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特許7036759ロッドリデューサーのラチェットロックアウト機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】ロッドリデューサーのラチェットロックアウト機構
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/88 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
A61B17/88
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019043572
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2019177138
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2019-06-25
(31)【優先権主張番号】62/641,500
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519085811
【氏名又は名称】ジンマー バイオメット スパイン,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ケイレブ リー ストール
(72)【発明者】
【氏名】アリソン クリスティン カポーティ
(72)【発明者】
【氏名】ランドール ジー.マスト
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0252074(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0142067(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0030093(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0106480(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0191144(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0243190(US,A1)
【文献】特表2011-514830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ付き近位部分と、遠位端部とを含む内側シャフトであって、前記遠位端部は、椎弓根スクリューのハウジングを受容するようになっている複数の係合部材を含む、内側シャフトと、
前記内側シャフトの少なくとも一部の上に摺動可能に受容され且つトップスリーブ及びボトムスリーブを含む外側ハウジングであって、前記ボトムスリーブは、接続ロッドと係合するようになっている遠位端部を含む、外側ハウジングと、
前記外側ハウジングのトップスリーブに沿って配置されたラチェット機構であって、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合する係合特徴部と、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と該ラチェット機構の前記係合特徴部との係合状態を選択的にロックするロック機構とを含むラチェット機構と
を備え、
前記トップスリーブは、前記ボトムスリーブに回転可能に結合され、回転入力を前記内側シャフトに対する前記外側ハウジングの直線移動に変換するようになっており、
前記ロック機構はスライドロックを含み、該スライドロックは、前記ラチェット機構の外面に配置され、第1の位置において前記ロック機構をロックし且つ第2の位置において前記ロック機構をロック解除するようになっており、
前記ラチェット機構は、ピボットによって隔てられた近位端部と遠位端部とを含むレバー部材を含む、ロッドリダクション器具。
【請求項2】
前記レバー部材の近位端部は、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合するようになっている前記係合特徴部を含む、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項3】
前記レバー部材の遠位端部は、前記ラチェット機構の外面に露出されたボタンを含む、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項4】
前記ピボットは、前記ロック機構の対向する側壁に延在するピボットシャフトを含み、該ピボットシャフト回りの前記レバー部材の回転運動を可能とする、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項5】
前記レバー部材の回転運動は、該レバー部材の近位部分上の前記係合特徴部が前記内側シャフトのねじ付き近位面と選択的に係合することを可能とする、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項6】
前記ラチェット機構は付勢部材を含み、該付勢部材は前記係合特徴部の反対側の前記レバー部材の近位部分の上面に対して位置付けられて前記係合特徴部を前記内側シャフトのねじ付き近位面に付勢する、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項7】
ねじ付き近位部分と、遠位端部とを含む内側シャフトであって、前記遠位端部は、椎弓根スクリューのハウジングを受容するようになっている複数の係合部材を含む、内側シャフトと、
前記内側シャフトの少なくとも一部の上に摺動可能に受容され且つトップスリーブ及びボトムスリーブを含む外側ハウジングであって、前記ボトムスリーブは、接続ロッドと係合するようになっている遠位端部を含む、外側ハウジングと、
前記外側ハウジングのトップスリーブに沿って配置されたラチェット機構であって、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合する係合特徴部と、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と該ラチェット機構の前記係合特徴部との係合状態を選択的にロックするロック機構とを含むラチェット機構と
を備えるロッドリダクション器具であって、
前記トップスリーブは、前記ボトムスリーブに回転可能に結合され、回転入力を前記内側シャフトに対する前記外側ハウジングの直線移動に変換するようになっており、
前記ロック機構はスライドロックを含み、該スライドロックは、前記ラチェット機構の外面に配置され、第1の位置において前記ロック機構をロックし且つ第2の位置において前記ロック機構をロック解除するようになっており、
前記スライドロックは、前記ラチェット機構の対向する側部に沿って摺動可能に係合するU字状の線形スライドであり、前記第1の位置と前記第2の位置との間で当該ロッドリダクション器具の長手方向軸線に沿って移動する、ロッドリダクション器具。
【請求項8】
前記ラチェット機構は、ピボットによって隔てられた近位端部と遠位端部とを含むレバー部材を含み、
前記スライドロックは、該スライドロックの下面から前記長手方向軸線に向かって突出して前記レバー部材上のロック面と係合する横方向シャフトを含む、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項9】
前記スライドロックが前記第1の位置にある状態で、前記横方向シャフトは、前記ロック面と係合して、前記レバー部材が前記レバー部材の係合特徴部を前記内側シャフトのねじ付き近位部分から離れるように枢動させることを防止する、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項10】
前記スライドロックが前記第2の位置にある状態で、前記横方向シャフトは、前記レバー部材の空洞部の上に位置付けられ、前記レバー部材が前記ラチェット機構内で自由に枢動することを可能とする、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項11】
前記スライドロックは段付き円筒シャフトであり、該段付き円筒シャフトは、前記レバー部材を横切って位置付けられ、前記ラチェット機構の幅の一部を横断して延在する孔内に配置される、請求項に記載のロッドリダクション器具。
【請求項12】
前記段付き円筒シャフトは、小径部に結合された大径部を含み、該大径部は、前記ラチェット機構内の前記レバー部材の枢動を防止するように該レバー部材上のロック面と係合可能である、請求項11に記載のロッドリダクション器具。
【請求項13】
前記スライドロックは前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記孔内を移動する、請求項11に記載のロッドリダクション器具。
【請求項14】
前記スライドロックが前記第1の位置にある状態で、前記段付き円筒シャフトの大径部の一部が前記レバー部材上のロック面と係合して前記ラチェット機構をロックアウトする、請求項13に記載のロッドリダクション器具。
【請求項15】
前記ロック機構は付勢要素を含み、該付勢要素は前記孔内に配置されて前記段付き円筒シャフトを前記第2の位置に付勢する、請求項13に記載のロッドリダクション器具。
【請求項16】
前記段付き円筒シャフトが前記第2の位置に付勢されるとき、前記ラチェット機構内の前記レバー部材は、前記内側シャフトのねじ付き近位部分から離れるように前記係合特徴部を自由に枢動させ、前記外側ハウジングが回転入力無しで前記内側シャフト上を前記椎弓根スクリューに向かって遠位に移動することを可能とする、請求項15に記載のロッドリダクション器具。
【請求項17】
ねじ付き近位部分と、遠位端部とを含む内側シャフトであって、前記遠位端部は、椎弓根スクリューのハウジングを受容するようになっている複数の係合部材を含む、内側シャフトと、
前記内側シャフトの少なくとも一部の上に摺動可能に受容され且つトップスリーブ及びボトムスリーブを含む外側ハウジングであって、前記ボトムスリーブは、接続ロッドと係合するようになっている遠位端部を含む、外側ハウジングと、
前記外側ハウジングのトップスリーブに沿って配置されたラチェット機構であって、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合する係合特徴部と、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と該ラチェット機構の前記係合特徴部との係合状態を選択的にロックするロック機構とを含むラチェット機構と
を備え、
前記ラチェット機構は、ピボットによって隔てられた近位端部と遠位端部とを含むレバー部材を含み、
前記ロック機構はスライドロックを含み、該スライドロックは、前記ラチェット機構の外面に配置され、第1の位置において前記ロック機構をロックし且つ第2の位置において前記ロック機構をロック解除するようになっている、ロッドリダクション器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、椎弓根スクリューインプラント内に接続ロッドを繋止して一つ以上の椎骨を固定することを助けるためのロッドリダクション器具の使用を含む脊椎固定術に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎の変形を矯正するための一般的な外科処置は、椎体間インプラント、椎弓根スクリュー及び接続ロッドを用いて罹患椎体を安定化することを含む。椎体間インプラントは、罹患椎体間の椎間板材料を置換するのに用いられ、椎骨間の骨癒合を促進する。椎弓根スクリュー及び接続ロッドは、脊椎の罹患部分を安定化して癒合を生じさせるのに用いられる。ロッドリダクション器具を含む処置の一部は、罹患椎体の両側に椎弓根スクリューを埋め込み、その後、通常は金属の硬い接続ロッドに椎弓根スクリューインプラントを接続して所望の向きに椎骨を繋止することを含む。多くの場合、外科医は、ある種の自然な湾曲を回復させ、又は変位した椎骨(脊椎症)を再整列させようと試みる。接続ロッドを椎弓根スクリューに利用して整列を回復するのを助けるように設計された器具をこれら処置の間に利用することは外科医にとって稀なことではなく、これら器具は一般的にロッドリダクション器具と称される。ロッドリダクションは、湾曲の矯正又はある程度の整列不良のために(例えば椎骨を引き寄せて整列させるために)必要となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1A図1Aは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具の等角図である。
図1B図1Bは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具の分解等角図である。
図2図2は、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具の上部の分解等角図である。
図3A図3Aは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3B図3Bは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3C図3Cは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3D図3Dは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3E図3Eは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3F図3Fは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3G図3Gは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3H図3Hは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3I図3Iは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図3J図3Jは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図4図4は、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具の等角図である。
図5図5は、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具の上部の分解等角図である。
図6A図6Aは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6B図6Bは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6C図6Cは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6D図6Dは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6E図6Eは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6F図6Fは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6G図6Gは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6H図6Hは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6I図6Iは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図6J図6Jは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。
図7図7は、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具の使用方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
図面は必ずしも一定の縮尺で描かれてなく、図面では、異なる図において、同様の数字は同様の構成要素を説明する。異なる文字の接尾辞を有する同様の数字が異なる例の同様の構成要素を表す場合がある。図面は、概して、例として、限定されるものではないが、本明細書において説明される様々な実施形態を示す。
【0005】
以下に説明される器具は、椎弓根スクリュー及び接続ロッドを利用する脊椎固定術の間に接続ロッドを迅速且つ効率的に縮小するために使用され得る。接続ロッドと迅速に係合し、必要なときに機械的利点を提供し、且つ処置の完了時に除去を容易にする機械的機構を有するロッドリダクション器具を脊椎外科医が必要としていることを本発明者は認識してきた。ロッドリダクション器具は、T字ハンドルのような器具ハンドルの回転を通して接続ロッドを縮小するための機械的利点を提供するねじ付きシャフトを利用することができる。しかしながら、ねじ式の縮小のみを利用するリダクション器具は、脊椎処置を遅くし、最初にロッドと係合するために多すぎる操作を必要とする。接続ロッドの初期係合を行うための時間及び労力を減らすためにラチェット機構を利用することができるが、ラチェット機構は、使用中に動かなくなり、処置の完了を困難にし得る。極端な場合、動かなくなった器具は、接続ロッドを切断して椎弓根スクリューを除去することを必要とすることがある。本発明者は、動かなくなった器具の問題を解決し、それでもなおラチェット能力を有する器具の全ての利点を提供するために、ロッドリダクション器具において使用される様々なラチェットロックアウト機構(ratchet lock-out mechanism)を開発してきた。
【0006】
ロッドリダクション器具は、典型的には、インプラント(椎弓根スクリュー)と、様々な長さの接続ロッドと、処置のための様々な器具とを含む固定システムの一部として提供される。器具は、椎弓根標的化、椎弓根形成、スクリューの挿入、ロッド及びクロージャートップ(closure top)の挿入及び操作のための工具を含むことができる。操作工具はロッドロッカー及びリデューサーのようなロッドリダクション器具を含む。本明細書において説明される器具は軸線方向リデューサーの変形例であるが、ラチェットロックアウト機構及びラチェットロックアウト技術は、ねじ付きシャフトを利用する他のロッドリダクション器具において実装されうる。軸線方向リデューサーの市販の例には、Vital(登録商標)脊椎固定システムの一部としてジンマーバイオメットによって提供されるリダクション器具が含まれる。ロケットリデューサーの市販の例には、Polaris(登録商標)又はLineum(登録商標)OCT脊柱変形矯正システムの一部としてジンマーバイオメットによって提供されるリデューサーが含まれる。Vital脊椎固定システムのようなシステムのためのジンマーバイオメットの外科技術ガイドは、リダクション器具の使用、及び椎弓根スクリューインプラントと接続ロッドとの相互作用の優れた要旨を提供する。したがって、これら器具がどのようにインプラントと接続して動作するかに関する細部は、詳細には説明されず、本明細書において説明される発明の概念の下で必要に応じて受け入れられる。
【0007】
図1Aは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具(rod reduction instrument)100の等角図である。ロッドリダクション器具100は内側スリーブ101及び外側ハウジング110を含むことができる。内側スリーブ101の遠位端部は係合部材103を含むことができ、係合部材103は、接続ロッドを受容する椎弓根スクリュー上のハウジングと係合するようになっている。外側ハウジング110は、ボトムスリーブ111に回転可能に結合されたトップスリーブ115を含むことができる。トップスリーブ115はツールソケット116及びラチェット機構120を含むことができる。ボトムスリーブ111の遠位端部はロッド係合部112を含むことができ、ロッド係合部112はこの例では遠位端部の両側における半円の切り欠きである。動作時に、外側ハウジング110は、内側シャフト101が係合部材103を介して椎弓根スクリューヘッドに結合された後、内側シャフト101上を移動する。
【0008】
ロッドリダクション器具100は、二つの異なるリダクション動作モードを可能とするラチェットロックアウト機構を組み込んだタワーリデューサーの一例である。最初に、ラチェット機構の動作を用いて、タワーリデューサーは、スクリューヘッドを捕捉してロッドとより迅速に係合するクイックオン・クイックオフモードで動作する。内側スリーブ101の係合部材103を椎弓根スクリューのヘッドに結合した後、外側ハウジング110は、ロッド係合部112がロッドと係合するまで、内側スリーブ101上を摺動することができる。その後、T字ハンドル又は同様の工具がツールソケット116に取り付けられてトップスリーブ115を回転させ、このことによって、外側ハウジング110が、更に下方に移動し、椎弓根スクリューのヘッド内にロッドを縮小させる。ツールソケット116を使用するねじ式の縮小は、内側スリーブ101のねじ付き近位部分と係合するラチェット機構120の係合特徴部によって実現される。一つの例では、係合特徴部はラチェット機構120のねじ付き部分である。他の例では、係合特徴部は小さな突起(こぶ)又は捕捉されるボールベアリングのような代替構造体であってもよい。
【0009】
以下により詳細に説明されるラチェット機構はボタンの作動を通して一時的に外され、このことによって、接続ロッドの円滑且つ迅速な初期係合が可能となる。同じ例において、ラチェット機構120上のボタンは、外側ハウジング110が内側スリーブ101上を自由に移動することを可能とするために作動される必要がある。他の例では、ラチェット機構120は、ラチェット機構上のボタンの作動無しで、係合特徴部が内側スリーブ101の近位部のねじ山を飛び越えることを可能とする。
【0010】
この例では、ラチェット機構120は、ラチェット機構をロックアウトする固定動作モード又は螺合動作モードに移行可能である。以下に詳細に説明されるように、ラチェット機構をロックアウトすることは、ラチェット機構の係合特徴部を内側スリーブ101のねじ付き部分と固定的に係合させることを含む。この固定モードでは、リデューサーは、ねじ付きリダクション器具として動作し、外側ハウジング110を迅速に移動させない。したがって、固定モードにおいて、外側ハウジング110はツールソケット116を介して受けた回転入力(又は外側ハウジング110のトップスリーブ115部分の任意の回転)のみに基づいて移動する。リダクション器具のラチェット機構120を固定モードに移行させることは、大きな縮小力によってラチェット式リダクション器具が適切に機能しない困難なリダクション状況において、ユーザがリダクション器具を除去することを可能とする。例えば、ラチェット器具は、典型的には、ねじ付き部材をねじ付き内側スリーブと係合させ続けるためにコイルスプリングのようないくつかの形態の付勢要素に頼るので、ある状況では、コイルスプリングは、器具に作用する力に十分打ち勝つようにねじ山を係合させ続けることができなくなる場合がある。これらの状況では、ラチェット専用器具は、接続ロッドの切断及び椎弓根スクリューの除去のような特別な措置によって除去されなければならない場合がある。ロックアウト機能を有するデュアルモードのラチェット機構は、内側スリーブのねじ付き部分に対するラチェットの係合特徴部の係合を固定する機構を提供することによって斯かる特別な措置を回避することができる。固定係合モードでは、リダクション器具は、ねじ山の機械的利点を活用して、器具を動かなくさせる外力に打ち勝つことができる。
【0011】
図1Bは、上で紹介されたロッドリダクション器具100の分解等角図である。分解図は、この例に係る例示的なラチェット機構の追加要素並びに器具全体を紹介する。ロッドリダクション器具100は、内側スリーブ101と、内側スリーブ101のねじ付き近位部分102と、複数の係合部材103(まとめて係合部材103と称される)とを含むことができる。また、ロッドリダクション器具100は外側ハウジングを含むことができ、外側ハウジングは、ボトムスリーブ111に対して回転するトップスリーブ115を含む。トップスリーブ115はスラストワッシャ118及び保持リング119を介してボトムスリーブに結合される。この例では、ラチェット機構120は、ピボットシャフト121、ロック機構130、レバー部材140及び付勢部材146を含むことができる。
【0012】
図2は、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具100の上部の分解等角図である。この例では、ロッドリダクション器具100のトップスリーブ115及びラチェット機構120が更に詳細に示される。ラチェット機構120は、トップスリーブ115に組み込まれた特徴部、例えば、戻り止め孔122、ボタン開口部123、ボタン切り欠き部124、ピボットシャフト孔125、スライドロックレール126及び横方向シャフト開口部127を含む。また、図2は、ツールソケット116及び回転継手117を有するトップスリーブ115を示す。回転継手117は、トップスリーブ115がボトムスリーブ111に接続される箇所である。また、ラチェット機構120は、ピボットシャフト121、ロック機構130、レバー部材140及び付勢部材146を含む。また、ロック機構130はロック戻り止め136及びラチェット戻り止め137を含むことができ、ロック戻り止め136及びラチェット戻り止め137はロック機構130を二つのモード(ロック又は固定及びラチェット)のうちの一方に保持するように動作する。レバー部材140は、ラチェット解放ボタン142、ピボット145及び付勢凹部147を含むことができる。ピボット145は、ピボットシャフト121を受容することができ、レバー部材140がラチェットモードにおいて回転又は枢動する箇所である。付勢部材146は、レバー部材140を内側スリーブ101のねじ付き近位部分と係合するように付勢するように動作する。図3A図3Jにより詳細に示されるように、付勢部材146は、ウェーブワッシャスプリングであるが、コイルスプリング又は他の類似の付勢部材であってもよい。ある例では、ウェーブワッシャスプリングの代わりに弾性材料又はエラストマー材料を用いることができる。付勢部材は、ねじ式係合とラチェット動作との間のバランスを提供しつつ、内側シャフト上のねじ山を通過するのに十分な移動を可能とする必要がある。
【0013】
ロック機構130は、ラチェット機構120に組み付けられたときにスライドロックレール126上を摺動する。戻り止め孔122は、戻り止めボールを保持して、ロック機構130が固定モードとラチェットモード(クイックオン/オフモードとも称される)との間で摺動するときにロック戻り止め136及びラチェット戻り止め137と係合するように設計されている。
【0014】
図3A図3Jは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具において使用されるラチェット機構の図である。図3Aは、組み立てられたラチェット機構120の上面の図である。この例では、ラチェット機構120は、ボタン開口部123、ボタン切り欠き部124、ピボットシャフト孔125、ロック機構130、レバー部材140及びラチェット解放ボタン142を含むことができる。この例におけるロック機構はスライドロック132を含み、スライドロック132は、以下の図において更に示されるU字状の線形スライドである。この例では、ロック戻り止め136及びラチェット戻り止め137はU字状のスライドロック132の対向するアーム上に示されている。
【0015】
図3Bはラチェット機構120の側面図である。この図では、スライドロック132は、スライド凹部133に沿ったスライドロックレール126のうちの一つと係合して示される。スライドロック132は、U字状構造の各アームの外縁に沿ったスライド凹部133を含む。この図には、ピボットシャフト孔125内のピボットシャフト125も示される。レバー部材140のラチェット解放ボタン142が作動されると、レバー部材140がピボットシャフト121上で枢動し、係合特徴部141が内側シャフト101のねじ付き部分から外れる。
【0016】
図3C及び図3Dは、ラチェット機構120と、内側スリーブ101の関連部分との切り欠き図である。これら図では、以下のラチェット機構120の細部、すなわちピボットシャフト121、ボタン開口部123、ボタン切り欠き部124、スライドロック132、レバー部材140及び付勢部材146が描かれている。この例では、スライドロック132は横方向シャフト138を含み、横方向シャフト138は、レバー部材140のラチェット動作をロックアウトするロック機構130の構造である。これら図において、レバー部材140は、近位部分の下側に係合特徴部141を含むように示されている。切り欠きは、係合特徴部141が内側スリーブ101のねじ付き近位部分102とどのように係合するかを示す。この例では、係合特徴部141は、内側スリーブ101のねじ付き近位部分102に対応する複数の部分的なねじ山である。切り欠きは、付勢部材146がどのように係合特徴部141をねじ付き近位部分102と係合するように付勢するかも示す。また、レバー部材140はロック面143及びラチェット空洞部144を含み、ロック面143及びラチェット空洞部144はスライドロック132の横方向シャフト138の下に位置する。ラチェットモードでは、スライドロック132は図示されるように位置し、横方向シャフト138はラチェット空洞部144と対向し、ラチェット空洞部144は、レバー部材140が横方向シャフト138と干渉することなく枢動するための隙間を提供する。しかしながら、固定モード(又はロックモード)では、スライドロック132は近位方向に動かされ、横方向シャフト138はロック面143に対向して位置する。固定モードでは、横方向シャフト138とロック面143との間の係合によって、レバー部材140が枢動することが防止される。
【0017】
図3E図3Jは、ロック機構130と、レバー部材140と、ラチェット機構120の一部との追加の詳細図を提供する様々な図である。図3Eは、ピボットシャフト121、ロック機構130及びレバー部材140の等角図である。この図では、スライドロック132のU字状構造が各アームの端部に沿ったスライド凹部133と共に描かれている。図3Fはロック機構130及びレバー部材140の上面図である。図3Gはロック機構130及びレバー部材140の下面図である。この図では、レバー部材140の係合特徴部141は、ねじ山パターンの少なくとも三つの傾斜したねじ山を含んで示される。他の例では、異なるねじ山パターンが利用され、係合特徴部141はより多くの又はより少ないねじ山を有することができる。他の例では、係合特徴部141は、ねじ付き近位部分102と係合するように位置付けられた一連の突起を含むことができる。更なる他の例では、係合特徴部141は、ねじ付き近位部分102のねじ山と係合するように位置付けられた一つ以上の捕捉されるボールベアリングを含むことができ、この例では、ねじ付き近位部分102のねじ山はボールベアリングを受け入れるように構成される。この図には、戻り止めボール134及び戻り止めスプリング135も含まれ、戻り止めボール134及び戻り止めスプリング135はスライドロック132を固定位置又はラチェット位置に保持することを助ける。図3Hは、ロック機構130及びレバー部材140の側面図である。図3Iは、ロック機構130及びレバー部材140のロッドリダクション器具の長手方向軸線に沿った軸線方向の図である。この図は、U字の各脚の外側端部にC字状のスライド凹部133を有するU字状構造のスライドロック132を描く。図には、レバー部材140の近位部分の下側における係合特徴部141の湾曲も描かれている。係合特徴部141の反対側には、スライドロック132の下面によって所定位置に保持された付勢部材146がある。図3Jは、上述の要素について僅かに異なる見方を提供する、ロック機構130及びレバー部材140の切り欠き斜視図である。
【0018】
図4は、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具200の等角図である。ロッドリダクション器具200は、上述したロッドリダクション器具100と同様であるが、異なるラチェットロックアウト機構を含む。ロッドリダクション器具200の残りの機能がロッドリダクション器具100と同等であるので、以下の説明では、主にラチェット機構220の相違点に焦点が当てられる。図4に示されるように、ロッドリダクション器具200は、内側シャフト201、係合部材203、外側ハウジング210及びラチェット機構220を含むことができる。外側ハウジング210はボトムスリーブ211及びトップスリーブ215を含むことができる。トップスリーブ215はツールソケット216を含むことができ、ツールソケット216は、トップスリーブ215に回転をもたらすためのハンドルを受容するために使用され得る。トップスリーブ215は回転継手217の周りでボトムスリーブ211に対して回転することができる。ボトムスリーブ211は遠位端部にロッド係合部212を含む。
【0019】
図5は、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具200の上部(トップスリーブ215)の分解等角図である。この例では、ラチェット機構220は、ピボットシャフト221、ボタン開口部223、ボタン切り欠き部224、ピボットシャフト孔225、ラチェットカバー226、ロック機構230及びレバー部材240を含む。レバー部材240は、レバー部材140と同様であり、近位部分にねじ付き下面を含み、遠位部分の上面にラチェット解放ボタン242を含む。レバー部材240は近位部分と遠位部分との間にピボットシャフト221を受容する。レバー部材240の近位部分の上面には、付勢部材246を受容するようになっている付勢凹部247が存在する。この例では、ロック機構230は段付き円筒シャフトの形態のスライドロック232を含む。スライドロック232は、大径部233、小径部234、ロックリング235及び付勢部材236を含む。組み立てられたとき、スライドロック232は、ロックリング235が(図6Jにおいてラベル付けされた)スライドロック孔237内でスライドロック232のシャフトを繋止した状態で、スライドロック孔237内に配置される。
【0020】
この例では、レバー部材240及び付勢部材246が上面の開口部を通してラチェット機構220内に落とされ、その後、ラチェットカバー226が、開口部の上で所定位置に滑り込まされて、付勢部材246が動作するための係合面を提供する。一つの例では、ラチェットカバー226の縁部がラチェット機構220の上面の開口部内の凹部に滑り込む。レバー部材240が所定位置に位置すると、ピボットシャフト221が、挿入されて、レバー部材240の枢動を可能としつつ、レバー部材240を保持する。
【0021】
図6A図6Jは、例示的な実施形態に係るロッドリダクション器具200において使用されるラチェット機構220の図である。図6A及び図6Bは、ラチェット機構220の切り欠き図、並びに内側シャフト201、トップスリーブ215及びボトムスリーブ211の一部の描写である。この例では、スラストワッシャ218及び保持リング219がトップスリーブ215及びボトムスリーブ211に関連して示される。内側シャフト201は、レバー部材240の係合特徴部241と係合するねじ付き近位部分202を含む。示された付勢部材246は、レバー部材240がピボットシャフト221上で枢動して内側シャフト201のねじ付き近位部分202と係合するようにレバー部材240を付勢する。これら切り欠き図には、ロック面243も示される。レバー部材240上のロック面243は、ラチェット解放ボタン242の一部の下の横方向の下面に沿った半円の凹部である。他の図に示されるように、スライドロック232の大径部233は、ロック面243と係合するように横方向に動かされて、レバー部材240が枢動して係合特徴部241を内側シャフト201のねじ付き近位部分202と固定的に係合させることを防止する。スライドロック232が係合された状態で、ロッドリダクション器具200はトップスリーブ215の回転のみによって動作する。切り欠き図には、ボタン開口部223及びボタン切り欠き部224の構造も示される。ボタン開口部223は、レバー部材240のラチェット解放ボタン242の輪郭に適合するラチェット機構220の開口部であり、ボタン切り欠き部224はラチェット解放ボタン242の周りの凹部である。いくつかの例では、ボタン切り欠き部224は湾曲した側壁を含むことができ、他の例では、側壁は直線状であるが傾斜していてもよい。
【0022】
図6C図6Iは、ロック機構230と、レバー部材240と、ラチェット機構220の一部との追加の詳細図を提供する様々な図である。図6Cは、ピボットシャフト221、ロック機構230及びレバー部材240の等角図である。この例では、レバー部材240のピボット245は、ピボットシャフト221を受容するレバー部材240の孔として識別される。この例に示されるレバー部材240の他の特徴は、係合特徴部241、ラチェット解放ボタン242、ロック面243、付勢凹部247及び付勢部材246を含む。この例は、レバー部材240上のロック面243と、段付き円筒スライドロック232の大径部233との間の関係を示す。参照番号で具体的に識別されていないが、スライドロック232は、ロック機構230のスライドロック232を作動させるためのボタンとして機能する、拡大された横方向端部を含む。
【0023】
図6Dは、ピボットシャフト221、ロック機構230及びレバー部材240の下面図である。この例では、レバー部材240の係合特徴部241は、レバー部材240の長手方向軸線を横切って浅い角度で延びる少なくとも三つのねじ山を含むように示される。いくつかの例では、より多くの又はより少ないねじ山を係合特徴部241に含めることができる。スライドロック232の段付き円筒シャフトの小径部234がレバー部材240のラチェット解放ボタン242の部分の下側の凹部内に示される。ロック付勢部材236が、スライドロック232をロック解除位置に付勢する位置において示される。
【0024】
図6Eは、ピボットシャフト221、ロック機構230及びレバー部材240の上面図である。図6Fは、ピボットシャフト221、ロック機構230及びレバー部材240の側面図である。この図では、係合特徴部241は、内側シャフト201のねじ付き近位部分202と係合するための四つの部分的なねじ山を含むように示される。
【0025】
図6Gは、ピボットシャフト221、ロック機構230及びレバー部材240の内側側面図である。この図では、レバー部材240のラチェット解放ボタン242の部分の下側のU字状のスライドロック凹部248が、スライドロック232の小径部234及びロック付勢部材236に関連して示される。スライドロック凹部248は、ラチェット解放ボタン242が作動された状態で、又は外側ハウジング210が内側シャフト201上を摺動するときのラチェット時に、レバー部材240がピボットシャフト221の周りで枢動することを可能とするのに十分な間隔を提供する。図6G及び図6Iは、それぞれ、ロッドリダクション器具200の長手方向軸線に沿った遠位図及び近位図である。図6Iは、レバー部材240の係合特徴部241の内面の湾曲構造を描く。係合特徴部241は、内側シャフト201の外側の湾曲に一致するように湾曲している。
【0026】
図6Jは、ラチェット機構220、トップスリーブ215及び内側シャフト201の横方向の切り欠き図である。切り欠きはスライドロック232の段付き円筒シャフトを貫通している。示されるように、ロックリング235は、スライドロック孔237の区域を拡大する円筒凹部と係合することによってスライドロック232をスライドロック孔237内に保持する。また、切り欠きは、スライドロック232のボタンがロック付勢部材236を圧縮するように押されたときに、大径部233がどのようにレバー部材240上のロック面243と係合できるかを示す。
【0027】
図7は、上述されたロッドリダクション器具100又は200のようなロッドリダクション器具を使用するための方法700を示すフローチャートである。方法700は、上述されたロッドリダクション器具のうちの一つを利用する共通の一組の動作を示す。しかしながら、方法700は、器具の全ての可能な使用を網羅しているわけではなく、説明される動作を異なる順序で行うことができ、特定の使用状況に合うように動作を繰り返し又は省略することができる。この例では、方法700は、710において椎弓根スクリューに結合することと、720においてクイックオン/オフモードを選択することと、730において外側ハウジングを摺動させて接続ロッドと係合させることと、740において随意的にT字ハンドルを取り付けることと、750において接続ロッドを縮小することと、760において椎弓根スクリューにクロージャーを挿入することと、770においてロッドリダクション器具を除去することとのような動作を含むことができる。
【0028】
方法700は、選択された器具の動作モードを710において開始することができる。この例では、スライドロック132のようなスライドロックをクイックオン/オフ(遠位)位置に移行することによってクイックオン/オフ(又はラチェット)モードを選択することができる。上述したように、クイックオン/オフモードの器具では、ラチェット機構は自由にラチェットする(ratchet)ことができる。言い換えれば、レバー部材140の係合特徴部141は内側スリーブ101のねじ付き近位部分102と固定的に係合されない。別の例では、ユーザは、スライドロックを固定位置(近位位置)に移行することによって、螺合動作モードに入ることを選択することができる。方法700において説明された動作は共通の動作順序で描かれているが、多くの動作を方法の他の位置に動かし又は繰り返すことができる。例えば、処置中の任意の時点で動作モードを切り替えることができる。
【0029】
720において、ロッドリダクション器具を椎弓根スクリューのヘッドに結合することによって方法700を続けることができる。例えば、ロッドリダクション器具100の係合部材203を椎弓根スクリューのヘッドと係合するように設置することができる。椎弓根スクリューとの係合の前に、ラチェット解放ボタン142を係合させ、内側シャフト101を完全に開いた位置まで完全に延ばすことができる。一つの例では、器具は、スクリューヘッドの四つの鉛直スロットと係合する四つの別個の係合部材を含むことができる。他の例では、器具は、U字状の椎弓根スクリューヘッドのいずれかのアームと係合する二つの係合部材のみを含んでいてもよい。
【0030】
椎弓根スクリューのヘッドが係合されると、方法700は、730において器具が接続ロッドと自由に係合できる状態を続けることができる。この例では、外側ハウジング110は内側スリーブ201上を摺動してラチェットを通して接続ロッドと迅速に係合することができる。器具が固定モードにある場合、外側ハウジング110を内側スリーブ101上で移動させて接続ロッドと係合させるためには、トップスリーブ115への回転入力が必要となるだろう。
【0031】
接続ロッドが係合された状態で、方法700は、740においてトップスリーブ115のツールソケット116にT字ハンドルを取り付けることを随意的に続けることができる。750において、方法700は、椎弓根スクリューのヘッド内に接続ロッドを縮小させるように器具を操作することを続けることができる。器具の操作はT字ハンドル(又は追加のトルクが必要とされない場合にはトップスリーブ115)の回転を含むことができ、この回転は外側ハウジング110の移動を引き起こす。随意的に、ラチェット機構120がねじ式の縮小中に外れないことを確実にするロッドの縮小が特に困難である場合、器具を固定モードに移行させることができる。
【0032】
ロッドが椎弓根スクリュー内に完全に縮小されると、方法700は、760において、椎弓根スクリューのヘッド内にクロージャーを挿入してロッドを所定位置に繋止することを続けることができる。器具は、ロッドリダクション器具を除去することなくクロージャーが挿入されることを可能とする中央円筒経路を含む。ロッドが繋止されると、方法700はステップ770において椎弓根スクリューのヘッドからリダクション器具を除去することを続けることができる。
【0033】
器具の除去動作770は、随意的に、772においてモードを選択することと、774において器具の入力部を回転させることと、776においてラチェット解放ボタンを作動させることと、778において椎弓根スクリューから外すこととのような動作を含むことができる。ある例では、クイックオン/オフモードにおけるラチェット機構120はロッドリダクション器具100への張力を解放することができなくてもよい。斯かる状況では、近位位置へのスライドロック132の操作を通して器具を固定モードに移行させることができる。固定モードでは、774においてトップスリーブ215を回転させて外側ハウジング110への張力を接続ロッドとの係合から解放することができる。張力が解放されると、モードをクイックオン/オフモードに戻し、776においてラチェット解放ボタン142を作動させることができる。ラチェット解放ボタン142を作動させることは、外側ハウジング110が内側スリーブ101に対して摺動して器具を開放することを可能とする。器具が開放されると、778において係合部材103を椎弓根スクリューヘッドから外すことができる。
【0034】
様々な注記及び例
これら非限定的な例の各々は、それ自体で成立し、様々な変形例において又は一つ以上の他の例との組合せで組み合わされ得る。
【0035】
例1には、ロッドリダクション器具を含む主題が記載される。この例では、ロッドリダクション器具は、内側シャフト、外側ハウジング及びラチェット機構を含むことができる。内側シャフトはねじ付き近位部分と遠位端部とを含むことができ、遠位端部は、椎弓根スクリューのハウジングを受容するようになっている複数の係合部材を含む。外側ハウジングは内側シャフトの少なくとも一部の上に摺動可能に受容される。また、外側ハウジングはトップスリーブ及びボトムスリーブを含むことができる。この例では、トップスリーブは、内側シャフトのねじ付き近位部分と、接続ロッドと係合するようになっているボトムスリーブの遠位端部と選択的に係合するラチェット機構を含むことができる。ラチェット機構は外側ハウジングのトップスリーブに沿って配置される。この例では、ラチェット機構は、内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合する係合特徴部と、内側シャフトのねじ付き近位部分に対してラチェット機構の係合特徴部を選択的にロックするロック機構とを含むことができる。
【0036】
例2では、例1の主題に、トップスリーブが、ボトムスリーブに回転可能に結合され、回転入力を内側シャフトに対する外側ハウジングの直線移動に変換するようになっていることが随意的に含まれることができる。
【0037】
例3では、例2の主題がラチェット機構の係合特徴部を随意的に含むことができ、ラチェット機構の係合特徴部は、トップスリーブから回転入力を受けると、内側シャフトのねじ付き近位部分と係合して内側シャフトに対して外側シャフトを長手方向軸線に沿って直線移動させる。
【0038】
例4では、例1~例3のいずれか1つの主題に、ラチェット機構が、ピボットによって隔てられた近位端部と遠位端部とを含むレバー部材を有することが随意的に含まれる。
【0039】
例5では、例4の主題に、レバー部材の近位端部の係合特徴部が内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合するようになっていることが随意的に含まれる。
【0040】
例6では、例4及び例5のいずれか1つの主題に、レバー部材の遠位端部が、ラチェット機構の外面に露出されたボタンを有することが随意的に含まれる。
【0041】
例7では、例4から例6のいずれか1つの主題に、ピボットが、ロック機構の対向する側壁に延在するピボットシャフトを有し、ピボットシャフト周りのレバー部材の回転運動を可能とすることが随意的に含まれる。
【0042】
例8では、例7の主題に、レバー部材の近位部分上の係合特徴部がレバー部材の回転運動を通して内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合することが随意的に含まれる。
【0043】
例9では、図8の主題に、ラチェット機構が付勢部材を有し、付勢部材が係合特徴部の反対側のレバー部材の近位部分の上面に対して位置付けられて係合特徴部を内側シャフトのねじ付き近位面に付勢することが随意的に含まれる。
【0044】
例10では、例4~例9のいずれか1つの主題に、ロック機構がスライドロックを有し、スライドロックが、ラチェット機構の外面に配置され、第1の位置においてロック機構をロックし且つ第2の位置においてロック機構をロック解除するようになっていることが随意的に含まれる。
【0045】
例11では、例10の主題に、スライドロックが、ラチェット機構の対向する側部に沿って摺動可能に係合するU字状の線形スライドであり、第1の位置と第2の位置との間でロッドリダクション器具の長手方向軸線に沿って移動することが随意的に含まれる。
【0046】
例12では、例11の主題に、スライドロックが、スライドロックの下面から長手方向軸線に向かって突出してレバー部材上のロック面と係合する横方向シャフトを含むことが随意的に含まれる。
【0047】
例13では、例12の主題に、スライドロックが第1の位置にあり、このため、横方向シャフトが、ロック面と係合して、レバー部材がレバー部材の係合特徴部を内側シャフトのねじ付き近位部分から離れるように枢動させることを防止することが随意的に含まれる。
【0048】
例14では、例12の主題に、スライドロックが第2の位置にあり、このため、下側シャフトが、レバー部材の空洞部の上に位置付けられ、レバー部材がラチェット機構内で自由に枢動することを可能とすることが随意的に含まれる。
【0049】
例15では、例10の主題に、スライドロックが段付き円筒シャフトであり、段付き円筒シャフトが、レバー部材を横切って位置付けられ、ラチェット機構の幅の一部を横断して延在する孔内に配置されることが随意的に含まれる。
【0050】
例16では、例15の主題に、段付き円筒シャフトが、小径部に結合された大径部を含み、大径部は、ラチェット機構内のレバー部材の枢動を防止するようにレバー部材上のロック面と係合可能であることが随意的に含まれる。
【0051】
例17では、例15又は例16のいずれか1つの主題に、スライドロックが第1の位置と第2の位置との間で孔内を移動することが随意的に含まれる。
【0052】
例18では、例17の主題に、スライドロックが第1の位置にあり、第1の位置において、段付き円筒シャフトの大径部の一部がレバー部材上のロック面と係合してラチェット機構をロックアウトすることが随意的に含まれる。
【0053】
例19では、例15~例18のいずれか1つの主題に、ロック機構が付勢要素を含み、付勢要素が孔内に配置されて段付き円筒シャフトを第2の位置のような特定の位置に付勢することが随意的に含まれる。
【0054】
例20では、例15~例19のいずれか1つの主題に、段付き円筒シャフトが第2の位置に付勢され、第2の位置において、ラチェット機構内のレバー部材が、内側シャフトのねじ付き近位部分から離れるように係合特徴部を自由に枢動させ、外側シャフトが回転入力無しで内側シャフト上を椎弓根スクリューに向かって遠位に移動することを可能とすることが随意的に含まれる。
【0055】
例21では、例1~例20のいずれか1つの主題に、係合特徴部が、ねじ、こぶ、円筒形の突起、正方形又は長方形の突起、及び一つ以上の捕捉されるボールベアリングを含む一群の構造体から選択されることが随意的に含まれる。
【0056】
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面への参照を含む。図面は、例示として、本発明を実施することができる特定の実施形態を示す。これら実施形態は本明細書において「例」とも称される。斯かる例は、図示され又は記載された要素の他に要素を含むことができる。しかしながら、本発明者は、図示され又は記載された要素のみが提供される例も企図している。さらに、本発明者は、特定の例(又はこれらの一つ以上の態様)に関して、又は本明細書において図示され若しくは記載された他の例(又はこれらの一つ以上の態様)に関して、図示され又は記載された要素(又はこれらの一つ以上の態様)の任意の組合せ又は変形を使用する例も企図している。
【0057】
この文書と参照によって取り込まれた任意の文書との間で一貫性のない用法がある場合、この文書における用法が支配する。
【0058】
この文書では、特許部得書において一般的であるように、用語「a」又は「an」は、その他の事例又は「少なくとも一つの」若しくは「一つ以上の」の用法とは無関係に一つ又は一つよりも多くを含むように使用される。この文書では、用語「又は」は非排他的であることを指すために使用され、明記されない限り、「A又はB」は、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」及び「A及びB」を含む。この文書では、用語「含む」及び「それにおいて(in which)は、それぞれの用語「備える」及び「それにおいて(wherein)」の平易な英語の均等物として使用される。また、以下の特許請求の範囲において、用語「含む」及び「備える」は非限定的な用語であり、すなわち、請求項において斯かる用語の後に列挙された要素の他に要素を含むシステム、装置、物品、組成物、配合物、プロセスは依然としてその請求項の範囲内であるとみなされる。さらに、以下の特許請求の範囲において、用語「第1の」、「第2の」及び「第3の」等は、単にラベルとして使用され、これらの目的に数値的要件を課すことを意図していない。
【0059】
上記の説明は、例示的であることを意図しており、限定するものではない。例えば、上述された例(又はこれらの一つ以上の態様)を互いに組み合わせて使用してもよい。上記の説明を検討すれば、例えば当業者によって他の実施形態を使用することができる。要約書は、米国特許法施行規則第1.72条(b)に準拠するために提供され、読み手が技術的開示の性質を迅速に確認することができることを可能とする。要約書は、請求項の範囲又は意味を解釈し又は限定するのに使用されないという理解で提出されている。また、上記の詳細な説明において、開示を簡素化するために様々な特徴が一緒にまとめられる場合がある。これは、請求されていない開示された特徴があらゆる請求項に必須であることを意図していると解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は特定の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴にある。このため、以下の特許請求の範囲は、例又は実施形態として詳細な説明に組み込まれ、各請求項はそれ自体で別個の実施形態として成立し、斯かる実施形態は様々な組合せ又は変形で互いに組み合わされることが企図されている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、斯かる特許請求の範囲が権利化される均等物の全範囲と共に決定されるべきである。
本開示は以下の態様を包含する。
(1)
ねじ付き近位部分と、遠位端部とを含む内側シャフトであって、前記遠位端部は、椎弓根スクリューのハウジングを受容するようになっている複数の係合部材を含む、内側シャフトと、
前記内側シャフトの少なくとも一部の上に摺動可能に受容され且つトップスリーブ及びボトムスリーブを含む外側ハウジングであって、前記トップスリーブは、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と、接続ロッドと係合するようになっている前記ボトムスリーブの遠位端部と選択的に係合するラチェット機構を含む、外側ハウジングと、
前記外側ハウジングのトップスリーブに沿って配置されたラチェット機構であって、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合する係合特徴部と、前記内側シャフトのねじ付き近位部分に対して該ラチェット機構の前記係合特徴部を選択的にロックするロック機構とを含むラチェット機構と
を備える、ロッドリダクション器具。
(2)
前記トップスリーブは、前記ボトムスリーブに回転可能に結合され、回転入力を前記内側シャフトに対する前記外側ハウジングの直線移動に変換するようになっている、上記(1)に記載のロッドリダクション器具。
(3)
前記トップスリーブから回転入力を受けると、前記ラチェット機構の係合特徴部は前記内側シャフトのねじ付き近位部分と係合して前記内側シャフトに対して前記外側シャフトを長手方向軸線に沿って直線移動させる、上記(2)に記載のロッドリダクション器具。
(4)
前記ラチェット機構は、ピボットによって隔てられた近位端部と遠位端部とを含むレバー部材を含む、上記(1)に記載のロッドリダクション器具。
(5)
前記レバー部材の近位端部は、前記内側シャフトのねじ付き近位部分と選択的に係合するようになっている前記係合特徴部を含む、上記(4)に記載のロッドリダクション器具。
(6)
前記レバー部材の遠位端部は、前記ラチェット機構の外面に露出されたボタンを含む、上記(4)に記載のロッドリダクション器具。
(7)
前記ピボットは、前記ロック機構の対向する側壁に延在するピボットシャフトを含み、該ピボットシャフト回りの前記レバー部材の回転運動を可能とする、上記(4)に記載のロッドリダクション器具。
(8)
前記レバー部材の回転運動は、該レバー部材の近位部分上の前記係合特徴部が前記内側シャフトのねじ付き近位面と選択的に係合することを可能とする、上記(7)に記載のロッドリダクション器具。
(9)
前記ラチェット機構は付勢部材を含み、該付勢部材は前記係合特徴部の反対側の前記レバー部材の近位部分の上面に対して位置付けられて前記係合特徴部を前記内側シャフトのねじ付き近位面に付勢する、上記(8)に記載のロッドリダクション器具。
(10)
前記ロック機構はスライドロックを含み、該スライドロックは、前記ラチェット機構の外面に配置され、第1の位置において前記ロック機構をロックし且つ第2の位置において前記ロック機構をロック解除するようになっている、上記(4)に記載のロッドリダクション器具。
(11)
前記スライドロックは、前記ラチェット機構の対向する側部に沿って摺動可能に係合するU字状の線形スライドであり、前記第1の位置と前記第2の位置との間で当該ロッドリダクション器具の長手方向軸線に沿って移動する、上記(10)に記載のロッドリダクション器具。
(12)
前記スライドロックは、該スライドロックの下面から前記長手方向軸線に向かって突出して前記レバー部材上のロック面と係合する横方向シャフトを含む、上記(11)に記載のロッドリダクション器具。
(13)
前記スライドロックが前記第1の位置にある状態で、前記横方向シャフトは、前記ロック面と係合して、前記レバー部材が前記レバー部材の係合特徴部を前記内側シャフトのねじ付き近位部分から離れるように枢動させることを防止する、上記(12)に記載のロッドリダクション器具。
(14)
前記スライドロックが前記第2の位置にある状態で、前記下側シャフトは、前記レバー部材の空洞部の上に位置付けられ、前記レバー部材が前記ラチェット機構内で自由に枢動することを可能とする、上記(12)に記載のロッドリダクション器具。
(15)
前記スライドロックは段付き円筒シャフトであり、該段付き円筒シャフトは、前記レバー部材を横切って位置付けられ、前記ラチェット機構の幅の一部を横断して延在する孔内に配置される、上記(10)に記載のロッドリダクション器具。
(16)
前記段付き円筒シャフトは、小径部に結合された大径部を含み、該大径部は、前記ラチェット機構内の前記レバー部材の枢動を防止するように該レバー部材上のロック面と係合可能である、上記(15)に記載のロッドリダクション器具。
(17)
前記スライドロックは前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記孔内を移動する、上記(15)に記載のロッドリダクション器具。
(18)
前記スライドロックが前記第1の位置にある状態で、前記段付き円筒シャフトの大径部の一部が前記レバー部材上のロック面と係合して前記ラチェット機構をロックアウトする、上記(17)に記載のロッドリダクション器具。
(19)
前記ロック機構は付勢要素を含み、該付勢要素は前記孔内に配置されて前記段付き円筒シャフトを前記第2の位置に付勢する、上記(17)に記載のロッドリダクション器具。
(20)
前記段付き円筒シャフトが前記第2の位置に付勢されるとき、前記ラチェット機構内の前記レバー部材は、前記内側シャフトのねじ付き近位部分から離れるように前記係合特徴部を自由に枢動させ、前記外側シャフトが回転入力無しで前記内側シャフト上を前記椎弓根スクリューに向かって遠位に移動することを可能とする、上記(19)に記載のロッドリダクション器具。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図7