(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】改良された構造を有するタービンブレード
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
F01D5/18
(21)【出願番号】P 2019555680
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 FR2018000081
(87)【国際公開番号】W WO2018189434
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-16
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502255911
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シルバン パカン
(72)【発明者】
【氏名】ロマン ピエール カリウー
(72)【発明者】
【氏名】トマ ミシェル フラム
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン ベルナール バンサン ローリンガー
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5342172(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード根元(14)から上部仕切り壁(26)まで半径方向に延びる航空用タービンブレード(10)であって、前記ブレード(10)は、少なくとも1つの冷却回路を画定する複数の内側空洞を備え、前記内側空洞の各々は、内側壁と下部表面壁(22)と上部表面壁(24)とブレード根元(14)と上部仕切り壁(26)との中の壁によって画定されており
、
前記ブレード(10)は、前記ブレード(10)が、第1の貫通空洞(C1)と第2の貫通空洞(C4)とに対して各々が隣接している、第1の下部表面空洞(C2)と、第1の上部表面空洞(C3)とを少なくとも備え、前記第1の上部表面空洞(C3)は前記上部表面壁(24)に隣接しており、前記第1の下部表面空洞(C2)は前記下部表面壁(22)に隣接しており、前記第1の貫通空洞(C1)及び前記第2の貫通空洞(C4)の各々は前記下部表面壁(22)から前記上部表面壁(24)まで延び、
前記第2の貫通空洞(C4)は、前記上部表面壁(24)から前記第1の貫通空洞(C1)まで延びる第1の内側壁(P1)と、前記下部表面壁(22)から前記第1の貫通空洞(C1)まで延びる第2の内側壁(P2)とを備え、前記第1の内側壁(P1)と前記第2の内側壁(P2)は互いに連結されていない
、航空用タービンブレード(10)において、
前記ブレード(10)は、第2の下部表面空洞(C5)と第2の上部表面空洞(C6)と第3の貫通空洞(C7)とを備え、
前記第3の貫通空洞(C7)は前記下部表面壁(22)から前記上部表面壁(24)まで延び、前記第2の下部表面空洞(C5)と前記第2の上部表面空洞(C6)の各々は、前記第2の貫通空洞(C4)と前記第3の貫通空洞(C7)とに隣接しており、前記第2の上部表面空洞(C6)は前記上部表面壁(24)に隣接しており、前記第2の下部表面空洞(C5)は前記下部表面壁(22)に隣接しており、前記第3の貫通空洞(C7)は、前記上部表面壁(24)から前記第2の貫通空洞(C4)まで延びる第3の内側壁(P3)と、前記下部表面壁(22)から前記第2の貫通空洞(C4)まで延びる第4の内側壁(P4)とを備え、前記第3の内側壁(P3)と前記第4の内側壁(P4)は互いに連結されていない、ことを特徴とする航空用タービンブレード(10)。
【請求項2】
前記第2の貫通空洞(C4)は、前記第1の下部表面空洞(C2)と前記第1の上部表面空洞(C3)との間を延びる部分を備える、請求項1に記載の航空用タービンブレード(10)。
【請求項3】
前記第1の下部表面空洞(C2)は前記第1の貫通空洞(C1)に流体連結されており、前記第1の上部表面空洞(C3)は前記第2の貫通空洞(C4)に流体連結されている、請求項1又は2に記載の航空用タービンブレード(10)。
【請求項4】
前記第3の貫通空洞(C7)は、前記第2の下部表面空洞(C5)と前記第2の上部表面空洞(C6)との間を延びる部分を備える請求項
1~3のいずれか1項に記載の航空用タービンブレード(10)。
【請求項5】
前記第2の下部表面空洞(C5)は、前記第1の上部表面空洞(C3)に流体連結されており、前記第2の上部表面空洞(C6)は前記第3の貫通空洞(C7)に流体連結されている請求項
1~4のいずれか1項に記載の航空用タービンブレード(10)。
【請求項6】
第3の下部表面空洞(C8)と、第3の上部表面空洞(C9)と、第4の貫通空洞(C10)とを備え、
前記第4の貫通空洞(C10)は前記下部表面壁(22)から前記上部表面壁(24)まで延び、前記第3の下部表面空洞(C8)と前記第3の上部表面空洞(C9)の各々は前記第3の貫通空洞(C7)と前記第4の貫通空洞(C10)とに隣接しており、前記第3の上部表面空洞(C9)は前記上部表面壁(24)に隣接しており、前記第3の下部表面空洞(C8)は前記下部表面壁(22)に隣接しており、前記第3の貫通空洞(C7)は、前記上部表面壁(24)から前記第4の貫通空洞(C10)まで延びる第5の内側壁(P5)と、前記下部表面壁(22)から前記第4の貫通空洞(C10)まで延びる第6の内側壁(P6)とを備え、前記第5の内側壁(P5)と前記第6の内側壁(P6)は互いに連結されていない、請求項
1~
5のいずれか1項に記載の航空用タービンブレード(10)。
【請求項7】
前記第2の貫通空洞(C4)及び前記第3の貫通空洞(C7)の内の少なくとも1つは、前記第2の貫通空洞(C4)及び前記第3の貫通空洞(C7)の内の1つの内側に配置されており且つ前記ブレード根元(14)を前記上部仕切り壁(26)に連結する、少なくとも1つの補強ビーム(50、60)を備え、前記少なくとも1つの補強ビーム(50、60)は、前記内側壁と前記下部表面壁(22)と前記上部表面壁(24)とには連結されていない、請求項1~
6のいずれか1項に記載の航空用タービンブレード(10)。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の複数の航空用タービンブレード(10)を含むガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧航空用ガスタービンブレードの分野に関し、より特に、このブレードの内部構造と、このタイプのブレードを含むガスタービンとに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンのガスタービンの可動ブレード、特に、高圧タービンの可動ブレードが、エンジンの動作中に燃焼ガスの非常に高い温度を被る。この温度は、こうしたガスと接触している様々な部品が損傷なしに耐久することが可能である値よりも著しく高い値に達し、このことが可動ブレードの寿命を制限するという結果をもたらす。
【0003】
さらに、高圧タービンガスの温度の増大は、エンジンの効率の改善を可能にし、したがってエンジンのスラストと、このエンジンによって推進される航空機の重量との間の比率の改善を可能にする。したがって、こうしたブレードの冷却を最適化するように、さらに高い温度に耐久することが可能であるタービンブレードを実現するための努力が行われている。
【0004】
したがって、ブレードの温度を低下させることを求める冷却回路をこうしたブレードに装備することが知られている。このタイプの回路によって、通常はブレード根元を通してブレードの中に送り込まれる冷却空気(又は「低温」空気)が、ブレードの表面上に開口している開口部を通して放出される前に、ブレードの厚さ内に備えられている空洞によって形成されている通路を通ることによってブレードの中を通過する。
【0005】
このタイプの冷却回路は、ブレードの厚さ内の幾つかの独立した空洞によって構成されている時に、又は、これらの空洞の幾つかが局所化された冷却に専用に使用される時に、「先進的(advanced)」と呼ばれる。これらの空洞は、エンジンの性能要件と部品の寿命とに適合可能であるブレードを画定することを可能にする。先進的冷却回路の一例として、特許文献1(欧州特許出願公開第1741875号明細書)に示されている冷却回路を挙げることが可能である。
【0006】
このタイプの先進的冷却回路は、ストリームと接触しているブレードの外側壁とブレードのコア内の壁との間の大きな温度差を生じさせるという欠点を有する。こうした大きな温度差は、動作中のブレードの機械的強度を危険にさらし且つブレードの寿命に悪影響を与える可能性がある膨張と力とを誘発する。正放線平面内での壁の膨張が、特に、ブレードのコアとブレードの壁との間の接合区域の周囲で力を発生させ、このことが破断を生じさせる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題点に対応するために提案される解決策が、様々な壁の強度を向上させるために様々な壁の厚さを増大させることにある。しかし、このことはブレードの全般的性能を不利にするということがよく理解されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示が、ブレード根元から上部仕切り壁まで半径方向に延びる航空用タービンブレードに関し、上記ブレードは、少なくとも1つの冷却回路を画定する複数の内側空洞を備え、及び、上記内側空洞の各々は、内側壁と下部表面壁と上部表面壁とブレード根元と上部仕切り壁との中の壁によって画定されており、及び、上記ブレードは、そのブレードが、第1の貫通空洞と第2の貫通空洞とに対して各々が隣接している、第1の下部表面空洞と第1の上部表面空洞とを少なくとも備え、及び、第1の上部表面空洞は上部表面壁に隣接しており、及び、第1の下部表面空洞は下部表面壁に隣接しており、及び、第1及び第2の貫通空洞の各々は下部表面壁から上部表面壁まで延び、及び、第2の貫通空洞は、上部表面壁から第1の貫通空洞まで延びる第1の内側壁と、下部表面壁から第1の貫通空洞まで延びる第2の内側壁とを備え、及び、上記第1の内側壁と上記第2の内側壁は互いに連結されていないことを特徴とする。
【0010】
一例では、第2の貫通空洞は、第1の下部表面空洞と第1の上部表面空洞との間を延びる部分を備える。
【0011】
一例では、第1の下部表面空洞は第1の貫通空洞に流体連結されており、及び、第1の上部表面空洞は第2の貫通空洞に流体連結されている。
【0012】
一例では、ブレードは第2の下部表面空洞と第3の貫通空洞とを備える。
【0013】
第3の貫通空洞は下部表面壁から上部表面壁まで延び、及び、第2の下部表面空洞と第2の上部表面空洞の各々は、第2の貫通空洞と第3の貫通空洞とに隣接しており、第2の上部表面空洞は上部表面壁に隣接しており、第2の下部表面空洞は下部表面壁に隣接しており、及び、第3の貫通空洞は、上部表面壁から第2の貫通空洞まで延びる第3の内側壁と、下部表面壁から第2の貫通空洞まで延びる第4の内側壁とを備え、及び、上記第3の内側壁と上記第4の内側壁は互いに連結されていない。
【0014】
その次に、第3の貫通空洞は、典型的には、第2の下部表面空洞と第2の上部表面空洞との間を延びる部分を備える。
【0015】
第2の下部表面空洞は、この場合に、典型的には、第1の上部表面空洞に流体連結されており、及び、第2の上部表面空洞は第3の貫通空洞に流体連結されている。
【0016】
一実施様態では、ブレードは、第3の下部表面空洞と、第3の上部表面空洞と、第4の貫通空洞とを備え、第4の貫通空洞は下部表面壁から上部表面壁まで延び、第3の下部表面空洞と第3の上部表面空洞の各々は第3の貫通空洞と第4の貫通空洞とに隣接しており、第3の上部表面空洞は上部表面壁に隣接しており、第3の下部表面空洞は下部表面壁に隣接しており、及び、第3の貫通空洞は、上部表面壁から第4の貫通空洞まで延びる第5の内側壁と、下部表面壁から第4の貫通空洞まで延びる第6の内側壁とを備え、及び、上記第5の内側壁と上記第6の内側壁は互いに連結されていない。
【0017】
貫通空洞のすべて又は一部は、上記貫通空洞の1つの内側に配置されており且つブレード根元を上部仕切り壁に連結する、少なくとも1つの補強ビームを備えることが可能であり、及び、上記補強ビームは、内側壁と下部表面壁と上部表面壁とには連結されていない。
【0018】
本開示は、さらに、本開示のブレードを含むガスタービンにも関する。
【0019】
本発明とその利点とが、非限定的な具体例として示されている本発明の様々な実施形態に関する以下の詳細な説明を読解することによって、より適切に理解されるだろう。この説明は添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】航空用タービンブレードの斜視図の一例を示す。
【
図2】このタイプのブレードの断面図の一例を示す。
【
図3】このタイプのブレードの断面図の別の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これらの図のすべてでは、共通の要素が同じ参照番号によって示されている。
【0022】
以下では、本発明を
図1から
図3を参照して説明する。
【0023】
図1は、タービンエンジンの高圧タービンの、例えば金属の、可動ブレード10を示す。当然であるが、本発明は、タービンエンジンの他の可動ブレード又は固定ブレードにも適用可能である。
【0024】
ブレード10は、ブレード根元14とブレード先端部16との間を半径方向に延びる空気力学的表面12(即ち、エアロフォイル)を含む。
【0025】
ブレード根元14は、高圧タービンのローターのディスク内に取り付けられるようになっており、及び、ブレード先端部16は、ブレード根元14に対して半径方向に反対側に位置している。
【0026】
この空気力学的表面12は、4つの別個の区域、即ち、タービンエンジンの燃焼室から始まる高温ガス流に面するように配置されている前縁18と、前縁18に対して反対側に位置した後縁20と、下部表面壁22と、上部表面壁24とを有し、及び、下部表面壁22と上部表面壁24は前縁18を後縁20に連結する。
【0027】
ブレード先端部16において、ブレードの空気力学的表面12は横断壁26によって閉じられている。さらに、この空気力学的表面12は、以下においてブレードのスキーラー(squealer)先端部と呼ばれている窪み(trough)28を形成するために、この横断壁26を半径方向に僅かに超えて延びる。したがって、このスキーラー先端部28は、横断壁26によって形成されている底部、即ち、空気力学的表面12によって形成されている端縁を有し、及び、ブレード先端部16に向かって開いている。開口部30が、典型的には、ブレードの内側空洞と外側環境との間の空気取り入れ及び/又は逆流を可能にするために、下部表面壁22内に及び/又は上部表面壁24内に形成されている。
【0028】
ブレード10は、典型的には、後述するブレード10の内部構造によって形成されている1つ又は複数の冷却回路を備える。
【0029】
図2と
図3は、例えば
図1に示されている断面平面Pに沿った、
図1に示されているブレードの2つの変形例の2つの断面図である。
【0030】
これらの図から見てとれるように、ブレード10は中空であり、及び、その内側体積は、内側壁によって互いに隔てられている複数の空洞によって構成されている。
【0031】
図2に示されている例では、ブレード10は、ラベルC1からラベルC11によって示されている11個の空洞を備える。
【0032】
図2に見てとれるように、示されている例の場合に、これらの内側空洞の一部分、この場合には、内側空洞C1、C4、C7、C10、C11は、下部表面壁22と上部表面壁24との間を延びる。したがって、これらの内側空洞は内側貫通空洞であると呼称される。これらの内側空洞C1、C4、C7、C10、C11は、それぞれに、第1、第2、第3、第4、第5の内側貫通空洞と呼ばれる。第1の貫通空洞C1はブレード10の前縁18を形成し、及び、第5の貫通空洞C11は、内側空洞C10に続いて配置されており、及び、ブレード10の後縁20を形成する。
【0033】
その他の内側空洞、即ち、内側空洞C2、C3、C5、C6、C8、C9は貫通空洞ではなく、即ち、各々が下部表面22又は上部表面24の一方に隣接しているが、下部表面壁22又は上部表面壁24の他方まで延びていない。
【0034】
これらの非貫通内側空洞の中で、内側空洞C3、C6、C9は上部表面壁24に隣接している。したがって、これらの内側空洞は、それぞれに、第1、第2、第3の上部表面空洞と呼ばれる。内側空洞C2、C5、C8は、それ自体としては、下部表面壁22に隣接している。したがって、これらの内側空洞は、それぞれに第1、第2、第3の下部表面空洞と呼ばれる。
【0035】
ブレード10の内側構造のこのタイプの例は単に例示的なものにすぎないということと、ブレード10の内部構造に係わらず、示されている本発明が適用されることが可能であるということが容易に理解される。
【0036】
本特許出願の前文に示されているように、このタイプのブレード10の設計に関する主要な一群の問題点の1つが、特にブレード10の様々な区域内で生じる膨張の相違に起因し、及び、さらに明確に述べると、ブレード10の正放線平面でこれらの区域から結果的に生じる力に起因する、動作中の強度に関連している。
【0037】
これらの一群の問題点に対応するために、本開示は、貫通空洞と下部表面空洞と上部表面空洞とを画定する壁に関する特定の構造を提案する。
【0038】
図2に見てとれるように、第2、第3、第4の内側貫通空洞C4、C7、C10は特定の構造を有し、したがって、これらの内側貫通空洞の壁は、別の内側貫通空洞まで延びる。
【0039】
さらに明確に述べると、第2の内側貫通空洞C4を考察する時に、この第2の内側貫通空洞C4は、特に、上部表面壁24から第1の貫通空洞C1まで延びる第1の内側壁P1によって、及び、下部表面壁22から第1の貫通空洞C1まで延びる第2の内側壁P2によって画定されている。第1の内側壁P1と第2の内側壁P2は互いに連結されていない。このタイプの構造が、第2の内側貫通空洞C4が、第1の下部表面空洞C2と第1の上部表面空洞C3との間を延びることを可能にし、したがって、第2の下部表面空洞C5とさらに第1の上部表面空洞C3と通過している時に加熱され終わっている流体が第2の貫通空洞C4内を循環し、及び、第1の下部表面空洞C2と第1の上部表面空洞C3との壁とを覆い、及び、したがって、ブレード10の外側壁(即ち、下部表面壁22と上部表面壁24)と内側壁(この場合には、第1の内側壁P1と第2の内側壁P2)との間の熱勾配を低減させる。これに加えて、第1の内側壁P1と第2の内側壁P2とを連結しないことが、例えば、この内側壁P1と内側壁P2とが併合される構造に関して、夕食表面壁(supper surface wall)と内側表面壁とのそれぞれの接合部の周囲の力を減少させることを可能にする。
【0040】
第3の貫通空洞C7は実質的に別個の構造を有する。この第3の貫通空洞C7は、特に、上部表面壁24から第2の貫通空洞C4まで延びる第3の内側壁P3によって、及び、下部表面壁22から第2の貫通空洞C4まで延びる第4の内側壁P4によって画定されており、及び、第3の内側壁P3と第4の内側壁P4は互いに連結されておらず、及び、この第3の貫通空洞C7は、さらに、上部表面壁24から第4の貫通空洞C10まで延びる第5の内側壁P5によって、及び、下部表面壁22から第4の貫通空洞C10まで延びる第6の内側壁P6によって画定されており、及び、第5の内側壁P5と第6の内側壁P6は互いに連結されておらず、及び、それぞれに、上部表面壁24と共に第3の上部表面空洞C9を画定し、及び、下部表面壁22と共に第3の下部表面空洞C8を画定する。このタイプの構造が、第3の貫通空洞C7が、一方では、第2の下部表面空洞C5と第2の上部表面空洞C6との間を延び、且つ、他方では、第3の下部表面空洞C8と第3の上部表面空洞C9との間を延びることを可能にし、したがって、第3の下部表面空洞C8とさらには第2の上部表面空洞C6とを通過する時に加熱され終わっている流体が、第3の貫通空洞C7内を循環し、及び、第2の下部表面空洞C5と第3の下部表面空洞C8との壁と、第2の上部表面空洞C6と第3の上部表面空洞C9との壁とを覆い、及び、したがって、ブレード10の外側壁(即ち、下部表面壁22と上部表面壁24)と、内側壁(この場合には、第3の内側壁P3と、第4の内側壁P4と、第5の内側壁P5と、第6の内側壁P6)との間の熱勾配を減少させる。これに加えて、一方では内側壁P3と内側壁P4とを連結しないことと、他方では内側壁P5と内側壁P6とを連結しないこととが、これらの壁が2つずつ併合される構造に関して、上部表面壁と下部表面壁とのそのそれぞれの接合部の周囲における力の減少を可能にする。
【0041】
したがって、下部表面空洞と上部表面空洞の各々は2つの貫通空洞に隣接しており、及び、1つの他の下部表面空洞又は上部表面空洞に隣接していない。術語「隣接している」によって意味されるものは、考察されている空洞が少なくとも1つの壁を共有するということである。
【0042】
したがって、
図2に示されている構造を有するブレード10は、特に、その構造がブレード10の様々な内側壁と外側壁との間の熱勾配を減少させることと、動作中に力を発生させるための重要な要因である壁の相互間の膨張差を制限することとを可能にするので、有利である。さらに、様々な内側壁の相互間の空気循環、特に、第2の貫通空洞C4を経由した第1の内側壁P1と第2の内側壁P2との間の空気循環を実現するということが、これらの内側壁の温度を調整することと、考慮されている材料が最適な機械的特性を有する温度範囲内にこれらの内側壁を維持することとを可能にする。同じことが、その他の内側壁P3から内側壁P6に当てはまる。
【0043】
冷却システムを形成するブレードの様々な空洞の中の流体の循環方向が、幾つかの形状構成にしたがって決定されることが可能であり、及び、内側壁P1から内側壁P6の幾何学的形状は制約しない。例えば、各々の下部表面空洞が少なくとも1つの貫通空洞に流体連結されており、且つ、各々の上部表面空洞が少なくとも1つの貫通空洞に流体連結されている形状構成に言及することも可能である。各々の下部表面空洞と上部表面空洞とが、さらに、別の下部表面空洞又は上部表面空洞に流体連結されることも可能である。下部表面空洞と上部表面空洞と貫通空洞のすべて又は一部は、さらに、ブレード10の下部表面壁22及び/又は上部表面壁24の中に備えられている開口部30に連結されることも可能である。
【0044】
さらに、上述したように内側壁P1から内側壁P6を備えるブレード10は、例えば欧州特許出願公開第1741875号明細書に示されている事例のような、下部表面壁22から上部表面壁24まで直線状に延びる内側壁を有するブレード10に比較して、向上した可とう性を有する。実際に、
図2と
図3に示されているブレード10が検討される場合に、欧州特許出願公開第1741875号明細書に示されており且つ同じ個数の内側空洞を有するブレードに比較して、限られた個数の横断壁(即ち、下部表面壁22と上部表面壁24との間を概ね直線状に延びる壁)を備えるということに留意されたい。
【0045】
図3に示されている例では、第5の内側壁P5は取り除かれており、したがって、空洞C9と空洞C10は、単一の空洞C12を形成するように合併されている。このような実施形態は、空洞C12内で下部表面壁22と上部表面壁24との間を延びる横断壁を形成することを回避することによって、機械的に可とう性である構造を依然として保持しながら、後縁20に隣接している上部表面壁24の直接的な冷却を実現することを可能にする。このタイプの実施形態は、特に、ブレード10の内側を循環する冷却流体に比較してブレードが大きな分散を有する流体又は流れの温度の場合に適合化されている。
【0046】
図2と
図3に示されている例では、ブレード10は、ブレード10の貫通空洞の内側を、ブレード10の根元からブレード10の上部仕切り壁に、典型的には、ブレード10のスキーラー先端部28の底部を画定する横断壁26に延びる補強ビームを備える。
【0047】
したがって、
図2と
図3に示されている例では、ブレード10は、それぞれに第2の貫通空洞C4と第2の貫通空洞C7との内側に配置されている2つの補強ビーム50、60を備える。
【0048】
この補強ビーム50、60の各々は、ブレード10の根元からその上部仕切り壁まで延び、及び、貫通空洞の内側に配置されており、及び、これと同時に、下部表面壁22と、上部表面壁24と、貫通空洞を画定する内側壁とには連結されていない状態のままである。
【0049】
したがって、補強ビーム50、60の各々はブレード10の冷却流の中に全体的に位置しており、及び、したがって、考察されている冷却流内を循環する空気の温度にあり、したがって、下部表面壁22と上部表面壁24との温度によって直接的には影響されない。ブレード根元は、実際には、空気流の下方に位置しており、及び、ブレード10の冷却空気の温度で動作する。
【0050】
こうした補強ビーム50、60の存在が、正放線平面内で力を発生させることなしに、遠心力を抑止することを可能にする。補強ビーム50、60が遠心力を抑止する程度まで、ブレード10のその他の壁がより薄くされることが可能であり、したがって、ブレード10の重量とブレード10の冷却回路とに対する補強ビームの悪影響を最小化し、さらには排除することを可能にする。
【0051】
補強ビーム50、60は、典型的には、
図2と
図3に見てとれるように、半径方向の断面図によれば、ブレード10の正中線を中心に位置決めされており、このことが、補強ビーム50、60による遠心力の吸収を改善する。
【0052】
補強ビームの個数と配置は、ブレード10の形状に応じて、及び、そのブレード10が動作することが意図されている条件にしたがって、変化することが可能である。実際に、2つの補強ビームを各々が備える
図2と
図3に示されている実施形態は限定的ではないということと、ブレード10は、単一の補強ビーム、又は、さらには、個別の貫通空洞の内側に配置されている、3つ、4つ、5つ、又は、6つ以上の補強ビームを含むことが可能であり、又は、同じ貫通空洞内に配置されていることが可能である幾つかの補強ビームを含むことが可能であるということとが明瞭に理解される。
【0053】
補強ビームは中実であっても中空であってもよい。
図2と
図3の各々は、補強ビーム50、60が中実である実施形態を示す。
【0054】
補強ビームが中空である場合には、例えば、冷却流体の流れが下部表面壁22と上部表面壁24とに対して熱的に絶縁される程度に、ブレード10の重要な区域に送られなければならない冷却流体の流れを画定するために、補強ビームは、その補強ビームの内側での空気の循環が実現されることを可能にするスロット及び/又は穴の形状をとる孔を有することが可能である。
【0055】
補強ビームは、典型的には、円形、楕円形、又は、卵形の横断面を有し、及び、幾つかの補強ビームを有するブレード10の場合には、補強ビームは別個の形状を有することが可能であるということが理解される。補強ビームは、さらに、ビーム10の高さ全体にわたって一定不変の又は可変的な横断面を有することが可能である。
【0056】
特定の例示的な実施形態に言及することによって本発明を説明してきたが、特許請求項に定義されている本発明の全般的範囲から逸脱することなしに、これらの実施形態に対して変更と変化とが加えられることが可能であるということが明らかである。特に、冷却回路の個数と、この冷却回路の各々を構成する空洞の個数とが、この例に示されている個数には限定されない。したがって、この説明と図面は、限定的な意味ではなく、例示的なものと認識されなければならない。
【0057】
さらに、方法に関して説明した特徴要素のすべてが、単独で又は組合せの形で、装置に置き換えられることが可能であり、及び、これとは反対に、装置に関して説明したすべての特徴要素が、単独で又は組合せの形で、方法に置き換えられることが可能である。