(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】耐久性コーティング組成物およびそれから形成されたコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 1/02 20060101AFI20220308BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220308BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20220308BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220308BHJP
B32B 15/082 20060101ALI20220308BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20220308BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220308BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220308BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220308BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220308BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20220308BHJP
H01B 5/02 20060101ALI20220308BHJP
H01B 5/08 20060101ALN20220308BHJP
【FI】
C09D1/02
C09D7/65
C09D7/62
C09D5/02
B32B15/082 Z
B32B15/095
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/00 101
B32B15/01 Z
H01B5/02 A
H01B5/08
(21)【出願番号】P 2019521123
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 US2017057675
(87)【国際公開番号】W WO2018075936
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507202725
【氏名又は名称】ジェネラル・ケーブル・テクノロジーズ・コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】516372088
【氏名又は名称】ノヴォタ・インダストリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ランガナタン、サティシュ、クマール
(72)【発明者】
【氏名】シリプラプ、シュリニバス
(72)【発明者】
【氏名】パティル、サティシュ、ナラヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャウドハリ、ラージェーンドラ ヤッシュワント
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-297231(JP,A)
【文献】国際公開第2015/191736(WO,A1)
【文献】特開2001-234092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 -201/10
B32B 1/00 - 43/00
H01B 5/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩バインダーと、
平均粒径が
20μm以下であり、誘電率が
20以下である疎水的に修飾された充填剤と、
疎水性ポリマー分散体を含むフィルム形成滑剤と、
水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの1つ以上を含む架橋剤と、を含
み、
前記疎水性ポリマー分散体は、アクリル樹脂分散体およびポリウレタン樹脂分散体の1つ以上を含み、前記アクリル樹脂分散体および前記ポリウレタン樹脂分散体のそれぞれが、反応性官能性シリコーン中間体で疎水的に修飾されていることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記ケイ酸塩バインダーがアルカリ金属ケイ酸塩
およびケイ酸カルシウムの1つ以上を含む請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記アルカリ金属ケイ酸塩が、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム
およびケイ酸リチウム
の1つ以上を含む請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記疎水的に修飾された充填剤が、疎水的に修飾された金属酸化物
、シリカ、マグネシウムシリカ、炭化ケイ素、焼成クレイおよびケイ酸ジルコニウムの1つ以上を含む請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記疎水的に修飾された金属酸化物が、アルミナ
および二酸化ジルコニウム
の1つ以上を含む請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記疎水的に修飾された金属酸化物が、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、およびジメチルジクロロシランの1つ以上を含むシラン化合物によって疎水的に修飾されている請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記疎水性ポリマー分散体が、
シリコーン樹脂分散体
をさらに含む請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
水をさらに含む請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
乾燥質量で、
前記ケイ酸塩バインダーを
10%~
50%と、
前記疎水的に修飾された充填剤を
30%~
70%、
前記フィルム形成滑剤を
5%~
30%と、
前記架橋剤を
2%~
20%と、
を含む請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
2成分を有し、
第1の成分が、
前記疎水的に修飾された充填剤と、前記フィルム形成滑剤と、前記架橋剤とを含み、
第2の成分が、前記ケイ酸塩バインダーを含む請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のコーティング組成物から形成されたコーティングで実質的に被覆された裸導体を含むことを特徴とする架空導体。
【請求項12】
1.27cm(0.5in
)マンドレル曲げ試験を合格する請求項
11に記載の架空導体。
【請求項13】
200℃で7日間の熱老化後に
1.27cm(0.5in
)マンドレル曲げ試験を合格する請求項
11に記載の架空導体。
【請求項14】
ANSI C119.4-2004に準拠して試験した場合に、裸導体より
5℃またはそれより低い温度で動作する請求項
11に記載の架空導体。
【請求項15】
氷付着試験に従う
140kPa以下の力で氷が付着する請求項
11に記載の架空導体。
【請求項16】
50°~
140°の水接触角を示す請求項
11に記載の架空導体。
【請求項17】
90℃で7日間の水老化後に、未老化の被覆した架空導体の氷付着強度と比較して
50%以下の氷付着強度の増加を示す請求項
11に記載の架空導体。
【請求項18】
200℃で30日間の熱老化後に、未老化の被覆した架空導体の氷付着強度と比較して、
50%以下の氷付着強度の増加を示す請求項
11に記載の架空導体。
【請求項19】
請求項1に記載のコーティング組成物から形成されたコーティングで実質的に被覆された基板を含むことを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国仮出願番号第62/410,699号(発明の名称:耐久性コーティング組成物およびそれから形成されたコーティング、2016年10月20日出願)の優先権を主張し、その全体を参照により本願に援用する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、概して、耐久性コーティング組成物、並びに氷付着を減少させ、氷蓄積を最小限にするコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ケイ酸塩バインダーを含むコーティング組成物から形成されたコーティングは、架空電線、および送電線付属品を含む他の関連した物品に特に適したコーティングをもたらす様々な有用な特性を示し得る。例えば、そのようなコーティング組成物から形成されたコーティングは、高い耐久性、長い寿命、並びにコロナ、腐食、および粉塵に対する抵抗性を示し得る。さらに、そのようなコーティングは、架空電線および送電線付属品がより低い温度で動作できるようにし得る高い熱放射率を示し得る。しかしながら、ケイ酸塩バインダーを含む既知の組成物は、組成物の有用性を制限する高い硬化温度を要する。
【0004】
架空電線などの曝された送電装置での氷の蓄積およびビルドアップも、多くの有害な問題を生じ得る。例えば、架空電線での氷蓄積は、氷の重量による重量および荷重の負荷の問題を生じ得、断面積の拡大により風の負荷が増加し、氷の落下による危険が増す。また、氷が航空宇宙デバイス、自動車デバイス、電気通信装置、建築デバイス、および他の商用装置で蓄積する場合にも類似の問題が生じ得る。そのような有害な問題を防ぐか、または最小限にするためには、加熱および機械的な氷の除去などの技術で曝された装置を除氷することが既知である。しかしながら、そのような技術は、非常に時間がかかり、蓄積が起きた後でのみ氷を除去することから不都合である。
【0005】
したがって、周囲条件下で硬化することができ、氷付着を減少させ、先制して氷蓄積を最小限にするように改変できる改善したコーティング組成物をもたらすことが好都合である。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態によれば、コーティング組成物は、ケイ酸塩バインダーと、疎水的に修飾された充填剤と、フィルム形成滑剤と、架橋剤と、を含む。疎水的に修飾された充填剤は、平均粒径が約20μm以下であり、誘電率が約20以下である。フィルム形成滑剤は、疎水性ポリマー分散体を含む。架橋剤は、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの1つ以上を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で説明されるように、架空電線、電力およびエネルギーデバイス、航空宇宙デバイス、自動車デバイス、ヒートポンプ、冷蔵庫、電気通信デバイス、建築デバイス、および海事デバイスなどの物品上に、耐久性があり、柔軟なコーティングを形成し得るコーティング組成物が開示される。コーティング組成物は、液体として塗布し得、周囲条件下で硬化し得る。一部の実施形態では、コーティング組成物は、物品をコーティング組成物で被覆した際に該物品上の氷付着および氷蓄積を減少させるように改変し得る。そのような実施形態では、コーティング組成物は、架空電線および配電装置上での氷付着および氷蓄積を減少させるのに特に適している。概して、記載したコーティング組成物は、ケイ酸塩バインダーと、充填剤と、架橋剤と、を含み得る。コーティング組成物は、少なくともフィルム形成滑剤の組み込みによって氷付着および氷蓄積を減少させるように改変し得る。
【0008】
理解できるように、ケイ酸塩バインダーを用いることで、本明細書に記載のコーティング組成物が物品上に耐久性コーティングを形成できるようになり得る。例えば、米国特許出願公開第2015/0353737号明細書および米国特許第9,328,245号明細書(それぞれ参照により本明細書に援用する)には、ケイ酸塩バインダーを含む組成物から形成されている架空電線および送電線付属品用の柔軟かつ耐久性のあるコーティングが記載されている。好都合に、本明細書に記載のコーティング組成物は、周囲条件下で硬化し得、ケイ酸塩バインダーで形成された組成物の実用性をさらに改善する。さらに、少なくともフィルム形成滑剤を本明細書に記載のコーティング組成物に含ませることで、そのような組成物から形成されたコーティングがさらに氷付着および氷蓄積の減少を示すことができるようになり得ることを見出した。
【0009】
一部の実施形態によれば、本明細書に記載のコーティング組成物に適したケイ酸塩バインダーは、アルカリ金属ケイ酸塩などの特定のケイ酸塩から選択され得る。適したアルカリ金属ケイ酸塩バインダーとしては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、およびケイ酸カルシウムを挙げることができる。一部の実施形態では、ケイ酸塩バインダーが、ケイ酸カリウムなどの水溶性アルカリ金属ケイ酸塩であって、液体コーティング組成物の形成を容易にするのが好都合であり得る。適したアルカリ金属ケイ酸塩バインダーは、一部の実施形態では約1:1~約1:6の金属酸化物とシリカとの比率、または一部の実施形態では約1:2~約1:4の該比率を有し得る。一部の実施形態では、適したケイ酸塩バインダーは、代替として、水性コロイドシリカであり得る。コーティング組成物は、一部の実施形態では乾燥質量で約15%~約60%、一部の実施形態では乾燥質量で約20%~約55%、一部の実施形態では乾燥質量で約25%~約45%で、ケイ酸塩バインダーを含み得る。
【0010】
架橋剤は、ケイ酸塩バインダーの硬化を容易にするために、記載した組成物に含まれ得る。例えば、特定の多金属錯体が、ケイ酸塩バインダーを架橋し得ることを見出した。本明細書で、多金属錯体は、錯体形態の2種以上の金属を意味し、例えば、カルシウム亜鉛およびモリブデン酸錯体、モリブデン酸亜鉛およびケイ酸マグネシウム錯体、リン酸亜鉛および金属ケイ酸塩錯体、リン酸亜鉛および酸化亜鉛錯体、並びにモリブデン酸亜鉛および水酸化マグネシウム錯体が挙げられる。多金属錯体は、好都合に、周囲条件下でのアルカリ金属ケイ酸塩バインダーの適した架橋をもたらし得る。本明細書で、周囲条件は、一部の実施形態では約15℃~約40℃、一部の実施形態では約20℃~約35℃、一部の実施形態では約25℃~約30℃の温度を有する環境を意味し得る。適した周囲条件での環境は、一部の実施形態では約40%~約95%、一部の実施形態では約50%~約90%、一部の実施形態では約60%~約80%の相対湿度を有することをさらに意味し得る。多金属錯体を含む一部の実施形態では、追加の硬化剤を含むことが好都合であり得る。例えば、酸化亜鉛などの金属酸化物は、追加の硬化効果をもたらし得る。
【0011】
理解できるように、適した多金属錯体は、商業的に入手できる。例えば、適した商業用に供給されているモリブデン酸亜鉛およびケイ酸マグネシウム錯体は、J.M.Huber社(Atlanta,Georgia)によって販売されているKemgard(登録商標)911Cである。
【0012】
一部の実施形態では、金属酸化物または金属水酸化物の架橋剤が、さらに、または代替として含まれて、コーティング組成物の硬化をもたらす。適した金属酸化物および金属水酸化物の架橋剤としては、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの1つ以上などのマグネシウム化合物を挙げることができる。一部の実施形態では、好都合に、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを単独または一緒に使用して、コーティング組成物に適した硬化をもたらすことができる。
【0013】
概して、記載したコーティング組成物は、一部の実施形態では乾燥質量で約2%~約40%、一部の実施形態では乾燥質量で約3%~約20%、一部の実施形態では乾燥質量で約4%~約10%で、架橋剤を含み得る。
【0014】
記載したコーティング組成物は充填剤を含み得、コーティングの機械的および電気特性に影響を及ぼし得る。例えば、充填剤は、コーティング組成物の粘度を改変し得、組成物から形成されたコーティングの耐久性および引っかき抵抗性を改善し得る。さらに、少なくとも金属窒化物および金属炭化物充填剤を含む特定の充填剤は、記載した組成物から形成されたコーティングの放射率を増加し得る。本明細書で、改善した放射率は、コーティングが、下部の基板から放散して失われた熱の量を増加させることを示す。一般に、配線産業で既知のいずれの充填剤も、コーティング組成物に適し得、該充填剤としては、石英、酸化アルミニウム、マイカ、焼成カオリン、珪灰石、方解石、ジルコニア、ジルコン、雲母状酸化鉄、酸化鉄、アルミニウムケイ酸塩、タルク(含水ケイ酸マグネシウムと時に称される)、硫酸バリウム、リトポン、酸化ガリウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、六ホウ化ケイ素、四ホウ化炭素、四ホウ化ケイ素、炭化ケイ素、二ケイ化モリブデン、二ケイ化タングステン、二ホウ化ジルコニウム、酸化亜鉛、亜クロム酸銅、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化クロム、酸化鉄、炭化ホウ素、ケイ化ホウ素、酸化銅クロム、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。特に好都合な充填剤としては、タルク、焼成カオリン、酸化アルミニウム、および石英を挙げることができる。理解できるように、特定の充填剤は、他の有益な効果も示し得る。例えば、酸化亜鉛などの特定の充填剤は、さらに、または相乗的に、アルカリ金属ケイ酸塩バインダーの架橋を容易にし得る。記載したコーティング組成物がそのような相乗作用の充填剤を含むことが有益であり得る。
【0015】
一部の実施形態では、適した充填剤の平均粒径は、約50μm以下、一部の実施形態では約20μm以下、一部の実施形態では約5μm以下であり得る。一部の実施形態では、適した充填剤は、さらに、または代替として、ナノサイズの充填剤であり得る。例えば、一部の実施形態では、適した充填剤の平均粒径は約1μm以下、一部の実施形態では約500nm以下、一部の実施形態では約250nm以下であり得る。組成物中の充填剤の合計量は、乾燥質量でコーティング組成物の約30%~約90%、乾燥質量でコーティング組成物の約40%~約80%、乾燥質量でコーティング組成物の約50%~約70%であり得る。
【0016】
本明細書に記載のコーティング組成物の構成成分は、液体担体中に分散し得る。液体担体は通常は水であるが、有機分散剤も適し得る。例えば、アルコール、ケトン、エステル、炭化水素、およびそれらの組み合わせが、それぞれ有機分散剤として適し得る。理解できるように、水と、水と混和可能な有機分散剤との混合物も適し得る。液体担体に分散させる場合、コーティング組成物の合計固形分は、一部の実施形態では約20%~約80%、一部の実施形態では約30%~約70%、一部の実施形態では約35%~約60%、一部の実施形態では約40%~約50%で変動し得る。一部の実施形態では、コーティング組成物は、液体担体に一緒に分散したすべての構成成分を含む液体組成物として提供され得る。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は、有機分散剤および有機溶媒を含むいずれの有機成分も実質的に含まないことがあり得る。本明細書で、いずれの有機化合物も実質的に含まないとは、微量成分として偶然組み込まれたものを除いて、有機化合物を本質的に含まないことを意味する。他の実施形態では、コーティング組成物は、有機成分を含み得る。例えば、一部の実施形態では、コーティング組成物は、有機成分を約10%以下含み得る。
【0018】
理解できるように、記載したコーティング組成物を架空電線などの物品に塗布することが特に好都合であり得、これによって、コーティング組成物から形成されたコーティングが物品からの熱放射を増加し得ることから熱を生じさせる。例として、架空導体の操作温度は、導体抵抗損失により生じた熱、外部電源から吸収した熱、および伝導、対流、および放射によるケーブルから放射された熱を含む、ケーブル上での加熱および冷却の累積効果によって決定される。記載した組成物は、熱放射充填剤を含む場合、硬化した組成物で被覆した架空導体が、ケーブルから放射された熱量の増加によって、類似の未被覆架空導体よりも低温で動作できるようにし得る。一部の実施形態では、記載したコーティング組成物で被覆した架空導体は、ANSI C119.4-2004に準拠して試験した場合に、類似の未被覆架空導体よりも約5℃またはそれより低い温度で動作できる。一部の実施形態では、記載したコーティング組成物で被覆した架空導体は、ANSI C119.4-2004に準拠して試験した場合に、類似の未被覆架空導体よりも約10℃またはそれよりも低い温度で動作できる。
【0019】
コーティング組成物で実質的に被覆した望ましい物品での氷の付着と氷の蓄積を減少させるために、コーティング組成物を改変して、氷付着を減少させることができることが見出された。理解できるように、機械的付着(例えば、基板上での振動と氷の連動)、静電気力、ファンデルワールス力、および水素結合などの要因により基板に氷が付着する。
【0020】
機械的付着および静電気付着は、氷付着強度に特に強い影響がある。本明細書に記載の特定のコーティング組成物を改変して、機械的付着および静電気付着を最小限にすることによって氷付着を減少させることができる。そのような実施形態では、コーティング組成物は、適したフィルム形成滑剤および充填剤粒子の改変した選択を含み得る。
【0021】
例えば、特定のそのような実施形態では、フィルム形成滑剤は、疎水性ポリマー分散体であり得る。適した疎水性ポリマー分散体は、シリコーン修飾アクリル分散体およびシリコーン修飾ポリウレタン分散体の1つ以上を含み得る。一般に、メトキシ官能性シリコーン中間体などの反応性官能性シリコーン中間体を使用して、アクリル酸およびポリウレタン分散体を修飾し得る。一部の実施形態では、追加のシリコーン樹脂分散体も任意選択的に含まれ得る。適した分散体(アクリル酸、ポリウレタン、シリコーン)は、一般に、約50%の固形含量を有し得る。しかしながら、理解できるように、各分散体の固形含量は、フィルム形成滑剤の特性を示し続けるいずれの範囲にわたって変動し得る。一般に、説明した疎水性ポリマー分散体に基づくフィルム形成滑剤は、機械的氷付着の強度を減少させることによって、氷蓄積を減少させ得る。例えば、超疎水性である(例えば、約150°超の接触角を有する)コーティング組成物は、氷付着強度および氷蓄積を減少させ得る。
【0022】
そのようなコーティング組成物は、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約5%~約30%、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約7%~約25%、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約10%~約20%、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約12%~約18%含み得る。
【0023】
理解できるように、静電気付着力は、被覆した表面と氷との間の静電気荷電の違いによって生じる。一部の実施形態では、静電気付着は、コーティング組成物の誘導電荷を最小限にする誘電率を有する充填剤粒子を選択することによって最小限にし得る。例えば、適した充填剤粒子の誘電電荷は、一部の実施形態では約1~約25、一部の実施形態では約5~約20、または一部の実施形態では約8~約10であり得る。理解できるように、約100の誘電率を示す二酸化チタンを含めた特定の充填剤は、高い誘電率を示し得、不適切であり得る。適した充填剤としては、誘電率が約5であるアルミナ、誘電率が約12~約20である焼成クレイ、誘電率が約6~約10である炭化ケイ素、誘電率が約2~約9であるタルク(ケイ酸マグネシウム)、および誘電率が約3~約5であるシリカが挙げられ得る。他の適した充填剤としては、二酸化ジルコニウムおよびケイ酸ジルコニウムが挙げられ得る。
【0024】
好都合に、選択された充填剤も、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジクロロシランなどのシラン化合物で充填剤を処理することによって疎水性特性を示すように改変できる。
【0025】
一部の実施形態では、より小さい粒径を選択することも好都合であり得る。例えば、一部の実施形態では、充填剤の平均粒径が、一部の実施形態では約10μm以下、一部の実施形態では約5μm以下、一部の実施形態では約1μm以下、一部の実施形態では約500nm以下、一部の実施形態では約250nm以下であり得る。氷付着および氷蓄積を減少させるそのようなコーティング組成物のために、充填剤は、一部の実施形態では乾燥質量で組成物の約30%~約70%含まれ得る。例えば、充填剤は、一部の実施形態では乾燥質量で約40%~約60%含まれ得る。
【0026】
理解できるように、そのような記載したコーティング組成物の他の構成成分は、好都合なことに誘電率値の減少を示し得、架橋剤(例えば、水酸化マグネシウムの誘電率は約8である)およびケイ酸塩バインダー(例えば、ケイ酸カリウムの誘電率は約6~約8であり、ケイ酸ナトリウムの誘電率は約16である)が挙げられる。
【0027】
そのような記載したコーティング組成物から形成されたコーティングは、氷付着および氷蓄積を減少させる改変なしで形成された類似のコーティングと比較した際に、氷付着の強度の減少を示し得る。例えば、一部の実施形態では、コーティングの氷付着強度は、約30%以上、一部の実施形態では約50%以上減少し得る。氷付着強度は、本明細書に記載の氷付着方法によって決定できる。理解できるように、低い氷付着強度も、物品上への氷の蓄積を減少させ得る。
【0028】
代替の実施形態では、コーティング組成物に適したフィルム形成滑剤としては、高い潤滑性を有するフィルム形成シリコーンポリマーおよびフッ素重合体が挙げられ得る。また、一部の実施形態では、そのようなフィルム形成滑剤は、反応基を含まないことがあり得る。そのような適したフィルム形成滑剤の例としては、シクロシリコーン、ポリシロキサン樹脂調整剤、ポリジメチルシロキサン、シランモノマー、シランオリゴマー、シリコーン滑剤、およびフッ素化エチレン-プロピレン(「FEP」)が挙げられ得る。一部の実施形態では、適したフィルム形成滑剤は、約75%未満の固形物を含み、粘度が約10cST超であるエマルジョンであり得る。例えば、エポキシシランおよびオクタメチルシクロテトラシロキサンは、75%未満の固形物を有し、粘度が10cST超であるエマルジョンに含まれる場合、適したフィルム形成滑剤である。
【0029】
理解できるように、特定のシラン化合物はフィルム形成滑剤として作用しない。例えば、固形含量が90%超であり、粘度が10cST未満であるメトキシシランの液体組成物は、フィルム形成滑剤として作用せず、むしろ充填剤表面調整剤またはコーティング接着促進剤として作用し得る。シランオリゴマーがフィルム形成滑剤として作用し得るかどうかを示し得る違いとしては、形態(例えば、エマルジョンと液体)、粘度(例えば、10cST超と10cST未満)、およびその固形含量(例えば、約75%未満の固形物と約90%超の固形物)の違いが挙げられ得る。
【0030】
そのような代替の実施形態では、コーティング組成物は、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約0.5%~約25%、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約1%~約20%、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約2%~約12%、一部の実施形態ではフィルム形成滑剤を乾燥質量で約3%~約8%含み得る。一部の実施形態では、フィルム形成滑剤は、記載したコーティング組成物に追加の効果も与え得る。例えば、フィルム形成滑剤は、一部の実施形態では乾燥および硬化の速度も増加させ得る。
【0031】
理解できるように、本明細書に記載のコーティング組成物は、組成物および生じたコーティングの特性をさらに調整するために、他のコーティング調整剤をさらに含み得る。例えば、1つ以上の滑剤、分散剤、消泡剤、軟化剤、接着促進剤、熱およびUV安定化剤、着色剤および顔料、粘度調整剤、湿潤剤、フィルムレベリング剤、分散剤、および合体剤が、組成物およびコーティングの特性をさらに改変するために含まれ得る。含まれる場合、そのようなコーティング調整剤は、一部の実施形態では記載したコーティング組成物の乾燥質量で約0.1%~約20%、一部の実施形態ではコーティング組成物の乾燥質量で約0.1%~約10%、一部の実施形態ではコーティング組成物の乾燥質量で約0.5%~約5%、一部の実施形態ではコーティング組成物の乾燥質量で約1%~約2%を一般に構成し得る。
【0032】
非フィルム形成滑剤または潤滑油は、例えば組成物中に微視的な分散相を形成することによってコーティング組成物の加工性を改善するために含まれ得る。加工の間、印加されたせん断が、コーティング組成物から非フィルム形成滑剤の相を分離し得る。その後、非フィルム形成滑剤がダイス壁に移動して、連続したコーティング層を徐々に形成し、加工装置の背圧を減少させ得る。適した非フィルム形成滑剤は、一般に、ジメチコーン、フルオロジメチコン(fluorodimethicone)、およびポリジメチルシロキサン(「PDMS」)油などのいずれの既知の非フィルム形成滑剤から選択され得る。一部の実施形態では、非フィルム形成滑剤は、コーティング組成物と混和性であり得る。一部の実施形態では、非フィルム形成滑剤は、乾燥フィルムを形成できない。理解できるように、他のシリコーンおよびフッ素重合体滑剤も適し得る。
【0033】
一部の実施形態では、分散剤は、組成物中の粒子および化合物の分離を改善するために記載したコーティング組成物に含まれ得る。適した分散剤の例としては、リン酸エステルのナトリウム塩、並びにエトキシシラン、メトキシシラン、ヒドロキシシラン、エポキシシラン、およびアミノシランを含むシランが挙げられ得る。
【0034】
消泡剤は、一部の実施形態では、水をコーティング組成物に添加した場合に泡の形成を阻害するか、または遅らせるために含まれ得る。適した消泡剤の例としては、シリコン系消泡剤および非シリコン系消泡剤が挙げられ得る。一部の実施形態では、界面活性剤も消泡剤として使用し得る。適した界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、または非イオン性界面活性剤、並びに脂肪酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
軟化剤は、本明細書に記載のコーティング組成物から形成されたコーティングの柔軟性を改善するために含まれ得る。例えば、一部の実施形態では、比較的少量のエチレンターポリマーが、軟化剤として作用するために含まれ得る。
【0036】
接着促進剤は、物品へのコーティングの接着を改善するために、記載したコーティング組成物に含まれ得る。一般に、耐熱性プライマー、低分子量イソシアネート分散体、酸性オリゴマー、シラン接着促進剤、およびエポキシオリゴマーなどの既知の接着促進剤が適した接着促進剤であり得る。例えば、エチレンアクリル酸は、一部の実施形態では接着促進剤として含まれ得る。理解できるように、特定の接着促進剤は、表面調整剤とも称され得る。
【0037】
安定化剤は、コーティング組成物から形成されたコーティングのUV、光、および熱に対する安定性を改善するために、コーティング組成物に含まれ得る。また、安定化剤は、コーティングの寿命も増加させ得る。適したUVまたは光安定化剤としては、ベンゾトリアゾール型、トリアジン型UV吸収剤、およびヒンダードアミン光安定化剤(「HALS」)化合物が挙げられ得る。適した熱安定化剤は、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールジオクタデシル3,3'-チオジプロピオネート;ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]];ベンゼンプロパン酸;3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐状アルキルエステル;およびイソトリデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートから選択され得る。一部の実施形態によれば、適した熱安定化剤は、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール;ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネートおよび/またはポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]]であり得る。
【0038】
理解できるように、生じたコーティングに色を与えるために、カーボンブラック、カドミウムレッド、紺青および同種のものなどのいずれの既知の着色剤または顔料も、任意選択的にコーティング組成物に含まれ得る。
【0039】
一部の実施形態では、レオロジー調整剤と時に称される粘度調整剤が、記載したコーティング組成物のレオロジー特性を改変するために含まれ得る。適した粘度調整剤としては、アニオン性ポリアクリレートコポリマー、疎水的に修飾されたアニオン性ポリアクリレートコポリマー、疎水的に修飾されたエトキシレート化ウレタン、水、低揮発性有機化合物(「VOC」)溶媒、およびビニルピロリドンコポリマーが挙げられ得る。
【0040】
湿潤剤は、表面張力を低下させ、記載したコーティング組成物の展延性を改善するために含まれ得る。一般に、変性脂肪アルコールエトキシレート、変性ポリアクリレートポリマー、脂肪酸変性ポリマー、およびアルキルポリアルコキシレートを含む、産業において既知のいずれの湿潤剤も適し得る。
【0041】
フィルムレベリング剤は、ハジキ、魚眼、クレーター形成および同種のものなどのコーティングにおけるフィルムの欠陥を減少させるか、または最小限にするために含まれ得る。既知のフィルムレベリング剤が、そのような欠陥を最小限にするために、記載したコーティング組成物に含まれ得る。適したフィルムレベリング剤の例としては、ジメチルシクロヘキシルフタレート、セバシン酸ジブチル、油脂化学化合物の水性分散体、およびポリエチレンイミンが挙げられ得る。
【0042】
一部の実施形態では、合体剤または増粘剤を添加して、コーティング組成物のフィルム形成特性を改善し得る。そのような実施形態では、一般に、当分野で既知のいずれの合体剤も、フィルム形成を改善するために含まれ得る。
【0043】
本明細書に記載のコーティング組成物から形成されたコーティングは、優れた機械的特性を明示し得る。例えば、コーティング組成物から形成されたコーティングは、熱老化前後の5inマンドレル曲げ試験を合格し得る。
【0044】
本明細書で、マンドレル曲げ試験は、コーティングについての柔軟性試験を指す。マンドレル曲げ試験では、被覆したサンプルを、直径が減少している円筒状マンドレルの周囲で曲げ、その後、マンドレルサイズのそれぞれにおけるコーティングのいずれの目に見える亀裂について観察する。可視の亀裂の存在が、試料の不具合を示す。定義されたマンドレルサイズで目に見える亀裂が見られない場合、試料はマンドレル曲げ試験を合格する。マンドレル曲げ試験は、熱老化、UV老化、および水老化後のコーティングの柔軟性も評価し得る。例えば、0.5inマンドレル曲げ試験は、0.5inの円筒状マンドレルの直径を指す。
【0045】
一部の実施形態では、コーティング組成物から形成されたコーティングは、熱老化前後での2inマンドレル曲げ試験または0.5inマンドレル曲げ試験を合格する。マンドレル曲げ試験用の熱老化サンプルは、90℃のオーブンで7日間または200℃のオーブンで7日間老化させた。
【0046】
理解できるように、記載されたコーティングは、追加の特性も示し得る。例えば、コーティングは、自己修復、自己クリーニング、耐食性、IR反射率、放射率、および防塵性を示し得る。さらに、これらの特性は、熱老化、UV老化、および/または水老化後で維持され得る。
【0047】
フィルム形成滑剤が含まれている場合、本明細書に記載のコーティング組成物から形成されたコーティングは、熱および水による老化の前後で、氷付着および蓄積に対する優れた抵抗性も明示し得る。例えば、そのようなコーティング組成物から形成されたコーティングは、一部の実施形態では約350kPa以下の氷付着の値、一部の実施形態では約250kPa以下の氷付着の値、一部の実施形態では約200kPa以下の氷付着の値、一部の実施形態では約180kPa以下の氷付着の値、一部の実施形態では約150kPa以下の氷付着の値を明示し得る。フィルム形成滑剤を有さないコーティング組成物は、約500kPa超の氷付着値を示し得る。コーティングは、熱老化、水老化、およびUV老化後で、そのような優れた氷付着値を保持し得る。例えば、150℃、200℃、250℃、または300℃で30日間の熱老化後、および90℃で7日間の水老化後に、氷付着値が約50%以下増加し得る。一部の実施形態では、氷付着値は、そのような熱および水老化後に約100%以下増加し得る。
【0048】
氷付着値は、ここでは氷付着試験を用いて評価した。氷付着試験は、4"×4"アルミニウムシートをコーティング組成物で被覆することによって氷付着値を決定する、その後、直径3"×高さ2"の氷の円柱を被覆したシート上に形成する。氷付着強度は、被覆したシートに平行にせん断力を加えるInstron Tensile機器を用いて、被覆したシートから氷の円柱を除去するのに必要な力である。
【0049】
また、氷付着値は、熱老化氷付着試験において熱老化後に評価し得る。熱老化氷付着試験では、評価される試料を、氷付着試験で評価する前に、200℃に30日間加熱する。熱老化試料が、塗布したコーティングの利点の50%超を保つ場合、試料は、熱老化氷付着試験を合格したとみなされる。
【0050】
一部の実施形態では、フィルム形成滑剤を含むコーティング組成物から形成されたコーティングの水接触角が約50°~約150°であり得る。一部の実施形態では、コーティング組成物の水接触角が約80°~約140°であり得る。理解できるように、約150°以上の水接触角は超疎水性とみなされるが、超疎水性接触角は、必ずしも氷付着または氷蓄積を減少させるものではない。
【0051】
本明細書に記載のコーティング組成物は、高速分散器(「HSD」)、ボールミル、ビーズミルまたは当分野で既知の技術を用いる他の機械で製造できる。一部の実施形態では、HSDを使用して、構成成分の望ましい分散が達成されるまで、各成分を一緒にゆっくりと添加し、一緒に混合することによって、コーティング組成物を製造し得る。一部の実施形態では、ミキサー速度は、望ましいコーティング組成物を達成するために、1分間に約10回転(「RPM」)以上であり得る。
【0052】
代替として、本明細書に記載の特定のコーティング組成物は2成分系として形成できる。そのような実施形態では、ケイ酸塩バインダーを除くすべての成分を、第1の成分において一緒に混合し得、ケイ酸塩バインダーを第2の成分において混合し、調製し得る。使用の直前に、第1の成分および第2の成分を一緒に混合して、望ましいコーティング組成物を形成し得る。理解できるように、二成分系は、長期寿命を有する製品をすぐに使用できるようにすることによって、コーティング組成物の流通および使用を容易にし得る。
【0053】
コーティング組成物を調製したら、基板に塗布して、耐久性コーティングを基板に提供できる。一般に、アルミニウム基板、銅基板、および鋼板などの金属物品、並びに木材およびガラス物品を含むいずれのタイプの基板も、コーティング組成物で被覆され得る。物品は、架空電線、電力およびエネルギーデバイス、航空宇宙デバイス、自動車デバイス、ヒートポンプ、冷蔵庫、電気通信デバイス、建築デバイス、コンクリートまたは基板の用途、レーダー用途、または海事デバイスであり得る。また、フィルム形成滑剤がコーティング組成物に含まれている場合、氷付着の減少および氷蓄積も基板に提供され得る。
【0054】
一部の実施形態では、コーティング組成物から形成されたコーティングは、架空導体上に被覆され得る。理解できるように、コーティング組成物を、アルミニウム導体鋼強化(「ACSR」)ケーブル、アルミニウム導体鋼支持(「ACSS」)ケーブル、アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)ケーブル、すべてのアルミニウム合金導体(「AAAC」)ケーブル、および複合ケーブルを含む様々な構造の架空電線に塗布し得る。理解できるように、導体のワイヤは、円形および台形形状を含む様々な断面形状を有し得る。一部の実施形態では、ワイヤが台形状である場合、氷付着値の改善が達成できる。複合コアケーブルの設計の例が、米国特許第7,015,395号、第7,438,971号明細書、および第7,752,754号明細書に開示されており、そのそれぞれが参照により本明細書に援用される。
【0055】
理解できるように、一部の実施形態では、コーティング組成物を架空導体の特定の個々のワイヤのみに塗布し得る。例えば、一部の実施形態では架空導体のワイヤのすべてが被覆され得るか、または選択したワイヤのみ被覆され得る。理解できるように、導体の最も外側のワイヤのみ被覆することが時間、材料などの観点で好都合であり得る。代替として、コーティングを裸の架空導体の外面にのみ塗布し得る。一実施形態では、裸導体の全ての外面が被覆され得るか、または他の実施形態では裸導体の一部のみ被覆され得る。
【0056】
一部の実施形態では、物品を、任意選択的にコーティング組成物の塗布前に調製し得る。適した調製プロセスとしては、化学処理、加圧空気洗浄、熱水または蒸気洗浄、ブラシ掛け洗浄、加熱処理、サンドブラスティング、超音波、脱グレア化(deglaring)、溶媒拭き取り、プラズマ処理、コロナ処理、および同種のものが挙げられ得る。特定の具体化したプロセスでは、基板は、さらに、または代替として、サンドブラスティングによって脱グレア化(deglared)され得る。理解できるように、調製プロセスは、インラインまたは別のステップとして実施され得る。しかしながら、一部の実施形態では、基板の調製ステップは、未調製基板へ適切に付着し得るケイ酸塩バインダーを使用することから、必須ではない。
【0057】
一部の実施形態では、コーティング組成物をスプレーガンによって塗布し得る。スプレーガンは、約10psi~約45psiの圧力を用いてコーティング組成物を塗布し得る。そのような実施形態では、スプレーガンノズルを基板の縦方向に垂直に(例えば約90°で)設置して、基板上での均一なコーティングを達成できる。一部の実施形態では、2種以上のスプレーガンを使用して、より効率的またはより均一なコーティングを得ることができる。コーティングの厚さおよび密度は、混合粘度、ガンの圧力、および導体線速度によって調整し得る。コーティング塗布の間、基板温度は、材料に応じて任意選択的に10℃~90℃に維持し得る。
【0058】
代替として、コーティング組成物を、浸漬、ブラシ、またはローラーの1つ以上によって物品に塗布し得る。基板を浸漬する実施形態では、洗浄し、乾燥した物品をコーティング組成物中に浸漬して、組成物が物品を完全に被覆できるようにし得る。その後、物品をコーティング組成物から除去し、乾燥させ得る。
【0059】
コーティング組成物の物品上への塗布後、物品上のコーティングを乾燥し得、硬化し得る。
【0060】
一部の実施形態では、コーティングを、温度を上昇させて乾燥し得る。そのような実施形態では、オーブンを最大約250℃まで、または一部の実施形態では約80℃~約150℃に加熱し得る。代替として、熱風加熱、誘導加熱、または直接火炎に曝すことによって熱を加え得る。そのような上昇した温度条件の下、コーティング組成物を、一部の実施形態では約2分以下、一部の実施形態では約1分以下、一部の実施形態では約30秒~約40秒、一部の実施形態では約1秒~約30秒、または一部の実施形態では約1秒~約10秒乾燥し得る。一部の実施形態では、コーティング組成物の乾燥および硬化のステップに続いて、追加の硬化後のプロセスを行い得る。
【0061】
代替として、一部の実施形態では、コーティング組成物を周囲条件下で乾燥し得る。周囲条件下で、一部の実施形態では約8時間以下、一部の実施形態では約4時間以下、一部の実施形態では約2時間以下で、コーティング組成物を「乾燥させた」をみなし得る。
【0062】
理解できるように、乾燥および硬化プロセスを、連続して、またはバッチ様式で行い得る。乾燥および硬化プロセスを連続的に実施する場合、基板は、コーティングステップを抜け、連続してエアナイフおよび硬化プロセスに入ることができる。代替として、バッチ様式プロセスでは、硬化ステップを、例えば火炎プロセスを用いて、物品の個別の部分で実施できる。架空ケーブルのためのバッチプロセスの典型的な例として、最初の乾燥および部分硬化後、被覆したケーブルをボビン上に巻くことができ、その後、オーブンなどの硬化プロセスに移すことができる。連続した製造では、代わりに導体をボビン上に巻くことができ、加熱したオーブンを通して継続的に移動した後、約50℃~約250℃、一部の実施形態では約80℃~約150℃で、一部の実施形態では約0.1時間~約24時間、一部の実施形態では約1分~約2分間、加熱することができる。代替として、そのようなコーティングプロセスを周囲条件下で実施することができる。
【0063】
理解できるように、コーティング組成物を、予め張った架空電線を含む、既に組み込まれ、現在使用中の架空電線でも使用し得る。特定の例では、既存の導体を、自動または半自動コーティングのためのロボットシステムを用いて被覆し得る。自動化システムは、(1)導体表面のクリーニングステップ、(2)導体表面上へのコーティング塗布ステップ、および(3)コーティングの乾燥ステップを含む3つのステップで機能する。理解できるように、クリーニングステップおよび乾燥ステップなどの特定のステップは任意であり得る。
【0064】
さらに理解されるように、コーティング組成物は、例えば、変圧器、絶縁体、デッドエンド/末端製品、接合/ジョイント製品、サスペンションおよびサポート製品、動作制御/振動製品、「ダンパー」支え(guying)製品、野生動物保護および抑止製品、導体および圧縮フィッティング修理部品、変電所製品、クランプおよび他の伝送および配電付属品を含む、架空送電線付属品と共に使用できる。そのような製品は、Preformed Line Products(PLP)(Cleveland,Ohio)およびAFL(Duncan,SouthCarolina)を含む様々な製造業者から商業的に入手できる。そのような実施形態では、コーティングを、付属品が製造されるか、もしくは貯蔵される工場、または現場で、設置前に塗布し得る。他の実施形態では、コーティングを、予め組み込まれた付属品に塗布し得る。
【実施例】
【0065】
表1は、基板に塗布し、硬化した際に、氷付着および氷蓄積の減少を示す実施例のコーティング組成物を示す。実施例はそれぞれ、残りの構成成分とは別に調製したケイ酸塩バインダーを有する2成分組成物として形成された。実施例のそれぞれでは、すべての構成成分が、乾燥質量パーセンテージに基づいて記載され、すべての充填剤が、シラン処理剤による処理によって疎水的に修飾された。表1には、実施例組成物のそれぞれの氷付着強度がさらに記載されている。
【0066】
比較実施例1の平均充填剤粒径は1μm~1,000μmであり、比較実施例2の平均充填剤粒径は1μm~20μmであり、本発明の実施例3の平均充填剤粒径は1μm~20μmであり、本発明の実施例4の平均充填剤粒径は1μm~5μmであった。
【表1】
【0067】
表1で示されるように、疎水性ポリマー分散体と、より小さい平均粒径および低い誘電率を有する疎水性充填剤粒子とを含む本発明の実施例2および3は、比較実施例1および2より実質的に減少した氷付着値を示した。
【0068】
本明細書で、すべてのパーセンテージ(%)は、別段の指示がない限り、合計組成の乾燥質量でのパーセントであり、質量/質量%、%(w/w)、w/w、w/w%または単に%とも表される。また、本明細書で、「湿潤」は、分散媒体(例えば水)中のコーティング組成物の相対パーセンテージを指し、「乾燥」は、分散媒体の添加前の乾燥コーティング組成物の相対パーセンテージを指す。すなわち、乾燥パーセンテージは、分散媒体を考慮せずに存在するものである。湿潤混合物は、分散媒体添加したコーティング組成物を指す。「湿潤質量パーセンテージ」、または同種のものは、湿潤混合物での質量であり、「乾燥質量パーセンテージ」、または同種のものは、分散媒体がない乾燥組成物での質量パーセンテージである。別段の定めがない限り、本明細書でパーセンテージ(%)は、合計組成の質量に対しての乾燥質量パーセンテージである。
【0069】
本明細書で開示される寸法及び値は、特定された正確な数値に厳格に制限されると理解されるべきではない。代わりに、特段の定めがない限り、このような寸法は、それぞれ特定された値、およびその範囲を囲む機能的に同等な範囲の両方を意味することが意図される。
【0070】
本明細書を通して記載されているすべての最大数値限定は、すべてのより低い数値限定を、このようなより低い数値限定が本明細書で明示的に記載されているかのように含むことが理解されるべきである。本明細書を通して記載されているすべての最小数値限定は、すべてのより高い数値限定を、このようなより高い数値限定が本明細書で明示的に記載されているかのように含む。本明細書を通して記載されているすべての数値範囲は、このようなより広い数値範囲内に入るすべてのより狭い数値範囲を、このようなより狭い数値範囲が本明細書ですべて明示的に記載されているかのように含む。
【0071】
いずれの相互参照または関連特許もしくは出願を含む、本明細書で引用されるすべての文献は、明示的に除外されない限り、又は別段の制限がない限り、そのすべてが参照により本明細書に援用される。いずれの文献の引用は、それが、本明細書で開示されるか、または請求されるいずれの発明に関する従来技術であるか、あるいは、それが単独で、またはいずれの他の参照もしくは複数の参照とのいずれの組み合わせで、いずれのこのような発明を教示するか、示唆するか、または開示すると認めるものではない。さらに、本文献における用語のいずれの意味または定義が、参照によって援用された文献における同様の用語のいずれの意味または定義と矛盾する限りにおいて、本文献におけるその用語に割り当てられる意味または定義が適用される。
【0072】
実施形態または実施例の前述の説明は、説明のためのものである。記載された形態に徹底されるか、または限定されることを意図したものではない。多数の改変が、上記教示を踏まえて可能である。それらの改変のうちの一部が議論されており、残りは当業者によって理解されるものである。実施形態は、様々な実施形態の例示のために選択され、説明された。当然ながら、その範囲は、本明細書に記載された実施例または実施形態に限定されるものではなく、当業者によってあらゆる出願および同等の文献において採用され得る。むしろ、ここでは、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲を意図する。