IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7036733伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置
<>
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図1
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図2
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図3
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図4
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図5
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図6
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図7
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図8
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図9
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図10
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図11
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図12
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図13
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図14
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図15
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図16
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図17
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図18
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図19
  • -伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
A61F13/49 312Z
A61F13/49 413
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018544705
(86)(22)【出願日】2017-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2017032318
(87)【国際公開番号】W WO2018070150
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2016199926
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】腰島 美和
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156949(WO,A1)
【文献】特開2010-260323(JP,A)
【文献】特開2012-120775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する一対のシート1,2と、
前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、互いに離間して配置された複数の弾性部材Fと、
前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が接着剤を介することなく互いに溶着構造で接合され、かつ、前記弾性部材Fを保持し、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する方向Dpに延び、前記弾性部材Fと交差する部位において前記伸縮方向Dfに互いに離間した複数の接合部3と、
前記弾性部材Fが収縮している状態において前記複数の接合部3の間に現れる複数の襞Pとを備え、
前記接合部3の前記伸縮方向Dfの幅W3が0.2mm以上1.0mm未満に設定されており、
ここにおいて、前記襞Pは、前記複数の接合部3同士の間において前記複数の弾性部材Fを含む仮想の平面Vpに対しに前記一対のシート1,2が突出して形成され、
前記複数の接合部3のうちの互いに隣り合う接合部3同士の間と前記複数の弾性部材Fのうちの互いに隣り合う弾性部材F同士の間で定義された領域α1において、前記一対のシート1,2の互いに対面する非接着の部位同士が互いに同一の方向に突出して、前記複数の各襞Pが形成されている、伸縮シート。
【請求項2】
請求項1において、前記各接合部3において前記一対のシート1,2の少なくとも一方が前記弾性部材Fに溶着構造で接合されている、伸縮シート。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、前記複数の接合部3は互いに平行な直線状に形成され、
前記複数の襞Pは前記互いに平行な接合部3に沿って、互いに平行な直線状に形成されている、伸縮シート。
【請求項4】
請求項1もしくは2において、前記複数の接合部3は前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する第1方向D1に延びる複数の第1接合部31と、前記伸縮方向Dfおよび第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる複数の第2接合部32とを備え、
前記領域α1は前記弾性部材F、前記第1接合部31および第2接合部32で定義される、伸縮シート。
【請求項5】
請求項1に記載の伸縮シートを有する着用物品であって、前記着用物品は着用者の肌に接する肌面と、その反対側の非肌面とを有し、
前記非肌面において前記襞Pが突出している、着用物品。
【請求項6】
請求項1に記載の伸縮シートを有する着用物品であって、前記着用物品は着用者の肌に接する肌面と、その反対側の非肌面とを有し、
前記肌面において前記襞Pが突出している、着用物品。
【請求項7】
伸縮シートの製造装置であって、前記伸縮シートは、
第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する一対のシート1,2と、
前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、互いに離間して配置された複数の弾性部材Fと、
前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が接着剤を介することなく互いに溶着構造で接合され、かつ、前記弾性部材Fを保持し、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する方向Dpに延び、前記弾性部材Fと交差する部位において前記伸縮方向Dfに互いに離間した複数の接合部3と、
前記弾性部材Fが収縮している状態において前記複数の接合部3の間に現れる複数の襞Pとを備え、
前記接合部3の前記伸縮方向Dfの幅W3が0.2mm以上1.0mm未満に設定されており、
製造装置は、
前記一対のシート1,2の間に前記弾性部材Fが配置された状態となるように、前記一対のシート1,2および前記弾性部材Fを搬送するアンビルロール50と、
前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに溶着すると共に前記一対のシートで前記弾性部材を保持させる溶着装置70とを備え、
前記アンビルロール50は、
前記アンビルロール50の外周面51に形成され前記アンビルロール50の幅方向Sに延びる突条52を複数備え、
前記突条52の各々は、前記アンビルロール50の周方向に延び、前記一対のシート1,2の一方の一部と前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する搬送溝Gを規定し、
前記突条52の前記弾性部材Fが搬送される方向の幅W2が0.2mm以上1.0mm未満に設定されており、
ここにおいて、
前記溶着装置は前記一対のシート1,2および弾性部材Fを介して前記突条52に対向し超音波エネルギーが付与される超音波ホーン71を有し、
前記シートの流れ方向に沿った前記ホーン71の幅W1が前記突条52の幅W2よりも大きく、
ここにおいて、前記一対のシート1,2は、前記アンビル50に接する第1シート1と、前記ホーン71に接する第2シート2であり、
前記第2シート2の搬送方向の張力を前記第1シート1の搬送方向の張力よりも高くするテンションローラTRを前記ホーン71の上流側に備える、伸縮シートの製造装置。
【請求項8】
請求項7において、前記一対のシートのうちアンビル50に接するシートを昇温させる加熱装置59を更に備える、伸縮シートの製造装置。
【請求項9】
請求項7において、前記アンビルロール50に前記弾性部材Fを案内しながら導入する導入装置60を更に備え、
前記導入装置60は、
前記複数の弾性部材Fが巻かれ前記複数の弾性部材Fを前記アンビルロール50の前記各搬送溝Gに案内する案内溝G2を複数本有する案内ロール62と、案内ロール62に前記弾性部材Fが巻かれた接触角度θの範囲を規定する規定ロール61とを備える、伸縮シートの製造装置。
【請求項10】
請求項9において、前記複数本の搬送溝Gの伸びる方向に沿って、前記複数の突条間に断続的または連続的に、前記搬送溝Gとは別の搬送溝G9が設けられている、伸縮シートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮シートの構造として、2枚のシート間に複数本の弾性部材を挟み込み、弾性部材の伸縮方向と交差する方向に延びる接合部において、2枚のシート同士を溶着すると共に、2枚のシート間に弾性部材を固定した構造は公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】JP2014-198180 A(フロントページ)
【発明の概要】
【0004】
弾性部材の固定方法の1つとして、シートを加熱した状態でシートを弾性部材に押し付ける方法がある。弾性部材をシートにしっかりと固定するために接合部の幅を広くすると、広い接合範囲で面圧を大きくしてシートを加熱することになる。この場合、弾性部材が過剰に加圧、加熱されて破断するおそれがある。そのため、伸縮シートの歩留りや品質が低下し易いだろう。
【0005】
したがって、本発明の目的は、接合部の固定不良や破断を抑制して、商品の歩留りや品質を向上させることのできる伸縮シート、着用物品および伸縮シートの製造装置を提供することである。
【0006】
すなわち、本発明の伸縮シートは、第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する一対のシート1,2と、
前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、互いに離間して配置された複数の弾性部材Fと、
前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が接着剤を介することなく互いに溶着構造で接合され、かつ、前記弾性部材Fを保持し、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する方向Dpに延び、前記弾性部材Fと交差する部位において前記伸縮方向Dfに互いに離間した複数の接合部3と、
前記弾性部材Fが収縮している状態において前記複数の接合部3の間に現れる複数の襞Pとを備え、
前記接合部3の前記伸縮方向Dfの幅W3が0.2mm以上1.0mm未満に設定されている。
【0007】
一方、本発明の伸縮シートの製造装置は、前記一対のシート1,2の間に前記弾性部材Fが配置された状態となるように、前記一対のシート1,2および前記弾性部材Fを搬送するアンビルロール50と、
前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに溶着すると共に前記一対のシートで前記弾性部材を保持させる溶着装置70とを備え、
前記アンビルロール50は、
前記アンビルロール50の外周面51に形成され前記アンビルロール50の幅方向Sに延びる突条52を複数備え、
前記突条52の各々は、前記アンビルロール50の周方向に延び、前記一対のシート1,2の一方の一部と前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する搬送溝Gを規定し、
前記突条52の前記弾性部材Fが搬送される方向の幅W2が0.2mm以上1.0mm未満に設定されている。
【0008】
本発明によれば、弾性部材は搬送溝に収容された状態で加圧される。しかし、接合部の幅や突条の幅が大きいと、前記搬送溝が長くなり、弾性部材が部分的に前記搬送溝からはみ出て過剰な圧力を受け易い。これに対し、前記幅が狭いことで前記搬送溝が短くなって、弾性部材が搬送溝内に収まり易く、過剰な圧力を逃すことで前記弾性部材の切断が防止されるだろう。
【0009】
また、弾性部材は一定速度で移動しており、そのため、個々の部分に着目すると、前記幅とは関係なく、一定時間だけ加熱される。しかし、前記幅が大きいと、加熱される部分が連続して長くなる。そのため、熱が蓄積されて、シートや弾性部材が過剰に加熱されるおそれがある。
【0010】
ここで、接合部3の伸縮方向の幅W3が0.2mm以上1.0mm未満とは、少なくとも弾性部材と交差する部位での接合部の幅W3が0.2mm以上1.0mm未満であって、弾性部材間においては、接合部3の長さ方向の過半(半分以上)の長さの部分について前記幅W3が0.2mm以上1.0mm未満であることを意味し、好ましくは、接合部3の長さ方向の大半(80%以上)の長さの部分について前記幅W3が0.2mm以上1.0mm未満に設定される。
【0011】
すなわち、接合部3の幅W3は、一部において1.0mm以上であってもよい。例えば、2条の接合部が互いに交差する場合、当該交差する部分の接合部3の幅W3は1.0mm以上であってもよい。
【0012】
一方、接合部3の幅W3は、一部において0.2mm未満であってもよい。例えば各接合部が長手方向に断続的に設けられている場合、前記幅が実質的に0mmである部分が生じるだろう。
【0013】
以上の接合部3の幅W3の概念は、突条の幅W2についても同様である。
【0014】
例えば、突条の幅W2が0.2mm以上1.0mm未満とは、少なくとも搬送溝が設けられた部位において突条の幅W2が0.2mm以上1.0mm未満であって、突条の長さ方向の過半(半分以上)の長さの部分について前記幅W2が0.2mm以上1.0mm未満であることを意味し、好ましくは、突条の長さ方向の大半(80%以上)の長さの部分について前記幅W2が0.2mm以上1.0mm未満に設定される。
【0015】
すなわち、突条の幅は一部において0.2mm未満であってもよいし、1.0mm以上であってもよい。
【0016】
一方、前記搬送溝の深さは、前記突条の高さと同じであってもよいし、突条の高さよりも小さくてもよいし、場合によっては、突条の高さよりも大きくてもよい。
【0017】
好ましくは、前記溶着装置は前記一対のシート1,2および弾性部材Fを介して前記突条52に対向し超音波エネルギーが付与される超音波ホーン71を有し、
前記シートの流れ方向に沿った前記ホーン71の幅W1が前記突条52の幅W2よりも大きい。
【0018】
この場合、接合部の幅またはアンビルロールの突条の幅が0.2mm以上、1.0mm未満に設定されており、小さい。そのため、前記接合部において弾性部材に過剰な圧力が加わりにくい。その結果、伸縮シートの歩留りが向上するだろう。
【0019】
また、伸縮性を喪失する接合部の幅が狭く、そのため、互いに溶着される一対のシートで形成される伸縮シートは、その伸縮性が良好になるだろう。したがって、商品の品質が向上するだろう。
【0020】
接合部は伸縮シートの少なくとも一部において溶融するため、硬くなる。しかし、接合部の面積が小さく、伸縮シートの柔軟性が維持される。接合部の幅が狭いことも柔軟性の向上に貢献する。
【0021】
接合部または突条の幅が狭いので、収縮時に形成される襞の間隔が狭くなるだろう。そのため、密度の高い襞が形成されるので、伸縮シートの手触りが良好で見た目も良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(a)および(b)は、それぞれ、本発明の伸縮シートの実施例1にかかる第1外表面および第2外表面をデジタル写真で示す拡大斜視図である。
図2図2(a)および(b)は、それぞれ、同伸縮シートを図1(b)のII-II線においてハサミで切断した断面をデジタル写真で示す拡大断面図および更なる拡大断面図である。
図3図3(a)および(b)は、それぞれ、同伸縮シートを図1(b)のIII-III線においてハサミで切断した断面をデジタル写真で示す拡大断面図および更なる拡大断面図である。
図4図4(a)および(b)は、それぞれ、引き延ばした展開状態の同伸縮シートをデジタル写真で示す拡大平面図および更なる拡大した平面図である。
図5図5(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施例2にかかる第1外表面及び第2外表面をデジタル写真で示す拡大斜視図である。
図6図6(a)および(b)は、それぞれ、同伸縮シートを図5(b)のVI-VI線においてハサミで切断した断面をデジタル写真で示す拡大断面図および更なる拡大断面図である。
図7図7(a)および(b)は、それぞれ、同伸縮シートを図5(b)のVII-VII線においてハサミで切断した断面をデジタル写真で示す拡大断面図および更なる拡大断面図である。
図8図8(a)および(b)は、それぞれ、引き延ばした展開状態の同伸縮シートをデジタル写真で示す拡大平面図および更なる拡大した平面図である。
図9図9(a)は図2(b)の伸縮シートの断面を線図で示す断面図、図9(b)は弾性ストランドの断面図、図9(c)は溶着前の状態で示す一対のシートの断面図である。
図10図10図6(b)の伸縮シートの断面を線図で示す断面図である。
図11図11Aは本発明が適用される着用物品の一例を展開して示す平面図、図11Bは実施例1にかかるB部(伸縮シート)の拡大平面図、図11Cは同実施例1の伸縮シートの拡大断面図である。
図12図12A図12B図12Cおよび図12Dは、それぞれ、伸縮シートの実施例2、3、4および5を展開して示す拡大平面図である。
図13図13Aは本発明の製造装置を示すレイアウト図、図13BはB部を拡大した概念図、図13CはC部を拡大した側面図である。
図14図14はアンビルロールを導入装置側から見た概略斜視図である。
図15図15はアンビルロールを下方から見た概略斜視図である。
図16図16Aはアンビルロールの突条の部位で断面したホーンおよびアンビルロールの拡大断面図、図16Bは更に拡大した断面図である。
図17図17Aはアンビルロールの他の例を示す概略斜視図、図17Bはアンビルロールの一部を拡大して示す側面図である。
図18図18は製造装置の他の例を示す概略レイアウト図である。
図19図19は導入装置の他の例を示す概略レイアウト図である。
図20図20は導入装置の正面図である。
【0023】
図9(a),(c)および図10において、不織布シートの部位はグレーで示した。図11B図12Dの接合部はドット模様を付した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前記先行技術において溶着されていない各シートの非接合部は、それぞれ、弾性部材の収縮により互いに反対方向に膨らんで襞を形成している。また、前記先行技術において各襞のそれぞれは、一枚のシートから形成されている。そのため、前記先行技術の襞は外力を受けることで容易に潰れるだろう。例えば、着用物品に前記先行技術の伸縮シートを用いた場合、襞の形状を維持しにくく、そのため、風合いや肌触りが低下し易いだろう。
【0025】
そこで、本発明の好ましい例では、伸縮シートに形成された襞が外力を受けた場合に潰れにくい伸縮シートを提供する。
【0026】
すなわち、好的な伸縮シートでは、前記複数の接合部3同士の間において前記複数の弾性部材Fを含む仮想の平面Vpに対しに前記一対のシート1,2が突出して形成され、
前記複数の接合部3のうちの互いに隣り合う接合部3同士の間と前記複数の弾性部材Fのうちの互いに隣り合う弾性部材F同士の間で定義された領域α1において、前記一対のシート1,2の互いに対面する非接着の部位同士が互いに同一の方向に突出して、前記複数の各襞Pが形成されている。
【0027】
かかる伸縮シートは、前記領域α1において、前記一対のシートの互いに対面する部位が互いに同一の方向に突出して襞を形成している。したがって、襞を形成する一方のシートと他方のシートとが互いに二重に重なっている。そのため、襞の部位が外力を受けた場合に潰れにくい。また、見た目の乱れも生じにくい。
互いに同一方向にシートの襞が突出していることで、伸縮シートの厚さが薄くなるだろう。
【0028】
本発明において、“互いに対面する部位同士が互いに同一の方向に突出して、”とは、互いに対面する1つの部位同士が互いに1つの同一方向に突出し、かつ、互いに対面する別の部位同士が互いに別の同一の方向に突出していてもよいことを意味する。
本発明において、“非接着の部位同士が”とは、シート同士が接着剤を介して接着されている場合、襞の通気性や風合いが損なわれ、この場合を除く意味である。
【0029】
弾性部材Fを保持する一対のシートは、シートが不織布である場合、多数の繊維が弾性部材Fに絡み付くように付着していてもよいし、多数の繊維の一部または全部が弾性部材Fに溶着されていてもよい。
【0030】
前記各接合部は、1つの完全に連続したものである必要はなく、前記交差する方向Dpに断続的に延びていてもよい。例えば、各接合部は互いに隣り合う弾性部材Fの間において分断されていてもよいし、弾性部材Fの配置された部位において分断されていてもよい。
【0031】
本製造装置においては、アンビルロールの突条の幅が0.2mm以上1.0mm未満であり、アンビルロールの突条の幅がホーンの幅よりも狭い。突条の幅が1mm未満であるため、両シートへの加圧により突条の幅方向の両側で両シートがアンビルロール側に変形し易く、両シートが同じ方向に突出して襞を形成し易いだろう。
【0032】
すなわち、超音波ホーンの流れ方向の幅は、アンビルの突条の流れ方向の幅よりも大きい場合、溶着の際に、両シートが突条の間の空間に変位し、両シートが共に同じ方向に膨らみ易くなることが期待される。
【0033】
また、シールの際に、両シートの一部が互いに隣り合う突条の間に変位し、両シートが互いに同じ方向に膨らみ易くなるかもしれない。
【0034】
かかる伸縮シートを得る上で、好ましい製造装置は、前記一対のシート1,2が、前記アンビル50に接する第1シート1と、前記ホーン71に接する第2シート2であり、
前記第2シート2の搬送方向の張力を前記第1シート1の搬送方向の張力よりも高くするテンションローラTRを前記ホーン71の上流側に備える。
【0035】
第1および第2シートが溶着される際に、両シートは接合部において軟化する。そのため、接合部では両シートに張力が残留しない。一方、非接合部には両シートの張力の差が残留し、したがって、ホーン側の張力の大きい第2シートはアンビル側の第1シートよりも溶着後に縮み易い。その結果、複数の襞が互いに同じ方向に突出し易いだろう。
【0036】
好ましくは、前記各接合部3において前記一対のシート1,2の少なくとも一方が前記弾性部材Fに溶着されている。
【0037】
この場合、各弾性部材に溶着された一対のシートによる弾性部材の保持が更に安定する。
【0038】
好ましくは、前記襞Pを形成する互いに対面する部位の少なくとも一部において、前記一対のシート1,2の第1面1f,2f同士が互いに接触している。
【0039】
この場合、一対のシート1,2が、襞を形成する部位において互いに非接着であり、そのため、伸縮シートの柔軟性が損なわれない。また、第1面同士が少なくとも一部において互いに接触した状態の襞は2層構造になった部分が襞の曲げ剛性をアップさせる。すなわち、力学上、曲げ剛性は素材の厚さの3乗に比例し、そのため、柔らかい素材で形成された襞が潰れにくくなる。
【0040】
好ましくは、前記複数の接合部3は互いに平行な直線状に形成され、
前記複数の襞Pは前記互いに平行な接合部3に沿って、互いに平行な直線状に形成されている。
【0041】
この場合、複数の襞が互いに平行な直線状に形成されており、そのため、襞が突出する側の面においては、襞が直線状に現われ、見た目に美しい伸縮シートが得られるだろう。
【0042】
好ましくは、前記複数の接合部3は前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する第1方向D1に延びる複数の第1接合部31と、前記伸縮方向Dfおよび第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる複数の第2接合部32とを備える。
前記領域α1は前記弾性部材F、前記第1および第2接合部31,32で定義される
【0043】
この場合、第1および第2方向の設定により、種々の縞状の襞が得られるだろう。
【0044】
好ましい着用物品の1つは、着用者の肌に接する肌面と、その反対側の非肌面とを有し、前記非肌面において前記襞Pが突出している。
【0045】
このように、襞が突出する側を着用物品の非肌側とした場合、非肌面の風合いが良い。また、肌面側は肌との接触面積が小さく、そのため、蒸れが防止されるだろう。
【0046】
好ましい別の着用物品は、着用者の肌に接する肌面と、その反対側の非肌面とを有し、前記肌面において前記襞Pが突出している。
【0047】
この場合、肌面において突出した襞が潰れにくく、そのため、着け心地が良いだろう。
【0048】
好ましい製造装置においては、前記一対のシートのうちアンビル50に接するシートを昇温させる加熱装置59を更に備える。
【0049】
超音波溶着において、接合部の幅が狭いと、各シートに伝熱される熱容量が小さいため、第1シート(アンビル側シート)にソニックの熱が十分に伝わらず、第1シートが弾性部材に十分に溶着しないおそれがある。加熱装置およびソニックによる加熱で第1シートを弾性部材に溶着できる確実性が向上する。
【0050】
好ましくは、前記アンビルロール50に前記弾性部材Fを案内しながら導入する導入装置60を更に備え、
前記導入装置60は、
前記複数の弾性部材Fが巻かれ前記複数の弾性部材Fを前記アンビルロール50の前記各搬送溝Gに案内する案内溝G2を複数本有する案内ロール62と、案内ロール62に前記弾性部材Fが巻かれた接触角度の範囲を規定する規定ロール61とを備える。
【0051】
この場合、案内溝が設けられた案内ロールに対する弾性部材の接触角度を大きくでき、弾性部材がガイド溝から外れるのを抑制できる。そのため、アンビルロールの搬送溝内に弾性部材を安定して案内できる。これにより、弾性部材が破断することなくシートに固定される。
なお、規定ロールにも案内溝を設けると、より一層安定よく案内できる。
【0052】
好ましくは、前記複数本の搬送溝Gの伸びる方向に沿って、前記複数の突条間に断続的または連続的に、前記搬送溝Gとは別の搬送溝G9が設けられている。
【0053】
すなわち、好ましくは搬送溝を突条だけでなく、突条と突条との間にも設け、アンビルロールの全周に搬送溝が連続的に設けられてもよい。この場合、突条および突条間に形成された搬送溝が弾性部材を確実に案内するであろう。
【0054】
突条の幅が1mm未満である場合、幅の小さい突条に搬送溝を設けても、弾性部材が第1シートを介して搬送溝に入り込むため、弾性部材が搬送溝から外れるおそれがある。特に、突条の幅が小さい場合、力学的に突条の突出高さを小さくする関係上、弾性部材が突条間おいてアンビルロール表面に第1シートを介して接し易くなる。このため、弾性部材の搬送溝への案内が不安定になり易い。
【0055】
そこで、前記突条だけでなく、突条間にも搬送溝を設けることで、弾性部材を確実に案内できる。
【0056】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【0057】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【実施例
【0058】
伸縮シートの実施例の説明に先立って、伸縮シートが用いられた使い捨て着用物品の構造の一例が説明される。
【0059】
着用物品を展開して示す図11Aにおいて、着用物品90は吸収性本体92および前後の一対の胴回り部材91,91を備える。吸収性本体92は一対の胴回り部材91,91に架設され股部92aを形成する。
【0060】
本着用物品90は、前記股部92aが前記胴回り方向Xに平行な仮想のライン(line)において2つに折られた状態で着用される。これにより、前記一対の胴回り部材91,91の胴回り方向Xの端部同士が互いに重なる。
【0061】
前記前後の各胴回り部材91は、図11Bおよび図11Cに明示するように、伸縮シート10を包含する。前記伸縮シート10は、それぞれ、弾性部材F、第1および第2シート1,2が互いに積層された積層体を包含する。
【0062】
前記第1シート1および第2シート2は、通気性を有する不織布で構成されている。前記弾性部材Fは、前記第1シート1と第2シート2との間に挟まれており、前記胴回り方向Xに伸縮する。
【0063】
前記着用物品90(図11A)の伸縮シート10は着用者の肌に接する肌面11と、その反対側の非肌面12とを有する。
【0064】
つぎに、前記伸縮シート10の実施例1が説明される。
まず、弾性部材Fが伸張した状態について説明する。
【0065】
図11Cのように、前記一対のシート1,2は第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する。複数本の前記各弾性部材Fは前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、図11Bの破線で示すように互いに離間して配置されている。
【0066】
図11Bおよび図11Cのように、前記一対のシート1,2同士は複数の接合部3において、接着剤を介することなく、互いに溶着(構造)により接合されている。本例の場合、前記各接合部3において前記一対のシート1,2が前記弾性部材Fに溶着されていることで、前記各弾性部材Fは前記各接合部3において前記一対のシート1,2に固定されている。
【0067】
前記各接合部3は図11Cの前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が互いに溶着されていることで構成(溶着構造で接合)されている。前記接合部3は図4(a)および(b)の前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する(例えば直交する)方向Dpに延び、前記伸縮方向Dfに互いに離間している。
【0068】
弾性部材Fは、線状または索状であってもよい。例えば、図9(b)に示すように、弾性部材Fは、複数の糸ゴム(繊維状弾性体)F1が束状に集合したマルチストランドであってもよい。糸ゴムF1の材質としては、例えば、ポリウレタンが挙げられる。
【0069】
前記弾性部材Fの収縮力により、図2および図3に示すように、前記伸縮シート10は前記弾性部材Fが収縮した状態で、多数の襞Pを形成する。以下、弾性部材Fの収縮した状態の伸縮シート10について説明する。
【0070】
図2(b)および図3(b)に示すように、前記シート1,2は、例えば多数の熱可塑性の繊維11が積層された熱可塑性の不織布であってもよい。
【0071】
図1(a)の襞Pは、図1(b)の前記弾性部材Fが収縮している状態において、前記複数の接合部3同士の間において前記複数の弾性部材Fを含む仮想の平面Vpに対し前記一対のシート1,2が図1(a)のように直交方向Dvに突出して形成されている。
【0072】
すなわち、図4(b)の互いに隣り合う接合部3同士の間および弾性部材F同士の間で定義された領域α1において、図2(a),(b)の前記一対のシート1,2の互いに対面する非接着の部位同士が互いに同一の直交方向Dvに突出して、前記複数の各襞Pが形成されている。ここで、前記領域α1は、前記接合部3同士の間の部分のうち前記弾性部材F同士の間の部分を意味する。一方、図3(a)の弾性部材Fに近接した断面においては、第1シート1が襞Pを形成し、第2シート2は弾性部材Fに受け止められている。なお、第2シート2は図4(b)の接合部3において弾性部材Fに溶着されていてもよい。すなわち、弾性部材Fは前記接合部3以外の部位においてはシート1,2(図3(a))に溶着されていない。
なお、シート1,2同士が非接着であることや溶着されていることは、図2のような断面写真を撮像することにより知ることができる。
【0073】
図4(a)および図1(b)に示すように、前記複数の接合部3は互いに平行な直線状に形成され、これにより、図1(a)の前記複数の襞Pは前記互いに平行な接合部3(図2(a))に沿って、互いに平行な直線状に形成されている。
【0074】
図2(b)および図9(a)の超拡大断面で示すように、例えば前記襞Pを形成する互いに対面する部位の少なくとも一部において、前記一対のシート1,2の第1面1f,2f同士が互いに接触していてもよい。
【0075】
また、図2(a)に示すように、前記襞Pにおいて一対のシート1,2の第1面1f,2fは境界が判然とせぬ程に互いに密着していてもよい。逆に、襞Pにおいて図2(b)の一対のシート1,2の第1面1f,2fは完全に離間していてもよい。
【0076】
図4(b)に示すように、前記接合部3の前記伸縮方向Dfの幅W3は0.2mm以上1.0mm未満に設定されている。図4(b)の例の場合、W3=0.6mmに設定されているが、接合部3において2枚のシート同士やシートと弾性部材Fとが美しく均質に接合されていることが分かるであろう。
【0077】
前述した接合部3の接合力を得るという観点から前記接合部3の幅W3は0.95mm以下が好ましく、0.9mm以下がより好ましく、0.85mm以下が最も好ましいだろう。
【0078】
一般に、弾性部材Fと両シート1,2の接合力はシート1,2同士の接合力に比べ弱いだろう。したがって、接合部3の幅W3が小さすぎると弾性部材Fと両シート1,2との接合力が不足し易い。
【0079】
かかる観点から前記接合部3の幅W3は0.3mm以上が好ましく、0.35mm以上がより好ましく、0.4mm以上が最も好ましいだろう。
【0080】
図4(a)の互いに隣り合う接合部3の間隔、つまり、非接合領域α1の幅W4は伸縮シート10を引き延ばした状態で、例えば、3mm~7mmに設定されてもよい。幅W4が小さすぎると襞の効果が得られず、一方、幅W4が大きすぎると襞が高くなって倒れ易いうえ、伸縮シート全体が厚くなり、材料に無駄が生じ易い。
【0081】
つぎに、前記伸縮シート10の製造装置の一例が説明される。
図13Aの製造装置はアンビルロール50、導入装置60および溶着装置70などを備える。
【0082】
前記導入装置60はアンビルロール50に弾性部材Fを案内しながら導入する。また、前記アンビルロール50には前記弾性部材Fの導入位置よりも上流において第1シート1が導入され、前記弾性部材Fの導入位置よりも下流において第2シート2が導入される。前記アンビルロール50は一対のシート1,2の間に前記弾性部材Fが配置された状態となるように、前記一対のシート1,2および弾性部材Fを搬送する。
【0083】
前記溶着装置70は前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに溶着すると共に前記一対のシート1,2を前記弾性部材Fに溶着して前記一対のシート1,2で弾性部材Fを保持させる。本例の場合、溶着装置70は前記溶着を超音波エネルギーで行う超音波溶着装置である。
【0084】
前記溶着装置70は、図11Cの前記伸縮シート10における前記2枚の不織布シート1,2の複数の接合部3に振動エネルギーを与えて、前記2枚の不織布シート1,2および弾性部材Fを溶着する。
【0085】
より具体的には、図14の前記アンビルロール50は前記接合部3(図4)に対応する多数の突条52を外周面51に有する。突条52はアンビルロール50の幅方向Sに延びる。
【0086】
図13Aの前記溶着装置70はホーン71を有する。ホーン71は超音波エネルギーが付与されるもので、前記一対のシート1,2および弾性部材Fを介して図13Cの突条52に対向する。
【0087】
図13Cにおいて、前記シート1,2の流れ方向に沿った前記ホーン71の幅W1は前記突条52の幅W2よりも大きくてもよい。また、ホーン71に対し、一時的に又は常時、複数本の突条52が同時に対向するように設定されてもよい。
【0088】
図13Cに示すように、前記突条52の幅W2は0.2mm以上1.0mm未満に設定されている。この例の場合、W3=0.6mmに設定されているが、図4(b)のように、接合部3において2枚のシート同士やシートと弾性部材Fとが美しく均質に接合されていることが分かるであろう。
【0089】
前述した接合部3における弾性部材の切断を防ぐという観点から、図13Cの前記突条52の幅W2は0.95mm以下が好ましく、0.9mm以下がより好ましく、0.85mm以下が最も好ましいだろう。
【0090】
一方、突条52の幅W2が小さすぎると、ホーン71が突条52に当接した際の繰返し応力で突条52の耐久性が著しく低下するおそれがある。
【0091】
かかる観点から、前記突条52の幅W2は0.3mm以上が好ましく、0.35mm以上がより好ましく、0.4mm以上が最も好ましいだろう。
【0092】
一方、図13Cの互いに隣り合う突条52,52の距離W40は、前述の非接合領域α1の幅W4(図4(a))に相当する。したがって、距離W40は例えば、3mm~20mmに設定されてもよい。
【0093】
図14および図15に示すように、前記アンビルロール50は複数本の搬送溝Gを有する。各搬送溝Gは各突条52に形成され、前記各突条52を横断するように前記アンビルロール50の周方向Rに延び、前記第1シート1(図13A)および前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する。前記搬送溝Gはアンビルロール50の径方向の中心に向かって凹んでいる。
【0094】
図16Aおよび図16Bに示すように、前記搬送溝Gの大きさは、弾性部材Fの一部が溝内に収容され、残部が溝からハミ出るように設定されてもよい。搬送溝Gの断面積は自然長の弾性部材Fの断面積よりも小さくてもよい。
【0095】
なお、図13C図16Bにおいて、シート1,2は図示されていないが、図9(c)に模式的に示すように、シート1,2は弾性部材Fを挟むように配置される。
【0096】
図13Aの導入装置60は、第1ロール(規定ロール)61および第2ロール(案内ロール)62を備える。図14の前記第1および第2ロール61,62は、各々、第1および第2案内溝G1,G2を複数本有していてもよい。各第1案内溝G1は、前記弾性部材Fが巻かれ前記各弾性部材Fを案内する。図15の前記第2案内溝G2は前記第1ロール61の前記各第1案内溝G1から導出された前記各弾性部材Fが巻かれ、この弾性部材Fを前記アンビルロール50の前記各搬送溝Gに案内する。
【0097】
図13Aにおいて、前記規定ロール(第1ロール)61は前記案内ロール(第2ロール)62に前記弾性部材Fが巻かれた接触角度θの範囲を規定する。前記接触角度θは、一般に90°~270°程度が好ましい。第2案内溝G2から弾性部材Fが離脱するのを防止するためである。
【0098】
前記第1および第2ロール61,62はフリーローラであってもよいし、前記アンビルロール50に同期して回転駆動されてもよい。
【0099】
図13Aにおいて、製造装置はテンションローラTRを備えていてもよい。テンションローラTRは第2シート2の搬送経路に設けられ、ホーン71による溶着位置よりも第2シート2の搬送方向の上流に設けられる。
【0100】
このテンションローラTRはホーン71とアンビルロール50との間の溶着位置に向かって搬送される前記第2シート2の搬送方向の張力を前記第1シート1の搬送方向の張力よりも高くする。かかるテンションローラTRの機能は周知の機械的な構造で実現されてもよいし、電子制御により実現されてもよい。
【0101】
図13Aにおいて、製造装置は加熱装置59を更に備えていてもよい。加熱装置59はアンビルロール50を昇温させるヒータであってもよいし、前記溶着位置の上流で第1シート1に温風ないし熱風を噴き付ける温風器であってもよい。なお、加熱装置は溶着位置の下流に設けた別の溶着装置であってもよい。
【0102】
つぎに、前記伸縮シート10の製造方法の一例が説明される。
【0103】
図13Aに示すように、アンビルロール50の上流部分に第1シート1が導入される。前記第1シート1が導入されたアンビルロール50の第1シート1上には導入装置60から弾性部材Fが導入される。前記弾性部材Fは図13Cの搬送溝Gに第1シート1(図13A)と共に入り込んだ状態で搬送される。一方、前記ホーン71に対面するアンビルロール50の部位には、図13Aの第2シート2が導入される。
【0104】
前記第1シート1、弾性部材Fおよび第2シート2がホーン71と突条52との間を通過する際に、前記ホーン71がアンビルロール50に向かう方向に超音波振動する。これにより、シート1,2同士が互いに溶着されると共に、シート1,2が弾性部材Fに溶着される。こうして、伸縮シート10が生成される。
【0105】
前記伸縮シート10の製造は、図13Aの弾性部材F、第1シート1および第2シート2に搬送方向の張力が付与された展開状態で行われる。そのため、ホーン71で溶着された直後の伸縮シート10は図4(a),(b)のような展開状態で生成され、この状態において伸縮シート10には襞が現れていない。
【0106】
その後、図13Aの伸縮シート10は下流に搬送され、搬送方向に張力が付与されない状態となる。この状態では図13Bのように、伸縮シート10に襞Pが現れる。
【0107】
こうして生成された襞Pは、図11Aの肌面98において露出して突出していてもよいし、その反対の非肌面において露出して突出していてもよい。
【0108】
つぎに、他の例について説明する。
図5図8図10および図12Aは実施例2を示す。
【0109】
本実施例では、図8(a),(b) および図12Aに示すように、接合部3は複数の第1接合部31と第2接合部32とを備える。前記各第1接合部31は前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する第1方向D1に延びる。複数の第2接合部32は前記伸縮方向Dfおよび第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる。
【0110】
図12Aに示すように、本例の場合、前記接合部3の伸縮方向Dfの幅W3は、接合部3の伸びる方向に対し斜めに測定される。また、第1接合部31と第2接合部32とが交差する部位については幅W3が大きくてもよい。
【0111】
本例の場合、図12Aおよび図8(b)の前記弾性部材Fが伸張している状態において、前記領域α1は前記弾性部材F、前記第1および第2接合部31,32で定義される。
【0112】
本例の場合、図5(a),(b)に示すように、襞Pは直交方向Dvの双方に現れる。すなわち、図6(a),(b)および図10に拡大して示すように、襞Pは各領域α1(図8)において直交方向Dvの一方と他方とに現れる。
【0113】
しかし、この場合においても、図8(b)の1つの領域α1において、図6(a),(b)および図10の前記一対のシート1,2の互いに対面する部位同士は互いに同一の直交方向Dvに突出して、前記複数の各襞Pが形成されている。
【0114】
本例の場合も、図7(a),(b)の弾性部材Fに近接した断面においては、一方のシート1または2が襞Pを形成し、他方のシート2または1は弾性部材Fに絡み付いたように付着していてもよい。
【0115】
図12Bは実施例3を示す。
この例のように、各接合部3が波形状に形成されていてもよい。この場合、各接合部3同士は互いに交差していないが、図12Aの実施例2と同様な形状の襞Pが形成されるだろう。
【0116】
図11B図12Bの各例において、各接合部3は連続しており、かつ、弾性部材Fと交差し、弾性部材Fの延びる部位において、一対のシート1,2(図11C)が弾性部材Fに溶着されている。
【0117】
しかし、図12Cおよび図12Dに示すように、各接合部3は不連続であってもよい。また、図12Cの弾性部材Fの延びる部位において、一対のシート1,2が弾性部材Fに溶着されていなくてもよい。つまり、接合部3と弾性部材Fとが重なっている必要はなく、接合部3は連続的または断続的に延びていてもよい。
【0118】
図12Cの例の場合、弾性部材Fの両端を接着や溶着で第1および第2シートに固定してもよい。また、接合部3を弾性部材Fに接近させれば、弾性部材Fに不織布の繊維が絡み付いて弾性部材Fを固定できるかもしれない。
【0119】
すなわち、弾性部材F同士が互いに接近したり、互いに離れすぎた配置とならないように、接合部3は弾性部材Fを保持していればよく、必ずしも、弾性部材Fをシートに固定している必要はない。
【0120】
図17Aおよび図17Bはアンビルロール50の他の例を示す。
【0121】
この例においては、前記搬送溝Gが各突条52に設けられているだけでなく、隣り合う各突条52,52間に別の搬送溝G9が設けられている。すなわち、搬送溝Gおよび別の搬送溝G9はアンビルロール50の周方向Rに連続的に設けられている。なお、別の搬送溝G9は、各突条52の両側でその突条と接する部分には設けられずに、隣り合う各突条52,52間の中間部分にのみ設けられていてもよい。
【0122】
また、前記第1ロール61には案内溝を設けることなく、第2ロール62にのみ案内溝G2を設けてもよい。
【0123】
図18は更に他の例を示す。
この例では溶着装置70に加え、加熱装置としての別の溶着装置70Aが設けられている。別の溶着装置70Aは溶着装置70で溶着された伸縮シート10の接合部3を再度溶着する。
【0124】
別の溶着装置70Aのアンビルロール50Aには伸縮シート10の第2シート2側が接し、ホーン71Aには伸縮シート10の第1シート1側が接する。これにより、前記溶着装置70のホーン71は第2シート側から接合部3を加熱し、別の溶着装置70Aのホーン71Aは第1シート側から接合部3を加熱する。
【0125】
なお、第1シート1、弾性部材Fおよび第2シート2をアンビルロール50との間で挟み付けるニップロールNRが設けられてもよい。ニップロールNRは溶着装置70よりも上流に設けられる。かかるニップロールNRは図13Aの製造装置に設けられてもよい。
【0126】
図19および図20は導入装置60の他の例を示す。
図19の導入装置60は、上流から弾性部材Fを受け取る第1ロール61と、第1ロール61から弾性部材Fを受け取る第2ロール62と第2ロール62に接する押さえロール63を備える。
【0127】
図20の第1ロール61には比較的幅が広く、かつ、深さの深い第1案内溝G1が弾性部材F(図19)の本数に応じて設けられている。第1案内溝G1は上流側から受け取った弾性部材Fを溝中心にガイドする。なお、第1ロール61と第2ロール62の外周面間には若干の隙間が設けられている。
【0128】
第2ロール62には第1ロール61の第1案内溝G1よりも幅狭で深さも浅い第2案内溝G2が形成され、第2案内溝G2は第1ロール61の第1案内溝G1に対応して形成されている。第2ロール62の第2案内溝G2は、搬送される伸張された弾性部材F(図19)の太さよりも広い幅に設定されていてもよい。
【0129】
第1ロール61から第2ロール62へ引き渡された弾性部材Fは第2ロール62の第2案内溝G2に入り込むとともに、押さえロール63により押さえられ、これにより第2案内溝G2からの離脱が防止される。したがって、図20の弾性部材Fは正確に案内されてアンビルロール50に送りこまれる。
【0130】
以上、他の実施例の着用物品1のその他の構造および製造方法は前記実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その詳しい説明および図示を省略する。
【0131】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、伸縮シートは着用物品以外の製品に適用されてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明はオムツ型およびパンツ型の使い捨て着用物品に好適に用いることのできる伸縮シートおよびその製造装置に適用し得る。
【符号の説明】
【0133】
1,2:一対のシート 10:伸縮シート 1f,2f:第1面
3:接合部 31:第1接合部 32:第2接合部
50:アンビルロール 51:外周面 52:突条 50A:別のアンビルロール
59:加熱装置
60:導入装置 61:第1ロール(規定ロール) 62:第2ロール(案内ロール)
70:溶着装置 71:ホーン 70A:別の溶着装置 71A:別のホーン
D1:第1方向 D2:第2方向 Df:伸縮方向 Dp:交差する方向
F:弾性部材
G:搬送溝 G9:別の搬送溝 G1:第1案内溝 G2:第2案内溝
S:幅方向
NR:ニップロール TR:テンションローラ
P:襞 Vp:仮想の平面 W1~W4:幅
α1:領域 θ:接触角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20