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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】内燃機関および内燃機関を運転する方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20220308BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20220308BHJP
   F02D 9/04 20060101ALI20220308BHJP
   F02B 29/02 20060101ALI20220308BHJP
   F02B 37/02 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
F02B37/18 E
F02D13/02 A
F02D9/04 H
F02B29/02 B
F02B37/02 H
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019531724
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 FI2017050871
(87)【国際公開番号】W WO2018109267
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】20160285
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519209831
【氏名又は名称】ヤンフネン,ティモ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤンフネン,ティモ
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-503626(JP,A)
【文献】特表2003-529710(JP,A)
【文献】特開2004-245171(JP,A)
【文献】特開2009-002283(JP,A)
【文献】国際公開第2009/105463(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0293475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/02
F02B 37/02
F02B 37/18
F02D 9/04
F02D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関(1)であって、
それぞれ少なくとも1つのシリンダ(14)に連結された第1の排気ガス流路(13)および別個の第2の排気ガス流路(12)であって、前記第1の排気ガス流路(13)がターボチャージャ(2)にさらに連結され、前記第2の排気ガス流路(12)が前記ターボチャージャ(2)を迂回するように構成される、第1の排気ガス流路(13)および第2の排気ガス流路(12)と、
前記シリンダ(14)内の排気ガス圧力を制御するように構成された、前記第2の排気ガス流路(12)内の絞り弁(10)と、
を備え、
前記燃焼機関(1)が2行程機関であり、
前記シリンダ(14)から前記第1の排気ガス流路(13)までの排気ガス流を制御するように構成された第1の排気ガス弁(7)と、前記シリンダ(14)から前記第2の排気ガス流路(12)までの排気ガス流を制御するように構成された第2の排気ガス弁(8)と、をさらに備え、
前記第2の排気ガス弁(8)は、ピストン(15)が前記シリンダ(14)内を上方に動き始めるときに開けられるように構成され、
前記第2の排気ガス弁(8)は、前記第1の排気ガス弁(7)が閉じられるときに閉じられるように構成され、かつ/または、前記第2の排気ガス弁(8)は、ピストンの上死点前60クランク角度よりも早く閉じられるように構成される、燃焼機関(1)。
【請求項2】
燃焼機関(1)であって、
それぞれ少なくとも1つのシリンダ(14)に連結された第1の排気ガス流路(13)および別個の第2の排気ガス流路(12)であって、前記第1の排気ガス流路(13)がターボチャージャ(2)にさらに連結され、前記第2の排気ガス流路(12)が前記ターボチャージャ(2)を迂回するように構成される、第1の排気ガス流路(13)および第2の排気ガス流路(12)と、
前記シリンダ(14)内の排気ガス圧力を制御するように構成された、前記第2の排気ガス流路(12)内の絞り弁(10)と、
を備え、
前記燃焼機関(1)が2行程機関であり、
前記シリンダ(14)にピストンの上死点前約60~30クランク角度でガス充填を行うように構成される、燃焼機関(1)。
【請求項3】
前記第2の排気ガス流路(12)が、前記ターボチャージャ(2)の下流側の位置で前記第1の排気ガス流路(13)に連結され、
前記絞り弁(10)が、前記第2の排気ガス流路(12)内のガス流を制御するように構成される、請求項1または2に記載の燃焼機関(1)。
【請求項4】
前記シリンダ(14)から前記第1の排気ガス流路(13)までの排気ガス流を制御するように構成された第1の排気ガス弁(7)と、前記シリンダ(14)から前記第2の排気ガス流路(12)までの排気ガス流を制御するように構成された第2の排気ガス弁(8)と、をさらに備える、請求項2または請求項2を引用する請求項3に記載の燃焼機関(1)。
【請求項5】
前記第2の排気ガス弁(8)は、ピストン(15)が前記シリンダ(14)内を上方に動き始めるときに開けられるように構成され、
前記第2の排気ガス弁(8)は、前記第1の排気ガス弁(7)が閉じられるときに閉じられるように構成され、かつ/または、前記第2の排気ガス弁(8)は、ピストンの上死点前60クランク角度よりも早く閉じられるように構成される、請求項4に記載の燃焼機関(1)。
【請求項6】
前記シリンダ(14)にピストンの上死点前約60~30クランク角度でガス充填を行うように構成される、請求項1および請求項1を引用する請求項3のいずれか一項に記載の燃焼機関(1)。
【請求項7】
前記第1の排気ガス弁(7)および前記第2の排気ガス弁(8)を閉じた後で前記シリンダ(14)にガス充填を行うように構成される、請求項1、4、5および6、ならびに請求項1を引用する請求項3のいずれか一項に記載の燃焼機関(1)。
【請求項8】
前記絞り弁(10)が、前記シリンダ(14)内の混合気(18)の温度を制御するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の燃焼機関(1)。
【請求項9】
前記絞り弁(10)が、前記シリンダ(14)内に残る排気ガスの量を制御するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の燃焼機関(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の燃焼機関(1)を運転する方法であって、
前記第1の排気ガス流路(13)に連結された第1の排気ガス弁(7)を開けるステップであって、前記第1の排気ガス流路(13)がターボチャージャ(2)に連結される、ステップと、
別個の前記第2の排気ガス流路(12)に連結された第2の排気ガス弁(8)を開けるステップであって、前記第2の排気ガス流路(12)が前記ターボチャージャ(2)を迂回するように構成される、ステップと、
2行程機関の少なくとも1つの前記シリンダ(14)内の排気ガス圧力を前記絞り弁(10)で制御するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第2の排気ガス流路(12)が、前記ターボチャージャ(2)の下流側の位置で前記第1の排気ガス流路(13)に連結され、
前記第2の排気ガス流路(12)内のガス流が前記絞り弁(10)によって制御される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シリンダ(14)から前記第1の排気ガス流路(13)までの排気ガス流が前記第1の排気ガス弁(7)によって制御され、前記シリンダ(14)から前記第2の排気ガス流路(12)までの排気ガス流が前記第2の排気ガス弁(8)によって制御される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の排気ガス弁(8)は、ピストン(15)が前記シリンダ(14)内を上方に動き始めるときに開けられ、かつ/または、前記第2の排気ガス弁(8)は、前記第1の排気弁(7)が閉じられるときに閉じられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の排気ガス弁(8)が、ピストンの上死点前60クランク角度よりも早く閉じられる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記シリンダ(14)内の混合気(18)の温度が前記絞り弁(10)によって制御される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記シリンダ(14)内に残る排気ガスの量が前記絞り弁(10)によって制御される、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関に関する。さらに、本発明は内燃機関を運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関の排気弁を閉じるときに、一定量の排気ガスが、特にターボチャージャを備える燃焼機関において、シリンダ内に残る、というのは、ターボチャージャの逆圧が、ターボチャージャを装備していない機関に比べて、排気行程中にシリンダ内の燃焼ガスの圧力を上昇させるからである。機関のシリンダ内の高圧は、例えば、シリンダ内への希薄な円錐形の短い貫通ジェットを形成するノズルを使用してシリンダ内に燃料を噴射するのを妨げることがある。
【0003】
前述のノズルを使用して3バールを超えるシリンダ圧力で燃料を噴射すると、例えば、機関内にいわゆる均質燃焼のための均一な(ガス-)燃料混合気を生成しようとする場合に、燃料の蒸発を著しく妨げることが当技術分野でよく知られている。ある実施形態では、均質燃焼は機関内の粒子および窒素酸化物(NOx)の自由燃焼を可能にし、排気ガスの高価なさらなる処理をほぼ完全に回避することが可能になる。
【0004】
独国特許出願公開第3821937号明細書は、それぞれ1つの排気弁によって制御されるシリンダ当たり2つの排気ポートと、チャージ圧力を制限するために吹出し弁によって制御される、排気ターボチャージャのタービンがバイパスラインによって迂回され得る排気ターボチャージャと、を有するバルブタイミングギヤを備える内燃機関において、各シリンダの第1の排気ポートは排気ラインを経由してタービン入口に連結され、各シリンダの第2の排気ポートはバイパスラインに連結されることを開示している。排気ラインの断面は、最大許容チャージ圧力に必要な排気ガスの質量流量のためだけに設計される。その結果、排気ガスがタービンに入るための高流量および排気ターボチャージャの迅速な応答が達成される。
【0005】
さらに、米国特許第5417068号明細書は、排気システムが触媒排気クリーナを組み込んであるターボ圧縮機型の排気駆動式過給機を取り付けられたマルチシリンダ内燃機関内の分割排気流用の排気流システムを記述しており、この内燃機関の各シリンダは第1の排気弁と第2の排気弁の両方を有しており、第1の排気弁から放出された排気ガスはシリンダに共通の第1の排気収集器に供給され、第1の排気収集器は第1の排気分岐管によって排気タービン入口に直接連結されており、第2の排気弁から放出された排気ガスはマフラを組み込んだ排気管に供給される。機関の運転状態に従って調整可能な少なくとも1つの弁が、シリンダの第2の排気弁の下流側に、第2の排気弁が排気タービン出口とマフラとの間の排気管に連結された状態で配置される。この構造の目的は、シリンダから排気ガスを取り出して空にすることに関して他のシリンダの悪影響を防ぐことである。
【0006】
さらに、独国特許出願公開第102008036308号明細書は、複数のシリンダのそれぞれに配置された2つの出口弁を備える排気ガスターボチャージャを有する機関を教示している。各シリンダの出口弁は2つの群に一体化される。排気ガスは、出口弁から群に取り付けられた排気ガス流路を経由して排気ガスターボチャージャまで案内される。可変弁コントローラが、機関の運転条件に応じて排気ガス弁の開き時間を制御する。排気ガスターボチャージャの寸法は同じである。
【0007】
さらに、独国特許出願公開第3821935号明細書は、シリンダ当たり2つの排気ポートを有しかつ排気ターボチャージャを有するバルブタイミングギヤを備える内燃機関であって、すべてのシリンダの第1の排気ポートがタービン入口に連結され、すべてのシリンダの第2の排気ポートがタービンを迂回するバイパスラインに連結される、内燃機関を開示している。第2の排気弁は、排気ガスエネルギーのより大きな部分が排気ガスタービンを駆動するために使用され得るように、第1の排気弁より遅く開けられる。第2の排気弁を開けると、排気ガス質量流量の一部が排気ガスタービンのそばを通り過ぎて導かれ、それによってチャージ圧力を制限する。第2の排気弁には、好ましくは可変バルブタイミングギヤが設けられ、可変弁タイミングギヤは、一定のチャージ圧力に到達すると、開放点を前の開放の方に移動させかつ/または弁リフトを増大させる。
【0008】
上記を考えると、燃焼機関のシリンダ内に残る排気ガスの量が制御および/または削減され得る、燃焼機関および燃焼機関を運転する方法を提供することが有益であろう。このシステムは、産業規模で製造することができるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第3821937号明細書
【文献】米国特許第5417068号明細書
【文献】独国特許出願公開第102008036308号明細書
【文献】独国特許出願公開第3821935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態が従属請求項で定義される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、燃焼機関であって、それぞれ少なくとも1つのシリンダに連結された第1の排気ガス流路および別個の第2の排気ガス流路であって、第1の排気ガス流路がターボチャージャにさらに連結され、第2の排気ガス流路がターボチャージャを迂回するように構成される、第1の排気ガス流路および第2の排気ガス流路と、シリンダ内の排気ガス圧力を制御するように構成された、第2の排気ガス流路内の絞り弁と、を備える燃焼機関が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様の様々な実施形態が、以下のビュレット付きリストからの少なくとも1つの特徴を含むことができる。
・燃焼機関は2行程機関である
・第2の排気ガス流路は、ターボチャージャの下流側の位置で第1の排気ガス流路に連結される
・絞り弁は、第2の排気ガス流路内のガス流を制御するように構成される
・燃焼機関は、シリンダから第1の排気ガス流路までの排気ガス流を制御するように構成された第1の排気ガス弁と、シリンダから第2の排気ガス流路までの排気ガス流を制御するように構成された第2の排気ガス弁と、をさらに備える
・第2の排気ガス弁は、ピストンがシリンダ内を上方に動き始めるときに開けられるように構成される
・第2の排気ガス弁は、第1の排気弁が閉じられるときに閉じられるように構成される
・第2の排気ガス弁は、ピストンの上死点前60クランク角度よりも早く閉じられるように構成される
・燃焼機関は制御可能な圧縮機を備える
・圧縮機は、シリンダに高圧下でガス充填を行うように構成される
・燃焼機関は、シリンダにピストンの上死点前60~30クランク角度、例えば60~40クランク角度でガス充填を行うように構成される
・燃焼機関は、第1の排気ガス弁および第2の排気ガス弁を閉じた後でシリンダにガス充填を行うように構成される
・絞り弁は、シリンダ内の混合気の温度を制御するように構成される
・絞り弁は、シリンダ内に残る排気ガスの量を制御するように構成される
・燃焼機関は、圧縮機の上流側の位置に第1のインタークーラを備える
・燃焼機関は、圧縮機の下流側の位置に第2のインタークーラを備える
・燃焼機関は、第2のインタークーラを迂回するように構成された制御可能なインタークーラバイパスを備える
【0013】
本発明の第2の態様によれば、内燃機関を運転する方法が提供され、この方法は、第1の排気ガス流路に連結された第1の排気ガス弁を開けるステップであって、第1の排気ガス流路がターボチャージャに連結される、ステップと、別個の第2の排気ガス流路に連結された第2の排気ガス弁を開けるステップであって、第2の排気ガス流路がターボチャージャを迂回するように構成される、ステップと、少なくとも1つのシリンダ内の排気ガス圧力を絞り弁で制御するステップと、を含む。
【0014】
第2の態様の様々な実施形態が、以下のビュレット付きリストからの少なくとも1つの特徴を含むことができる。
・2行程機関が運転される
・第2の排気ガス流路は、ターボチャージャの下流側の位置で第1の排気ガス流路に連結される
・第2の排気ガス流路内のガス流が絞り弁によって制御される
・シリンダから第1の排気ガス流路までの排気ガス流が第1の排気ガス弁によって制御され、シリンダから第2の排気ガス流路までの排気ガス流が第2の排気ガス弁によって制御される
・第2の排気ガス弁は、ピストンがシリンダ内を上方に動き始めるときに開けられる
・第2の排気ガス弁は、第1の排気弁が閉じられるときに閉じられる
・第2の排気ガス弁は、ピストンの上死点前60クランク角度よりも早く閉じられる
・空気が圧縮機によって圧縮される
・空気がターボチャージャによって圧縮される
・シリンダには、圧縮機によって高圧下でガス充填が行われる
・シリンダには、ピストンの上死点前60~30クランク角度、例えば60~40クランク角度でガス充填が行われる
・シリンダには、第1の排気ガス弁および第2の排気ガス弁を閉じた後でガス充填が行われる
・シリンダ内の混合気の温度が絞り弁によって制御される
・シリンダ内に残る排気ガスの量が絞り弁によって制御される
・ターボチャージャによって生成された誘導空気の熱が、圧縮機の上流側の位置で第1のインタークーラによって減じられる
・圧縮機によって生成された誘導空気の熱が、圧縮機の下流側の位置で第2のインタークーラによって減じられる
・誘導空気が、第2のインタークーラを迂回するように構成されたインタークーラバイパスを経由してシリンダまで完全にまたは部分的に案内される
・誘導空気が、第2のインタークーラを経由してシリンダまで完全にまたは部分的に案内される
【0015】
本発明のある実施形態によってかなりの利点が得られる。内燃機関および内燃機関を運転する方法が提供される。ある実施形態によれば、本発明は、いわゆるZモータ(Z-motor)を対象とする。特に、少なくとも1つのシリンダおよびターボチャージャを連結する第1の排気ガス流路ならびにシリンダに連結されかつターボチャージャを迂回する第2の排気ガス流路を備える2行程機関であって、シリンダ内の圧力が制御され得るようにする絞り弁が第2の排気ガス流路内に配置される、2行程機関。したがって、粒子およびNOxの自由燃焼が本発明のある実施形態に従って起こり得る。その結果として、排気ガスの後処理を完全にまたはほぼ完全に回避することができる。
【0016】
さらに、シリンダ内の混合気の将来の温度は絞り弁によって制御され得る。さらに、シリンダ内の混合気の着火感度も絞り弁によって制御され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関の概略図である。
図2a】着火燃料噴射、燃焼および作業行程中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダの概略断面図である。
図2b】排気行程中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダの概略断面図である。
図2c】燃料噴射中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダの概略断面図である。
図2d】空気取入れ中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダの概略断面図である。
図2e】最終圧縮中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関1の概略図が示されている。内燃機関1は、2行程機関、例えばZモータであり、機関1の圧縮機4内に空気を押し込むように構成されたターボチャージャ2を備える。ターボチャージャ2は、第1のインタークーラ3を介して制御可能な圧縮機4に連結される。誘導空気の質量流量を圧縮機4で調整することができる。空気の圧力、温度、および密度を圧縮機4で高めることができる。第1のインタークーラ3は、ターボチャージャ2によって生成された誘導空気の熱を減じるように構成される。圧縮機4は、第2のインタークーラ5を介して燃焼機関1の少なくとも1つのシリンダ14にさらに連結される。第2のインタークーラ5は、圧縮機4によって生成された誘導空気の熱を減じるように構成される。さらに、制御可能なインタークーラバイパス9が設けられる。第2のインタークーラ5は、必要に応じて、誘導空気が圧縮機4から燃焼機関1の少なくとも1つのシリンダ14内に設けられた燃焼室17まで直接流れるのを可能にするためにインタークーラバイパス9によって部分的にまたは完全に迂回され得る。誘導空気は、入口弁6を経由して燃焼機関1のシリンダ14内に案内される。図示の実施形態では少なくとも1つの入口弁6が各シリンダ14に設けられる。
【0019】
さらに、各シリンダ14は第1の排気弁7および第2の排気弁8を備える。ピストン(図示せず)がシリンダ14内を上方に移動しているとき、燃焼ガスは、排気弁7が閉じるまで、すなわち一般にピストンの上死点前の60度よりも早く、ターボチャージャの逆圧に逆らってシリンダ14から機関の排気弁7を経由してターボチャージャ2へ押し出される。排気ガスの大部分は各シリンダ14から単一の主排気流路または排気ダクト13へ案内され、主排気流路または排気ダクト13はターボチャージャ2に連結され、さらに燃焼機関1からの排気ガスの出口を提供する。
【0020】
シリンダ14内の燃焼ガスの圧力を低下させるために、追加の第2の排気弁8がシリンダ14内に設置される。各シリンダ14から排気ガスを単一のタービンバイパス流路またはバイパスダクト12に案内することができ、タービンバイパス流路またはバイパスダクト12は、ターボチャージャのタービン11のそばを通り過ぎてつながり、次いでターボチャージャのタービン11から来る排気ダクト13に連結する。ターボチャージャのタービン11に続く排気ダクト13の部分では、低い逆圧がほぼ周囲の大気圧に勝る。タービンバイパスダクト12は、調整可能な絞り弁10をさらに備える。
【0021】
第2の排気弁8は、燃焼ガスがターボチャージャのタービン11を迂回できるようにする手段であり、ピストンが下死点に近づくときに、通常はシリンダ14からの燃焼ガスの排出中にピストンが上方に動き始めるときに開き始めるように構成され、典型的には排気ガスをターボチャージャのタービン11に持っていく第1の排気弁7と同時に、すなわち一般にピストンの上死点前60度よりも早く閉じる。シリンダ14内の圧力は、例えば、第2の排気弁8が開き始めるときに3バール~4バールとすることができる。
【0022】
燃焼機関1の第2の排気弁8に連結された排気ダクト12内の前述の絞り弁10を制御することにより、シリンダ14内に残る排気ガスの圧力および量を制御または調整することができる。さらに、ピストンが混合気をピストン15の上死点で圧縮しているときに、シリンダ14内の混合気18の将来の温度および着火感度を制御または調整することができる。
【0023】
次いで、ピストンの上死点前約60~30クランク角度または約60~40クランク角度で、シリンダ14に高圧下で新たなガス充填が行われる。第1の排気弁7および第2の排気弁8は、その前に既に閉じられている。
【0024】
コンピュータシミュレーションおよび試験用機関は、本明細書に記載されている内燃機関1の運転が正常に機能することを示している。例えば、燃焼機関1の最大回転速度は、燃焼機関1が1つの排気弁7だけを必要とするように約3500rpmとすることができる。したがって、例えば、機関1のシリンダヘッド内には、ターボチャージャのタービンのバイパス排気弁8およびターボチャージャのタービンバイパスダクト12のための空間がある。
【0025】
図2aには、着火燃料噴射、燃焼および作業行程中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダ14の概略断面図が示されている。その場合、混合気の着火の瞬間は、例えば点火プラグを使用する様々な外的方法、または図2aに示されている着火燃料19の噴射により制御することができる。
【0026】
図2bには、排気行程中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダ14の概略断面図が示されている。機関の排気弁7が一般にピストン15の下死点前約50~60クランク角度で開くときに、シリンダ圧力の急速な低下、いわゆるブローダウンが起こる。この圧力パルスは、約60~80クランクシャフト角度の間続くものであり、いわゆるバルスターボチャージャを使用する場合、ターボチャージャのポテンシャルエネルギーの実に70%を含んでいる。この後、上方に動くピストン15は、排気弁7が閉じるまで、一般に2~4バールであるターボチャージャの逆圧に逆らって燃焼ガスをシリンダ14から機関の排気弁7を経由してターボチャージャ2へ押し出す。一般に、排気弁7は、ピストンの上死点前60度よりも早く閉じる。この場合は、かなりの量の燃焼ガスがシリンダ14内に残り、この燃焼ガスの圧力はターボチャージャの逆圧とほぼ同じである。
【0027】
燃焼機関は第2の排気弁8をさらに備え、第2の排気弁8は第2の排気ガス流路に連結されている。第2の排気ガス流路はターボチャージャ2を迂回する。絞り弁10が、第2の排気ガス流路12内に配置される。絞り弁10は、シリンダ14内の圧力を制御するように構成される。排気ガス流路13の出口における圧力は周囲空気の圧力であるので、その結果として、シリンダ14内に残る燃焼ガスの量は、第2の排気弁、第2の排気ガス流路、および絞り弁を組み合わせることで減じることができる。
【0028】
図2cには、燃料噴射中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関のシリンダ14の概略断面図が示されている。機関1の無故障運転に関して、シリンダ14内の燃焼ガスの圧力を制御することが必要である。また、機関のシリンダ14内の燃焼ガス残渣の量は、シリンダ14内に含まれるガス中への燃料の噴射が図2dに示されているシリンダ14内への新たなガス充填の導入前に十分に機能するように制御される。燃料は、例えば、円錐形ジェット16の形でシリンダ14内に噴射され得る。シリンダ14内に含まれるガスの圧力は、例えば3バール未満とすることができる。
【0029】
図2dには、空気取入れ中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関1のシリンダ14の概略断面図が示されている。入口弁6は、新たなガス充填がシリンダ14に流れ込むのを可能にするために開けられている。シリンダ14内の燃焼ガス、掃気ガス、および燃料蒸気の混合気18の温度は、シリンダ14内の前述の混合気18の温度が、ピストン15がその混合気18を図2eに示されているピストン15の上死点まで圧縮しているときに、混合気の自己着火を妨げるほど十分低くなるように、十分に低下することになる。
【0030】
図2eには、最終圧縮中の本発明の少なくともいくつかの実施形態による燃焼機関1のシリンダ14の概略断面図が示されている。
【0031】
開示される本発明の諸実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されるものではなく、当業者なら認識するであろうそれらの均等物に拡張されることを理解すべきである。本明細書に使用されている用語は、特定の実施形態だけを説明するために用いられ、限定するものではないことも理解されるべきである。
【0032】
本明細書全体を通しての一実施形態またはある実施形態への言及は、その実施形態に関連して記述される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通しての「一実施形態では(in one embodiment)」または「ある実施形態では(in an embodiment)」という言い回しは、必ずしもすべて同じ実施形態を指すわけではない。例えば、約(about)や実質的に(substantially)などの用語を用いて数値を参照する場合、正確な数値も開示される。
【0033】
本明細書では、複数の品目、構造要素、構成要素、および/または材料が便宜のために共通リストで提示され得る。しかしながら、これらのリストは、リストの各部材が別個かつ一意の部材として個々に識別されるものと解釈されるべきである。したがって、かかるリストの個々の部材は、相反する指示なしに、もっぱら共通の群におけるそれらの提示に基づいて同じリストの他の部材の事実上の均等物として解釈されるべきではない。加えて、本発明の様々な実施形態および例が、本発明の様々な構成要素の代替手段と共に本明細書で参照され得る。そのような実施形態、例、および代替形態は、互いに事実上の均等物として解釈されるべきではなく、本発明の別々の自立的な表現と見なされるべきであることが理解されよう。
【0034】
さらに、上述の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態における任意適当な形で組み合わされ得る。以下の説明では、本発明の諸実施形態の完全な理解を与えるために、長さ、幅、形状等の例などの多くの特定の詳細が提供される。しかしながら、当業者なら、本発明は、具体的な詳細のうちの1つまたは複数を用いずに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施され得ることを理解するであろう。他の例では、本発明の諸態様を不明瞭にするのを避けるために、周知の構造、材料、または動作は詳細には図示または記述されない。
【0035】
前述の例は、1つまたは複数の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、実施の形態、使用法および詳細における多くの修正が発明の能力を使用せずにかつ本発明の原理および概念から逸脱することなくなされ得ることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、下記の特許請求の範囲による場合を除いて限定されるものではない。
【0036】
「備える(to comprise)」および「含む(to include)」という動詞は、本明細書では、列挙されていない特徴の存在を除外することもないし必要とすることもない開かれた限定として用いられる。従属請求項に記載されている特徴は、特に明記されていない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、本明細書全体を通しての「a」または「an」すなわち単数形の使用は複数を除外しないことを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、内燃機関および内燃機関を運転する方法において産業上の用途を見いだす。
【符号の説明】
【0038】
1 燃焼機関
2 ターボチャージャ
3 第1のインタークーラ
4 圧縮機
5 第2のインタークーラ
6 入口弁
7 第1の排気弁
8 第2の排気弁
9 インタークーラバイパス
10 絞り弁
11 ターボチャージャタービン
12 タービンバイパスダクト
13 排気ダクト
14 シリンダ
15 ピストン
16 円錐形ジェット
17 燃焼室
18 混合気
19 着火燃料
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e