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特許7036751アポトーシスのモニタリングのための、ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジンに特異的なモノクローナル抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】アポトーシスのモニタリングのための、ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジンに特異的なモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20220308BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220308BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220308BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
G01N33/53 D
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018566396
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017064553
(87)【国際公開番号】W WO2017216227
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】16305724.3
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518443845
【氏名又は名称】アドヴァンスト・バイオデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イスマイル・セラン
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー・クアッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミレイディ・ペレス-アレア
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・マルタン
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第96/040985(WO,A1)
【文献】Journal of Immunological Methods,2004年,292,p. 83-95
【文献】Int. J. Cancer,1991年,48,p. 221-226
【文献】Analytical Biochemistry,2002年,311,p. 187-190
【文献】Analytical Biochemistry,2005年,342,p. 1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
G01N
C12N
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3の配列のCDR-H1、配列番号4の配列のCDR-H2、配列番号5の配列のCDR-H3、配列番号6の配列のCDR-L1、配列番号7の配列のCDR-L2、及び配列番号8の配列のCDR-L3を含む、ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的な単離モノクローナル抗体。
【請求項2】
配列番号1の配列の重鎖の可変ドメイン、又は配列番号1に少なくとも85%同一な配列の重鎖の可変ドメインを含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項3】
配列番号2の配列の軽鎖の可変ドメイン、又は配列番号2に少なくとも85%同一な配列の軽鎖の可変ドメインを含む、請求項1又は2に記載の単離モノクローナル抗体。
【請求項4】
試料中のガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)のレベルを測定するための方法であって、
a)試料と、請求項1から3のいずれか一項に記載のGGELに特異的なモノクローナル抗体とを接触させる工程、及び
b)GGELに特異的なモノクローナル抗体と形成された複合体のレベルを測定する工程
を含み、試料中のGGELのレベルが、GGELに特異的なモノクローナル抗体と形成された複合体のレベルから推定される方法。
【請求項5】
対象におけるアポトーシスのモニタリングのためのエクスビボでの方法であって、
a)対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)のレベルを、請求項1から3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を使用するイムノアッセイで測定する工程、
b)前記測定された遊離GGELのレベルと対照とを比較する工程、及び
c)対照との比較に基づいて、前記対象におけるアポトーシスをモニタリングする工程
を含む方法。
【請求項6】
対照との比較に基づいて、前記対象におけるアポトーシスをモニタリングする工程が、
(i)対照が健康な対象若しくは健康な対象集団の血漿試料に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが対照の遊離GGELレベルよりも高ければ、アポトーシスは対象において上方調節されていると判定し、若しくは、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが対照の遊離GGELレベルよりも低ければ、アポトーシスは対象において下方調節されていると判定する、又は
(ii)対照が、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが、対照の遊離GGELレベル以上であれば、アポトーシスは対象において上方調節されていると判定する、又は
(iii)対照が、下方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが、対照の遊離GGELレベル以下であれば、アポトーシスは対象において下方調節されていると判定する
ことによって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
遊離GGELのレベルが、ELISA、間接イムノアッセイ、競合イムノアッセイ、又はサンドイッチイムノアッセイによって測定される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
アポトーシスのモニタリングのための、請求項1から3のいずれか一項に記載のガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体の使用。
【請求項9】
対象におけるアポトーシス誘導処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a)アポトーシス誘導処置を受けている対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)のレベルを、請求項4に記載の方法で測定する工程、
b)工程a)の測定を経時的に反復する工程、及び
c)遊離GGELのレベルが経時的に増大すれば、アポトーシス誘導処置が有効であると推定し、又は遊離GGELのレベルが経時的に不変であるか若しくは低下すれば、アポトーシス誘導処置が有効ではないと推定する工程
を含む方法。
【請求項10】
対象におけるアポトーシス阻害処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a)アポトーシス阻害処置を受けている対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)のレベルを、請求項4に記載の方法で測定する工程、
b)工程a)の測定を経時的に反復する工程、及び
c)遊離GGELのレベルが経時的に低下すれば、アポトーシス阻害処置が有効であると推定し、又は遊離GGELのレベルが経時的に不変であるか若しくは増大すれば、アポトーシス阻害処置が有効ではないと推定する工程
を含む方法。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体を含む、ラテラルフローイムノアッセイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体での、対象の生体試料中の遊離GGELの検出に基づく、アポトーシスのモニタリングのためのエクスビボでの方法に関する。本発明はまた、GGELに特異的なモノクローナル抗体、及びこのようなリガンドを含有する診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、多細胞生物で生じるプログラム細胞死の、堅固に調節されたプロセスである。アポトーシスは、老化した及び損傷を受けた細胞を除去するための、並びに、免疫系の適切な機能のための、細胞に固有の基本的なメカニズムである。細胞膨潤が起こる壊死とは対照的に、アポトーシスは、細胞萎縮、クロマチンの凝縮、DNAから複数の120塩基対への断片化、及び細胞質構成成分から洗剤不溶性のアポトーシス小体への架橋を特徴とする。
【0003】
全ての細胞に固有の死亡機構の機能不全は、様々な疾患において第1又は第2の役割を有し得、それぞれ増殖疾患又は変性疾患をもたらす、本質的に過少な又は過剰なアポトーシス(又は、間違った場所及び/若しくは間違った時点で生じるアポトーシス)を伴う。アポトーシスの調節不全は、実際、自己免疫疾患及び神経変性疾患(過剰なアポトーシス)又は腫瘍の成長(過少なアポトーシス)を含む様々な障害において、正常組織の破壊をもたらし得る。更に、腫瘍の有効な治療法は、放射線照射、化学療法、又はその両方による、プログラム細胞死の医原性の誘導を要する(Blankenberg F,G.、J Nucl Med June 2008 vol. 49 no. Suppl 2 81S~95S)。
【0004】
アポトーシスの間に細胞の原形質膜に結合するトレーサーを使用して、インビボでアポトーシスをモニタリングするための非侵襲性の画像化方法が開発されている(Blankenberg F,G.、J Nucl Med June 2008 vol. 49 no. Suppl 2 81S~95S; Brauer M.、Progress in Neuro-pyschopharmacology & Biological Psychiatry 2003年4月、27(2):323~31)。しかし、これらの方法は、特に、磁気共鳴イメージング(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、又は単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)に依存し、その結果、利用が容易ではない。
【0005】
「ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン」、「Nε-(γ-グルタミル)-リジン」、又は「GGEL」とも呼ばれる「N-ε-(γ-グルタミル)-L-リジン」は、トランスグルタミナーゼ反応によって産生されるイソペプチドである。
【0006】
組織トランスグルタミナーゼは、通常は多くの細胞に存在する、Ca2+依存性の細胞質酵素である。しかし、この酵素は、細胞で見られる通常のCa2+レベルによっては活性化されない。インビボでの酵素の活性化は、例えばリンパ球が活性化によって誘導されるアポトーシスを受けると典型的に生じる、細胞内遊離Ca2+濃度の増大まで生じない。組織トランスグルタミナーゼは、アポトーシスを受けている細胞内で活性化されて、タンパク質間でN-ε-(γ-グルタミル)-リジンイソペプチド結合を形成する。アポトーシスの最終段階の間に形成されるアポトーシス小体は、マクロファージによる除去のための認識マーカーである、表面マーカーであるホスファチジルセリン(PS)を有する。しかし、この除去は非常に迅速に起こり、したがって、リンパ球のアポトーシスは、少なく見積もられている(Mc Carthyら、1998、Curr. Top. Dev. Biol. Vol 36 259~278頁)。アポトーシス小体におけるタンパク質のペプチド結合は切断可能であるのに対し、そのN-ε-(γ-グルタミル)-リジンイソペプチド結合はタンパク質分解に対して耐性であり、遊離N-ε-(γ-グルタミル)-リジンイソペプチドの形態で血流内に放出される。
【0007】
したがって、GGEL(「放出されたGGEL」又は「遊離GGEL」)は、アポトーシスに誘導された細胞の食作用の結果生じ、細胞プロテアーゼによる架橋した細胞タンパク質の分解の最終産物である。
【0008】
アポトーシスを定量的に測定するための方法は、国際特許出願WO96/40985において記載されている。この方法は、共役酵素反応を適用してリジンを放出し、NADHが消費されるプロセスでリジンをサッカロピンに変換し、こうしてNADH消費量を定量する。
【0009】
しかし、イムノアッセイに基づく方法等の、臨床現場でアポトーシスのインビボでのレベルを検出するための迅速な、再現可能な、定量的方法が依然として必要とされている。
【0010】
GGELに対するマウスモノクローナル抗体AB424は、Abcam社(Cambredge、UK、カタログ番号AB424)から入手可能である。AB424は、Thomasら、2004、J. Immunol. Methods 292、83~95において記載されているように単離された。しかし、AB424は、イソペプチドN1,N8ビス(ガンマ-グルタミル)スペルミジンと交差反応する。ポリアミン架橋は、したがって、抗体を使用するイムノアッセイにおけるGGELの検出に干渉する可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO96/40985
【非特許文献】
【0012】
【文献】Blankenberg F,G.、J Nucl Med June 2008 vol. 49 no. Suppl 2 81S~95S
【文献】Brauer M.、Progress in Neuro-pyschopharmacology & Biological Psychiatry 2003年4月、27(2):323~31
【文献】Mc Carthyら、1998、Curr. Top. Dev. Biol. Vol 36 259~278頁
【文献】Thomasら、2004、J. Immunol. Methods 292、83~95
【文献】Lefrancら、Dev. Comp. Immunol.、2003、27 (1):55~77; www.imgt.org
【文献】Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970)
【文献】Hotchkiss RS ら、J Immunol 2001、166、6952~6963
【文献】Vincent J.L.ら、Crit Care Med. 2006年2月、34(2):344~53
【文献】Kumar A.ら、Crit Care Med. 2006、34(6):1593
【文献】Bone RC.、JAMA. 1992年12月23日~30日、268(24):3452~5
【文献】Levy MMら、SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS.、Crit Care Med. 2003年4月、31(4):1250
【文献】Dabhi AS、Khedekar SS、Mehalingam V、J Clin Diagn Res. 2014年10月、8(10):MC09~13
【文献】Pierrakos C、Vincent JL、Critical care、2010、14:R15
【文献】Kim HSら、Ann Clin Lab Sci. 2012 Winter、42(1):57~64
【文献】Wesche DEら、J Leukoc Biol.、2005年8月、78(2):325~37
【文献】Kramarら、(Comput Methods Programs Biomed、2001、66:199~207
【文献】Staackら、BMC Urol 2006、6:19
【文献】Su及びLiu. Journal of the American Statistical Association 1993、88:1350~1355
【文献】Wang、Computational Statistics and Data Analysis 2007、51:2803~2812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
アポトーシスをインビボでモニタリングするための、イムノアッセイに基づく方法の開発は、したがって、抗GGEL特異的モノクローナル抗体が欠如していることによって妨げられている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、配列番号3の配列のCDR-H1、配列番号4の配列のCDR-H2、配列番号5の配列のCDR-H3、配列番号6の配列のCDR-L1、配列番号7の配列のCDR-L2、及び配列番号8の配列のCDR-L3を含む、ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的な単離モノクローナル抗体に関する。
【0015】
本発明はまた、試料中のガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)のレベルを測定するための方法であって、
a)試料と、本発明に従ったGGELに特異的なモノクローナル抗体とを接触させる工程、及び
b)本発明に従ったGGELに特異的なモノクローナル抗体と形成された複合体のレベルを測定する工程
を含み、試料中のGGELのレベルが、GGELに特異的なモノクローナル抗体と形成された複合体のレベルから推定される方法に関する。
【0016】
本発明は更に、対象におけるアポトーシスをモニタリングするためのエクスビボでの方法であって、
a)対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、本発明に従ったGGELに特異的なモノクローナル抗体を使用するイムノアッセイで測定する工程、
b)前記測定された遊離GGELのレベルと対照とを比較する工程、及び
c)対照との比較に基づいて、前記対象におけるアポトーシスをモニタリングする工程
を含む方法に関する。
【0017】
本発明はまた、アポトーシスのモニタリングのための、本発明に従ったガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体の使用に関する。本発明は更に、対象におけるアポトーシス誘導処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a)アポトーシス誘導処置を受けている対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、請求項4に記載の方法で測定する工程、
b)工程a)の測定を適時に反復する工程、及び
c)遊離GGELのレベルが経時的に増大すれば、アポトーシス誘導処置が有効であると推定し、又は遊離GGELのレベルが経時的に不変であるか若しくは低下すれば、アポトーシス誘導処置が有効ではないと推定する工程
を含む方法に関する。
【0018】
本発明は更に、対象におけるアポトーシス阻害処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a)アポトーシス阻害処置を受けている対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、請求項4に記載の方法で測定する工程、
b)工程a)の測定を適時に反復する工程、及び
c)遊離GGELのレベルが経時的に低下すれば、アポトーシス阻害処置が有効であると推定し、又は遊離GGELのレベルが経時的に不変であるか若しくは増大すれば、アポトーシス阻害処置が有効ではないと推定する工程
を含む方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、それを必要とする対象における調節不全のアポトーシスに関連する疾患を治療する方法であって、
a)調節不全のアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象にアポトーシス調節処置を施す工程、
b)請求項5又は9に記載のアポトーシスのモニタリング方法を実行することによって、前記処置が対象におけるアポトーシスを調節するかどうかをモニタリングする工程、及び
c)工程b)のモニタリングの結果に基づいて、アポトーシス調節処置を継続又は修正する工程
を含む方法を目的としている。
【0020】
a)本発明に従ったガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に対するモノクローナル抗体、及び
b)対照
を含む、アポトーシスのモニタリングのためのキットもまた提供される。
【0021】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における敗血症を治療する方法であって、
a)本発明に従った敗血症のエクスビボでの診断方法によって、対象における敗血症を診断する工程、及び
b)敗血症に対する治療的処置を、敗血症に罹患していると診断された対象に施す工程
を含む方法に関する。
【0022】
本発明はまた、本発明に従ったガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に対するモノクローナル抗体を含む、ラテラルフローイムノアッセイ装置を目的としている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の説明
「ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン」、「Nε-(γ-グルタミル)-リジン」、又は「GGEL」とも呼ばれる「N-ε-(γ-グルタミル)-L-リジン」は、トランスグルタミナーゼ反応によって産生され、アポトーシスに誘導された細胞の食作用の結果放出される、イソペプチドを示す。GGEL(又は遊離GGEL)は、細胞プロテアーゼによる架橋細胞タンパク質の分解の最終産物である。
【0024】
本明細書において使用される場合、「対象」は、ネコ、イヌ、齧歯動物、又は霊長類等の哺乳動物を示す。好ましくは、対象は、ヒト、特に小児、女性、又は男性を意味する。
【0025】
本願の全体を通して、用語「含む(comprising)」は、全ての具体的に言及された特徴と、更に、任意の、追加の、特定されていない特徴とを包含すると解釈される。本明細書において使用される場合、用語「含む(comprising)」はまた、具体的に言及された特徴以外の特徴が存在しない(すなわち、「から構成される(consisting of)」)実施形態を開示する。更に、不定冠詞「a」又は「an」は、複数形を排除しない。ある特定の複数の特徴が異なる実施形態で引用されるという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせが使用され得ないことを示すわけではない。
【0026】
ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)の検出
GGELに特異的なモノクローナル抗体を使用して、GGELが検出されるか、又はGGELのレベルが測定される。
【0027】
「抗体」は、ジスルフィド結合が2つの重鎖を互いに連結し、各重鎖がジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている、天然の又は従来の抗体であり得る。軽鎖は、2つのドメイン又は領域、すなわち、1つの可変ドメイン(VL)及び1つの定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、すなわち、1つの可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、まとめてCHと呼ばれる)を含む。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主に超可変領域又は「相補性決定領域」(CDR)に由来する残基から作られている。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖はそれぞれ、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、及びCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3とそれぞれ呼ばれる3つのCDRを有している。従来の抗体の抗原結合部位は、したがって、重鎖及び軽鎖のV領域のそれぞれに由来するCDRセットを含む6つのCDRを含む。
【0028】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR間に挟まれるアミノ酸配列、すなわち、単一種における異なる免疫グロブリン間で比較的保存されている、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変領域のある部分を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖はそれぞれ、FR-L1、FR-L2、FR-L3、FR-L4、及びFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4とそれぞれ呼ばれる、4つのFRを有している。
【0029】
本発明の文脈では、免疫グロブリン軽鎖又は重鎖におけるCDR/FRの定義は、IMGT定義(Lefrancら、Dev. Comp. Immunol.、2003、27 (1):55~77; www.imgt.org)に基づいて決定される。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、従来の抗体及びその抗原結合断片、並びにキメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異的抗体、又は多重特異的抗体を示す。
【0031】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、特異的抗原に対する単一の一次構造を有する抗体分子を指し、何らかの特定の方法による抗体の産生を要するとは解釈されない。モノクローナル抗体は、B細胞又はハイブリドーマの単一のクローンによって産生され得るが、組換え体でもあり得、すなわち、タンパク質操作によって産生され得る。
【0032】
(従来の)抗体の「断片」は、インタクトな抗体の一部、特に、インタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fv、Fab、F(ab')2、Fab'、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、ダイアボディ、抗体断片から形成される二重特異的抗体及び多重特異的抗体が含まれる。
【0033】
本発明は、配列GYTFTSY(配列番号3)のCDR-H1、配列NPSNGG(配列番号4)のCDR-H2、配列SGLLLWSPWFAY(配列番号5)のCDR-H3、配列RASENIYSYLA(配列番号6)のCDR-L1、配列NAKTLAE(配列番号7)のCDR-L2、及び配列QHHYGTPFT(配列番号8)のCDR-L3を含む、GGELに特異的な単離モノクローナル抗体を提供する。
【0034】
一実施形態では、前記単離抗体は、配列
QVQLQQPGTELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGNINPSNGGTNYNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARSGLLLWSPWFAYWGQGTLVTVS(配列番号1)からなる重鎖(VH)の可変ドメイン、又は配列番号1に少なくとも85%同一な配列を含む。
【0035】
別の実施形態では、前記単離抗体は、配列
DIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASENIYSYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTQFSLKINSLQPEDFGSYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIKR(配列番号2)からなる軽鎖(VL)の可変ドメイン、又は配列番号2に少なくとも85%同一な配列を含む。
【0036】
更に別の実施形態では、前記単離抗体は、配列番号1の配列からなるVH又はそれに少なくとも85%同一な配列、及び配列番号2の配列からなるVL又はそれに少なくとも85%同一な配列を含む。
【0037】
GGELに特異的な単離抗体は、特に、配列番号1の配列からなるVH及び配列番号2の配列からなるVLを含む、いわゆる1G1h1抗体である。
【0038】
参照配列に「少なくとも85%同一な」配列は、その全長で、参照配列の全長と85%又はそれを超える、特に、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する配列である。
【0039】
「配列同一性」のパーセンテージは、比較ウィンドウにわたって最適にアラインされた2つの配列を比較することによって決定することができ、この場合、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列の一部は、2つの配列を最適にアラインすると参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両配列に存在する位置の数を決定してマッチ位置の数を得、そのマッチ位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、その結果に100をかけて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えばNeedleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970)のアルゴリズムを使用する、グローバルペアワイズアラインメントによって行われる。配列同一性のパーセンテージは、例えば、プログラムNeedleを、BLOSUM62マトリクス及び以下のパラメータgap-open=10、gap-extend=0.5と共に使用して、容易に決定することができる。
【0040】
本発明に従った単離抗体は、遊離N-ε-(γ-グルタミル)-リジンイソペプチドの形態のε-(γ-グルタミル)-リジンに結合する。特に、抗体は、Table 3(表3)に開示されるGGEL様タンパク質の1つ又は複数、好ましくは全てに結合する。
【0041】
好ましくは、抗体はGGELに特異的であり、すなわち、抗体は、(i)アセチル化されたリジン(アセチル化されたウシ血清アルブミン(BSA)内に存在するような)、(ii)ポリアミン架橋(ポリグルタミン酸に結合しているスペルミジン(Spd)内に存在するような)、又は(iii)ユビキチン化/Sumo化架橋(Boc-Gly-BSA内に存在するような)の1つ又は複数、好ましくは全てとそれほど交差反応性ではない(Table 4(表4)を参照されたい)。
【0042】
抗原1(Ag1)に結合するモノクローナル抗体は、IC50が両抗原に対して同様の範囲内にあれば、抗原2(Ag2)に対して「交差反応性」である。本願では、Ag1に結合するモノクローナル抗体は、Ag1の親和性に対するAg2の親和性の比率が10以下であれば、Ag2に交差反応性であり、親和性は、両抗原で同一の方法で測定される。
【0043】
Ag1に結合するモノクローナル抗体は、親和性が2つの抗原に対して大きく異なる場合は、Ag2に対して「それほど交差反応性ではない」。Ag2に対する親和性は、結合応答が低すぎると測定不可能であり得る。本願では、Ag1に結合するモノクローナル抗体は、Ag1の親和性に対するAg2の親和性の比率が10以上であれば、Ag2にそれほど交差反応性ではない。
【0044】
「親和性」は、理論上は、抗体と抗原との間の平衡会合によって定義される。これは、表面プラズモン共鳴での会合速度及び解離速度の測定、又は免疫化学アッセイ(ELISA、FACS)でのEC50/IC50の測定等の、様々な既知の方法によって実験的に評価することができる。これらのアッセイでは、EC50/IC50は、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)による、規定濃度の抗原へのある特定の曝露時間後の、又はFACS(蛍光活性化細胞選別)による、抗原を発現する細胞へのある特定の曝露時間後の、ベースラインと最大値との間の中間応答を誘発する抗体の濃度である。
【0045】
AB424とは対照的に、イソペプチドN1,N8ビス(ガンマ-グルタミル)スペルミジンと著しく交差反応する、GGELに対するマウスモノクローナル抗体AB424は、Abcam社(Cambredge、UK、カタログ番号AB424)から入手可能である。AB424は、Thomasら、2004、J. Immunol. Methods 292、83~95において記載されているように単離された。
【0046】
一実施形態では、GGELのレベルは、イムノアッセイ、結合アッセイ、又はクロマトグラフィーによって測定される。
【0047】
GGEL測定のためのイムノアッセイは、典型的には、抗体の使用を介してGGELの濃度を測定する。抗体は、固体担体上に固定化され得る。GGELに特異的な抗体は、ウェスタンブロッティング、RIA(放射線結合イムノアッセイ)等のラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、「間接」イムノアッセイ、「競合」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、例えば、FIA(蛍光結合イムノアッセイ)、化学発光イムノアッセイ、クロマトグラフィーイムノアッセイ、電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)、及びプロテインAイムノアッセイ等の技術を使用する競合アッセイ系及び非競合アッセイ系を含む広範な免疫学的アッセイにおいて使用することができる。
【0048】
一実施形態では、GGELのレベルは、ELISAによって、間接フォーマット、競合フォーマット、又はサンドイッチフォーマットで測定される。
【0049】
例えば、競合ELISAは、抗GGEL抗体をマイクロタイタープレート(例えば、50mMの重炭酸塩溶液、pH9.50)上に吸収させ、プレートをインキュベートし(例えば、一晩、実験室温度で)、その後、固体担体を飽和させる(例えば、0.5%BSA及び5%ショ糖を添加した0.1Mのリン酸緩衝液を使用して)ことによって実行することができる。場合によって希釈された、分析対象の試料には、標識されたGGELの存在下で、例えばGGEL-HRP溶液が、1時間、37℃で添加される。標準として使用するために、正確な数のGGELで「被覆された」BZGO(BSAに結合したN-アルファ-カルボベンジルオキシ-グルタミン酸メチルエステル(Z-GluOme))を、2倍ずつ希釈することができる。洗浄(例えば、PBSTで3回の洗浄)後、顕色を行う(例えば、TMBを5分間使用し、2NのH2SO4を使用して反応を停止させる)。吸光値を、例えば、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)を用いて450nmで判定する。GGELの定量は、GrapPad Prismバージョン5.0(GraphPad software社、San Diego、USA)を使用して4パラメータ行にプロットされた標準を使用して行うことができる。結果の正値性の閾値は、3.33標準偏差に加えられたブランクの平均を考慮して決定される。
【0050】
或いは、競合ELISAは、BSA-GGELを、例えば、50mMの重炭酸塩溶液、pH9.50中に10μg/mLの濃度で、マイクロタイタープレート上に吸収させることによって実行することができる。プレートを、例えば、一晩、実験室温度でインキュベートし、その後、例えば、0.5%BSA及び5%ショ糖を添加した0.1Mのリン酸緩衝液で飽和させる。場合によって希釈された、分析対象の試料は、抗GGEL抗体溶液の存在下で、例えば、1時間、37℃で添加される。標準として使用するために、正確な数のGGELで「被覆された」BZGOを、2倍ずつ希釈することができる。洗浄後、例えば、PBSTで3回の洗浄後、二次抗体(例えば、PBST中に1:2000で希釈された)を、例えば、30分間、37℃でインキュベートする。顕色を行う(例えば、TMBを5分間使用し、2NのH2SO4を使用して反応を停止させる)。吸光値を、例えば、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)を用いて450nmで判定する。GGELの定量は、GrapPad Prismバージョン5.0(GraphPad software社、San Diego、USA)を使用して4パラメータ行にプロットされた標準を使用して行うことができる。結果の正値性の閾値は、3.33標準偏差に加えられたブランクの平均を考慮して決定した。
【0051】
別の実施形態では、GGELのレベルは、ラテラルフローイムノアッセイ(LFIA)によって測定される。LFIAは、クロマトグラフィーイムノアッセイである。
【0052】
別の実施形態では、GGELのレベルは、粒子ゲルイムノアッセイ(PaGIA)又はクームスアッセイによって測定される。これらのアッセイでは、結合した抗GGELリガンドと未結合の抗GGELリガンドとの間の分離を、サイズ排除ゲルカラムを介する遠心分離によって行う。
【0053】
間接競合クームスアッセイでは、試料(血清)を数分の間に抗GGEL抗体とプレインキュベートし、次いで、GGEL(例えば、BSA-GGEL)で感作した赤血球(RBC)を添加する。2度目のインキュベーションの後、通常はマイクロチューブ内で、サイズ排除ゲルカラムを介する遠心分離を行って、結合した抗体と未結合の抗体との間を区別する。試料中のGGELの不在下では、抗体は、感作されたRBCに結合し、高分子複合体を形成する。遠心分離後、この複合体はカラムの頂部に残る。GGELが低検出可能濃度レベルを上回って試料中に存在する場合、抗体は、GGELで感作されたRBCを結合する代わりに、試料中に存在するGGELに結合する。遠心分離後、凝集は見られない。アッセイの結果の解釈は、抗GGEL抗体とGGELで感作されたRBCとの間の相互作用によって形成される高分子複合体の存在又は不在に依存する。強力な陰性反応(-)は、完全な凝集に対応し、これは、ゲルの頂部若しくはゲル表面の真下にある赤線として、又はゲルの上部内のみに分布している凝集物によって、見られる。弱い陽性反応(+)は、一部のRBCがマイクロチューブの底に達し、凝集物がゲルの上部内又はゲル全体で依然として確認可能である場合に、識別され得る。陽性反応(+)は、マイクロチューブの底でペレットとして赤血球が完全に沈降し、凝集していない粒子がゲル内で確認可能であることに対応する。
【0054】
アポトーシスのモニタリング
対象におけるアポトーシスをモニタリングするためのエクスビボでの方法であって、
a)対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、本発明に従ったGGELに対するモノクローナル抗体で測定する工程、
b)前記測定された遊離GGELのレベルと対照とを比較する工程、及び
c)対照との比較に基づいて、前記対象におけるアポトーシスをモニタリングする工程
を含む方法が提供される。
【0055】
対照は、健康な対象若しくは対象集団、又は調節不全のアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料中の遊離GGELのレベルに基づいて決定される、単一の値又は広範な値であり得る。典型的には、分析対象の集団は、遊離GGELの測定レベルに基づいて分位数に分割され得る。対照は、中央値、又は第2三分位数、又は第2四分位数若しくは第3四分位数、又は第3五分位数若しくは第4五分位数等として定義され得る。対照はまた、健康な対象若しくは対象集団、又は調節不全のアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料中の平均遊離GGELレベルとして定義され得る。
【0056】
対照はまた、より早い時点に、例えば、調節不全のアポトーシスに関連する疾患の発病前に、同一の対象の血漿試料を分析することによって決定され得る。
【0057】
対照との比較はまた、遊離GGELの測定レベルと、調節不全のアポトーシスに関連する疾患に罹患している患者又は健康な対象集団から得られた血漿プールによって構成されている標準試料において測定された遊離GGELのレベルとを比較することによって行うことができる。
【0058】
前記方法の一実施形態では、対照との比較に基づいて、前記患者におけるアポトーシスをモニタリングする工程は、
(i)対照が健康な対象若しくは健康な対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが対照の遊離GGELレベルよりも高ければ、アポトーシスは対象において上方調節されていると判定し、若しくは、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが対照の遊離GGELレベルよりも低ければ、アポトーシスは対象において下方調節されていると判定する、又は
(ii)対照が、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが、対照の遊離GGELレベル以上であれば、アポトーシスは対象において上方調節されていると判定する、又は
(iii)対照が、下方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが、対照の遊離GGELレベル以下であれば、アポトーシスは対象において下方調節されていると判定する
ことによって行われる。
【0059】
本発明はまた、アポトーシスのモニタリングのための、特に、インビボでのアポトーシスのエクスビボでのモニタリングのための、本発明に従った、ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体の使用に関する。
【0060】
GGELのレベルは、先に記載したように、イムノアッセイ、結合アッセイ、又はクロマトグラフィーによって測定される。
【0061】
アポトーシスのモニタリングは、
a)調節不全のアポトーシス、すなわち、健康な対象と比較して上方調節された(増強した)若しくは下方調節された(低減した)アポトーシスに関連する疾患を診断すること、及び
b)アポトーシス調節物質処置、すなわち、アポトーシス誘導処置若しくはアポトーシス阻害処置の有効性をモニタリングすること
のために行うことができるか、又はそれを可能にする。
【0062】
特に、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患の診断方法であって、
a)対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、本発明に従ったGGELに対するモノクローナル抗体で測定する工程、
b)前記測定された遊離GGELのレベルと対照とを比較する工程、及び
c)対照との比較に基づいて、前記対象が、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患しているか否かを診断する工程
を含む方法が提供される。
【0063】
診断では、
(i)対照が健康な対象若しくは健康な対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが対照の遊離GGELレベルよりも高ければ、前記対象は、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患していると診断される、又は
(ii)対照が、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが、対照の遊離GGELレベル以上であれば、前記対象は、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患していると診断される。
【0064】
「上方調節されたアポトーシスに関連する疾患」には、限定はしないが、
- 神経変性障害、例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、パーキンソン病、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症、小脳変性、
- 血液学的障害、例えば、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、ホジキン病、骨髄異形成症候群、真性多血症、
- 自己免疫障害、例えば、劇症肝炎、移植片対宿主疾患、橋本病、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、
- 虚血性傷害、例えば、虚血再かん流傷害、腎梗塞、心筋梗塞、脳卒中、
- 毒素誘発性の疾患、例えば、アルコール性肝炎、肺線維症、敗血症、
- 細菌若しくはウイルス感染、例えば、HIV(AIDS)、B型肝炎ウイルス若しくはC型肝炎ウイルス、エボラウイルス、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)への感染、
- 又は、外傷性脊髄損傷、腫瘍反撃(免疫特権)
が含まれる。
【0065】
一実施形態では、上方調節されたアポトーシスに関連する疾患は、敗血症である。
【0066】
実際、リンパ球のアポトーシスは、文献に記載された敗血症の兆候であり、B細胞、CD4+T細胞、及び濾胞樹状細胞を減少させる(Hotchkiss RS ら、J Immunol 2001、166、6952~6963)。この免疫抑制の結果、抗体産生、マクロファージ活性化、及び抗原提示は全て減少し、感染性物質に対する耐性の誘発が伴う。
【0067】
下方調節されたアポトーシスに関連する疾患の診断方法であって、
a)対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、本発明に従ったGGELに対するモノクローナル抗体で測定する工程、
b)前記測定された遊離GGELのレベルと対照とを比較する工程、及び
c)対照との比較に基づいて、前記対象が、下方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患しているか否かを診断する工程
を含む方法もまた提供される。
【0068】
診断では、
(i)対照が健康な対象若しくは健康な対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが対照の遊離GGELレベルよりも低ければ、前記対象は、下方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患していると診断される、又は
(ii)対照が、下方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象若しくは対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが、対照の遊離GGELレベル以下であれば、前記対象は、下方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患していると診断される。
【0069】
「下方調節されたアポトーシスに関連する疾患」には、限定はしないが、
- がん、例えば、芽細胞腫、がん腫、白血病、リンパ腫、悪性神経膠腫、肉腫、精上皮腫、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、
- 前がん性疾患、例えば、毛細血管拡張性運動失調症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、骨髄異形成症候群、色素性乾皮症、
- 自己免疫障害、例えば、自己免疫性リンパ増殖症候群(I型及びII型)、全身性エリテマトーデス、免疫介在性糸球体腎炎、
- アテローム性動脈硬化症、
- 代謝障害、例えば、ニーマン・ピック病、骨粗しょう症、ウィルソン病、
- ウイルス感染、例えば、アデノウイルス、バキュロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスへの感染、
- 早期老化、例えば、ダウン症候群、プロジェリア、及び色素性乾皮症
が含まれる。
【0070】
更に、本発明の方法は、アポトーシスレベルに直接的に相関するGGELイソペプチドのレベルの正確な定量を提供する。したがって、特定の治療法の効果又は疾患の進行を、GGELイソペプチドの出現(処置がアポトーシス誘導処置である場合)又はGGELイソペプチドの消滅(処置がアポトーシス阻害処置である場合)について試験することによって、経時的に測定することができる。処置の間、血漿中のGGELイソペプチドのレベルが経時的にモニタリングされて、アポトーシスのレベルが治療的処置に応答して増大又は低下しているかが判定される。
【0071】
したがって、対象におけるアポトーシス誘導処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a)アポトーシス誘導処置を受けている対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、本発明に従った方法で、特に、請求項1から3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を使用するイムノアッセイで測定する工程、
b)工程a)の測定を適時に反復する工程、及び
c)遊離GGELのレベルが経時的に増大すれば、アポトーシス誘導処置が有効であると推定し、又は、遊離GGELのレベルが経時的に不変であるか若しくは低下すれば、アポトーシス誘導処置が有効ではないと推定する工程
を含む方法が提供される。
【0072】
アポトーシス誘導処置には、例えば、
- Bcl-2等の抗アポトーシスタンパク質を阻害する作用物質、例えば、オブリメルセンナトリウム(bcl-2アンチセンス)、酪酸ナトリウム、デプシペプチド、フェンレチニド、フラボピリドール、ゴシポール、ABT-737(CAS 852808-04-9)、siRNA、又はアンチセンス標的化Bcl-2、
- p53に基づく遺伝子療法、
- Phikan083(CAS 880813-36-5)、CP-31398二塩酸塩(CAS 1217195-61-3)、ヌトリン-3(CAS 548472-68-0)等のヌトリン等での、p53に基づく薬剤療法、
- IAPSを阻害する作用物質(アポトーシスタンパク質の阻害剤:タンパク質BIRC1~8、スルビビン)、例えば、siRNA又はアンチセンス標的化XIAP(BIRC4)、
- カスパーゼに基づく薬剤療法、例えばアポプチン
が含まれる。
【0073】
アポトーシス誘導因子には、特に、アクチノマイシン、アピシジン、ベンダムスチン塩酸塩、ベツリン酸、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クラドリビン、ドキソルビシン塩酸塩、フルダラビン、ガンボギン酸、ケンペロール、2-メトキシエストラジオール、マイトマイシンC、ピペルロングミン、及びプルンバギンが含まれる。
【0074】
したがって、対象におけるアポトーシス阻害処置の有効性をモニタリングするための方法であって、
a)アポトーシス阻害処置を受けている対象の血漿試料中の、遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを、本発明に従った方法で、特に、請求項1から3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を使用するイムノアッセイで測定する工程、
b)工程a)の測定を適時に反復する工程、及び
c)遊離GGELのレベルが経時的に低下すれば、アポトーシス阻害処置が有効であると推定し、又は遊離GGELのレベルが経時的に不変であるか若しくは増大すれば、アポトーシス阻害処置が有効ではないと推定する工程
を含む方法が提供される。
【0075】
アポトーシス阻害処置には、例えば、c-Myc阻害剤、Bax介在性のアポトーシス阻害剤、カスパーゼ阻害剤、ボンクレキン酸、CTP阻害剤、カルペプチン(rhoキナーゼ阻害剤)、クロファラビン(プリンヌクレオシド代謝拮抗物質)、コンブレタスタチンA4、ファセンチン(Fasentin)(細胞をFAS誘導型細胞に対して感作させる、グルコース取り込みの阻害剤)が含まれる。
【0076】
敗血症の診断及び/又はモニタリングの方法
敗血症は、重度の感染、典型的には、肺炎又は胃腸感染又は尿路感染を伴う症候群であり、その成功裏の治療は、依然として、非常に重要な未だ解決されていない臨床的要求である。敗血症は、集中治療室(ICU)にいる患者及び入院患者の死亡の大部分を占める、先進国における主な死因である。欧州では、敗血症に毎年約75万人の患者が罹患しており(米国での統計も同様である)、死亡率は約40%である。公共医療の費用は、患者当たり1万5千から2万ユーロの間と推定され、毎年平均100億ユーロの費用となっている。
【0077】
ICUにいる患者は、発熱、頻拍、呼吸速度の上昇、又は白血球数異常を有する。これらの症候は、敗血症、すなわち感染に対する命に関わる全身性炎症応答の発病の前触れであり得るか、又は、これらの症候は、外傷若しくは多くの他の状態の結果であり得る。血液培養の結果は、一研究では40パーセントという(Vincent J.L.ら、Crit Care Med. 2006年2月、34(2):344~53)、高い偽陰性率を有し、最大72時間の間は得ることができない。一刻の猶予もなく、治療が遅延する1時間毎に死亡の可能性が増大する(Kumar A.ら、Crit Care Med. 2006、34(6):1593)。不適切な抗生物質の使用は、患者に不都合な副作用を生じさせ得、薬剤耐性細菌の発生を促進する。
【0078】
敗血症をその早期でも迅速且つ正確に診断する能力は、依然として、臨床チームが直面する最大の課題の1つである。疑わしい敗血症の早期の診断及び治療が、命に関わる合併症を予防するために必須である。
【0079】
敗血症の診断は、現在、感染の兆候が非常に不均一であるために、確立することが困難である。この事実に起因して、1992年に、ACCP(American College of Chest Physicians)及びSCCM(Society of Critical Care Medicine)を含む、敗血症についての国際会議は、敗血症を「感染に対する全身性炎症反応症候群(SIRS)」であると定義した(Bone RC.、JAMA. 1992年12月23日~30日、268(24):3452~5; Levy MMら、SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS.、Crit Care Med. 2003年4月、31(4):1250)。患者の評価を更に容易にするために、病状を以下のいくつかのステージに分けた:
- 炎症応答に対応するSIRS、
- 感染に対する調節不全の宿主応答によって生じる、命に関わる臓器機能障害として定義される、敗血症、
- 特に大規模な循環異常、細胞異常、及び代謝異常が、敗血症単独よりも高い死亡リスクを伴う、敗血症の亜集団として定義される、敗血症性ショック。
【0080】
敗血症診断の代表は、従来から、病原を同定するための微生物培養物の使用である。しかし、培養物の使用の主な限界は、培養物を同定可能量まで成長させるために必要な時間が長いことである。成長が遅い及び培養不可能な微生物、並びに非常に低い濃度で存在する微生物を含む培養物もまた、いくつかの条件下では非感受性であると報告されている。これらの不都合に照らして、敗血症の迅速な及び/又は自動化された診断を可能にする、分子に基づく試験を使用する代替的な診断方法が開発されている。これらの試験には、ELISAキット、フローサイトメトリー、免疫発光アッセイ、PCR試験、自動微生物学系、及びFISH技術が含まれ、これらは全て、敗血症の主な原因となる細菌を検出することを目的としている。
【0081】
予後スコアリング系は、大規模な代表的データベースに対するその全体的な性能の比較を可能にすることによって、ICUの質評価を容易にし得る。3つの一般に使用されるスコアリング系は、Acute Physiology and Chronic Health Evaluation (APACHE)、Simplified Acute Physiology Score (SAPS)、及びMortality Probability Model (MPM)である。最近の研究によって、APACHE-IVスコアリング系及びSAPS-IIスコアリング系の予測死亡率が、重度の敗血症及び敗血症性ショックを有する患者の実際の死亡率と相関しなかったことが示された(Dabhi AS、Khedekar SS、Mehalingam V、J Clin Diagn Res. 2014年10月、8(10):MC09~13)。
【0082】
感染性微生物のより速くより感受性の高い検出方法の開発と並行して、特異的血清タンパク質バイオマーカー濃度の異常な変化をモニタリングする系が開発されている。バイオマーカーは、正常な生物学的プロセス又は病原性プロセスの指標として客観的に測定及び評価される特徴として定義するのが最も的確である。数百のバイオマーカーが、敗血症のより迅速な、より特異的な、且つより正確な診断に対する要求を満たし得る信頼性のあるマーカーを同定するための試みにおいて試験されている。
【0083】
敗血症のメカニズムについての研究によって、178の潜在的バイオマーカーが同定された(Pierrakos C、Vincent JL、Critical care、2010、14:R15)。これらのバイオマーカーは、感染のバイオマーカー、炎症のバイオマーカー、止血のバイオマーカー、及びアポトーシスのバイオマーカーの4つのカテゴリーに分類された。これらのバイオマーカーは、SIRSを有する患者を、敗血症を有する患者から区別するために役立ち得る(プロカルシトニン、CD64、又はs-TREM-1等)。しかし、これらのマーカーでも患者の正確な分類は可能にならず、これらのマーカーは、プロカルシトニン陽性患者(Kim HSら、Ann Clin Lab Sci. 2012 Winter、42(1):57~64)についての既存のプロトコル又はC-反応性タンパク質と組み合わせて使用されなくてはならない。
【0084】
炎症マーカーについての研究によって、最初の炎症誘発性応答の後に免疫抑制相が続くことが示され、このことは、敗血症の進行における免疫応答のいくつかの欠陥についてのエビデンスを提供する(Wesche DEら、J Leukoc Biol.、2005年8月、78(2):325~37)。実際、宿主の炎症応答は、炎症誘発性メディエーター(SIRS)と抗炎症性メディエーター(CARS)との間の平衡である。SIRSのメディエーターには、腫瘍壊死因子(TNF)及び炎症誘発性サイトカインがあり、一方、CARSのメディエーターには、IL1受容体のアンタゴニスト及びIL10がある。敗血症性ショックの発症の間、SIRS及びCARSのメディエーターの制御された発現は混乱し、それによって、過剰な炎症誘発性応答が生じる。
【0085】
これらのマーカーは敗血症の発症をモニタリングするために使用され得るが、これらは、早期の敗血症を後期の敗血症及び重度の敗血症の始まりから容易に区別するにはそれほど特異的でも感受性でもない。
【0086】
本発明は、患者を選別するための、しかしまた重度の敗血症に向かう敗血症の進行をモニタリングするためのバイオマーカーの迅速で信頼性のある検出を可能にする、敗血症の検出のための、特に早期の敗血症の検出のための方法、ツール、及びキットを提供することを目的とする。
【0087】
本発明者らは、遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)が、敗血症の、特に早期の敗血症の有効なバイオマーカーであることを示した。
【0088】
疑わしい敗血症のケースでは、診断をできるだけ早く受けて適切な治療を受けられるようにすることが重要である。これは敗血症の進行を止めるのに役立ち得、身体への長期のダメージ又は死亡のリスクを低減させ得、現在のところ、敗血症が同定されて一度治療が開始されると、平均生存期間は最長28日と推定されている。
【0089】
「敗血症」は、局所化しているが重篤な感染に対する全身性の応答であり、これは通常、細菌由来であるが、真菌、ウイルス、又は寄生生物由来でもあり得る。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及びストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)は、最も一般的なグラム陽性単離菌であり、一方、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ属(Klebsiella)の種、及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、グラム陰性単離菌の大部分を占める。エンドトキシンは、複製中の又は死亡していくグラム陰性細菌から血流内に放出され、こうして、敗血症の炎症性カスケードを開始させる。
【0090】
敗血症及び敗血症性ショックは、Table 1(表1)に詳述する通りに定義される。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
本明細書において使用される場合、「早期敗血症」は、敗血症の発病の0日目から3日目にわたる、好ましい実施形態では敗血症の発病の0日目から1日目にわたる敗血症相を示す。
【0094】
一実施形態に従うと、本発明は、対象における敗血症を診断するためのエクスビボでの方法であって、
a)対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを測定する工程、
b)前記測定された遊離GGELのレベルと対照とを比較する工程、及び
c)対照との比較に基づいて、前記対象が敗血症に罹患しているかどうかを判定する工程
を含む方法に関する。
【0095】
前記方法は、早期の敗血症において誘導される細胞のアポトーシス後に循環内に放出された遊離GGELの検出に依存する。
【0096】
特に、本方法は、有利には、早期敗血症の診断を可能にする。
【0097】
対照は、健康な対象若しくは対象集団、又は敗血症に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料中の遊離GGELのレベルに基づいて決定される、単一の値又は広範な値であり得る。典型的には、分析対象の集団は、遊離GGELの測定レベルに基づいて分位数に分割され得る。対照は、中央値、又は第2三分位数、又は第2四分位数若しくは第3四分位数、又は第3五分位数若しくは第4五分位数等として定義され得る。対照はまた、健康な対象若しくは対象集団、又は敗血症、好ましくは早期敗血症に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料中の平均遊離GGELレベルとして定義され得る。
【0098】
対照はまた、より早い時点に、例えば、敗血症の発病前に、又は敗血症が疑われる前に、同一の対象の血漿試料を分析することによって決定され得る。
【0099】
対照との比較はまた、遊離GGELの測定レベルと、敗血症を有する患者又は健康な対象集団から得られた血漿プールによって構成されている標準試料において測定された遊離GGELレベルとを比較することによって行うことができる。
【0100】
一実施形態では、対照との比較に基づく、前記患者が敗血症に罹患しているとの判定は、
(i)対照が健康な対象若しくは健康な対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが対照の遊離GGELレベルよりも高ければ、対象が敗血症に罹患していると判定する、又は
(ii)対照が、敗血症に罹患している対象若しくは対象集団に由来する場合、対象の血漿試料中の遊離GGELのレベルが、対照の遊離GGELレベル以上であれば、対象が敗血症に罹患していると判定すること
によって行われる。
【0101】
好ましくは、対照が、敗血症に罹患している対象又は対象集団に由来する場合、対照は、早期敗血症、好ましくは、発病後1日目以内の敗血症に罹患している対象又は集団に由来する。
【0102】
本発明の方法に従った遊離GGELイソペプチドのレベルの測定によって敗血症と診断された対象は、更に、以下に記載するような、重度の敗血症に向かう敗血症の進行をモニタリングするためのエクスビボでの方法によって、重度の敗血症に向かう進行の可能性をモニタリングされ得る。
【0103】
マーカー診断の性能は、敗血症集団を検出するその能力に相当する感度、及び対照集団を検出するその能力に相当する特異性によって特徴付けされ得る。
【0104】
診断試験の評価の結果は、これらの2つの明確に定義された集団を比較する2×2の分割表にまとめることができる。カットオフを固定することによって、2つの集団を試験の結果に従って、陽性又は陰性のいずれかのカテゴリーに分類することができる。特定のマーカーがあれば、a「ケース」集団の中で、陽性試験結果を伴う対象の数を同定することができ(「真陽性」:TP)、b「対照」集団の中で、陽性試験結果を伴う対象の数を同定することができる(「真陰性」:TN)。同様の様式で、cケースの中で、陰性試験結果を伴う対象(「偽陽性」:FP)が見られ、d対照の中で、陰性試験結果を伴う対象(「偽陰性」:FN)が見られる。感度はTP/(TP+FN)と定義され、これは、本明細書では、「真陽性率」と呼ばれる。特異性はTN/(TN+FP)と定義され、これは、本明細書では、「真陰性率」と呼ばれる。
【0105】
以下の実施例4のTable 7(表7)で報告されるように、遊離GGEL定量の特異性は、発病の1日目の敗血症診断では91%、発病の3日目の敗血症診断では100%、及び発病の1日目から3日目の敗血症診断では95.45%と評価された。
【0106】
遊離GGELの正確度及びその識別能もまた、受信者操作特性(ROC)分析を使用して評価した(図5及びTable 8(表8)を参照されたい)。ROC曲線は、様々な値についての試験の感度(Se)と特異性(Sp)との間の相反関係のグラフによる可視化である。
【0107】
mROCは、ROC曲線のAUC(曲線下面積)を最大化する線型結合を同定するための、Kramarら、(Comput Methods Programs Biomed、2001、66:199~207)によって開発されたプログラムである。このプログラムの使用は、例えば、Staackら、BMC Urol 2006、6:19に記載された。このプログラムは、ROC曲線下面積の推定でもある順位相関推定を最大化するためのアルゴリズムを実行する(Su及びLiu. Journal of the American Statistical Association 1993、88:1350~1355; Wang、Computational Statistics and Data Analysis 2007、51:2803~2812)。
【0108】
ROC曲線は、マーカーに基づく試験の偽陽性率(すなわち、[1-特異性]、特異性は真陰性率である)に対する感度(又は真陽性率)を表すグラフである。ROC空間は、それぞれx軸及びy軸の感度及び(1-特異性)によって規定される。最も可能性のある予測方法では、100%の感度(偽陰性なし)及び100%の特異性(偽陽性なし)を表す、ROC空間の左上の角又は座標(0,1)における点が得られる。完全にランダムな推測では、左下の角から右上の角への対角線(いわゆる非識別線)に沿った点が得られる。対角線はROC空間を分ける。対角線より上にある点は、良好な分類結果(ランダムより良好)に相当し、対角線より下にある点は不良な結果(ランダムより悪い)に相当する。ROC曲線の曲線下面積(AUC)が計算され得る。AUCが大きいほど、診断マーカーの診断正確度が高い。
【0109】
本発明は更に、敗血症の診断及び/又はモニタリングのための、GGELに対する、又はGGELに特異的なリガンドの使用に関する。
【0110】
一実施形態では、前記リガンドは、早期敗血症を診断するために使用される。前記使用では、リガンドは、遊離GGELを測定するために利用される。
【0111】
ラテラルフローイムノアッセイ装置
本発明は更に、本発明に従った、配列GYTFTSY(配列番号3)のCDR-H1、配列NPSNGG(配列番号4)のCDR-H2、配列SGLLLWSPWFAY(配列番号5)のCDR-H3、配列RASENIYSYLA(配列番号6)のCDR-L1、配列NAKTLAE(配列番号7)のCDR-L2、及び配列QHHYGTPFT(配列番号8)のCDR-L3を含む、GGELに特異的なモノクローナル抗体を含む、ラテラルフローイムノアッセイ装置に関する。
【0112】
ラテラルフローイムノアッセイ装置は、検出区域2を含む試験片1を含み、検出区域は、GGELに特異的な前記モノクローナル抗体が固定化された試験領域3、及び対照領域4を含む。
【0113】
試験片は、ラテラルフロー方向に沿った流体のラテラルフローをサポートし、1つ又は複数の試験領域及び1つ又は複数の対照領域は、光学検査又は目視検査に曝露される領域を含む。試験片は、典型的には、膜、特に多孔膜である。
【0114】
ラテラルフローイムノアッセイ装置は、通常、更に、吸収パッド5(試験片(又は膜)の頂部に位置して、流動液体の容積を増大させる)、試料ポート7、及び試料パッド6(アッセイ対象の液体試料と試験片(又は膜)との間の接触を確実にする)、及び堅固なバッキング(ハウジング8)を含む。
【0115】
一実施形態では、ラテラルフローイムノアッセイ装置は、間接競合LFIAとして設計される。金標識された抗体を利用する間接競合LFIAは、広く記載されている。
【0116】
この実施形態では、ラテラルフローイムノアッセイ装置は更に、金標識された抗GGEL特異的抗体及び金標識された非特異的免疫グロブリン(特にIgG)を含む、コンジュゲートパッド9を含む。
【0117】
金標識された抗GGEL特異的抗体は、液体試料中に懸濁され、膜を介して流され、この膜において、前記抗体は、「試験ライン」10内に被覆されたGGEL抗原(例えば、BSA-GGELとして)と最初に接触する。アッセイ対象の試料におけるGGEL標的化合物の不在下では、金標識された抗GGEL特異的抗体は、被覆されたGGEL抗原に結合し、「試験ライン」に集められ、その結果、可視的なバンドが形成される。第2の「対照ライン」11が続き、これは、あらゆる過剰な抗GGEL特異的抗体を捕捉する二次抗種抗体(非特異的γ-グロブリン)から構成される。「対照ライン」の出現は、液体が膜を介して良好に移動したことを裏付けるものとして見なされ得る。GGEL標的化合物が、アッセイ対象の試料中に低検出可能濃度レベルより上回って存在する場合、試験ラインにおける被覆されたGGEL抗原への金標識された抗GGEL特異的抗体の結合は、抗GGEL特異的抗体と試料中に存在するGGELとの最初の相互作用に起因して阻害され、その結果、非可視的な「試験ライン」となる。
【0118】
アッセイ結果の解釈は、試験ライン及び対照ラインの両方の存在及び強度に依存する。2つの強力なラインは、試験が妥当であること、及び試料が陰性である(すなわち、試料中のGGELが、この方法の検出限界を下回っている)ことを示す。強力な対照ライン及び弱い試験ラインは、試験が妥当であること、及び試料中のGGEL量が検出限界に近いことを示す。強力な対照ラインは、試験が妥当であること、及び試料が陽性である(試料中のGGEL量が検出限界を上回っている)ことを示す。強力な又は弱い試験ラインは、試験が妥当でないことを示す。
【0119】
治療方法
本発明はまた、それを必要とする対象における調節不全のアポトーシスに関連する疾患を治療する方法であって、
a)調節不全のアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象にアポトーシス調節処置を施す工程、
b)本発明に従ったアポトーシスのモニタリング方法を実行することによって、前記処置が対象におけるアポトーシスを調節するかどうかをモニタリングする工程、及び
c)工程b)のモニタリングの結果に基づいて、アポトーシス調節処置を継続又は修正する工程
を含む方法に関する。
【0120】
一実施形態では、本発明はまた、それを必要とする対象における上方調節されたアポトーシスに関連する疾患を治療する方法であって、
a)上方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象に、アポトーシス阻害処置を施す工程、
b)本発明に従ったアポトーシスのモニタリング方法を実行することによって、前記処置が対象におけるアポトーシスを阻害するかどうかをモニタリングする工程、及び
c)工程b)のモニタリングの結果が、処置が対象におけるアポトーシスを阻害することを示せば、アポトーシス阻害処置を継続する、又は、工程b)のモニタリングの結果が、処置が対象におけるアポトーシスを阻害しないことを示せば、処置を修正する工程
を含む方法に関する。
【0121】
一実施形態では、本発明はまた、それを必要とする対象における下方調節されたアポトーシスに関連する疾患を治療する方法であって、
a)下方調節されたアポトーシスに関連する疾患に罹患している対象に、アポトーシス誘導処置を施す工程、
b)本発明に従ったアポトーシスのモニタリング方法を実行することによって、前記処置が対象におけるアポトーシスを誘導するかどうかをモニタリングする工程、及び
c)工程b)のモニタリングの結果が、処置が対象におけるアポトーシスを誘導することを示せば、アポトーシス誘導処置を継続する、又は、工程b)のモニタリングの結果が、処置が対象におけるアポトーシスを誘導しないことを示せば、処置を修正する工程
を含む方法に関する。
【0122】
本発明は更に、それを必要とする対象における敗血症を治療する方法であって、
a)本発明の敗血症の診断方法、すなわち、
i.対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドのレベルを測定する工程、
ii.前記測定されたGGELのレベルと対照とを比較する工程、及び
iii.対照との比較に基づいて、前記対象が敗血症に罹患しているかどうかを判定する工程
を含む方法によって、敗血症を有する疑いがある対象における敗血症を診断する工程、並びに
b)敗血症に対する治療的処置を、敗血症に罹患していると診断された対象に施す工程
を含む方法に関する。
【0123】
本発明はまた、前記対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドの測定に基づいて敗血症に罹患していることが分かっている対象に、敗血症に対する治療的処置を施す工程を含む、それを必要とする対象における敗血症を治療する方法に関する。
【0124】
本発明はまた、前記対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドの測定に基づいて敗血症に罹患していることが分かっている対象における敗血症の治療に使用するための、敗血症に対する治療的処置に関する。
【0125】
一実施形態では、前記対象の血漿試料中の遊離ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)イソペプチドの測定に基づいて敗血症に罹患していることが分かっている前記対象は、本発明に従った敗血症の診断のためのエクスビボでの方法によって事前に診断されている。
【0126】
したがって、本発明はまた、本発明の方法によって敗血症を診断することを含む、対象における敗血症の治療に使用するための、敗血症に対する治療的処置に関する。
【0127】
敗血症に対する治療的処置は、好ましくは敗血症が診断されたらできるだけ早く、広域抗生物質(すなわち、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の両方に対する活性を有する抗生物質)を投与することを含む。広域抗生物質には、例えば、ストレプトマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、フェニコール、フルオロキノロン、「第3世代」及び「第4世代」セファロスポリンが含まれる。
【0128】
抗生物質の選択は、典型的には、考えられる感染源、局所的方針に依存し、微生物学的分析後の適切な抗生物質の選択を伴い得る。抗生物質療法は、毒性、及び耐性のリスクを低減させるために、毎日再検討され得る。
【0129】
敗血症が重度の敗血症に向かって進行すると判定されたら、敗血症治療は、治療に対する耐性が疑われる場合には抗生物質を変更することによって、並びに/又はより侵襲性のモニタリング及び治療の下に対象を置くことによって、修正される。
【0130】
キット
本発明はまた、
a)本発明に従ったガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体、及び
b)対照
を含む、アポトーシスのモニタリングのためのキットに関する。
【0131】
本発明は、特に、
a)本発明に従ったガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体、及び
b)対照
を含む、敗血症の診断及び/又はモニタリングのためのキットに関する。
【0132】
キットが敗血症の診断のためのものである場合、キットは、少なくとも対照の遊離GGELレベルを含む。対照は、健康な対象若しくは対象集団、又は敗血症、好ましくは早期敗血症に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料中の遊離GGELのレベルに基づいて決定される、単一の値又は広範な値であり得る。典型的には、分析対象の集団は、遊離GGELの測定レベルに基づいて分位数に分割され得る。対照は、中央値、又は第2三分位数、又は第2四分位数若しくは第3四分位数、又は第3五分位数若しくは第4五分位数等として定義され得る。対照はまた、健康な対象若しくは対象集団、又は敗血症、好ましくは早期敗血症に罹患している対象若しくは対象集団の血漿試料中の平均遊離GGELレベルとして定義され得る。対照はまた、敗血症、好ましくは早期敗血症を有する患者又は患者集団から得られた血漿のプールであり得る。
【0133】
一実施形態に従うと、キットの構成要素は、ラテラルフローイムノアッセイ装置上に吸着されている。
【0134】
別の実施形態に従うと、キットは更に、赤血球(RBC)及びGGELを含む。好ましくは、前記キットは、RBC上に被覆されたGGEL、及び本発明に従ったGGELに特異的な前記モノクローナル抗体を含む。このようなキットは、GGELイムノアッセイをクームスアッセイフォーマットで実行するのに適している。
【0135】
本発明を、以下の図面及び実施例を考慮して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】トランスグルタミナーゼ反応によるN-ε-(γ-グルタミル)-L-リジンイソペプチド結合の形成を示す図である。
図2】標準曲線を使用するGGEL濃度の定量を示す図である。GGEL量が分かっている標準化されたBZGOを、GGELの定量のための標準として使用した。標準曲線を、SoftMax Pro 6.5を使用して4-パラメータ行を使用して計算した。
図3】HL60細胞における1μmol/Lのスタウロスポリン(STS)によるアポトーシス誘導後のGGEL定量を示す図である。アポトーシス誘導された細胞群におけるGGEL濃度は、アポトーシスを誘導されなかった細胞群におけるGGEL濃度と有意には異ならなかった(P値<0.05)。
図4】敗血症の血漿におけるGGEL定量の結果を示す図である(PBS-T20: Tween 20を伴うリン酸緩衝生理食塩水=陰性対照、ブランク血漿=対照血漿、血漿敗血症D1=+1日目の敗血症患者の血漿、血漿敗血症D3=+3日目の敗血症患者の血漿)。
図5】ブランク血漿が試験の閾値を決定するために使用されたことを示す図である(V=μ×3SD)。特異性及び感度のデータが得られ、その結果、特異性はD1群で91%、D+3群では100%であり、組合せ群(D1 + D+3)では95.45%であった。試験のROC曲線を得た。全ての血漿は1/20で希釈されている。
図6】典型的なラテラルフローイムノアッセイ装置を示す図である。
図7】異なる病状間のGGEL定量を示す図である。
図8】異なる病状における時点T1とT2との間のGGEL血漿濃度を示す図である。
【実施例
【0137】
(実施例1)
ガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)に特異的なモノクローナル抗体の開発
材料及び方法
mAbの開発、免疫原の調製、及び免疫化レジメ。
マウスを、グルタルアルデヒドを介してキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合したガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)で免疫化し、次いで、リン酸緩衝生理食塩水に対して透析した(1×(PBS))。
【0138】
25μgの抗原溶液を100μLのPBSに溶解した。6週齢のBALB/cマウス及びSJLメス白色マウスに、1週間間隔で免疫原を4回結節内注射し、融合の3日前に、1回の腹腔内注射を行った。
【0139】
ハイブリドーマの産生及びスクリーニング。
ハイブリドーマ細胞を、Galfre及びMilstein(1981)のいずれかの箇所に記載されている方法によって産生した。上清を、Maxisorpマイクロタイタープレートのウェルに固定化されたウシ血清アルブミン(BSA)に結合したGGELに対する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってスクリーニングした。固定化された抗原を含有するウェルを、ハイブリドーマ上清と1時間インキュベートし、その後、0.05%のTween 20を含有するPBS(PBST)中に1対2000で希釈したヤギ抗マウス(H+L)ペルオキシダーゼコンジュゲートと1時間インキュベートした。結合した抗体を、ウェルをテトラメチルベンジジン基質(TMB)と5分間インキュベートすることによって視覚化し、2NのH2SO4で反応を停止させた。吸光値を、450nmで、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)で判定した。ウェルを、各インキュベーションの間にPBSTで4回すすいだ。作業容積はウェル当たり100μLであり、対照ウェルは培養培地とインキュベートした。全てのインキュベーションは、37℃で行った。ELISAにおける抗体検出の閾値を、陰性対照の平均から決定した。
【0140】
Igサブクラスの判定及びクローニング手順。
mAbのIgクラスを、市販のマウスmAbアイソタイピングキット(ISO-1)を製造者の指示に従って(Sigma社)用いて判定した。このプロジェクトのために開発された全ての抗体は、IgMであった。ハイブリドーマ細胞系を、限界希釈によってクローニングし、細胞系を非選択培地において大量に成長させ、ウシ胎児血清/ジメチルスルホキシド(92:8[容積/容積])中でゆっくりと凍結させることによって保存し、液体窒素中で保管した。
【0141】
抗体の沈殿。
選択されたハイブリドーマを、10%ウシ胎児血清(FCS)を添加したRPMI-1640中で培養した。インキュベーター内で、37℃、5%CO2、及び95%湿度で2週間培養した後、上清を水に対して透析して、IgMを3回沈殿させた。2000gで30分間、+4℃での遠心分離の後、ペレットを、1MのNaClを添加した20mMのリン酸緩衝液、pH8.00中で再懸濁した。次いで、PBSに対する透析を3回行った。沈殿した抗体の濃度を、Spectradrop(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)を用いて280nmでの吸光度を使用して計算した。
【0142】
抗体の特異性の決定。抗原性タンパク質の合成。
選択された各ハイブリドーマの特異性を検証するために、イソペプチド(GGEL)を模倣する抗原性タンパク質を、以下のように合成した。
【0143】
- GGELを、グルタルアルデヒドを架橋剤として使用して、ウシ血清アルブミン(BSA)に結合させた(GGEL-BSA)。そのために、1MのGGEL/NaOH溶液0.36mg/ml、151nMのBSA、及び2.5%グルタルアルデヒド(10mg/ml)を混合し、一晩インキュベートした。透析を、PBSに対して3回行った。
【0144】
- N-アルファ-Cbz-L-リジンメチルエステル(Z-GluOme)を、(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を架橋剤として使用して、BSA(BZGO)に結合させた(LysOMe-BSA)。BSA(BZGO)に結合したN-アルファ-Cbz-グルタミン酸メチルエステルと、GGELイソペプチドとの結合は、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)及びNHSを使用して、Z-GluOmeのリジンとBSAのリジンとの間で生じた。490μmol/LのEDC/524μmol/LのNHS、及び295mmol/LのZ-GluOmeを、ジメチルホルムアミド(DMF)中に希釈し、15分間、室温でインキュベートした。0.1Mのリン酸緩衝液、pH8.00に希釈した2mg/mlのBSAを添加し、一晩インキュベートした。透析を、PBSに対して3回行った。
【0145】
- BSAに結合したN-アルファ-Cbz-グルタミン酸-Tert-ブチルエステル(GluOter-BSA)と、GGELイソペプチドとの結合は、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)及びNHSを使用して、Z-GluOterのリジンとBSAのリジンとの間で生じた。490μmol/LのEDC/524μmol/LのNHS、及び295mmol/LのZ-GluOterを、ジメチルホルムアミド(DMF)中に希釈し、15分間、室温でインキュベートした。0.1Mのリン酸緩衝液、pH8.00に希釈した2mg/mlのBSAを添加し、一晩インキュベートした。透析を、PBSに対して3回行った。
【0146】
望ましくないイソペプチド(アルファ-グリシン-L-イプシロン-リジン、ユビキチンイソペプチド)、リジンのアセチル化、又はポリアミン架橋を模倣する抗原性タンパク質を、以下のように合成した。
【0147】
- N-アルファ-Boc-グリシンを、EDC及びNHSをカップリング剤として使用して、BSAに結合させた(Boc-Gly-BSA)。
【0148】
- スペルミジンを、EDC/NHSを使用して、ポリ-L-グルタミン酸に結合させた(Spd-pGlu)。
【0149】
- BSAを無水酢酸で処理して、タンパク質(リジン)の第一級アミンをアセチル化した(BSA-Ac)。
【0150】
BSA上に生じたGGELイソペプチドの量を評価するために、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試験での第一級アミンの定量を行った。タンパク質を、0.01%TNBSを添加した0.1mol/Lの重炭酸塩溶液中に100μg/mLで希釈した。37℃で2時間インキュベーションした後、1Nの塩酸(HCl)で反応を停止させた。光学密度を、335nmで、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)で読み取った。
【0151】
【表3A】
【0152】
【表3B】
【0153】
【表4】
【0154】
抗体特異性の判定。競合ELISA。
選択されたクローンを、クローンの特性を判定するために、競合ELISA試験を使用して試験した。したがって、BSA-GGELを、マイクロタイタープレート上に、重炭酸塩緩衝液、pH9.50中に10μg/mLの濃度で吸着させた。ある濃度の精製抗体(2μg/mLの1G1h1、又は0.5μg/mLのAB424)を、5μg/mLの開始濃度で段階的に2倍ずつ希釈された、Table 3(表3)及びTable 4(表4)の各競合抗原性タンパク質とインキュベートした。37℃で1時間インキュベートした後、マイクロタイタープレートを洗浄し、ヤギ抗マウス(H+L)ペルオキシダーゼコンジュゲートを30分間、37℃で添加した。TMBを5分間使用して顕色を行い、2NのH2SO4を使用して反応を停止させた。吸光値を、450nmで、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)で判定した。ウェルを、各インキュベーションの間にPBSTで4回すすいだ。作業容積はウェル当たり100μLであり、対照ウェルは培養培地とインキュベートした。各抗原性タンパク質の比較は、最初のシグナル(いかなる競合物質も伴わない)の50%の阻害濃度を計算することによって行った。
【0155】
結果
配列
【0156】
【化1】
【0157】
の重鎖の可変ドメイン、及び配列
【0158】
【化2】
【0159】
の軽鎖の可変ドメインを含む、いわゆる1G1h1抗GGELモノクローナル抗体を単離した。IMGTの定義に従って同定されたCDRを、下線を引いた太字で表す。
【0160】
単離1G1h1抗体の特異性を判定し、事前に特徴付けされている市販のAB424抗体(Thomasら、2004、J. Immunol. Methods 292、83~95)と比較した。
【0161】
1G1h1抗体及びAB424抗体の両方がD二量体を検出し、それらの力価に有意差がないことが判定された(1G1h1では2.5μg/mL、AB424では0.6μg/mL)。
【0162】
1G1h1抗体及びAB424抗体の特異性を、Table 3(表3)及びTable 4(表4)に記載の抗原性タンパク質をGGELに対する競合ELISAにおいて使用して、更に判定した。結果をTable 5(表5)に示す。
【0163】
IC50は、差の1対数が2つのIC50の間で見られる場合に、別のIC50と有意に異なると見なされる。
【0164】
【表5】
【0165】
各抗原性タンパク質のIC50を評価し、1G1h1では、減少の1対数が、GGEL様タンパク質(Table 3(表3))と陰性対照タンパク質(Table 4(表4))との間で観察された。
【0166】
1G1h1抗体が、GGEL-BSA、ZGluOter-BSA、及びZLysOme-BSA抗原性タンパク質に特異的であること、したがって、1G1h1抗体が、他の架橋された又は修飾されたリジンと比較してGGELイソペプチドに特異的であることが結論付けられた。
【0167】
逆に、AB424抗体は、イソペプチドN1,N8ビス(ガンマ-グルタミル)スペルミジンと交差反応するが、GGELの競合抗原ZGluOter-BSAは結合しない。
【0168】
したがって、1G1h1抗体は、市販のAB424抗体と比較してGGELに対する特異性が増強している。
【0169】
(実施例2)
1G1h1モノクローナル抗体でのガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)の定量
材料及び方法
競合ELISAによるGGELの定量。競合ELISA。
BSA-GGELを、50mMの重炭酸塩溶液、pH9.50中に10μg/mLの濃度で、マイクロタイタープレート上に吸着させた。プレートを一晩、実験室温度でインキュベートした。飽和を、0.5%BSA及び5%ショ糖を添加した0.1Mのリン酸緩衝液で行った(図3、工程1)。希釈した試料を、抗体溶液の存在下で1時間、37℃で添加し、正確な数のGGELが「被覆された」BZGOを2倍ずつ希釈し、標準として使用した(図3、工程2及び工程3)。PBSTで3回洗浄した後、PBST中に1:2000で希釈した二次抗体を、30分、37℃でインキュベートした。TMBを5分間使用して顕色を行い、2NのH2SO4を使用して反応を停止させた(図3、工程4)。吸光値を、450nmで、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)で判定した。GGELの定量を、GrapPad Prismバージョン5.0(GraphPad software社、San Diego、USA)を使用して4パラメータ行にプロットされた標準を使用して行った。結果の正値性の閾値を、3.33標準偏差に加えられたブランクの平均を考慮して決定した。
【0170】
結果
1G1h1抗体を、競合ELISAによるGGELの定量に使用した。既知量のGGELを伴うBSA(BZGO)に結合した標準化されたN-アルファ-Cbz-グルタミン酸メチルエステル(Z-GluOme)を、GGELの定量のための標準として使用した。図2は、SoftMax Pro 6.5を使用して4-パラメータ行を使用して計算されたGGEL濃度の定量についての標準曲線を示す。
【0171】
4-パラメータ行を使用する曲線当てはめは、以下の通りである。
【0172】
【数1】
【0173】
【表6】
【0174】
この抗GGEL 1G1h1モノクローナル抗体を、以下の実験において更に使用した。
【0175】
(実施例3)
アポトーシス性の細胞によって放出される遊離GGELのインビトロでの検出
材料及び方法
細胞系。
アポトーシス誘導に使用した細胞系は、ヒト前骨髄球性白血病細胞HL-60であった。HL-60を、10%ウシ胎児血清(FCS)、1%ストレプトマイシン/ペニシリン、及び200mMのL-グルタミンを添加したRPMI培地において培養した。
【0176】
アポトーシスの誘導。
細胞を、先に記載した細胞培養培地において1×10E6細胞/mLで播種した。アポトーシスの誘導を、1μmol/Lの濃度のスタウロスポリンを使用して8時間行った。スタウロスポリンは、ストレプトマイセス・スタウロスポレサ(Streptomyces staurosporesa)の培養液から単離されたアルカロイドである。これは、強力な、細胞膜透過性タンパク質キナーゼC阻害剤、並びにPKA、PKG、CAMKII、及びミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)等の他のキナーゼである。0.2~1μMで、スタウロスポリンは、細胞アポトーシスを誘導する。処理後、細胞を800gで10分間遠心分離し、上清をGGELの定量に使用した。
【0177】
GGELの定量
競合ELISAによるGGELの定量。競合ELISA。BSA-GGELを、50mMの重炭酸塩溶液、pH9.50中に10μg/mLの濃度で、マイクロタイタープレート上に吸着させた。プレートを一晩、実験室温度でインキュベートした。飽和を、0.5%BSA及び5%ショ糖を添加した0.1Mのリン酸緩衝液で行った(図3、工程1)。細胞上清を、抗体溶液の存在下で1時間、37℃で添加し、正確な数のGGELが「被覆された」BZGOを2倍ずつ希釈し、標準として使用した(図3、工程2及び工程3)。PBSTで3回洗浄した後、PBST中に1:2000で希釈した二次抗体を、30分、37℃でインキュベートした。TMBを5分間使用して顕色を行い、2NのH2SO4を使用して反応を停止させた(図3、工程4)。吸光値を、450nmで、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)で判定した。GGELの定量を、GrapPad Prismバージョン5.0(GraphPad software社、San Diego、USA)を使用して、4パラメータ行にプロットされた標準を使用して行った。
【0178】
統計分析。
値は、平均±SD又は頻度及び割合として表す。群間の差は、必要に応じて、独立T検定、カイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定、又はANOVAによって判定した。P<0.05を統計的に有意であると見なした。分析は、GraphPad prismバージョン5.0(GraphPad software社、San Diego、California、USA)を使用して行った。
【0179】
結果
図3は、スタウロスポリンによるアポトーシスの誘導後の、又はスタウロスポリン処理なしでの、HL-60細胞における1G1h1抗体でのGGELの定量の結果を示す。アポトーシスに誘導されたHL-60細胞におけるGGEL濃度は、アポトーシスに誘導されなかったHL-60細胞と有意に異なった。
【0180】
(実施例4)
早期敗血症のバイオマーカーとしてのガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)の同定
材料及び方法
本発明者らは、血漿中のGGELが酵素イムノアッセイ(EIA)で測定可能か否かを判定することを試みた。このプロトコルは、1/20で希釈した血漿試料でのGGEL定量競合EIA(実施例2及び実施例3を参照されたい)に基づくものであった。10人の健康な個体の対照血漿試料を、正常な血漿中のGGELのバックグラウンドレベルを決定するために使用した。試験は、11人の患者から1日目及び3日目に得た22の敗血症試料で行った。1日目は、患者が入院した日であり、発熱及びSIRSの症候性の特徴が検出された(table 1(表1)を参照されたい)。陽性試験を陰性試験から区別するために、カットオフ値を10の対照血漿試料から計算した。
【0181】
各群の比較を、一方向ANOVAを使用して評価した。
【0182】
ROC曲線分析を、GraphPad prismバージョン5.0(GraphPad software社、San Diego、California、USA)を使用して行った。ブランク血漿を対照と呼び、敗血症の血漿を患者と呼んだ。
【0183】
結果
GGEL濃度の有意な増強がブランク試料と比較して群D+1及び群D+3で観察されたため、この試験を使用して、敗血症の血漿がブランク血漿から区別され得ることが実証された(図4)。したがって、GGELの存在は、早期敗血症の有効なバイオマーカーである。
【0184】
しかし、1日目の血漿は、3日目の試料から区別され得なかった。しかし、各患者についての結果を分析することによって、1日目から3日目のGGELバイオマーカーの増大が検出され、11人のうち8人の患者で見られた。
【0185】
マーカー診断の性能は、敗血症集団を検出するその能力に相当する感度、及び、対照集団を検出するその能力に相当する特異性に特徴付けされ得る。
【0186】
ブランク血漿を、試験の閾値を決定するために使用した(V=μ×3SD)。特異性及び感度が得られ、その結果、特異性はD+1群で91%、D+3群では100%であり、組合せ群(D+1 + D+3)では95.45%であった(Table 7(表7))。試験のROC曲線を更に得た(図5及びTable 8(表8))。
【0187】
【表7】
【0188】
【表8】
【0189】
(実施例5)
異なる病状におけるガンマ-グルタミル-L-イプシロン-リジン(GGEL)の投与
材料及び方法
試料
血漿を、フランス、パリのラリボワジエール病院のCentre de Ressources Biologiquesから入手した。入院時T1、及び退院時T2の2つの異なる時点で、心不全/呼吸器不全(HRF)(n=106)、外傷(n=90)、敗血症性ショック(n=130)、又は重度の敗血症(n=38)の4つの異なる臨床的病状に相当する364の血漿試料を得た。
【0190】
競合ELISAによるGGELの定量。競合ELISA
抗原BSA-GGELを、50mMの重炭酸塩溶液、pH9.50を有するマイクロタイタープレート上に吸着させた。プレートを一晩、室温でインキュベートした。飽和を、0.5%BSA及び5%ショ糖を添加した0.1Mのリン酸緩衝液で行った。希釈された試料を、抗GGEL抗体溶液の存在下で1時間、37℃で添加し、正確な数のGGELが「被覆された」BZGOを2倍ずつ希釈し、標準として使用した。PBSTで3回洗浄した後、TMBを10分間使用して顕色を行い、2NのH2SO4を使用して反応を停止させた。吸光値を、450nmで、Spectramax i3(登録商標)自動マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、Sunnydale、USA)で判定した。GGELの定量を、SoftMaxPro 6.5.1(Molecular Devices社、Sunnydale、California、USA)を使用して片対数線にプロットされた標準を使用して行った。
【0191】
統計分析
変数を記述統計によって分析して、そのケースの臨床的特徴を評価した。全ては平均±S.D.として報告し、分散の一方向分析を使用して分析して、研究対象の試料間の何らかの統計上の差の存在を推定した。両側の確率値を表に列挙し、統計的有意性のレベルをp<0.05と設定した。全ての統計分析は、GraphPad Prismバージョン5.0(GraphPad software社、San Diego、California、USA)又はJMPソフトウェアバージョン12(SAS Institute Inc.社、Cary、North Carolina、USA)を用いて行った。
【0192】
結果
異なる病状間のGGEL濃度の比較
血漿中のGGEL濃度のレベルは、他よりも外傷群において有意に高かった(p<0.01)。正常試料(22μmol.L-1)よりも高いレベルのGGEL濃度が、敗血症性ショック試料(39.29μmol.L-1)及び重度の敗血症試料(28.47μmol.L-1)で見られたが、結果は有意ではなかった(図7)。
【0193】
病状毎の、異なる時点間のGGEL濃度の比較
GGELのレベルは、外傷においてT1からT2で有意に増大し、T1の平均45.61±19.72から111.14±24μmol.L-1まで増大した(図8)。他の病状では、血漿中のGGEL濃度の有意ではない増大が見られた。
【0194】
病状毎の、患者当たりのΔGGEL濃度の比較
各患者の血漿で、GGEL濃度の変化を、ΔGGEL=[GGEL]T2-[GGEL]T1として計算した。病状毎のΔGGELの平均を分析し、結果は、外傷及び敗血症性ショックではそれぞれ38.75±22.78及び21.58±10.2μmol.L-1であり、HRF及び重度の敗血症よりも高かった(Table 9(表9))。しかし、異なる病状間で有意ではない結果が認められた。
【0195】
【表9】
【符号の説明】
【0196】
1 試験片
2 検出区域
3 試験領域
4 対照領域
5 吸収パッド
6 試料パッド
7 試料ポート
8 ハウジング
9 コンジュゲートパッド
10 試験ライン
11 対照ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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