところ400mLの濾過終了に要した時間θ=29.5分であった。
【0169】
(比較例2)
比較例2の血液処理器は、比較例1と同様に製作し同様の形態のものを使用した。
なお上部側ハウジング2/Uとしては厚さが0.4mmの可撓性シート、下部側ハウジング2/Dは厚さが0.4mmの可撓性シートをそれぞれ立体加工することなしにそのまま使用した。
【0170】
濾過試験の血液としては実施例1と同様に調整した牛血液を使用し同様に試験を行ったところ400mLの濾過終了に要した時間θ=37分であった。
【0171】
(結果の考察)
実施例5と比較例2の結果を比較考察するに、比較例2においては血液濾過終了までθ=37分かかったが、実施例5においてはθ=29.5分で血液濾過が終了した。これにより血液処理器201(Type IV)の具体的な実施の態様である実施例5は血液流出室2ROが血液濾過時に陰圧になっても、血液流出室2RO内の血液流路が比較例よりも広く確保でき、血液濾過時間を短縮できることが確認できた。
【符号の説明】
【0172】
1、1´、101、201 血液処理器
2 (可撓性)ハウジング
2/U 上部側(第1)ハウジング
2/D 下部側(第2)ハウジング
SH 可撓性シート
SH/U 上部側(第1)可撓性シート
SH/D 下部側(第2)可撓性シート
2I 内部(領域)
2F 外縁部
2.1 (内側)第1血液室
2.2 (外側)第2血液室
2IR 血液流入室
2IR/U、2IR´/U 上部側血液流入室
2IR/D、2IR´/D 下部側血液流入室
2IR/PE 基端側(第1)血液流入室
2IR/DE 末端側(第2)血液流入室
2OR、2OR´ 血液流出室
2OR/U、2OR´/U 上部側血液流出室
2OR/D、2OR´/D 下部側血液流出室
2OR/PE 基端側(第1)血液流出室
2OR/DE 末端側(第2)血液流出室
2OR/PEU 基端側-上部側(第1)血液流出室
2OR/PED 基端側-下部側(第1)血液流出室
2OR/PES 基端側-側部側(第1)血液流出室
2OR/DEU 末端側-上部側(第2)血液流出室
2OR/DED 末端側-下部側(第2)血液流出室
2OR/DES 末端側-側部側(第2)血液流出室
2S ハウジングシール部(斜辺シール部)
2SPE 基端側シール部
2SDE 末端側シール部
3 外枠体シート
3/U 上部側(第1)外枠体シート
3/D 下部側(第2)外枠体シート
3/UU 上部側の上(第1.1)外枠体シート
3/UD 上部側の下(第1.2)外枠体シート
3/DU 下部側の上(第2.1)外枠体シート
3/DD 下部側の下(第2.2)外枠体シート
3/PE 基端側(第1)外枠体シート
3/DE 末端側(第2)外枠体シート
3/PEU 基端側-上部側(第1.1)外枠体シート
3/PED 基端側-下部側(第1.2)外枠体シート
3/DEU 末端側-上部側(第2.1)外枠体シート
3/DED 末端側-下部側(第2.2)外枠体シート
3/PEUU 基端側-上部側の上(第1.1)外枠体シート
3/PEUD 基端側-上部側の下(第1.1)外枠体シート
3/PEDU 基端側-下部側の上(第1.2)外枠体シート
3/PEDD 基端側-下部側の下(第1.2)外枠体シート
3/DEUU 末端側-上部側の上(第2.1)外枠体シート
3/DEUD 末端側-上部側の下(第2.1)外枠体シート
3/DEDU 末端側-下部側の上(第2.2)外枠体シート
3/DEDD 末端側-下部側の下(第2.2)外枠体シート
3S 外枠体シール部
3S/U 上部側(第1)外枠体シール部
3S/D 下部側(第2)外枠体シール部
3L 延長部
3L/U 上部側(第1)延長部
3L/D 下部側(第2)延長部
3L/PE 基端側(第1)延長部
3L/DE 末端側(第2)延長部
3L/PEU 基端側-上部側(第1)延長部
3L/PED 基端側-下部側(第1)延長部
3L/DEU 末端側-上部側(第2)延長部
3L/DED 末端側-下部側(第2)延長部
5 血液処理部材
5/U 上部側(第1)血液処理部材
5/D 下部側(第2)血液処理部材
5/PEU、5/DEU 上部側(第1)血液処理部材
5/PED、5/DED 下部側(第2)血液処理部材
5/PE 基端側(第1)血液処理部材
5/DE 基端側(第2)血液処理部材
5/PEU 基端側-上部側(第1)血液処理部材
5/PED 基端側-下部側(第1)血液処理部材
5/DEU 末端側-上部側(第2)血液処理部材
5/DED 末端側-下部側(第2)血液処理部材
5S シール部
5F 濾過部
5FI、5FI´ 内側(内部)濾過部
5FI/U、5FI´/U 上部側(第1)内側濾過部
5FI/D、5FI´/D 下部側(第2)内側濾過部
5FI/PE 基端側(第1)内側濾過部
5FI/DE 末端側(第2)内側濾過部
5FI/PEU 基端側-上部側(第1)内側濾過部
5FI/PED 基端側-下部側(第1)内側濾過部
5FI/DEU 末端側-上部側(第2)内側濾過部
5FI/DED 末端側-下部側(第2)内側濾過部
5FO、5FO´ 外側(外部)濾過部
5FO/U、5FO´/U 上部側(第1)外側濾過部
5FO/D、5FO´/D 下部側(第2)外側濾過部
5FO/PE 基端側(第1)外側濾過部
5FO/DE 末端側(第2)外側濾過部
5FO/PEU 基端側-上部側(第1)外側濾過部
5FO/PED 基端側-下部側(第1)外側濾過部
5FO/DEU 末端側-上部側(第2)内側濾過部
5FO/DED 末端側-下部側(第2)内側濾過部
7I、7I´ 血液入口部
7IO、7IO´ 入口開口
7O、7O´ 血液出口部
7OO 出口開口
8 側孔
8I 入口側孔
8O 出口側孔
CR コーナー
SCR コーナーシール部
DE 末端
PE 基端
S1 第1側部
S2 第2側部
U 上部
D 下部
CR コーナー
T 突起
t 突起の高さ
L 突起の配置間隔