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特許7036812脂肪族-芳香族統計コポリアミドの合成のための新規方法及び得られる脂肪族-芳香族統計コポリアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】脂肪族-芳香族統計コポリアミドの合成のための新規方法及び得られる脂肪族-芳香族統計コポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/16 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
C08G69/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019520057
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2017076226
(87)【国際公開番号】W WO2018069515
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】1659918
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】512082439
【氏名又は名称】アンスティテュ ポリテクニック ドゥ ボルドー
【氏名又は名称原語表記】Institut Polytechnique De Bordeaux
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・カロッティ
(72)【発明者】
【氏名】カミーユ・バカリ-ハッサニ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ルーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・プラーヌ
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-178987(JP,A)
【文献】国際公開第2018/049807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の脂肪族-芳香族のコポリアミドを調製する方法であって、
【化1】
(式中、pは5から11の整数であり、
nは芳香族単位の平均数であり、
mは脂肪族単位の平均数であり、
n/(n+m)の比は5から50%であり、
/は前記脂肪族単位及び前記芳香族単位の統計上の配列を表す)
-式(II)のラクタム誘導体:
【化2】
(式中、pは式(I)で定義したとおりである)
及び/又はその塩の一種と、
-式(III)のアルキル4-アミノベンゾエート:
【化3】
の、強塩基が反応混合物に加えられた遊離型、又は式(III’)のその塩の一種の形態:
【化4】
(式中、Rは直鎖又は分岐鎖のC1~C6アルキル基であり、
はアルカリ金属カチオン又はマグネシウムハライドイオン(MgHal)又はフォスファゼニウムイオン(例えばアルキルフォスファゼニウム、特にBuP))と、
-活性剤と
の反応を含む、方法。
【請求項2】
前記反応がアルキル4-アミノベンゾエート(III)の遊離型から行われる場合、アルキル4-アミノベンゾエート(III)と前記強塩基が系中で作用し、前記塩(III’)が生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無溶媒で、溶融状態の化合物(II)と(III)とから行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
遊離型(III)に対して少なくとも10%の塩(III’)が生成し、反応に関わる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応がアルキル4-アミノベンゾエートの塩(III’)から行われる場合、アルキル4-アミノベンゾエート(III)と前記強塩基とから前記塩を前調製する前段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性ポリアミドに関連する。ポリアミド、特にナイロン6は、その機械的特性から様々な分野で幅広く使用されており、例えば自動車分野の熱可塑性複合体のマトリクスとして使用されている。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド-6の可使温度を上げることが望まれている。これを達成するため、繰り返し単位の鎖を変性することが想定される。特に、芳香族単位の導入によりポリアミドの可使温度を上げることを可能にする。芳香族単位はポリマー鎖の移動度を減少させ、その結果としてガラス転移温度が上昇する。
【0003】
ポリアミド-6は通常二つの異なる方法で合成され、その方法は加水分解重合又はアニオン重合であるが、いずれもε-カプロラクタム環の開環重合に基づく。アニオン重合は重合を低温で行うことができ、それ故に二次的な反応を制限することができるという利点があり、加えて、混合物の初期の極めて低い粘度により、真空注入などの様々な製造方法に関連付けられる。
【0004】
Carlottiらは“Anionic polymerization: Principles, practice, strength, consequences and applications “, Springer of Japan, 191-305 (2015)において、アニオン重合でのポリアミド合成を記載している。PA6の重合は活性剤(N-アシルラクタム)と開始剤(ナトリウムε-カプロラクタム)の存在下、ε-カプロラクタムモノマーを用いて行われる。しかしながら、芳香族の繰り返し単位の導入は想定されていない。
【0005】
StehlicekらはEur. Pol. J., 1997, 33, 587-593において、PA6に短い、中心の芳香族配列の導入を記載している。しかしながら、記載の方法は複雑な開始剤を使用し、中心核にアラミド型を有するトリブロックコポリマーの生成を導く。
【0006】
MathisらはJ. Polymer Science, Part A, vol. 25, 2699-2709 (1987)において、特定のモノマーの合成により、芳香族繰り返し単位と脂肪族繰り返し単位の配列を有する若しくは交互になったブロックコポリマーの生成を必然的に導く方法を記載している。それにも関わらず、著者により記載された前記方法は、脂肪族配列中に芳香族単位が導入され、統計的に分配される統計コポリマーを得ることはできていない。
【0007】
統計コポリマーはブロックコポリマーに対して、一段階で調製され、均一系で得られ、特性が平均的であるという優位性がある。
【0008】
したがって、脂肪族ポリアミド中に芳香族単位の分配を可能とする、統計的な型の脂肪族-芳香族コポリアミドを調製するための、利用可能な新しい方法を確立することが望まれている。
【0009】
D. TuncはTunc “Synthesis of functionalized polyamide 6 by anionic ring-opening polymerization”, March 2016の論文中、ε-カプロラクタムと芳香族モノマーとしてのエチル4-ブチルアミノベンゾエートとを用い、開環と鎖成長の重縮合による重合を組み合わせた方法を記載している。しかしながら、得られた芳香族PA6はガラス転移温度が70℃以下であり、想定される産業用途には芳香族の含有量が多すぎる。芳香族の含有量を増やすことにより、原材料の追加コストと共重合率の低下の理由から、この方法の全体のコストが上がる。加えて、著者はモノマーとしてエチルアミノベンゾエートのアルキル化された誘導体が好まれることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Carlotti et al. in “Anionic polymerization: Principles, practice, strength, consequences and applications “, Springer of Japan, 191-305 (2015)
【文献】Stehlicek et al., Eur. Pol. J., 1997, 33, 587-593
【文献】Mathis et al., J. Polymer Science, Part A, vol. 25, 2699-2709 (1987)
【文献】D. Tunc, “Synthesis of functionalized polyamide 6 by anionic ring-opening polymerization”, March 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
産業上必要条件を考慮すると、低い芳香族含有量で高いTg値を得る方法をもたらす必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の方法は新規の芳香族モノマーを用い、開環によるアニオン重合と鎖成長の重縮合を組み合わせることにより、産業上のコスト基準に適合する芳香族含有量を有するとともに、高いTg値を得ることを可能にする。
【0013】
結果として、合成された脂肪族芳香族ポリアミドは新規であり、これは本発明の更なる対象を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明の最初の対象は、式(I)の脂肪族-芳香族コポリアミド:
【化1】
(式中、pは5から11の整数であり、
nは芳香族単位の平均数であり、
mは脂肪族単位の平均数であり、
n/(n+m)の比は5から50%であり、
/は脂肪族単位及び芳香族単位の統計上の配列を表す)
の調製方法であって、
前記方法は、
-式(II)のラクタム誘導体:
【化2】
(式中、pは式(I)で定義したとおりである)
及び/又はその塩の一種と、
-式(III)のアルキル4-アミノベンゾエート:
【化3】
の、強塩基が反応混合物に加えられた遊離型、又は式(III’)のその塩の一種の形態:
【化4】
(式(III)及び式(III’)中、RはC6からC12アリール基又はC1~C6アルキル基であり、直鎖又は分岐鎖であり、Xはアルカリ金属カチオン又はマグネシウムハライドイオン(MgHal)又はフォスファゼニウムイオン(例えばアルキルフォスファゼニウム、特にBuP))と、
-活性剤と
の反応を含む、方法である。
【0015】
本発明の方法で、コポリマー中に産業上適合可能な割合で芳香族単位を有し、得られるポリアミドのTg値を上げることが可能となる。
【0016】
それ故、50モル%未満、さらには25%未満の芳香族単位を有するコポリマーが50℃以上のTg値で調製され得る。本発明の方法はその結果として、芳香族単位の含有量を増やすことにより、高いTg値を得る想定される手段になり得る。
【0017】
アニオン性のPA-6はTgが52℃であるが、本発明の方法で調製された芳香族PA-6は約20%芳香族含有量を有し、場合によって75℃、更には85℃に達し得るTgを有する。
【0018】
一般に、本発明の方法で得られる芳香族PA6は、25%未満の芳香族含有量を有し、75℃、更には80℃の範囲のTg値を有する。
【0019】
したがって、本発明の方法は、脂肪族ポリアミドの合成に通常用いられるものと同一の試薬から出発し、それに芳香族コモノマーとして芳香族アミン(III)又はその塩の一種(III’)が加えられる。芳香族アミン又はその塩とラクタム型モノマーとの交差反応はいわゆる「活性化モノマー」機構で行われる。
【0020】
本発明によると:
「統計コポリマー」又は「統計的分配」は脂肪族配列中の芳香族単位の統計的な配列を意味する。統計的な分配により通常、得られたコポリマーは単一のTgを有する。
【0021】
「ブロックコポリマー」は脂肪族ブロックと芳香族ブロックとで形成されたコポリマーを意味する。
【0022】
「アルカリ金属カチオン」はLi、Na、K塩を意味する。
【0023】
「Tg」はポリマーのガラス転移温度、すなわちポリマーが固体のガラス状態からゴム状態へ変化する温度を意味する。通常、示差走査熱量計(differential scanning calorimetry、DSC)などの熱分析によって測定される。特にPerkin-Elmer Diamond DSC又は、TA Instruments DSC Q100 LN2などの装置を使用し、例えば-20℃から40℃まで、典型的には5~20℃/分、例えば10℃/分の範囲の速度で温度を変化させることにより測定される。
【0024】
pは好ましくは5又は11である。
【0025】
n/(m+n)の比は特に10%~40%である。得られた百分率は他に示さない限り、通常モル百分率である。
【0026】
「C1~C6アルキル」はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、並びに対応するiso―及びtert-の異性体を意味する。
【0027】
「C6~C12アリール」はフェニル基などの6個の炭素原子を有する芳香族基及びナフチル基を意味する。
【0028】
「活性剤」は開環によるポリアミド合成に通常用いられる任意の活性剤を意味する。本発明に適切な活性剤として、例えば式(IV)のN-アシルラクタムなどのアシルラクタム類の化合物が挙げられる。
【化5】
(式中、R’は直鎖若しくは分岐鎖のC1~C6アルキル基、又はC6~C12アリール基であり、N,N’-ヘキサメチレンビス(2-オキソ-1-アゼパニルカルボキサミド)又はヘキサメチレン-1,6-ジカルバモイルカプロラクタムなどのカルバモイルカプロラクタム基によって任意選択で置換される。)
【0029】
商業的に利用できる活性剤として例えば、Bruggemanによって販売されているBRUGGOLEN(登録商標)、特にBRUGGOLEN(登録商標) C20Pの活性剤が挙げられる。
【0030】
本発明の方法はアミン(III)の活性型、すなわちアルキル4-アミノベンゾエートの塩(III’)により達成される。
【0031】
したがって、本方法は以下により行われる:
-式(III)のアルキル4-アミノベンゾエートと強塩基から系中で塩が生成され、直接反応に関係する方法;特に二つのモノマーIIとIIIを溶融状態で行うことにより、溶媒を含まない方法を可能にする;又は
-塩が強塩基の作用で式(III)の対応するアミンの遊離体の脱プロトン化によってあらかじめ生成することを条件とし、出発物質として塩から行う方法。
【0032】
例えば、一実施形態では、反応がアルキル4-アミノベンゾエート(III)の遊離体から行われる場合、その塩(III’)がアルキル4-アミノベンゾエートと前記強塩基との作用により系中で生成される。
【0033】
一般に、遊離体(III)に対して少なくとも10%の塩(III’)が生成され、反応に関わることが好ましい。
【0034】
別の実施形態では、反応がアルキル4-アミノベンゾエートの塩(III’)から行われる場合、本方法はアルキル4-アミノベンゾエート(III)と前記強塩基とから塩を前調製する前段階をさらに含んでもよい。
【0035】
生成した塩は、ラクタム誘導体(II)と活性剤との反応に直接関係するか、又は、前記反応を行う前に直ちに単離及び/又は精製され得る。
【0036】
一実施形態又は他の実施形態において、前記強塩基による化合物(III)の脱プロトン化段階は非-プロトン性極性溶媒中で行われることが好ましい。
【0037】
溶媒として、特にテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリルが挙げられる。一般に、THFが好ましい。この場合、強塩基を固体状態でも加えることができる(使用される強塩基の種類による)。
【0038】
一実施形態において、重合反応は化合物(II)の遊離体から行われる。
【0039】
また、ラクタム(II)の塩を使用することもできる。式(II)のラクタム塩は式(II’):
【化6】
(式中、pは請求項1で定義されたとおりであり、Yはアルカリ金属カチオン又はマグネシウムハライドイオン(MgHal)又はフォスファゼニウムイオン(例えばアルキルフォスファゼニウム、特にBuP)であり、YはXと同一であることを条件とする。)
を満たす。
【0040】
開始剤として作用するこの塩は、化合物(II)と塩(III’)及び/又は、反応混合物に含まれるか、若しくは前精製なしで用いられる塩(III’)に含まれる強塩基の残留物の存在下、系中で一般に生成される。
【0041】
この塩はまた、前記ラクタム(III)を含む反応混合物に加えられて、共重合反応を促進することができる。
【0042】
pが5の場合、化合物(II)はε-カプロラクタムと呼ばれ、その塩(II’)はε-カプロラクタメートと呼ばれる。pが11の場合、化合物(II)はオメガ-ラウリルラクタムと呼ばれ、その塩(II’)はオメガ-ラウリルラクタメートと呼ばれる。
【0043】
一実施形態において、一般式(III)又は(III’)において、Rはエチル基である。
【0044】
一実施形態において、強塩基はpKaが25以上の塩基の中から選ばれる。本発明の方法に適切な塩基として、NaHMDS、LiHMDS、アルキルマグネシウム、アルキルリチウム、ハロゲン化アルカリ金属が挙げられ、より詳しくはNaHMDS、LiHMDSが挙げられる。
【0045】
一般に、重合反応はモノマー(II)に対して10~50モル%、特に10~40モル%の化合物(III’)を用いて行われる。
【0046】
塩基は一般的に化合物(III)に対して当量で使用される。しかしながら、この量は減らすことができ、特に、化合物(III)に対して10モル%まで減らすことができる。
【0047】
本発明の方法はとりわけ、式(I’)の脂肪族芳香族コポリアミド:
【化7】
(式(I)及び(II)中、pが5であり、m及びnが式(I)で定義されるとおりである。)
と化合物(I”):
【化8】
(式(I)及び(II)中、pが11であり、m及びnが式(I)で定義されるとおりである。)
を得る手段を提供する。
【0048】
一実施形態では本発明のコポリアミドPA6/PAArは、ガラス転移温度Tgが50℃~75℃、更には80℃であり20モル%未満の芳香族含有量を有する。
【0049】
一実施形態では、本発明の方法は重合反応のバルク反応、すなわち重合溶媒を用いない反応を含む。
【0050】
しかしながら、化合物(III)の遊離体から反応が行われる場合、塩(III’)の生成の直後の単離段階なしでは、反応混合物はその後脱プロトン化段階の溶媒を含む可能性があることが理解される。一般に、溶媒は反応混合物の高い温度により除かれ、例えば、不活性ガスの送気に数秒/数分反応容器をさらすことによることにより除かれる。
【0051】
一実施形態では、重合反応は化合物(II)の融点より高い温度、すなわち一般には、pが5(芳香族PA6の合成)の場合、85℃~200℃の間、より詳しくは130℃~180℃の間、典型的には、130℃~150℃の間、又は、pが11(芳香族PA12の合成)の場合、150℃~180℃の間の温度で行われる。
【0052】
本発明の更なる対象は式(I)の脂肪族-芳香族統計コポリアミドである。
【化9】
(式中、pは5から11の整数であり、
nは芳香族単位の平均数であり、
mは脂肪族単位の平均数であり、
n/(n+m)の比は5から50%であり、
/は脂肪族単位及び芳香族単位の統計上の配列を表す)
【0053】
pは好ましくは5又は11である。
【0054】
一般にmは0.5~0.95である。
【0055】
一般にnは0.05~0.5である。
【0056】
一般にコポリマー(I)の分散度は2~3である。
【0057】
数平均分子量(Mn)は一般に2000~1000000g/molであり、好ましくは10000~300000g/molである。これは典型的には、例えばヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)によって決定される。
【0058】
例として、HFIP中の測定は赤外とUV(280nm)と二本のPL HFIP ゲルカラム(300×7.5mm)(排除限界100Da~1500000Da)を備えたintegrated PL GPC50システムを使用し、PMMA標準を用い、40℃に維持されたカラム温度中、1mL/分の速度で測定される。
【0059】
分子量は需要の高い特性及び目的とされる利用に合わせることができる。
【0060】
本発明の脂肪族-芳香族コポリアミドのTg値は50℃~90℃、特に50℃~80℃、より詳しくは50℃~75℃であり得る。
【0061】
例えば、一実施形態では、本発明は式(I’)
【化10】
(式(I)と式(II)中、pは5であり、mとnは式(I)で定義されたとおりである。)
又は式(I”)
【化11】
(式中、mとnは式(I)で定義されたとおりである。)
を満たす式(I)の脂肪族-芳香族統計コポリアミドに特に関する。
【0062】
本発明のPA6/PAArは通常、Tgが50℃~75℃であり、特に芳香族含有量が20%未満である。
【0063】
本発明の更なる対象は、ポリアミドとして本発明のコポリマーを含む熱可塑性複合体に関する。
【0064】
それ故、本発明は前記複合体を含む自動車部品にも関する。
【0065】
下記実施例は、本発明の非限定的な例示として示される。
【実施例
【0066】
ε-カプロラクタム(CL)(BASF, 99 %)を使用前に乾燥シクロヘキサンから再結晶化した。Bruggolen(登録商標) C20活性剤(カプロラクタム中17質量%のイソシアネート、カプロラクタム中N,N’-ヘキサメチレンビス(2-オキソ-1-アゼパニルカルボキサミド)またはヘキサメチレン-1-6-ジカルバモイルカプロラクタム、Bruggemann Chemical)を供給されたまま使用した。エチル4-アミノベンゾエート(98 % Aldrich)をトルエン(99.9 % Aldrich)による共沸蒸留で乾燥し、12時間真空乾燥した。テトラヒドロフラン(THF)(99.9 % Aldrich)を使用前にナトリウム/ベンゾフェノン上で乾燥し、その後蒸留した。トルエンを水素化カルシウム上で乾燥し、一晩還流し、蒸留し、ポリスチリルリチウムに保存した。ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS、THF中1.0M)をシグマ-アルドリッチから購入し、供給されたまま使用した。NaHMDSは粉末状(95 % Aldrich)でも使用することができ、THF中で希釈した。
【0067】
(実施例1):芳香族モノマーの遊離体(III)からの塩の前合成による芳香族モノマー塩(III’)からの共重合
【化12】
【0068】
活性化モノマーの合成:
エチル4-アミノベンゾエート(5.00g;29.55モル)を3回乾燥トルエン共沸混合物(3×20mL)にて乾燥した。真空、火炎乾燥させ、マグネチックスターラーバーを備えたシュレンク管にアルゴン(又は窒素)下で2.0g(12.1mモル)のエチル4-アミノベンゾエートを入れ、続けてTHF(10mL)に溶解させた。溶液を0℃に冷却した後、THF中のNaHMDS溶液(1M)12.5mLを加えた。混合物を25℃で1~2時間撹拌したままにした。混合物を共重合に使用した。
【0069】
重合手順:マグネチックスターラーバーを備え、140℃でアルゴン(又は窒素)でパージした反応容器に4mLの乾燥THF中1.00g(6.06mモル)の活性化モノマーを入れた。混合物を溶媒が完全に蒸発するまで140℃でアルゴン(又は窒素)送気下で保持し、その後ε-カプロラクタム(CL 6.16g、54.55mモル)をアルゴン送気下で加えた。混合物をε-カプロラクタムが完全に溶融するまで5~10分撹拌したままにした。その後、C20活性剤(カプロラクタム中17質量%のイソシアネート、カプロラクタム中N,N’-ヘキサメチレンビス(2-オキソ-1-アゼパニルカルボキサミド)またはヘキサメチレン-1-6-ジカルバモイルカプロラクタム、Bruggemann Chemical)(415mg;0.180モル)をアルゴン(又は窒素)送気下で加え、混合物を40分間140℃で保持した。得られた固体をTHF中に3回沈殿させた(m=6.85g、Yd.=90%)。目標Mnは20000g/モルであった。
【0070】
同じ手順を行い、25%の芳香族含有量を有するコポリマーを調製した(III’とIIのモル比を変化させることによる)。
【0071】
得られた生成物をNMRによって分析し、下記芳香族含有量を示した。
【表1】
【0072】
(実施例2):得られた芳香族PA6の特性
実施例1で得られたコポリマーをDSCで分析した。示差走査熱量計(DSC)によるPA6サンプル(約10mg)の測定を、TA Instruments DSC Q100 LN2で行い、アルミニウムパンを用い、窒素(10mL/分)の送気下10℃/分の速度で-20~250℃の間を加熱/冷却して測定した。結果を収集し、Tg値を導く2回目の周期の後に、熱容量段階が変化する変曲点から評価した。
【0073】
得られた結果を下記表にまとめた:
【表2】
【0074】
比較例として、芳香族モノマーとしてエチル4-アミノベンゾエートをエチル4-ブチルアミノベンゾエートによって置き換えて実施例1を再合成した。これは、Tuncの
“Synthesis of functionalized polyamide 6 by anionic ring-opening polymerization”, March 2016により示された方法を適用した。下記結果を得た:
【表3】
【0075】
これらの結果はエチル4-アミノベンゾエートを使用することでエチル4-ブチルアミノベンゾエートと比較して、低い芳香族含有量でより高いTg値が得られるという点で合成が改善されることを示す。
【0076】
(実施例3):系中での塩の合成による芳香族モノマー(III)からの共重合
【化13】
エチル4-アミノベンゾエート(5.00g;29.55mモル)を3回乾燥トルエン共沸混合物(3×20mL)にて乾燥し、その後乾燥THF(20mL)に溶解させた。
【0077】
脱プロトン化/重合手順
マグネチックスターラーバーを備え、アルゴン(又は窒素)でパージした反応容器に4mL乾燥THF中、1.00g(6.05mモル)の芳香族モノマー、NaHMDS(1M;6.1mL)を入れ、その後ε-カプロラクタム(6.16g;54.45mモル)をアルゴン(又は窒素)送気の下、入れた。混合物をアルゴン(又は窒素)の送気下で直ちに140℃に昇温した。その後C20活性剤(415mg;0.180mモル)をアルゴン(又は窒素)送気下で加え、混合物を140℃で40分間保持した。
【0078】
10%の芳香族含有量(理論上)の得られた固体を3回THF中で沈殿させた(m=6.85g、Yd.=90%)。同様の手順を行い、25%の芳香族含有量を有するコポリマーを調製した(III’とIIのモル比を変化させることによる)。
【表4】
【0079】
(実施例4):系中での塩生成による、溶融状態の(III及びIIの)モノマー混合物からの共重合
エチル4-アミノベンゾエート(5.00g;29.55mモル)を3回乾燥トルエン共沸混合物(3×20mL)にて乾燥させ、粉末状態で直接使用した。
【0080】
脱プロトン化/高重合手順
マグネチックスターラーバーを備え、アルゴン(又は窒素)下でパージしたあらかじめ140℃に加熱した反応容器にアルゴン(又は窒素)送気の下、1.00g(6.05mモル)の芳香族モノマーを入れ、次いでε-カプロラクタム(6.16g、54.45mモル)を入れた。両方の試薬が完全に溶融した後、NaHMDS(6.05mモル)をアルゴン(又は窒素)送気の下加えた。C20活性剤(415mg;0.180mモル)をアルゴン(又は窒素)送気の下次いで加え、混合物を140℃で40分間保持した。
【0081】
10%の芳香族含有量(理論上)の得られた固体を3回THF中で沈殿させた(m=6.85g、Yd.=90%)。同様の手順を行い、5~20%の芳香族含有量を有するコポリマーを調製した(III’とIIのモル比を変化させることによる)。
【表5】