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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】キナゾリン誘導体の塩の結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20220308BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61P35/00
A61K31/517
A61P43/00 111
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019510926
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2017098798
(87)【国際公開番号】W WO2018036539
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】201610730222.8
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517285024
【氏名又は名称】正大天晴▲藥▼▲業▼集▲団▼股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】517285035
【氏名又は名称】▲連▼▲雲▼港▲潤▼▲衆▼制▲藥▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516333687
【氏名又は名称】北京▲賽▼林泰医▲藥▼技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CENTAURUS BIOPHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building #16,Minzhuang Road #3,Haidian District,Beijing 100195,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲湯▼ 松
(72)【発明者】
【氏名】朱 益忠
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】周 杰
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 智林
(72)【発明者】
【氏名】徐 宏江
(72)【発明者】
【氏名】田 心
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-519698(JP,A)
【文献】国際公開第2015/043515(WO,A1)
【文献】BERGE,S. M., et al.,JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,米国,AMERICAN PHARMACEUTICAL ASSOCIATION,1977年,Vol. 66,No. 1,pp. 1-19
【文献】川口洋子ら,医薬品と結晶多形,生活工学研究,2002年,Vol.4, No.2,p.310-317
【文献】"新医薬品の規格及び試験方法の設定について",医薬審発第568号,2001年05月01日
【文献】大島寛,結晶多形・擬多形の析出挙動と制御,PHARM STAGE,2007年01月15日,Vol.6, No.10,p.48-53
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
【文献】山野光久,医薬品のプロセス研究における結晶多形現象への取り組み,有機合成化学協会誌,2007年09月01日,Vol.65, No.9,p.907(69)-913(75)
【文献】BYRN S,PHARMACEUTICAL SOLIDS: A STRATEGIC APPROACH TO REGULATORY CONSIDERATIONS,PHARMACEUTICAL RESEARCH,米国,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1995年07月01日,V12 N7,P945-954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/12
A61P 35/00
A61K 31/517
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンにおいて、2θ=6.24°、7.19°、14.26°、18.50°、および26.80°±0.2°に回折ピークを有する、式(I):
【化1】
で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項2】
θ=6.24°、7.19°、14.26°、18.50°、22.59°、26.80°、および27.64°±0.2°に回折ピークを有する、請求項1に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項3】
2θ=6.24°、7.19°、14.26°、14.65°、17.09°、18.50°、21.38°、22.59°、24.70°、25.83°、26.80°、および27.64°±0.2°に回折ピークを有する、請求項2に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項4】
図1に示すような粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項5】
196℃~198℃の融点を有する、請求項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項6】
末X線回折パターンにおいて、2θ=6.39°、7.35°、16.00°、21.21°、22.65°および27.03°±0.2°に回折ピークを有す、式(I)
【化2】
表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項7】
2θ=6.39°、7.35°、13.37°、14.97°、16.00°、18.58°、21.21°、22.65°、23.98°、26.12°、26.50°、27.03°、および27.45°±0.2°に回折ピークを有する、請求項6に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項8】
2θ=6.39°、7.35°、13.37°、14.49°、14.97°、16.00°、17.71°、18.58°、19.13°、21.21°、22.65°、23.98°、24.42°、26.12°、26.50°、27.03°、27.45°および28.05°±0.2°に回折ピークを有する、請求項7に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項9】
図2に示すような粉末X線回折パターンを有する、請求項6に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項10】
前記式(I)で表される化合物と前記マレイン酸とのモル比が1:1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶の製造方法であって、
(1)前記式(I)で表される化合物を、酢酸エチルとアルコールとの混合溶媒に溶解するステップと、
(2)マレイン酸をアルコールに溶解し、そしてステップ(1)から得られた式(I)で表される化合物の溶液と接触させるステップと、
(3)結晶化するステップと、を含む、
式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶の製造方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶を有機溶媒に溶解し、冷却して結晶化させるステップを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶の製造方法。
【請求項13】
結晶組成物の50重量%以上を占める請求項1~10のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶を含む、結晶組成物。
【請求項14】
結晶組成物の95重量%以上を占める請求項1~10のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶を含む、結晶組成物。
【請求項15】
治療有効量の、請求項1~10のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶、または請求項13または14に記載の結晶組成物を含む、医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍の予防または治療における使用のための、請求項1~10のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶、または請求項13または14に記載の結晶組成物、または請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2016年08月25日に中華人民共和国国家知的財産局に出願された出願番号が201610730222.8である中国特許出願に基づく優先権および利益を主張し、当該出願の全文を援引して本願に組み込む。
【0002】
本発明は、キナゾリン誘導体のマレイン酸塩の結晶、その製造方法、並びにその腫瘍の予防および治療における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、肺がんは、特に発展途上国において、世界中で最も高い罹患率および死亡率を有する悪性腫瘍である。肺がんは、小細胞肺がんと非小細胞肺がん(NSCLC)に分けられ、そのうち、NSCLCは肺がん患者の総数の80%を占めている。従来の放射線療法と化学療法は、特異性を欠いており、治療効果を達成して患者の寿命を延ばすが、多くの副作用をもたらし、その結果、患者の生活の質を著しく低下させる。近年、分子標的療法は肺癌の治療において大きな進歩を遂げており、NSCLCに対する有効な薬物標的は、主に上皮成長因子受容体(EGFR)である。
【0004】
EGFRは、チロシンキナーゼ受容体の一つであり、HER/ErbBファミリーのメンバーに属し、前記ファミリーはEGFR、HER2、HER3およびHER4を含み、そして細胞外リガンド結合ドメインと一本鎖からなる膜貫通ドメインと細胞内チロシンキナーゼドメインという3つの部分から構成されている。EGFRは、哺乳類の上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞、ケラチノサイト等の細胞の表面に幅広く分布している。EGFRシグナル伝達経路は、細胞の成長、増殖や分化等の生理学的過程に対して重要な役割を果たしている。EGFR等のタンパク質チロシンキナーゼの機能喪失やそれに関連するシグナル伝達経路における重要な因子の異常な活性や細胞局在の異常のいずれも、腫瘍、糖尿病、免疫不全や心臓血管疾患の発症を引き起こすことになる。
【0005】
これまでに市販されているEGFR関連薬物には、ゲフィチニブ(Gefitinib、Iressa)、エルロチニブ(Erlotinib、Tarceva)、およびEGFR/HER2二重阻害剤であるラパチニブが含まれる。可逆的EGFR阻害剤ゲフィチニブおよびエルロチニブは、EGFR変異型非小細胞肺癌患者に対して優れた治療効果を示し、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に延長することができるしかしながら、近年の臨床使用では、EGFR突然変異を有するほとんどの患者が12~14ヶ月以内のPFSを有し、その後間もなく上記のEGFR標的薬に対する耐性を生じることを示している。
【0006】
研究により、EGFRを標的とした薬物の約半分が、EGFRのエクソン20における二次突然変異(T790M)のために耐性を生じることは示されている。上記のEGFR標的薬物の薬剤耐性の課題を解決するために、近年、アファチニブ(BIBW-2992)、カネチニブ(CI-1033)、ネラチニブ(HKI-272)、CO-1686、HM781-36Bなどのいくつかの不可逆的阻害剤などが開発されている。CN104513229Aでは、化学式がN-(1-アクリロイルアザシクロヘキサン-4-イル)-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシキナゾリン-4,6-ジアミンである式(I)で表される化合物を開示している。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許公開公報CN104513229A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
式(I)で表される化合物は、選択的上皮成長因子受容体阻害剤であり、細胞内ドメインのチロシンキナーゼのリン酸化部位と競合的結合することで、ATPとリン酸化部位との相互作用をブロックして、チロシンリン酸化および下流での一連のシグナル伝達を阻害し、さらに腫瘍細胞の成長を阻害することができるものであり、非小細胞肺癌や乳癌等の複数種の悪性腫瘍を治療することができる。中国特許出願CN104513229Aを参照し、その全体を援引して本明細書に組み込む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶を含む結晶組成物、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶またはその結晶組成物を含む医薬組成物、並びにそれらの腫瘍の予防または治療のための医薬における使用。
【0010】
以下、それぞれ開示された実施形態を全体的に理解するために、具体的な詳細を含んで説明したが、当業者は、これらの詳細の一部または複数の部分を用いずに他の方法、部品、材料などを用いても、これらの実施形態を実現することができると理解すべきである。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲の全てにわたって、特に断らない限り、「含む/含有する(comprise)」のような用語、およびその英語の変形(例えば「comprises」や「comprising」など)は、いずれも開放(オープンエンド)式の、包含式の意味、すなわち「…を含むがこれらに限定されない」として解釈されるべきである。
【0012】
本明細書の全体にわたって記載された「一実施形態」または「実施形態」、あるいは「別の実施形態において」または「いくつかの実施形態において」とは、少なくとも1つの実施形態に、当該実施形態に記載の関連する具体的な参照要素、構造、または特徴を含むことを意味する。したがって、明細書の全体にわたって異なる位置に記載の「一実施形態において」、「実施形態において(実施形態では)」、「他の実施形態において」または「いくつかの実施形態において」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すことではない。また、具体的な要素、構造または特徴は、任意の適切な方式で1つ以上の実施形態の中に組み合せられる。
【0013】
本発明の明細書および添付の特許請求の範囲に用いられた単数形の冠詞「一」、「1つ(の)」、「1個(の)」(英語の「a」、「an」、および「the」などに相当する)は、特に断らない限り、複数の対象(オブジェクト)が含まれていると理解すべきである。したがって、例えば、前記「触媒」が含まれる反応には、1つの触媒、または2つ以上の触媒が含まれている。また、用語「または(もしくは/あるいは)」などは、特に断らない限り、通常「および/または」の意味を含んで用いられる。
【0014】
一態様によれば、本発明は、下記式(I):
【化2】
で表される化合物のマレイン酸塩の結晶を提供する。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、結晶組成物の50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上を占める式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶を含む結晶組成物を提供する。
【0016】
さらなる態様によれば、本発明は、治療有効量の式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶、またはその結晶組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
さらに別の態様によれば、本発明は、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶もしくはその結晶組成物またはそれらの医薬組成物の、腫瘍の予防または治療のための医薬の製造における使用を提供する。
【0018】
さらに別の態様によれば、本発明は、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶もしくはその結晶組成物、またはそれらの医薬組成物を、それを必要とする個体(対象)に投与することを含む、腫瘍の予防または治療方法を提供する。
【0019】
さらに別の態様によれば、本発明は、腫瘍の予防または治療のための、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶もしくはその結晶組成物またはそれらの医薬組成物を提供する。
【0020】
さらに別の態様によれば、本発明は、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶もしくはその結晶組成物またはそれらの医薬組成物の、腫瘍の予防または治療における使用を提供する。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶は、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶(結晶形A)であり、その粉末X線回折パターンにおいて、2θ=6.24°、7.19°、14.26°、18.50°、および26.80°±0.2°に回折ピークを有し、好ましくは2θ=6.24°、7.19°、14.26°、18.50°、22.59°、26.80°、および27.64°±0.2°に回折ピークを有し、より好ましくは2θ=6.24°、7.19°、14.26°、14.65°、17.09°、18.50°、21.38°、22.59°、24.70°、25.83°、26.80°、および27.64°±0.2°に回折ピークを有する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶は、図1に示すような粉末X線回折パターンを有する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶は、196℃~198℃の融点を有する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶には、式(I)で表される化合物とマレイン酸とのモル比は1:1である。
【0025】
他の一態様によれば、本発明は、
(1)式(I)で表される化合物を、酢酸エチルとアルコールとの混合溶媒に溶解するステップと、
(2)マレイン酸をアルコールに溶解し、そしてステップ(1)から得られた式(I)で表される化合物の溶液と接触させるステップと、
(3)結晶化するステップと、を含む、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶の製造方法を提供する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明は、
(1)式(I)で表される化合物を、酢酸エチルとアルコールとの混合溶媒に溶解するステップと、
(2)マレイン酸をアルコールに溶解し、そしてステップ(1)から得られた式(I)で表される化合物の溶液を加えるステップと、
(3)結晶化するステップと、を含む、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶の製造方法を提供する。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、前記A型結晶の製造方法には、ステップ(1)におけるアルコール、およびステップ(2)におけるアルコールは、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールのうちの1つまたは2つ以上の混合物から独立して選ばれる。本発明のいくつかの実施形態において、前記A型結晶の製造方法には、ステップ(1)におけるアルコール、およびステップ(2)におけるアルコールは、いずれもエタノールである。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、前記A型結晶の製造方法には、ステップ(1)におけるアルコールと酢酸エチルとの体積比は、15~1:1、好ましくは8~1:1、最も好ましくは2:1である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、前記A型結晶の製造方法には、前記式(I)で表される化合物とマレイン酸とのモル比は、1:1~10、より好ましくは1:2~8、最も好ましくは1:5である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、前記A型結晶の製造方法には、ステップ(3)における結晶化は、10℃~40℃、好ましくは20℃~30℃で行われる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩の結晶は、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のB型結晶であり、その粉末X線回折パターンにおいて、2θ=6.39°、7.35°、16.00°、21.21°、22.65°、および27.03°±0.2°に回折ピークを有し、好ましくは2θ=6.39°、7.35°、13.37°、14.97°、16.00°、18.58°、21.21°、22.65°、23.98°、26.12°、26.50°、27.03°、および27.45°±0.2°に回折ピークを有し、より好ましくは2θ=6.39°、7.35°、13.37°、14.49°、14.97°、16.00°、17.71°、18.58°、19.13°、21.21°、22.65°、23.98°、24.42°、26.12°、26.50°、27.03°、27.45°、および28.05°±0.2°に回折ピークを有する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のB型結晶(結晶形B)は、図2に示すような粉末X線回折パターンを有する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のB型結晶には、式(I)で表される化合物とマレイン酸とのモル比は1:1である。
【0034】
他の一態様によれば、本発明は、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶を有機溶媒に溶解し、冷却して結晶化させるという、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のB型結晶の製造方法を提供する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、前記B型結晶の製造方法には、前記有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN,N-ジメチルアセトアミドからなる群から選ばれ、好ましくは、前記有機溶媒はN,N-ジメチルホルムアミドである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶の粉末X線回折(XRPD)パターンを示す図である。
図2】式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のB型結晶のXRPDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
実施例
以下、次の実施例および試験(これらに限定されない)を通して本発明をより詳細に説明する。実施例で使用される式(I)で表される化合物は、CN104513229Aに記載の実施例2によって製造された。
【0038】
XRPDは、PHASER BRUKER D2 粉末X線回折計を用いて波長1.54060Åで検出した。融点は、YRT-3融点測定装置(天津大学製造)を用いて検出した。含有量は、HPLCを用いて測定した。その中で、中国薬局方、2010年版、第二部分の付録V D(Chinese Pharmacopoeia, 2010 edition, Part II, Appendix V D)を参照し、充填剤:オクタデシルシラン結合シリカゲル、移動相:ギ酸アンモニウム緩衝液およびアセトニトリル、検出波長:260nm、カラム温度:40℃の条件下で行った。含水量は、METTLER TOLEDO DL31カールフィッシャー水分計を用いて測定した。
【0039】
実施例1: 式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶の製造
【化3】
式(I)で表される化合物83.1gを、無水エタノール910mLと酢酸エチル455mLとの混合溶媒に60℃で溶解した。3Lの反応フラスコにマレイン酸105.8gおよび無水エタノール910mLを加え、そして完全に溶解するまで撹拌し、得られた混合物に、上記式(I)で表される化合物の溶液を室温で加え、そして20~30℃で20~24時間反応させ、大量の黄色固体が析出した後、濾過し、濾過ケーキを無水エタノール200mLで洗浄し、45~55℃で24時間真空乾燥して、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のA型結晶の明黄色固体102.5g(融点196~198℃)を得た。
【0040】
H-NMR(500MHz, DMSO-d6):δ15.39 (s, 2H), 10.26(s, 1H), 8.63(s, 1H), 8.01(dd, 1H, J=2.4, 6.75Hz), 7.69-7.72(m, 1H), 7.52(t, 1H, J=9Hz), 7.38(s, 1H), 7.14(s, 1H), 6.86(dd, 1H, J=10.45,16.65Hz), 6.15 (s, 2H), 6.12(d, 1H, J=2.35Hz), 5.75(s, 1H), 5.70(dd, 1H, J=2.15,10.4Hz), 4.47(d, 1H, J=11.2Hz), 4.14(d, 1H, J=11.65Hz), 4.02(s, 3H), 3.81(s, 1H), 3.25(t, 1H, J=11.5Hz), 2.89(t, 1H, J=11.2Hz), 2.06(s, 2H), 1.50(s, 2H).
【0041】
実施例2: 式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のB型結晶の製造
実施例1で製造されたA型結晶10gを秤量し、N,N-ジメチルホルムアミドに加え、80℃に加熱して撹拌下で溶解し、熱いうちに濾過し、濾液を徐々に冷却して7時間結晶化させた後、濾過して得られた濾過ケーキをDMF 10mLで洗浄し、55℃で24時間真空乾燥して、式(I)で表される化合物のマレイン酸塩のB型結晶の黄色固体6.5gを得た。
【0042】
実施例3: 結晶の安定性試験
結晶の安定性試験の条件および方法は、中国薬局方(2010年版)、第二部分の付録XIX Cにおける「原料薬および薬物製剤の安定性試験指導原則」の要件により実行し、実施例1で製造されたA型結晶を試験試料として用い、薬用低密度ポリエチレン袋を試料の内包装として用い、医薬品包装用のポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン複合袋を試料の外包装材として用いた。具体的な結果を以下に示した。
【0043】
【表1】
【表2】
図1
図2