(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】真空圧力比例制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/122 20060101AFI20220308BHJP
F16K 1/52 20060101ALI20220308BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K1/52 E
F16K51/02 A
(21)【出願番号】P 2019017803
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 俊祐
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-076829(JP,A)
【文献】特開2010-007751(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105109(WO,A1)
【文献】特開2003-83467(JP,A)
【文献】特開2001-12649(JP,A)
【文献】特開昭51-119475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
F16K 27/00-27/12
F16K 51/02
F16K 1/00- 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と真空ポンプとを接続する配管に配置され、反応容器内の真空圧力を制御する真空圧力比例制御弁において、
ピストン室を備えるシリンダと、
前記ピストン室に往復直線運動可能に収容されるピストンと、
弁座と、
前記ピストンの動作に応じて前記弁座に当接又は離間する弁体と、
先端部が前記ピストン室の内部に配置されるように前記シリンダに設けられ、前記先端部と前記ピストンが当接した場合に前記真空圧力比例制御弁を全開状態にするストッパ部材と、
前記ストッパ部材を前記ピストンの移動方向に進退させ、前記先端部の位置を
手動で調整する調整部と、を有
し、
前記配管の長さに応じて、前記ストッパ部の前記先端部の位置が前記調整部を用いて手動で調整されることにより、全開時のフルストロークを調整可能であり、
前記ピストン室の圧力に応じて弁開度を調整し、前記反応容器内の真空圧力を制御する場合に、前記ストッパ部の前記先端部は、全開時のみ、前記ピストンと当接すること、
を特徴とする真空圧力比例制御弁。
【請求項2】
反応容器と真空ポンプとを接続する配管に配置され、反応容器内の真空圧力を制御する真空圧力比例制御弁において、
ピストン室を備えるシリンダと、
前記ピストン室に往復直線運動可能に収容されるピストンと、
弁座と、
前記ピストンの動作に応じて前記弁座に当接又は離間する弁体と、
先端部が前記ピストン室の内部に配置されるように前記シリンダに設けられ、前記先端部と前記ピストンが当接した場合に前記真空圧力比例制御弁を全開状態にするストッパ部材と、
前記ストッパ部材を前記ピストンの移動方向に進退させ、前記先端部の位置を調整する調整部と、を有し、
前記調整部は、
前記シリンダの前記弁座と反対側に位置する面に、前記ストッパ部材の後端部と当接可能に配置される当接部材と、
前記ストッパ部材を前記当接部材に向かって付勢する付勢部材と、
前記当接部材を前記ピストンの移動方向に移動させるネジ部と、
を有すること、
を特徴とする真空圧力比例制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載する真空圧力比例制御弁において、
前記当接部材は、環状に設けられていること、
前記シリンダは、前記当接部材を収容する収容溝が環状に形成されていること、
前記ネジ部は、前記当接部材の外周面に形成された雄ねじ部と、前記収容溝の内周面に形成された雌ねじ部と、を有していること、
前記ストッパ部材は、前記収容溝の周方向に沿って均等に配置され、それぞれ前記付勢部材によって前記当接部材に向かって付勢されていること、
を特徴とする真空圧力比例制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載する真空圧力比例制御弁において、
前記当接部材は、前記ストッパ部材と当接する面と反対側に位置する面に、前記当接部材を回転させるための回転用治具を引っ掛けるための引掛孔が周方向に均等に形成されていること、
を特徴とする真空圧力比例制御弁。
【請求項5】
反応容器と真空ポンプとを接続する配管に配置され、反応容器内の真空圧力を制御する真空圧力比例制御弁において、
ピストン室を備えるシリンダと、
前記ピストン室に往復直線運動可能に収容されるピストンと、
弁座と、
前記ピストンの動作に応じて前記弁座に当接又は離間する弁体と、
先端部が前記ピストン室の内部に配置されるように前記シリンダに設けられ、前記先端部と前記ピストンが当接した場合に前記真空圧力比例制御弁を全開状態にするストッパ部材と、
前記ストッパ部材を前記ピストンの移動方向に進退させ、前記先端部の位置を調整する調整部と、を有し、
前記ストッパ部材は、前記ピストンの移動方向に沿って前記シリンダに貫き通されていること、
前記調整部は、前記ストッパ部材と前記シリンダとの間に設けられたネジ部であること、
を特徴とする真空圧力比例制御弁。
【請求項6】
反応容器と真空ポンプとを接続する配管に配置され、反応容器内の真空圧力を制御する真空圧力比例制御弁において、
ピストン室を備えるシリンダと、
前記ピストン室に往復直線運動可能に収容されるピストンと、
弁座と、
前記ピストンの動作に応じて前記弁座に当接又は離間する弁体と、
先端部が前記ピストン室の内部に配置されるように前記シリンダに設けられ、前記先端部と前記ピストンが当接した場合に前記真空圧力比例制御弁を全開状態にするストッパ部材と、
前記ストッパ部材を前記ピストンの移動方向に進退させ、前記先端部の位置を調整する調整部と、
前記ストッパ部材を任意の位置で固定する固定部材と、
を有すること、
を特徴とする真空圧力比例制御弁。
【請求項7】
請求項1乃至
請求項6の何れか1つに記載する真空圧力比例制御弁において、
前記ピストンは、前記ストッパ部材と当接する位置の硬度が前記ストッパ部材の硬度以上であること、
を特徴とする真空圧力比例制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器と真空ポンプとを接続する配管に配置され、反応容器内の真空圧力を制御する真空圧力比例制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置は、反応容器に給排気する各種ガスの流量や圧力を精度良く制御して製品品質を向上させるために、反応容器に対して様々な流体制御機器を配管を介して接続することにより構成されている。流体制御機器の1つに、真空圧力比例制御弁がある。
【0003】
真空圧力比例制御弁は、反応容器と真空ポンプを接続する配管に配置される。真空圧力比例制御弁は、排気開始時には、パーティクルを巻き上げないように排気ガスを微小流量に制御し、反応容器の内部圧力が十分に低下すると、全開し、排気ガスを大流量に制御する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には以下の問題があった。すなわち、真空ポンプは、反応容器の周辺に設置される機器のレイアウト等に応じて、反応容器の階下など色々な場所に設置される。そのため、真空ポンプと反応容器とを接続する配管の長さは、半導体製造装置によって異なる。例えば、配管の長さは、2m~3mである場合もあれば、30m~50mである場合もある。配管が長いほど、配管で生じる圧力損失(圧損)が大きくなり、反応容器からガスを排気する際の排気特性が悪化する。
【0006】
また、近年、排気時間を短縮して半導体の生産効率を高めるため、ポンプ能力の高い真空ポンプが使用される傾向がある。例えば、真空ポンプのポンプ能力は、5万L/minから15万L/minに向上している。しかし、真空ポンプのポンプ能力が高くなっても、配管で生じる圧損が改善されなければ、却って、排気特性を悪化させる恐れがある。
【0007】
従来の真空圧力比例制御弁は、全開時のストローク(フルストローク)を調整する機構を備えなかった。そのため、従来の真空圧力比例制御弁は、2m~3mの配管に設置される場合でも、30m~50mの配管に設置される場合でも、フルストロークが一定であり、排気特性を変えることができなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、排気特性を可変させることができる真空圧力比例制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。(1)反応容器と真空ポンプとを接続する配管に配置され、反応容器内の真空圧力を制御する真空圧力比例制御弁において、ピストン室を備えるシリンダと、前記ピストン室に往復直線運動可能に収容されるピストンと、弁座と、前記ピストンの動作に応じて前記弁座に当接又は離間する弁体と、先端部が前記ピストン室の内部に配置されるように前記シリンダに設けられ、前記先端部と前記ピストンが当接した場合に前記真空圧力比例制御弁を全開状態にするストッパ部材と、前記ストッパ部材を前記ピストンの移動方向に進退させ、前記先端部の位置を調整する調整部と、を有すること、を特徴とする。
【0010】
上記構成の真空圧力比例制御弁によれば、調整部を用いてストッパ部材を軸線方向に進退させることによりフルストロークを調整することができるので、反応容器と真空ポンプを接続する配管の長さや真空ポンプのポンプ性能の変化に応じて、排気特性を変えることができる。
【0011】
(2)(1)に記載する真空圧力比例制御弁において、前記調整部は、前記シリンダの前記弁座と反対側に位置する面に、前記ストッパ部材の後端部と当接可能に配置される当接部材と、前記ストッパ部材を前記当接部材に向かって付勢する付勢部材と、前記当接部材を前記ピストンの移動方向に移動させるネジ部と、を有すること、が好ましい。
【0012】
上記構成の真空圧力比例制御弁によれば、当接部材の回転に応じてストッパ部材を応答性よく移動させ、フルストロークを調整することができる。
【0013】
(3)(2)に記載する真空圧力比例制御弁において、前記当接部材は、環状に設けられていること、前記シリンダは、前記当接部材を収容する収容溝が環状に形成されていること、前記ネジ部は、前記当接部材の外周面に形成された雄ねじ部と、前記収容溝の内周面に形成された雌ねじ部と、を有していること、前記ストッパ部材は、前記収容溝の周方向に沿って均等に配置され、それぞれ前記付勢部材によって前記当接部材に向かって付勢されていること、が好ましい。
【0014】
上記構成の真空圧力比例制御弁は、当接部材がシリンダの収容溝に収容され、シリンダより外側に突出しないので、バルブサイズを変えずに、シリンダに調整部を設けることができる。また、ピストンがストッパ部材に衝突する際の衝撃が当接部材全体に分散されるので、ネジ部にかかる負荷を軽減できる。
【0015】
(4)(3)に記載する真空圧力比例制御弁において、前記当接部材は、前記ストッパ部材と当接する面と反対側に位置する面に、前記当接部材を回転させるための回転用治具を引っ掛けるための引掛孔が周方向に均等に形成されていること、が好ましい。
【0016】
上記構成の真空圧力比例制御弁は、回転用治具を用いて、収容溝に収容された当接部材を回転させることによって、フルストロークを調整することができる。
【0017】
(5)(1)に記載する真空圧力比例制御弁において、前記ストッパ部材は、前記ピストンの移動方向に沿って前記シリンダに貫き通されていること、前記調整部は、前記ストッパ部材と前記シリンダとの間に設けられたネジ部であること、が好ましい。
【0018】
上記構成の真空圧力比例制御弁は、ストッパ部材をシリンダに螺設した簡単な構造で、ストッパ部材の位置を変え、フルストロークを調整することができる。
【0019】
(6)(1)乃至(5)の何れか1つに記載する真空圧力比例制御弁において、前記ピストンは、前記ストッパ部材と当接する位置の硬度が前記ストッパ部材の硬度以上であること、が好ましい。
【0020】
上記構成の真空圧力比例制御弁は、ピストンがストッパ部材に衝突した際に変形することを防止できる。
【0021】
(7)(1)乃至(6)の何れか1つに記載する真空圧力比例制御弁において、前記ストッパ部材を任意の位置で固定する固定部材を有すること、が好ましい。
【0022】
上記構成の真空圧力比例制御弁は、ピストンがストッパ部材に繰り返し衝突しても、固定部材により固定されたストッパ部材の位置がずれにくく、フルストロークを一定に維持できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、排気特性を可変させることができる真空圧力比例制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る真空圧力比例制御弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【
図2】真空圧力比例制御弁の断面図であって、全開状態を示す。
【
図3】
図2のA部拡大図であって、フルストローク拡大動作を示す。
【
図4】
図2のA部拡大図であって、フルストローク縮小動作を示す。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る真空圧力比例制御弁の部分拡大断面図であって、弁閉状態を示す。
【
図11】真空圧力比例制御弁の部分拡大断面図であって、全開状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る真空圧力比例制御弁の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0026】
(第1実施形態)
(真空圧力比例制御弁の概略構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空圧力比例制御弁1の断面図であって、弁閉状態を示す。
図2は、真空圧力比例制御弁1の断面図であって、全開状態を示す。以下の説明では、第2ポート12側を「下」、上部シリンダキャップ5側を「上」として説明する。
【0027】
図1に示すように、真空圧力比例制御弁1は、例えば、半導体製造装置の反応容器102と真空ポンプ101とを接続する配管103上に配設されている。
図1及び
図2に示すように、真空圧力比例制御弁1は、バルブボディ2と、下部シリンダキャップ3と、シリンダ本体4と、上部シリンダキャップ5が、ボルト8(
図5参照)を用いて連結されている。
【0028】
バルブボディ2は、筒状をなす。バルブボディ2は、軸線に対して直交する方向に第1ポート11が設けられ、バルブボディ2と同軸上に第2ポート12が設けられている。第1ポート11と第2ポート12は、バルブボディ2の内部空間13に連通している。
【0029】
図2に示すように、バルブボディ2は、第2ポート12が内部空間13に連通する連通部14の外側に、弁座面15が設けられている。弁体21は、弁座面15に当接又は離間するように内部空間13に配置されている。弁体21は、弁座面15と対向する端面に形成されたアリ溝に、弾性シール部材22が弾性変形可能に装着されている。
【0030】
図1及び
図2に示すように、シリンダ6は、シリンダ本体4と下部シリンダキャップ3と上部シリンダキャップ5によって構成され、ピストン室31を備えている。ピストン室31には、ピストン32が回り止めされた状態で収容されている。
【0031】
ピストン32は、上方に開口するコップ形状の第1ピストン部材321の下面と、円板形状の第2ピストン部材322との間に特殊ダイヤフラム34を配置し、第2ピストン部材322と特殊ダイヤフラム34に挿通した取付ネジ323を第1ピストン部材321に締結することによって、特殊ダイヤフラム34と一体的に組み立てられている。特殊ダイヤフラム34は、シリンダ本体4と下部シリンダキャップ3との間で外縁部を挟持され、ピストン室31を上室31Aと下室31Bに区画している。
【0032】
スプリング33は、上室31Aに縮設され、ピストン32を弁座方向(図中下向き)に常時付勢している。下室31Bは、空気圧制御部7に連通している。空気圧制御部7は、ピストン32の位置を検知して下室31Bに操作エアを吸排気し、下室31Bの内圧を制御する。
図1に示すように、スプリング33の付勢力によって下方に移動しているピストン32は、下室31Bの内圧が上昇することにより、
図2に示すように、スプリング33に抗して上方に移動する。
【0033】
図1に示すように、ストッパ部材51は、先端部511をピストン室31の上室31Aに配置するように、シリンダ6の上部シリンダキャップ5に設けられている。調整部61は、ピストン32の移動方向に沿ってストッパ部材51を進退させ、ストッパ部材51の先端部511の位置を調整する。ストッパ部材51と調整部61の構成については後述する。
【0034】
例えば、ピストン32は、真空圧力比例制御弁1を軽量かつ安価にするために、第1ピストン部材321と第2ピストン部材322がアルミで形成されている。一方、ストッパ部材51は、剛性を高くするために、ステンレスで形成されている。よって、第1ピストン部材321の硬度は、ストッパ部材51の硬度より小さい。第1ピストン部材321は、ストッパ部材51と当接する上端部に、リング形状の補強部材71がねじ72を用いて一体的に取り付けられている。補強部材71が、硬度がストッパ部材51の硬度以上になるように形成されている。よって、第1ピストン部材321は、ストッパ部材51に衝突する際に、変形しにくい。
【0035】
尚、本形態の補強部材71は、ステンレスで形成されているが、硬度がストッパ部材51の硬度以上であれば、ステンレスと別の材料で形成しても良い。補強部材71は、溶接等、ネジ止め以外の方法でピストン32に固定してもよい。
【0036】
図1及び
図2に示すように、ピストンロッド41は、上端部が下方からピストン32の中心部に貫き通され、ナット部材42を上端部に締め込むことにより、ピストン32に一体的に取り付けられている。ピストンロッド41は、軸受43を介して下部シリンダキャップ3に軸線方向に移動可能に挿通されている。ピストンロッド41の下端部は、バルブボディ2の内部空間13に配置され、弁体21に結合されている。よって、真空圧力比例制御弁1は、弁体21がピストンロッド41を介してピストン32と一体的に上下動し、弁体21と弁座面15との距離が変化する。本明細書において、弁体21と弁座面15との間の距離を「ストロークSt」と定義する。
【0037】
真空圧力比例制御弁1は、
図2に示すように、ストッパ部材51の先端部511がピストン室31に配置されている状態では、ピストン32が先端部511に当接することにより上方への移動を制限され、弁体21の上昇が制限される。また、図示していないが、ストッパ部材51の先端部511がピストン室31に配置されていない状態では、ピストン32が上部シリンダキャップ5の上端面内壁に環状に突設された環状突部5aの下端面5bに当接することにより上方への移動を制限され、弁体21の上昇が制限される。このように、ピストン32が上方への移動を制限されたときのストロークStを、本明細書では「フルストローク」と定義する。
【0038】
ベローズ23は、ピストンロッド41を気密に覆った状態で弁体21の移動に応じて伸縮するように内部空間13に配置され、内部空間13を流れるガスがシリンダ6側に漏れることを防いでいる。ヒータ16は、バルブボディ2とベローズ23と弁体21を加熱するように配置され、生成物が弁体21やベローズ23や流路面に生成されることを防いでいる。
【0039】
(ストッパ部材及び調整部の構成)
図3は、
図2のA部拡大図であって、フルストローク拡大動作を示す。
図4は、
図2のA部拡大図であって、フルストローク縮小動作を示す。
図5は、
図3の上面図である。調整部61は、当接部材63と、付勢ばね66と、ネジ部64を備える。付勢ばね66は「付勢部材」の一例である。
【0040】
図3及び
図5に示すように、当接部材63は、環状に形成されている。当接部材63は、硬度がストッパ部材51の硬度以上になるように設けられている。収容溝62は、当接部材63を収容できるように、上部シリンダキャップ5の上面に、シリンダ6の軸線を中心として環状に形成されている。当接部材63は、ネジ部64を介して、上部シリンダキャップ5に結合されている。ネジ部64は、当接部材63の外周面に形成された雄ねじ部632と、収容溝62の径方向外側に位置する内側面に形成された雌ねじ部622により構成されている。
【0041】
図5に示すように、当接部材63は、上部シリンダキャップ5に設けられた回り止め部材68により、回転を阻止される。回り止め部材68は、「固定部材」の一例である。回り止め部材68は、上部シリンダキャップ5に螺合するネジであり、先端部を当接部材63の側面に突き当てることにより当接部材63の回転を阻止する回転阻止状態となり、先端部を当接部材63の側面から離間させることにより当接部材63の回転を許容する回転許容状態となる。
【0042】
図3に示すように、収容溝62の底壁621には、挿通穴52が開設されている。挿通穴52は、収容溝62とピストン室31を連通させるように、ピストン32の移動方向に沿って上部シリンダキャップ5に形成されている。ストッパ部材51は、収容溝62側から挿通穴52に摺動可能に挿通され、先端部511をピストン室31の内部に配置している。付勢ばね66は、ストッパ部材51の後端部512と収容溝62の底壁621との間に縮設され、ストッパ部材51を当接部材63側に向かって常時付勢している。よって、ストッパ部材51は、当接部材63の上下動に追従して移動し、先端部511の位置を変えることができる。
【0043】
ここで、当接部材63は、上部シリンダキャップ5より上方へ突き出さないように、収容溝62に収容されている。そのため、当接部材63を手で回すことは難しい。
【0044】
そこで、
図5に示すように、当接部材63は、ストッパ部材51と当接する下面631と反対側に位置する上面633に、後述する回転用治具9を引っ掛けるための引掛孔65が複数形成され、
図6及び
図7に示す回転用治具9を用いて回転される。引掛孔65は、周方向に均等に設けられ、当接部材63の中心を挟んで対称位置にそれぞれ設けられている。本形態の当接部材63は、15°の間隔で引掛孔65が24個設けられている。
【0045】
図6は、回転用治具9の平面図である。
図7は、回転用治具9の側面図である。回転用治具9は、半円弧形状の円弧部91と、円弧部91から径方向外側に向かって延設された把持部92とを備える。一対の係止ピン93,93は、回転用治具9と当接部材63を一体的に回転させるため、2個の引掛孔65,65に同時にはめ込むことができるように円弧部91に立設されている。回転用治具9は、例えば、プレス加工により、円弧部91と把持部92の厚みを薄く均一にして、コストダウンしている。そして、係止ピン93,93は、段付きピンを使用することにより、強度を強くされている。本形態において、一対の係止ピン93,93は、当接部材63をバランス良く回転させることができるように180度の位相差で設けられているが、この配置に限定されないことは言うまでもない。
【0046】
(動作説明)
続いて、真空圧力比例制御弁1の動作を説明する。真空圧力比例制御弁1は、反応容器102の内部でプロセスを実行する場合、下室31Bが加圧されない。そのため、
図1に示すように、ピストン32がスプリング33の付勢力により弾性シール部材22を弁座面15に密着させるように下降し、連通部14が遮断されている。
【0047】
プロセスが終了すると、真空圧力比例制御弁1は、空気圧制御部7から下室31Bに操作エアが供給されて弁開し、反応容器102のガスが真空ポンプ101に吸引されて排気される。排気開始時、空気圧制御部7は、弾性シール部材22から漏れを生じさせるように、シリンダ6に操作エアを供給する。これにより、反応容器102は、パーティクルが巻き上げられないように、ガスが微小流量ずつ排気される。反応容器102の内部圧力が所定の真空圧力まで低下すると、空気圧制御部7は、シリンダ6に操作エアを供給してシリンダ6の内圧を上昇させ、
図2に示すように、真空圧力比例制御弁1をフルストロークで弁開させる。これにより、反応容器102は、ガスが大流量で排気され、排気時間が短縮される。
【0048】
反応容器102の内圧が目標圧力まで低下すると、空気圧制御部7は操作エアの供給を停止し、下室31Bを排気流路に連通させる。すると、ピストン32は、スプリング33の付勢力によって下降し、
図1に示す弁閉状態に戻る。
【0049】
このような真空圧力比例制御弁1のピストン32は、ストッパ部材51を考慮しなければ、弁体21を弁座面15に当接させる弁閉位置P1から、上部シリンダキャップ5の環状突部5aの下端面5bに当接するメカストップ位置P2まで移動することができる。弁閉位置P1からメカストップ位置P2までの領域を、「最大移動範囲L1」と定義する。
【0050】
しかし、空気圧制御部7に内蔵される開度センサは、フルストロークの個体差を排除するため、弁閉位置P1から、メカストップ位置P2より下方の上部制限位置P3までの領域において、ピストン32を検知するように構成されている。そのため、上部制限位置P3からメカストップ位置P2までの領域では、空気圧制御部7に内蔵される開度センサはピストン32を検知できない。尚、弁閉位置P1から上部制限位置P3までの領域を、「検知範囲L2」と定義し、上部制限位置P3からメカストップ位置P2までの領域を、「非検知範囲L3」と定義する。
【0051】
よって、真空圧力比例制御弁1は、検知範囲L2においては、空気圧制御部7に内蔵される開度センサを用いてフルストロークを制御により固定できるが、非検知範囲L3においては、空気圧制御部7に内蔵される開度センサを用いてフルストロークを制御により固定できない。しかし、真空圧力比例制御弁1は、ストッパ部材51の先端部511の位置を調整部61を用いて調整することにより、非検知範囲L3でもフルストロークを手動で調整できるようにしている。
【0052】
(フルストロークの手動調整方法)
例えば、
図3に示すように、先端部511の位置を上昇させる場合、真空圧力比例制御弁1は、回り止め部材68と当接部材63を離間させるように回り止め部材68が回転され、当接部材63の固定が解除される。そして、回転用治具9の一対の係止ピン93,93が当接部材63の引掛孔65,65に差し込まれ、回転用治具9を用いて当接部材63が、真空圧力比例制御弁1を上方から見て反時計回りK1に回転される。
【0053】
すると、当接部材63は、
図3の一点鎖線に示すように、ネジ部64のねじ送りによって上方に移動する。付勢ばね66は、当接部材63の上昇に従って伸張し、ストッパ部材51を上方に移動させる。これにより、ストッパ部材51の先端部511の位置は、図中P11に示す位置から図中P12に示す位置まで上昇する。これにより、ピストン32は、図中P11に示す位置と図中P12に示す位置との間の距離Q1だけ上方へ移動できるようになり、真空圧力比例制御弁1のフルストロークを拡大させる。
【0054】
ストッパ部材51の位置調整が完了すると、回り止め部材68と当接部材63を当接させるように回り止め部材68が回転され、当接部材63が固定される。これにより、ストッパ部材51が位置決め固定され、ピストン32がストッパ部材51に繰り返し衝突しても、先端部511の位置がずれにくい。
【0055】
一方、例えば、
図4に示すように、先端部511の位置を下降させる場合、上記と逆の手順によりストッパ部材51を下降させる。簡単に説明すると、真空圧力比例制御弁1は、回り止め部材68による当接部材63の固定を解除した後、当接部材63が、真空圧力比例制御弁1を上方から見て時計回りK2に回転される。当接部材63は、ネジ部64のねじ送りによって、付勢ばね66に抗してストッパ部材51を押し下げる。これにより、ストッパ部材51の先端部511が図中P13に示す位置から図中P14に示す位置まで移動し、真空圧力比例制御弁1は、図中P13に示す位置と図中P14に示す位置との間の距離Q2だけ、フルストロークを縮小される。
【0056】
真空圧力比例制御弁1は、空気圧制御部7に内蔵される開度センサがストロークStを検知できない非検知範囲L3であっても、当接部材63の回転量によってストッパ部材51の先端部511の位置を管理できる。
【0057】
例えば、最大移動範囲L1が32mm、検知範囲L2が28mmである場合、非検知範囲L3は、28mmより大きく32mm以下となる範囲になる。当接部材63を360°回転させると、ストッパ部材51を2mm移動させるように、ネジ部64を形成したとする。
【0058】
この場合、例えば、ストッパ部材51の先端部511を上部制限位置P3に配置した状態から、当接部材63を反時計回りK1に2回転(720°)回転させると、先端部511が挿通穴52の内部に配置される。これにより、ピストン32は、メカストップ位置P2まで移動できるようになり、真空圧力比例制御弁1は、弁体21が弁座面15から32mm離れた位置まで上昇できるようになる。
【0059】
また例えば、ストッパ部材51の先端部511を上部制限位置P3に配置した状態から、当接部材63を反時計回りK1に90°回転させると、先端部511が上部制限位置P3から0.5mm上方の位置に配置され、フルストロークが拡大される。その後、当接部材63を時計回りK2に45°回転させると、先端部511が上部制限位置P3から0.25mm上方の位置に配置され、フルストロークが縮小される。
【0060】
よって、真空圧力比例制御弁1は、空気圧制御部7に内蔵される開度センサを用いてフルストロークを制御固定できない場合でも、ストッパ部材51と調整部61を用いてフルストロークを固定することができる。
【0061】
(排気特性試験について)
図8及び
図9を参照して、真空圧力比例制御弁1のストロークStが排気特性に与える影響を調べる排気特性試験について説明する。
図8は、試験装置1000の概略構成図である。
図9は、試験結果を示すグラフである。
【0062】
図8に示すように、試験装置1000は、チャンバ1101と真空ポンプ1102を接続する配管1103に真空圧力比例制御弁1が配置されている。真空圧力比例制御弁1は、ストッパ部材51が先端部511を挿通穴52の内部に配置する位置まで後退している。よって、真空圧力比例制御弁1は、ストロークStが0mm以上32mm以下の範囲で変化する。
【0063】
配管1103は、真空圧力比例制御弁1の第2ポート12とチャンバ1101とを接続する第1接続配管1103Aと、真空圧力比例制御弁1の第1ポート11と真空ポンプ1102とを接続する第2接続配管1103Bとを備える。真空圧力比例制御弁1は、操作エアを供給する操作エア供給配管1501が空気圧制御部7に接続されている。
【0064】
第1接続配管1103Aは、流路径が80mmであって、長さが1.5mである。第2接続配管1103Bは、流路径が80mmであって、長さが0.2mである。第2接続配管1103Bは、バラスト供給配管1201が接続し、マスフローコントローラ1202とバルブ1203によって流量制御されたバラスト流体が供給される。操作エア供給配管1501は、流路径が6mmであって、長さが3mである。
【0065】
チャンバ1101は、200Lの容積を有する。チャンバ1101は、エア供給配管1301と接続し、マスフローコントローラ1302とバルブ1303を用いて流量制御されたエアが供給される。チャンバ1101は、圧力センサ1401により内部圧力が検知される。
【0066】
試験では、空気圧制御部7に供給する操作エアの圧力を0.5MPaとした。また、チャンバ1101に供給するエアの圧力を0.2MPaとした。そして、第2接続配管1103Bに供給するバラスト流体の圧力を0.2MPaとした。試験では、チャンバ1101の内部圧力を100Paに保持するように、チャンバ1101に供給するエアの供給量を制御した。この制御状態で、試験装置1000は、マスフローコントローラ1202とバルブ1203を用いてバラスト流体の流量を、120秒毎に、無し(0.0slm)、0.5slm、1.0slm、2.0slm、3.0slm、4.0slm、5.0slm、6.0slm、7.0slm、8.0slm、9.0slm、10slm、20slmと変化させた。そして、バラスト流体の流量毎に、真空圧力比例制御弁1のストロークStを空気圧制御部7に内蔵される開度センサを用いて測定した。
【0067】
図9のF1に示すように、バラスト流体の流量を無し(0.0slm)に制御したとき、図中G1に示すように、ストロークStは約5.01mmであった。図中F2に示すように、バラスト流体の流量を0.5slmに制御したとき、図中G2に示すように、ストロークStは約5.02mmであった。図中F3に示すように、バラスト流体の流量を1.0slmに制御したとき、図中G3に示すように、ストロークStは約5.04mmであった。図中F4に示すように、バラスト流体の流量を2.0slmに制御したとき、図中G4に示すように、ストロークStは約5.07mmであった。図中F5に示すように、バラスト流体の流量を3.0slmに制御したとき、図中G5に示すように、ストロークStは約5.11mであった。図中F6に示すように、バラスト流体の流量を4.0slmに制御したとき、図中G6に示すように、ストロークStは約5.16mmであった。図中F7に示すように、バラスト流体の流量を5.0slmに制御したとき、図中G7に示すように、ストロークStは約5.22mmであった。図中F8に示すように、バラスト流体の流量を6.0slmに制御したとき、図中G8に示すように、ストロークStは約5.30mmであった。図中F9に示すように、バラスト流体の流量を7.0slmに制御したとき、図中G9に示すように、ストロークStは約5.40mmであった。図中F10に示すように、バラスト流体の流量を8.0slmに制御した場合、図中G10に示すように、ストロークStは約5.52mmであった。図中F11に示すように、バラスト流体の流量を9.0slmに制御したとき、図中G11に示すように、ストロークStは約5.67mmであった。図中F12に示すように、バラスト流体の流量を10slmに制御したとき、図中G12に示すように、ストロークStは約5.87mmであった。図中F13に示すように、バラスト流体の流量を20slmに制御すると、図中G13に示すように、ストロークStは約17.15mmであった。
【0068】
この試験結果より、チャンバ1101の内部圧力を一定に保持した状態で、バラスト流体の流量を増加させ、真空圧力比例制御弁1から真空ポンプ1102に排気流体が流れにくくすると、真空圧力比例制御弁1はストロークStを大きくする傾向が、確認できた。
【0069】
図1に示す構成において、排気ガスが配管103を流れ難くする事例として、配管103が30m~50mと長い場合や、真空ポンプ101のポンプ能力が大きくなった場合が考えられる。このような場合、真空圧力比例制御弁1は、調整部61を用いてストッパ部材51を上昇させ、フルストロークを検知範囲L2を超えて、換言すると、非検知範囲L3において拡大させる。これにより、排気ガスが配管103を流れやすくなるので、配管103の長さや真空ポンプ101のポンプ性能による排気性能のバラツキが改善される。このように、真空圧力比例制御弁1の排気性能を変えることにより、配管103にて生じる圧損を小さくできるので、反応容器102からガスを効率良く排気して、排気時間を短縮することが可能になる。
【0070】
(まとめ)
以上説明したように、本形態の真空圧力比例制御弁1は、反応容器102と真空ポンプ101とを接続する配管103に配置され、反応容器102内の真空圧力を制御する真空圧力比例制御弁1において、ピストン室31を備えるシリンダ6と、ピストン室31に往復直線運動可能に収容されるピストン32と、弁座面15と、ピストン32の動作に応じて弁座面15に当接又は離間する弁体21と、先端部511がピストン室31の内部に配置されるようにシリンダ6に設けられ、先端部511とピストン32が当接した場合に真空圧力比例制御弁1を全開状態にするストッパ部材51と、ストッパ部材51をピストン32の移動方向に進退させ、先端部511の位置を調整する調整部61と、を有すること、を特徴とする。
【0071】
このような真空圧力比例制御弁1によれば、調整部61を用いてストッパ部材51を軸線方向に進退させることによりフルストロークを調整することができるので、反応容器102と真空ポンプ101を接続する配管103の長さや真空ポンプ101のポンプ性能の変化に応じて、排気特性を変えることができる。
【0072】
また、本形態の真空圧力比例制御弁1において、調整部61は、シリンダ6の弁座面15と反対側に位置する上部シリンダキャップ5に、ストッパ部材51の後端部512と当接可能に配置される当接部材63と、ストッパ部材51を当接部材63に向かって付勢する付勢ばね66と、当接部材63をピストン32の移動方向に移動させるネジ部64と、を有する。このような真空圧力比例制御弁1によれば、当接部材63の回転に応じてストッパ部材51を応答性良く移動させ、フルストロークを調整することができる。
【0073】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る真空圧力比例制御弁201の部分拡大断面図であって、弁閉状態を示す。
図11は、真空圧力比例制御弁201の部分拡大断面図であって、全開状態を示す。
【0074】
真空圧力比例制御弁201は、ストッパ部材211とネジ部214とピストン232を除き、第1実施形態と同様に構成されている。
【0075】
ストッパ部材211は、ステンレスを棒状に形成したものであり、ピストンロッド41と同軸上に配置されている。ストッパ部材211は、先端部215がピストン室31の上室31Aに配置され、後端部が上部シリンダキャップ5の外側に突き出すように、上部シリンダキャップ5に貫き通されている。
【0076】
ネジ部214は、上部シリンダキャップ5に形成された雌ねじ部212と、ストッパ部材211に形成された雄ねじ部213とにより構成されている。ストッパ部材211は、ネジ部214のねじ送りによって軸線方向に移動し、上室31Aに配置される先端部215の位置を変化させる。よって、ネジ部214は、「調整部」の一例となる。
【0077】
固定ナット218は、ストッパ部材211の雄ねじ部213に螺合している。固定ナット218は、「固定部材」の一例である。ストッパ部材211は、固定ナット218と上部シリンダキャップ5が面接触する部分に生じる摩擦抵抗により回転を阻止され、先端部215の位置が固定される。
【0078】
ピストン32は、第1ピストン部材321がステンレスで形成され、第2ピストン部材322がアルミで形成されている。よって、ピストン32は、ストッパ部材211と当接する位置の硬度がストッパ部材の硬度以上にされ。ピストン232がストッパ部材211に衝突した際に変形することを防止できる。
【0079】
上記真空圧力比例制御弁201は、ストッパ部材211を直接手で反時計回りに回転させると、ネジ部214のねじ送りによってストッパ部材211が上昇し、フルストロークを拡大させる。一方、ストッパ部材211を直接手で時計回りに回転させると、ネジ部214のねじ送りによってストッパ部材211が下降し、フルストロークを縮小させる。よって、真空圧力比例制御弁201は、ストッパ部材211を回転させるだけで、排気特性を変えることができる。
【0080】
真空圧力比例制御弁201は、ストッパ部材211の位置調整が完了すると、固定ナット218を上部シリンダキャップ5に当接する位置まで移動させる。これにより、ストッパ部材211とピストン232が衝突しても、ストッパ部材211は、固定ナット218と上部シリンダキャップ5との間に生じる摩擦抵抗により回転せず、先端部215の位置を維持する。
【0081】
よって、本形態の真空圧力比例制御弁201は、先端部215がピストン室31の内部に配置されるようにシリンダ6に設けられ、先端部215とピストン232が当接した場合に真空圧力比例制御弁201を全開状態にするストッパ部材211と、ストッパ部材211をピストン232の移動方向に進退させ、先端部215の位置を調整する調整部と、を有している。そして、ストッパ部材211は、ピストン232の移動方向に沿ってシリンダ6に貫き通されていること、調整部は、ストッパ部材211とシリンダ6との間に設けられたネジ部214である。このような真空圧力比例制御弁201は、ストッパ部材211をシリンダ6に螺設した簡単な構造で、ストッパ部材211の位置を変え、フルストロークを調整することができる。
【0082】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0083】
例えば、当接部材63が収容溝62から突出しても良い。但し、上記第1実施形態のように、当接部材63がシリンダ6より外側に突出しないように収容溝62に収容されることにより、バルブサイズを変えずに、シリンダ6に調整部61を設けることができる。
【0084】
例えば、ストッパ部材51は、当接部材63の周方向に均等に配置されていなくても良い。但し、上記実施形態のように、ストッパ部材51を当接部材63の周方向に均等に配置することにより、ピストン32がストッパ部材51に衝突した際の衝撃を当接部材63に均等に分散されるので、ネジ部64にかかる負荷を軽減できる。
【0085】
例えば、当接部材63に引掛孔65を形成しなくても良い。但し、上記形態のように、引掛孔65を設けることにより、回転用治具9を用いて収容溝62に収容された当接部材63を簡単に回転させ、フルストロークを調整できる。また、回転用治具9の形状を簡単にして回転用治具9をコンパクトにできる。
【0086】
例えば、補強部材71はなくても良い。但し、補強部材71をピストン32に設け、ピストン32がストッパ部材51に当接する部分の硬度をストッパ部材51の硬度以上にすることにより、ピストン32がストッパ部材51に衝突した際に変形することを防止できる。
【0087】
例えば、ピストン32をステンレスで形成しても良い。但し、上記形態のように、ピストン32をアルミで形成し、ピストン32がストッパ部材51と当接する部分に補強部材71を一体的に取り付けることにより、ピストン32の製造にかかる材料費を抑制できる。
【0088】
例えば、回り止め部材68や固定ナット218は無くても良い。但し、回り止め部材68や固定ナット218を備えることにより、ピストン32,232がストッパ部材51,211に繰り返し衝突しても回り止め部材68や固定ナット218によって固定されたストッパ部材51,211の位置がずれにくく、フルストロークを一定に維持できる。
【符号の説明】
【0089】
1,201 真空圧力比例制御弁
6 シリンダ
9 回転用治具
15 弁座面
21 弁体
31 ピストン室
32 ピストン
51,211 ストッパ部材
61 調整部
62 収容溝
63 当接部材
64 ネジ部
65 引掛孔
66 付勢ばね
68 回り止め部材
214 ネジ部
218 固定ナット